JP2018115359A - 潜熱回収型熱交換器用ステンレス鋼 - Google Patents

潜熱回収型熱交換器用ステンレス鋼 Download PDF

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Zenichi Tai
善一 田井
知明 齋田
Tomoaki Saida
知明 齋田
一成 今川
Kazunari Imagawa
一成 今川
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Abstract

【課題】潜熱回収型熱交換器のフィン、パイプ等の素材として好適であって、ろう付け性および耐食性に優れていて、安価なステンレス鋼を提供する。【解決手段】質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1超〜1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:12〜20%、Nb:7×(C+N)+0.15〜0.80%、N:0.03%以下、Ti:0.02%以下およびAl:0.02%以下を含み、Ti+Al≦0.02%を満たす、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼。【選択図】図2

Description

本発明は、潜熱回収型熱交換器用のステンレス鋼に関する。特に、潜熱回収型熱交換器におけるフィンまたはパイプに適用されるステンレス鋼に関する。
熱交換器は、燃焼ガスの熱を流体に加えて加熱に用いる機器であり、ボイラーから家庭用給湯器まで様々な用途で利用されている。熱交換器の主な構成部材は、筐体、パイプ、フィンである。
近年、潜熱回収型熱交換器が給湯器等に適用されている。潜熱回収型熱交換器は、従来の熱交換器(一次熱交換器)により燃焼熱を流体に与えることに加えて、一次熱交換器で使用した後の排ガスの熱を二次熱交換器で回収する。その結果、流体の加熱に利用される燃焼ガスの熱効率が大幅に向上する。具体的には、例えば、特許文献1のように、二次熱交換器において被加熱流体が流れるパイプに燃焼排ガスを接触させる。燃焼排ガスに含まれる水分が凝集して水滴となる過程で潜熱が生じて、この潜熱により被加熱流体が加熱される。その後、当該被加熱流体は、一次熱交換器に搬送され、パイプ内を流れる過程でガスバーナの燃焼熱により所定温度まで加熱される。
従来、熱交換器の筐体、パイプ、フィンなどの構成材料として、銅が使用されている。銅は、熱伝導性が高い材料であるから、良好な熱交換性能が得られる。さらに、銅は、ろう付け性や加工性が良好であるから、熱交換器の製造においても好都合である。しかしながら、銅は、高価であることが欠点である。製品価格を低減させるため、銅に代わる安価な材料の使用が求められている。
また、熱伝導性の向上や材料費の節約にとって、部材の薄肉化が要望されている。この点で、銅の機械的強度が低いため、薄肉により変形する恐れがあり、使用可能な板厚に限度がある。
そこで、銅の代替として、耐食性に優れるステンレス鋼の適用が検討されている。ステンレス鋼は、銅に比べて熱伝導率の低い材料である。しかし、銅よりも機械的強度が高く、薄肉部材として使用できるので、熱交換器に必要な熱伝導性を確保することが可能である。
一次熱交換器の部材は、主に燃焼ガスによる高温の酸化性雰囲気に曝されるため、耐熱性および耐高温酸化性が要求される。また、薄板を用いてプレス成形を行い、所定形状の部材を作製するため、素材には良好な加工性が求められる。
二次熱交換器は、一次熱交換器側の燃焼に使用された排ガスが、被加熱流体のパイプに接触して凝縮する過程で、被加熱流体に熱が付与される。潜熱を回収する過程で生成する燃焼排ガスの凝縮水中には、濃縮された硝酸イオンや塩素イオンが含まれている。そのため、二次熱交換器側の部材には、硝酸イオンや塩素イオンを含む環境における耐食性が求められる。
二次熱交換器側では、燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮し、凝縮水が生成される。この凝縮水には硝酸イオンが多く含まれ、pH3以下の酸性水である。そのため、凝縮水と接触する二次熱交換器の筐体、パイプ、フィン等の部材は、弱酸性域での耐食性が重視される。そのため、従来、オーステナイト系ステンレス鋼のSUS316Lが使用されている。しかし、SUS316Lは、このような凝縮水環境での耐食性を有しているものの、NiやMoを多く含有しており、高価な材料である。潜熱回収型熱交換器の素材として、さらなる材料コストの低減が求められている。
ところで、凝縮水中に含まれる成分は、硝酸イオンが主成分である。ステンレス鋼では孔食のように一部の領域で腐食が発生することがある。本用途に適用する場合、孔食により貫通孔が発生すると、パイプ内の水の漏洩や、筐体からの燃焼ガスの漏洩が問題になる。孔食の発生要因は、ハロゲンイオンであるから、潜熱回収型熱交換器においては、凝縮水中の塩素イオンにより孔食が引き起こされる可能性がある。また、この塩素イオンは、燃焼排ガスに含まれることに加えて、外部環境(外気)からの混入もあり得る。例えば、海浜地区など塩害の多い地域では、凝縮水中に塩素イオンが濃縮する量も多くなると考えられる。
特許文献1、2は、潜熱回収型熱交換器において特定のフェライト系ステンレス鋼を適用することが提案されている。特許文献1は、パイプとフィンの構成材料として、JIS規格のSUS436J1、SUS436L,SUS444の3種を提案している。また、特許文献2は、Cr+Mo+10Ti≧18、Si+Cu≦0.5を満たす組成範囲を提案している。特許文献3、4は、熱交換器部材のろう付けに供されるフェライト系ステンレス鋼が記載されている。しかし、潜熱回収型交換器の用途においては、さらに材料コストの低減、ろう付け性などの特性が求められている。
また、熱交換器は、パイプやフィンの接合を行う場合、機械的な継手による接合、溶接による接合、ろう付けによる接合などの種々の方法が用いられる。小型熱交換器の製造においては、Niろう付けまたはCuろう付けが多用される。ろう付けは、真空あるいは水素雰囲気のような還元性雰囲気中で、1000℃以上の温度に保持して行われる。この条件下では、ステンレス鋼の不動態皮膜が還元されるとともに、ろう材が溶融し、ステンレス鋼の表面を拡がることにより、ろう付けが行われる。特に、熱交換器のパイプとフィンあるいは熱交換器筐体との接合においては、パイプ全周でろう材を拡げ、フィンあるいは熱交換器筐体との隙間を埋める必要であり、ろう材の拡がる距離が大きくなること、さらに筐体の形状によって、加工性、ろう付け性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼を適用した場合、オーステナイト系ステンレス鋼側にろうが広がり、フェライト系ステンレス鋼側にはろうが広がらない場合もあり得ることから、熱交換器のパイプやフィンには十分なろう付け性を備えることが求められる。
特許文献1は、ろう付け性を高めるために必要な成分に関する知見が開示されていない。特許文献2は、耐食性を改良したフェライト系ステンレス鋼が記載されているが、ろう付け性に関する効果は記載されていない。特許文献3、4は、ろう付け性が良好なフェライト系ステンレス鋼を提案している。特許文献3は、ろう付け時のフェライト結晶粒の粗大化を抑制するため、組成範囲を規定し、TiとAlの合計含有量を0.03〜0.4質量%以下としている。特許文献4は、Al、Tiの酸化皮膜がろう材のぬれ性を低下させることから、AlとTiを0.03質量%以下に制限している。しかし、ろう付け炉による工業生産におけるパイプとフィンあるいは熱交換器筐体との接合においては、このレベルでのTiとAl含有量では十分なろう付け性が得られないことがある。
特開2002−106970号公報 特開2011−184731号公報 特開2009−299182号公報 特開2011−157616号公報
上記のとおり、潜熱回収型熱交換器におけるフィン、パイプ等の部材においては、ろう付け性および耐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼が求められていた。本発明は、この事情に鑑み、潜熱回収型熱交換器のフィン、パイプ等の素材として好適であって、ろう付け性および耐食性に優れていて、安価なステンレス鋼を提供することを目的とした。
本発明者らは、上記課題を解決するため検討した結果、フェライト系ステンレス鋼に含まれるAl、Tiの含有量をさらに制限することにより、工業的なろう付け炉により量産する場合であっても、良好なろう付け性と耐食性が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、潜熱回収型熱交換器のフィン、パイプ等の使用に適したフィライト系ステンレス鋼を提供するものであり、具体的には、以下のものを提供する。
(1)本発明は、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1超〜1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:12〜20%、Nb:7×(C+N)+0.15〜0.80%、N:0.03%以下、Ti:0.02%以下およびAl:0.02%以下を含み、Ti+Al≦0.02%を満たす、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、ろう付け性および耐食性に優れる、潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼である。
(2)本発明は、さらに、質量%で、Mo、Ni、Cu、V、WおよびCoのうち1種以上を合計で4%以下を含有する、上記(1)記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼である。
(3)本発明は、さらに、質量%で、Mo:2.5%以下、Ni:3%以下、Cu:0.30〜0.80%、V:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下のうち1種以上を合計で3%以下を含有する、上記(1)または(2)に記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼である。
(4)本発明は、さらに、質量%で、REM(希土類元素)およびCaのうち1種以上を合計で0.2%以下を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼である。
(5)本発明は、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1超〜1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16〜20%、Mo:1〜3%、Nb:7×(C+N)+0.15〜0.80%、N:0.03%以下、Ti:0.02%以下およびAl:0.02%以下、を含み、Ti+Al≦0.02%を満たす、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、ろう付け性および耐食性に優れる、潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼である。
(6)本発明は、さらに、質量%で、Ni、Cu、V、WおよびCoのうち1種以上を合計で4%以下を含有する、上記(5)記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼である。
(7)本発明は、さらに、質量%で、Ni:3%以下、Cu:0.80%以下、V:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下のうち1種以上を合計で3%以下を含有する、上記(5)または(6)に記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼である。
(8)本発明は、さらに、質量%で、REM(希土類元素)およびCaのうち1種以上を合計で0.2%以下を含有する、上記(5)〜(7)のいずれかに記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼である。
本発明によれば、潜熱回収型熱交換器において良好なろう付け性および耐食性を備えたフィン、パイプ等の部材を、低コストで提供することができる。
実施例の、ろう付け性評価方法で使用される試験片を示す図である。 図1の試験片において、ろうの隙間充填長さを説明するための図である。
(I)本実施形態に係るステンレス鋼は、潜熱回収型熱交換器のフィンの素材に適したフェライト系ステンレス鋼であり、具体的には、以下の成分を含有する。なお、「質量%」は、断らない限り、以下、「%」で表示することにする。
C、Nは、ステンレス鋼中に不可避的に含まれる成分である。C含有量およびN含有量を低減すると、炭化物、窒化物の生成が少なくなり、溶接性および溶接部の耐食性が向上する。しかし、低減させるための精錬時間が長くなり、ステンレス鋼製造のコスト上昇を招くことから、C含有量は、0.03%以下とし、N含有量は、0.03%以下とした。
Siは、ステンレス鋼の脱酸剤として添加される。0.1%超で含有することが好ましい。しかし、過剰のSi含有量は、フェライト相を硬質化させ、加工性や靱性を劣化させる要因になることから、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、上限を1%とした。
Mnは、ステンレス鋼に不純物として含まれている硫黄(S)と結合し、化学的に不安定な硫化物であるMnSを形成して耐食性を低下させる。そのため、Mn含有量は、低いほど好ましく、2%を上限とした。
Pは、母材およびろう付け部の靱性を損なうので、低いことが望ましい。ただし、Cr含有鋼の溶製では、精錬による脱りんが困難であるから、P含有量を微量レベルまで低下させるには、原料選定などで過剰なコスト増加を伴う。そのため、P含有量は、0.05%以下とした。
Sは、孔食の起点となりやすいMnSを形成し、耐食性を阻害する元素である。また、ろう付け部の高温割れを引き起こすので、S含有量は、低いほど好ましく、0.03%以下とした。
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、耐孔食性や耐隙間腐食性などの局部耐食性の向上をもたらす。しかし、Cr含有量が多くなると、C、Nを低減させることが難しくなり、機械的性質や靱性を損ねるとともに、コストを増大させる要因となる。そのため、Cr含有量は、12〜20%とした。16〜20%が好ましく、18〜20%がより好ましい。
Nbは、C、Nを固定し、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効な元素である。その効果を十分に発揮するには、C+Nの合計量の7倍に加えて0.15%以上のNb含有量が好ましい。他方、過剰に添加すると、ステンレス鋼を硬質化させるため、Nb含有量は、0.80%以下が好ましい。
Tiは、C、Nを固定し、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するための有効な元素である。しかし、非常に酸化しやすい元素であるから、高真空や低露点の水素雰囲気中でも容易にTiの酸化皮膜を形成し、ろう付け性を低下させる。そのため、不純物として混入するTi含有量は、0.02%以下に制限した。
Alは、脱酸剤として用いられる。Tiと同様に非常に酸化しやすい元素であるから、高真空や低露点の水素雰囲気中でも容易にAlの酸化皮膜を形成し、ろう付け性を低下させる。そのため、Alを用いずに脱酸をするか、あるいは、Al脱酸をする場合には鋼中に残留するAl含有量を0.02%以下に制限した。さらに、AlおよびTiの含有量をTi+Al≦0.02%に制限した。
Mo、Ni、Cu、V、W、Coは、Crとともに耐食性レベルを向上させるための有効な元素であり、用途に応じて適切な量の添加を行ってよい。これらの添加量は、合計で4%以下が好ましい。加工性や靭性、製造コストの観点から、Mo含有量は2.5%以下、Ni含有量は3%以下、Cu含有量:0.30〜0.80%以下、V含有量は1%以下、W含有量は1%以下、Co含有量は1%以下で、これら合計で3%以下に調整することがより好ましい。
REM(希土類元素)またはCaは、熱間加工性の改善のために添加してもよい。これらの添加量は、合計で0.2%以下が好ましい。
(II)本実施形態に係るステンレス鋼は、潜熱回収型熱交換器のパイプの素材に適したフェライト系ステンレス鋼であり、具体的には、以下の成分を含有する。なお、「質量%」は、断らない限り、以下、「%」で表示することにする。
C、Nは、ステンレス鋼中に不可避的に含まれる成分である。C含有量およびN含有量を低減すると、炭化物、窒化物の生成が少なくなり、溶接性および溶接部の耐食性が向上する。しかし、低減させるための精錬時間が長くなり、ステンレス鋼製造のコスト上昇を招くから、C含有量は、0.03%以下とし、N含有量は、0.03%以下とした。
Siは、ステンレス鋼の脱酸剤として添加される。0.1%超で含有することが好ましい。しかし、過剰のSi含有量は、フェライト相を硬質化させ、加工性や靱性を劣化させる要因になることから、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼は、上限を1%とした。
Mnは、ステンレス鋼に不純物として含まれている硫黄(S)と結合し、化学的に不安定な硫化物であるMnSを形成して耐食性を低下させる。そのため、Mn含有量は、低いほど好ましく、2%を上限とした。
Pは、母材およびろう付け部の靱性を損なうので、低いことが望ましい。ただし、Cr含有鋼の溶製では、精錬による脱りんが困難であるから、P含有量を微量レベルまで低下させるには、原料選定などで過剰なコスト増加を伴う。そのため、P含有量は、0.05%以下とした。
Sは、孔食の起点となりやすいMnSを形成し、耐食性を阻害する元素である。また、ろう付け部の高温割れを引き起こすので、S含有量は、低いほど好ましく、0.03%以下とした。
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、耐孔食性や耐隙間腐食性などの局部耐食性の向上をもたらす。しかし、Cr含有量が多くなると、C、Nを低減させることが難しくなり、機械的性質や靱性を損ねるとともに、コストを増大させる要因となる。そのため、Cr含有量は、16〜20%が好ましい。18〜20%がより好ましい。
Moは、耐食性レベルを向上させるための有効な元素である。過剰に添加すると、熱間加工性の低下を招くことがある。そのため、Mo含有量が1〜3%であることが好ましく、1.5〜2.5%の範囲に調整することがより好ましい。
Nbは、C、Nを固定し、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するのに有効な元素である。その効果を十分に発揮するには、C+Nの合計量の7倍に加えて0.15%以上のNb含有量が好ましい。他方、過剰に添加すると、ステンレス鋼を硬質化させるため、Nb含有量は、0.80%以下が好ましい。
Tiは、C、Nを固定し、ステンレス鋼で問題となる粒界腐食を防止するための有効な元素である。しかし、非常に酸化しやすい元素であるから、高真空や低露点の水素雰囲気中でも容易にTiの酸化皮膜を形成し、ろう付け性を低下させる。そのため、不純物として混入するTi含有量は、0.02%以下に制限した。
Alは、脱酸剤として用いられる。Tiと同様に非常に酸化しやすい元素であるから、高真空や低露点の水素雰囲気中でも容易にAlの酸化皮膜を形成し、ろう付け性を低下させる。そのため、Alを用いずに脱酸をするか、あるいは、Al脱酸をする場合には鋼中に残留するAl含有量を0.02%以下に制限した。さらに、AlおよびTiの含有量の合計をTi+Al≦0.02%に制限した。
Ni、Cu、V、W、Coは、Crとともに耐食性レベルを向上させるための有効な元素であり、用途に応じて適切な量の添加を行ってよい。これらの添加量は、合計で4%以下が好ましい。加工性や靭性、製造コストの観点から、Ni含有量は3%以下、Cu含有量は0.80%以下、V含有量は1%以下、W含有量は1%以下、Co含有量は1%以下であることが好ましく、これらの元素とMoの合計で3%以下に調整することがより好ましい。
REM(希土類元素)またはCaは、熱間加工性の改善のために添加してもよい。これらの添加量は、合計で0.2%以下が好ましい。
表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、熱間圧延にて板厚4mmの熱延板を作製した。その後、冷間圧延で板厚2.0mmとし、仕上げ焼鈍を1000〜1070℃で行い、酸洗を施すことによって供試材とした。得られた供試材は、耐食性およびろう付け性評価に供した。なお、熱交換器パイプは、水道水に含まれる塩化物イオンに対する耐食性が必要とされるため、パイプ材の耐食性は、孔食電位測定で評価し、筐体とのろう付け性を評価するため、比較鋼5のSUS316Lとの組み合わせで評価した。また、熱交換器フィンは、熱交換器内部の凝縮水による腐食環境に晒されることから、フィン材の耐食性は、模擬凝縮水乾湿繰り返し法で評価し、パイプとのろう付け性を評価するため、本発明鋼1との組み合わせで評価した。表1に示した化学組成は、質量%であり、残部がFeおよび不可避的不純物である。
Figure 2018115359
(孔食電位測定方法)
試験片は、板厚2.0mmの各ステンレス鋼を20mm×15mmに切削加工にて切り出した。試験面は、耐水研磨紙で600番まで湿式研磨を行った。導線は、試験片の一端にスポット溶接し、シリコン樹脂にて露出試験面10mm×10mm以外を被覆した。試験溶液は、水道水に含まれるClイオンの上限である200ppmとした。試験溶液の温度を60℃とし、大気雰囲気の試験溶液中に試験面を完全に浸し、10分間の放置をした。その後、ポテンショスタットにより自然電位から電位掃引速度20mV/minの動電位法でアノード電流が500μA/cmに達するまで行い、分極曲線を得た。孔食電位は、アノード分極曲線において100μA/cmに対応する電位のうち、最も貴な値とした。孔食電位が500mVvsSCE以上であるものを耐食性が良好(○)と判定し、500mVvsSCE未満であるものを不適(×)と判定した。その結果を表3に示す。
(模擬凝縮水乾湿繰り返し法)
凝縮水の付着、乾燥による濃縮が繰り返される熱交換器内部環境を模擬した耐食試験を以下の手順により行った。板厚2.0mmの各ステンレス鋼を50mm×50mmの試験片を切削加工で切り出し、200℃で1時間加熱して試験に供した。試験片は、重量を測定して試験前重量とした。試験に用いた模擬凝縮水は、実際の熱交換器に生じた凝縮水の分析例を参考にして調整した。表2に試験液の組成を示す。
Figure 2018115359
試験片を模擬凝縮水100mlに10分間浸漬した後、130℃の恒温槽内で7時間保持して模擬凝縮水を乾燥濃縮させた。このサイクルを10回繰り返した後、水洗し、試験片の重量を測定した。試験前重量から試験後重量を引いた値を腐食量とし、現行のCuの腐食量より少ない0.005g未満のものを耐食性が良好(○)と判定し、0.005g以上のものを不良(×)と判定した。その結果を表3に示す。
(ろう付け性評価方法)
熱交換器でパイプとフィンあるいは筐体とのろう付けは、これらの間に生じる隙間に対してろうの充填が課題となることから、図1に示す試験片7を用いて、ろう付け性の評価を行った。上板を55mm×25mmに切り出して、また、下板を60mm×25mmに切り出して試験に供した。下板2の中央に垂直に立てた上板1の一端から50mmの位置に、φ3mmのスペーサロッド3(SUS304製丸棒)を挟んで一定のクリアランスを設定した。上板1と下板2とが接触している部分の両端に、ろう4を0.1gずつ塗布した。ろう4は、JISZ3265に適合するBNi−7を用いた。また、図1に示すように、上板1の表面において下端から2mmの位置にストップオフ5を施し、下板2の表面において上板1の面と2mm離れた位置にストップオフ5を施した。当該ストップオフには、ハードフェーズ ウェルドカンパニー製 ニクロブレイズ GREENを使用した。このような試験片に対して、露点−50℃の水素雰囲気で、昇温時間20分で1000℃まで昇温し、10分間保持するろう付け処理を行った。常温に冷却した後、図2に示すように、ろうが隙間を充填した長さ6(隙間充填長さ)を測定した。この隙間充填長さ6が30mm以上であるものをろう付け性が良好(○)と判定し、30mm未満であるものを不良(×)と判定した。その結果を表3に示す。
上板が熱交換器のパイプ用部材である場合は、下板として熱交換器筐体で多用されるSUS316Lを用いて、上板のろう付け性を評価した。また、上板が熱交換器のフィン用部材である場合は、下板として熱交換器パイプ用部材の本発明鋼1を用いて、上板のろう付け性を評価した。
Figure 2018115359
本発明鋼1、2は、本発明の成分組成を有する熱交換器のパイプ用のフェライト系ステンレス鋼である。表3に示すように、本発明鋼1、2は、孔食電位が500mVvsSCE以上であり、塩化物イオンを含む温水環境下で良好な耐食性を有することを確認できた。さらに、本発明鋼1、2は、ろう付け性について、SUS316Lの下板に対して良好なろう付け性を有していることを確認できた。それに対し、本発明の範囲外である比較鋼1〜4は、ろう付け性が本発明鋼1、2より劣っていた。
本発明鋼1〜4は、本発明の成分組成を有する熱交換器のフィン用のフェライト系ステンレス鋼である。表3に示すように、本発明鋼1〜4は、模擬凝縮水乾湿繰り返し試験において、いずれも腐食量は0.005g未満であり、現行材のCuに比べて腐食量が小さいことから、2次熱交換器側で発生する凝縮水を含む酸性環境下であっても、良好な耐食性を保持することを確認できた。本発明鋼1〜4は、良好なろう付け性を有していることを確認できた。それに対し、本発明の範囲外である比較鋼1〜4は、ろう付け性が本発明鋼1〜4より劣っていた。
1 上板
2 下板
3 スペーサロッド
4 ろう
5 ストップオフ
6 隙間充填長さ
7 試験片

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1超〜1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:12〜20%、Nb:7×(C+N)+0.15〜0.80%、N:0.03%以下、Ti:0.02%以下およびAl:0.02%以下を含み、Ti+Al≦0.02%を満たす、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、ろう付け性および耐食性に優れる、潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼。
  2. さらに、質量%で、Mo、Ni、Cu、V、WおよびCoのうち1種以上を合計で4%以下を含有する、請求項1記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼。
  3. さらに、さらに、質量%で、Mo:2.5%以下、Ni:3%以下、Cu:0.30〜0.80%、V:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下のうち1種以上を合計で3%以下を含有する、請求項1または2に記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼。
  4. さらに、質量%で、REM(希土類元素)およびCaのうち1種以上を合計で0.2%以下を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の潜熱回収型熱交換器フィン用のフェライト系ステンレス鋼。
  5. 質量%で、C:0.03%以下、Si:0.1超〜1%、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:16〜20%、Mo:1〜3%、Nb:7×(C+N)+0.15〜0.80%、N:0.03%以下、Ti:0.02%以下およびAl:0.02%以下を含み、Ti+Al≦0.02%を満たす、残部がFeおよび不可避的不純物からなる、ろう付け性および耐食性に優れる、潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼。
  6. さらに、質量%で、Ni、Cu、V、WおよびCoのうち1種以上を合計で4%以下を含有する、請求項5記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼。
  7. さらに、Ni:3%以下、Cu:0.80以下、V:1%以下、W:1%以下、Co:1%以下のうち1種以上を合計で3%以下を含有する、請求項5または6に記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼。
  8. さらに、質量%で、REM(希土類元素)およびCaのうち1種以上を合計で0.2%以下を含有する、請求項5〜7のいずれかに記載の潜熱回収型熱交換器パイプ用のフェライト系ステンレス鋼。
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