JP2011202838A - 熱交換器用ステンレス鋼製冷媒配管 - Google Patents

熱交換器用ステンレス鋼製冷媒配管 Download PDF

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Abstract

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼と同等の屋外環境における耐食性を有した素材で、溶接やろう付けによって加熱されて焼きなまされた状態であってもりん脱酸銅より高い0.2%耐力を備えている冷媒配管を安価で提供する。
【解決手段】溶接やろう付けによって他の部品と接合される熱交換器用冷媒配管の素材として、CuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼管を用いる。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱交換器に用いられる冷媒ガス流通用の、溶接やろう付けによって加熱された状態であっても高い0.2%耐力を備えたテンレス鋼製の冷媒配管に関する。
一般に、給湯器や空調機、冷凍機等には熱交換器が用いられており、例えば空調機のように、室外機に組み込まれて屋外に設置される場合が多い。また、熱交換器は、COやHFC系フロンなどの冷媒ガスの圧縮と膨張によって熱交換機能を生み出しているが、冷媒ガスの流通路としてはりん脱酸銅製の冷媒配管が使用されていて、コンプレッサーにより冷媒ガスを供給している。
一般にりん脱酸銅製の冷媒配管は、直管に曲げ加工や拡管加工、穴開け、バーリング加工等を施して、配管同士をりん銅ろう材によるろう付けで接合して熱交換器に組み込まれている。
このような状況下で使用される冷媒配管に必要な特性としては、室外機として屋外に設置されるために室外環境での耐食性と、コンプレッサーから供給させる冷媒ガスの圧力に対する耐圧性が挙げられる。特に耐圧性は、配管の破壊に繋がるために重要であり、コンプレッサーの異常動作による圧力上昇も考慮して、一般的に常用圧力より高い圧力での耐圧性能が要求されている。
しかし、りん脱酸銅を素材とした冷媒配管は、配管同士の接合をろう付けで行っているため、これの加熱によって配管の強度が低下する場合がある。すなわち、ろう付けで使用されるりん銅ろう材の融点は約790℃であることから、前記の冷媒配管は約800℃に加熱されることになる。この状態まで加熱されると、りん脱酸銅製の冷媒配管は結晶粒が粗大化して機械的性質(引張強さ,降伏応力,硬さ等)が低下してしまう。
例えば、硬さに関しては、一般に銅は200℃以上に加熱した場合は常温時の硬さと比べて約1/2までに低下してしまうため、加熱箇所からの熱伝導によって接合部のみならず広い範囲での硬さ低下を招いてしまう。
このような降伏応力が低下した状態で冷媒配管内に冷媒ガスを供給すると、冷媒ガスの圧力は20MPa以上になる場合があるため、加熱によって降伏応力が低下した部分では変形して冷媒ガスの流れが滞ったり、冷媒配管自体が破壊したりする恐れがでてくる。したがって冷媒配管の板厚は、この影響を考慮して必要以上に厚くしなければならない。
しかしながら、りん脱酸銅製の冷媒配管の厚肉を厚くするすると重量が増加して施工性の悪化を招いたり、銅の使用量増加によるコスト上昇が問題となっている。
冷媒配管の耐圧性を向上させるためには、加熱されて空冷された場合、つまり焼きなまし状態でも高い降伏応力を有する材料を用いることで改善できる。
例えば、特許文献1においてはCoやP、Sn、Znを一定の割合で添加して降伏応力を向上させた銅合金が提案されている。しかし、このような銅合金では、耐圧性は改善されるものの、各種の金属を添加する必要があるため素材のコスト上昇を招いてしまう問題をもっている。
また、焼きなまし状態でのりん脱酸銅より高い降伏応力を持つ材料としては、鉄系材料が挙げられるが、冷媒配管は屋外に設置される室外機に組み込まれるため、屋外環境における耐食性を有しておく必要がある。
一般に高耐食性を有する鉄系材料としては、ZnやZn系合金、あるいはAlを表面に被覆しためっき鋼板やオーステナイト系ステンレス鋼板が挙げられるが、めっき鋼板は冷媒配管に施される曲げ加工や拡管加工などの加工によってめっき層が損傷を受けてめっき厚が薄くなったり、消失してしまう。したがって、実質的にはオーステナイト系ステンレス鋼板を用いることによってのみ耐圧性と屋外環境での耐食性を満足することができる。
特許第3878640号
冷媒配管としては、溶接やろう付けによって加熱されて焼きなまされた状態であってもりん脱酸銅より高い0.2%耐力を有し、屋外環境における高耐食性も備えたオーステナイト系ステンレス鋼が適している。しかし、オーステナイト系ステンレス鋼は、Niが添加されているため材料コストが高くなりがちであり、変動しやすいNi価格によって材料自体の価格も大きく変動して使用しにくい面を持ち合わせている。
そこで、本発明は、このような問題点を解消するために案出されたものであり、オーステナイト系ステンレス鋼と同等の屋外環境における耐食性を有した素材で、溶接やろう付けによって加熱されて焼きなまされた状態であってもりん脱酸銅より高い0.2%耐力を備えている冷媒配管を安価で提供することを目的とする。
本発明の熱交換器用ステンレス鋼製冷媒配管は、その目的を達成するため、溶接やろう付けによって他の部品と接合される熱交換器用の冷媒配管であって、CuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼を素材として形作られていることを特徴とする。
本発明の熱交換器用の冷媒用配管においては、所望形状への塑性加工が施された後の焼きなまし状態でりん脱酸銅よりも高い0.2%耐力を有するフェライト系ステンレス鋼を用いることから、ろう付けや塑性加工による加熱で焼きなまされても耐圧性能が保持されており、20MPa以上の冷媒ガスが供給されても変形することがない。
また、素材であるフェライト系ステンレス鋼にCuとNbを各々0.2質量%以上添加していることから、屋外環境においてもりん脱酸銅やオーステナイト系ステンレス鋼と同等の耐食性を有することからができる。
つまり、耐圧性能や耐食性に優れた安価な熱交換器の冷媒配管を供することが可能となる。
塩水噴霧試験での一般的なオーステナイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、及び本発明で用いたフェライト系ステンレス鋼の耐食性の違いを説明する図
本発明者等は、冷媒配管の軽量化と低コスト化を図るために種々検討を重ねた。
現状のりん脱酸銅製の冷媒配管は、他の配管とのろう付けによって加熱されて焼きなまされるため0.2%耐力が低下し、それによって冷媒ガスの圧力に抗する耐圧性能が低下することが問題である。そのため、焼きなまされてもりん脱酸銅より0.2%耐力が高い鉄系材料のうち、比較的安価で、価格が安定しているフェライト系ステンレス鋼で検討した。
しかし、屋外環境下においては、一般的にオーステナイト系ステンレス鋼は使用されているものの、フェライト系ステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼よりも耐食性は劣っている。そのため、本発明者らはCuとNbを添加して耐食性を向上させたフェライト系ステンレス鋼に着目した。
フェライト系ステンレス鋼の0.2%耐力は、焼きなまし状態でも370N/mm程度であり、りん脱酸銅の約60N/mmよりかなり高いため耐圧性能としては十分な能力を有している。
また、フェライト系ステンレス鋼の耐食性は、図1に示すように、代表的なSUS430とSUS304での塩水噴霧試験(JIS Z 2371)における比較において、SUS430は耐食性がSUS304より劣るものの、CuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼はSUS304と同等の耐食性を有することが判明した。
なお、図1のレイティングナンバとは、JIS Z 2371附属書1に記載のレイティングナンバ法に基づいて評価した塩水噴霧試験結果の判定である。
この予備試験で用いたSUS430、SUS304及びCuとNbを各々0.2%以上添加したフェライト系ステンレス鋼(本発明資材)の成分組成は表1に示す通りである。
Figure 2011202838
さらに、屋外環境での耐食性評価として表2に示す塩水噴霧試験(JIS Z 2371)と亜硫酸ガス腐食試験を基にした複合試験を2サイクル実施した場合において、表3に示すようにCuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼はSUS304と同等の耐食性し、屋外環境における耐食性の課題を解決した。
Figure 2011202838
Figure 2011202838
これらの耐食性向上に対するCuの作用はアノード電流を低下させて不働態皮膜を安定化させる効果であり、Nbの作用はNbCを形成することによって粒界へのCr炭化物の析出を抑制してCr欠乏を抑える効果である。CuとNbの各々の添加量の上限は、何れも0.8質量%とすることが望ましい。Cuの場合は添加量が多くなりすぎると逆に耐食性が低下してしまうためであり、Nbの場合は添加量が多すぎると溶接時の耐高温割れ性が低下してしまうためである。
以上に示した効果により、CuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼の使用で、りん脱酸銅を素材とした場合よりも軽量化を実現でき、耐圧性や耐食性の品質も確保した冷媒配管を実現することができる。
なお、基本となるフェライト系ステンレス鋼としては、質量%で、C:0.08%以下、Si:1.0%以下、Mn:0.3%以下、S:0.003%以下、Cr:10〜20%、N:0.05%以下、Nb:0.2〜0.8%、Cu:0.2〜0.8%を含有するものが好ましく、必要に応じてさらに、Ni:0.2〜0.8%、Mo:0.2〜0.8%、Ti:0.05〜0.2%の1種以上を含有するものが好ましい。
さらに、Mg、Ca、B、REM(希土類元素)等の元素を含むものであっても良い。
C、Nは、耐食性の面からはSUS430やSUS434に含まれる程度でよいが、強度の成形加工や溶接加工が施される場合において、加工性、耐食性ならびに耐粒界腐食性、あるいは靭性の面からC、Nは低ければ低いほど好ましい。一方、C、Nを低めることは精錬時間の延長を来たし製造コストの上昇を招く。これは、C、Nを固定する作用を有するNbを適量添加することである程度の含有は許容される。このため、Cは0.08質量%以下、Nは0.05質量%以下とするが、加工性や溶接部、ろう付け部の耐食性あるいは靭性が要求される場合には、Cは0.03質量%以下、Nは0.02質量%以下にするのが好ましい。
Siは、脱酸作用を有しており、後述するように同様の作用を有するMnを耐食性の面から減少させるので多い方が望ましい。しかし、多すぎると鋼を硬化させ加工性を損ない、また溶接時の高温割れや溶接部靭性に対しても有害であるので上限を1.0質量%とする。
Mnは、硫化物形成能が強く、鋼中のSと結合し水溶液中で不安定で発錆の起点となりやすいMnSを形成し、耐食性を劣化させるので低いほうが望ましい。Mnが低くなるに従って孔食電位は貴となり、耐食性が改善される。有意な耐食性を得るためにはMnを0.3質量%以下にする必要がある。
Sは、上述のようにMnと結合し耐食性に有害であり、低い方が望ましい。有意な耐食性を得るためには、Sは0.003質量%以下にする必要がある。特に過酷な条件下で使用される場合には0.002質量%以下にするのが好ましい。
Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり、不動態効果を得るには少なくとも10質量%のCrを必要とする。Crの増加は鋼の脆化を招き加工時の割れや肌荒れを生じやすくなり、かつ軟質性が損なわれる。またCrの増加により製造が困難となり製造コストの上昇を招く。これらの理由から20質量%を上限とする。
Nbは、鋼中のC、Nを固定する元素として知られており、通常加工性および溶接部の諸特性を改善するのに添加されているが、これらの効果の他にNbC形成による粒界へのCr炭化物の析出抑制により耐食性改善効果を有する。Nbの下限は、粒界腐食を防止するためC、Nの固定に必要な量から0.2質量%とする。一方Nbはその含有量が高くなり過ぎると、溶接やろう付け時の耐高温割れ性が低下し、靭性を損なうので0.8質量%を上限とする。
Cuは、アノード電流を低下させることによる不働態皮膜の安定化により耐食性改善効果を有する。安定した耐食性改善効果を得るために下限は0.2質量%とする。過剰の添加は、加工性を低下させると共に耐食性も低下させるため0.8質量%を上限とする。
Niは、耐食性に対しては腐食の進行を抑制する効果がある。またNiはフェライト系ステンレス鋼材の靭性改善にも有効である。このため、本発明では必要に応じてNiを含有させることができる。上記の作用を十分に発揮させるためには0.2質量%のNi含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のNi含有は鋼材の加工性を低下させる要因になるので、Niを添加する場合は0.8質量%以下の含有量範囲で行う。
Moは、一般的にはCrの存在下でステンレス鋼の耐食性を高める作用がよく知られている。このため、本発明では必要に応じてMoを添加することができる。種々検討の結果、Moによるステンレス鋼の耐食性を高める作用を十分に発揮させるためには0.2質量%のMo含有量を確保することがより効果的である。しかし過剰のMo添加は加工性低下やコスト増を招くので、Moを添加する場合は0.8質量%未満の範囲で行う。
TiはC、Nを固定し、粒界腐食を抑制するのに有効な元素である。また、固溶Tiは耐食性向上に寄与するとともに、化学的に安定な硫化物を生成し耐孔食性を改善する。このため、本発明では必要に応じてTiを添加することができる。上記作用を十分に発揮させるには0.05質量%のTi含有量を確保することがより効果的である。ただし、多量のTi含有は鋼材の表面品質低下や溶接性低下を招く。Tiを添加する場合は0.2質量%以下の範囲で行う。
その他、ステンレス鋼にはMg、Ca、B、REM(希土類元素)等の元素が混入する場合がある。これらはスクラップ等の副原料などから不可避的に混入したものであるが、耐食性が損なわれない許容量として、これらの元素の合計含有量は0.01質量%とすることが好ましい。
上記のように、Cu,Nb含有量等が調整されたフェライト系ステンレス鋼を、通常と同じ態様で溶製し、通常の鋳造、熱延、焼鈍、冷延、仕上げ焼鈍を行って所定厚の冷延焼鈍板を得た後、通常の造管方法で所望のパイプ寸法にし、所定の長さに裁断すれば本発明の冷媒配管が得られる。
供試材として、板厚が0.4mmと0.6mmのCuを0.44質量%、Nbを0.39質量%添加した上記表1中の本発明資材なる成分組成を有するフェライト系ステンレス鋼板を素材とし、TIG溶接で接合した直径φ22.2mmの溶接鋼管を冷媒配管として用いた。
このステンレス鋼製冷媒配管に対して水圧20MPaをこの鋼管の内側に与えて耐圧性能を評価した。ステンレス鋼製冷媒配管の両管端は同じ材質の栓をTIG溶接で封止し、これにより他の配管を接合した状態を再現した。この溶接によりステンレス鋼製冷媒配管には、1,500℃以上の加熱が行われたことになる。
また、比較として板厚1.4mmのりん脱酸銅を用いた同じ形状・寸法の冷媒配管も耐圧評価を実施した。りん脱酸銅製冷媒配管に対する封止は、同じ素材の栓をりん銅ろうでろう付けした。
耐圧評価の結果、表4に示すように、Cuを0.44質量%、Nbを0.39質量%添加したフェライト系ステンレス鋼の場合は板厚0.6mmで、りん脱酸銅の場合は板厚1.4mmで変形は発生せず、これにより約14%の軽量化が可能となった。
Figure 2011202838

Claims (1)

  1. 溶接やろう付けによって他の部品と接合される熱交換器用の冷媒配管であって、CuとNbを各々0.2質量%以上添加したフェライト系ステンレス鋼を素材として形作られていることを特徴とする熱交換器用ステンレス鋼製冷媒配管。
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