JP2018114246A - 肌状態評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】肌に関する波形情報を用いて被験者の肌状態を定量的に相対評価することを可能とする技術を提供する。【解決手段】肌状態評価方法は、被験者の肌に関する肌波形情報を取得する工程(S11)と、前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出工程(S13)と、前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づいて、前記被験者の肌状態を該比較対象肌との間で相対的に評価する評価工程(S15)とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、肌状態を評価する技術に関して、特に、肌に関する波形情報を分析する技術に関する。
人体に関する情報を得るために人体から測定される波形情報を分析する様々な手法が存在している。例えば、心電波形や脳波などの生体信号を分析して、心臓疾患や脳疾患の検出、或いは眠気や睡眠状態の推定などを行う手法がある。
特許文献1には、サンプル毛髪を挟んでセンサ装置を移動させることで得られたデータを分析して、そのパワースペクトル密度の面積をそのサンプル毛髪の手触り感に対応する評価パラメータとして求める手法が提案されている。
特許文献2には、毛髪表面特性センサから得られる摺動信号からスティックスリップによる振動を検出し、その振動に基づいて毛髪の表面特性を評価する手法が提案されている。
非特許文献1では、医師の触診を模するために高分子圧電体を用いて皮膚の粗さや硬さを測定する試みが報告され、圧電体の出力波形を周波数空間で評価している。
非特許文献2では、心電図RR間隔のローレンツプロットから得られる値が副交感神経活動の新しい評価指標として用いることができることが報告されている。
特開2007−252657号公報 特開2011−99870号公報
田中 真美(他5名)"皮膚性状計測用センサの開発研究" 日本機械学会論文集(C編)69巻685号,p.157−p.164 豊福 史(他2名),"心電図RR間隔のローレンツプロットによる副交感神経活動の簡易推定法の開発",人間工学 Vol.43、No.4(2007),p.185−p.192
上記非特許文献1は、専門家である医師の触診に代えること、すなわち、客観的な指標の確立を目指している。
一方で、肌の状態は年齢や性別などによって異なるため、理解のし易さなどの観点から、他人の肌との相対評価が好まれる場合があり得る。例えば、憧れの人の肌と自分の肌との比較により自分の肌を相対的に評価したい場合があり得る。
しかしながら、現状、肌に関する波形情報を用いて肌の相対評価を定量的に行う手法については存在しない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、肌に関する波形情報を用いて被験者の肌状態を定量的に相対評価することを可能とする技術を提供する。
本発明の各態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
第一の態様は、肌状態評価方法に関する。第一の態様に係る肌状態評価方法は、被験者の肌に関する肌波形情報を取得する工程と、前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出工程と、前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づいて、前記被験者の肌状態を該比較対象肌との間で相対的に評価する評価工程とを含む。
第二の態様は、肌状態評価装置に関する。第二の態様に係る肌状態評価装置は、被験者の肌に関する肌波形情報を取得する取得手段と、前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出手段と、前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づく前記被験者の肌の該比較対象肌との相対評価情報を出力する出力処理手段と、を備える。
なお、本発明の別態様としては、上記第一態様に係る肌状態評価方法をコンピュータに実行させるプログラム、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体があり得る。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
上記各態様によれば、肌に関する波形情報を用いて被験者の肌状態を定量的に相対評価することを可能とする技術を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第一実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第一実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。 直線波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。 三角波形及び三角波の変形波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。 工程(S24)における類似度の算出例を概念的に示す図である。 第二実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第二実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。 工程(S35)における類似度の算出例を概念的に示す図である。 2種の特徴量を座標軸とする比較グラフの例を示す図である。 それぞれ異なる各所定時間Δtを用いたローレンツプロットの例を示す図である。 それぞれ異なる周波数帯を選択したウェーブレット変換適用後の変換空間波形データの例を示す図である。 肌状態評価装置のハードウェア構成例を概念的に示す図である。 肌状態評価装置の処理構成例を概念的に示す図である。 ウェーブレット変換後の振動波形データから得られた3種の特徴量を示す図である。 被験者の肌と比較対象肌との類似性と特徴量間の類似度との関係を示す図である。 皮膚外用剤適用前後の肌表面の凹凸形状に関する空間波形情報から算出された5種の特徴量を示す図である。 被験者の肌と比較対象肌との類似性と特徴量間の類似度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
まず、本発明の実施の形態に係る肌状態評価方法の概要について図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る肌状態評価方法は、少なくとも、図1に示されるように工程(S11)、工程(S13)、及び工程(S15)を含む。
工程(S11)は、被験者の肌に関する肌波形情報を取得する工程である。
ここで「被験者の肌」とは、被験者の任意の部位の肌の任意の領域である。
ここで「肌波形情報」とは、肌に関する測定を行った結果得られた、測定値又は測定値に対する演算により得られる値の時間変化或いは空間変化を表す波形(肌波形)を構成するデータ列を意味し、肌波形を示す時系列データと表記することもできる。
「時間波形」とは、肌に関する物理量の時間変化を示す波形を意味する。その物理量の時間変化としては、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出される変位や摩擦抵抗力などの圧力の時間変化、そのような検出された値の時間変動から周波数解析などの演算により得られる値(パワー値など)の時間変化などがあり得る。
「空間波形」とは、肌の凹凸形状に関する空間変化を示す波形を意味する。その空間変化としては、肌表面の高さの空間変化、肌表面の高さの空間変動から周波数解析などの演算により得られる値(パワー値など)の空間変化などがあり得る。
工程(S11)では、後述の肌状態評価装置のようなコンピュータが、圧電素子、加速度センサ、表面摩擦試験器、レーザ顕微鏡などのような肌に関する物理量を検出する検出部から得た検出値(いわゆる生(ロウ)データ)の時系列データとして当該肌波形情報を受信することができる。
また、当該コンピュータが、受信された検出値の時系列データに対してウェーブレット変換といった時間情報を残す周波数解析を適用することにより、周波数解析後の波形データを当該肌波形情報として取得することもできる。その周波数解析としては、フーリエ変換により元波形から特定の周波数成分のみを抽出した後に時間波形に戻す演算が用いられてよく、この場合には、当該コンピュータは、生データが時系列に並んだものではなく、特定の周波数成分からなる時間波形の情報を当該肌波形情報として取得することになる。
また、当該コンピュータは、他のコンピュータからそのような生データの時系列データあるいは周波数解析後の波形データを受信してもよい。更には、当該コンピュータは、当該生データの時系列データあるいは周波数解析後の波形データを可搬型記録媒体から読み出してもよい。
工程(S13)は、工程(S11)で取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出工程である。
算出される複数種の特徴量は、肌波形情報で示される対象肌波形における時間変動の特徴を示す二以上の特徴種の値の集合、又は、当該対象肌波形における空間変動の特徴を示す二以上の特徴種の値の集合である。このような複数種の特徴量の具体例については、後述する。但し、工程(S13)で算出される特徴量の具体的な内容は、後述の例に限定されない。
工程(S15)は、被験者の肌に関して工程(S13)で算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づいて、被験者の肌状態をその比較対象肌との間で相対的に評価する評価工程である。
比較対象肌は、被験者自身の肌であっても、他人の肌であってもよい。例えば、比較対象肌は、或る美容施術又は化粧料を施す前の被験者自身の肌である。この例によれば、美容施術又は化粧料を施す前後での被験者の肌を相対的に評価することができる。他の例として、被験者自身の或る年齢時の肌が比較対象肌とされてもよい。この例によれば、その年齢時から今までの被験者の肌の変化を相対評価することができる。他の例として、被験者自身の他の部位の肌が比較対象肌とされてもよい。この例によれば、被験者自身の肌を部位間で相対的に評価することができる。更に他の例として、理想とされる肌或いは被験者が憧れる人の肌が比較対象肌とされてもよい。また、肌波形情報に対応する被験者及び比較対象者の肌の部位は同一部位であってもよいし、異なる部位であってもよい。
比較対象肌に関する複数種の特徴量は、被験者の肌に関する肌波形情報に対する工程(S11)及び工程(S13)の実行と同期して(並列又はその前後にて)、比較対象肌に関する肌波形情報に対する工程(S11)及び工程(S13)の実行により算出されてもよいし、被験者の肌に関する特徴量とは別時期に別途算出されてもよい。更に言えば、比較対象肌に関する複数種の特徴量は、被験者の肌に関するそれとは異なる方法で予め取得され、保持されていてもよい。工程(S15)において、コンピュータが、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体などから比較対象肌に関する複数種の特徴量を取得してもよいし、当該特徴量をユーザに入力させてもよい。
このような特徴量に基づく工程(S15)での被験者の肌の相対評価は、次のように、様々な手法で実現可能である。
例えば、工程(S15)では、被験者の肌に関する複数種の特徴量と比較対象肌に関する複数種の特徴量との類似度を算出し、その算出された類似度を提示してもよい。
この類似度は、複数種の特徴量間のユークリッド距離として算出されてもよいし、それぞれの特徴量を成分とするベクトル間の角度として算出されてもよい。後者の場合、被験者の肌に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルと比較対象肌に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルとの内積演算を行い求められるcosθの値を類似度として算出することができる。
類似度の提示は、ディスプレイのような表示装置への表示で実現されてもよいし、プリンタへの印刷で実現されてもよいし、音声出力で実現されてもよい。
この例では、コンピュータが、類似度の算出及び提示を行い、その類似度を参照した者(被験者や評価者など)が、その類似度を以て被験者の肌を評価してもよい。また、コンピュータが、類似度の提示と共に、その類似度に対応する評価結果(「似ています」、「あまり似ていません」など)を提示することもできる。
他の例として、工程(S15)では、各特徴種を座標軸とする座標系に被験者の肌に関する複数種の特徴量及び比較対象肌に関する複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを提示することもできる。この場合、コンピュータがその比較グラフを生成し、表示装置やプリンタなどにその比較グラフを出力し、その比較グラフを参照した者(被験者や評価者など)が、そのグラフ内の被験者の肌を示す点と比較対象肌を示す点との位置関係から被験者の肌を評価してもよい。また、コンピュータが、比較グラフの提示と共に、比較グラフ内の点の位置関係に対応する評価結果を提示することもできる。
なお、比較グラフの具体例について後述する。
概要として説明したように、本実施形態では、被験者の肌に関する肌波形情報から対象肌波形の複数種の特徴量が算出され、被験者の肌に関する複数種の特徴量と比較対象肌に関する複数種の特徴量とに基づいて、被験者の肌が比較対象肌との間で相対的に評価される。
このように、本発明の実施の形態によれば、肌波形に関する複数種の特徴量を用いて、被験者の肌状態を比較対象肌との間で定量的に相対評価することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る肌状態評価方法についてより具体的に説明する。
[第一実施形態]
第一実施形態に係る肌状態評価方法は、上述の肌波形情報として肌の触感に関わる時間波形情報を用いて、被験者の肌状態を相対評価する。以下、第一実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図2は、第一実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図2に示されるように、工程(S21)から工程(S26)を含む。工程(S21)は、図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S22)から工程(S24)は、工程(S13)に対応し、工程(S25)及び工程(S26)は、工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S21)は、被験者の肌に関する時間波形情報を取得する工程である。
取得される時間波形情報は、上述したとおり肌の触感に関わる情報であり、検出部を被験者の肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量又はこの検出された物理量から演算により得られる物理量の時間変化(時間変動)を示す情報である。
例えば、測定者の指に検出部としての振動センサを装着し、その状態でその指を被験者の肌に接触させ摺動させることにより、その振動センサにより振動の振幅の時間変化を示す振動波形データ(振動の時系列データ)を得ることができる。また、検出部としての圧電素子又は表面摩擦試験器を直接的に被験者の肌に接触させ摺動させることにより、それら検出部により摩擦抵抗力などの圧力の時間変化を示す圧力波形データ(圧力の時系列データ)を得ることができる。
このようにして得られる波形データは、肌の触感に関与している。工程(S21)では、この波形データを時間波形情報として取得してもよい。以降、このように検出部で検出された物理量の時間変化を示す波形データをベース波形データと表記する場合もある。
このように、測定者の指に振動センサなどの検出部を装着して波形データを取得すると、人が触れることで感じる肌状態を検出することとなるので、相対評価において求められる肌状態評価により近づくので好ましい。
また、工程(S21)では、このように検出部で検出されたベース波形データから周波数解析などの演算により得られる物理量の時間変化を示す波形データを時間波形情報として取得してもよい。以降、ベース波形データに対して何らかの演算を行い得られる物理量の時間変化を示す波形データを変換波形データと表記する場合もある。
例えば、ベース波形データに対してウェーブレット変換といった時間情報を残す周波数解析を適用することにより、特定周波数成分の混合強度(パワー)の時間変化を示す変換波形データを得ることができる。また、ベース波形データに対してフーリエ変換を適用することで特定周波数成分に限定した変換波形データを得ることもできる。
工程(S21)では、後述の肌状態評価装置のようなコンピュータが上述の検出部からベース波形データを受信し、このベース波形データを当該時間波形情報としてもよい。当該コンピュータは、検出部からではなく、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体からベース波形データを取得することもできる。
また、工程(S21)において、コンピュータが、上述のように取得されたベース波形データに対して周波数解析などの演算を適用し、演算の結果得られる変換波形データを当該時間波形情報としてもよい。更に言えば、当該コンピュータは、他のコンピュータの演算により得られた変換波形データを当該他のコンピュータ又は可搬型記録媒体から取得してもよい。
工程(S22)は、工程(S21)で取得された時間波形情報を、対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換する工程である。
即ち、ここでの直交座標系は、時間波形情報により示される対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアの一方を横軸(x軸)、他方を縦軸(y軸)にした直交平面座標系となる。このように時間波形情報を直交座標系の座標点群に変換することをローレンツプロットと表記する場合もある。
工程(S23)は、工程(S22)で得られた直交座標系の座標点群を、当該直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に変換する工程である。
図3は、第一実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。
図3で示される振動パワー波形データは、ベース波形データである振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られる変換波形データである。この変換波形データが時間波形情報として取得され、この変換波形データがローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換される。ローレンツプロットでは、変換波形データの振幅値(パワー値)が横軸(x軸)に、所定時間Δtシフトされたシフト波形データの振幅値(パワー値)が縦軸(y軸)に取られる。つまり、当該直交座標系の一座標点のy軸要素である振幅値は、変換波形データにおいて、同座標点のx軸要素である振幅値から所定時間Δt後に現れる値である。
座標変換では、当該直交座標系の座標点群が「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影された座標に変換される。図3では、「y=x」軸が変換後の座標系においてX'軸と表記され、「y=−x」軸が変換後の座標系においてY'軸と表記されている。
工程(S24)は、工程(S23)で得られた変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を被験者の肌に関する複数種の特徴量として算出する工程である。
例えば、工程(S24)では、当該変換座標点群における、「y=x」軸(図3のX'軸)における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸(図3のY'軸)における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、それら平均値若しくはそれら標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の二つ以上を当該複数種の指標値として算出することができる。
図3では、X'軸における原点からの距離の平均値が黒塗り星マークで示され、その距離の標準偏差がσxで示され、Y'軸における原点からの距離の平均値が白抜き星マークで示され、その距離の標準偏差がσyで示されている。
比率としては、X'軸における平均距離とY'軸における平均距離との比率、又は、X'軸における標準偏差σxとY'軸における標準偏差σyとの比率(σx/σy)が算出され得る。
分布面積は、標準偏差σx及び標準偏差σyを用いて、楕円面積として(π×σx×σy)で算出され得る。
但し、算出される複数種の指標値は、このような例に限定されず、変換座標点群の分布状態を示す他の指標値であってもよい。例えば、距離の分散値又は分散値の比率が指標値として用いられてもよいし、分布面積は、長方形面積として(2σx×2σy)で算出されてもよい。
本発明者らは、このようにローレンツプロットを用いて得られる複数種の指標値が、肌に関する時間波形情報の各種特徴を示していることを見出している。
図4は、直線波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。図4に示されるように、直線波形は、ローレンツプロット及び座標変換により一座標点に変換される。直線波形の振幅を増加させると、座標変換後の座標点はX'軸上を移動する。このことから、X'軸における平均距離は時間波形情報の振幅値の平均情報を示すといえる。
図5は、三角波形及び三角波の変形波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。図5に示されるように、三角波形はローレンツプロット及び座標変換によりX'軸に平行な直線状の複数座標点に変換される。この三角波形の振幅を増加させると、座標変換後の複数座標点の直線状分布はX'軸方向に延びる。このことから、X'軸における標準偏差σxは時間波形情報の振幅の幅を示すといえる。
また、三角波形に周期の乱れを含めると、座標変換後の複数座標点の分布がY'軸方向に延びる。更に、三角波形を不均一化すると、座標変換後の複数座標点の分布が散らばる。このことから、Y'軸における平均距離は時間波形情報の周期の乱れの平均情報を示し、Y'軸における標準偏差σyは時間波形情報の周期の乱れの大きさを示すといえる。
更に、分布面積は、標準偏差σx及びσyを用いるため、時間波形情報の振幅の幅及び周期の乱れの大きさを示すといえ、標準偏差の比率(σx/σy)は、時間波形情報の振幅の幅と周期の乱れの大きさとの比率を示すといえる。
なお、図5で示されるローレンツプロットでは所定時間Δtが1周期に設定されている。
これらにより、ローレンツプロットを用いて得られる複数種の指標値が、肌に関する時間波形情報の複数種の特徴量になり得ることが理論的に実証される。更に、本発明者らにより、これら指標値により人の肌の状態を定量評価できることは実証されている(実施例の項参照)。
工程(S25)は、被験者の肌に関して工程(S24)で算出された複数種の特徴量と比較対象肌に関する複数種の特徴量との類似度を算出する工程である。この類似度の算出手法については上述したとおりである。
図6は、工程(S24)における類似度の算出例を概念的に示す図である。図6の例では、被験者の肌(被験肌)に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルAと比較対象肌に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルBとの内積演算を行い求められるcosθの値が類似度として算出されている。特徴ベクトルA及びBの各成分数は、特徴量として採用する上述の指標値の数となる。cosθの値は、例えば、特徴ベクトルAと特徴ベクトルBとの内積値(A・B)を特徴ベクトルAの長さ(|A|)と特徴ベクトルBの長さ(|B|)との積で除算することで算出可能である。
比較対象肌に関する複数種の特徴量は、被験者の肌に関する時間波形情報に対する工程(S21)から工程(S24)の実行と同期して(並列又はその前後にて)、比較対象肌に関する時間波形情報に対する工程(S21)から工程(S24)の実行により算出されてもよいし、被験者の肌に関する特徴量とは別時期に別途算出されてもよい。更に言えば、比較対象肌に関する複数種の特徴量は、被験者の肌に関するそれとは異なる方法で予め取得され、保持されていてもよい。工程(S25)において、コンピュータが、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体などから比較対象肌に関する複数種の特徴量を取得してもよいし、当該特徴量をユーザに入力させてもよい。
工程(S26)は、工程(S25)で算出された類似度を提示する工程である。類似度の提示手法についても上述したとおりである。
第一実施形態では、被験者自ら又は評価者が、工程(S26)で提示された類似度を参照して、被験者の肌状態を比較対象肌との間で相対的に評価する。例えば、提示された類似度が高い程、被験者の肌状態は比較対象肌の状態により近いと評価でき、提示された類似度が低い程、被験者の肌状態は比較対象肌の状態からより乖離していると評価できる。
工程(S26)では、類似度と共に、肌状態が近いと評価するための閾値と肌状態が遠い(異なる)と評価するための閾値とを提示することもできるし、このような閾値は、予め印刷媒体などに出力されていてもよい。
ところで、被験者の肌状態と比較対象肌の状態との類似度合又は乖離(相違)度合が、肌に関する時間波形情報から得られる複数種の特徴量間の類似度により定量的に評価できることは、本発明者らにより実証されている(実施例の項参照)。
このように第一実施形態では、肌の触感に関わる時間波形情報がローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換され、更に座標変換により変換座標点群に変換される。そして、この変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値が当該時間波形情報の特徴を示す複数種の特徴量として用いられ、これら複数種の特徴量間の類似度が、被験者の肌と比較対象肌との類似度合又は乖離度合を示す定量情報として算出及び提示される。
当該複数種の特徴量は肌の触感に関わる肌状態を示すと考えることができるため、第一実施形態によれば、被験者の触感に関わる肌状態を比較対象肌との間で相対的に定量評価することができる。
[第二実施形態]
第二実施形態に係る肌状態評価方法は、上述の肌波形情報として肌の凹凸形状に関わる空間波形情報を用いて、被験者の肌状態を相対評価する。以下、第二実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図7は、第二実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図7に示されるように、工程(S31)から工程(S36)を含む。工程(S31)は、図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S32)から工程(S34)は、工程(S13)に対応し、工程(S35)及び工程(S36)は、工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S31)は、被験者の肌の凹凸形状に関する空間波形情報を取得する工程である。
人の肌の表面には、皮溝、皮丘、毛孔、汗孔、シワ(浅い・深い)などスケールの異なる複数の凹凸構造が混在している。工程(S31)で取得される空間波形情報は、このような肌表面の凹凸形状に関する空間変化を示す波形情報である。
この空間波形情報は、被験者の肌表面の凹凸形状をレプリカに転写しそのレプリカの表面をレーザ顕微鏡などの検出部を走査させて得られる空間波形データである。このような空間波形データは、被験者の肌表面にレーザ光を照射するなどの他の手法によっても測定可能である。この空間波形データは、高さの位置変化を示すデータであるということもできる。
工程(S31)で取得される空間波形情報は、このように何らかの検出部で検出される空間波形データに対して何らかの演算を行い得られる変換空間波形データであってもよい。例えば、空間波形データに対してウェーブレット変換といった時間情報を残す周波数解析を適用することにより、特定周波数成分の混合強度(パワー)の空間変化を示す変換空間波形データを得ることができる。また、空間波形データに対してフーリエ変換を適用することで特定周波数成分に限定した変換空間波形データを得ることもできる。
工程(S31)では、後述の肌状態評価装置のようなコンピュータが上述の検出部から空間波形データを受信し、この空間波形データを当該空間波形情報としてもよい。当該コンピュータは、検出部からではなく、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体から空間波形データを取得することもできる。
また、工程(S31)において、コンピュータが、上述のように取得された空間波形データに対して周波数解析などの演算を適用し、演算の結果得られる変換空間波形データを当該空間波形情報としてもよい。更に言えば、当該コンピュータは、他のコンピュータの演算により得られた変換空間波形データを当該他のコンピュータ又は可搬型記録媒体から取得してもよい。
工程(S32)は、工程(S31)で取得された空間波形情報を、対象空間波形における空間軸上で所定距離離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換する工程である。
第二実施形態における直交座標系は、空間波形情報により示される対象空間波形における空間軸上で所定距離離れた振幅値ペアの一方を横軸(x軸)、他方を縦軸(y軸)にした直交平面座標系となる。第二実施形態で表記するローレンツプロットとは、このように空間波形情報を当該直交座標系の座標点群に変換することを意味する。
工程(S33)は、図2に示される工程(S23)と同様であり、工程(S32)で得られた直交座標系の座標点群を変換座標点群に変換する工程である。
図8は、第二実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。
図8で示される凹凸パワー波形データは、空間波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られる変換空間波形データである。この変換空間波形データ空間波形情報として取得され、この変換空間波形データがローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換される。ローレンツプロットでは、変換空間波形データの振幅値(パワー値)が横軸(x軸)に、所定距離Δxシフトされたシフト波形データの振幅値(パワー値)が縦軸(y軸)に取られる。つまり、当該直交座標系の一座標点のy軸要素である振幅値は、変換空間波形データにおいて、同座標点のx軸要素である振幅値から所定距離Δx離れた位置に現れる値である。
座標変換については、図3に示されるものと同様である。
工程(S34)は、工程(S33)で得られた変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を被験者の肌に関する複数種の特徴量として算出する工程であり、図2で示される工程(S24)と同様である。
本発明者らは、このようにローレンツプロットを用いて得られる複数種の指標値が、肌表面の凹凸形状に関する空間波形情報の各種特徴を示していることについても見出している。具体的には、X'軸における平均距離が空間波形情報の高さ(振幅値)の平均情報を示し、X'軸における標準偏差σxが空間波形情報の高さの幅を示す。また、Y'軸における平均距離が空間波形情報の周期の乱れの平均情報を示し、Y'軸における標準偏差σyが空間波形情報の周期の乱れの大きさを示す。
更に、分布面積は、標準偏差σx及びσyを用いるため、空間波形情報の振幅の幅及び周期の乱れの大きさを示すといえ、標準偏差の比率(σx/σy)は、空間波形情報の振幅の幅と周期の乱れの大きさとの比率を示す。
これら指標値により人の肌の状態を定量評価できることは実証されている(実施例の項参照)。
工程(S35)は、図2に示される工程(S25)と同様である。
図9は、工程(S35)における類似度の算出例を概念的に示す図である。図9においても図6と同様に、被験者の肌(被験肌)に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルAと比較対象肌に関する複数種の特徴量を成分とする特徴ベクトルBとの内積演算を行い求められるcosθの値が類似度として算出されている。
比較対象肌に関する複数種の特徴量の取得手法についても第一実施形態と同様である。
工程(S36)は、図2に示される工程(S26)と同様である。
このように第二実施形態では、肌表面の凹凸形状に関わる空間波形情報がローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換され、更に座標変換により変換座標点群に変換される。そして、この変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値が当該空間波形情報の特徴を示す複数種の特徴量として用いられ、これら複数種の特徴量間の類似度が、被験者の肌と比較対象肌との類似度合又は乖離度合を示す定量情報として算出及び提示される。
当該複数種の特徴量は肌表面の凹凸形状に関わる肌状態を示すと考えることができるため、第二実施形態によれば、被験者の肌表面の凹凸形状に関わる肌状態を比較対象肌との間で相対的に定量評価することができる。
[変形例]
上述の第一及び第二実施形態では、被験者の肌と比較対象肌との特徴量間の類似度が提示され、この類似度を用いて被験者の肌状態の相対評価が行われたが、図1の工程(S15)に関して説明したとおり、特徴量に基づく被験者の肌の相対評価の手法は、そのような手法に制限されない。
例えば、上述の各実施形態に係る肌状態評価方法は、工程(S25)及び工程(S35)における類似度の算出、並びに工程(S26)及び工程(S36)における類似度の提示を実行することなく、図10に示されるような比較グラフを提示してもよい。即ち、当該肌状態評価方法は、各特徴種を座標軸とする座標系に、被験者の肌に関する複数種の特徴量及び比較対象肌に関する複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを提示してもよい。
図10は、二種の特徴量を座標軸とする比較グラフの例を示す図である。図10に示される比較グラフでは、肌に関する時間波形情報の二種の特徴量がそれぞれ座標軸とされている。即ち、Y'軸の平均距離が横軸(x軸)とされ、Y'軸の標準偏差σyが縦軸(y軸)とされている。時間波形に関するY'軸の平均距離は周期の乱れの平均情報を示し、Y'軸の標準偏差は周期の乱れの大きさを示す。そのため、図10の比較グラフによれば、被験者の肌(被験肌)の状態は、周期の乱れ、即ち触感に関して、比較対象肌の状態と大きく乖離していると評価することができる。
上述の第一及び第二実施形態において、それぞれ異なる複数の所定時間又は複数の所定距離を用いてローレンツプロットをそれぞれ行い、所定時間ごと又は所定距離ごとに上述の複数種の指標値を当該複数種の特徴量としてそれぞれ算出するようにしてもよい(工程(S22)から工程(S24)及び工程(S32)から工程(S34))。
ローレンツプロットに用いる当該所定時間及び当該所定距離は、シフト時間及びシフト距離であり、抽出したい周波数成分に対応する適切な値に設定されることが望ましい。例えば、細かな時間変化又は空間変化を抽出したい場合には、所定時間Δt及び所定距離Δxは、大まかな時間変化又は空間変化を抽出したい場合に比べて、小さい値に設定すればよい。
図11は、それぞれ異なる各所定時間Δtを用いたローレンツプロットの例を示す図である。図11に示されるように、各所定時間Δtを用いたローレンツプロットにより得られる座標点群はそれぞれ異なる分布を示している。即ち、所定時間Δtを変えることで、肌に関する時間波形において異なる成分の特徴を抽出できることが分かる。
この場合、被験者の肌に関する複数種の特徴量及び比較対象肌に関する複数種の特徴量を、所定時間ごと又は所定距離ごとに比較することにより、被験者の肌状態を比較対象肌との間で相対的に評価することができる。例えば、上述の比較グラフが所定時間ごと又は所定距離ごとにそれぞれ提示されてもよい。また、被験者の肌と比較対象肌との特徴量間の類似度が所定時間ごと又は所定距離ごとに算出及び提示されてもよい。
このようにすれば、小さい変化や大きい変化など着目すべき周波数成分に特化して、被験者の肌と比較対象肌との相対評価を行うことができる。
このような着目すべき周波数成分に特化した評価を行うためには、処理対象とする時間波形情報又は空間波形情報を特定の周波数成分に制限した波形情報としてもよい。
図12は、それぞれ異なる周波数帯を選択したウェーブレット変換適用後の変換空間波形データの例を示す図である。図12に示されるように、それぞれ異なる4つの周波数帯が選択された各変換空間波形データからローレンツプロットにより変換された座標点群はそれぞれ異なる分布を示している。即ち、着目すべき周波数成分を選択した空間波形情報を用いることで、肌に関する空間波形において異なる成分の特徴を抽出できることが分かる。
また、上述の第一実施形態では、肌の触感に関わる時間波形情報が用いられた。しかしながら、検出部により触感に関わる物理量の検出位置も特定可能であるならば、肌の触感に関わる物理量の空間変化を示す空間波形情報が用いられてもよい。
同様に、第二実施形態では、肌表面の凹凸形状に関わる空間波形情報が用いられたが、検出部で位置の特定ができない場合には、肌表面の凹凸形状の時間変化を示す時間波形情報が用いられてもよい。
[肌状態評価装置]
上述の各実施形態及び変形例に係る肌状態評価方法は、図13及び図14に例示される肌状態評価装置(以降、単に評価装置と略称する場合もある)により実行可能である。
図13は、肌状態評価装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。
評価装置10は、いわゆるコンピュータ(情報処理装置)であり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、入出力インタフェース(I/F)13、通信ユニット14等を有する。評価装置10を形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、これらハードウェア要素は情報処理回路と総称することもできる。また、評価装置10は、図13に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
CPU11は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F13は、出力装置15、入力装置16等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置15は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU11等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置、印刷装置などの少なくとも一つである。入力装置16は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力装置15及び入力装置16は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
通信ユニット14は、他のコンピュータとの通信網を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14には、可搬型記録媒体等も接続され得る。また、通信ユニット14には、肌の触感に関わる物理量を検出可能な上述の検出部又は肌表面の凹凸形状を検出可能な上述の検出部が接続されてもよい。
図14は、肌状態評価装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
評価装置10は、取得部21、算出部22、及び出力処理部23を有する。これら処理モジュールは、ソフトウェア要素であり、例えば、メモリ12に格納される肌状態評価プログラム(コンピュータプログラム)18がCPU11により実行されることにより実現される。このコンピュータプログラム18は、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F13又は通信ユニット14を介してインストールされ、メモリ12に格納されてもよい。
それら各処理モジュールの動作により、評価装置10は、上述の各実施形態及び変形例に係る肌状態評価方法を実行することができる。即ち、評価装置10(CPU11)は、図1に示される各工程、図2に示される各工程、又は図7に示される各工程を順次実行することができる。各工程の処理内容はそれぞれ上述の通りであるが、以下に、各工程の処理内容が適宜補足される。
取得部21は、被験者の肌に関する肌波形情報を取得する。即ち、取得部21は、上述の工程(S11)を実行する。より具体的には、取得部21は、上述の工程(S21)又は及び工程(S31)を実行する。
このとき、取得部21は、肌波形情報、時間波形情報、又は空間波形情報を外部のコンピュータ、機器(検出部など)、可搬型記録媒体などから入出力I/F13又は通信ユニット14を介して取得することができる。
また、取得部21は、検出部により検出された物理量の時間波形データ又は空間波形データを外部から取得し、これら波形データに対して周波数解析などの演算を適用し、変換波形データ又は変換空間波形データを取得してもよい。更に、取得部21は、そのような変換波形データ又は変換空間波形データを外部から取得することもできる。
算出部22は、取得部21で取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する。即ち、算出部22は、上述の工程(S13)を実行する。より具体的には、算出部22は、上述の工程(S22)から工程(S24)、又は上述の工程(S32)から工程(S34)を実行する。
更に、算出部22は、被験者の肌に関する複数種の特徴量と比較対象肌に関する複数種の特徴量との類似度を更に算出してもよい。即ち、算出部22は、上述の工程(S25)又は工程(S35)を実行してもよい。比較対象肌に関する複数種の特徴量のデータは、メモリ12に予め格納されていてもよいし、通信ユニット14を介して外部から通信により取得されてもよい。
また、算出部22は、変形例において述べたように、それぞれ異なる複数の所定時間又は複数の所定距離を用いてローレンツプロットをそれぞれ行い、所定時間ごと又は所定距離ごとに上述の複数種の指標値を当該複数種の特徴量としてそれぞれ算出するようにしてもよい。
出力処理部23は、被験者の肌に関して算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する複数種の特徴量に基づく被験者の肌状態の比較対象肌との相対評価情報を出力する。即ち、出力処理部23は、上述の工程(S15)、工程(S26)、又は工程(S36)を実行する。
この相対評価情報は、被験者の肌状態を比較対象肌との間で相対的に評価した結果を示す情報であってもよいし、そのような評価のために参照される情報であってもよい。
前者の場合、例えば、相対評価情報は、被験者の肌状態が比較対象肌に近いか否か、乖離しているか否かなどを示す。
後者の場合、例えば、出力処理部23は、算出部22により算出された類似度を含む相対評価情報を出力する。また、出力処理部23は、各特徴種を座標軸とする座標系に、被験者の肌に関する複数種の特徴量及び比較対象肌に関する複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを含む相対評価情報を出力することもできる。
また、出力処理部23は、それぞれ異なる所定時間ごと又は所定距離ごとに当該複数種の特徴量が算出されている場合には、所定時間ごと又は所定距離ごとの、被験者の肌に関する複数種の特徴量と比較対象肌に関する複数種の特徴量に基づく相対評価情報を出力してもよい。
出力処理部23は、相対評価情報を出力装置15に出力することができる。また、出力処理部23は、相対評価情報を通信ユニット14を介して外部のコンピュータに出力してもよいし、可搬型記録媒体に書き込んでもよい。出力処理部23による相対評価情報の出力形態は制限されない。
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。以下の実施例の記載は、上述の各実施形態及び変形例に何ら限定を加えるものではない。
第一実施形態で述べた、人の肌に関する時間波形情報からローレンツプロットを用いて算出された複数種の特徴量により人の肌状態の違いが定量的に評価可能であることが、次のように検証された。
図15は、ウェーブレット変換後の振動波形データから得られた3種の特徴量を示す図である。図15には、X'軸及びY'軸の標準偏差及び楕円面積(分布面積)の3種の特徴量が示されており、被験者(サンプル提供者)は、30代及び40代が2名、50代が2名の計4名である。
図15によれば、いずれの特徴量においても、50代と30代及び40代との間で特徴量の差が出ている。
これにより、ウェーブレット変換後の振動波形データから得られた複数種の特徴量においてもそれぞれ年齢の違いに伴う肌状態の違いを表していることが実証されている。
図16は、被験者の肌と比較対象肌との類似性と特徴量間の類似度との関係を示す図である。図16には、被験者の肌に関してローレンツプロットされた2つのグラフG1及びG2と、比較対象肌に関してローレンツプロットされたグラフG3とが示されている。グラフG2は、所定の皮膚外用剤を適用した後の被験者の肌を示している。
皮膚外用剤の適用により被験者の肌の触感は改善されたことが確認された。また、グラフG3で示される比較対象肌は、触感の良い肌である。つまり、被験者の実際の肌状態は、グラフG1で示される状態よりもグラフG2で示される状態のほうが、比較対象肌に近い状態であった。
一方、グラフG1、G2、及びG3で示される各肌に関して、第一実施形態の手法により、X'軸及びY'軸の平均距離、X'軸及びY'軸の標準偏差、並びに楕円面積の5種の特徴量がそれぞれ算出された。そして、各肌の特徴量間の類似度として各特徴ベクトルのなす角度cosθが算出された。
結果、グラフG2とグラフG3との特徴量間の類似度がグラフG1とグラフG3との間の類似度よりも高い値を示した。これは、実際の肌状態の類似性と一致しているため、第一実施形態の手法で算出された複数種の特徴量間の類似度により、実際の肌状態の近さが定量化できることを実証している。
第二実施形態で述べた、人の肌表面の凹凸形状に関する空間波形情報からローレンツプロットを用いて算出された複数種の特徴量により人の肌状態の違いが定量的に評価可能であることが、次のように検証された。
図17は、皮膚外用剤適用前後の肌表面の凹凸形状に関する空間波形情報から算出された5種の特徴量を示す図である。図17には、X'軸及びY'軸の平均距離、X'軸及びY'軸の標準偏差、及び楕円面積(分布面積)の各グラフが示されている。各グラフには、皮膚外用剤適用前の被験者の肌に関する値と皮膚外用剤適用後の被験者の肌に関する値とが示されている。
図17によれば、いずれの特徴量においても、皮膚外用剤適用後の肌に関する特徴量が皮膚外用剤適用前のそれよりも小さくなっている。これは、肌表面の凹凸形状の高さ幅及び周期の乱れが低減していること、即ち、皮膚外用剤により肌表面の凹凸形状がなめらかになりいわゆるキメが整ったことを示しているといえる。
このように、被験者の肌表面の凹凸形状の空間波形データから得られた複数種の特徴量がそれぞれ肌状態を表していることが実証されている。
図18は、被験者の肌と比較対象肌との類似性と特徴量間の類似度との関係を示す図である。図18には、被験者の肌に関してローレンツプロットされた2つのグラフG10及びG11と、比較対象肌に関してローレンツプロットされたグラフG12とが示されている。グラフG11は、皮膚外用剤を適用した後の被験者の肌を示している。
皮膚外用剤の適用により被験者の肌のキメ状態は改善されたことが確認された。また、グラフG12で示される比較対象肌は、キメが細かく整った肌である。つまり、被験者の実際の肌状態は、グラフG10で示される状態よりもグラフG11で示される状態のほうが、比較対象肌に近い状態であった。
一方、グラフG10、G11、及びG12で示される各肌表面の凹凸形状に関して、第二実施形態の手法により、X'軸及びY'軸の平均距離、X'軸及びY'軸の標準偏差、並びに楕円面積の5種の特徴量がそれぞれ算出された。そして、各肌の特徴量間の類似度として各特徴ベクトルのなす角度cosθが算出された。
結果、グラフG11とグラフG12との特徴量間の類似度がグラフG10とグラフG12との間の類似度よりも高い値を示した。これは、実際の肌のキメ状態の類似性と一致しているため、第二実施形態の手法で算出された複数種の特徴量間の類似度により、実際の肌状態の近さが定量化できることを実証している。
上述の内容の一部又は全部は、次のようにも特定され得る。但し、上述の内容が以下の記載に制限されるものではない。
<1> 被験者の肌に関する肌波形情報を取得する工程と、
前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出工程と、
前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づいて、前記被験者の肌状態を該比較対象肌との間で相対的に評価する評価工程と、
を含む肌状態評価方法。
<2> 前記評価工程では、
前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量と前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量との類似度を算出し、
前記算出された類似度を提示する、
<1>に記載の肌状態評価方法。
<3> 前記評価工程では、
各特徴種を座標軸とする座標系に、前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量及び前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを提示する、
<1>又は<2>に記載の肌状態評価方法。
<4> 前記算出工程では、
前記取得された肌波形情報を、前記対象肌波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペア又は空間軸上で所定距離離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出する、
<1>から<3>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<5> 前記算出工程では、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の二つ以上を前記複数種の指標値として算出する、
<4>に記載の肌状態評価方法。
<6> 前記算出工程では、
それぞれ異なる複数の前記所定時間又は前記所定距離を用いて、所定時間ごと又は所定距離ごとに前記複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出し、
前記評価工程では、
前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量及び前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量を、前記所定時間ごと又は前記所定距離ごとに比較することにより、前記被験者の肌状態を前記比較対象肌との間で相対的に評価する、
<4>又は<5>に記載の肌状態評価方法。
<7> 被験者の肌に関する肌波形情報を取得する取得手段と、
前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出手段と、
前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づく前記被験者の肌の該比較対象肌との相対評価情報を出力する出力処理手段と、
を備える肌状態評価装置。
<8> 前記算出手段は、前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量と前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量との類似度を更に算出し、
前記出力処理手段は、前記算出された類似度を含む前記相対評価情報を出力する、
<7>に記載の肌状態評価装置。
<9> 前記出力処理手段は、各特徴種を座標軸とする座標系に、前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量及び前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを含む前記相対評価情報を出力する、
<7>又は<8>に記載の肌状態評価装置。
<10> 前記算出手段は、
前記取得された肌波形情報を、前記対象肌波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペア又は空間軸上で所定距離離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出する、
<7>から<9>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。
<11> 前記算出手段は、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の二つ以上を前記複数種の指標値として算出する、
<10>に記載の肌状態評価装置。
<12> 前記算出手段は、それぞれ異なる複数の前記所定時間又は前記所定距離を用いて、所定時間ごと又は所定距離ごとに前記複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出し、
前記出力処理手段は、前記所定時間ごと又は前記所定距離ごとの、前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量と前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量とに基づく前記相対評価情報を出力する、
<10>又は<11>に記載の肌状態評価装置。
10 肌状態評価装置(評価装置)
11 CPU
12 メモリ
13 入出力I/F
14 通信ユニット
15 出力装置
16 入力装置
18 肌状態評価プログラム
21 取得部
22 算出部
23 出力処理部

Claims (7)

  1. 被験者の肌に関する肌波形情報を取得する工程と、
    前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出工程と、
    前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づいて、前記被験者の肌状態を該比較対象肌との間で相対的に評価する評価工程と、
    を含む肌状態評価方法。
  2. 前記評価工程では、
    前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量と前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量との類似度を算出し、
    前記算出された類似度を提示する、
    請求項1に記載の肌状態評価方法。
  3. 前記評価工程では、
    各特徴種を座標軸とする座標系に、前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量及び前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量に対応する点がプロットされた比較グラフを提示する、
    請求項1又は2に記載の肌状態評価方法。
  4. 前記算出工程では、
    前記取得された肌波形情報を、前記対象肌波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペア又は空間軸上で所定距離離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
    前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
    前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の肌状態評価方法。
  5. 前記算出工程では、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の二つ以上を前記複数種の指標値として算出する、
    請求項4に記載の肌状態評価方法。
  6. 前記算出工程では、
    それぞれ異なる複数の前記所定時間又は前記所定距離を用いて、所定時間ごと又は所定距離ごとに前記複数種の指標値を前記複数種の特徴量として算出し、
    前記評価工程では、
    前記被験者の肌に関する前記複数種の特徴量及び前記比較対象肌に関する前記複数種の特徴量を、前記所定時間ごと又は前記所定距離ごとに比較することにより、前記被験者の肌状態を前記比較対象肌との間で相対的に評価する、
    請求項4又は5に記載の肌状態評価方法。
  7. 被験者の肌に関する肌波形情報を取得する取得手段と、
    前記取得された肌波形情報から、対象肌波形における時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量を算出する算出手段と、
    前記被験者の肌に関して前記算出された複数種の特徴量及び比較対象肌に関する肌波形の時間変動又は空間変動の特徴を示す複数種の特徴量に基づく前記被験者の肌の該比較対象肌との相対評価情報を出力する出力処理手段と、
    を備える肌状態評価装置。
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