JP6829611B2 - 肌状態評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肌状態を評価する技術に関して、特に、肌に関する波形情報を分析する技術に関する。
人体に関する情報を得るために人体から測定される波形情報を分析する様々な手法が存在している。例えば、心電波形や脳波などの生体信号を分析して、心臓疾患や脳疾患の検出、或いは眠気や睡眠状態の推定などを行う手法がある。
特許文献1には、サンプル毛髪を挟んでセンサ装置を移動させることで得られたデータを分析して、その分散値やそのパワースペクトル密度の面積をそのサンプル毛髪の手触り感に対応する評価パラメータとして求める手法が提案されている。
特許文献2には、毛髪表面特性センサから得られる摺動信号からスティックスリップによる振動を検出し、スティックスリップによる周期的で強いパルスが発生する特定周波数領域の任意の範囲で周期的なパルスの積算強度を求め、この積算強度に基づいて毛髪の表面特性を評価する手法が提案されている。
非特許文献1では、医師の触診を模するために高分子圧電体を用いて皮膚の粗さや硬さを測定する試みが報告され、圧電体の出力波形を周波数空間で評価している。
非特許文献2では、心電図RR間隔のローレンツプロットから得られる値が副交感神経活動の新しい評価指標として用いることができることが報告されている。
特開2007−252657号公報 特開2011−99870号公報
田中 真美(他5名)"皮膚性状計測用センサの開発研究" 日本機械学会論文集(C編)69巻685号,p.157−p.164 豊福 史(他2名),"心電図RR間隔のローレンツプロットによる副交感神経活動の簡易推定法の開発",人間工学 Vol.43、No.4(2007),p.185−p.192
上述の特許文献1及び2、並びに非特許文献1に開示されるように、毛髪や肌の振動情報に基づいて触感や表面特性を定量的に評価する試みがある。
ところが、現時点では、振動波形の時間変動の特徴から人の肌状態を定量的に評価する手法は存在しない。
一方で、触感が振動に関与することが知られている。しかしながら、振動情報に基づく既存の評価手法では、特許文献1及び非特許文献1の手法のように、振動強度の積算値及び分散値、並びにパワースペクトル密度の面積が評価パラメータとして利用されているに過ぎない。
このような既存の手法を転用し人の肌状態の定量評価を行ったとしても、評価精度の面において問題がある。例えば、不均一なざらつき感といった肌状態は上述のような評価パラメータでは評価することは困難である。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、肌に関する波形情報を用いて触感に関連する複雑な肌状態を定量評価する技術を提供する。
本発明の各態様では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
第一の態様は、肌状態評価方法に関する。第一の態様に係る肌状態評価方法は、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程と、前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する導出工程と、前記導出された特性情報に基づいて、前記肌の状態を評価する評価工程と、を含む。
第二の態様は、肌状態評価装置に関する。第二の態様に係る肌状態評価装置は、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する取得手段と、前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を生成する生成手段と、前記生成された特性情報又は該特性情報に基づく前記肌の状態の評価情報を出力する出力処理手段と、を備える。
なお、本発明の別態様としては、上記第一態様に係る肌状態評価方法をコンピュータに実行させるプログラム、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体があり得る。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
上記各態様によれば、肌に関する波形情報を用いて高精度に肌状態を定量評価する技術を提供することができる。
本実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第一実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第一実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。 直線波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。 三角波形及び三角波の変形波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。 二種の指標値を座標軸とするグラフの例を示す図である。 第二実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第二実施形態におけるベクトル間の内積演算を概念的に示す図である。 第三実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 工程(S45)における類似度の算出例を概念的に示す図である。 第四実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。 第四実施形態におけるベクトル間の内積演算を概念的に示す図である。 それぞれ異なる各所定時間Δtを用いたローレンツプロットの例を示す図である。 肌状態評価装置のハードウェア構成例を概念的に示す図である。 肌状態評価装置の処理構成例を概念的に示す図である。 ウェーブレット変換後の振動波形データから得られた3種の指標値を示す図である。 ローレンツプロットにより得られるグラフを示す図である。 皮膚外用剤適用前後の各肌に関してローレンツプロットにより得られるグラフを示す図である。 図18で示される座標点群に基づいて得られた3種の指標値を示す図である。 30代及び40代と50代との被験者の肌の振動波形データから第二実施形態の手法で得られた内積演算結果を示す図である。 被験者の肌と比較対象肌との類似性と第三実施形態の手法で導出された指標値間の類似度との関係を示す図である。 被験者の肌と比較対象肌との類似性と第四実施形態の手法で導出されたベクトル間の類似度との関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
まず、本実施形態に係る肌状態評価方法の概要について図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る肌状態評価方法は、少なくとも、図1に示されるように工程(S11)、工程(S13)、及び工程(S15)を含む。
工程(S11)は、検出部を対象肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程である。
ここで対象肌は、状態を評価したい被験者の任意の部位の肌の任意の領域である。
また、本明細書では、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出される物理量のことを短縮して「触感検出値」と表記する場合がある。検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出される物理量は、肌の振動に伴う変位や摩擦抵抗力などの圧力値であり、人の触覚で感知される物理量といえるからである。但し、本明細書で表記する「触感検出値」は、触感に関与することが知られていない物理量を含んでもよい。
このような物理量(触感検出値)を検出する検出部の具体的構成は制限されない。例えば、検出部は、圧電素子、加速度センサ、振動センサ、表面摩擦試験器などである。触感検出値を検出するにあたり検出部は肌に直接接触していてもよいし、何かを介して間接的に接触していてもよい。例えば、測定者の指に検出部としての振動センサを装着し、その状態でその指を被験者の肌に接触させ摺動させることにより、その振動センサにより振動の振幅の時間変化を示す振動波形データ(振動の時系列データ)を得ることができる。また、検出部としての圧電素子又は表面摩擦試験器を直接的に被験者の肌に接触させ摺動させることにより、それら検出部により摩擦抵抗力などの圧力の時間変化を示す圧力波形データ(圧力の時系列データ)を得ることができる。
また、工程(S11)で取得される触感検出値に関する時間波形情報とは、触感検出値に関する時間変化(時間変動)を示す波形情報であり、触感検出値自体の時間変化を示す波形情報であってもよいし、触感検出値から周波数解析などの演算により得られる値(パワー値など)の時間変化を示す波形情報であってもよい。
前者の例としては、上述の振動の時系列データや圧力の時系列データなどがあり得る。触感検出値に関する時間波形情報のうち触感検出値自体の時間変化を示す波形情報は、ベース波形データと表記する場合もある。
後者の例としては、そのような触感検出値の時系列データ(ベース波形データ)に対してウェーブレット変換といった時間情報を残す周波数解析を適用することにより、特定周波数成分の混合強度(パワー)の時間変化を示す波形情報や、ベース波形データに対してフーリエ変換を適用することで特定周波数成分に限定した波形情報があり得る。このように、ベース波形データに対して何らかの演算を施された波形情報を変換波形データと表記する場合もある。
工程(S11)では、後述の肌状態評価装置のようなコンピュータが、上述の検出部から触感検出値の時系列データとして当該肌波形情報を受信することができる。
また、当該コンピュータが、受信された触感検出値の時系列データに対して所定の演算を施すことにより、変換波形データを当該時間波形情報として取得することもできる。
また、当該コンピュータは、他のコンピュータから当該変換波形データを受信してもよい。更には、当該コンピュータは、当該時間波形情報を可搬型記録媒体から読み出してもよい。
工程(S13)は、工程(S11)で取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又はその対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する工程である。
ここで「対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報」とは、対象となる時間波形の時間軸上での変動傾向を示す情報を意味する。この特性情報は、例えば、対象となる時間波形と、その時間波形を時間軸上で所定時間分シフトしたシフト波形との関係から得ることができる。この時間変動特性を示す特性情報の具体的な導出手法については後述する。
また、「対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報」とは、対象時間波形と比較対象肌の時間波形との関係性を示す情報を意味する。この特性情報は、例えば、両波形の類似度又は乖離度などで示され得る。この相互関係特性を示す特性情報の具体的な導出手法については後述する。
ここで、比較対象肌は、対象肌と同一人物の肌であっても、他人の肌であってもよい。例えば、比較対象肌は、或る美容施術又は化粧料を施す前の同一人物の肌である。この例によれば、美容施術又は化粧料を施す前後での被験者の肌を相対的に評価することができる。他の例として、同一人物の或る年齢時の肌が比較対象肌とされてもよい。この例によれば、その年齢時から今までの被験者の肌の変化を相対評価することができる。他の例として、同一人物の他の部位の肌が比較対象肌とされてもよい。この例によれば、被験者自身の肌を部位間で相対的に評価することができる。更に他の例として、理想とされる肌或いは被験者が憧れる人の肌が比較対象肌とされてもよい。また、対象肌と比較対象肌とでは同一部位が対象とされてもよいし、異なる部位が対象とされてもよい。
比較対象肌の時間波形情報は、対象肌に関する当該時間波形情報を取得する工程(S11)の実行と同期して(並列又はその前後にて)、取得されてもよいし、対象肌に関する時間波形情報とは別時期に別途取得されてもよい。更に言えば、比較対象肌に関する時間波形情報は、対象肌に関するそれとは異なる方法で予め取得され、保持されていてもよい。工程(S13)において、コンピュータが、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体などから比較対象肌に関する時間波形情報を取得してもよい。
工程(S15)は、工程(S13)で導出された特性情報に基づいて、対象肌の状態を評価する工程である。
工程(S15)で評価される肌の状態とは、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出される物理量で示される状態であり、肌の触感(ざらざら、すべすべ、べとべと、滑らか、もちもちなど)に関わる状態、肌年齢、良し悪しの程度など様々なである。
工程(S15)における具体的な評価手法については後述する。但し、この評価手法は、後述する例に限定されない。
例えば、コンピュータが、工程(S13)で導出された特性情報に基づいて、所定のアルゴリズムにより対象肌の状態を評価してもよい。この場合、コンピュータは、評価結果(「最高レベル」、「良好」、「改善要」など)を提示することもできる。また、コンピュータが工程(S13)で導出された特性情報を提示し、この特性情報を参照した者(被験者や評価者など)が、その特性情報を考慮して対象肌を評価してもよい。
概要として説明したように、本実施形態では、対象肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報から、対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報又は対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報が導出され、その特性情報に基づいて対象肌の状態が評価される。
本実施形態において肌状態の評価の根拠とされる特性情報は、対象時間波形の時間変動特性又は時間波形間の相互関係特性を示すため、検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量(触感検出値)の時間変動の情報を含んでいるといえる。
従って、本実施形態によれば、触感検出値に関わる肌状態を定量的に評価することができる。より具体的に言えば、当該特性情報は、触感検出値に関する時間波形情報から導出されるため、触感に関わる検出情報に基づいているともいえる。このため、本実施形態によれば、不均一なざらつき感といった肌の触感(触り心地など)に関わる状態を定量的に評価することができる。
以下、本実施形態に係る肌状態評価方法についてより具体的に説明する。
[第一実施形態]
第一実施形態では、上述の時間変動特性を示す特性情報に基づく肌状態評価の一具体例を挙げる。以下、第一実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図2は、第一実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図2に示されるように、工程(S21)から工程(S25)を含む。工程(S21)は、図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S22)から工程(S24)は、工程(S13)に対応し、工程(S25)は、工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S21)は、上述の工程(S11)と同様であり、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を取得する工程である。工程(S21)では、上述したとおり、触感検出値のベース波形データを当該時間波形情報として取得してもよいし、変換波形データを当該時間波形情報として取得してもよい。また、工程(S21)における当該時間波形情報の取得手法についても上述したとおりである。
工程(S22)は、工程(S21)で取得された時間波形情報を、対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換する工程である。
即ち、ここでの直交座標系は、時間波形情報により示される対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアの一方を横軸(x軸)、他方を縦軸(y軸)にした直交平面座標系となる。このように時間波形情報を直交座標系の座標点群に変換することをローレンツプロットと表記する場合もある。
ローレンツプロットに用いる当該所定時間は、シフト時間であり、抽出したい周波数成分に対応する適切な値に設定されることが望ましい。例えば、細かな時間変化を抽出したい場合には、所定時間Δtは、大まかな時間変化を抽出したい場合に比べて、小さい値に設定すればよい。
工程(S23)は、工程(S22)で得られた直交座標系の座標点群を、当該直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に変換する工程である。
図3は、第一実施形態におけるローレンツプロット及び座標変換を概念的に示す図である。
図3で示される振動パワー波形データは、ベース波形データである振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られる変換波形データである。この変換波形データが時間波形情報として取得され、この変換波形データがローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換される。ローレンツプロットでは、変換波形データの振幅値(パワー値)が横軸(x軸)に、所定時間Δtシフトされたシフト波形データの振幅値(パワー値)が縦軸(y軸)に取られる。つまり、当該直交座標系の一座標点のy軸要素である振幅値は、変換波形データにおいて、同座標点のx軸要素である振幅値から所定時間Δt後に現れる値である。
座標変換では、当該直交座標系の座標点群が「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影された座標に変換される。図3では、「y=x」軸が変換後の座標系においてX'軸と表記され、「y=−x」軸が変換後の座標系においてY'軸と表記されている。
工程(S24)は、工程(S23)で得られた変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値を当該対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報として導出する工程である。
例えば、工程(S24)では、当該変換座標点群における、「y=x」軸(図3のX'軸)における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸(図3のY'軸)における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、それら平均値若しくはそれら標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の一つ以上を当該一種以上の指標値として導出することができる。
図3では、X'軸における原点からの距離の平均値が黒塗り星マークで示され、その距離の標準偏差がσxで示され、Y'軸における原点からの距離の平均値が白抜き星マークで示され、その距離の標準偏差がσyで示されている。
比率としては、X'軸における平均距離とY'軸における平均距離との比率、又は、X'軸における標準偏差σxとY'軸における標準偏差σyとの比率(σx/σy)が算出され得る。
分布面積は、標準偏差σx及び標準偏差σyを用いて、楕円面積として(π×σx×σy)で算出され得る。
但し、算出される一種以上の指標値は、このような例に限定されず、変換座標点群の分布状態を示す他の指標値であってもよい。例えば、距離の分散値又は分散値の比率が指標値として用いられてもよいし、分布面積は、長方形面積として(2σx×2σy)で算出されてもよい。工程(S24)で算出される一種以上の指標値は、工程(S23)で得られた変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値のうち、肌状態と相関の高い指標値とされることが望ましい。
本発明者らは、このようにローレンツプロットを用いて得られる指標値が、触感検出値に関する時間波形情報の特徴を示していることを見出している。
図4は、直線波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。図4に示されるように、直線波形は、ローレンツプロット及び座標変換により一座標点に変換される。直線波形の振幅を増加させると、座標変換後の座標点はX'軸上を移動する。このことから、X'軸における平均距離は時間波形情報の振幅値の平均情報を示すといえる。
図5は、三角波形及び三角波の変形波形のローレンツプロット及び座標変換を示す図である。図5に示されるように、三角波形はローレンツプロット及び座標変換によりX'軸に平行な直線状の複数座標点に変換される。この三角波形の振幅を増加させると、座標変換後の複数座標点の直線状分布はX'軸方向に延びる。このことから、X'軸における標準偏差σxは時間波形情報の振幅の幅を示すといえる。
また、三角波形に周期の乱れを含めると、座標変換後の複数座標点の分布がY'軸方向に延びる。更に、三角波形を不均一化すると、座標変換後の複数座標点の分布が散らばる。このことから、Y'軸における平均距離は時間波形情報の周期の乱れの平均情報を示し、Y'軸における標準偏差σyは時間波形情報の周期の乱れの大きさを示すといえる。
更に、分布面積は、標準偏差σx及びσyを用いるため、時間波形情報の振幅の幅及び周期の乱れの大きさを示すといえ、標準偏差の比率(σx/σy)は、時間波形情報の振幅の幅と周期の乱れの大きさとの比率を示すといえる。
なお、図5で示されるローレンツプロットでは所定時間Δtが1周期に設定されている。
これらにより、ローレンツプロットを用いて得られる指標値が、肌から得られる触感検出値に関する時間波形情報の特徴を示すことが理論的に実証される。更に、本発明者らにより、これら指標値により人の肌の状態を定量評価できることは実証されている(実施例の項参照)。
工程(S25)は、工程(S24)で導出された一種以上の指標値を提示する工程である。
指標値の提示は、ディスプレイのような表示装置への表示で実現されてもよいし、プリンタへの印刷で実現されてもよいし、音声出力で実現されてもよい。
本評価方法では、被験者自ら又は評価者が、工程(S25)で提示された指標値を参照して、被験者の肌状態を評価することができる。このとき、工程(S25)では、被験者の肌に関する指標値と比較するための基準となる指標値又は肌状態の良し悪しの境界を示す閾値を更に提示することもできる。また、このような比較のための指標値又は閾値は、予め印刷媒体などに出力されていてもよい。
また、本評価方法では、工程(S24)で導出された一種以上の指標値をそのような基準となる指標値や閾値などと比較することにより、被験者の肌状態を自動的に評価し、その評価結果を工程(S25)で提示することもできる。例えば、指標種ごとに閾値を予め保持しておき、各種の指標値が閾値を超えるか否かにより、最高、良好、改善要、劣悪などと肌状態を評価し、その評価結果を提示することができる。
また、本評価方法では、工程(S24)で複数種の指標値が導出される場合に、工程(S25)において、各指標種を座標軸とする座標系に、被験者の肌に関する複数種の指標値に対応する点がプロットされたグラフを提示することもできる。
図6は、二種の指標値を座標軸とするグラフの例を示す図である。図6に示されるグラフでは、Y'軸の平均距離が横軸(x軸)とされ、Y'軸の標準偏差σyが縦軸(y軸)とされている。時間波形に関するY'軸の平均距離は周期の乱れの平均情報を示し、Y'軸の標準偏差は周期の乱れの大きさを示す。そのため、図6のグラフによれば、不均一なざらざら感のような周期の乱れに関する肌状態を視覚的に評価することができる。
例えば、図6に示されるように、被験者の肌(被験肌)に関する指標値と共に、同年代の平均的な肌状態や理想的な肌状態のような基準となる肌状態に関する指標値(基準指標値)がプロットされていてもよい。これにより、グラフ上におけるこの基準指標値との位置関係に応じて、被験者の肌状態を容易に評価することができる。
このように第一実施形態では、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報がローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換され、更に座標変換される。そして、得られた変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値が導出され、この指標値が被験者の肌状態を示す定量情報として提示される。この指標値が人の肌状態を示すことは本発明者らにより実証されている(実施例参照)。
従って、第一実施形態によれば、触感検出値の時間変動に関わる肌状態、例えば、不均一なざらざら感のような肌の触感を高精度に定量評価することができる。
[第一実施形態の変形例]
上述の第一実施形態では、被験者の肌に関して導出される一種以上の指標値に基づいて、肌状態が評価されたが、指標値を用いることなく肌状態を評価することはできる。
例えば、図2の工程(S24)の代わりに、工程(S23)で得られた変換座標点群がプロットされたグラフを当該時間変動特性を示す特性情報として導出し、工程(S25)においてこのグラフを提示してもよい。このグラフは、例えば、図3の下部に示される座標変換後のグラフである。
また、ローレンツプロットされたグラフを当該時間変動特性を示す特性情報として導出し、このグラフを提示してもよい。即ち、図2の工程(S23)を省き、工程(S24)の代わりに、工程(S22)で得られた直交座標系の座標点群がプロットされたグラフを当該特性情報として導出する。この場合、図3の中央に示されるローレンツプロットされたグラフが提示される。
当該直交座標系の座標点群又はこの座標点群に対する座標変換により得られる変換座標点群がプロットされたグラフによれば、グラフの形状から視覚的にその指標値と同様の情報を把握することができる。即ち、このグラフによっても、被験者の肌状態を高精度に定量評価することができる。
[第二実施形態]
第二実施形態では、上述の時間変動特性を示す特性情報に基づく肌状態評価の一具体例として、第一実施形態と異なる例を挙げる。以下、第二実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図7は、第二実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図7に示されるように、工程(S31)から工程(S34)を含む。工程(S31)は図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S32)及び工程(S33)は工程(S13)に対応し、工程(S34)は工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S31)は、上述の工程(S11)及び工程(S21)と同様であり、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を取得する工程である。
工程(S32)は、工程(S31)で取得された時間波形情報を時間軸上で所定時間シフトしたシフト波形情報を生成する工程である。
ここでの所定時間もローレンツプロットに用いる当該所定時間と同様にシフト時間であり、抽出したい周波数成分に対応する適切な値に設定されることが望ましい。例えば、細かな時間変化を抽出したい場合には、所定時間Δtは、大まかな時間変化を抽出したい場合に比べて、小さい値に設定すればよい。
工程(S33)は、工程(S31)で取得された時間波形情報を成分とする元ベクトルと工程(S32)で生成されたシフト波形情報を成分とするシフトベクトルとの演算により、対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報を導出する工程である。
この演算としては、内積演算、ベクトル間のユークリッド距離演算などがある。内積演算によれば、内積値及びベクトル間の角度cosθが当該時間変動特性を示す特性情報として算出され得る。また、ベクトル間のユークリッド距離が当該時間変動特性を示す特性情報として算出されてもよい。なお、当該演算により得られる値は、ベクトル間の類似度と呼ぶこともできる。
図8は、第二実施形態におけるベクトル間の内積演算を概念的に示す図である。
図8で示される振動パワー波形データは、図3と同様である。このような変換波形データが時間波形情報として取得され、この変換波形データが時間シフトされ、シフト波形データが生成される。例えば、振動パワー波形データの中の10000個のパワー値を成分とする元ベクトルAとシフト波形データの中の10000個のパワー値を成分とするシフトベクトルBとの内積演算が行われる。但し、各ベクトルの要素数(成分数)は、このような数に限定されない。
図8の例では、内積演算により内積値とcosθとが当該時間変動特性を示す特性情報として導出されている。
工程(S34)は、工程(S33)での演算結果、即ち、当該時間変動特性を示す特性情報を提示する工程である。提示される特性情報は、内積値又はcosθのように、一つの値であってもよいし、複数種の値であってもよい。
工程(S34)での演算結果の提示手法は、第一実施形態における指標値の提示手法と同様である。
本評価方法では、被験者自ら又は評価者が、工程(S34)で提示された演算結果を参照して、被験者の肌状態を評価することができる。このとき、工程(S34)では、被験者の肌に関する演算結果と比較するための基準となる値又は肌状態の良し悪しの境界を示す閾値を更に提示することもできる。また、このような比較のための基準値又は閾値は、予め印刷媒体などに出力されていてもよい。
また、本評価方法では、工程(S33)で導出された演算結果をそのような基準値や閾値などと比較することにより、被験者の肌状態を自動的に評価し、その評価結果を工程(S34)で提示することもできる。例えば、閾値を予め保持しておき、演算結果が閾値を超えるか否かにより、最高、良好、改善要、劣悪などの良し悪しの程度や、肌年齢などにより肌状態を評価し、その評価結果を提示することができる。
このように第二実施形態では、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を成分とするベクトルとその時間波形情報を所定時間シフトしたシフト波形情報を成分とするベクトルとの演算により、当該時間変動特性を示す特性情報が導出される。演算結果がベクトル間の類似度が高いことを示す場合、対象時間波形の時間変動が小さいことを示し、その類似度が低い場合、対象時間波形の時間変動が大きいことを示す。そして、その演算結果が被験者の肌状態を示す定量情報として提示される。このように提示される演算結果が人の肌状態を示すことは本発明者らにより実証されている(実施例参照)。
従って、第二実施形態によれば、触感検出値の時間変動に関わる肌状態、例えば、不均一なざらざら感といった肌の触感を高精度に定量評価することができる。
[第三実施形態]
上述の第一及び第二実施形態では、被験者の肌(対象肌)から検出された触感検出値に関する時間波形情報を処理して得られた情報に基づいて、被験者の肌の状態が評価された。第三実施形態では、被験者の肌に関する対象時間波形と比較対象肌に関する時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報に基づいて、被験者の肌の状態が相対的に評価される。以下、第三実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図9は、第三実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図9に示されるように、工程(S41)から工程(S46)を含む。工程(S41)は図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S42)から工程(S45)は工程(S13)に対応し、工程(S46)は工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S41)から工程(S44)は、図2に示される工程(S21)から工程(S24)と同様である。
工程(S45)は、被験者の肌に関して工程(S44)で導出された一種以上の指標値と比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度を算出する工程である。
工程(S45)で算出される類似度は、被験者の肌の対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報の一例である。
一種の指標値が導出される場合、被験者の肌に関する指標値と比較対象肌に関する指標値との差が当該類似度として算出されてもよい。また、複数種の指標値が導出される場合、当該類似度は、複数種の指標値を成分とするベクトル間のユークリッド距離として算出されてもよいし、それらベクトル間の角度として算出されてもよい。後者の場合、被験者の肌に関する複数種の指標値を成分とする特性ベクトルと比較対象肌に関する複数種の指標値を成分とする特性ベクトルとの内積演算を行い求められるcosθの値を類似度として算出することができる。
図10は、工程(S45)における類似度の算出例を概念的に示す図である。図10の例では、被験者の肌(被験肌)に関する複数種の指標値を成分とする特性ベクトルAと比較対象肌に関する複数種の指標値を成分とする特性ベクトルBとの内積演算を行い求められるcosθの値が類似度として算出されている。特性ベクトルA及びBの各成分数は、指標値として採用する上述の指標値の数となる。cosθの値は、例えば、特性ベクトルAと特性ベクトルBとの内積値(A・B)を特性ベクトルAの長さ(|A|)と特性ベクトルBの長さ(|B|)との積で除算することで算出可能である。
比較対象肌に関する指標値は、被験者の肌に関する時間波形情報に対する工程(S41)から工程(S44)の実行と同期して(並列又はその前後にて)、比較対象肌に関する時間波形情報に対する工程(S41)から工程(S44)の実行により算出されてもよいし、被験者の肌に関する指標値とは別時期に別途算出されてもよい。更に言えば、比較対象肌に関する指標値は、被験者の肌に関するそれとは異なる方法で予め取得され、保持されていてもよい。工程(S45)において、コンピュータが、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体などから比較対象肌に関する指標値を取得してもよいし、当該指標値をユーザに入力させてもよい。
比較対象肌に関する指標値は、被験者の肌に関して工程(S41)で取得された触感検出値に関する時間波形情報と同じ測定条件で検出された時間波形情報に基づいて算出されることが望ましい。その測定条件としては、触感検出値を検出する際の検出部又はプローブ(指など)の肌への押し付け力、摺動速度などである。測定条件を合わせることで、評価精度を向上させることができる。
工程(S46)は、工程(S45)で算出された類似度を提示する工程である。
類似度の提示は、ディスプレイのような表示装置への表示で実現されてもよいし、プリンタへの印刷で実現されてもよいし、音声出力で実現されてもよい。
本実施形態では、被験者自ら又は評価者が、工程(S46)で提示された類似度を参照して、被験者の肌状態を比較対象肌との間で相対的に評価する。例えば、提示された類似度が高い程、被験者の肌状態は比較対象肌の状態により近いと評価でき、提示された類似度が低い程、被験者の肌状態は比較対象肌の状態からより乖離していると評価できる。
工程(S46)では、類似度と共に、肌状態が近いと評価するための閾値と肌状態が遠い(異なる)と評価するための閾値とを提示することもでき、このような閾値は、予め印刷媒体などに出力されていてもよい。
ところで、被験者の肌状態と比較対象肌の状態との類似度合又は乖離(相違)度合が、肌に関する時間波形情報から得られる複数種の指標値間の類似度により定量的に評価できることは、本発明者らにより実証されている(実施例の項参照)。
このように第三実施形態では、第一実施形態と同様にローレンツプロットを用いて、被験者の肌に関する時間波形情報から一種以上の指標値が導出され、被験者の肌に関する一種以上の指標値と比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度が算出される。算出された類似度は、被験者の肌の対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報であり、被験者の肌と比較対象肌との類似度合又は乖離度合を示す定量情報である。
従って、第三実施形態によれば、触感検出値の時間変動に関わる肌状態、例えば、不均一なざらざら感といった被験者の肌の触感を比較対象肌との比較により定量的に評価することができる。
[第三実施形態の変形例]
上述の第三実施形態では、工程(S46)において類似度が提示されたが、類似度の提示に代えて、その類似度に対応する評価結果(「似ています」、「あまり似ていません」など)を提示してもよい。この場合、コンピュータが、予め保持される閾値などとその類似度とを比較することで、評価結果を導出し、この評価結果を提示することができる。
また、工程(S45)における類似度の算出及び工程(S46における類似度の提示を実行することなく、次のような比較グラフを提示してもよい。具体的には、複数種の指標値が導出される場合、工程(S46)では、各指標種を座標軸とする座標系に被験者の肌に関する複数種の指標値及び比較対象肌に関する複数種の指標値に対応する点がプロットされた比較グラフを提示することができる。この場合、コンピュータがその比較グラフを生成し、表示装置やプリンタなどにその比較グラフを出力し、その比較グラフを参照した者(被験者や評価者など)が、そのグラフ内の被験者の肌を示す点と比較対象肌を示す点との位置関係から被験者の肌を評価してもよい。また、コンピュータが、比較グラフの提示と共に、比較グラフ内の点の位置関係に対応する評価結果を提示することもできる。
例えば、この比較グラフは、図6に示されるグラフで、基準指標値の代わりに比較対象肌に関する指標値に対応する点がプロットされていればよい。
更に、工程(S45)及び工程(S46)に加えて、工程(S44)が実行されなくてもよい。この場合、工程(S43)で得られた変換座標点群がプロットされたグラフを生成し、比較対象肌に対しても同様の手法でそのグラフを生成する。そして、その両グラフが対比可能な状態で提示すればよい。また、変換座標点群がプロットされたグラフではなく、ローレンツプロットされたグラフを被験者の肌及び比較対象肌に関してそれぞれ生成し、その両グラフが対比可能な状態で提示されればよい。
言い換えれば、被験者の肌の対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報として導出されたグラフと、比較対象肌に関して被験者の肌と同様に時間変動特性を示す特性情報として導出されたグラフとが対比可能な状態で示される比較情報を、被験者の肌の対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報として導出することができる。
ローレンツプロットにより得られる直交座標系の座標点群又はこの座標点群に対する座標変換により得られる変換座標点群がプロットされたグラフによれば、グラフの形状から視覚的にその指標値と同様の情報を把握することができる。即ち、このグラフによっても、被験者の肌状態を比較対象肌との間で高精度に相対評価することができる。
[第四実施形態]
第四実施形態では、被験者の肌に関する対象時間波形と比較対象肌に関する時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報に基づく肌状態評価の一具体例として、第三実施形態と異なる例を挙げる。以下、第四実施形態に係る肌状態評価方法を本評価方法と略称する場合もある。
図11は、第四実施形態に係る肌状態評価方法を示すフローチャートである。
本評価方法は、図11に示されるように、工程(S51)から工程(S53)を含む。工程(S51)は図1に示される工程(S11)に対応し、工程(S52)は工程(S13)に対応し、工程(S53)は工程(S15)に対応する。
本評価方法は、例えば、後述の肌状態評価装置により実行される。但し、本評価方法は、各工程において人手が介入することを許容する。
工程(S51)は、上述の工程(S11)、工程(S21)などと同様であり、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を取得する工程である。
工程(S52)は、工程(S51)で取得された時間波形情報を成分とする被験肌ベクトルと比較対象肌の時間波形情報を成分とする比較肌ベクトルとの類似度を、被験者の肌の対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報として導出する工程である。
当該類似度は、被験肌ベクトルと比較肌ベクトルとの間のユークリッド距離として算出されてもよいし、それらベクトル間の角度として算出されてもよい。後者の場合、両ベクトルの内積演算を行い求められるcosθの値を類似度として算出することができる。
図12は、第四実施形態におけるベクトル間の内積演算を概念的に示す図である。
図12の例では、被験者の肌に関する時間波形情報を成分とする被験肌ベクトルAと比較対象肌に関する時間波形情報を成分とする比較肌ベクトルBとの内積演算を行い求められるcosθの値が類似度として算出されている。この場合、類似度が1に近付く程、類似度が高く、類似度が0に近付く程、類似度が低くなる。被験肌ベクトルA及び比較肌ベクトルBの各成分数(要素数)は、時間波形情報に含まれる振幅値群の一部又は全部とされる。
比較対象肌に関する比較肌ベクトルは、予め取得され、保持されていてもよい。例えば、工程(S52)の実行時又はそれより前に、コンピュータが、他のコンピュータ又は可搬型記録媒体などから比較肌ベクトルを取得してもよいし、その比較肌ベクトルをユーザに入力させてもよい。
また、比較対象肌に関する時間波形情報が、被験者の肌に関する時間波形情報と共に(又は前後して)取得されてもよい。
比較対象肌に関する比較肌ベクトルは、被験者の肌に関して工程(S51)で取得された触感検出値に関する時間波形情報と同じ測定条件で検出された時間波形情報から生成されることが望ましい。その測定条件としては、触感検出値を検出する際の検出部又はプローブ(指など)の肌への押し付け力、摺動速度などである。測定条件を合わせることで、評価精度を向上させることができる。
工程(S53)は、工程(S52)において当該相互関係特性を示す特性情報として導出された類似度を提示する工程である。工程(S53)は、第三実施形態における工程(S46)と同様である。なお、被験者の肌状態と比較対象肌の状態との類似度合又は乖離(相違)度合が、肌に関する時間波形情報を成分とするベクトル間の類似度により定量的に評価できることは、本発明者らにより実証されている(実施例の項参照)。
このように第四実施形態では、被験者の肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を成分とするベクトルと、比較対象肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を成分とするベクトルとの類似度が算出される。この算出された類似度は、被験者の肌の対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報であり、被験者の肌と比較対象肌との類似度合又は乖離度合を示す定量情報である。
従って、第四実施形態によれば、第三実施形態と同様に、被験者の肌の状態(触感など)を比較対象肌との比較により定量的に評価することができる。
[変形例]
上述の第一、第二、及び第三実施形態では、ローレンツプロット又は波形情報の時間シフトにおいて、所定時間が用いられた。
これら各実施形態では、それぞれ異なる複数の所定時間を用いてローレンツプロット又は波形情報の時間シフトをそれぞれ行い、所定時間ごとに上述の一種以上の指標値をそれぞれ算出するようにしてもよい。
図13は、それぞれ異なる各所定時間Δtを用いたローレンツプロットの例を示す図である。図13に示されるように、各所定時間Δtを用いたローレンツプロットにより得られる座標点群はそれぞれ異なる分布を示している。即ち、所定時間Δtを変えることで、肌に関する時間波形において異なる成分の特徴を抽出できることが分かる。
第一実施形態及び第二実施形態では、被験者の肌に関して所定時間Δtごとに算出された一種以上の指標値を用いて、被験者の肌の状態が評価されればよい。例えば、所定時間Δtごとに指標値と閾値とを比較して、その比較結果を総合的に評価することで、被験者の肌状態の評価結果とすることができる。
また、第三実施形態では、被験者の肌に関する指標値及び比較対象肌に関する指標値を、所定時間Δtごとに比較することにより、被験者の肌状態を比較対象肌との間で相対的に評価することができる。例えば、上述の比較グラフが所定時間Δtごとにそれぞれ提示されてもよい。また、被験者の肌と比較対象肌との指標値間の類似度が所定時間Δtごとに算出及び提示されてもよい。
このようにすれば、小さい変化や大きい変化など着目すべき周波数成分に特化して、被験者の肌状態を高精度に評価することができる。
このような着目すべき周波数成分に特化した評価を行うためには、処理対象とする時間波形情報を特定の周波数成分に制限した波形情報としてもよい。
また、上述の各実施形態では、肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報が用いられたが、検出部により物理量の検出位置も特定可能であるならば、肌から検出された物理量に関する空間変化を示す空間波形情報が用いられてもよい。
[肌状態評価装置]
上述の各実施形態及び変形例に係る肌状態評価方法は、図14及び図15例示される肌状態評価装置(以降、単に評価装置と略称する場合もある)により実行可能である。
図14は、肌状態評価装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図である。
評価装置10は、いわゆるコンピュータ(情報処理装置)であり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、入出力インタフェース(I/F)13、通信ユニット14等を有する。評価装置10を形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、これらハードウェア要素は情報処理回路と総称することもできる。また、評価装置10は、図14に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
CPU11は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F13は、出力装置15、入力装置16等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置15は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU11等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置、印刷装置などの少なくとも一つである。入力装置16は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力装置15及び入力装置16は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
通信ユニット14は、他のコンピュータとの通信網を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14には、可搬型記録媒体等も接続され得る。また、通信ユニット14には、肌の触感に関わる物理量を検出可能な上述の検出部が接続されてもよい。
図15は、肌状態評価装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
評価装置10は、取得部21、生成部22、及び出力処理部23を有する。これら処理モジュールは、ソフトウェア要素であり、例えば、メモリ12に格納される肌状態評価プログラム(コンピュータプログラム)18がCPU11により実行されることにより実現される。このコンピュータプログラム18は、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F13又は通信ユニット14を介してインストールされ、メモリ12に格納されてもよい。
それら各ソフトウェア要素の動作により、評価装置10は、上述の各実施形態及び変形例に係る肌状態評価方法を実行することができる。即ち、評価装置10(CPU11)は、図1、図2、図7、図9、又は図11に示される各工程を順次実行することができる。各工程の処理内容はそれぞれ上述の通りであるが、以下に、各工程の処理内容が適宜補足される。
取得部21は、対象肌から検出された触感検出値に関する時間波形情報を取得する。即ち、取得部21は、上述の工程(S11)、工程(S21)、工程(S31)、工程(S41)、又は工程(S51)を実行する。
取得部21は、触感検出値に関する時間波形情報を外部のコンピュータ、機器(検出部など)、可搬型記録媒体などから入出力I/F13又は通信ユニット14を介して取得することができる。
取得部21は、検出部により検出された物理量の時間波形データを外部から取得し、これら波形データに対して周波数解析などの演算を適用し、変換波形データを当該時間波形情報として取得してもよい。更に、取得部21は、そのような変換波形データを外部から取得することもできる。
生成部22は、取得部21で取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を生成する。即ち、生成部22は、上述の工程(S13)を実行する。
具体的には、生成部22は、図2に示される工程(S22)から工程(S24)を実行して、工程(S23)で得られる変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値を対象肌の対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報として算出することができる。また、生成部22は、工程(S22)の実行により得られる直交座標系の座標点群又は工程(S22)及び工程(S23)の実行により得られる変換座標点群がプロットされたグラフを当該対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報として生成することもできる。また、生成部22は、図7に示される工程(S32)及び工程(S33)を実行することにより、元ベクトルとシフトベクトルとの演算結果を当該対象時間波形の時間変動特性を示す特性情報として算出することもできる。
更に、生成部22は、図9に示される工程(S42)から工程(S45)を実行することにより、対象肌に関して算出された一種以上の指標値と比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度を、上記相互関係特性を示す特性情報として算出することもできる。加えて、生成部22は、図11に示される工程(S52)を実行することにより、対象肌に関する時間波形情報を成分とするベクトルと比較対象肌の時間波形情報を成分とするベクトルとの類似度を上記相互関係特性を示す特性情報として算出することもできる。
生成部22により利用される、比較対象肌に関する時間波形情報から得られる一種以上の指標値又は比較対象肌に関する時間波形情報は、メモリ12に予め格納されていてもよいし、通信ユニット14を介して外部から通信により取得されてもよい。
出力処理部23は、生成部22により生成された特性情報又はその特性情報に基づく対象肌の状態の評価情報を出力する。即ち、出力処理部23は、上述の工程(S15)、工程(S25)、工程(S34)、工程(S46)、又は工程(S53)を実行する。
この評価情報は、例えば、対象肌(被験者の肌)の評価結果を示す情報である。例えば、当該評価情報は、被験者の肌状態が良いか悪いか、被験者の肌状態が比較対象肌に近いか遠いかなどを示す。
出力処理部23は、特性情報又は評価情報を出力装置15に出力することができる。また、出力処理部23は、特性情報又は評価情報を通信ユニット14を介して外部のコンピュータに出力してもよいし、可搬型記録媒体に書き込んでもよい。出力処理部23による特性情報及び評価情報の出力形態は制限されない。
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。以下の実施例の記載は、上述の各実施形態及び変形例に何ら限定を加えるものではない。
第一実施形態で述べた、人の肌に関する時間波形情報からローレンツプロットを用いて算出された指標値により人の肌状態の違いが定量的に評価可能であることが、次のように検証された。
図16は、ウェーブレット変換後の振動波形データから得られた3種の指標値を示す図である。図16には、X'軸及びY'軸の標準偏差及び楕円面積(分布面積)の3種の指標値が示されており、被験者(サンプル提供者)は、30代及び40代の2名と50代の2名との合計4名である。
図16によれば、いずれの指標値においても、50代と30代及び40代との間で指標値の差が出ている。
これにより、ウェーブレット変換後の振動波形データ(時間波形情報)から得られた複数種の指標値においてそれぞれ年齢の違いに伴う肌状態の違いを表していることが実証されている。
図17は、ローレンツプロットにより得られた二つのグラフを示す図である。図17には、30代の被験者及び50代の被験者の各肌から得られた振動波形データ(時間波形情報)がローレンツプロットにより直交座標系の座標点群に変換され、それら座標点群がプロットされたグラフが示されている。具体的には、グラフ(a)が30代の被験者のグラフであり、グラフ(b)が50代の被験者のグラフである。
各グラフによれば、分布状態の違いが視覚的に容易に把握することができる。即ち、図17によれば、ローレンツプロットにより得られる直交座標系の座標点群がプロットされたグラフにより、年齢に伴う肌状態の違いが可視化できることが実証されている。
図17には振動波形データを当該時間波形情報として用いる例が示されているが、その振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られる変換波形データを用いた場合でも同様に、年齢に伴う肌状態の違いが可視化できることが確認されている。
図18は、皮膚外用剤適用前後の各肌に関してローレンツプロットにより得られるグラフを示す図である。図18には、二人の被験者に関する皮膚外用剤適用前後のグラフが示されており、グラフG1aは第一被験者の皮膚外用剤適用前の肌を示し、グラフG1bは第一被験者の皮膚外用剤適用後の肌を示し、グラフG2aは第二被験者の皮膚外用剤適用前の肌を示し、グラフG2bは第二被験者の皮膚外用剤適用後の肌を示している。
同一被験者の肌に関して皮膚外用剤適用前後のグラフを比較すると、ローレンツプロットされたグラフの分布状態の違いが容易に把握可能である。具体的には、どちらの被験者においても、皮膚外用剤適用後のグラフのほうが、その分布の範囲が、皮膚外用剤適用前のグラフよりも小さくなっていることが視認される。
また、各グラフに対応する各肌に対する滑らかさ感の官能評価が行われ、滑らかから粗いの範囲が1ポイントから5ポイントの5段階で評価された。結果、グラフG1aに対応する肌が3ポイント、グラフG1bに対応する肌が2ポイント、グラフG2aに対応する肌が3ポイント、グラフG2bに対応する肌が1ポイントであった。
この官能評価の結果においても、皮膚外用剤適用後には、滑らかさ感が増していることが示されており、結果として、ローレンツプロットにより得られるグラフの変化が官能評価結果の変化と相関していることが確認される。
これにより、図18によれば、ローレンツプロットにより得られる直交座標系の座標点群がプロットされたグラフにより、皮膚外用剤の効果による肌状態の違いも可視化できることが実証されている。
また、ここでは図示していないが、皮膚外用剤の効果による肌状態の違いも同様に可視化できることも実証されている。
図19は、図18で示される直交座標系の座標点群に基づいて得られた3種の指標値を示す図である。図19には、X'軸及びY'軸の標準偏差及び楕円面積(分布面積)の3種の指標値がグラフで示されている。
標準偏差を示す2つのグラフによれば、X'軸及びY'軸の標準偏差、即ち、振幅の幅も周期の乱れも共に、皮膚外用剤適用後のほうが小さくなっている。
楕円面積を示すグラフによれば、皮膚外用剤適用後の面積が小さくなっている。
図19によれば、ローレンツプロットにより得られる直交座標系の座標点群に基づいて得られる指標値によって、皮膚外用剤の効果による肌状態の違いを定量化できることが実証されている。
図20は、30代及び40代と50代との被験者の肌の振動波形データから第二実施形態の手法で得られた内積演算結果を示す図である。図20には、30代及び40代の2名と50代の2名との合計4名の被験者の肌に関する元ベクトルとシフトベクトルとの内積演算により得られた内積値及びcosθが示されている。
図20によれば、内積値及びcosθのいずれにおいても、50代と30代及び40代との間で顕著な差が出ている。また、cosθの値については、50代のほうがより小さくなっている。これは、50代の肌から得られる振動波形データのほうが、30代及び40代よりも時間変動が大きいことを示しており、触感の不均一性が年齢に応じて増していることを示しているといえる。
このように、肌に関する時間波形情報から第二実施形態の手法で得られた演算結果においてもそれぞれ年齢の違いに伴う肌状態の違いを表していることが実証される。
図20には振動波形データを当該時間波形情報として用いる例が示されているが、その振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られる変換波形データを用いた場合でも同様に、年齢に伴う肌状態の違いが可視化できることが確認されている。
図21は、被験者の肌と比較対象肌との類似性と第三実施形態の手法で導出された指標値間の類似度との関係を示す図である。図21には、被験者の肌に関してローレンツプロットされた2つのグラフG1及びG2と、比較対象肌に関してローレンツプロットされたグラフG3とが示されている。グラフG2は、所定の皮膚外用剤を適用した後の被験者の肌を示している。
皮膚外用剤の適用により被験者の肌の触感は改善されたことが確認された。また、グラフG3で示される比較対象肌は、触感の良い肌である。つまり、被験者の実際の肌状態は、グラフG1で示される状態よりもグラフG2で示される状態のほうが、比較対象肌に近い状態であった。
一方、グラフG1、G2、及びG3で示される各肌に関して、第一実施形態の手法により、X'軸及びY'軸の平均距離、X'軸及びY'軸の標準偏差、並びに楕円面積の5種の指標値がそれぞれ算出された。そして、各肌の指標値間の類似度として各特徴ベクトルのなす角度cosθが算出された。
結果、グラフG2とグラフG3との指標値間の類似度がグラフG1とグラフG3との間の類似度よりも高い値を示した。これは、実際の肌状態の類似性と一致しているため、第三実施形態の手法で算出された複数種の指標値間の類似度により、実際の肌状態の近さが定量化できることを実証している。
図22は、被験者の肌と比較対象肌との類似性と第四実施形態の手法で導出されたベクトル間の類似度との関係を示す図である。図22には、被験者の肌から検出された振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られた変換波形データを示す二つのグラフG11及びG12と、比較対象肌から検出された振動波形データに対してウェーブレット変換を適用して得られた変換波形データを示すグラフG13とが示されている。グラフG12は、所定の皮膚外用剤を適用した後の被験者の肌を示している。
各肌の実際の状態は、図21で述べたものと同様である。
一方で、グラフG11、G12、及びG13で示される各肌に関する変換波形データが第四実施形態の手法によりベクトル化され、それらベクトル間の内積演算により得られるcosθがベクトル間の類似度として算出された。
結果、グラフG12とグラフG13とのベクトル間の類似度がグラフG11とグラフG13との間の類似度よりも高い値を示した。これは、実際の肌状態の類似性と一致しているため、第四実施形態の手法で算出されたベクトル間の類似度により、実際の肌状態の近さが定量化できることを実証している。
上述の内容の一部又は全部は、次のようにも特定され得る。但し、上述の内容が以下の記載に制限されるものではない。
<1> 検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程と、
前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する導出工程と、
前記導出された特性情報に基づいて、前記肌の状態を評価する評価工程と、
を含む肌状態評価方法。
<2> 前記導出工程では、
前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
前記変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値を前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出する、
<1>に記載の肌状態評価方法。
<3> 前記導出工程では、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の一つ以上を前記一種以上の指標値として導出する、
<2>に記載の肌状態評価方法。
<4> 前記導出工程では、前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を導出し、
前記評価工程では、
各指標種を座標軸とする座標系に、前記肌に関する前記複数種の指標値に対応する点がプロットされたグラフを提示する、
<2>又は<3>に記載の肌状態評価方法。
<5> 前記導出工程では、
前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の座標点群又は該座標点群に対する座標変換により得られる変換座標点群がプロットされたグラフを前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出し、
前記評価工程では、前記グラフを提示する、
<1>から<4>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<6> 前記導出工程では、
前記取得された時間波形情報を成分とする元ベクトルと該時間波形情報を時間軸上で所定時間シフトしたシフト波形情報を成分とするシフトベクトルとの演算により、前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報を導出する、
<1>から<5>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<7> 前記導出工程では、前記肌に関して導出された前記一種以上の指標値と前記比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度を、前記相互関係特性を示す前記特性情報として導出する、
<2>から<4>のいずれか一つに記載の肌状態評価方法。
<8> 前記導出工程では、前記肌の前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出された前記グラフと、前記比較対象肌に関して前記肌と同様に前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出されたグラフとが対比可能な状態で示される比較情報を、前記相互関係特性を示す前記特性情報として導出する、
<5>に記載の肌状態評価方法。
<9> 前記導出工程では、前記取得された時間波形情報を成分とするベクトルと前記比較対象肌の時間波形情報を成分とするベクトルとの類似度を前記相互関係特性を示す前記特性情報として導出する、
<1>に記載の肌状態評価方法。
<10> 検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する取得手段と、
前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を生成する生成手段と、
前記生成された特性情報又は該特性情報に基づく前記肌の状態の評価情報を出力する出力処理手段と、
を備える肌状態評価装置。
<11> 前記生成手段は、
前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
前記変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値を前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として算出する、
<10>に記載の肌状態評価装置。
<12> 前記生成手段は、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の一つ以上を前記一種以上の指標値として算出する、
<11>に記載の肌状態評価装置。
<13> 前記生成手段は、前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を算出し、
前記出力処理手段は、各指標種を座標軸とする座標系に、前記肌に関する前記複数種の指標値に対応する点がプロットされたグラフを出力する、
<11>又は<12>に記載の肌状態評価装置。
<14> 前記生成手段は、
前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
前記直交座標系の座標点群又は該座標点群に対する座標変換により得られる変換座標点群がプロットされたグラフを前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として生成し、
前記出力処理手段は、前記グラフを出力する、
<10>から<13>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。
<15> 前記生成手段は、
前記取得された時間波形情報を成分とする元ベクトルと該時間波形情報を時間軸上で所定時間シフトしたシフト波形情報を成分とするシフトベクトルとの演算により、前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報を算出する、
<10>から<14>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。
<16> 前記生成手段は、前記肌に関して導出された前記一種以上の指標値と前記比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度を、前記相互関係特性を示す前記特性情報として算出する、
<11>から<13>のいずれか一つに記載の肌状態評価装置。
<17> 前記出力処理手段は、前記生成手段により生成された前記グラフと、前記比較対象肌に関して前記肌と同様に前記時間変動特性を示す前記特性情報として生成されたグラフとを対比可能な状態で出力する、
<14>に記載の肌状態評価装置。
<18> 前記生成手段は、前記取得された時間波形情報を成分とするベクトルと前記比較対象肌の時間波形情報を成分とするベクトルとの類似度を前記相互関係特性を示す前記特性情報として算出する、
<10>に記載の肌状態評価装置。
10 肌状態評価装置(評価装置)
11 CPU
12 メモリ
13 入出力I/F
14 通信ユニット
15 出力装置
16 入力装置
18 肌状態評価プログラム
21 取得部
22 生成部
23 出力処理部

Claims (9)

  1. 検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程と、
    前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する導出工程と、
    前記導出された特性情報に基づいて、前記肌の状態を評価する評価工程と、
    を含み、
    前記導出工程では、
    前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
    前記直交座標系の前記座標点群を、前記直交座標系の直交軸であるx軸及びy軸で示される「y=x」軸及び「y=−x」軸に投影した変換座標点群に更に変換し、
    前記変換座標点群の分布状態を示す一種以上の指標値を前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出する、
    状態評価方法。
  2. 前記導出工程では、前記変換座標点群における、「y=x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、「y=−x」軸における原点からの距離の平均値若しくは標準偏差、又は、該平均値若しくは該標準偏差を用いて算出される比率若しくは分布面積の一つ以上を前記一種以上の指標値として導出する、
    請求項1に記載の肌状態評価方法。
  3. 前記導出工程では、前記変換座標点群の分布状態を示す複数種の指標値を導出し、
    前記評価工程では、
    各指標種を座標軸とする座標系に、前記肌に関する前記複数種の指標値に対応する点がプロットされたグラフを提示する、
    請求項1又は2に記載の肌状態評価方法。
  4. 検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程と、
    前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する導出工程と、
    前記導出された特性情報に基づいて、前記肌の状態を評価する評価工程と、
    を含み、
    前記導出工程では、
    前記取得された時間波形情報を、前記対象時間波形における時間軸上で所定時間離れた振幅値ペアで形成される直交座標系の座標点群に変換し、
    前記直交座標系の座標点群又は該座標点群に対する座標変換により得られる変換座標点群がプロットされたグラフを前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出し、
    前記評価工程では、前記グラフを提示する、
    状態評価方法。
  5. 検出部を肌に間接的又は直接的に接触させ摺動させることで検出された物理量に関する時間波形情報を取得する工程と、
    前記取得された時間波形情報を用いて、対象時間波形の時間変動特性又は該対象時間波形と比較対象肌の時間波形との間の相互関係特性を示す特性情報を導出する導出工程と、
    前記導出された特性情報に基づいて、前記肌の状態を評価する評価工程と、
    を含み、
    前記導出工程では、
    前記取得された時間波形情報を成分とする元ベクトルと該時間波形情報を時間軸上で所定時間シフトしたシフト波形情報を成分とするシフトベクトルとの演算により、前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報を導出する、
    状態評価方法。
  6. 前記導出工程では、前記肌に関して導出された前記一種以上の指標値と前記比較対象肌に関する一種以上の指標値との類似度を、前記相互関係特性を示す前記特性情報として導出する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の肌状態評価方法。
  7. 前記導出工程では、前記肌の前記対象時間波形の前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出された前記グラフと、前記比較対象肌に関して前記肌と同様に前記時間変動特性を示す前記特性情報として導出されたグラフとが対比可能な状態で示される比較情報を、前記相互関係特性を示す前記特性情報として導出する、
    請求項4に記載の肌状態評価方法。
  8. プロセッサ及びメモリを少なくとも備える肌状態評価装置であって、請求項1から7のいずれか一項に記載の肌状態評価方法を実行する肌状態評価装置。
  9. プロセッサ及びメモリを少なくとも備えるコンピュータに請求項1から7のいずれか一項に記載の肌状態評価方法を実行させるコンピュータプログラム。
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