JP2018113591A - 車両用窓ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】デフォッガとともに、FMよりも高周波帯域の放送波を受信するアンテナ素子を用いる場合、このようなアンテナ素子の受信性能の低下を抑制することができる、車両用窓ガラスを提供する。
【解決手段】本発明に係る車両用窓ガラスは、ガラス板と、前記ガラス板上に形成された1対のバスバー、及び前記1対のバスバーを連結する複数の水平加熱線を有するデフォッガと、前記デフォッガに設けられ、前記水平加熱線の少なくとも1つと交差する、少なくとも1つの垂直エレメントと、前記ガラス板上に形成され、前記デフォッガと容量結合する第1アンテナ素子と、を備え、前記第1アンテナ素子は、FMの周波数域より高く、波長がλ1〜λ2の周波数域を有する放送波を受信するように構成され、いずれかの前記バスバーと前記垂直エレメントとの距離、または前記垂直アンテナ間の距離のうち、最も小さい距離をPmin、前記ガラス板の波長短縮率をαとしたとき、Pmin<α・λ1/2を充足する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両用窓ガラスに関する。
自動車に取り付けられる車両用の窓ガラス(特に、リアガラス)の表面には、結露又は氷結を除去するためのデフォッガ、及び所定の電波を受信するためのアンテナ等が設けられることがある。デフォッガは、窓ガラスの水平方向全体に亘って延びる複数の水平加熱線を有している。また、アンテナとしては、例えば、DAB(Digital Audio Broadcasting。以下、「DAB」と称する)の放送を受信するためのDABアンテナ素子が用いられることがあり、特許文献1では、DABアンテナ素子をデフォッガとともに設けた車両用の窓ガラスが提案されている。
特開2014−216805号公報
ところが、本発明者は、上記のような窓ガラスにおいては、次のような問題が生じることを見出した。すなわち、上記のような窓ガラスでは、DABアンテナ素子で受信すべき周波数帯域の電波が、水平加熱線において定在波として励起することで、DABアンテナ素子の受信性能が低下するという問題が生じることを見出した。また、本発明者は、このような問題は、DABだけではなく、例えば、FMよりも高周波の波長域を有する放送波、例えば、デジタルテレビなどの放送波を受信するアンテナ素子でも生じることを見出した。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、デフォッガとともに、FMよりも高周波帯域の放送波を受信するアンテナ素子を用いる場合、このようなアンテナ素子の受信性能の低下を抑制することができる、車両用窓ガラスを提供することを目的とする。
本発明に係る車両用窓ガラスは、ガラス板と、前記ガラス板上に形成された1対のバスバー、及び前記1対のバスバーを連結する複数の水平加熱線を有するデフォッガと、前記デフォッガに設けられ、前記水平加熱線の少なくとも1つと交差する、少なくとも1つの垂直エレメントと、前記ガラス板上に形成され、前記デフォッガと容量結合する第1アンテナ素子と、を備え、前記第1アンテナ素子は、FMの周波数域より高く、波長がλ1〜λ2の周波数域を有する放送波を受信するように構成され、いずれかの前記バスバーと前記垂直エレメントとの距離、または前記垂直アンテナ間の距離のうち、最も小さい距離をPmin、前記ガラス板の波長短縮率をαとしたとき、Pmin<α・λ1/2を充足する。
なお、本発明における「水平」とは、車両の設置面と概ね平行な方向を意味し、「垂直」とは「水平」と概ね直交する方向をいう。したがって、「水平」、「垂直」は必ずしも厳密な方向を示すものではなく、例えば、「水平」と称しても、車両の設置面と厳密に平行ではなく、多少傾いていてもよいこととする。そして、この「水平」、「垂直」の意味は、本明細書において同じである。
上記車両用窓ガラスにおいては、いずれかの前記バスバーと前記垂直エレメントとの水平距離、または前記垂直エレメント間の水平距離のうち、最も大きい距離をPmaxとしたとき、Pmax<α・λ1/2を充足するように構成できる。
上記車両用窓ガラスにおいては、前記Pmin,α,及びλ1が、Pmin≦α・3λ1/8を充足するように構成ができる。
上記各車両用窓ガラスにおいては、前記ガラス板上に形成され、FMの周波数帯域より高い周波数帯域の放送波を受信する第2アンテナ素子をさらに備えることができ、前記第2アンテナ素子は、前記デフォッガと容量結合するように構成できる。
上記車両用窓ガラスにおいて、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子は、共通の給電部から給電されるように構成できる。
上記車両用窓ガラスにおいて、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子は、一体的に接続することができる。
上記車両用窓ガラスにおいて、前記第1アンテナ素子の給電部と前記垂直エレメントとの距離、及び前記垂直エレメントの長さの合計は、α・λ1/4以上とすることができる。
上記車両用窓ガラスにおいて、前記第1アンテナ素子の給電部と前記垂直エレメントとの距離、及び前記垂直エレメントの長さの合計は、α・λ2/4以上とすることができる。
上記車両用窓ガラスにおいて、前記第1アンテナ素子が、DABの放送波を受信するように構成することができ、前記第1アンテナ素子と前記デフォッガとの距離を15mm以下とすることができる。
本発明に係る車両用窓ガラスによれば、デフォッガとともに、FMよりも高周波帯域の放送波を受信するアンテナ素子を用いる場合、このようなアンテナ素子の受信性能の低下を抑制することができる。
本発明に係る車両用窓ガラスの一実施形態が実装された自動車のリアガラスの正面図である。 実施例及び比較例に係る窓ガラスのモデルを示す図である。 実施例1及び比較例1、2の受信性能を示すグラフである。 実施例2、3及び比較例1の受信性能を示すグラフである。 実施例3〜5及び比較例1の受信性能を示すグラフである。 実施例8に係る窓ガラスを示す平面図である。 実施例6〜12及び比較例1のDAB周波数域における受信性能を示すグラフである。 実施例6のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例7のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例8のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例9のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例10のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例11のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例12のデフォッガ上の電流分布を示す図である。 実施例13〜17及び比較例1のDAB周波数域における受信性能を示すグラフである。
以下、本発明に係る車両用窓ガラスの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態に係る車両用窓ガラスが適用される自動車のリアガラスの正面図である。なお、以下では、説明の便宜のため、図1の向きを基準に、図1の上下方向を、上下方向または垂直方向、図1の左右方向を、左右方向または水平方向と称することがあるが、この向きは、本発明を限定するものではない。
<1.車両用窓ガラス>
図1に示すように、本実施形態に係る車両用窓ガラスは、ガラス板1上に、デフォッガ2と、FM−DAB共用アンテナ素子3(以下、単にアンテナ素子という)とが、実装されている。以下、各部材について、順に説明する。
<1−1.ガラス板>
ガラス板1は、自動車用の公知のガラス板を利用することができる。例えば、ガラス板1として、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラス若しくはグリーンガラス、又はUVグリーンガラスが利用されてもよい。ただし、このようなガラス板1は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、日射吸収率、可視光線透過率などが安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラスの組成の一例と、熱線吸収ガラス組成の一例を示す。
(クリアガラス)
SiO2:70〜73質量%
Al23:0.6〜2.4質量%
CaO:7〜12質量%
MgO:1.0〜4.5質量%
2O:13〜15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23):0.08〜0.14質量%
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe23に換算した全酸化鉄(T−Fe23)の比率を0.4〜1.3質量%とし、CeO2の比率を0〜2質量%とし、TiO2の比率を0〜0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl23)をT−Fe23、CeO2及びTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
なお、ガラス板1の種類は、クリアガラス又は熱線吸収ガラスに限られず、実施の形態に応じて適宜選択可能である。例えば、ガラス板1は、アクリル系、ポリカーボネート系等の樹脂窓であってもよい。
また、このようなガラス板1は、単一のガラス板で構成するほか、複数のガラスで樹脂などの中間膜を挟持した合わせガラスであってもよい。なお、ガラス板の波長短縮率αは、ガラス板の厚み等によっても変更されるが、例えば一枚のガラス板にデフォッガ、アンテナ素子等が形成されている場合は約0.7であり、二枚のガラス板により、中間膜が挟持された合わせガラスにおいては、約0.5である。
<1−2.デフォッガ>
次に、デフォッガ2について説明する。図1に示すように、デフォッガ2は、ガラス板1における垂直方向の中央付近に配置されており、ガラス板1の左右方向全体に亘って延びるように形成されている。具体的には、このデフォッガ2は、ガラス板1の両側縁に沿って上下方向に延びる一対の給電用のバスバー21a、21bを備えている。ここでは、説明の便宜のため、左側のバスバーを第1バスバー21aと称し、右側のバスバーを第2バスバー21bと称することとする。そして、両バスバー21a、21bの間には、複数の水平エレメント(水平加熱線)22が所定間隔をおいて平行に配置されており、バスバー21a、21bからの給電により、防曇用の熱が発生するようになっている。また、このデフォッガ2には、上下方向に延びる2本の垂直エレメント41、42が設けられている。ここでは、説明の便宜のため、左側の垂直エレメントを第1垂直エレメント41と称し、右側の垂直エレメントを第2垂直エレメント42と称することとする。これら垂直エレメント41、42は、すべての水平エレメント22と交差するように、最も上方にある水平エレメント(以下、最上部水平エレメントという)221と、最も下方にある水平エレメント(以下、最下部水平エレメントという)222とを結ぶように延びている。
<1−2−1.垂直エレメントの配置>
ところで、デフォッガ2には常時、定在波が発生しており、この定在波の波長帯域はデフォッガ2の水平エレメント22の長さに起因する。そして、デフォッガ2の近傍に後述するアンテナ素子3が配置され、このアンテナ素子3がデフォッガ2と容量結合または直接結合している場合、水平エレメント22の長さが、アンテナ素子3で受信する放送波の波長λの半分、つまりλ/2の整数倍であれば、アンテナ素子3は、デフォッガ2に発生する定在波の影響を受けることが本発明者によって見出された(但し、ここでのλはガラス板の波長短縮率を掛けたものとする)。すなわち、デフォッガ2で受信した電波が、デフォッガ2においてアンテナ素子3の周波数帯域の半分の定在波として励起すれば、その励起されるエネルギー分だけ、容量結合または直接結合によりデフォッガ2からアンテナ素子に供給されるエネルギーが、アンテナ素子3の周波数帯域の電波がデフォッガ2にトラップされる。その結果、アンテナ素子3の受信感度が低下することが分かった。但し、本実施形態のように、水平エレメント22が垂直エレメント41、42によって区切られている場合には、区切られた水平エレメントの長さ、つまりバスバー21a、21bと垂直エレメント41、42との間隔や、隣接する垂直エレメント41、42間の間隔に起因して定常波がコントロールができ、その結果、アンテナ素子3の受信感度の低下を抑制できることも分かった。
また、定在波が発生し、その周波数の整数倍が、アンテナ素子3の周波数帯域に対応したものになると、アンテナとしての受信性能が低下し、アンテナ素子3が十分機能しなくなる。しかし、上記のように、バスバー21a、21bと垂直エレメント41、42との間隔や、隣接する垂直エレメント41、42間の間隔を調整し、定在波の周波数をコントロールすることで、受信性能の低下を防止することができる。以下、この点について、検討する。
ここでは、第1バスバー21aと第1垂直エレメント42との水平方向の間隔を第1間隔P1、両垂直エレメント41、42の水平方向の間隔を第2間隔P2、第2垂直エレメント42と第2バスバー21bとの水平方向の間隔を第3間隔P3と称することとする。なお、これらの間隔Pは、下端部同士の間隔とする。
そして、これら3つの間隔のうち、最も小さい間隔をPmin、最も大きい間隔をPmaxとし、アンテナ素子3によるDAB放送波の波長域をλ1〜λ2、上述したガラス板1の波長短縮率をαとすると、以下の式(1)〜(3)のいずれかを充足するように、垂直エレメント41、42が配置される。
Pmin<α・λ1/2 (1)
Pmax<α・λ1/2 (2)
Pmin≦α・3λ1/8 (3)
なお、DABのバンドIIIの周波数域である170〜240MHzに対応する波長域は、一般的なガラス板の波長短縮率を考慮すると(α=0.65とする)、約813〜1147mm(=αλ1〜αλ2)となる。
式(1)は、区切られた水平エレメントの間隔のうち、最も小さい間隔Pminが、α・λ1/2よりも小さいことを示している。したがって、複数の間隔のうち、少なくとも1つの間隔がα・λ1/2よりも小さく、これによって定在波によるアンテナ素子の受信性能の低下が抑制される。式(2)は、区切られた水平エレメントの間隔のうち、最も大きい間隔Pmaxが、α・λ1/2よりも小さいことを示している。したがって、すべての間隔がα・λ1/2よりも小さく、これによって定在波によるアンテナ素子の受信性能の低下が抑制される。すなわち、式(1)における垂直エレメントの配置よりもさらに受信性能の向上が可能となる。
また、式(3)は、区切られた水平エレメントの間隔のうち、最も小さい間隔Pminが、α・3λ1/8以下であることを示している。この式(3)では、最も小さい間隔Pminを検討しているものの、この間隔は、α・λ1/2よりもかなり低くなるため、これによって定在波によるアンテナ素子の受信性能の低下が抑制される。
なお、上記式(1)〜(3)では、主としてDABの放送波を考慮し、FMの放送波は考慮していない。その理由は、次の通りである。FMの放送波の周波数は76〜108MHz(対応する波長はλ3〜λ4)であり、波長短縮率αを考慮した波長は約1806〜2766mm(=αλ3〜αλ4)である。これに対して、一般的な車両の水平エレメントは、例えば、垂直エレメントがデフォッガの中心付近に1つ設けられると、0.5m程度に区切られるため、FM放送波の半波長αλ/2よりも大幅に短い。したがって、垂直エレメントを1つでも設けると、FM放送波の受信性能は定在波の影響を受けがたい。これに対して、DABの放送波の波長は、上記のように、約813〜1147mmであるため、定在波の影響を受けやすい。したがって、本実施形態では、主としてDABの放送波の受信性能の向上を目的とし、上記間隔Pを考慮して垂直エレメント41、42を設けている。
<1−2−2.垂直エレメントの長さ>
続いて、垂直エレメント41,42の長さLについて検討する。垂直エレメント41,42の長さLと、給電部31から垂直エレメント41、42までの上下方向の長さDは、以下の式(4)、(5)を充足するように設けられることが好ましい。
L+D≧α・λ1/4 (4)
L+D≧α・λ2/4 (5)
式(4)を充足するように、垂直エレメントの長さが長くなると、アンテナの実効高さが高くなるため、受信性能を向上することができる。そして、式(5)を充足すると、さらに受信性能を向上することができる。
<1−3.アンテナ素子>
次に、アンテナ素子3について説明する。本実施形態に係るアンテナ素子3は、上記のように、FMアンテナとDABアンテナとを兼用している。具体的には、以下の通りである。まず、このアンテナ素子3は、ガラス板1において、デフォッガ2の上方に配置されており、ガラス板1の上端縁の中央よりも左寄りに配置された給電部31を備えている。そして、この給電部31から下方に延びる第1垂直部32と、この第1垂直部32の下端から水平方向に左右に延びる第1水平部33と、を備えており、これら第1垂直部32と第1水平部33とで、主としてDABの放送波を受信する。さらに、このアンテナ素子3は、第1垂直部32の途中から左側へ延びる第2水平部34、この第2水平部34の左端から下方へ延びる第2垂直部35、及び第2垂直部35の下端から右側へ延びる第3水平部36を備えた略J字状の部位を有しており、この部位で、主としてFMの放送波を受信する。なお、第1水平部33と第3水平部36は、水平方向に間隔をあけて配置され、且つ上下方向にほぼ同じ位置に配置されている。
そして、これら第1水平部33と第3水平部36は、デフォッガ2の最上部水平エレメント221から、それぞれ所定間隔Sを開けて配置されている。このとき、第1水平部33と最上部水平エレメント221との間隔Sは15mm以下であることが好ましく、特に、10〜15mmであることが好ましい。これにより、アンテナ素子3とデフォッガ2とが容量結合され、デフォッガ2もアンテナとして利用されるため、受信性能が向上する。
また、上記アンテナ素子3の給電部は、リード線などを介してFM用及びDAB用のチューナー(図示省略)にそれぞれ接続されている。チューナー前にアンプを挿入してもよい。このようにすると、コストの低減が可能となる。また、DABとFM用アンテナを兼用しているため、アンテナ素子3の設置面積を低減することができる。
<1−4.材料>
上記のようなデフォッガ2、各アンテナ素子3は、導電性を有する導電性材料をガラス板1の表面に所定の線状のパターンを有するように積層することで形成することができる。そのような材料としては、導電性を有していればよく、実施の形態に適宜選択可能であり、一例として、銀、金、白金等を挙げることができる。この上記各部材は、例えば、銀粉末、ガラスフリット等を含む導電性の銀ペーストをガラス板1の表面に印刷し焼成することによって形成することができる。
<1−5.製造方法>
次に、本実施形態に係る窓ガラスの製造方法を説明する。本実施形態に係る窓ガラスのガラス板1は、プレスによって成形するプレス成形工法、ガラス板1の自重で曲げる自重曲げ工法等によって成形することができる。
ここで、それぞれの工法においてガラス板1を成形する際には、ガラス板1は加熱炉内で軟化点付近まで加熱される。この加熱炉内に搬入される前には、ガラス板1は、平板状に形成されており、上述した各材料用のペースト、例えば、銀ペーストがこのガラス板1の表面に印刷される。そして、ガラス板1を加熱炉内に搬入することで、ガラス板1を成形すると共に、ガラス板1に印刷された銀ペーストを焼成して、デフォッガ2、アンテナ素子3を形成することができる。
<2.特徴>
以上のように、本実施形態では、デフォッガ2のバスバー21a,21bと垂直エレメント41、42との間隔、及び垂直エレメント41、42間の間隔を調整することで、デフォッガ2に発生する定在波の影響を低減し、アンテナ素子3の受信性能の低下を抑制することができる。
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は適宜組み合わせることができる。
<3−1>
上記実施形態のデフォッガ2には2つの垂直エレメント41、42を設けているが、上述した式(1)〜(3)のいずれかを充足する限り、垂直エレメントの数は特には限定されない。また、垂直エレメントの長さも特には限定されず、複数の垂直エレメントの長さが異なっていてもよい。
<3−2>
上記実施形態では、1つのアンテナ素子3が設けられているが、アンテナ素子の構成は特には限定されない。例えば、上記実施形態では、FM用とDAB用を兼用したアンテナ素子を用いているが、これらを個別に分けてもよい。また、AMやデジタルテレビの放送波を受信するアンテナを設けることができる。特に、デジタルテレビの放送波は、DABの放送波と同様に、波長が短いため、その波長域を考慮して、上記式(1)〜(5)を充足するように垂直エレメントを配置すれば、定在波の影響による受信性能の低下を抑制することができる。また、本発明の目的からすると、定在波の影響を受けやすいDAB用アンテナあるいはデジタルテレビ用アンテナのみが設けられていてもよい。
また、アンテナ素子の形状は特には限定されず、種々の形状が可能である。但し、デフォッガ2との容量結合を行うには、デフォッガに沿って延びる水平部が設けられていることが好ましい。さらに、アンテナ素子3の位置は特には限定されず、デフォッガ2の下側に配置されていてもよい。また、アンテナ素子3とデフォッガ2とを直接結合してもよい。
例えば、セダンタイプの車両では、リアガラスの取付角度が水平に近いため、アンテナ素子3の受信性能は、トランクやリアトレイの影響を受けやすい。したがって、セダンタイプでは、アンテナ素子3をデフォッガ2の上方に設けることが好ましい。一方、ハッチバックタイプの車両のように、ガラスの取付角度が垂直に近い場合、セダンタイプのトランクのような金属部分がないため、影響は小さい。したがって、この場合には、アンテナ素子3をデフォッガ2の下方に設けてもよい。
<3−3>
上記実施形態では、本発明に係る窓ガラスを自動車のリアガラスに適用した例を示したが、これ以外のガラスに適用することもできる。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されない。
<1.垂直エレメントによる水平エレメントの区切られた長さの検討>
上述したように、デフォッガの水平エレメントは、垂直エレメントによって区切られる。そして、本発明者は、区切られた水平エレメントの長さによって、デフォッガに生じる定在波がアンテナ素子の受信性能に影響を与えることを見出した。そこで、以下では、区切られた水平エレメントの長さと受信性能の関係について検討する。
ここでは、図2に示すモデルを用い、これに垂直エレメントを適宜配置し、垂直エレメントの数及び位置を変更したときの受信性能を算出した。図2中の寸法の単位はmmである。そして、FM(76〜108MHz)とDABのバンド3(174〜240MHz)における受信性能を3次元電磁界シミュレーションソフト(タイムドメイン3D電磁界シミュレーションソフト)により算出した。このシミュレーションにおいては、厚みが3.1mmの一般的な強化ガラスを想定し、ガラス板をモデリングした。また、デフォッガ、アンテナ素子の線幅は1mmとし、ガラス板の短縮率は0.65とした。シミュレーションの手順としては、(1)車両、誘電体、アンテナ等をモデリングし、材質を設定、(2)車両、誘電体、アンテナ等に妥当なメッシュを設定、を行った上で、シミュレーションを実行した。このようなシミュレーションの設定及び実行は、以下に示すすべての実施例及び比較例の検討において共通である。
また、以下では、波長に短縮率をかけた数値を短縮波長と称することとする。そして、DABの周波数域に対応する短縮波長αλ1〜αλ2は813〜1147mmであり、よって、短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2は406〜574mmである。また、FMの周波数域に対応する短縮波長αλ3〜αλ4は1806〜2566mmであり、よって、短縮半波長αλ3/2〜αλ4/2は903〜1283mmである。
そして、垂直エレメントの数及び位置を以下のように設定した。以下では、デフォッガの水平方向の中心位置を0とし、左側の第1バスバーの位置を−465mm,右側の第2バスバーの位置を+465mmと規定した。また、各垂直エレメントは最上部水平エレメントと最下部水平エレメントとの間に配置されている。なお、区切られた水平エレメントの長さは、上記実施形態で説明した間隔Pであるため、以下では,単に、「間隔P」として説明することがある。
また、以下の表2は、上記実施例1〜5及び比較例における、FM周波数域及びDABのバンド3の周波数域での受信性能の平均値及び最低値を示している。
まず、実施例1と比較例1,2について検討する。図3は、これらの周波数と受信性能の関係を示すグラフである。図3に示すように、実施例1及び比較例2はFM周波数域での受信性能は概ね同じであり、且つ良好である。一方、比較例1は受信性能が低くなっている。これは、比較例1では、区切られた水平エレメントの長さ(間隔P)が930mmであり、FMの周波数域に対応する短縮半波長αλ3/2〜αλ4/2の範囲(903〜1283mm)に入っているからであると考えられる。したがって、受信性能が定在波の影響を大きく受けている。
一方、DABの周波数域では、比較例1の間隔Pは、DABの周波数域に対応する短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2(406〜574mm)よりも大きい。また、比較例2における2つの間隔Pはいずれも、短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2(406〜574mm)の範囲に入っている。したがって、比較例1,2はいずれも、上述した式(1)を充足しておらず、受信性能が低くなっている。特に、200MHz近傍での受信性能の低下が著しい。一方、実施例1は、3つの間隔Pのうち、1つは短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2(406〜574mm)の範囲に入っているが、その他の2つの間隔Pは、この範囲よりも小さい。したがって、実施例1は,上述した式(1)を充足している。その結果、表2に示すように、受信性能の最低値が比較例1,2よりも高くなっている。
次に、実施例2,3について検討する。これらの実施例2,3は、いずれも垂直エレメントの数が4であるが、間隔Pが相違する。すなわち、実施例2は4つの間隔Pのうち1つだけ(540mm)が、上記短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2(406〜574mm)の範囲に入っている。一方、実施例3は4つの間隔Pのいずれも、上記短縮半波長αλ1/2〜αλ2/2(406〜574mm)の範囲より低い。したがって、実施例2は上記式(1)を充足し、実施例3は上記式(2)を充足している。
結果は、図4に示すとおりである。同図に示すように、実施例2,3ともにFM周波数域での受信性能は同じであるが、DABの周波数域では、実施例2において,約180MHz以下の周波数域で受信性能が低下していることが分かる。一方、実施例3は、DABの周波数全体に亘って高い受信性能を示している。そして、いずれの周波数域での受信性能も、比較例1より概ね高くなっている。
次に、上述した実施例3とともに、実施例4、5について検討する。これらの実施例4〜6は、垂直エレメントの数が相違している。すなわち、実施例4は垂直エレメントの数が3であり、4つの間隔Pは上記式(3)を充足している。実施例3は垂直エレメンの数が4であり、5つの間隔Pは上記式(2)を充足している。そして、実施例5は垂直エレメントの数が5であり、6つの間隔Pは上記式(3)を充足している。結果は、図5に示すとおりである。
同図及び表2に示すように、いずれも式(1)及び式(2)を充足しているが、垂直エレメントの数が増えるほど、受信性能が向上している。例えば、実施例3は式(2)を充足し、式(3)を充足していないが、式(3)を充足する実施例4よりも概ね受信性能が高くなっている。したがって、少なくとも式(2)を充足している限りは、垂直エレメントの数が多いほど、受信性能が高くなっていることが分かる。
<2.垂直エレメントの長さの検討>
次に、垂直エレメントの長さの検討を行う。以下では、実施例6〜12を準備した。これらはいずれも垂直エレメントの数を4本とし、間隔Pは左から135mm,164mm,330m,164mm,135mmとした。そして、以下の表3に示すように、垂直エレメントの長さLが相違するようにした。なお、給電部から垂直エレメントまでの上下方向の長さDは、いずれも100mmとしている。また、垂直エレメントの長さに係る式(4)については、L+D≧α・λ1/4(203mm)となり、式(5)については、L+D≧α・λ2/4(287mm)となる。
各垂直エレメントは、最上部水平エレメントを起点として下方に延びるようにし、表2の交差する水平エレメントの数は、最上部水平エレメントを含まない水平エレメントの数を示している。例えば、図6は実施例8を表している(寸法は、図2で示したとおりであり、垂直エレメント以外は同じである)。そして、実施例6〜12は、いずれも間隔Pについては、式(2)を充足しているが、実施例6、7は垂直エレメントの長さに関する式(4),(5)を充足してない。一方、実施例8〜12は上記式(4)を充足し、実施例11,12は、式(5)も充足している。
以上の実施例6〜12について、DABの周波数域での受信性能を図7に示すとおり算出した。なお、図7には参考として垂直エレメントの長さが0m(垂直エレメントが設けられていない)である比較例1も示している。また、以下の表4に、実施例6〜12における、DABのバンドIIIの周波数域での受信性能の平均値及び最低値を示している。
図7に示すように、DABの周波数域では、実施例6〜12は、いずれも比較例1のような著しく低い受信性能の周波数域を有しておらず、比較例1に比べて高い受信性能を得ている。このうち、実施例11、12のようにL+Dの長さが、式(4)を充足する、αλ1/4(203mm)以上であれば、DABの周波数域全体に亘って、受信性能の落ち込みがない。このうち、実施例12は、L+Dの長さが、式(5)を充足する、αλ2/4(287mm)以上であり、特に受信性能が高い周波数域を有している。
次に、実施例6〜12におけるデフォッガ上の電流分布について、図8〜図14を参照しつつ説明する。図8〜図14は、それぞれ、実施例6〜12におけるデフォッガ上の電流分布を色分けした図である。周波数は、195MHzとしている。これらの図においては、点線で囲まれている領域が概ね−60〜−30dBの電流の分布を示し、それ以外の領域が概ね−30〜0dBの電流の分布を示している(色分けが視認しがたいため、点線で領域を示している)。
図8〜図14に示すように、実施例6から実施例12にいくにしたがって、デフォッガ上の点線で囲まれた領域が増加している。特に、水平エレメントにおいて電流値が低い領域が増加しており、定在波の発生が抑制されている。例えば、図14に示す実施例12では大半の領域の水平エレメントにおいて電流値が低く、定在波の発生がさらに抑制されていることが分かる。
一方、垂直エレメントについては、やや視認しがたいが、実施例6から実施例12にいくにしたがって、垂直エレメントでの電流値が高くなっている。したがって、受信性能が高くなっている。以上の点は、上述した図7の結果と一致している。
<3.アンテナ素子とデフォッガとの距離の検討>
続いて、アンテナ素子とデフォッガとの距離について検討する。以下では、実施例13〜17を準備した。これらはいずれも垂直エレメントの数を4本とし、間隔Pは左から75mm,226mm,328m,226mm,75mmとした。そして、以下の表5に示すように、アンテナ素子の第1水平部及び第3水平部との最上部水平エレメントとの距離Sが相違するようにした。なお、実施例13は距離Sが0mmであるため、アンテナ素子とデフォッガとは直接結合している。
以上の実施例13〜17について、DABの周波数域での受信性能を図15に示すとおり算出した。図15中には、参考のため、比較例1も示している。また、以下の表6には、実施例13〜17における、DABのバンドIIIの周波数域での受信性能の平均値及び最低値を示している。
図15に示すように、DABの周波数域では、実施例13〜17は、いずれも比較例1のような著しく低い受信性能の周波数域を有しておらず、比較例1に比べて高い受信性能を得ている。このうち、実施例13〜16のように、距離Sが15mm以下であると、DABの周波数域全体に亘って、受信性能の落ち込みがないことが分かった。
1 :ガラス板
2 :デフォッガ
21a :バスバー
21b :バスバー
22 :水平エレメント(水平加熱線)
3 :アンテナ素子
41、42:垂直エレメント

Claims (9)

  1. ガラス板と、
    前記ガラス板上に形成された1対のバスバー、及び前記1対のバスバーを連結する複数の水平加熱線を有するデフォッガと、
    前記デフォッガに設けられ、前記水平加熱線の少なくとも1つと交差する、少なくとも1つの垂直エレメントと、
    前記ガラス板上に形成され、前記デフォッガと容量結合または直接結合する第1アンテナ素子と、
    を備え、
    前記第1アンテナ素子は、FMの周波数域より高く、波長がλ1〜λ2の周波数域を有する放送波を受信するように構成され、
    いずれかの前記バスバーと前記垂直エレメントとの距離、または前記垂直アンテナ間の距離のうち、最も小さい距離をPmin、前記ガラス板の波長短縮率をαとしたとき、Pmin<α・λ1/2を充足する、車両用窓ガラス。
  2. いずれかの前記バスバーと前記垂直エレメントとの水平距離、または前記垂直エレメント間の水平距離のうち、最も大きい距離をPmaxとしたとき、Pmax<α・λ1/2を充足する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
  3. 前記Pmin,α,及びλ1が、Pmin≦α・3λ1/8を充足する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
  4. 前記ガラス板上に形成され、FMの周波数帯域より高い周波数帯域の放送波を受信する第2アンテナ素子をさらに備えており、
    前記第2アンテナ素子は、前記デフォッガと容量結合する、請求項1から3のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
  5. 前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子は、共通の給電部から給電されている、請求項4に記載の車両用窓ガラス。
  6. 前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子は、一体的に接続されている、請求項5に記載の車両用窓ガラス。
  7. 前記第1アンテナ素子の給電部と前記垂直エレメントとの距離、及び前記垂直エレメントの長さの合計は、α・λ1/4以上である、請求項1から6のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
  8. 前記第1アンテナ素子の給電部と前記垂直エレメントとの距離、及び前記垂直エレメントの長さの合計は、α・λ2/4以上である、請求項1から6のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
  9. 前記第1アンテナ素子が、DABの放送波を受信するように構成され、
    前記第1アンテナ素子と前記デフォッガとの距離が15mm以下である、請求項1から8のいずれかに記載の車両用窓ガラス。
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