JP2018113274A - バリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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【課題】透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムの製造方法の提供。【解決手段】本発明によるバリア性フィルムの製造方法は、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法であって、前記第1の化学気相蒸着層を、下記式:E1=W÷(S×P×F)0.05≦E1≦1.20(式中、E1はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、バリア性フィルムの製造方法に関し、さらに詳細には、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法に関する。
近年、酸素あるいは水蒸気等に対するバリア性材料として、フィルム基材に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等で形成してなる透明ガスバリア性フィルムが注目されている。従来のポリ塩化ビニリデンを積層したバリア性フィルムは、ガス遮断性には優れるが、包装材の廃棄時に塩素が発生することが問題となる。また、アルミ箔等を積層したバリア性フィルムは、ガス遮断性には優れるが、不透明であるため、内容物の誤認による事故を避けるために、医薬品用等の内容物の視認性が要求される用途では用いることができない。
バリア性フィルムの用途としては、太陽電池、有機ELディスプレイ、有機EL照明、液晶ディスプレイ、電子ペーパーなどのパネルに用いられる基材が挙げられる。また、液晶ディスプレイのバックライトの材料として、耐湿熱性に課題のある量子ドット材料が用いられることがあり、量子ドット材料を保護する基材にもバリア性が求められる。これらの基材には、バリア性と透明性だけでなく、耐候性や耐湿熱性といった耐久性が求められる。
上記のバリア性や透明性といった技術的課題に対して、プラスチックス材と、その上に設けた少なくともケイ素、酸素、炭素を含む有機ケイ素化合物の重合体で形成された第1層と、第1層の上に設けたケイ素酸化物の第2層とからなるガス遮断性積層プラスチックス材が提案されている(特許文献1参照)。また、プラズマCVD法によりケイ素、酸素、炭素の三元素基準で炭素濃度が25乃至30元素%の領域を含む強化密着層を基板上に形成したのち、炭素濃度が5元素%以下のバリア層をさらに形成した蒸着膜が提案されている(特許文献2参照)。
特開平5−345383号公報 特開2005−97678号公報
特許文献1に記載のプラスチックス材や特許文献2に記載の蒸着膜は耐候性について十分な検討がされておらず、成膜時のバリア性能が、耐候性試験後には劣化するという新たな技術的課題を知見した。また、特許文献2の実施例では、分子中のC元素の割合が大きいHMDSOのみを用いているにも関わらず密着層におけるC濃度が30元素%以下であることから、分解がある程度進んでいると推察される。これは、ガス量・成膜圧力・電極サイズのような処理条件に対して放電の出力が大きいということを示す。つまり、プラズマの強度が強く、樹脂基材へダメージを与えていることとなる。さらには、実施例に記載の密着層の厚みが数nm以下であるため、得られた薄膜は島状構造になっていると考えられ、樹脂の表面を完全には覆えていないことから、バリア層形成時に基材にダメージが加わるという技術的課題がある。
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、樹脂基材上に、化学気相成長法(CVD法)により第1の化学気相蒸着層を成膜する際に、成膜条件のパラメータを調節することで、透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムを提供できることを知見した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明の一態様によれば、
樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法であって、
前記第1の化学気相蒸着層を、下記式:
=W÷(S×P×F)
0.05≦E≦1.20
(式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする、方法が提供される。
本発明の態様においては、前記第2の化学気相蒸着層を、下記式:
=W÷(S×P×F)
<E
1.00≦E≦3.00
(式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の供給ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することが好ましい。
本発明の態様においては、前記第1の化学気相蒸着層の厚さTが、10nm以上1000nm以下であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記第2の化学気相蒸着層の厚さTが、50nm以上1000nm以下であることが好ましい。
前記第2の化学気相蒸着層上に、少なくとも1種のアルコキシドと1種の水溶性高分子を含有するバリアコート液を加水分解及び重縮合して得られるバリアコート層を設けてもよい。
本発明の態様においては、前記バリア性フィルムの全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
本発明の態様においては、前記バリア性フィルムのヘイズが10%以下であることが好ましい。
本発明によれば、透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れたバリア性フィルムの製造方法を提供することができる。本発明の製造方法により得られたバリア性フィルムは、視認性の要求される医療用包装材やディスプレイ用パネル等に好適に用いることができる。
本発明のバリア性フィルムの一実施形態を示した概略断面図である。
<バリア性フィルムの製造方法>
本発明は、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法に関するものである。より詳細には、樹脂基材上に、有機珪素化合物の1種以上を含む成膜用モノマーガスを原料とし、キャリアガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、かつ、プラズマ発生装置等を利用するプラズマ化学気相成長法を用いて珪素酸化物を含む第1および第2の化学気相蒸着層を形成することができる。
本発明の製造方法においては、第1の化学気相蒸着層を、下記式:
=W÷(S×P×F)
0.05≦E≦1.20
(式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする。なお、成膜時の使用ガスの合計流量とは、上記の成膜用モノマーガス、キャリアガス(不活性ガス)、酸素供給ガスの合計流量を指す。さらに、上記の成膜条件は、
0.10≦E≦1.00
を満たすことが好ましく、
0.20≦E≦0.80
を満たすことがより好ましい。
プラズマ強度Eが上記数値範囲内であれば、プラズマ強度が適度であるため、樹脂基材上に蒸着膜を直接形成してもプラズマによる樹脂基材へのダメージを抑え、耐候性を向上させることができる。なお、本発明においては、基材上に予め易接着層等の層が設けられた樹脂基材を用いてもよく、このような場合にも、樹脂基材上に蒸着膜を直接形成することに該当する。
本発明の製造方法においては、第2の化学気相蒸着層を、下記式:
=W÷(S×P×F)
<E
1.00≦E≦3.00
(式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜すること好ましい。さらに、上記の成膜条件は、
1.10≦E≦2.50
を満たすことがより好ましく、
1.20≦E≦2.00
を満たすことがさらに好ましい。
第2の化学気相蒸着層は第1の化学気相蒸着層上に形成されるため、プラズマ強度Eはプラズマ強度Eより高くても、第2の化学気相蒸着成膜時のプラズマによる樹脂基材へのダメージがほとんど無い。プラズマ強度Eは、上記数値範囲を満たすことで、よりバリア性の高い緻密な膜を形成することができる。
上記において、プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の従来公知のプラズマ発生装置を使用することができる。例えば、平行平板型プラズマCVD装置やロールツーロール型プラズマCVD装置を用いることが好ましい。
平行平板型プラズマCVD装置(アネルバ製、型番:PED−401)を用いる場合、例えば、上部電極と下部電極の距離は28mmとする。直径325mmの下部電極に40kHzの高周波電力を導入可能とする。また下部電極をチラーにより温度設定が可能とする。上部電極はガスを導入するためシャワーヘッドになっている。プラズマCVD装置外に、成膜に用いる原料を導入するためのバブラーを設置し、ウォーターバスにより温度設定を可能とする。バブラーからニードルバルブを介して、プラズマCVD装置内にガス化した原料が導入される。ニードルバルブの調整によりバブラーの圧力を変更できる。
ロールツーロール型プラズマCVD装置を用いる場合、例えば、長尺の樹脂基材に成膜でき、成膜用のメインロールが直径400mm、幅350mmである装置を用いる。放電部(マスクの開口部)は、流れ方向に170mm、幅方向に275mmとする。放電部にはスパッタ装置で用いられるようなマグネットをメインロールからの距離70mmに配置する。また、放電部近傍にガスを導入するためのT字型の配管を設け、T字の頭の部分に設けた多数の孔からガスを供給する。プラズマCVD装置外に、成膜に用いる原料を導入するためのバブラーを設置し、ウォーターバスにより温度設定を可能とする。バブラーからニードルバルブを介して、プラズマCVD装置内にガス化した原料が導入される。ニードルバルブの調整によりバブラーの圧力を変更できる。メインロールには40kHzの高周波電力を導入可能とする。
成膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比としては、例えば、成膜用モノマーガス: 酸素供給ガス:不活性ガス=1:0〜100:0〜100(単位:sccm)のガス組成比からなる成膜用混合ガス組成物等を使用することができる。このような成膜用混合ガス組成物を用いることで、ケイ素、酸素、炭素などの元素を含む蒸着膜を形成することができる。成膜用混合ガス組成物の各ガス成分の混合比を調整することで、第1および第2の化学気相蒸着層に含まれるケイ素、酸素、および炭素の割合を適宜調整することができる。
成膜用モノマーガスを構成する有機珪素化合物としては、例えば、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの有機珪素化合物の中でも、取り扱い性、形成された連続膜の特性等の観点から、1.1.3.3−テトラメチルジシロキサンやヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが特に好ましい。また、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
<バリア性フィルム>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるものであり、透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れる。
バリア性フィルムは、水蒸気バリア性に優れ、水蒸気透過度が、好ましくは9.0×10−1g/m/day以下であり、より好ましくは1.0×10−1g/m/day以下であり、さらに好ましくは5.0×10−2g/m/day以下、さらにより好ましくは1.0×10−2g/m/day以下である。水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、高度な水蒸気バリア性を要求される用途であっても、包装材料や基材として用いることができる。なお、水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定機(MOCON社製:PERMATRAN)を用いて、JIS K7129Bに準拠して、または、Tecnolox社製DELTAPERMを用いて、ISO 15106−5に準拠して、温度40℃および湿度90%の環境下で測定することができる。
バリア性フィルムは、耐候性試験(120時間)後の水蒸気透過度が、好ましくは9.0×10−1g/m/day以下であり、より好ましくは1.0×10−1g/m/day以下であり、さらに好ましくは5.0×10−2g/m/day以下、さらにより好ましくは1.0×10−2g/m/day以下である。上記耐候性試験後の水蒸気透過度が上記数値範囲を満たせば、光による蒸着層の剥離または密着性の低下を抑制することができており、包装材料や基材として好適に用いることができる。耐候性試験は、ISO 4892−2に準拠した条件で実施可能である。
バリア性フィルムは、光透過性に優れ、全光線透過率が好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率が上記数値範囲を満たせば、包装材料として用いた際に内容物の視認性に優れる。なお、全光線透過率は、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150を用いて、JIS K7361に準拠して測定することができる。
バリア性フィルムは、透過性に優れ、ヘイズが好ましくは10%以下であり、より好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。ヘイズが上記数値範囲を満たせば、包装材料として用いた際に内容物の視認性に優れる。なお、ヘイズは、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150 を用いて、JIS K7136に準拠して測定することができる。
バリア性フィルムの層構成を、図面を参照しながら説明する。図1に示すバリア性フィルム10は、樹脂基材11と、第1の化学気相蒸着層12と、第2の化学気相蒸着層13とをこの順に備える。以下、本発明のバリア性フィルムを構成する各層について説明する。
<樹脂基材>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムを構成する樹脂基材としては、下記の化学気相蒸着層を担持できるものであれば特に限定されず、公知の種々の樹脂基材を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、およびポリブテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66、およびポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。特に、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリイミド等の、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。これら熱可塑性樹脂からなる樹脂基材はバリア性フィルムの用途に応じて、単層であっても、2種以上の熱可塑性樹脂からなる積層体であってもよい。また、これらの樹脂基材は、下記の化学気相蒸着層との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
<化学気相蒸着層>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムを構成する蒸着層は、化学気相成長法(CVD法)により形成される蒸着膜である。バリア性フィルムは、樹脂基材側から順に、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とを備える。本発明において、化学気相蒸着層は、物理気相成長法(PVD法)により得られる蒸着膜に比べて、厚膜な蒸着層を形成し易く、また屈曲性に優れるため、バリア性フィルムの蒸着層としてより好適である。
第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とは、いずれもケイ素、酸素、および炭素を含むものである。第1の化学気相蒸着層および第2の化学気相蒸着層を、同元素が含まれる蒸着膜とすることで、両者の密着性が向上し、水蒸気バリア性を向上させることができる。
第1の化学気相蒸着層は、ケイ素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、ケイ素の割合が、好ましくは25%以上40%以下であり、より好ましくは28%以上35%以下であり、酸素の割合が、好ましくは35%以上70%以下であり、より好ましくは40%以上66%以下であり、炭素の割合が、好ましくは1%以上35%以下であり、より好ましくは10%以上32%以下である。
第2の化学気相蒸着層は、ケイ素、酸素、および炭素の3元素の合計100%に対して、ケイ素の割合が、好ましくは25%以上40%以下であり、より好ましくは28%以上35%以下であり、酸素の割合が、好ましくは50%以上70%以下であり、より好ましくは60%以上67%以下であり、炭素の割合が、好ましくは0.1%以上20%以下であり、より好ましくは0.1%以上10%以下である。
第1の化学気相蒸着層の厚さTは、好ましくは10nm以上1000nm未満であり、より好ましくは15nm以上800nm以下であり、さらに好ましくは20nm以上500nm以下である。
第2の化学気相蒸着層の厚さTは、好ましくは50nm以上1000nm以下であり、より好ましくは100nm以上600nm以下であり、さらに好ましくは150nm以上500nm以下である。
第1の化学気相蒸着層の厚さTおよび第2の化学気相蒸着層の厚さTが上記条件を満たすことで、バリア性フィルムは、耐候性試験後の保存後であっても水蒸気バリア性に優れる。化学気相蒸着層の厚さは、CVD法による蒸着の際の成膜時間もしくはフィルム搬送速度を調節することで、所望の範囲に調節することができる。
<バリアコート層>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、第2の化学気相蒸着層上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。バリアコート層は、ガスバリア性を有する層であり、塗布膜であることが好ましい。さらに、バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜であることが好ましい。バリアコート層は、例えば、下記のガスバリア性塗膜により形成することができる。該塗膜は、高温多湿環境下でのガスバリア性を保持する塗膜であり、一般式R M(OR(ただし、式中、R、Rは、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜である。該組成物を上記蒸着フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜200℃、かつ上記の蒸着フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱乾燥処理して形成することができる。
また、前記ガスバリア性組成物を上記基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上重層し、20℃〜200℃、かつ、上記基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱乾燥処理し、ガスバリア性塗膜を2層以上重層した複合ポリマー層を形成してもよい。
上記金属アルコキシドは、上記一般式R M(OR中、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他等を例示することができる。本発明では、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性積層フィルムの靭性、耐熱性等を向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。
本発明で使用する水溶性高分子は、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。
エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。例えば、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上であるものを使用することが好ましい。なお、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。
また、本発明では、バリアコート層にシランカップリング材を添加してもよい。例えば、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基、アミノ基、エポキシ基などの反応基を有するシランカップリング材が、使用できる。
バリアコート層は、以下の方法で製造することができる。まず、上記金属アルコキシド、必要に応じてシランカップリング剤、水溶性高分子、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒等を混合し、ガスバリア性組成物(バリアコート液)を調製する。
次いで、前記第2の化学気相蒸着膜の上に、上記のガスバリア性組成物を塗布する。ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、ディッピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μm位の塗布膜を形成することができる。
次いで、上記ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルムを20℃〜200℃、かつ蒸着フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜180℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱・乾燥する。これによって、重縮合が行われ、バリアコート層を形成することができる。
以上により、前記第2の化学気相蒸着膜の上に、上記ガスバリア性組成物によるバリアコート層を1層ないし2層以上形成したバリアコート層を有するバリア性フィルムを製造することができる。
<用途>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、高度なバリア性を要求される様々な分野の製品に適用することができる。例えば、包装製品や、太陽電池およびディスプレイ(表示装置)等の電気・電子製品に用いることができる。
<包装材料>
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、包装材料として特に好適に用いることができる。例えば、医薬品、化粧品、化学品、飲食品等の用途に用いることができる。バリア性フィルムは、透明性に優れ、かつ耐候性試験後の保存後であっても水蒸気バリア性に優れたものであるため、内容物の視認性や高度な水蒸気バリア性が要求される、医薬品用包装材料として特に好適に用いることができる。
<バリア性フィルムの製造>
[実施例1]
樹脂基材として二軸延伸PETフィルム(東レ(株)製:U34)を前記記載の平行平板型プラズマCVD装置(電極面積S:0.083m)の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。また、膜厚を測定するため、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で基材上の一部に設置した。下部電極の温度は18℃とした。チャンバーを閉めて1Pa以下まで減圧したあと、Arガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Arガスの流量を50sccm、バブラーの温度を39℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は、51.5sccmと算出された。別途、酸素ガスを50sccm供給し、Arガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を20Paに調整したのち、電力を100Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度Eは、0.40であった。成膜時間は10秒とした。成膜時間経過後放電を止めて、1Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが30.4:47.1:22.6である第1の化学気相蒸着層を形成した。
続いて、第1の化学気相蒸着層が形成された樹脂基材を前記記載の平行平板型プラズマCVD装置の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。また、膜厚を測定するため、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で樹脂フィルム上の一部に設置した。下部電極の温度は18℃とした。チャンバーを閉めて1Pa以下まで減圧したあと、Arガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Arガスの流量を3sccm、バブラーの温度を30℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は、1.5sccmと算出された。別途、酸素ガスを50sccm供給し、Arガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を15Paに調整したのち、放電電力を100Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度Eは、1.48であった。成膜時間は10分とした。成膜時間経過後放電を止めて、1Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが33.4:65.7:0.9である第2の化学気相蒸着層を形成して、バリア性フィルムを得た。
[実施例2〜27][比較例1〜9]
表2に示した成膜条件に変更した以外は実施例1と同様にしてバリア性フィルムを得た。ただし、Arの流量が3sccmのときバブラーの温度は30℃、Arの流量が50sccmのときバブラーの温度は39℃とした。
[実施例28]
樹脂基材として二軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)製:A4100)を前記記載のロールツーロール型プラズマCVD装置(放電部面積S:0.047m)内に通し、チャンバーを閉めて0.01Pa以下まで減圧したあと、Heガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Heガスの流量を100sccm、バブラーの温度を39℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は103sccmと算出された。別途、酸素ガスを1500sccm供給し、Heガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を5Paに調整したのち、電力を300Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度Eは、0.75であった。成膜時の基材の搬送速度は2m/minとした。成膜終了後、放電とガスの供給を止めて、0.01Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが30.4:54.7:14.9である第1の化学気相蒸着層を形成した。
続いて、第1の化学気相蒸着層が形成された樹脂基材を前記記載のロールツーロール型プラズマCVD装置内に通し、チャンバーを閉めて0.01Pa以下まで減圧したあと、Heガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Heガスの流量を100sccm、バブラーの温度を39℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は103sccmと算出された。別途、酸素ガスを1500sccm供給し、Heガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を3.5Paに調整したのち、電力を700Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度Eは、2.51であった。成膜時の基材の搬送速度は1m/minとした。成膜終了後、放電とガスの供給を止めて、0.01Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが32.4:60.9:6.7である第2の化学気相蒸着層を形成した。
続いて、表1に示す組成に従って、調製した組成Aの混合液に、予め調製した組成Bの加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のバリアコート液を得た。
Figure 2018113274
次に、第2の化学気相蒸着層を形成した樹脂基材に、上記で調製したバリアコート液をスピンコート法によりコーティングした。スピンコートの条件は、up3秒+run1800rpm5秒+down3秒とした。次いで、180℃で60秒間、オーブンにて加熱処理して、厚さ約400nmのバリアコート層を形成して、バリア性フィルムを得た。
[実施例29〜30]
表4に示した成膜条件に変更した以外は実施例28と同様にしてバリア性フィルムを得た。
[比較例10〜11]
表4に示した成膜条件に変更し、バリアコート層を形成しなかった以外は実施例28と同様にしてバリア性フィルムを得た。
<バリア性フィルムの性能評価>
上記の実施例および比較例で製造したバリア性フィルムに下記の測定を行った。
(水蒸気透過度の測定)
バリア性フィルムの水蒸気透過度を、水蒸気透過度測定機(MOCON社製:PERMATRAN)を用いて、JIS K7129Bに準拠して、または、Tecnolox製DELTA PARMを用いて、ISO 15106−5に準拠して温度40℃および湿度90%の環境下で測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
(全光線透過率の測定)
バリア性フィルムの全光線透過率を、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150を用いて、JIS K7361に準拠して測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
(ヘイズの測定)
バリア性フィルムのヘイズを、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
(膜厚の測定)
膜厚は、シリコンウエハ上に形成された化学蒸着層の存在する部分と存在しない部分の段差を小阪研究所製サーフコーダET4000Lにて測定することで確認した。ロールツーロール型プラズマCVD装置により成膜した化学蒸着層は、樹脂に包埋し、その断面から超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測した。電子顕微鏡としては日立ハイテクノロジーズ製H−7650を使用した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
(組成分析)
X線光電子分光分析装置(KRATOS社製ESCA−3400)を用いて、X線銃:MgKα、20mA、10kVの条件で、元素組成を分析した。深さ方向の組成を確認する際のイオンスパッタ条件は、導入するArガス量を調整して2.0×10−2Paとし、イオン銃の加速電圧を0.3kV、エミッション電流を30mAとした。スパッタする時間を制御して各深さの元素組成を分析した。
(耐候性試験)
ATLAS社製Xenon Weather−Ometer Ci5000を使用して、ISO 4892−2に準拠し、試験サイクル120分(光照射102分、光照射+水スプレー18分)、キセノンランプの照度60W/m2(300−400nm)、パネル試験温度65℃、試験槽温度38℃の条件で、120時間の照射試験を実施した。照射は蒸着膜面側から行った。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
Figure 2018113274
Figure 2018113274
Figure 2018113274
Figure 2018113274
10 バリア性フィルム
11 樹脂基材
12 第1の化学気相蒸着層
13 第2の化学気相蒸着層

Claims (7)

  1. 樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法であって、
    前記第1の化学気相蒸着層を、下記式:
    =W÷(S×P×F)
    0.05≦E≦1.20
    (式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
    を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする、方法。
  2. 前記第2の化学気相蒸着層を、下記式:
    =W÷(S×P×F)
    <E
    1.00≦E≦3.00
    (式中、Eはプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m)または放電部の面積(m)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
    を満たす成膜条件により成膜する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の化学気相蒸着層の厚さTが、10nm以上1000nm以下である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第2の化学気相蒸着層の厚さTが、50nm以上1000nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記第2の化学気相蒸着層上に、少なくとも1種のアルコキシドと1種の水溶性高分子を含有するバリアコート液を加水分解及び重縮合して得られるバリアコート層を設ける、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記バリア性フィルムの全光線透過率が80%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記バリア性フィルムのヘイズが10%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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