JP2018113274A - バリア性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法であって、
前記第1の化学気相蒸着層を、下記式:
E1=W÷(S×P×F)
0.05≦E1≦1.20
(式中、E1はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする、方法が提供される。
E2=W÷(S×P×F)
E1<E2
1.00≦E2≦3.00
(式中、E2はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の供給ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することが好ましい。
本発明は、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法に関するものである。より詳細には、樹脂基材上に、有機珪素化合物の1種以上を含む成膜用モノマーガスを原料とし、キャリアガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、かつ、プラズマ発生装置等を利用するプラズマ化学気相成長法を用いて珪素酸化物を含む第1および第2の化学気相蒸着層を形成することができる。
E1=W÷(S×P×F)
0.05≦E1≦1.20
(式中、E1はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする。なお、成膜時の使用ガスの合計流量とは、上記の成膜用モノマーガス、キャリアガス(不活性ガス)、酸素供給ガスの合計流量を指す。さらに、上記の成膜条件は、
0.10≦E1≦1.00
を満たすことが好ましく、
0.20≦E1≦0.80
を満たすことがより好ましい。
プラズマ強度E1が上記数値範囲内であれば、プラズマ強度が適度であるため、樹脂基材上に蒸着膜を直接形成してもプラズマによる樹脂基材へのダメージを抑え、耐候性を向上させることができる。なお、本発明においては、基材上に予め易接着層等の層が設けられた樹脂基材を用いてもよく、このような場合にも、樹脂基材上に蒸着膜を直接形成することに該当する。
E2=W÷(S×P×F)
E1<E2
1.00≦E2≦3.00
(式中、E2はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜すること好ましい。さらに、上記の成膜条件は、
1.10≦E2≦2.50
を満たすことがより好ましく、
1.20≦E2≦2.00
を満たすことがさらに好ましい。
第2の化学気相蒸着層は第1の化学気相蒸着層上に形成されるため、プラズマ強度E2はプラズマ強度E1より高くても、第2の化学気相蒸着成膜時のプラズマによる樹脂基材へのダメージがほとんど無い。プラズマ強度E2は、上記数値範囲を満たすことで、よりバリア性の高い緻密な膜を形成することができる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるものであり、透明性に優れ、かつ耐候性試験後であっても水蒸気バリア性に優れる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムを構成する樹脂基材としては、下記の化学気相蒸着層を担持できるものであれば特に限定されず、公知の種々の樹脂基材を用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂のフィルムを用いることができる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムを構成する蒸着層は、化学気相成長法(CVD法)により形成される蒸着膜である。バリア性フィルムは、樹脂基材側から順に、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とを備える。本発明において、化学気相蒸着層は、物理気相成長法(PVD法)により得られる蒸着膜に比べて、厚膜な蒸着層を形成し易く、また屈曲性に優れるため、バリア性フィルムの蒸着層としてより好適である。
第2の化学気相蒸着層の厚さT2は、好ましくは50nm以上1000nm以下であり、より好ましくは100nm以上600nm以下であり、さらに好ましくは150nm以上500nm以下である。
第1の化学気相蒸着層の厚さT1および第2の化学気相蒸着層の厚さT2が上記条件を満たすことで、バリア性フィルムは、耐候性試験後の保存後であっても水蒸気バリア性に優れる。化学気相蒸着層の厚さは、CVD法による蒸着の際の成膜時間もしくはフィルム搬送速度を調節することで、所望の範囲に調節することができる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、第2の化学気相蒸着層上に、バリアコート層をさらに備えてもよい。バリアコート層は、ガスバリア性を有する層であり、塗布膜であることが好ましい。さらに、バリアコート層は、金属アルコキシドの加水分解生成物と水溶性高分子との硬化膜であることが好ましい。バリアコート層は、例えば、下記のガスバリア性塗膜により形成することができる。該塗膜は、高温多湿環境下でのガスバリア性を保持する塗膜であり、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上の金属アルコキシドと、水溶性高分子とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜である。該組成物を上記蒸着フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜200℃、かつ上記の蒸着フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱乾燥処理して形成することができる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、高度なバリア性を要求される様々な分野の製品に適用することができる。例えば、包装製品や、太陽電池およびディスプレイ(表示装置)等の電気・電子製品に用いることができる。
本発明の方法により得られるバリア性フィルムは、包装材料として特に好適に用いることができる。例えば、医薬品、化粧品、化学品、飲食品等の用途に用いることができる。バリア性フィルムは、透明性に優れ、かつ耐候性試験後の保存後であっても水蒸気バリア性に優れたものであるため、内容物の視認性や高度な水蒸気バリア性が要求される、医薬品用包装材料として特に好適に用いることができる。
[実施例1]
樹脂基材として二軸延伸PETフィルム(東レ(株)製:U34)を前記記載の平行平板型プラズマCVD装置(電極面積S:0.083m2)の真空チャンバーに入れ、下部電極上に設置した。また、膜厚を測定するため、表面が鏡面加工されたシリコンウエハを一部マスキングした状態で基材上の一部に設置した。下部電極の温度は18℃とした。チャンバーを閉めて1Pa以下まで減圧したあと、Arガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Arガスの流量を50sccm、バブラーの温度を39℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は、51.5sccmと算出された。別途、酸素ガスを50sccm供給し、Arガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を20Paに調整したのち、電力を100Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度E1は、0.40であった。成膜時間は10秒とした。成膜時間経過後放電を止めて、1Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが30.4:47.1:22.6である第1の化学気相蒸着層を形成した。
表2に示した成膜条件に変更した以外は実施例1と同様にしてバリア性フィルムを得た。ただし、Arの流量が3sccmのときバブラーの温度は30℃、Arの流量が50sccmのときバブラーの温度は39℃とした。
樹脂基材として二軸延伸PETフィルム(東洋紡(株)製:A4100)を前記記載のロールツーロール型プラズマCVD装置(放電部面積S:0.047m2)内に通し、チャンバーを閉めて0.01Pa以下まで減圧したあと、Heガスをキャリアガスとし、バブリングにより、原料の成膜用モノマーガスとしてHMDSOをプラズマCVD装置の真空チャンバー内に供給した。Heガスの流量を100sccm、バブラーの温度を39℃、バブラーの圧力を160Torrとした。このときHMDSOの流量は103sccmと算出された。別途、酸素ガスを1500sccm供給し、Heガス及びHMDSOと混合した上で真空チャンバー内に導入した。排気量を調整して真空チャンバー内の圧力を5Paに調整したのち、電力を300Wとし、成膜を行った。この時、成膜時のプラズマ強度E1は、0.75であった。成膜時の基材の搬送速度は2m/minとした。成膜終了後、放電とガスの供給を止めて、0.01Pa以下まで減圧したのちベントして大気圧に戻した。蒸着膜組成比Si:O:Cが30.4:54.7:14.9である第1の化学気相蒸着層を形成した。
表4に示した成膜条件に変更した以外は実施例28と同様にしてバリア性フィルムを得た。
表4に示した成膜条件に変更し、バリアコート層を形成しなかった以外は実施例28と同様にしてバリア性フィルムを得た。
上記の実施例および比較例で製造したバリア性フィルムに下記の測定を行った。
バリア性フィルムの水蒸気透過度を、水蒸気透過度測定機(MOCON社製:PERMATRAN)を用いて、JIS K7129Bに準拠して、または、Tecnolox製DELTA PARMを用いて、ISO 15106−5に準拠して温度40℃および湿度90%の環境下で測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
バリア性フィルムの全光線透過率を、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150を用いて、JIS K7361に準拠して測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
バリア性フィルムのヘイズを、株式会社村上色彩研究所製 HAZE METER HM−150を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
膜厚は、シリコンウエハ上に形成された化学蒸着層の存在する部分と存在しない部分の段差を小阪研究所製サーフコーダET4000Lにて測定することで確認した。ロールツーロール型プラズマCVD装置により成膜した化学蒸着層は、樹脂に包埋し、その断面から超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観測した。電子顕微鏡としては日立ハイテクノロジーズ製H−7650を使用した。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
X線光電子分光分析装置(KRATOS社製ESCA−3400)を用いて、X線銃:MgKα、20mA、10kVの条件で、元素組成を分析した。深さ方向の組成を確認する際のイオンスパッタ条件は、導入するArガス量を調整して2.0×10−2Paとし、イオン銃の加速電圧を0.3kV、エミッション電流を30mAとした。スパッタする時間を制御して各深さの元素組成を分析した。
ATLAS社製Xenon Weather−Ometer Ci5000を使用して、ISO 4892−2に準拠し、試験サイクル120分(光照射102分、光照射+水スプレー18分)、キセノンランプの照度60W/m2(300−400nm)、パネル試験温度65℃、試験槽温度38℃の条件で、120時間の照射試験を実施した。照射は蒸着膜面側から行った。測定結果は、下記の表3および表5に示される通りであった。
11 樹脂基材
12 第1の化学気相蒸着層
13 第2の化学気相蒸着層
Claims (7)
- 樹脂基材と、第1の化学気相蒸着層と、第2の化学気相蒸着層とをこの順に備えるバリア性フィルムの製造方法であって、
前記第1の化学気相蒸着層を、下記式:
E1=W÷(S×P×F)
0.05≦E1≦1.20
(式中、E1はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜することを特徴とする、方法。 - 前記第2の化学気相蒸着層を、下記式:
E2=W÷(S×P×F)
E1<E2
1.00≦E2≦3.00
(式中、E2はプラズマ強度であり、Wは成膜時の電力(W)であり、Sは成膜装置の電極面積(m2)または放電部の面積(m2)であり、Pは成膜時の圧力(Pa)であり、Fは成膜時の使用ガスの合計流量(sccm)である)
を満たす成膜条件により成膜する、請求項1に記載の方法。 - 前記第1の化学気相蒸着層の厚さT1が、10nm以上1000nm以下である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記第2の化学気相蒸着層の厚さT2が、50nm以上1000nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記第2の化学気相蒸着層上に、少なくとも1種のアルコキシドと1種の水溶性高分子を含有するバリアコート液を加水分解及び重縮合して得られるバリアコート層を設ける、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記バリア性フィルムの全光線透過率が80%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記バリア性フィルムのヘイズが10%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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