JP2018111680A - 神経因性疼痛の治療、予防又は緩和用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】β-クリプトキサンチンが、神経因性疼痛を特異的に緩和することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
Description
「疼痛」とは、広く痛みを意味する医学用語である。疼痛は、痛みの種類により、さらに「神経因性疼痛(神経障害性疼痛)」、「傷害受容性疼痛」及び「心因性疼痛」に分類できる。
「傷害受容性疼痛」は、切り傷、骨折、火傷等のような刺激、炎症、熱等に起因する疼痛である。傷害受容性疼痛は、その原因である外傷の治癒により治まり、又は、炎症を抑制する消炎鎮痛剤が有効である。
「心因性疼痛」は、器質的・機能的病変が無い、又はあっても痛みの訴えと合致しない場合で、心理的要因が大きく影響している可能性のある疼痛である。心因性疼痛は、その原因である心理・社会的要因に適応するための認知療法等が有効であるとされている。
「神経因性疼痛」とは、末梢神経系の損傷に関連して、頻繁に生じる病態であり、癌、糖尿病、帯状疱疹に伴うウイルス感染、重篤な虚血発作、又は自己免疫疾患等の病状により引き起こされる(非特許文献1)。
神経因性疼痛の症状は、自発痛、痛覚過敏、機械刺激性アロディニア(機械的アロディニア)を含む。
自発痛は、外部刺激とは無関係に痛みを感じる症状である。
痛覚過敏は、通常でも痛みを引き起こす刺激に対して、痛みが増す過敏症である。
「機械刺激性アロディニア」は、通常は無害である刺激に対する過敏症であり、神経因性疼痛の最も特徴的な症状である。
神経因性疼痛、特にアロディニアは、多くの場合、鎮痛剤又は鎮静剤に対して、抵抗性を有するため、新しい治療及び予防のアプローチが必要とされている(非特許文献2)。
「カロテノイド」は、動植物が有する黄色や赤色等の天然色素のグループである。
「β−クリプトキサンチン(β−Cryptoxanthin、β−CRY)」は、ヒト血清中に常に存在する主要なキサントフィルカロテノイドであり、主に柑橘類から得られる(非特許文献3)。β−クリプトキサンチンの血清レベルは、ヒト及び動物において、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)等の高β−クリプトキサンチン食品の摂取量に反映される(非特許文献4)。
これまでの知見より、β−クリプトキサンチンの様々な生活習慣病に対する予防効果が示唆されている(非特許文献4)。例えば、本発明者らは、最近、β−クリプトキサンチンが、破骨細胞活性を抑制することにより、卵巣除去誘発性骨減少を予防することを立証した(非特許文献5)。
さらに、β−クリプトキサンチンは、炎症遺伝子発現の抑制により、食事性非アルコール性脂肪性肝炎を緩和する(非特許文献6)。さらに、高レベルの血清中β−クリプトキサンチンは、肺癌による死亡リスクの低減と関連がある(非特許文献7)。
しかし、神経因性疼痛に対するβ−クリプトキサンチンの効果については報告が無く、知られていない。
1.キサントフィルを有効成分として含む、神経因性疼痛の治療、予防又は緩和用組成物。
2.キサントフィルが、β‐クリプトキサンチンである、前項1に記載の組成物。
3.前記組成物が、神経因性疼痛の予防又は緩和用食品である、前項1又は2に記載の組成物。
4.前記組成物が、神経因性疼痛の治療、予防又は緩和用治療剤である、前項1又は2に記載の組成物。
5.前記神経因性疼痛が、機械刺激性アロディニアである、前項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
6.前記β‐クリプトキサンチンが、ミカン抽出物に由来する、前項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。
7.経口投与用組成物である、前項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
本発明の組成物は、キサントフィル、特にβ−クリプトキサンチンを有効成分として含有する。なお、本明細書においてβ−クリプトキサンチンは、化学式がC40H56Oである化合物、若しくはその医薬的に許容される誘導体若しくは異性体を指す。
また、β−クリプトキサンチン以外のキサントフィルとして、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン、α-クリプトキサンチン等を例示することができるが特に限定されない。
本発明の組成物に含まれる有効成分の含有量は、特に限定されないが、単回投与による投与量にして、例えば、食品1gあたり、以下の範囲よりそれぞれ選択される量を含めることができる。
キサントフィル又はβ−クリプトキサンチン:2 ng/g食品〜0.2 g/g食品。
本発明の組成物に含まれるβ−クリプトキサンチンは、ミカン抽出物自体又は該抽出物に由来してもよい。
本明細書において、「ミカン」は、柑橘類、好ましくはミカン属、より好ましくはウンシュウミカン(Citrus unshiu Marc.)を指す。本発明に用いられるウンシュウミカンの品種は限定されない。
なお、「柑橘類」の例としては、ウンシュウミカン、キシュウミカン、オレンジ、イヨカン、ダイダイ、シラヌヒ、ナツミカン、ハッサク、ハナユズ、ヒュウガナツ、ブンタン、ポンカン、マンダリンオレンジ、キノット、コウジ、ジャバラ、タチバナ、タンゴール、グレープフルーツ、レモン、ライム、カボス、サンボウカン、ヒラミレモン、シトロン、スダチ、ユズ等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本明細書において、「抽出物」の形態には、果実、好ましくはパルプ、遠心パルプ、果皮、搾汁残渣又は果汁由来である、抽出液、酵素分解物、搾汁、搾粕若しくはそれら混合物の形態、並びに、該酵素分解物、該抽出液、該搾汁、該搾粕若しくはそれら混合物を濃縮、希釈及び/又は乾燥した、濃縮物、希釈物又は乾燥物の形態が含まれる。
本発明の組成物に含まれるβ−クリプトキサンチンが、ミカン抽出物に由来する場合、その調製方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)ウンシュウミカンのパルプにペクチナーゼ含有酵素剤及び/又はセルラーゼ/ヘミセルラーゼ酵素剤を添加し、撹拌して室温で、静置反応を行う。
(2)前記反応により得られた反応液を遠心分離し、上清を除去した後、水を添加して撹拌する。
(3)再度遠心分離により上清を除去し、沈殿物としてミカン抽出物を得られる。必要に応じて、凍結乾燥により乾燥し、自体公知の方法により粉砕後の粉砕物として得ることができる。前記粉砕物は、必要に応じて、さらに、篩等を用いて、サイズを揃えてもよい。
ミカンからβ−クリプトキサンチンを抽出する場合の方法は、特に限定されないが、公知のいずれをも適用でき、有機溶媒を用いた抽出方法等、例えば、以下の方法が挙げられる(参考:PloS one. 2014; 9(5): e98294.)。
(1)ミカンのパルプ、遠心パルプ又は果皮を、酵素分解に供した後、必要に応じて破砕・均質化し、遠心分離し、沈殿物を回収する。
「パルプ」、「遠心パルプ」又は「果皮」は、例えば、ミカン製品(例えば、ジュース等)を製造する工程で生じたものを使用してもよい。
「酵素」は、例えば、アクレモニウムセルラーゼ含有酵素剤、ペクチナーゼ含有酵素剤等が使用できる。「アクレモニウムセルラーゼ含有酵素剤」は、市販されているアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤であってもよい。市販されているアクレモニウムセルラーゼ含有の酵素剤としては、例えば、協和化成株式会社製の「アクレモセルラーゼKM」(商品名)等を用いることができる。
(2)回収した沈殿物に、沈殿物と同程度の体積の有機溶媒を加え、振盪(混和)する。
「有機溶媒」としては、例えば、ヘキサン、アセトン、エタノール又はそれらの混合物等を使用できる。
(3)振盪後、遠心分離し、得られた上清を回収し、沈殿物に同程度の体積の有機溶媒を加え、振盪(混和)する。この操作を必要に応じて1回〜複数回繰り返す。
(4)上記操作にて得られた上清を濃縮し、水酸化カリウムで加水分解する。
(5)加水分解後、反応溶液に水を加え、混和後に遠心分離し、上層(有機溶媒層)を濃縮物として回収する。
(6)濃縮物を超音波処理によって、ヘキサン中に分散させる。不溶性物質を濾過し、エタノールから再結晶し、β−クリプトキサンチン(非エステル化β−クリプトキサンチン)を得られる。必要に応じて、HPLC分析により、得られるβクリプトキサンチンの純度を測定する。
本発明の有効成分であるβ−クリプトキサンチンは、上記の他に、市販品を使用してもよい。
さらに、本発明の有効成分であるβ−クリプトキサンチンは、他の成分との混合物である、市販されているミカン抽出物(ミカンエキス)を使用してもよい。
市販されているミカン抽出物としては、例えば、オリザ油化社製の「温州みかんエキス−P」(商品名)等を用いることができる。
本発明の組成物は、食品の形態で用いることができる。ここで、食品の形態には、特に限定されないが、例えば、サプリメント、ジュース、果汁飲料、米飯類、パン類、穀類、野菜、食肉、各種加工食品、菓子類、牛乳、清涼飲料水、アルコール飲料、ゼリー、ガム、タブレット、栄養補助食品、食品添加物等が含まれる。なお、食品には、機能性食品、健康食品、健康志向食品等も含まれる。
本発明の組成物は、全体が上記有効成分のみからなるものであってもよいし、上記有効成分と他の成分とを含むものであってもよい。「他の成分」は、食品において許容される成分である限り特に限定されず、例えば、目的の食品を構成する諸成分、油性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、着色剤、発色剤、矯味剤、着香剤、酸化防止剤、防腐剤、呈味剤、酸味剤、甘味剤、強化剤、ビタミン剤、膨張剤、増粘剤、界面活性剤等を挙げることができ、本発明の組成物の形態に応じて、適当なものを選択し、適宜組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物は、治療剤の形態で用いることができる。
剤形は、特に限定されず、種々の剤形とすることができる。例えば、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。また持続性剤形及び徐放性剤形であってもよい。
本発明の治療剤は、哺乳動物(ヒト、ウマ、ウシ、ブタ等)又は鳥類(ニワトリ等)に用いることができ、通常の医薬(製剤)に用いられる担体、賦形剤等の添加剤を用いて調製される。
注射剤の場合、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への注射により投与できる。注射剤用の水性の溶剤は、例えば、蒸留水又は生理食塩水であり得る。注射剤用の非水性の溶剤は、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)であり得る。このような製剤は、さらに等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等)、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、pH調節剤(例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等)、緩衝剤、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等)又は溶解補助剤を含有してもよい。
これらの製剤は、例えば、バクテリア保留フィルターによる濾過、殺菌剤の配合、又は放射線照射によって無菌化され得る。また、無菌の固体組成物を使用前に無菌の水又は注射用溶媒に溶解又は懸濁して得られた組成物をこれらの製剤として使用することもできる。これらの製剤は、製剤工程において通常用いられる公知の方法により製造することができる。
本発明の治療剤の投与量又は摂取量については、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではなく、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、性別、病状および他の医薬の使用の有無等)、及び担当医師の判断等に応じて適宜選択される。
本発明の治療剤の投与量は、経口投与の場合、通常成人1回当たり0.001 mg/kg体重〜100 mg/kg体重であり、静脈投与の場合、通常成人1回当たり0.0001 mg/kg体重〜10 mg/kg体重である。
投与回数は、通常1日1回〜6回、又は1日1回〜7日に1回である。透析を受けている患者への投与は、当該患者が受ける各透析の前後(好適には、透析の前)に1回行なわれることも好ましい。
すべての実施例は、日本薬理学会のガイドラインを満たし、金沢大学動物実験委員会(the Committee for Ethical Use of Experimental Animals at KanazawaUniversity)により承認済である。
β−CRYの毎日の経口摂取が、脊髄神経損傷後の神経因性疼痛、特に機械刺激性アロディニアの症状を軽減できるかどうかを調べた。概要を図1Aに示す。
具体的には、以下の<手順>により、β−CRYを飲水投与したマウスを用いて、神経因性疼痛モデルを作製し、機械刺激による痛みの評価を行った。
(1)8週齢オスddYマウスを、28日間、β−CRYを10 mg/Lの濃度で、毎日、新しく溶解した飲水を、自由に経口補給(自由飲水)できる環境下で飼育した(β―CRY投与群)。対照として、β−CRYを含有しない水を飲水として用い、飲水以外は同様の条件で、別のマウスを飼育した(水投与群)。β―CRY投与群のマウスにおいて、毎日の飲水の摂取(約7 mL/日/マウス)の有意な変化又は自発的行動の有意な変化は観察されなかった。
本実施例において使用したβ―CRY(より詳しくは、非エステル化β―CRY)は、公知の方法により調製及び加工し、その純度は、HPLC解析により96%であった(参考:PloS one. 2014; 9(5): e98294.)。より詳しくは、β―CRYは、日本果実工業株式会社、株式会社えひめ飲料より入手した、ジュース製造工程におけるウンシュウミカンのパルプを用いて上述の<β−クリプトキサンチンの抽出方法>により調製及び加工した。
(2)β−CRY投与群及び水投与群について、それぞれ、β−CRY投与及び水投与開始後14日目に、下記の<神経因性疼痛モデルの作製>に従って、マウスを手術した(神経損傷手術群)。一部のマウスについては、偽手術(背中を切開し、神経を露出させる手術)を行い、対照とした(偽手術群)。
(3)β−CRY(又は水)投与開始後14日目、15日目、17日目、19日目、21日目、28日目{神経損傷手術(又は偽手術)当日(手術前)、手術後1日目、3日目、5日目、7日目及び14日目}に、下記の<機械刺激による痛みの評価>を行い、手術側及び反対側の後足への触覚刺激の足挙げ閾値を調べた(図1A)。
(4)統計学的有意差は、Bonferroni/Dunnett post hoc testを用いた分散のone−way解析により、決定した。全ての結果は、平均±標準誤差として表した。
文献(Pain. 1992; 50: 355-63.)に記載されているラットの神経因性疼痛モデル(Chung model)をマウス用に改変し、マウスに脊髄神経損傷を外科的に誘導した神経因性疼痛モデルを作製した。
より詳しくは、傍脊柱筋群及び脂肪を、第3(L3)及び第4(L4)腰髄神経に平行して露出した第5(L5)横突起から除去した。その後、L4腰髄神経を、注意深く隔離し、切断した。
当該モデルマウスにおいては、機械刺激性アロディニアが発症する。
機械刺激による痛み(神経因性疼痛モデルにおいては、機械刺激性アロディニアに該当する)を評価するため、目盛を付けたvon Freyフィラメント(0.02〜2.0 g、Stoelting社製)を、網状の床の下から、マウスの後足の足底の表面に当て、足挙げ閾値をup−down法を用いて測定した(参考:J Neurosci Methods. 1994; 53(1):55-63.及びThe EMBO journal. 2011; 30(9): 1864-73.:Von Frey testとも呼ばれる)。「足挙げ閾値」(50% g Threshold)とは、50%のマウスが痛みを認識する(足を挙げる)負荷を表す。より詳しくは、50%のマウスが痛みを認識した(足を挙げた)際に使用したvon Freyフィラメントについて、そのvon Freyフィラメントが曲がるまで押した際にかかる負荷を表す。この値が高いほど、刺激を認識しにくいこと、すなわち疼痛が軽減したことを示す。
偽手術群のマウスにおいて、手術側及び反対側の後足の足挙げ閾値は、β−CRYの有無にかかわらず、いずれの時点においても有意に変化しなかった(図1B)。
一方、神経損傷手術群のマウスは、神経損傷手術後15日目〜28日目に、水投与群(神経損傷手術−水投与群)において、マウスの反対側後足と比較して、手術側の後足において、足挙げ閾値が有意に減少した(図1C)。この結果は、神経損傷手術群のマウスに神経因性疼痛、より詳しくは機械刺激性アロディニアが発症したことを示している。
また、神経損傷手術群のマウスにおいて、β―CRY投与群(神経損傷手術−β―CRY投与群)のマウスは、神経損傷手術後15日目〜28日目の手術側の後足において、足挙げ閾値の有意な減少を示したが、17日目及び28日目の手術側の足挙げ閾値は、水投与群(神経損傷手術−水投与群)のマウスよりもβ―CRY投与群(神経損傷手術−β―CRY投与群)のマウスにおいて、有意に高かった(図1C)。
これらの結果は、β−クリプトキサンチン投与により脊髄神経損傷後の神経因性疼痛、特に機械刺激性アロディニアの進行を軽減・抑制したことを示している。
β−CRYの毎日の経口摂取が、フロイント完全アジュバント(CFA)−誘導性炎症性疼痛を軽減できるかどうかを調べた。概要を図2Aに示す。
具体的には、以下の<手順>により、β−CRYを飲水投与したマウスを用いて、炎症性疼痛モデルを作製し、機械刺激による痛みの評価を行った。
(1)8週齢オスddYマウスを、42日間、β−CRYを10 mg/Lの濃度で、毎日、新しく溶解した飲水を、自由に経口補給(自由飲水)できる環境下で飼育した(β―CRY投与群)。対照として、β−CRYを含有しない水を飲水として用い、飲水以外は同様の条件で、別のマウスを飼育した(水投与群)。β―CRY投与群のマウスにおいて、毎日の飲水の摂取(約7 mL/日/マウス)の有意な変化又は自発的行動の有意な変化は観察されなかった。
本実施例で使用したβ―CRYは、実施例1と同様に調製及び加工した。
(2)β−CRY投与群及び水投与群について、それぞれ、下記の<炎症性疼痛モデルの作製>に従って、β−CRY投与及び水投与開始後14日目及び28日目の合計2回、CFAを投与した(CFA投与群)。一部のマウスについては、CFAの代わりにPBSを投与し、対照とした(PBS投与群)。
(3)β−CRY投与開始後28日目、29日目、31日目、33日目、35日目、42日目に、実施例1と同様に<機械刺激による痛みの評価>を行い、手術側及び反対側の後足への触覚刺激の足挙げ閾値を調べた(図2A)。機械刺激による痛みは、炎症性疼痛モデルにおいては、炎症性疼痛に該当する。
(4)統計学的有意差は、Bonferroni/Dunnett post hoc testを用いた分散のone−way解析により、決定した。全ての結果は、平均±標準誤差として表した。
フロイント完全アジュバント(CFA、Difco Laboratories社製)及びII型コラーゲン(コスモバイオ社製)のエマルジョンをマウスの尾の付け根及び背に、麻酔下で注射した{β−CRY(又は水)投与開始後14日目}。14日後{β−CRY(又は水)投与開始後28日目}、同様の実験プロトコールを用いて2回目の免疫化を行った(参考:Nat Protoc. 2007; 2(5): 1269-75.)。
足挙げ閾値は、β−CRYの摂取条件下又は非摂取条件下で、CFA投与による免疫化31日目〜42日目のマウスにおいて、有意に減少した。この結果は、CFA投与群のマウスに炎症性疼痛が発症したことを示している。
β−CRY投与群及び水投与群の間での差はみられず、同等であった(図2B)。
この結果は、β−クリプトキサンチン投与は、炎症性疼痛への効果が無いことを示している。
β−CRYの経口摂取が、ホットプレート試験による急性熱疼痛を軽減できるかどうかを調べた。概要を図3Aに示す。
具体的には、以下の<手順>により、β−CRYを飲水投与したマウスを用いて、熱による痛みの評価を行った。
(1)8週齢オスddYマウスを、14日間、β−CRYを10 mg/Lの濃度で、毎日、新しく溶解した飲水を、自由に経口補給(自由飲水)できる環境下で飼育した(β―CRY投与群)。対照として、β−CRYを含有しない水を飲水として用い、飲水以外は同様の条件で、別のマウスを飼育した(水投与群)。β―CRY投与群のマウスにおいて、毎日の飲水の摂取(約7 mL/日/マウス)の有意な変化又は自発的行動の有意な変化は観察されなかった。
本実施例で使用したβ―CRYは、実施例1と同様に調製及び加工した。
(2)β−CRY投与群及び水投与群について、それぞれ、β−CRY投与及び水投与投与開始後0日目(投与開始前)、14日目に、下記の<ホットプレート試験>に供した(図3A)。ホットプレートの熱による痛みは、急性熱疼痛に該当する。
(3)統計学的有意差は、two−tailed unpaired Student’s t−testにより、決定した。全ての結果は、平均±標準誤差として表した。
マウスを55℃に設定したホットプレート装置に置き、後足舐め、足のばたつかせ又は飛び跳ねのいずれかの行動を起こすまでの時間を記録した(参考:J Pharmacol Exp Ther. 2007; 323(1): 265-76.)。
β−CRY投与マウス及び水投与マウスの間で、後足舐め、足のばたつかせ又は飛び跳ねのいずれかの行動を起こすまでの時間における有意差は観察されなかった(図3B)。
この結果は、β−クリプトキサンチン投与は、急性熱疼痛への効果が無いことを示している。
以上の実施例1〜3の結果をまとめると、β−CRY経口補給(経口投与)が、炎症性疼痛又は急性熱疼痛に影響を及ぼすことなく、有意に、かつ、優先的に、脊髄神経損傷により生じた神経因性疼痛を緩和・予防することが明らかになった。すなわち、β−クリプトキサンチンは、疼痛の中でも神経因性疼痛を特異的に緩和・予防することが明らかになった。
マウスは、本実施例において、10 mg/L β−クリプトキサンチン含有飲水の平均1日摂取量(約7 mL/日/マウス)を考慮すると、28日連続で1日127 nmol β−クリプトキサンチンを投与された。
したがって、本実施例で使用されたβ−クリプトキサンチンの用量は、高β−クリプトキサンチン食品の1日摂取量の薬理学的妥当性の観点から適切である。
以上より、β−クリプトキサンチンを有効成分として含む、本発明の組成物の適切な摂取は、神経因性疼痛の治療、予防及び緩和のために有効であることが明らかになった。
Claims (7)
- キサントフィルを有効成分として含む、神経因性疼痛の治療、予防又は緩和用組成物。
- キサントフィルが、β‐クリプトキサンチンである、請求項1に記載の組成物。
- 前記組成物が、神経因性疼痛の予防又は緩和用食品である、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記組成物が、神経因性疼痛の治療、予防又は緩和用治療剤である、請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記神経因性疼痛が、機械刺激性アロディニアである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記β‐クリプトキサンチンが、ミカン抽出物に由来する、請求項2〜5のいずれか一項に記載の組成物。
- 経口投与用組成物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
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