<スイッチング電源装置>
図1は、スイッチング電源装置の全体構成を示すブロック図である。本構成例のスイッチング電源装置1は、非線形制御方式(ボトム検出オン時間固定方式)によって入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する降圧型DC/DCコンバータである。スイッチング電源装置1は、半導体装置10と、半導体装置10に外付けされた種々のディスクリート部品(Nチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタN1及びN2、コイルL1、コンデンサC1、並びに、抵抗R1及びR2)によって形成されるスイッチ出力段20と、を有する。
半導体装置10は、スイッチング電源装置1の全体動作を統括的に制御する主体(いわゆる電源制御IC)である。半導体装置10は、装置外部との電気的な接続を確立するための手段として、外部端子T1〜T7(上側ゲート端子T1、下側ゲート端子T2、スイッチ端子T3、帰還端子T4、入力電圧端子T5、出力電圧端子T6、及び、接地端子T7)を備えている。
外部端子T1は、トランジスタN1のゲートに接続されている。外部端子T2は、トランジスタN2のゲートに接続されている。外部端子T3は、スイッチ電圧Vswの印加端(トランジスタN1のソースとトランジスタN2のドレインとの接続ノード)に接続されている。外部端子T4は、分圧電圧Vdivの印加端(抵抗R1と抵抗R2との接続ノード)に接続されている。外部端子T5は、入力電圧Vinの印加端に接続されている。外部端子T6は、出力電圧Voutの印加端に接続されている。外部端子T7は、接地端に接続されている。
次に、半導体装置10に外付けされるディスクリート部品の接続関係について述べる。トランジスタN1のドレインは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタN2のソースは、接地端に接続されている。トランジスタN1のソースとトランジスタN2のドレインは、いずれもコイルL1の第1端に接続されている。コイルL1の第2端とコンデンサC1の第1端は、いずれも出力電圧Voutの印加端に接続されている。コンデンサC1の第2端は、接地端に接続されている。抵抗R1と抵抗R2は、出力電圧Voutの印加端と接地端との間に直列に接続されている。
トランジスタN1は、外部端子T1から入力されるゲート信号G1に応じてオン/オフ制御される出力トランジスタである。トランジスタN2は、外部端子T2から入力されるゲート信号G2に応じてオン/オフ制御される同期整流トランジスタである。なお、整流素子としては、トランジスタN2に代えてダイオードを用いても構わない。また、トランジスタN1およびN2は、半導体装置10に内蔵することも可能である。コイルL1とコンデンサC1は、外部端子T3に現れる矩形波状のスイッチ電圧Vswを整流平滑して出力電圧Voutを生成する整流平滑部として機能する。抵抗R1及びR2は、出力電圧Voutを分圧して分圧電圧Vdivを生成する分圧電圧生成部として機能する。ただし、出力電圧Voutがリップルインジェクション回路11(ないしはメインコンパレータ13)の入力ダイナミックレンジ内である場合には、分圧電圧生成部を省略してもよい。
次に、半導体装置10の内部構成について述べる。半導体装置10には、リップルインジェクション回路11と、基準電圧生成回路12と、メインコンパレータ13と、ワンショットパルス生成回路14と、RSフリップフロップ15と、オン時間設定回路16と、ゲートドライバ回路17と、逆流検出回路18と、が集積化されている。
リップルインジェクション回路11は、分圧電圧Vdivにリップル電圧Vrpl(コイルL1に流れるコイル電流ILを模擬した疑似リップル成分)を加算して帰還電圧Vfb(=Vdiv+Vrpl)を生成する。このようなリップルインジェクション技術を導入すれば、出力電圧Vout(延いては分圧電圧Vdiv)のリップル成分がそれほど大きくなくても安定したスイッチング制御を行うことができるので、コンデンサC1としてESRの小さい積層セラミックコンデンサなどを用いることが可能となる。ただし、出力電圧Voutのリップル成分が十分に大きい場合には、リップルインジェクション回路11を省略することも可能である。
基準電圧生成回路12は、所定の基準電圧Vrefを生成する。
メインコンパレータ13は、反転入力端(−)に入力される帰還電圧Vfbと、非反転入力端(+)に入力される基準電圧Vrefとを比較して比較信号S1を生成する。比較信号S1は、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも高いときにローレベルとなり、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefよりも低いときにハイレベルとなる。
ワンショットパルス生成回路14は、比較信号S1の立下りエッジをトリガとしてセット信号S2にワンショットパルス(例:立下りパルス)を生成する。
RSフリップフロップ15は、セット端(S)に入力されるセット信号S2のパルスエッジ(例:立下りエッジ)で出力信号S4をハイレベルにセットし、リセット端(R)に入力されるリセット信号S3のパルスエッジ(例:立下りエッジ)で出力信号S4をローレベルにリセットする。
オン時間設定回路16は、RSフリップフロップ15の反転出力信号S4B(=出力信号S4の論理反転信号)がローレベルに立ち下げられてから、所定のオン時間Tonが経過した後、リセット信号S3にワンショットパルス(例:立下りパルス)を生成する。
ゲートドライバ回路17は、RSフリップフロップ15の出力信号S4に応じてゲート信号G1及びG2を生成し、トランジスタN1及びN2を相補的にスイッチングさせる。なお、本明細書中で用いられる「相補的」という文言の意味には、トランジスタN1及びN2のオン/オフが完全に逆転している場合のほか、貫通電流防止の観点からトランジスタN1及びN2のオン/オフ遷移タイミングに遅延が与えられている場合(いわゆる同時オフ期間(デッドタイム)が設けられている場合)も含む。
逆流検出回路18は、コイル電流ILの逆流(コイルL1からトランジスタN2を介して接地端に流れるコイル電流IL)を監視して逆流検出信号S5を生成する。逆流検出信号S5は、コイル電流ILの逆流が検出された時点でハイレベル(逆流検出時の論理レベル)にラッチされ、次周期におけるゲート信号G1の立上りエッジでローレベル(逆流未検出時の論理レベル)にリセットされる。なお、コイル電流ILの逆流を監視する手法としては、例えば、トランジスタN2のオン期間中にスイッチ電圧Vswが負から正に切り替わるゼロクロスポイントを検出すればよい。ゲートドライバ回路17は、逆流検出信号S5がハイレベルであるときには、出力信号S4に依ることなくトランジスタN2を強制的にオフするようにゲート信号G2を生成する。
なお、上記したリップルインジェクション回路11、基準電圧生成回路12、メインコンパレータ13、ワンショットパルス生成回路14、RSフリップフロップ15、オン時間設定回路16、ゲートドライバ回路17、及び、逆流検出回路18は、帰還電圧Vfbと基準電圧Vrefとの比較結果に応じてトランジスタN1及びN2のオン/オフ制御を行うことにより、入力電圧Vinから出力電圧Voutを生成する非線形制御方式(本構成例ではボトム検出オン時間固定方式)のスイッチング制御回路として機能する。
<スイッチング動作>
図2は、重負荷時(電流連続モード時)のスイッチング動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、帰還電圧Vfb、セット信号S2、リセット信号S3、及び、出力信号S4が描写されている。
時刻t11において、帰還電圧Vfbが基準電圧Vrefまで低下すると、セット信号S2がローレベルに立ち下がり、出力信号S4がハイレベルに遷移される。従って、トランジスタN1がオンとなり、帰還電圧Vfbが上昇に転ずる。
その後、オン時間Tonの経過により、時刻t12において、リセット信号S3がローレベルに立ち下がると、出力信号S4がローレベルに遷移される。従って、トランジスタN1がオフとなって、帰還電圧Vfbが再び下降に転ずる。
ゲートドライバ回路17は、出力信号S4に応じてゲート信号G1及びG2を生成し、これを用いてトランジスタN1及びN2のオン/オフ制御を行う。具体的に述べると、出力信号S4がハイレベルであるときには、基本的に、ゲート信号G1がハイレベルとされてトランジスタN1がオンされるとともに、ゲート信号G2がローレベルとされてトランジスタN2がオフされる。逆に、出力信号S4がローレベルであるときには、基本的に、ゲート信号G1がローレベルとされてトランジスタN1がオフされるとともに、ゲート信号G2がハイレベルとされてトランジスタN2がオンされる。
上記したトランジスタN1及びN2のオン/オフ制御により、外部端子T3には矩形波形状のスイッチ電圧Vswが現れる。スイッチ電圧Vswは、コイルL1とコンデンサC1によって整流平滑され、出力電圧Voutが生成される。なお、出力電圧Voutは、抵抗R1及びR2により分圧され、分圧電圧Vdiv(延いては帰還電圧Vfb)が生成される。このような出力帰還制御により、スイッチング電源装置1では、極めて簡易な構成によって、入力電圧Vinから所望の出力電圧Voutが生成される。
<逆流遮断動作>
図3は、軽負荷時(電流不連続モード時)の逆流遮断動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、ゲート信号G1及びG2、逆流検出信号S5、コイル電流IL、並びに、スイッチ電圧Vswが描写されている。
時刻t21〜t22では、ゲート信号G1がハイレベルとされており、ゲート信号G2がローレベルとされているので、トランジスタN1がオンとなり、トランジスタN2がオフとなる。従って、時刻t21〜t22では、スイッチ電圧Vswがほぼ入力電圧Vinまで上昇し、コイル電流ILが増大していく。
時刻t22において、ゲート信号G1がローレベルに立ち下げられ、ゲート信号G2がハイレベルに立ち上げられると、トランジスタN1がオフとなり、トランジスタN2がオンとなる。従って、スイッチ電圧Vswが負電圧(=GND−IL×RN2、ただし、RN2はトランジスタN2のオン抵抗値)まで低下し、コイル電流ILが減少に転じる。
ここで、負荷に流れる出力電流Ioutが十分に大きい重負荷時には、コイルL1に蓄えられているエネルギが大きいので、ゲート信号G1が再びハイレベルに立ち上げられる時刻t24まで、コイル電流ILはゼロ値を下回ることなく負荷に向けて流れ続け、スイッチ電圧Vswは負電圧に維持される。一方、負荷に流れる出力電流Ioutが小さい軽負荷時には、コイルL1に蓄えられているエネルギが少ないので、時刻t23において、コイル電流ILがゼロ値を下回り、コイル電流ILの逆流が発生して、スイッチ電圧Vswの極性が負から正に切り替わる。このような状態では、コンデンサC1に蓄えられた電荷をコイルL1を介して入力側に戻していることになるので、軽負荷時における効率が低下する。
そこで、スイッチング電源装置1は、逆流検出回路18を用いてコイル電流ILの逆流(スイッチ電圧Vswの極性反転)を検出し、逆流検出信号S5のハイレベル期間(時刻t23〜t24)において、トランジスタN2を強制的にオフさせる構成とされている。このような構成とすることにより、コイル電流ILの逆流を速やかに遮断することができるので、軽負荷時における効率低下を解消することが可能となる。
<オン時間設定回路>
次に、図4及び図5を参照しながら、オン時間設定回路16の基本的な設計コンセプトについて説明する。
図4は、スイッチ出力段20の特性図である。なお、本図中において、LはコイルL1のインダクタンス、DCRはコイルL1の等価直列抵抗、RonHはトランジスタN1のオン抵抗、RonLはトランジスタN2のオン抵抗、IL~はコイル電流ILの平均値を各々示している。
図5は、スイッチング周期Tswにおけるコイル電流ILの挙動を示す模式図である。本図で示すように、コイル電流ILは、オン時間Ton(=トランジスタN1がオンされてトランジスタN2がオフされている時間)に亘って電流値I0から電流値I1まで増大した後、オフ時間Toff(=トランジスタN1がオフされてトランジスタN2がオンされている時間)に亘って電流値I1から電流値I2まで減少する。なお、電流値I1及びI2は、次の(1a)式及び(1b)式で各々表すことができる。
なお、定常状態ではI0=I2が成立する。これを代入して(1a)式及び(1b)式を整理すると、次の(2)式が得られる。
上記の(2)式から、スイッチング周期Tsw(延いては、スイッチング周波数fsw(=1/Tsw))を一定とするためには、Vin−(RonH−RonL)×IL~に比例する電流で、コンデンサを0VからVout+(RonL+DCR)×IL~までチャージするときの所要時間をオン時間Tonとして設定すればよいことが分かる。
ここで、Vin−RonH×IL~は、スイッチ電圧VswのハイレベルVswH(=オン時間Tonにおける電圧レベル)に相当し、−RonL×IL~は、スイッチ電圧VswのローレベルVswL(=オフ時間Toffにおける電圧レベル)に相当し、Vout+DCR×IL~は、スイッチ電圧Vswの平均電位(以下では、平均スイッチ電圧Vsw~と呼ぶ)に相当する。
従って、Vin−RonH>>−RonL×IL~であると仮定した場合、スイッチング周期Tswを一定とするためには、まず、オフ時間Toff中にコンデンサをスイッチ電圧VswのローレベルVswL(=−RonL×IL~)としておき、その後、トランジスタN1がオンされた時点で、スイッチ電圧VswのハイレベルVswH(=Vin−RonH×IL~)に比例した電流でコンデンサを充電し始め、コンデンサ電位が平均スイッチ電圧Vsw~に達するまでの所要時間をオン時間Tonとして設定するように、オン時間設定回路16を設計すればよい。
図6は、上記の設計コンセプトに基づいて設計されたオン時間設定回路16の基本構成を示す回路図である。本構成例のオン時間設定回路16は、第1電圧生成部Xと、第2電圧生成部Yと、コンパレータZと、を含む。
第1電圧生成部Xは、スイッチ電圧Vswと反転出力信号S4Bの入力を受けてランプ波形(或いは三角波形又はスロープ波形)の第1電圧VXを生成する。第1電圧VXは、オン時間Ton(=反転出力信号S4Bのローレベル期間)には初期値から所定の傾きで上昇し、オフ時間Toff(=反転出力信号S4Bのハイレベル期間)には初期値にリセットされる。
第2電圧生成部Yは、スイッチ電圧Vswの入力を受けて第2電圧VYを生成する。第2電圧VYは、コンパレータZの基準電圧に相当する。
コンパレータZは、第1電圧生成部Xから反転入力端(−)に入力される第1電圧VXと、第2電圧生成部Yから非反転入力端(+)に入力される第2電圧VYとを比較して、リセット信号S3を生成する。リセット信号S3は、第1電圧VXが第2電圧VYよりも高いときにローレベルとなり、逆に、第1電圧VXが第2電圧VYよりも低いときにハイレベルとなる。なお、リセット信号S3の立下りエッジは、オン時間Tonの終了トリガとして機能する。
次に、同図を参照しながら、第1電圧生成部Xの回路構成について詳述する。第1電圧生成部Xは、抵抗X1〜X5と、コンデンサX6と、Pチャネル型MOS[metal-oxide-semiconductor]電界効果トランジスタX7及びX8と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタX9〜X12と、オペアンプX13と、放電制御部X14と、を含む。
抵抗X1(抵抗値Rf)の第1端は、スイッチ電圧Vswの入力端に接続されている。抵抗X1の第2端と抵抗X3(抵抗値Rhop)の第1端は、いずれも第1電圧VXの出力端(=コンパレータZの反転入力端(−))に接続されている。抵抗X3の第2端は、コンデンサX6(容量値Cf)の第1端に接続されている。コンデンサX6の第2端は、接地端に接続されている。
オペアンプX13の非反転入力端(+)は、第1電圧VXの出力端に接続されている。オペアンプX13の出力端は、トランジスタX9のゲートに接続されている。トランジスタX9のドレインは、オペアンプX13の反転入力端(−)と抵抗X2(抵抗値Rf)の第1端に接続されている。抵抗X2の第2端は、接地端に接続されている。トランジスタX7及びX8のソースは、いずれも電源端に接続されている。トランジスタX7及びX8のゲートは、いずれもトランジスタX8のドレインに接続されている。トランジスタX7のドレインは、第1電圧VXの出力端に接続されている。トランジスタX8のドレインはトランジスタX9のドレインに接続されている。
トランジスタX10のドレインは、コンデンサX6の第1端に接続されている。トランジスタX10のソースは、接地端に接続されている。トランジスタX10のゲートは、放電制御部X14の第1出力端(=第1放電制御信号Saの出力端)に接続されている。抵抗X4(抵抗値Rd)の第1端は、スイッチ電圧Vswの入力端に接続されている。抵抗X4の第2端は、トランジスタX11のドレインに接続されている。トランジスタX11のソースとトランジスタX12のドレインは、いずれもコンデンサX6の第1端に接続されている。トランジスタX12のソースは、抵抗X5(抵抗値Rd)の第1端に接続されている。抵抗X5の第2端は接地端に接続されている。トランジスタX11及びX12のゲートは、いずれも放電制御部X14の第2出力端(=第2放電制御信号Sbの出力端)に接続されている。放電制御部X14には、反転出力信号S4Bが入力されている。
上記構成から成る第1電圧生成部Xにおいて、抵抗X1及びX2、トランジスタX7〜X9、並びに、オペアンプX13は、コンデンサX6の充電回路に相当する。抵抗X1には、スイッチ電圧Vswと第1電圧VXとの差分に応じた第1電流IX1(=(Vsw−VX)/Rf)が流れる。オペアンプX13は、非反転入力端(+)と反転入力端(−)とがイマジナリショートするようにトランジスタX9のゲート制御を行うので、抵抗X2の第1端には、第1電圧VXが現れる。従って、抵抗X2には、第1電圧VXに応じた第2電流IX2(=VX/Rf)が流れる。トランジスタX7及びX8から成るカレントミラーは、第2電流IX2をミラーして第1電流IX1に足し合わせることにより、スイッチ電圧Vswに応じた第3電流I3(=Vsw/Rf)を生成する。
反転出力信号S4Bのローレベル期間(=オン時間Ton)には、放電制御部X14がトランジスタX10〜X12をいずれもオフとするので、コンデンサX6の放電経路が遮断される。従って、第3電流I3によりコンデンサX6が充電されるので、第1電圧VXが上昇していく。
なお、コンデンサX6の充電時には、第1電圧VXがゼロから上昇し始めるので、第2電流IX2もゼロから増大し始める。従って、多少の起動遅延があってもオン時間Tonに大きな影響を及ぼすことはない。
抵抗X3は、メインコンパレータ13やゲートドライバ回路17などで生じる信号遅延時間を補正するための補正電圧を生成する。このような抵抗X3を設けることにより、Cf×Rhopに相当する遅延時間補正を行うことが可能となる。なお、抵抗X3の抵抗値Rhopを変えると、スイッチング周波数fswの入力電圧依存特性(Vin依存特性)が変わる。従って、抵抗X3の抵抗値Rhopは、事前の評価結果に応じて最適値に合わせ込むことが望ましい。
また、上記構成から成る第1電圧生成部Xにおいて、抵抗X4及びX5、トランジスタX10〜X12、並びに、放電制御部X14は、コンデンサX6の放電回路に相当する。反転出力信号S4Bのハイレベル期間(=オフ時間Toff)において、放電制御部X14は、まず、所定のミニマムオフ時間(例えば100ns)に亘り、トランジスタX10をオンしてトランジスタX11及びX12をオフする。その結果、コンデンサX6がトランジスタX10を介してGND電位(=0V)まで素早くディスチャージされる。
その後、放電制御部X14は、トランジスタX10をオフしてトランジスタX11及びX12をオンする。その結果、コンデンサX6は、スイッチ電圧VswのローレベルVswLを1/2に分圧した負電圧(=VswL/2)までさらにディスチャージされる。
なお、電流不連続モードにおけるトランジスタN2の強制オフ時(逆流遮断時)には、トランジスタN1及びN2がいずれもオフとなるので、スイッチ電圧Vswがほぼ出力電圧Voutまで上昇する。そのため、上記のようにトランジスタX11及びX12をオンしていると、オフ時間Toff中にコンデンサX6が出力電圧Voutの1/2まで充電されてしまうので、その後のオン時間設定動作(=第1電圧VXと第2電圧VYとの比較動作)に支障を生じる。そこで、電流不連続モードでは、反転出力信号S4Bのハイレベル期間に亘って第1電圧VXをGND電位(=0V)に固定するように、放電制御部X14による放電制御が行われる。具体的には、反転出力信号S4Bのハイレベル期間に亘って、トランジスタX10がオンとされ、トランジスタX11及びX12がオフとされる。
次に、同図を参照しながら、第2電圧生成部Yの回路構成について詳述する。第2電圧生成部Yは、抵抗Y1〜Y3とコンデンサY4及びY5を含む。
抵抗Y1(抵抗値:Rf1)の第1端は、スイッチ電圧Vswの入力端に接続されている。抵抗Y1の第2端は、抵抗Y2(抵抗値:Rf1)の第1端と、抵抗Y3(抵抗値:Rf2)の第1端と、コンデンサY4(容量値:Cf1)の第1端に接続されている。抵抗Y2の第2端とコンデンサY4の第2端は、いずれも接地端に接続されている。抵抗Y3の第2端とコンデンサY5(容量値:Cf2)の第1端は、いずれも第2電圧VYの出力端(=コンパレータZの非反転入力端(+))に接続されている。コンデンサY5の第2端は、接地端に接続されている。
上記構成から成る第2電圧生成部Yにおいて、抵抗Y1と抵抗Y2は、スイッチ電圧Vswの分圧電圧(=Vsw/2)を生成する分圧回路として機能する。また、抵抗Y1及びY3とコンデンサY4及びY5は、スイッチ電圧Vswの分圧電圧(=Vsw/2)を積分して第2電圧VYを生成する2次のRCローパスフィルタ(RC積分回路)として機能する。本構成例の第2電圧生成部Yでは、平均スイッチ電圧Vsw~の1/2に相当する第2電圧VY(=Vsw~/2)が生成される。
なお、RCローパスフィルタの次数は、2次に限定されるものではなく、1次であっても構わないし、3次以上であっても構わない。
また、スイッチ電圧Vswを分圧せずに第2電圧VYを生成する場合には、抵抗Y2、抵抗X4及びX5、並びに、トランジスタX10が不要となる。ただし、第1電圧VXの変動幅が大きくなるので、高い入力電圧Vinを取り扱う場合には、オン時間設定回路16の耐圧設計に留意が必要となる。
図7は、オン時間設定回路16の基本動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、スイッチ電圧Vsw、第1電圧VX、第2電圧VY、リセット信号S3、反転出力信号S4B、第1放電制御信号Sa、及び、第2放電制御信号Sbが描写されている。
時刻t31〜t33は、反転出力信号S4Bのハイレベル期間(=オフ時間Toff)に相当する。当該期間中には、まず、時刻t31〜t32に亘り、第1放電制御信号Saがハイレベルとされて、第2放電制御信号Sbがローレベルとされる。その結果、トランジスタX10がオンとなり、トランジスタX11及びX12がオフとなるので、第1電圧VXがGND電位(=0V)まで素早くディスチャージされる。
次に、時刻t32〜t33では、第1放電制御信号Saがローレベルとされて、第2放電制御信号Sbがハイレベルとされる。その結果、トランジスタX10がオフとなり、トランジスタX11及びX12がオンとなるので、第1電圧VXがスイッチ電圧VswのローレベルVswLを1/2に分圧した分圧電圧(=VswL/2)までさらにディスチャージされる。
一方、時刻t33〜時刻t34は、反転出力信号S4Bのローレベル期間(=オン時間Ton)に相当する。当該期間中には、第1放電制御信号Saと第2放電制御信号Sbがいずれもローレベルとされる。その結果、コンデンサX6の放電経路が遮断されるので、第3電流I3によるコンデンサX6の充電が進められて、第1電圧VXが上昇していく。そして、時刻t34において、第1電圧VXが第2電圧VYよりも高くなると、リセット信号S3がローレベルに立ち下がり、オン時間Tonが終了する。なお、時刻t34以降においても、上記と同様の動作が繰り返される。
このように、オン時間設定回路16は、オフ時間Toff中にコンデンサX6をスイッチ電圧VswのローレベルVswLに応じた初期値(=VswL/2)にディスチャージしておき、その後、トランジスタN1がオンされた時点で、スイッチ電圧VswのハイレベルVswHに比例した第3電流IX3でコンデンサX6を充電し始め、第1電圧VXが第2電圧VY(=平均スイッチ電圧Vsw~の1/2)に達するまでの所要時間をオン時間Tonとして設定するように設計されている。
このような構成とすることにより、非線形制御方式の長所を損なうことなく、スイッチング周波数fswの変動を抑制することができる。従って、出力電圧精度やロードレギュレーション特性の向上、セット設計におけるEMI[electromagnetic interference]対策やノイズ対策の容易化を実現することが可能となる。また、入力電圧Vinの変動が大きいアプリケーションや、様々な出力電圧Voutを必要とあるアプリケーションの電源手段として、スイッチング電源装置1を支障なく適用することも可能となる。
<第2電圧生成部(第1変形例)>
図8は、第2電圧生成部Yの第1変形例を示す回路図である。本変形例の第2電圧生成部Yは、先の基本構成(図6)をベースとしつつ、さらに、コンデンサY6及びY7と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタY8〜Y10と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタY11〜Y14と、インバータY15と、を含む。そこで、先の基本構成と同様の回路要素については、図6と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第1変形例の特徴部分について重点的な説明を行う。
コンデンサY6(容量値:Cf1)の第1端は、出力電圧Voutの入力端に接続されている。コンデンサY6の第2端は、コンデンサY4の第1端に接続されている。
抵抗Y2の第2端とコンデンサY4の第2端は、接地端に接続されるのではなく、トランジスタY13のドレインに接続されている。トランジスタY13のソースは、接地端に接続されている。トランジスタY13のゲートは、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。このように、抵抗Y2及びコンデンサY4と接地端との間には、トランジスタY13が挿入されている。
トランジスタY8のソースは、コンデンサY4の第1端に接続されている。トランジスタY8のドレインは、コンデンサY4の第2端に接続されている。トランジスタY8のゲートは、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。
トランジスタY9のソースは、コンデンサY6の第1端に接続されている。トランジスタY9のドレインは、コンデンサY6の第2端に接続されている。トランジスタY9のゲートは、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。
抵抗Y3の第2端は、第2電圧VYの出力端ではなく、トランジスタY14のドレインに接続されている。トランジスタY14のソースは、第2電圧VYの出力端に接続されている。トランジスタY14のゲートは、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。このように、抵抗Y3の第2端と第2電圧VYの出力端との間には、トランジスタY14が挿入されている。
コンデンサY7(容量値:Cf2)の第1端は、トランジスタY10のドレインに接続されている。コンデンサY7の第2端は、コンデンサY5の第1端に接続されている。
トランジスタY10のソースは、出力電圧Voutの入力端に接続されている。トランジスタY10のドレインは、コンデンサY7の第1端に接続されている。トランジスタY10のゲートは、インバータY15の出力端に接続されている。
トランジスタY11のドレインは、コンデンサY5の第1端に接続されている。トランジスタY11のソースは、コンデンサY5の第2端に接続されている。トランジスタY11のゲートは、インバータY15の出力端に接続されている。インバータY15の入力端は、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。
トランジスタY12のドレインは、コンデンサY7の第1端に接続されている。トランジスタY12のソースは、コンデンサY7の第2端に接続されている。トランジスタY12のゲートは、インバータY15の出力端に接続されている。
イネーブル信号ENは、スイッチング停止時(=コイル電流ILの逆流が検出されてトランジスタN1及びN2がいずれもオフされたとき)にローレベルとなり、スイッチング再開時(=次周期においてトランジスタN1がオンされたとき)にハイレベルとなる論理信号である。なお、イネーブル信号ENとしては、例えば、先述の逆流検出信号S5を流用することが可能である。
なお、イネーブル信号ENがローレベルであるときには、トランジスタY13及びY14がオフとなり、抵抗Y1及びY2を介する電流経路、並びに、抵抗Y3を介する電流経路がいずれも遮断される。すなわち、トランジスタY13及びY14は、スイッチング停止時にスイッチ電圧Vswの入力端から接地端に至る電流経路を遮断する電流経路遮断器として機能する。このような構成とすることにより、スイッチング停止時の省電力化を実現することが可能となる。
ただし、上記の電流経路を遮断している間は、第2電圧VYがGND電位(=0V)まで低下してしまう。そのため、スイッチング再開時には、第2電圧VYを素早く元の電圧値(=Vsw~/2)まで引き上げる必要がある。しかしながら、RCローパスフィルタによるスイッチ電圧Vswの積分処理では、第2電圧VYの復帰に長時間を要するので、オン時間設定動作に支障を生じる。
一方、定常状態における平均スイッチ電圧Vsw~は、出力電圧Voutと概ね一致する。この事実に鑑み、本変形例の第2電圧生成部Yは、スイッチング再開時に出力電圧Voutを容量分圧することにより、第2電圧VYを所定の初期値VY0(=Vout/2≒Vsw~/2)まで瞬間的に引き上げるプルアップ部を有する。
より具体的に述べると、本変形例の第2電圧生成部Yでは、RCローパスフィルタを形成するコンデンサY4及びY5に対して、それぞれ直列にコンデンサY6及びY7が接続されている。すなわち、出力電圧Voutの入力端と接地端との間には、コンデンサY4及びY6から成る第1容量分圧回路と、コンデンサY5及びY7から成る第2容量分圧回路が形成されており、これら2つの容量分圧回路がプルアップ部として機能する。
イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに立ち上がり、トランジスタY13がオンすると、コンデンサY4とコンデンサY6との接続ノードに容量分圧電圧(=Vout/2)が現れる。同様に、イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに立ち上がり、トランジスタY10がオンすると、コンデンサY5とコンデンサY7との接続ノードに容量分圧電圧(=Vout/2)が現れる。
このような構成とすることにより、スイッチング再開時には、RCローパスフィルタによるスイッチ電圧Vswの積分処理を待つことなく、第2電圧VYを所定の初期値VY0(=Vout/2)まで瞬間的に引き上げることが可能となる。なお、スイッチング再開後、第2電圧VYは、RCローパスフィルタが持つ時定数に従い、本来の電圧値(=RCローパスフィルタで得られる積分値Vsw~/2)に落ち着く。
なお、イネーブル信号ENがハイレベルである間、抵抗Y1と抵抗Y2との接続ノードは、第1容量分圧回路によってVout/2にバイアスされ、第2電圧VYの出力端は、第2容量分圧回路によってVout/2にバイアスされる。従って、第2電圧VYが出力変動に追従しやすくなるので、第2電圧VYの挙動を安定化することが可能となる。
また、コンデンサY4〜Y7には、トランジスタY8及びY9、並びに、トランジスタY11及びY12がそれぞれ並列接続されている。これらのトランジスタY8及びY9、並びに、トランジスタY11及びY12は、いずれも、イネーブル信号ENがハイレベルであるときにオンし、イネーブル信号ENがローレベルであるときにオフする。
従って、スイッチング再開時にイネーブル信号ENがハイレベルに立ち上げられると、コンデンサY4〜Y7それぞれの両端間がショートされて、各々に蓄積された電荷が放電される。このような構成とすることにより、スイッチング再開毎に第2電圧VYのプルアップ動作を正しく行うことができる。
<第2電圧生成部(第2変形例)>
図9は、第2電圧生成部Yの第2変形例を示す回路図である。本変形例の第2電圧生成部Yは、先の第1変形例(図8)をベースとしつつ、さらに、プルアップ部の追加要素として、抵抗Y18と、コンデンサY16及びY17と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタY19と、を含む。そこで、先の第1変形例と同様の回路要素については、図8と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2変形例の特徴部分について重点的な説明を行う。
コンデンサY16(容量値:Ch1)の第1端は、コンデンサY7の第1端に接続されている。コンデンサY16の第2端と抵抗Y18(抵抗値:Rh2)の第1端は、いずれも、第2電圧VYの出力端に接続されている。抵抗Y18の第2端は、コンデンサY17(容量値:Ch2)の第1端に接続されている。コンデンサY17の第2端は、接地端に接続されている。
トランジスタY19のドレインは、抵抗Y18の第1端に接続されている。トランジスタY19のソースは、抵抗Y18の第2端に接続されている。トランジスタY19のゲートは、イネーブル信号ENの入力端に接続されている。
なお、第2電圧生成部Yのプルアップ部は、パッシブデバイスとスイッチのみで構成されているので、バイアス電流が不要であり、待機電流ゼロを容易に実現することが可能である。また、起動時の遅延についても原理的には存在しない。
次に、上記の追加要素(コンデンサY16及びY17、抵抗Y18、並びに、トランジスタY19)を用いたオン時間変調動作について説明する。コンデンサY17を無視した場合、コンデンサY16を追加したことにより、スイッチング再開時における第2電圧VYの初期値VY1は、次の(3)式で表される電圧値となる。すなわち、コンデンサY16の容量値Ch1が大きいほど、第2電圧VYの初期値VY1が高くなる。
一方、コンデンサY16を無視した場合、コンデンサY17を追加したことにより、スイッチング再開時における第2電圧VYの初期値VY2は、次の(4)式で表される電圧値となる。すなわち、コンデンサY17の容量値Ch2が大きいほど、第2電圧VYの初期値VY2が低くなる。
ただし、上記の(4)式が成立するのは、スイッチング再開時点でコンデンサY17が完全に放電されている場合、すなわち、イネーブル信号ENのローレベル期間(=トランジスタY19のオフ期間)がコンデンサY17と抵抗Y18から成るRC回路の時定数τ(=Ch2×Rh2)よりも長い場合である。
イネーブル信号ENのローレベル期間が時定数τよりも短いほど、コンデンサY17の電荷がより多く放電されずに残るので、第2電圧VYの初期値を引き下げる効果が小さくなる。すなわち、コンデンサY17による初期値の引き下げ効果は、負荷が軽い(=イネーブル信号ENのローレベル期間が長い)ほど大きくなり、負荷が重い(=イネーブル信号ENのローレベル期間が短い)ほど小さくなる。
上記したコンデンサY16及びY17の動作を合わせると、次のようになる。
まず、電流不連続モードから電流連続モードに切り替わる直前の負荷領域では、イネーブル信号ENのローレベル期間が先述の時定数τよりも十分に短く、コンデンサY17に蓄えられた電荷が殆ど放電されない状態となる。従って、コンデンサY17を無視することができるので、スイッチング再開時には、第2電圧VYが先出の(3)式で表される初期値VY1までプルアップされる。
一方、電流不連続モードにおいて、負荷が十分に軽くなり、イネーブル信号ENのローレベル期間中にコンデンサY17が完全に放電される状態に至ると、スイッチング再開時における第2電圧VYの初期値VY3は、次の(5)式で表される電圧値となる。この状態は、4つのコンデンサ(Y5、Y7、Y16、Y17)全てを用いて、出力電圧Voutの容量分圧が行われている状態に相当する。
ただし、上記の(5)式が成立するのは、スイッチング再開時点でコンデンサY17が完全に放電されている場合であり、負荷が重くなるほど(=イネーブル信号ENのローレベル期間が短くなるほど)、第2電圧VYの初期値がVY3からVY1に近付いていく。
なお、第2電圧VYは、スイッチング再開後、初期値から本来の電圧値(=Vsw~/2)に向けて徐々に落ち着いていく。ただし、第1電圧VXは、スイッチング再開後、第2電圧VYが本来の電圧値に落ち着く前にこれとクロスする。従って、第2電圧VYの初期値が高いほどオン時間Tonが長くなり、逆に、第2電圧VYの初期値が低いほどオン時間Tonが短くなる。
また、先出の(5)式からも分かるように、Ch1>Ch2であればVY3>VY0となり、Ch1<Ch2であればVY3<VY0となる。従って、容量値Ch1及びCh2を適切に設定することにより、所望のオン時間特性を得ることができる。
図10は、第2電圧VYのプルアップ動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、イネーブル信号ENと第2電圧VYの挙動が描写されている。時刻t41において、イネーブル信号ENがハイレベルに立ち上げられたとき、第2電圧VYは、先述のプルアップ動作により、負荷に応じた初期値まで瞬間的に引き上げられる。
例えば、第2電圧VYの実線で示すように、電流不連続モードから電流連続モードに切り替わる直前の負荷領域では第2電圧VYの初期値VY1が本来の電圧値(=Vsw~/2)よりも高くなるように、プルアップ部を設計しておくとよい。このような設計を行うことにより、コイル電流ILの逆流が検出されて一旦電流不連続モードに移行すると、トランジスタN1のオン時間Tonが意図的に延長されることになる。従って、コイル電流ILのピーク値が大きくなり、負荷に供給される出力電流Ioutが大きくなるので、その影響が残る時定数の間、同じ出力電流Ioutでも電流不連続モードで動作するようになり、電流連続モードから電流不連続モードへ移行する際のヒステリシスが確保される。
また、第2電圧VYの小破線、大破線、一点鎖線、ないしは、二点鎖線で示すように、負荷が軽いほど第2電圧VYの初期値が低くなるように、プルアップ部を設計しておくとよい。このような設計を行うことにより、電流不連続モードでは負荷が軽いほどオン時間Tonが短縮されるので、軽負荷時の出力リップルを低減することが可能となる。
<第2電圧生成部(第3変形例)>
図11は、第2電圧生成部Yの第3変形例を示す回路図である。本変形例の第2電圧生成部Yは、先の第2変形例(図9)をベースとしつつ、さらに、コンデンサY20と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタY21と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタY22と、を含む。そこで、先の第2変形例と同様の回路要素については、図9と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第3変形例の特徴部分について重点的な説明を行う。
トランジスタY21のソースは、第2電圧VYの出力端に接続されている。トランジスタY21のドレインは、コンデンサY20(容量値Ch3)の第1端とトランジスタY22のドレインに接続されている。コンデンサY20の第2端とトランジスタY22のソースは、いずれも接地端に接続されている。トランジスタY21及びY22のゲートは、いずれも動作モード判別信号SKIPの入力端に接続されている。
なお、動作モード判別信号SKIPは、コイル電流ILの逆流が検出されてトランジスタN1及びN2がいずれもオフされたとき(すなわち電流不連続モード時)にハイレベルとなり、コイル電流ILの逆流が検出される前にトランジスタN1がオンされたとき(すなわち電流連続モード時)にローレベルとなる論理信号である。
このように接続されたコンデンサY20とトランジスタY21及びY22は、電流不連続モードから電流連続モードに切り替わった時点で第2電圧VYを過渡的に引き下げるプルダウン部として機能する。以下では、プルダウン部による動作モード切り替わり時の動的ヒステリシス付与動作について詳細に説明する。
図12は、第2電圧VYのプルダウン動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、コイル電流IL、スイッチ電圧Vsw、イネーブル信号EN、動作モード判別信号SKIP、並びに、第1電圧VX(破線)及び第2電圧VY(実線)が描写されている。
時刻t109以前は、オフ時間Toff中にコイル電流ILがゼロ値を下回る電流不連続モードである。スイッチング停止時には、第2電圧生成部Yが省電力状態となり、第2電圧VYが0Vに低下する。一方、スイッチング再開時には、第2電圧VYが本来の電圧値(=Vsw~/2)よりも高い初期値まで瞬時に引き上げられる(時刻t101、時刻t104、ないしは、時刻t107を参照)。これらの動作は先に述べた通りである。
なお、電流不連続モードでは、動作モード判別信号SKIPがハイレベルに維持されている。このとき、トランジスタY21はオフとなり、トランジスタY22はオンとなる。従って、コンデンサY20の両端間がショートされているので、プルダウン部が第2電圧VYの生成動作に影響を与えることはない。
一方、時刻t109では、コイル電流ILの逆流が検出される前(=イネーブル信号ENがローレベルに立ち下がる前)にトランジスタN1がオンされたことに伴い、動作モード判別信号SKIPがローレベルに立ち下がっている。このとき、トランジスタY21がオフとなり、トランジスタY22がオンとなる。従って、第2電圧VYの出力端と接地端との間にコンデンサY20が挿入されるので、第2電圧VYが過渡的に引き下げられる。
なお、プルダウン部が導入されていない場合には、図中の細破線で示したように、RCローパスフィルタの時定数τに従い、第2電圧VYが緩やかに元の電圧値Vsw~/2に戻っていく。そのため、電流不連続モードから電流連続モードへの移行後も、暫くはオン時間Tonの延長作用が続くので、電流不連続モードに復帰しやすい状態が継続される。
これに対して、プルダウン部が導入されている場合には、一旦電流連続モードに移行すると、第2電圧VYが引き下げられてオン時間Tonが短縮される。その結果、コイル電流ILのピークトゥピーク値が小さくなり、コイル電流ILのボトム値がゼロ値を下回りにくくなるので、出力電流Ioutが十分に減少するまで電流連続モードが維持される。
なお、図11及び図12では、第2変形例(図9)をベースとして、さらにプルダウン部を導入した構成を例に挙げて説明を行ったが、プルダウン部の導入対象は、これに限定されるものではなく、先の基本構成(図6)や第1変形例(図8)をベースとして、プルダウン部を導入することも可能である。
<オン時間と出力電流との相関関係>
図13は、オン時間Tonと出力電流Ioutとの相関図である。出力電流Ioutが閾値電流Ithよりも小さい電流不連続モード(DCM[discontinuous current mode]と表記)では、出力電流Ioutが小さいほどオン時間Tonが短縮される。このようなオン時間変調動作により、出力リップルの増大を防ぐことができる。
これに対して、出力電流Ioutが閾値電流Ithよりも大きい電流連続モード(CCM[continuous current mode]と表記)では、トランジスタN1及びN2のオン抵抗やコイルL1の等価直列抵抗の影響でスイッチング周波数fswが変化しないように、出力電流Ioutに応じてオン時間Tonが調整される。このようなオン時間Tonの調整動作は、先に述べた通り、オフ時間Toff中にコンデンサをスイッチ電圧VswのローレベルVswL(=−RonL×IL~)としておき、その後、トランジスタN1がオンされた時点で、スイッチ電圧VswのハイレベルVswH(=Vin−RonH×IL~)に比例した電流でコンデンサを充電し始め、コンデンサ電位が平均スイッチ電圧Vsw~に達するまでの所要時間をオン時間Tonとして設定することにより実現される。
また、電流不連続モードと電流連続モードとの切り替わりが生じる負荷領域では、オン時間Tonにヒステリシスが付与されている。このような構成とすることにより、軽負荷から重負荷への遷移時(ないしは重負荷から軽負荷への遷移時)において電流連続モードと電流不連続モードが不規則に繰り返されることがなくなるので、不規則なモード遷移による出力電圧Voutのリップル成分の増大を防ぐことが可能となる。
<シミュレーション結果>
図14は、負荷増減に伴う出力挙動の一変遷例を示すタイミングチャートであり、上から順に、リセット信号S3、出力電圧Vout、スイッチ電圧Vsw、第2電圧VY、ゲート信号G1、動作モード判別信号SKIP、及び出力電流Ioutが描写されている。
領域P1及びP2で示したように、軽負荷時にスイッチング周波数fswが下がると、第2電圧VYが引き下げられてオン時間Tonが短縮される。これにより、軽負荷時における出力リップルの増大を防止することができる。
また、領域P3及びP4で示したように、電流不連続モードから電流連続モードへの移行時には、第2電圧VYが過渡的に引き下げられる。一方、領域P5で示したように、電流連続モードから電流不連続モードへの移行時には、第2電圧VYがRCローパスフィルタで得られる積分値(=Vsw~/2)よりも高い電圧値まで引き上げられる。これにより、オン時間Tonにヒステリシスが付与されるので、両モード間の遷移を安定化することが可能となる。
<テレビへの適用>
図15は、上記のスイッチング電源装置を搭載したテレビの一構成例を示すブロック図である。また、図16A〜図16Cは、それぞれ、上記のスイッチング電源装置を搭載したテレビの正面図、側面図、及び、背面図である。本構成例のテレビAは、チューナ部A1と、デコーダ部A2と、表示部A3と、スピーカ部A4と、操作部A5と、インタフェイス部A6と、制御部A7と、電源部A8と、を有する。
チューナ部A1は、テレビAに外部接続されるアンテナA0で受信された受信信号から所望チャンネルの放送信号を選局する。
デコーダ部A2は、チューナA1で選局された放送信号から映像信号と音声信号を生成する。また、デコーダ部A2は、インタフェイス部A6からの外部入力信号に基づいて、映像信号と音声信号を生成する機能も備えている。
表示部A3は、デコーダ部A2で生成された映像信号を映像として出力する。
スピーカ部A4は、デコーダ部A2で生成された音声信号を音声として出力する。
操作部A5は、ユーザ操作を受け付けるヒューマンインタフェイスの一つである。操作部A5としては、ボタン、スイッチ、リモートコントローラなどを用いることができる。
インタフェイス部A6は、外部デバイス(光ディスクプレーヤやハードディスクドライブなど)から外部入力信号を受け付けるフロントエンドである。
制御部A7は、上記各部A1〜A6の動作を統括的に制御する。制御部A7としては、CPU[central processing unit]などを用いることができる。
電源部A8は、上記各部A1〜A7に電力供給を行う。電源部A8としては、先述のスイッチング電源装置1を好適に用いることができる。
<その他の変形例>
なお、上記実施形態では、降圧型のスイッチング電源装置に本発明を適用した構成を例示して説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、例えば、スイッチング電源装置の出力段を昇圧型や昇降圧型、若しくは、反転型としても構わない。
また、上記実施形態では、オン時間固定方式のスイッチング電源装置(オン時間設定回路)を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、上記と同様の技術的思想に基づいてRCネットワークを変更することにより、オフ時間固定方式のスイッチング電源装置(オフ時間設定回路)にも適用することが可能である。
このように、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。