以下に説明する実施形態においては、建物が戸建て住宅である場合を想定し、空調システムが全館空調システムである場合を想定している。この全館空調システムは、熱源機が生成した熱エネルギーを冷気あるいは暖気として建物のほぼ全体に供給する構成である。また、この全館空調システムは、空調と換気とを行うように構成されている。
図1に示す空調システム10は、建物20に設置されており、熱源機11と、エアフィルタ12と、2台の搬送ファン13とを備える。また、図1に示す空調システム10は、1台の搬送ファン13に対して3個以上のダンパ14と、3個以上の吹出口15とを備えている。ダンパ14及び吹出口15の個数は、望ましくは5個以上7個以下である。ダンパ14と吹出口15とは一対一に対応しているため、ダンパ14と吹出口15との個数は同数である。ここでのダンパ14は、VAVユニット(VAV:Variable Air Volume)で実現される。搬送ファン13の台数と、ダンパ14及び吹出口15の個数とは、熱源機11の容量、建物20の構成及び規模などに応じて適宜に定められる。以下では説明を簡単にするために、ダンパ14と吹出口15が、1台の搬送ファン13に対して5個ずつである場合を例として説明する。
また、空調システム10は、熱源機11からの冷気又は暖気を吹出口15に送る給気ダクト16と、熱源機11に外気を導入する外気ダクト171とを備える。熱源機11には、建物20の内部の空気も導入される。図1では、建物20の内部の空気を熱源機11に導入する経路を符号172で表している。この経路172は、空気の流れを模式的に表しており、建物20の内部におけるドアの隙間、換気口のように空気が流通する箇所を含む。また、経路172は、還流用のダクトを備えていてもよい。
熱源機11が送り出す空気には、熱源機11の運転状態に応じて、熱源機11が冷却した冷気と、熱源機11が加熱した暖気とがある。さらに、図1に示す空調システム10は制御装置30及び複数個の温度センサ18を備えている。ここでは、熱源機11とエアフィルタ12と2台の搬送ファン13とは、建物20に設置される単一の筐体101に収納されており、ユニット化されている。したがって、熱源機11からエアフィルタ12を通り2台の搬送ファン13に至る経路(図1に破線で示している)は、筐体101の内部に形成されている。
この空調システム10は、熱源機11が生成した熱エネルギーを10個の吹出口15に配分するために、2台の搬送ファン13、及び10個のダンパ14を備えている。搬送ファン13が送り出した空気は、給気ダクト16を通して吹出口15に送られる。すなわち、2台の搬送ファン13と10個のダンパ14と給気ダクト16とは、熱源機11が生成した熱エネルギーを10個の吹出口15に配分する分配装置102を構成している。熱源機11が生成した熱エネルギーを10個の吹出口15に配分する割合は、2台の搬送ファン13それぞれの風量と、10個のダンパ14それぞれの開度とにより決まる。すなわち、制御装置30が分配装置102を制御することにより、熱源機11が生成した熱エネルギーを10個の吹出口15に配分する割合が決まる。そして、複数の空調領域21それぞれに単位時間に供給される熱量は、吹出口15から空調領域21に供給される空気の温度及び流量により決まる。
ここでの空調領域21は、吹出口15に一対一に対応するように仮想的に定めた空間領域である。空調の対象である空調空間としての単一の部屋23に複数の吹出口15から冷気又は暖気を供給する場合、単一の部屋23に複数個の空調領域21が存在する。空調空間は、部屋23に限らず廊下あるいは階段などでもよい。図1に示す空調システム10では、1つの部屋23に2つの空調領域21が存在する場合を例示している。部屋23に示す破線は、空調領域21を実空間で仕切っているわけではなく、2つの空調領域21が存在することを示すために仮に設定した線である。
制御装置30は、複数個の温度センサ18それぞれが計測した温度を所定時間ごとに現在温度として取得し、現在温度に基づいて、熱源機11と分配装置102とを制御し、10個の吹出口15への単位時間当たりの熱量の配分量を調節する。複数個の温度センサ18それぞれは、輻射熱の影響を受けずに気温を計測するように、通気口を有したケースに収納されていることが望ましい。
建物20は内部に複数の空調領域21を備える。空調領域21は、空調の対象となる空間である。複数の空調領域21それぞれは、一般的には、建物20の部屋23に一対一に対応している。ただし、単一の部屋23に複数の空調領域21が存在する場合があり、また単一の空調領域21が複数の部屋23に跨がる場合がある。空調領域21は、部屋23に限らず、廊下あるいは階段であってもよい。複数の空調領域21には、それぞれ吹出口15が配置される。すなわち、複数の空調領域21それぞれには、吹出口15から空気が供給される。
温度センサ18と空調空間である部屋23(廊下あるいは階段でもよい)は、原則として一対一に対応し、温度センサ18は、部屋23の温度を計測する。したがって、単一の部屋23に複数の空調領域21が存在する場合、部屋23に1個の温度センサ18が配置される。図1に示す空調システム10では、2つの空調領域21がある単一の部屋23に、1個の温度センサ18が配置された例が示されている。したがって、図1に示す空調システム10は、10個の吹出口15に対して9個の温度センサ18を備える。単一の部屋23に複数の空調領域21が存在する場合、部屋23に配置された1個の温度センサ18が計測した温度は、複数の空調領域21で共用される。すなわち、空調領域21はダンパ14に一対一対応しているが、部屋23がダンパ14に一対多対応する場合、複数のダンパ14の開度は1個の温度センサ18が計測した温度により決まる。ただし、単一の部屋23に複数の空調領域21が存在する場合に、2個以上の温度センサ18が配置されていてもよい。
温度センサ18が配置される場所は、吹出口15が吹き出した空気が温度センサ18に直接当たることがないように定められる。温度センサ18の位置は、空調領域21を囲む壁面であって、例えば床から110[cm]以上120[cm]以下の高さとなるように定められる。このような温度センサ18の位置は、適宜に変更することが可能である。
吹き抜けが形成されている部屋23であって、床から天井までの寸法が大きい場合、複数の吹出口15が上下に離れて配置されることがある。このような部屋23では、単一の部屋23に上下に並んだ複数の空調領域21が形成される。吹き抜けが形成されている部屋23は、1階の天井がなく2階の天井が部屋23の天井であることが多い。吹き抜けが形成されている部屋23が、上下に並ぶ2つの空調領域21を備える場合、温度センサ18は2つの空調領域21それぞれに配置される。そして、一方の温度センサ18は1階の床から上述した高さとなる位置に配置され、他方の温度センサ18は2階の床に相当する高さから上述した高さだけ上の位置に配置される。このような温度センサ18の位置は一例に過ぎず、適宜に変更することが可能である。
熱源機11は、1台の室内機111と1台の室外機112とを備えたヒートポンプ式のエアコンであって、室内機111からの空気は給気ダクト16を通して空調領域21に供給される。また、室内機111が取り込む空気は、建物20の床下22から外気ダクト171を通して取り込まれる屋外の空気と、建物20の内部から経路172を通して回収される屋内の空気とである。外気ダクト171は、床下22の空気を取り込む換気ファン19に接続されている。
熱源機11は、夏季には室内機111から冷気を送り出す冷房運転を行い、冬季には室内機111から暖気を送り出す暖房運転を行う。熱源機11の冷房運転と暖房運転との切替は、春季あるいは秋季のような中間期に行う。冷房運転と暖房運転との違いは、熱源機11の設定温度を、上限値として用いるか、下限値として用いるかの相違である。熱源機11は、冷房運転の際は、室内機111から送り出す冷気の温度が上限値である熱源機11の設定温度を上回らないように動作し、暖房運転の際は、室内機111から送り出す暖気の温度が下限値である熱源機11の設定温度を下回らないように動作する。以下の説明において、暖房運転の際の熱量は暖気の熱量を意味し、冷房運転の際の熱量は冷気の熱量を意味する。
室内機111からの空気は、エアフィルタ12を通して搬送ファン13に送られる。エアフィルタ12は、HEPAフィルタ(HEPA:High Efficiency Particulate Air)であることが望ましい。エアフィルタ12がHEPAフィルタであれば、微小粒子状物質の除去が可能である。ここに、サイズが比較的大きい塵埃及び昆虫などは、換気ファン19と外気ダクト171と室内機111とを含む経路内の1箇所以上に配置されたフィルタによって、空気をエアフィルタ12に導入する前に除去される。そのため、エアフィルタ12の目詰まりが抑制される。
この空調システム10では、給気ダクト16は、2台の搬送ファン13が送り出した空気がそれぞれ導入される2系統の分岐ダクト161を備える。すなわち、室内機111から送り出されエアフィルタ12を通過した後に2台の搬送ファン13に送られた空気が、搬送ファン13ごとに異なる分岐ダクト161に導入される。2台の搬送ファン13はそれぞれ室内機111からの空気を加速する。この空調システム10では、2系統の分岐ダクト161それぞれが、更に5系統の末端ダクト162に分岐している。つまり、室内機111からの空気は10系統の末端ダクト162に導入される。
10系統の末端ダクト162のそれぞれにはダンパ14が配置される。ダンパ14は、開度が調節可能であり、開度の変化により末端ダクト162を通る空気の流量を変化させる。末端ダクト162の末端には吹出口15が接続されている。したがって、室内機111からの空気は、搬送ファン13を通してダンパ14に送られ、ダンパ14で流量が調節された後、吹出口15を通して空調領域21に吹き出す。
上述した空調システム10は、建物20の換気を常時行う。そのため、原則として、搬送ファン13は常に運転を行う。また、空調システム10は、冷房運転あるいは暖房運転を必要としない場合、熱源機11を停止させる。すなわち、外気ダクト171から室内機111に導入される外気は、熱源機11が冷却あるいは加熱を行わない場合でも、換気のために搬送ファン13により空調領域21に送り込まれる。ただし、メンテナンスなどの必要に応じて搬送ファン13を停止させることは可能である。また、換気扇などによる換気を行う場合、搬送ファン13を停止させる場合もある。
以下では、制御装置30について詳述する。制御装置30は、図2に示すように、処理部31と制御部32とを備える。処理部31は、複数の空調領域21のそれぞれに供給する熱量の配分量を定める。制御部32は、熱源機11と搬送ファン13とダンパ14との制御を行う。また、制御装置30は、操作表示装置40との間で情報の入力及び出力を行うためのインターフェイス部33を備える。
操作表示装置40は、表示装置とタッチパッドとを含むタッチパネルを備え、ユーザインターフェイス(GUI:Graphic User Interface)として機能する。すなわち、制御装置30は、操作表示装置40が備える表示装置に情報を出力し、操作表示装置40が備えるタッチパッドから入力される情報を受け付ける。操作表示装置40には、必要に応じて様々な画面が表示される。操作表示装置40は、専用でなくても、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどであってもよい。また、操作表示装置40ではなく、表示装置と操作装置とを個別に備えていてもよい。
操作表示装置40に表示される画面には、部屋23にダンパ14を対応付ける画面、建物20の複数の部屋23それぞれに温度センサ18を対応付けるための画面などがある。部屋23とダンパ14との対応関係が定まり、部屋23と温度センサ18との対応関係が定まると、部屋23とダンパ14と温度センサ18とが結び付く。また、吹出口15はダンパ14と一対一に対応しているから、部屋23とダンパ14との対応関係が定まると、部屋23と吹出口15とが結び付く。
ところで、操作表示装置40に表示される画面の1つは、図3のような部屋23(廊下あるいは階段でもよい)のユーザ希望温度を決める画面P1である。この画面P1は、複数の部屋23それぞれのユーザ希望温度を受け付ける複数のボタン群B1、B2、B3を有する。画面P1には、部屋名を示すフィールドF1が設けられている。図3に示す例では、1つの画面P1で3つの部屋23のユーザ希望温度を定めることが可能である。建物20が備える部屋23の個数が、1つの画面P1に表示可能な部屋23の個数を超えている場合は、画面P1に他の画面へ切り替えるボタンが表示される。このボタンが操作されると、他の画面に切り替えられ、他の部屋23のユーザ希望温度が設定可能になる。
図3に示す例では、ボタン群B1は、3個のボタンB10、B11、B12が上下に並ぶ。中央のボタンB10は建物20の全体に一つ設定される基準温度に対応している。基準温度は、ユーザによる設定が可能である。また、空調システム10には、工場出荷時に基準温度の初期値が定められていてもよい。このボタンB10を操作すると、ユーザ希望温度は基準温度に定められる。また、上のボタンB11を操作するとユーザ希望温度が基準温度より高く設定され、下のボタンB12を操作するとユーザ希望温度が基準温度より低く設定される。ボタンB11又はボタンB12が操作されると、制御装置30は、1回の操作毎に所定温度刻みでユーザ希望温度を変化させる。選択されている温度は、ボタン群B1に対応付けて数値で表示される。
一例として、基準温度が26.0[℃]であり、所定温度が0.5[℃]であって、ユーザ希望温度が基準温度である場合を想定する。この場合、ボタンB11を1回操作するとユーザ希望温度が26.5[℃]に設定され、ボタンB12を1回操作するとユーザ希望温度が25.5[℃]に設定される。また、ユーザ希望温度が基準温度であるときに、ボタンB11を2回操作するとユーザ希望温度は27.0℃に設定される。設定されたユーザ希望温度にかかわらず、ボタンB10を操作すると、ユーザ希望温度は基準温度である26.0[℃]に復帰する。ここに示した数値は、空調システム10が冷房運転の期間である場合の一例であり、これらの数値に限定する趣旨ではない。
ここでは、ボタン群B1の構成及び動作を説明した。ボタン群B2、B3も同様の構成及び動作である。また、1画面で3つの部屋23のユーザ希望温度を設定可能にする構成を例示したが、1画面でユーザ希望温度を設定する部屋23の個数は設計により変更可能である。さらに、ボタン群B1、B2、B3の構成及び動作は、上述した構成に限らない。例えば、複数のボタン群B1、B2、B3のそれぞれが5個ずつのボタンを備える構成でもよい。この構成では、複数のボタン群B1、B2、B3のそれぞれで、選択されているユーザ希望温度に相当するボタンを残りのボタンとは異なる表示状態とすればよい。異なる表示状態は、例えば、ボタンのサイズ、ボタンの色、ボタンに付加するマークなどの少なくとも1つの要素によって実現される。
複数の部屋23それぞれについて、画面P1を使ってユーザ希望温度が定められると、制御装置30は、ユーザ希望温度を記憶部34に格納する。記憶部34には、複数の部屋23それぞれについてユーザ希望温度が格納される。
図2に示す制御装置30の処理部31は、複数の温度センサ18それぞれと通信する取得部310を備える。この空調システム10では、取得部310は、温度センサ18との間で有線通信を行い、複数の温度センサ18に対して定期的に現在温度を問い合わせるように構成されている。すなわち、取得部310は、複数の温度センサ18に対してポーリングを行うことにより、個々の温度センサ18から現在温度を取得する。取得部310が複数の温度センサ18それぞれに現在温度を問い合わせる周期は、1分以上15分以下の範囲、望ましくは5分以上10分以下の範囲に定められている。この周期は、温度センサ18の計測精度、部屋23の温度が変化する速さなどにより決まる。
取得部310が温度センサ18から取得した現在温度は、取得部310が温度センサ18に問い合わせたときに温度センサ18が計測した温度である。ただし、温度センサ18が取得部310からの問い合わせを受けた時点付近に定めた所定期間での温度の平均値であってもよい。この所定期間は、温度センサ18が取得部310から問い合わせを受けた時点の前と後とのどちらか、あるいは、その時点を跨ぐ。この所定期間は、例えば10秒以上3分以下の範囲、望ましくは30秒以上1分以下の範囲に定められている。
制御装置30の処理部31は、取得部310に加えて、第1計算部311、第2計算部312、決定部313を備える。ここで、説明のために、取得部310が取得する現在温度の時系列に順序を表す正の整数値iを対応付け、複数の部屋23を互いに区別するための識別情報をjで表す。識別情報jは、例えば正の整数値で表される。
第1計算部311は、複数の部屋23それぞれについて、記憶部34に格納されているユーザ希望温度に基づいて目標温度を定める。制御装置30の動作によっては、目標温度がユーザ希望温度と異なる場合があるが、ここでは、目標温度がユーザ希望温度と同じである場合について説明する。第1計算部311は、取得部310が取得した現在温度とを入力として、所定時間ごとに取得した現在温度と目標温度との温度差を計算する。識別情報がjである部屋23について、取得部310が取得した現在温度をθj1(i)で表し、目標温度をθj2で表すと、第1計算部311は、温度差Δθj(i)を、Δθj(i)=θj1(i)−θj2という計算で求め、正負の符号付きで出力する。第1計算部311は、複数の部屋23それぞれについて温度差Δθj(i)を求める。第1計算部311が求めた温度差Δθj(i)は、部屋23の識別情報jに対応付けて記憶部34に一時的に格納される。
記憶部34は、部屋23ごとに少なくとも2つの温度差Δθj(i)、Δθj(i−1)を記憶する。記憶部34に格納されている2つの温度差Δθj(i)、Δθj(i−1)は、取得部310が現在温度θj1(i)を取得すると更新される。すなわち、記憶部34は、最新の温度差Δθj(i)と1つ前の温度差Δθj(i−1)とを記憶する。最新の温度差Δθj(i)は、取得部310が現在温度θj1(i)を取得した後、次の現在温度θj1(i+1)を取得するまでの期間に求められる温度差である。また、1つ前の温度差Δθj(i−1)は、取得部310が現在温度θj1(i)を取得する前で、1つ前の現在温度θj1(i−1)を取得した後の期間に求められた温度差である。
第2計算部312は、取得部310が現在温度θj1(i)を取得するたびに、温度変化Vj(i)を計算する。温度変化Vj(i)は、取得部310が取得した2回分の現在温度θj1(i)、θj1(i−1)の差分のことである。すなわち、第2計算部312は、単位時間における温度変化Vj(i)を、Vj(i)=θj1(i−1)−θj1(i)という計算で求める。求めた温度変化Vj(i)は、時間に対する温度変化を表している。第1計算部311が温度差Δθj(i)を求めているから、第2計算部312は、温度変化Vj(i)を求めるために、現在温度θj1(i)、θj1(i−1)の差分に代えて、2つの温度差Δθj(i)、Δθj(i−1)の差分を求めてもよい。取得部310が2回分の現在温度θj1(i)、θj1(i−1)を取得する期間に目標温度θj2が変化しなければ、2回分の現在温度θj1(i)、θj1(i−1)の差分と、2つの温度差Δθj(i)、Δθj(i−1)の差分とは同じ値である。
決定部313は、複数の部屋23それぞれについて、第1計算部311が求めたi番目の温度差Δθj(i)と、第2計算部312が求めた温度変化Vj(i)とを用いて、複数の部屋23それぞれに熱源機11から供給する熱量の配分量を定める。複数の部屋23それぞれに配分される熱量は、複数のダンパ14それぞれの開度と、2台の搬送ファン13それぞれの風量と、熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量とにより定まる。すなわち、決定部313は、複数の部屋23それぞれの温度差Δθj(i)及び温度変化Vj(i)に基づいて、複数のダンパ14それぞれの開度を定めた後に、2台の搬送ファン13それぞれの風量及び熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を定める。ここに、単一の部屋23に複数個の吹出口15がある場合、単一の部屋23に対応した複数個の吹出口15それぞれから部屋23に供給される熱量は、原則として等しい熱量に定められる。
決定部313の具体的な動作例を以下に説明する。以下では、1つの部屋23に1つの吹出口15がある場合についてダンパ14の開度を定める機能を説明した後、建物20に配置されたすべてのダンパ14の開度に基づいて、2台の搬送ファン13の風量及び熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を定める機能を説明する。ダンパ14の開度を定める機能については、部屋23の識別情報jは省略して説明する。したがって、以下の説明では、現在温度はθ1(i)、目標温度はθ2、温度差はΔθ(i)(=θ1(i)−θ2))で表す。目標温度θ2は変更されることがあるが、説明を簡単にするために、目標温度θ2が変更されない場合を想定して説明する。ここでは、1つの部屋23に1つの吹出口15が対応するから、部屋23は空調領域21と読み替えることが可能である。
決定部313は、温度差と開度とを対応付けた表1のような形式の制御テーブル314を備える。制御テーブル314では、温度差が複数の区間に区分され、複数の区間それぞれにダンパ14の開度が対応している。表1は、想定した標準の熱負荷の部屋23において、空調システム10が冷房運転である期間の制御テーブル314を示している。
冷房運転では、現在温度が目標温度を上回っていると、熱源機11からの冷気を部屋23に供給し、現在温度を目標温度付近に維持しなければならない。冷房運転では、空調領域21において、現在温度が目標温度を上回っていることは冷房が不足であることを表している。また、空調領域21において、現在温度が目標温度に一致していることは、冷房の充足を表しており、現在温度が目標温度を下回っていることは冷房が過剰であることを表している。
冷房が不足である場合、現在温度が目標温度より高いほど単位時間当たりに部屋23に供給する冷熱の熱量を増加させる必要がある。言い換えると、冷房が不足であれば、現在温度が目標温度を上回り、かつ目標温度に対する現在温度の差が大きいほど、冷房の不足の程度が大きいと言える。
第1計算部311は、現在温度から目標温度を減算した温度差を正負の符号付きで求める。したがって、第1計算部311が求めた温度差が正であれば、冷房が不足であることを表し、温度差が大きいほど冷房の不足の程度が大きいことを表す。表1の制御テーブル314では、温度差が正である区間を温度差が負である区間よりも多く設けている。
この制御テーブル314は、一例として、温度差について1[℃]の間隔で5つの区間を定めている。この制御テーブル314は冷房運転の期間に用いるから、この制御テーブル314では、温度差が正であって相対的に大きい区間に対してダンパ14の開度として相対的に大きい開度が対応している。すなわち、制御テーブル314では、冷房の不足の際に、不足の程度が大きいほど、部屋23に単位時間当たりに供給される冷熱の熱量が多くなるように、ダンパ14の開度が設定されている。
表1に示す制御テーブル314では、温度差が負であっても、現在温度が目標温度より1[℃]下がるまでは、空調領域21の温度が上昇しない程度の熱量を供給するように、ダンパ14のダンパ14の開度が設定されている(25[%])。また、表1に示す制御テーブル314では、温度差が2[℃]を超えた場合は、ダンパ14の開度が最大になるように定められている(100[%])。さらに、表1に示す制御テーブル314では、現在温度が目標温度に対して1[℃]を超えて下がった場合は、ダンパ14の開度が最小になるように定められている(5[%])。ダンパ14の最小の開度は、部屋23で最低限度の換気が確保できるように定められる。ただし、搬送ファン13を停止させても部屋23の換気が可能である場合、ダンパ14は閉じてもよい。この場合、ダンパ14の開度は0[%]である。
ところで、温度差は「不足度」と言い換えることができる。表1に付記した不足度は、温度差に対応させ「−1」から「3」までの5段階の整数値で表している。不足度が0である場合は空調の充足を表し、不足度が正である場合は空調の不足を表し、不足度が負である場合は空調の過剰を表す。空調の不足は、3段階の整数値で表しており、数値が大きいほど空調の不足の程度が大きいことを表している。
決定部313は、空調システム10が暖房運転である期間に表2のような形式の制御テーブル314を用いる。暖房運転では、現在温度が目標温度を下回っていると、熱源機11からの暖気を部屋23に供給し、現在温度を目標温度付近に維持しなければならない。暖房運転では、空調領域21において、現在温度が目標温度を下回っていることは暖房が不足であることを表している。表2では、温度差が負である区間を正である区間よりも多く設けている。また、不足度は、温度差が負であって絶対値が大きいほど大きい数値になるように対応付けている。
決定部313は、取得部310が現在温度θ1(i)を取得するたびに、第1計算部311から温度差Δθ(i)を受け取り、この温度差Δθ(i)が属する区間を制御テーブル314から求める。決定部313は、温度差Δθ(i)が属する区間に応じてダンパ14の開度を決める。表1及び表2の制御テーブル314に設定されているダンパ14の開度は、この空調システム10では、温度差に対する開度のデフォルト値である。すなわち、表1及び表2に示す制御テーブル314は、標準として想定した空調領域21に対応する制御テーブル314である。なお、表1及び表2における不足度は必須ではない。
ここに、温度差Δθ(i)は、現在温度から目標温度を減算した値であるから、表1と表2とを比較すると分かるように、空調システム10が冷房運転か暖房運転かに応じて、空調が不足している状態を表す温度差Δθ(i)の正負の符号が反転する。以下の説明では、空調システム10が冷房運転である場合を例として説明する。したがって、空調システム10が暖房運転である場合には、温度差Δθ(i)の正負の符号を逆にして読み替えることが必要である。
ところで、冷房が不足している場合、温度差が大きいほど部屋23に供給する単位時間当たりの熱量を多くするほうが、現在温度が目標温度に達するまでの時間が短縮される。また、複数の部屋23について、熱負荷が同じで、部屋23に供給する単位時間当たりの熱量が同じであれば、部屋23の温度の変化はほぼ等しいと考えられる。しかしながら、部屋23の容積、部屋23に流入する熱量あるいは部屋23から流出する熱量、部屋23で生じる熱量などの要因によって、建物20における複数の部屋23それぞれの熱負荷は異なる。そのため、複数の部屋23について、供給する単位時間当たりの熱量が同じであると、現在温度が変化する速さに、ばらつきが生じる。
いま、熱負荷が異なる複数の部屋23について、目標温度が同じに設定されており、空調を開始する時点の温度が等しいと仮定する。この場合、複数の部屋23に対して単位時間当たりに供給する熱量が等しいと、現在温度が目標温度に達するまでの時間にばらつきが生じる。すなわち、熱負荷が相対的に大きい部屋23では、現在温度が目標温度に達するまでの時間が長くなる可能性があり、熱負荷が相対的に小さい部屋23では、現在温度が目標温度を超えて冷房が過剰になる可能性がある。また、現在温度が目標温度に達した状態で、単位時間当たりに部屋23に供給する熱量が部屋23の熱負荷に見合っていないと、現在温度の変動が大きくなる可能性がある。
要するに、建物20の複数の部屋23それぞれで熱負荷が異なっている場合に、現在温度と目標温度との温度差のみに基づいて単位時間当たりに部屋23に供給する熱量を決定すると、複数の部屋23で現在温度の変化の特性にばらつきが生じる可能性がある。言い換えると、複数の部屋23それぞれの熱負荷が異なると、単位時間当たりに部屋23に供給する熱量が、適正範囲にならず、過少又は過多になることがある。
この空調システム10では、決定部313は、ダンパ14の開度を温度差のみに基づいて決めるのではなく、時間に対する温度変化も用いて決めている。すなわち、決定部313は制御テーブル314に設定された開度を補正する補正部315を備えている。補正部315は、空調の不足の程度が比較的大きく、かつ時間に対する温度変化が相対的に小さい場合、時間に対する温度変化が相対的に大きくなるようにダンパ14の開度を補正する。また、補正部315は、空調が充足又は過剰であるか、あるいは空調の不足の程度が比較的小さく、かつ時間に対する温度変化が相対的に大きい場合、温度変化が相対的に小さくなるようにダンパ14の開度を補正する。ここに、時間に対する温度変化の大きさは、部屋23における温度変化の速さを表している。
ダンパ14の開度を補正するか否かの条件は、温度差と時間に対する温度変化とを組み合わせて定められている。決定部313は、温度差を第1閾値と比較することによって、空調が不足であるか否かを評価する。また、決定部313は、時間に対する温度変化を第2閾値と比較することによって、部屋23に供給している単位時間当たりの熱量が過少か否かの評価を行う。時間に対する温度変化が第2閾値より小さい場合、部屋23に供給している単位時間当たりの熱量が、部屋23の熱負荷に対して過少であることを表す。
決定部313には、温度差と比較される第3閾値及び温度変化と比較される第4閾値も定められている。第3閾値は、温度差と比較されることにより空調がほぼ充足しているか否かを評価するために用いられる。第4閾値は、部屋23に供給している単位時間当たりの熱量が過多か否かの評価を行うために用いられる。時間に対する温度変化が第4閾値より大きい場合、部屋23に供給している単位時間当たりの熱量が、部屋23の熱負荷に対して過多であることを表す。
ところで、補正部315は、第1閾値及び第3閾値と比較される温度差として、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択された1つの温度差を用いる。2つの温度差Δθ(i)、Δθ(i−1)は記憶部34が記憶しているから、どちらを用いてもよいが、以下では、1つ前の温度差Δθ(i−1)を用いる場合を例として説明する。すなわち、決定部313は、最新の温度差Δθ(i)に基づいてダンパ14の開度を決定し、1つ前の温度差Δθ(i−1)を第1閾値及び第3閾値と比較する。以下では、第1閾値をTH1、第2閾値をTH2、第3閾値をTH3、第4閾値をTH4として説明する。
補正部315は、Δθ(i−1)>TH1かつV(i)<TH2という条件が満たされると、温度変化V(i)が増加するようにダンパ14の開度を補正する。ここでの条件は、温度差Δθ(i−1)が第1閾値TH1より大きいから空調の不足の程度が比較的大きいことを表し、かつ温度変化が第2閾値TH2より小さいから部屋23に単位時間当たりに供給する熱量が過少であることを意味している。すなわち、この条件が成立する部屋23は、熱負荷が標準として想定している部屋23の熱負荷よりも大きく、単位時間当たりに供給している熱量が過少であることを表している。そのため、補正部315は、この部屋23に対応するダンパ14の開度を大きくし、単位時間当たりに供給する熱量が増加するように制御テーブル314を補正する。制御装置30は、このような補正を行うことにより、この部屋23の熱負荷に見合う制御テーブル314を与えることを可能にしている。
また、補正部315は、Δθ(i−1)<TH3かつV(i)>TH4という条件が満たされると、温度変化V(i)が減少するようにダンパ14の開度を補正する。ここでの条件は、温度差Δθ(i−1)が第3閾値TH3より小さいから空調がほぼ充足しているか過剰であることを表し、かつ温度変化が第4閾値TH4より大きいから部屋23に単位時間当たりに供給する熱量が過多であることを意味している。空調がほぼ充足している状態は、空調が不足側であっても現在温度と目標温度との温度差が0[℃]に近い状態と、空調が充足している状態とを含む。すなわち、この条件が成立する部屋23は、熱負荷が標準として想定している部屋23の熱負荷よりも小さく、単位時間当たりに供給している熱量が過多であることを表している。そのため、補正部315は、この部屋23に対応するダンパ14の開度を小さくするように制御テーブル314を補正する。制御装置30は、このような補正を行うことにより、この部屋23の温度が目標温度θ2付近で大きく変動する可能性を低減させている。
第1閾値TH1は、空調の不足側において目標温度θ2に対する現在温度θ1(i−1)の差が比較的大きいことを評価するために用いられる。そのため、第1閾値TH1は、比較的大きい値であって、例えば1[℃]に定められる。第2閾値TH2は、例えば0[℃]以上1[℃]以下の範囲から選択され、望ましくは0.2[℃]以上0.5[℃]以下の範囲から選択され、一例として0.3[℃]に設定される。一方、第3閾値TH3は、空調が充足又は過剰あるいは空調の不足側において目標温度θ2に対する現在温度θ1(i−1)の差が比較的小さいことを評価するために用いられる。そのため、第3閾値TH3は、比較的小さい値であって、例えば0.5[℃]に定められる。第4閾値TH4は、例えば0.2[℃]以上1[℃]の範囲から選択され、望ましくは0.3[℃]以上0.7[℃]以下の範囲から選択され、一例として0.5[℃]に設定される。
以下に、制御テーブル314を補正する方法を具体的に説明する。補正部315は、ダンパ14の開度を相対的に大きくするように補正する場合、表3のように補正された制御テーブル314を用いる。
ここでは、空調システム10が冷房運転である場合を想定しているから、表3に示す制御テーブル314は表1に示した制御テーブル314を補正して作成されている。すなわち、温度差Δθ(i)が1[℃]以上2[℃]未満の場合、ダンパ14の開度は70[%]から100[%]に変更され、温度差Δθ(i)が0[℃]以上1[℃]未満の場合、ダンパ14の開度は40[%]から70[%]に変更される。また、表3の制御テーブル314において、温度差Δθ(i)が−1[℃]以上0[℃]未満の場合、表1の制御テーブル314に対して、ダンパ14の開度が25[%]から40[%]に変更されている。
ここに、ダンパ14の開度は100[%]が上限であるから、温度差Δθ(i)が2[℃]以上である場合、表3の制御テーブル314においても、ダンパ14の開度は100[%]が維持される。また、ここでは、空調システム10は常時換気を行うために、温度差Δθ(i)が−1[℃]未満の場合でも、ダンパ14を閉じることはなく、ダンパ14は開度が5[%]に維持される。
建物20における複数の部屋23のうちのいずれかの部屋23に対して、制御テーブル314が表3のように補正されると、決定部313は、その部屋23については、補正後の制御テーブル314を用いてダンパ14の開度を決定する。また、補正後の制御テーブル314を用いて制御を行っても、依然として、温度差Δθ(i−1)が第1閾値TH1より大きく、かつ温度変化V(i)が第2閾値TH2より小さい場合がある。この場合、補正部315は、その部屋23に対する制御テーブル314を、ダンパ14の開度がさらに大きくなるように補正する。補正後の制御テーブル314の例を、表4、表5に示す。
ここに、現在温度が目標温度であるときにダンパ14の開度が100[%]になることがないように、空調システム10は、部屋23の容積などに応じて設計されている必要がある。また、補正部315は、ダンパ14の開度の上限を制限していることが望ましい。例えば、補正部315は、表1に示す制御テーブル314に対してダンパ14の開度を大きくする場合、1段階では表3の制御テーブル314に補正し、2段階では表4の制御テーブル314に補正する。そして、補正部315は、ダンパ14の開度を大きくする場合に上限を制限していることが望ましい。ダンパ14の開度を補正する際の上限は、デフォルト値に対して1段階から3段階程度であることが望ましい。
一方、補正部315は、ダンパ14の開度を相対的に小さくするように補正する場合、表6のように補正された制御テーブル314を用いる。
表6に示す制御テーブル314は、表1に示した制御テーブル314に対して、ダンパ14の開度を相対的に小さくするように補正されている。すなわち、温度差Δθ(i)が1[℃]以上2[℃]未満の場合、ダンパ14の開度は70[%]から40[%]に変更され、温度差Δθ(i)が0[℃]以上1[℃]未満の場合、ダンパ14の開度は40[%]から25[%]に変更される。また、表4の制御テーブル314において、温度差Δθ(i)が−1[℃]以上0[℃]未満の場合、表1の制御テーブル314に対して、ダンパ14の開度は25[%]から5[%]に変更されている。補正部315がダンパ14の開度を小さくするように補正する場合も、ダンパ14の開度を大きくする場合と同様に、ダンパ14の開度は複数段階の補正が可能である。また、補正部315は、ダンパ14の開度の下限を制限していることが望ましい。
ここに、温度差Δθ(i)が−1[℃]未満の場合、空調システム10が常時換気を行うために、表3に示した制御テーブル314と同様に、ダンパ14の開度は5[%]が維持される。また、温度差Δθ(i)が2[℃]以上の場合、ダンパ14の開度は100[%]が維持される。
補正部315は、取得部310が取得した現在温度θ1(i)と目標温度θ2との温度差Δθ(i)ではなく、1回前の現在温度θ1(i−1)と目標温度θ2との温度差Δθ(i−1)を、第1閾値TH1及び第3閾値TH3と比較している。これに対して、補正部315は、最新の温度差Δθ(i)を第1閾値TH1及び第3閾値TH3と比較してもよい。
表3、表4、表5、表6は、空調システム10が冷房運転である場合の補正後の制御テーブル314を示している。これに対して、空調システム10が暖房運転である場合、補正部315は、表2に示した制御テーブル314を補正する。ダンパ14の開度は、表1に対する表3、表4、表5、表6と同様の考え方で補正される。また、上述した空調システム10は、温度差とダンパ14の開度とを対応付けた制御テーブル314を用いているが、温度差に代えて不足度を用いると、表3、表4、表5、表6は空調システム10が暖房運転である場合も用いることができる。上述した制御テーブル314における数値は動作の説明のために用いた値であり、設計により適宜に変更される。
上述した動作では、空調システム10が冷房運転か暖房運転かに応じて温度差の正負の符号が反転している。これに対して、第1計算部311が、冷房運転か暖房運転に応じて温度差を求める際の現在温度と目標温度との2つの項を入れ替えると、冷房運転か暖房運転かにかかわらず、空調の不足の程度に対する温度差の正負の符号を一致させることが可能である。すなわち、第1計算部311は、冷房運転の際には現在温度から目標温度を減算した値を温度差として採用し、暖房運転の際には目標温度から現在温度を減算した値を温度差として採用するように構成されていてもよい。この場合、決定部313は、冷房運転と暖房運転とで異なる制御テーブル314を用いる必要がなく、冷房運転と暖房運転との両方で表3、表4、表5、表6のような制御テーブル314を共用可能である。また、単位時間における温度変化は、冷房運転の際に、最新の現在温度から前回の現在温度を減算した値を用い、暖房運転の際に、前回の現在温度から最新の現在温度を減算した値を用いてもよい。この場合、補正部315が温度変化を第2閾値TH2及び第4閾値TH4と比較するときに、冷房運転と暖房運転とで大小の関係を入れ替える必要がなく、上述した大小関係を、冷房運転と暖房運転との両方で共用可能である。
ところで、複数の部屋23それぞれに単位時間当たりに供給される熱量は、熱源機11が単位時間当たりに生成した熱量と、2台の搬送ファン13それぞれの風量と、10個のダンパ14それぞれの開度とにより定まる。また、2台の搬送ファン13それぞれの風量と、10個のダンパ14それぞれの開度とが定まると、10個の空調領域21それぞれに単位時間当たりに供給される空気の体積が定まる。すなわち、熱源機11が単位時間当たりに生成した熱エネルギーは、熱の損失がない理想的な条件では、単位時間当たりに10個の空調領域21それぞれに供給される空気の体積の比率に応じて、10個の空調領域21に配分される。そして、熱源機11が単位時間当たりに生成する熱エネルギーの量は、熱の損失がない理想的な条件では、建物20におけるすべての部屋23それぞれに供給される熱エネルギーの合計に等しい。
上述した動作では、取得部310が複数の部屋23それぞれの現在温度を取得すると、決定部313が複数の部屋23それぞれに対応するダンパ14の開度を求める。決定部313は、複数の部屋23それぞれに配分する単位時間当たりの熱量を決めるために、ダンパ14の開度を求めた後には、2台の搬送ファン13それぞれの風量を求める。2台の搬送ファン13の風量は、それぞれ複数段階から選ぶことが可能であり、この空調システム10では、2台の搬送ファン13の風量がそれぞれ4段階から選ばれる。
この空調システム10では1台の搬送ファン13に5個のダンパ14を対応させているから、決定部313は、1台の搬送ファン13の風量を、搬送ファン13に対応した5個のダンパ14の開度に基づいて定める。搬送ファン13の風量は、ダンパ14の開度とあらかじめ対応付けてある。決定部313は、1台の搬送ファン13に対応した5個のダンパ14それぞれの開度を決めた後、5個のダンパ14それぞれの開度の合計あるいは平均に対応するように、搬送ファン13の風量を定める。
熱源機11の設定温度は、空調システム10が冷房運転であれば、複数の部屋23の目標温度のうちの最低温度よりも低い温度に設定され、空調システム10が暖房運転であれば、複数の部屋23の目標温度のうちの最高温度よりも高い温度に設定される。例えば、暖房運転であれば熱源機11の設定温度は、複数の部屋23の目標温度のうちの最高温度に、適宜の温度を加算した値に定められる。最高温度に加算する温度は、1[℃]以上7[℃]未満の範囲から選択され、一例として4[℃]に設定される。冷房運転であれば、同程度の温度が上述した最低温度から減算される。熱源機11の設定温度が決まると、熱源機11が単位時間当たりに供給する熱量は、風量によって調節される。決定部313は、熱源機11の風量を、2台の搬送ファン13の風量の合計に近くなるように決定する。
上述した制御装置30は、プログラムを実行するプロセッサを備えるデバイスを主なハードウェア構成として実現される。プロセッサを備えるデバイスは、半導体メモリを別に設けるMPU(Micro Processing Unit)のほか、半導体メモリと合わせて単一のパッケージに収納したマイクロコントローラ(Micro-Controller)でもよい。制御装置30は、メモリとして、少なくともRAM(Random Access Memory)を備え、他にROM(Read-Only Memory)とEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)との少なくとも一方を備えることが望ましい。
プログラムは、ROMに書き込まれた状態で提供されるほか、光学記録ディスクのような記録媒体あるいはフラッシュメモリを備える記録媒体であって、コンピュータ読取可能な記録媒体によって提供されてもよい。また、プログラムは、インターネット、移動体通信網などの電気通信回線を通して提供されてもよい。記録媒体あるいは電気通信回線により提供されるプログラムは、書換可能な不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)に格納されることが望ましい。
図1に示した空調システム10を想定した場合の制御装置30の動作例を図4、図5にまとめて説明する。この空調システム10は、1台の熱源機11と、2台の搬送ファン13と、10個のダンパ14と、9つの部屋23それぞれに配置された9個の温度センサ18を備える。制御装置30は、9個の温度センサ18それぞれから現在温度を一定時間ごとに定期的に取得する。また、以下の説明は空調システム10が冷房運転である場合を想定する。
制御装置30は、図4に示すように、温度差及び温度変化に応じてダンパ14の開度を制御するための制御テーブル314を決める(S10)。ここでの温度差は、一例として1つ前の温度差Δθ(i−1)である場合を説明したが、最新の温度差Δθ(i)でもよい。制御装置30は、10個のダンパ14それぞれに対して個別に制御テーブル314を決める。その後、制御装置30の決定部313は、10個のダンパ14それぞれについて、ステップS10で決めた制御テーブル314を用いて温度差に応じたダンパ14の開度を定める(S11)。ここでの温度差は、一例として最新の温度差Δθ(i)である場合を説明したが、1つ前の温度差Δθ(i−1)でもよい。
次に、ステップS12では、決定部313が、2台の搬送ファン13それぞれに対応する5個ずつのダンパ14それぞれの開度に基づいて、2台の搬送ファン13それぞれの風量を定める。決定部313は、2台の搬送ファン13それぞれの風量が定まると、熱源機11の風量を決定する(S13)。制御装置30の制御部32は、10個のダンパ14の開度と、2台の搬送ファン13の風量と、熱源機11の風量とが決まると、熱源機11と搬送ファン13とダンパ14とに指示を与える(S14)。
図5は、ステップS10の具体的な手順を表している。すなわち、1つのダンパ14に対応した空調領域21の現在温度θ1(i)を取得部310が取得すると(S101)、第1計算部311は、現在温度θ1(i)と空調領域21の目標温度θ2との温度差Δθ(i)を計算する(S102)。記憶部34は、第1計算部311が計算した最新の温度差Δθ(i)と、1回前の温度差Δθ(i−1)とを記憶する。ここでは、ダンパ14の開度を決めるために最新の温度差Δθ(i)を用い、制御テーブル314を決めるために1回前の温度差Δθ(i−1)を用いる例で説明する。以下の動作は、空調が不足している場合の例である。
制御装置30は、いずれかのダンパ14に対応した空調領域21について、取得部310が前回の現在温度θ1(i−1)を取得してから今回の現在温度θ1(i)を取得するまでの期間に、目標温度θ2が変更されたか否かを判断する(S103)。いずれかのダンパ14に対応した空調領域21について目標温度θ2が変更された場合(S103:Y)、このダンパ14の開度は、取得部310が前回の現在温度θ(i−1)を取得した時点で使用された制御テーブル314を用いて定められる(S107)。すなわち、現在温度θ1(i)を取得した時点において1回前の現在温度θ1(i−1)を取得した時点以降に目標温度θ2が変更されている空調領域21については、制御テーブル314を補正しない。
一方、ダンパ14に対応した空調領域21について目標温度θ2が変更されていなければ(S103:N)、第2計算部312は、このダンパ14に対応した空調領域21について温度変化V(i)を求める(S104)。記憶部34が記憶している最新の温度差Δθ(i)及び1回前の温度差Δθ(i−1)と、第2計算部312が求めた温度変化V(i)とは、決定部313に与えられる。決定部313は、第1閾値TH1及び第2閾値TH2を用いて、温度差Δθ(i−1)と温度変化V(i)とを評価する(S105)。すなわち、決定部313は、温度差Δθ(i−1)を第1閾値TH1と比較し、かつ温度変化V(i)を第2閾値TH2と比較することにより、制御テーブル314の補正が必要か否かを評価する。制御テーブル314の補正が必要であるときは(S105:補正必要)、表3、表4、表5、表6のような補正された制御テーブル314を採用してダンパ14の開度を定める(S106)。また、制御テーブル314の補正が必要でないときは(S105:補正不要)、決定部313は、取得部310が1回前の現在温度θ1(i−1)を取得した時点で使用された制御テーブル314を採用してダンパ14の開度を定める(S107)。
ステップS10の処理は、すべての空調領域21について現在温度θ1(i)を取得するまで繰り返される(S108)。上述した空調システム10では、建物20に10個の空調領域21が存在するから、10個の空調領域21のすべてについて、ステップS101からステップS105の処理を繰り返し、10個の制御テーブル314を決定する。
上述したように、図1に示す空調システム10では、9つの部屋23のうちの1つの部屋23が、2つの空調領域21を有しており、これらの2つの空調領域21が温度センサ18を共用している。したがって、10個の空調領域21のうちの2つの空調領域21については、同じ制御テーブル314を用いることが可能である。この場合、ステップS101からステップS105の処理の繰り返し回数は10回ではなく9回でもよい。
空調システム10が冷房運転である場合、制御装置30は、ステップS10において、表1、表3、表4、表5、表6に例示したような複数種類の制御テーブル314のいずれかを、10個のダンパ14それぞれに対して選択する。空調システム10が暖房運転である場合も同様であり、制御装置30は、表2に例示した制御テーブル314を含む複数種類の制御テーブル314のいずれかを、10個のダンパ14それぞれに対して選択する。
図5に示す動作例では、制御装置30は、10個の空調領域21のいずれかで目標温度が変更されると、目標温度が変更された空調領域21でのみ、取得部310が1回前の現在温度θ(i−1)を取得したときに採用した制御テーブル314を採用している。すなわち、個々の空調領域21で温度差Δθ(i)を計算した後に、その空調領域21で目標温度の変更が生じたか否かを判断している。この動作に対して、制御装置30は、6つの空調領域21のいずれかで目標温度が変更されると、6つの空調領域21のすべてで、取得部310が1回前の現在温度θ(i−1)を取得したときに採用した制御テーブル314を採用してもよい。
決定部313は、ステップS11では、ステップS10で決めた10個のダンパ14それぞれに対する制御テーブル314を用い、10個の空調領域21それぞれの温度差Δθ(i)もしくは温度差Δθ(i−1)に応じて、10個のダンパ14それぞれの開度を求める。そして、上述したように、決定部313は、10個のダンパ14それぞれの開度に基づいて搬送ファン13の風量を求め、ステップS13で搬送ファン13の風量から熱源機11の風量を求める。このように、制御装置30は、空調領域21の現在温度に基づいて最初に10個のダンパ14それぞれの開度を定めた後、2台の搬送ファン13それぞれの風量を決め、次に熱源機11の風量を決定する。
建物20は、戸建て住宅に限らず、集合住宅、店舗などの他の建物であってもよい。空調システム10として、ヒートポンプ式の熱源機11を備える構成を例示したが、空調システム10は、温水あるいは冷水を複数のファンコイルユニットに通す構成などであってもよい。また、暖房のみを行う場合、空調システム10は、スチームあるいは温水をラジエータに通す構成であってもよい。上述した空調システム10では、エアフィルタ12としてHEPAフィルタを採用しているが、他の構成のエアフィルタ12を用いることを妨げない。上述した搬送ファン13の台数、ダンパ14及び吹出口15の個数、温度センサ18の個数、部屋23の個数などは一例であり、適宜に変更される。また、搬送ファン13は空調システム10の必須構成ではない。すなわち、空調システム10は、熱源機11が生成した冷気又は暖気が、加速されることなくダンパ14を通って吹出口15から吹き出す構成であってもよい。
表1から表6に示しているダンパ14の開度は一例であって、空調システム10の仕様に応じて適宜に変更される。例えば、表1のうち、70[%]と記載している値は、50[%]以上90[%]以下の範囲で適宜の値に定められ、40[%]と記載している値は、30[%]以上60[%]以下の範囲で適宜の値に定められる。また、25[%]と記載している値は、15[%]以上30[%]以下の範囲の適宜の値に定められる。表1のうち、5[%]は常時換気の最小限度の換気量を考慮して、5[%]以上10[%]以下の範囲の適宜の値に定められる。空調システム10とは別に常時換気を行う場合には、ダンパ14の開度の最小値は0[%]であってもよい。ここに記載した数値の範囲も一例であり、設計などによって適宜に変更される。
また、表1から表6では、温度差の区間の最小単位は1[℃]に定めているが、温度差の区間の最小単位は0.1[℃]以上1.5[℃]以下の範囲で適宜に定めることが可能であり、0.1[℃]以上1.0[℃]以下の範囲であればなお望ましい。区間の個数は5つに限らず適宜に定めることが可能である。
上述した空調システム10において、取得部310は、温度センサ18との間で有線通信を行っているが、無線通信を行ってもよく、建物20において有線通信と無線通信とが混在していてもよい。取得部310と温度センサ18との間の通信規約にはとくに制限はない。また、上述した空調システム10では、取得部310が複数の温度センサ18それぞれに現在温度を問い合わせる構成であるが、複数の温度センサ18が適宜のタイミングで現在温度を取得部310に送信する構成であってもよい。
以上説明した空調システム用の制御装置30は、処理部31と制御部32とを備える。処理部31は、建物20の複数の空調領域21それぞれに対して空調システム10の熱源機11から単位時間当たりに供給する熱量を定める。制御部32は、熱源機11が生成した熱エネルギーを複数の空調領域21に配分する分配装置102を制御する。処理部31は、複数の空調領域21それぞれについて、所定時間ごとに取得した現在温度θ1(i)と目標温度θ2との温度差Δθ(i)に応じて単位時間当たりに供給する熱量を調節する機能を有する。また、処理部31は、複数の空調領域21のうち、現在温度θ1(i)の時間に対する温度変化V(i)を用いて単位時間当たりに供給している熱量を過少と評価した空調領域について、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を補正する機能を有する。ここに、処理部31は、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を、単位時間当たりに供給する熱量の過少を解消する方向に補正する。
この構成によれば、制御装置30は、単位時間当たりに供給している熱量を過少と評価した空調領域21について、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を補正するから、空調領域21の熱負荷に応じた空調が可能になる。すなわち、空調領域21の熱負荷に応じて、温度差Δθ(i)に対して単位時間当たりに空調領域21に供給する熱量が調節される。その結果、複数の空調領域21それぞれの熱負荷にばらつきがあっても、空調が開始されてから目標温度θ2に達するまでの時間のばらつきが抑制される。また、複数の空調領域21それぞれの熱負荷にばらつきがあっても、目標温度θ2が維持されている状態での温度の変動が抑制される。
処理部31は、所定時間ごとに温度差Δθ(i)を求める機能を有する。また、処理部31は、複数の空調領域21のうち、所定の条件を満たした空調領域21について、その空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量が増加するように、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を補正することが望ましい。この場合の所定の条件は、所定の状態で、処理部31が、温度変化V(i)が第2閾値TH2より小さく単位時間当たりに供給する熱量を過少と評価するという条件である。所定の状態は、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択した1つの温度差が空調の不足側において第1閾値TH1より大きい状態である。
この構成によれば、空調が比較的大きく不足している空調領域21で、単位時間当たりの熱量が過少であれば、処理部31は、その空調領域21に供給する熱量が増加するように補正する。そのため、比較的大きい空調領域21に対して熱負荷に応じた空調を行うことが可能になる。
処理部31は、複数の空調領域21のうち、所定の条件を満たした空調領域21について、その空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量が減少するように、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を補正する機能を有することが望ましい。この場合の所定条件は、所定の状態で、処理部31が、温度変化V(i)が第4閾値TH4より大きく単位時間当たりに供給する熱量を過多と評価することである。所定の状態は、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択した1つの温度差が空調の充足又は過剰を示すかあるいは空調の不足側において第3閾値TH3より小さい状態である。
この構成によれば、空調がほぼ充足しているか過剰である空調領域21で、単位時間当たりの熱量が過多であれば、処理部31は、その空調領域21に供給する熱量が減少するように補正する。そのため、比較的小さい空調領域21に対して熱負荷に応じた空調を行うことが可能になる。
処理部31は、取得部310と第1計算部311と第2計算部312と決定部313とを備えることが望ましい。取得部310は、複数の空調領域21それぞれの温度を所定時間ごとに現在温度θ1(i)として取得する。第1計算部311は、複数の空調領域21それぞれについて、前記所定時間ごとの現在温度θ1(i)と目標温度θ2との温度差Δθ(i)を計算する。第2計算部312は、複数の空調領域21それぞれについて、温度変化V(i)を計算する。決定部313は、複数の空調領域21それぞれについて、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択した1つの温度差と第1閾値TH1及び第3閾値TH3との比較を行う。また、決定部313は、温度変化V(i)と第2閾値TH2及び第4閾値TH4との比較を行う。決定部313は、比較の結果により、複数の空調領域21それぞれに単位時間当たりに供給する熱量を決定する。
この構成は、処理部31の構成の具体例である。決定部313は、第1計算部311が求めた温度差Δθ(i)又は温度差Δθ(i−1)と、第2計算部312が求めた温度変化V(i)に基づいて、複数の空調領域21それぞれに単位時間辺りに供給する熱量を求める。
熱源機11は、熱エネルギーを冷気又は暖気で供給するように構成されていることが望ましい。また、分配装置102は、給気ダクト16と複数のダンパ14とを備えることが望ましい。給気ダクト16は、熱源機11からの冷気又は暖気を複数の空調領域21それぞれに配分するように複数系統に分岐している。複数のダンパ14は、給気ダクト16の複数系統それぞれから複数の空調領域21に吹き出す冷気又は暖気の流量を調節する。決定部313は、制御テーブル314と補正部315とを備える。制御テーブル314は、温度差Δθ(i)が区分された複数の区間それぞれにダンパ14の開度が対応付けられており、複数の空調領域21それぞれに対して設けられている。補正部315は、複数の空調領域21のうち、所定の条件を満たす空調領域21に対する制御テーブル314において、複数の区間のうちの少なくとも一部の区間に対応付けられたダンパ14の開度を大きくするように補正する。この場合の所定の条件は、所定の状態で、温度変化V(i)が第2閾値TH2より小さく単位時間当たりに供給する熱量を過少と評価されることである。所定の状態は、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択した1つの温度差が、空調の不足側において第1閾値TH1より大きい状態である。
この構成によれば、空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量を増加させる必要がない場合には、1回前の現在温度θ1(i−1)を取得したときの制御テーブル314が用いられる。一方、熱負荷が大きい空調領域21に対して、補正部315が制御テーブル314に設定された開度を大きくするように制御テーブル314を補正するから、空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量を増加させることが可能である。
補正部315は、複数の空調領域21のうち、所定の条件を満たす空調領域21に対して、その空調領域21に対する制御テーブル314において、複数の区間のうちの少なくとも一部の区間に対応付けられたダンパ14の開度を小さくするように補正することが望ましい。この場合の所定の条件は、所定の状態で、温度変化V(i)が第4閾値TH4より大きく単位時間当たりに供給している熱量が過多と評価されることである。所定の状態は、最新の温度差Δθ(i)と1つ前の温度差Δθ(i−1)とから選択した1つの温度差が、空調の充足又は過剰を示すかあるいは空調の不足側であって第3閾値TH3より小さい状態である。
すなわち、熱負荷が小さい空調領域21に対して、補正部315が制御テーブル314に設定されたダンパ14の開度を小さくするように補正するから、空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量を低減させることが可能である。
分配装置102は、熱源機11からの冷気または暖気を、複数のダンパ14のそれぞれに送る搬送ファン13を更に備えていることが望ましい。この場合、決定部313は、複数のダンパ14それぞれの開度を決めた後に、複数のダンパ14それぞれの開度に基づいて搬送ファン13の風量を決めるように構成されていることが望ましい。さらに、決定部313は、搬送ファン13の風量に基づいて熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を決めるように構成されていることが望ましい。
すなわち、搬送ファン13が熱源機11からの冷気又は暖気を加速するから、熱源機11から離れた空調領域21でも熱量の調節が可能である。また、搬送ファン13とダンパ14とによって、空調領域21に単位時間当たりに供給する熱量が調節されるから、空調領域21ごとに単位時間当たりに供給する熱量の精度を高めることが可能である。さらに、決定部313は、ダンパ14の開度を定めてから、搬送ファン13の風量を決め、さらに搬送ファン13の風量に基づいて熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を定める。そのため、制御装置30は、空調領域21に供給する熱量に応じて搬送ファン13及び熱源機11を制御することになり、搬送ファン13及び熱源機11を運転するエネルギーの無駄が低減される。
空調システム10は、搬送ファン13が複数あってもよい。この場合、給気ダクト16は、複数の分岐ダクト161と複数の末端ダクト162とを備えることが望ましい。複数の分岐ダクト161は、複数の搬送ファン13それぞれからの冷気又は暖気を通す。複数の末端ダクト162は、複数の分岐ダクト161それぞれから複数系統に分岐し複数のダンパ14がそれぞれ配置されている。この場合、補正部315は、複数の末端ダクト162それぞれに配置されたダンパ14の開度をそれぞれ決めた後、ダンパ14の開度に基づいて複数の分岐ダクト161ごとに搬送ファン13の風量を決めるように構成されている。
すなわち、1台の搬送ファン13に複数個のダンパ14が対応し、かつ搬送ファン13の風量を、複数のダンパ14それぞれの開度に基づいて調節するから、空調領域21の数に対して、搬送ファン13の台数を低減させることができる。その結果、建物20に設置する搬送ファン13の台数の低減が可能になり、設備の導入費用の抑制が可能になる。
決定部313は、熱源機11を停止させる期間であっても搬送ファン13を停止させずに複数の空調領域21に建物20の外気を送るように構成されていることが望ましい。この場合、制御テーブル314は、ダンパ14の開度の最小値が0ではない所定値であることが望ましい。
要するに、熱源機11が停止しても搬送ファン13は停止せず、しかもダンパ14がつねに空気を通過させるから、空調領域21に外気を送って換気を常時行うことが可能である。
処理部31は、所定の条件を満たす場合、現在温度に適用する温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係として、1回前に取得した現在温度θ1(i−1)に適用した対応関係を用いることが望ましい。この場合の所定の条件は、1回前の現在温度θ1(i−1)を取得した時点以降に目標温度θ2が変更されていることである。
すなわち、目標温度θ2が変更された場合、現在温度θ(i)を取得した時点では、温度差Δθ(i)と単位時間当たりに供給する熱量との対応関係を変化させない。したがって、処理部31は、目標温度θ2が変化したときに、温度差Δθ(i)が変化することにより、ダンパ14の開度を変化させる。処理部31は、現状の制御テーブル314を採用してダンパ14の開度を変化させただけでは、部屋23の熱負荷に対応できない場合、次の現在温度θ1(i+1)の取得時点で、制御テーブル314の補正を行う。この動作により、空調システム10の動作が不安定になる可能性が回避される。
上述した空調システム10は、熱源機11と分配装置102と複数の温度センサ18と空調システム用の制御装置30とを備える。熱源機11は、建物20に供給する熱エネルギーを生成する。分配装置102は、熱源機11が生成した熱エネルギーを建物20における複数の空調領域21に配分する。温度センサ18は、複数の空調領域21それぞれの温度を計測する。制御装置30は、前記複数の温度センサが計測した温度を現在温度として取得するように構成されている。
すなわち、この空調システム10は、制御装置30が空調領域21の温度を計測する温度センサ18から現在温度θ1(i)を取得し、現在温度θ1(i)に基づいて空調領域21に熱エネルギーを配分する。
以上説明した実施形態は、本発明の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、上述した実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。