本実施形態は、空調システム用の制御装置、空調システムに関する。本実施形態は、詳しくは、建物の空調空間に設けた複数の吹出口から複数の空調領域に向かって冷気又は暖気をそれぞれ吹き出す空調システムが備える空調システム用の制御装置、及びこの制御装置を備える空調システムに関する。
以下に説明する実施形態においては、建物が戸建て住宅である場合を想定し、空調システムが全館空調システムである場合を想定している。この全館空調システムは、熱源機が生成した熱エネルギーを冷気あるいは暖気として建物のほぼ全体に供給する構成である。また、この全館空調システムは、空調と換気とを行うように構成されている。
図1に示す空調システム10は、建物20に設置されており、熱源機11と、エアフィルタ12と、搬送ファン13とを備える。また、図1に示す空調システム10は、1台の搬送ファン13に対して5個のダンパ14と、5個の吹出口15とを備えている。ダンパ14と吹出口15とは一対一に対応しているため、ダンパ14と吹出口15との個数は同数である。ここでのダンパ14は、VAVユニット(VAV:Variable Air Volume)で実現される。搬送ファン13の台数と、ダンパ14及び吹出口15の個数とは、熱源機11の容量、建物20の構成及び規模などに応じて適宜に定められる。ダンパ14の個数は、1台の搬送ファン13に対して5〜7個であることが好ましい。
また、空調システム10は、熱源機11からの冷気又は暖気を吹出口15に送る空気を送り出す給気ダクト16と、熱源機11に外気を導入する外気ダクト171とを備える。熱源機11には、建物20の内部の空気も導入される。図1では、建物20の内部の空気を熱源機11に導入する経路を符号172で表している。この経路172は、空気の流れを模式的に表しており、建物20の内部におけるドアの隙間、換気口のように空気が流通する箇所を含む。また、経路172は、還流用のダクトを備えていてもよい。
熱源機11が送り出す空気には、熱源機11の運転状態に応じて、熱源機11が冷却した冷気と、熱源機11が加熱した暖気とがある。さらに、図1に示す空調システム10は制御装置30及び5個の温度センサ18を備えている。ここでは、熱源機11とエアフィルタ12と搬送ファン13とは、建物20に設置される単一の筐体101に収納されており、ユニット化されている。したがって、熱源機11からエアフィルタ12を通り搬送ファン13に至る経路(図1に破線で示している)は、筐体101の内部に形成されている。
この空調システム10は、熱源機11が生成した熱エネルギーを5個の吹出口15にそれぞれ配分するために、給気ダクト16、搬送ファン13、及び5個のダンパ14を備えている。搬送ファン13が送り出した空気は、給気ダクト16を通して吹出口15に送られる。すなわち、搬送ファン13と5個のダンパ14と給気ダクト16とは、熱源機11が生成した熱エネルギーを5個の吹出口15に配分する分配装置102を構成している。熱源機11が生成した熱エネルギーを5個の吹出口15に配分する割合は、搬送ファン13の風量と、5個のダンパ14それぞれの開度とにより決まる。すなわち、制御装置30が分配装置102を制御することにより、熱源機11が生成した熱エネルギーを5個の吹出口15に配分する割合が決まる。
5個の吹出口15のそれぞれは、建物20内の4個の空調空間21のいずれかに設けられている。すなわち、4個の空調空間21それぞれには、吹出口15から空気が供給される。吹出口15は、空調空間21の天井面または壁面に設置されている。空調空間21は、リビング、キッチン、洋室などの空調の対象となる空間である。空調空間21は、部屋に限らず、廊下あるいは階段であってもよい。そして、吹出口15から複数の空調空間21それぞれに単位時間に供給される熱量は、吹出口15から空調空間21に供給される空気の温度及び流量により決まる。
空調空間21には、2個以上の吹出口15が設けられている空調空間21Aと、1個の吹出口15が設けられている空調空間21Bとがある。図1には、1つの空調空間21Aと、3つの空調空間21Bとを示している。図1の空調空間21Aには、2個の吹出口15が設けられている。
2個の吹出口15が設けられている空調空間21Aには、2個の空調領域211,212がある。空調空間21Aの吹出口15は、空調空間21Aの空調領域の数と同数になる。そして、空調空間21Aの2つの吹出口15は、2つの空調領域211,212にそれぞれ向かって冷気又は暖気を吹き出す(図4参照)。
1個の吹出口15が設けられている空調空間21Bでは、空調空間21Bが1つの空調領域である。すなわち、空調空間21Bの吹出口15は、空調空間21Bを空調領域とし、この空調領域に向かって冷気又は暖気を吹き出す。図1では、3つの空調空間21Bに対して、空調領域213,214,215をそれぞれ設定している。
さらに、空調領域211〜215のそれぞれには、温度センサ18が設置されている。温度センサ18それぞれは、輻射熱の影響を受けずに気温を計測するように、通気口を有したケースに収納されていることが望ましい。温度センサ18が配置される場所は、吹出口15が吹き出した空気が温度センサ18に直接当たることがないように定められる。
なお、1つの空調空間21が複数の空調領域に分けられている場合でも、1つの空調空間21に1つの温度センサ18が設置されてもよい。例えば、リビングと2階の廊下とが吹き抜けでつながっており、リビングに3つの吹出口15が設けられ、2階の廊下に2つの吹出口15が設けられているとする。この場合、リビングに1つの温度センサ18が設置され、2階の廊下にも1つの温度センサ18が設置されてもよい。
上述のように、5個の吹出口15と、5個の空調領域211〜215と、5個の温度センサ18とは、互いに一対一に対応している。制御装置30は、温度センサ18それぞれが計測した温度を、空調領域211〜215のそれぞれの現在温度として所定時間ごとに取得する。そして、制御装置30は、空調領域211〜215のそれぞれの現在温度に基づいて、熱源機11と分配装置102とを制御し、5個の吹出口15のそれぞれへの単位時間当たりの熱量の配分量を調節する。
熱源機11は、1台の室内機111と1台の室外機112とを備えたヒートポンプ式のエアコンであって、室内機111からの空気は給気ダクト16を通して空調空間21に供給される。また、室内機111が取り込む空気は、建物20の床下22から外気ダクト171を通して取り込まれる屋外の空気と、建物20の内部から経路172を通して回収される屋内の空気とである。外気ダクト171は、床下22の空気を取り込む換気ファン19に接続されている。
熱源機11は、夏季には室内機111から冷気を送り出す冷房運転を行い、冬季には室内機111から暖気を送り出す暖房運転を行う。熱源機11の冷房運転と暖房運転との切替は、春季あるいは秋季のような中間期に行う。冷房運転と暖房運転との違いは、熱源機11の設定温度を、上限値として用いるか、下限値として用いるかの相違である。熱源機11は、冷房運転の際は、室内機111から送り出す冷気の温度が上限値である熱源機11の設定温度を上回らないように動作し、暖房運転の際は、室内機111から送り出す暖気の温度が下限値である熱源機11の設定温度を下回らないように動作する。以下の説明において、暖房運転の際の熱量は暖気の熱量を意味し、冷房運転の際の熱量は冷気の熱量を意味する。
室内機111からの空気は、エアフィルタ12を通して給気ダクト16に送られる。エアフィルタ12は、HEPAフィルタ(HEPA:High Efficiency Particulate Air)であることが望ましい。エアフィルタ12がHEPAフィルタであれば、微小粒子状物質の除去が可能である。ここに、サイズが比較的大きい塵埃及び昆虫などは、換気ファン19と外気ダクト171と室内機111とを含む経路内の1箇所以上に配置されたフィルタによって、空気をエアフィルタ12に導入する前に除去される。そのため、エアフィルタ12の目詰まりが抑制される。
この空調システム10では、室内機111から送り出されエアフィルタ12を通過した後に搬送ファン13に送られた空気が、給気ダクト16に導入される。搬送ファン13は室内機111からの空気を加速させる。この空調システム10において、給気ダクト16は、5系統に分岐した分岐ダクト161を備えている。つまり、室内機111からの空気は5系統の分岐ダクト161に導入される。
5系統の分岐ダクト161のそれぞれにはダンパ14が配置される。ダンパ14は、開度が調節可能であり、開度の変化により分岐ダクト161を通る空気の流量を変化させる。分岐ダクト161の末端には吹出口15が接続されている。したがって、室内機111からの空気は、搬送ファン13を通してダンパ14に送られ、ダンパ14で流量が調節された後、吹出口15を通して空調領域211〜215のそれぞれに吹き出す。
上述した空調システム10は、建物20の換気を常時行う。そのため、原則として、搬送ファン13は常に運転を行う。また、空調システム10は、冷房運転あるいは暖房運転を必要としない場合、熱源機11を停止させる。すなわち、外気ダクト171から室内機111に導入される空気は、熱源機11が冷却あるいは加熱を行わない場合でも、換気のために搬送ファン13により空調空間21に送り込まれる。ただし、メンテナンスなどの必要に応じて搬送ファン13を停止させることは可能である。また、換気扇などによる換気を行う場合、搬送ファン13を停止させる場合もある。
以下では、制御装置30について詳述する。制御装置30は、図2に示すように、処理部31と制御部32とを備える。処理部31は、複数の吹出口15のそれぞれから、複数の空調空間21のそれぞれに供給する熱量の配分量を定める。制御部32は、熱源機11と搬送ファン13とダンパ14との制御を行う。また、制御装置30は、操作表示装置40との間で情報の入力及び出力を行うためのインターフェイス部33を備える。
操作表示装置40は、表示装置とタッチパッドとを含むタッチパネルを備え、ユーザインターフェイス(GUI:Graphic User Interface)として機能する。すなわち、制御装置30は、操作表示装置40が備える表示装置に情報を出力し、操作表示装置40が備えるタッチパッドから入力される情報を受け付ける。操作表示装置40には、必要に応じて様々な画面が表示される。操作表示装置40は、専用でなくても、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどであってもよい。また、操作表示装置40ではなく、表示装置と操作装置とを個別に備えていてもよい。
操作表示装置40に表示される画面には、空調領域211〜215のそれぞれにダンパ14を対応付ける画面、空調領域211〜215のそれぞれに温度センサ18を対応付けるための画面などがある。空調領域211〜215のそれぞれとダンパ14との対応関係が定まり、空調領域211〜215のそれぞれと温度センサ18との対応関係が定まると、空調領域211〜215のそれぞれとダンパ14と温度センサ18とが結び付く。また、吹出口15はダンパ14と一対一に対応しているから、空調領域211〜215のそれぞれとダンパ14との対応関係が定まると、空調領域211〜215のそれぞれと吹出口15とが結び付く。
ところで、操作表示装置40に表示される画面の1つは、図3のような空調空間21のそれぞれのユーザ希望温度を決める画面P1である。この画面P1は、複数の空調空間21それぞれのユーザ希望温度を受け付ける複数のボタン群B1、B2、B3を有する。画面P1には、空調空間21の名称(例えば、部屋名)を示すフィールドF1が設けられている。図3に示す例では、1つの画面P1で3つの空調空間21のユーザ希望温度を定めることが可能である。建物20が備える空調空間21の個数が、1つの画面P1に表示可能な空調空間21の個数を超えている場合は、画面P1に他の画面へ切り替えるボタンが表示される。このボタンが操作されると、他の画面に切り替えられ、他の空調空間21のユーザ希望温度が設定可能になる。なお、ユーザ希望温度は、制御装置30の処理部31における後述の目標温度の設定処理に用いられる。
図3に示す例では、ボタン群B1は、3個のボタンB10、B11、B12が上下に並ぶ。中央のボタンB10は、建物20の全体に一つ設定される基準温度に対応している。基準温度は、ユーザによる設定が可能である。また、空調システム10には、工場出荷時に基準温度の初期値が定められていてもよい。このボタンB10を操作すると、ユーザ希望温度は基準温度に定められる。また、上のボタンB11を操作するとユーザ希望温度が基準温度より高く設定され、下のボタンB12を操作するとユーザ希望温度が基準温度より低く設定される。ボタンB11又はボタンB12が操作されると、制御装置30は、1回の操作毎に所定温度刻みでユーザ希望温度を変化させる。選択されている温度は、ボタン群B1に対応付けて数値で表示される。
一例として、基準温度が26.0[℃]であり、所定温度が0.5[℃]であって、ユーザ希望温度が基準温度である場合を想定する。この場合、ボタンB11を1回操作するとユーザ希望温度が26.5[℃]に設定され、ボタンB12を1回操作するとユーザ希望温度が25.5[℃]に設定される。また、ユーザ希望温度が基準温度であるときに、ボタンB11を2回操作するとユーザ希望温度は27.0℃に設定される。設定されたユーザ希望温度にかかわらず、ボタンB10を操作すると、ユーザ希望温度は基準温度である26.0[℃]に復帰する。ここに示した数値は、空調システム10が冷房運転の期間である場合の一例であり、これらの数値に限定する趣旨ではない。
ここでは、ボタン群B1の構成及び動作を説明した。ボタン群B2、B3も同様の構成及び動作である。また、1画面で3つの空調空間21のユーザ希望温度を設定可能にする構成を例示したが、1画面でユーザ希望温度を設定する空調空間21の個数は設計により変更可能である。さらに、ボタン群B1、B2、B3の構成及び動作は、上述した構成に限らない。例えば、複数のボタン群B1、B2、B3のそれぞれが5個ずつのボタンを備える構成でもよい。この構成では、複数のボタン群B1、B2、B3のそれぞれで、選択されているユーザ希望温度に相当するボタンを残りのボタンとは異なる表示状態とすればよい。異なる表示状態は、例えば、ボタンのサイズ、ボタンの色、ボタンに付加するマークなどの少なくとも1つの要素によって実現される。
複数の空調空間21それぞれについて、画面P1を使ってユーザ希望温度が定められると、制御装置30は、ユーザ希望温度を記憶部34に格納する。記憶部34には、複数の空調空間21それぞれについてユーザ希望温度が格納される。
通常、制御装置30の処理部31は、記憶部34に格納したユーザ希望温度を目標温度とする。すなわち、記憶部34に格納されている複数の空調空間21それぞれのユーザ希望温度が、複数の空調空間21それぞれに対応する目標温度になる。なお、処理部31は、省エネルギーモードなどで動作している場合、ユーザ希望温度を省エネルギー側に補正し、この補正した温度を目標温度として用いてもよい。
2個の吹出口15が設けられている空調空間21Aでは、空調空間21Aが2個の空調領域211,212で構成されている。この場合、空調空間21Aに設定された目標温度は、空調領域211,212のそれぞれに対応付けられる。すなわち、空調空間21Aの2個の空調領域211,212のそれぞれには、共通の目標温度が設定される。
1個の吹出口15が設けられている空調空間21Bでは、空調空間21Bが1つの空調領域であるので、目標温度と空調領域とが一対一に対応付けられる。すなわち、空調領域213,214,215の各目標温度は、対応する空調空間21Bのそれぞれの目標温度となる。
図2に示す制御装置30の処理部31は、複数の温度センサ18それぞれと通信する取得部310を備える。この空調システム10では、取得部310は、温度センサ18との間で有線通信を行い、複数の温度センサ18に対して定期的に現在温度を問い合わせるように構成されている。すなわち、取得部310は、複数の温度センサ18に対してポーリングを行うことにより、個々の温度センサ18から現在温度を取得する。取得部310が複数の温度センサ18それぞれに現在温度を問い合わせる周期は、1分以上15分以下の範囲、望ましくは5分以上10分以下の範囲に定められている。この周期は、温度センサ18の計測精度、温度が変化する速さなどにより決まる。
取得部310が温度センサ18から取得した現在温度は、取得部310が温度センサ18に問い合わせたときに温度センサ18が計測した温度である。ただし、温度センサ18が取得部310からの問い合わせを受けた時点付近に定めた所定期間での温度の平均値であってもよい。この所定期間は、温度センサ18が取得部310から問い合わせを受けた時点の前と後とのどちらか、あるいは、その時点を跨ぐ。この所定期間は、例えば10秒以上3分以下の範囲、望ましくは30秒以上1分以下の範囲に定められている。
制御装置30の処理部31は、取得部310に加えて、温度計算部311、決定部312を備える。ここで、説明のために、空調領域211〜215の末尾の数字を、空調領域の識別情報jとする。すなわち、空調領域211の識別情報jは1であり、空調領域212の識別情報jは2であり、空調領域213の識別情報jは3であり、空調領域214の識別情報jは4であり、空調領域215の識別情報jは5である。
温度計算部311は、記憶部34に格納されている複数の空調空間21それぞれのユーザ希望温度を、空調領域211〜215の各目標温度とする。そして、温度計算部311は、空調領域211〜215のそれぞれについて、目標温度と、取得部310が取得した現在温度とを入力として、目標温度と現在温度との温度差を計算する。この温度差は、空調領域211〜215のそれぞれの温度センサ18の設置箇所を測定点とすると、空調領域211〜215のそれぞれの測定点における温度差である。特に、空調空間21Aには2つの温度センサ18が設置されており、これらの2つの温度センサ18の設置箇所をそれぞれ測定点51,52とする。
まず、熱源機11が冷気を生成し、吹出口15から冷気が吹き出される冷房運転時において、温度計算部311は以下のように温度差を計算する。識別情報がjである空調領域について、取得部310が取得した現在温度をθj1で表し、目標温度をθj2で表すと、温度計算部311は、この空調領域の温度差Δθjを、Δθj=θj1−θj2という計算で求め、正負の符号付きで出力する。
また、熱源機11が暖気を生成し、吹出口15から暖気が吹き出される暖房運転時において、温度計算部311は以下のように温度差を計算する。識別情報がjである空調領域について、取得部310が取得した現在温度をθj1で表し、目標温度をθj2で表すと、温度計算部311は、この空調領域の測定点の温度差Δθjを、Δθj=θj2−θj1という計算で求め、正負の符号付きで出力する。
温度計算部311は、空調領域211〜215のそれぞれの測定点について温度差Δθjを求める。温度計算部311が求めた温度差Δθjは、空調領域211〜215の各識別情報jに対応付けて記憶部34に一時的に格納される。記憶部34に格納されている温度差Δθjは、取得部310が現在温度θj1を取得すると更新される。
決定部312は、空調領域211〜215のそれぞれの測定点の温度差Δθjを用いて、空調領域211〜215の各吹出口15に熱源機11から供給する熱量の配分量を定める。空調領域211〜215の各吹出口15のそれぞれに配分される熱量は、ダンパ14それぞれの開度と、搬送ファン13の風量と、熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量とにより定まる。決定部312は、空調領域211〜215の測定点の各温度差Δθjに基づいて、ダンパ14それぞれの開度を定めた後に、搬送ファン13の風量及び熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を定める。
そして、空調システム10における空調制御には、基本空調制御と、優先空調制御とがある。
基本空調制御は、以下のように行われる。以下では、ダンパ14の開度を定める機能を説明した後、建物20に配置されたすべてのダンパ14の開度に基づいて、搬送ファン13の風量及び熱源機11が単位時間当たりに生成する熱量を定める機能を説明する。ダンパ14の開度を定める機能については、空調領域の識別情報jは省略して説明する。
空調システム10が冷房運転である場合、現在温度が目標温度を上回っていると、熱源機11からの冷気を空調空間21に供給し、現在温度を目標温度付近に維持しなければならない。冷房運転では、空調空間21において、現在温度が目標温度を上回っていることは冷房が不足であることを表している。また、空調空間21において、現在温度が目標温度に近付いていることは、冷房の充足を表しており、現在温度が目標温度を下回っていることは冷房が過剰であることを表している。
冷房が不足である場合、現在温度が目標温度より高いほど単位時間当たりに空調空間21に供給する冷気の熱量を増加させる必要がある。言い換えると、冷房が不足であれば、現在温度が目標温度を上回り、かつ目標温度に対する現在温度の差が大きいほど、冷房の不足の程度が大きいと言える。
温度計算部311は、空調システム10が冷房運転である場合、現在温度から目標温度を減算した温度差を正負の符号付きで求める。したがって、温度計算部311が求めた温度差が正であれば、冷房が不足であることを表し、温度差Δθが大きいほど冷房の不足の程度が大きいことを表す。
また、空調システム10が暖房運転である場合、現在温度が目標温度を下回っていると、熱源機11からの暖気を空調空間21に供給し、現在温度を目標温度付近に維持しなければならない。暖房運転では、空調空間21において、現在温度が目標温度を下回っていることは暖房が不足であることを表している。また、空調空間21において、現在温度が目標温度に近付いていることは、暖房の充足を表しており、現在温度が目標温度を上回っていることは暖房が過剰であることを表している。
暖房が不足である場合、現在温度が目標温度より低いほど単位時間当たりに空調空間21に供給する暖気の熱量を増加させる必要がある。言い換えると、暖房が不足であれば、現在温度が目標温度を下回り、かつ目標温度に対する現在温度の差が大きいほど、暖房の不足の程度が大きいと言える。
温度計算部311は、空調システム10が暖房運転である場合、目標温度から現在温度を減算した温度差を正負の符号付きで求める。したがって、温度計算部311が求めた温度差が正であれば、暖房が不足であることを表し、温度差Δθが大きいほど暖房の不足の程度が大きいことを表す。
そこで、処理部31は、温度差Δθと開度とを対応付けた表1のような形式の第1制御テーブル313を備える。第1制御テーブル313では、温度差が複数の区間に区分され、複数の区間それぞれにダンパ14の開度が対応している。表1の第1制御テーブル313では、温度差Δθが正である区間を温度差Δθが負である区間よりも多く設けている。
この第1制御テーブル313は、一例として、温度差Δθについて1[℃]の間隔で5つの区間を定めている。この第1制御テーブル313では、温度差Δθが正であって相対的に大きい区間に対してダンパ14の開度として相対的に大きい開度が対応している。すなわち、第1制御テーブル313では、空調の不足(冷房または暖房の不足)の際に、不足の程度が大きいほど、空調空間21に単位時間当たりに供給される冷熱の熱量が多くなるように、ダンパ14の開度が設定されている。
表1に示す第1制御テーブル313では、空調が過剰であっても、現在温度が目標温度より1[℃]離れるまでは、空調空間21の温度が不快側に変動しない程度の熱量を供給するように、ダンパ14の開度が設定されている(25[%])。また、表1に示す第1制御テーブル313では、温度差が+2[℃]を上回った場合は、ダンパ14の開度が最大になるように定められている(100[%])。さらに、表1に示す第1制御テーブル313では、空調が過剰である場合に、現在温度が目標温度より1[℃]を超えて離れると、ダンパ14の開度が最小になるように定められている(5[%])。ダンパ14の最小の開度は、空調空間21で最低限度の換気が確保できるように定められる。ただし、搬送ファン13を停止させても空調空間21の換気が可能である場合、ダンパ14は閉じてもよい。この場合、ダンパ14の開度は0[%]である。
上述した動作では、取得部310が複数の空調空間21それぞれの現在温度を取得すると、決定部312が複数の空調空間21それぞれの空調領域に対応するダンパ14の開度を求める。決定部312は、複数の空調空間21それぞれの空調領域それぞれに配分する単位時間当たりの熱量を決めるために、ダンパ14の開度を求めた後には、搬送ファン13の風量を求める。搬送ファン13の風量は、複数段階から選ぶことが可能であり、この空調システム10では、搬送ファン13の風量が4段階から選ばれる。
この空調システム10では搬送ファン13に5個のダンパ14を対応させているから、決定部312は、搬送ファン13の風量を、5個のダンパ14の開度に基づいて定める。搬送ファン13の風量は、ダンパ14の開度とあらかじめ対応付けてある。決定部312は、搬送ファン13に対応した5個のダンパ14それぞれの開度を決めた後、5個のダンパ14それぞれの開度の合計あるいは平均に対応するように、搬送ファン13の風量を定める。
熱源機11の設定温度は、空調システム10が冷房運転であれば、複数の空調空間21の目標温度のうちの最低温度よりも低い温度に設定される。また、熱源機11の設定温度は、空調システム10が暖房運転であれば、複数の空調空間21の目標温度のうちの最高温度よりも高い温度に設定される。この温度は、複数の空調空間21の目標温度のうちの最高温度に、適宜の温度を加算した値に定められる。最高温度に加算する温度は、1[℃]以上7[℃]未満の範囲から選択され、一例として4[℃]に設定される。熱源機11の設定温度が決まると、熱源機11が単位時間当たりに供給する熱量は、風量によって調節される。したがって、決定部312は、熱源機11の風量を、搬送ファン13の風量に応じて決定する。また、決定部312は、熱源機11の風量を、搬送ファン13の風量に近くなるように決定する。
上述の基本空調制御では、決定部312は、複数の吹出口15からそれぞれ単位時間当たりに供給される熱量を、複数の吹出口15のそれぞれに対応する空調空間21の測定点の温度差に基づいて決定している。
上述の第1制御テーブル313に基づく空調制御が基本空調制御である。しかし、制御装置30は、2個の空調領域211,212で構成されている空調空間21Aの空調制御については、第2制御テーブル314に基づく優先空調制御をさらに行う。
図4は、空調空間21Aの概略を示す。空調空間21Aは、建物20のリビングであり、吹き抜け構造になっている。すなわち、空調空間21Aの天井は、2階の空調空間21Bの天井とほぼ同じ高さにあり、標準の部屋よりも上下方向に広い空間になっている。空調空間21Aには、2つの吹出口15が設けられており、2つの吹出口15をそれぞれ、第1吹出口151、第2吹出口152とする。第1吹出口151は、空調空間21Aの下方の空調領域211に向かって冷気又は暖気を吹き出す。第2吹出口152は、空調空間21Aの上方の空調領域212に向かって冷気又は暖気を吹き出す。
空調領域211は、空調空間21Aの床側であり、空調空間21A内の人が存在する領域になる。空調領域212は、空調空間21Aの天井側であり、空調空間21A内の人より上方の領域になる。したがって、空調空間21A内の人の快適性を考慮すると、空調領域211の空調環境が空調領域212の空調環境より優先されることが好ましい。
そこで、空調領域211の温度センサ18の設置箇所である測定点51を、優先測定点51とする。また、空調領域212の温度センサ18の設置箇所である測定点52を、非優先測定点52とする。なお、優先測定点51(空調領域211の温度センサ18の設置箇所)は、空調空間21Aの床面から1.0〜1.2m程度の高さに設定されることが好ましい。また、非優先測定点52(空調領域212の温度センサ18の設置箇所)は、建物20の2階の部屋の床面から1.0〜1.2m程度の高さに設定されることが好ましい。
そして、決定部312は、空調空間21A内の第1吹出口151及び第2吹出口152からそれぞれ単位時間当たりに供給する熱量を決定する際に、優先測定点51の現在温度を目標温度に近付けることを、非優先測定点52の現在温度を目標温度に近付けることより優先させる機能を有する。
そこで、処理部31は、表2のような形式の第2制御テーブル314を備える。第2制御テーブル314は、優先測定点51における温度差Δθ1と、非優先測定点52における温度差Δθ2と、第1吹出口151及び第2吹出口152を用いた各空調制御との関係を定義している。
なお、第2制御テーブル314において、「151:通常」は、決定部312が、優先測定点51の温度差Δθ1に応じて、第1吹出口151から単位時間当たりに供給する熱量を決定することを示す。また、第2制御テーブル314において、「152:通常」は、決定部312が、非優先測定点52の温度差Δθ2に応じて、第2吹出口152から単位時間当たりに供給する熱量を決定することを示す。すなわち、「通常」の空調制御は、第1制御テーブルを参照した基本空調制御と同じになる。
また、第2制御テーブル314において、「151:第1補助」は、決定部312が、非優先測定点52の温度差Δθ2に応じて、第1吹出口151から単位時間当たりに供給する熱量を決定することを示す。また、第2制御テーブル314において、「152:第2補助」は、決定部312が、優先測定点51の温度差Δθ1に応じて、第2吹出口152から単位時間当たりに供給する熱量を決定することを示す。
すなわち、「第1補助」の空調制御では、非優先測定点52が第1測定点となり、優先測定点51が第2測定点となる。そして、「第1補助」の空調制御では、決定部312が、第1制御テーブル313を参照して、空調領域211に対応するダンパ14の開度を、空調領域212の温度差Δθ2に応じて求める。また、「第2補助」の空調制御では、優先測定点51が第1測定点となり、非優先測定点52が第2測定点となる。そして、「第2補助」の空調制御では、決定部312が、第1制御テーブル313を参照して、空調領域212に対応するダンパ14の開度を、空調領域211の温度差Δθ1に応じて求める。
また、第2制御テーブル314において、T1は温度差の閾値であり、例えば+1℃〜+3℃の範囲内で設定されることが好ましい。
そして、決定部312は、第2制御テーブル314を参照して、第1吹出口151及び第2吹出口152を用いた各空調制御を決定する。なお、表2において、温度差Δθ1,Δθ2は「不足度」とそれぞれ言い換えることができる。
表2において、Δθ1が閾値T1[℃]より大きい場合、空調領域211の空調が不足していることを表す。Δθ2が閾値T1[℃]より大きい場合、空調領域212の空調が不足していることを表す。また、Δθ1が0[℃]より大きく、閾値T1[℃]以下である場合、空調領域211の空調が充足していることを表す。Δθ2が0[℃]より大きく、閾値T1[℃]以下である場合、空調領域212の空調が充足していることを表す。また、Δθ1が0[℃]以下である場合、空調領域211の空調が過剰であることを表す。Δθ2が0[℃]以下である場合、空調領域212の空調が過剰であることを表す。
まず、優先測定点51及び非優先測定点52の各温度差Δθ1,Δθ2が閾値T1[℃]を上回る場合、決定部312は、「151:通常」及び「152:通常」とする。すなわち、空調領域211、212の両方において空調が不足している場合、決定部312は、空調領域211の空調の不足状態を解消する方向に空調領域211を空調制御し、空調領域212の空調の不足状態を解消する方向に空調領域212を空調制御する。言い換えれば、空調領域211,212のそれぞれは、互いに独立して空調制御される。
また、優先測定点51の温度差Δθ1が閾値T1[℃]を上回り、非優先測定点52の温度差Δθ2が閾値T1[℃]以下である場合、決定部312は、「151:通常」及び「152:第2補助」とする。すなわち、空調領域211において空調が不足し、空調領域212において空調が充足または過剰である場合、決定部312は、空調領域211の空調の不足状態を解消する方向に空調領域211、212をそれぞれ空調制御する。言い換えれば、空調領域211において空調が不足した場合、空調領域212において空調が充足または過剰であっても、空調領域211の空調の不足状態を解消する方向に空調領域212を空調制御する。したがって、空調領域211の空調の不足状態が解消されて、結果的に空調領域212の空調環境よりも、空調領域211内の人の快適性が優先されることになる。
また、優先測定点51の温度差Δθ1が0[℃]を上回りかつ閾値T1[℃]以下であり、非優先測定点52の温度差Δθ2が閾値T1[℃]を上回る場合、決定部312は、「151:第1補助」及び「152:通常」とする。すなわち、空調領域211において空調が充足し、空調領域212において空調が不足している場合、決定部312は、空調領域212の空調の不足状態を解消する方向に空調領域211、212をそれぞれ空調制御する。言い換えれば、空調領域212において空調が不足した場合、空調領域211において空調が充足していても、空調領域212の空調の不足状態を解消する方向に空調領域211を空調制御する。したがって、空調領域211の快適性が維持される範囲で、空調領域212の空調環境が改善される。
また、優先測定点51の温度差Δθ1が0[℃]以下であり、非優先測定点52の温度差Δθ2が閾値T1[℃]を上回る場合、決定部312は、「151:通常」及び「152:通常」とする。すなわち、空調領域211において空調が過剰であり、空調領域212において空調が不足している場合、決定部312は、空調領域211の空調の過剰状態を解消する方向に空調領域211を空調制御し、空調領域212の空調の不足状態を解消する方向に空調領域212を空調制御する。言い換えれば、空調領域211、212のそれぞれは、互いに独立して空調制御されており、空調領域212において空調が不足した場合でも、空調領域211において空調が過剰であれば、空調領域212の空調の不足状態を解消する方向に空調領域211を空調制御しない。したがって、空調領域211の過剰状態が解消されて、結果的に空調領域212の空調環境よりも、空調領域211内の人の快適性が優先されることになる。
また、優先測定点51及び非優先測定点52の各温度差Δθ1,Δθ2が閾値T1[℃]以下である場合、決定部312は、「151:通常」及び「152:通常」とする。すなわち、空調領域211、212の両方において空調が充足または過剰である場合、決定部312は、空調領域211の空調の充足状態を維持する方向、または空調の過剰状態を解消する方向に空調領域211を空調制御する。また、決定部312は、空調領域212の空調の充足状態を維持する方向、または空調の過剰状態を解消する方向に空調領域212を空調制御する。言い換えれば、空調領域211、212のそれぞれは、互いに独立して空調制御される。
上述のように、制御装置30は、通常は、空調領域211、212のそれぞれの現在温度を目標温度に近付けるように空調制御して、空調空間21A内の温度が不均一になる温度むらの発生を抑制している。しかし、人の居住領域である空調領域211の空調が不足して、空調領域211の快適性が低下している場合、制御装置30は、空調領域211の快適性が向上するように、空調領域212を空調制御する。すなわち、制御装置30は、優先度が低い空調領域212の空調環境よりも、優先度が高い空調領域211の快適性を向上させる。
また、制御装置30は、優先度が高い空調領域211の快適性を維持できるのであれば、空調領域211の空調制御を空調領域212のために用いて、優先度が低い空調領域212の空調環境を改善させる。しかし、制御装置30は、空調領域211の快適性が維持されないのであれば、空調領域212の空調環境を改善するために空調領域211を空調制御することはない。すなわち、制御装置30は、優先度が高い空調領域211の快適性が維持される範囲で空調領域211を空調制御して、優先度が低い空調領域212の空調環境を改善する。
したがって、制御装置30は、1つの空調空間21A内に2つの空調領域211,212を設けた場合に、2つの空調領域211,212のそれぞれの空調の優先度に応じて空調制御を行うことができる。この結果、制御装置30は、1つの空調空間21Aに複数の吹出口151,152を備える場合に、空調空間21A内の空調効率のさらなる向上を図ることができる。
また、1つの空調空間21A内に設ける空調領域の数は3つ以上であってもよい。この場合、制御装置30は、3つ以上の各空調領域の空調の優先度に応じて空調制御を行い、優先度が低い空調領域の空調環境よりも、優先度が高い空調領域の快適性を向上させる。また、制御装置30は、優先度が高い空調領域の快適性が維持される範囲で、優先度が高い空調領域の空調制御を優先度が低い空調領域のために用いて、優先度が低い空調領域の空調環境を改善させる。
また、制御装置30は、1つの空調空間21A内に設ける複数の空調領域のそれぞれを水平方向に並ぶように設けてもよい。この場合、空調領域に存在する人の数が多いほど、空調領域の優先度が高くなる。制御装置30は、複数の空調領域のそれぞれに存在する人の数を人感センサなどによって検知して、複数の空調領域のそれぞれの優先度を設定することが好ましい。
また、処理部31は、表3のような形式の第2制御テーブル314を備えてもよい。この場合、優先測定点51及び非優先測定点52は、優先度が互いに等しいので、単に測定点51,52と呼ぶ。表3では、測定点51の温度差Δθ1が閾値T1[℃]を上回り、測定点52の温度差Δθ2が0[℃]以下である場合に、決定部312が「151:通常」及び「152:通常」とする点が、表2とは異なる。すなわち、空調領域211,212のそれぞれに対して、同様の空調制御がなされる。
したがって、制御装置30は、1つの空調空間21A内に2つの空調領域211,212を設けた場合に、2つの空調領域211,212のそれぞれの空調の優先度を等しくして空調制御を行うことができる。この場合、2つの空調領域211,212のそれぞれのうち、空調能力に余裕がある一方が、空調能力に余裕がない他方を補助している。この結果、制御装置30は、1つの空調空間21Aに複数の吹出口151,152を備える場合に、空調空間21A内の空調効率のさらなる向上を図ることができる。
また、空調システム10は、1つの空調空間21A内に互いに優先度が等しい3つ以上の空調領域を設けてもよい。また、制御装置30は、1つの空調空間21A内に設ける複数の空調領域のそれぞれを水平方向に並ぶように設けてもよい。
上述した制御装置30は、プログラムを実行するプロセッサを備えるデバイスを主なハードウェア構成として実現される。プロセッサを備えるデバイスは、半導体メモリを別に設けるMPU(Micro Processing Unit)のほか、半導体メモリと合わせて単一のパッケージに収納したマイクロコントローラ(Micro-Controller)でもよい。制御装置30は、メモリとして、少なくともRAM(Random Access Memory)を備え、他にROM(Read-Only Memory)とEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)との少なくとも一方を備えることが望ましい。
プログラムは、ROMに書き込まれた状態で提供されるほか、光学記録ディスクのような記録媒体あるいはフラッシュメモリを備える記録媒体であって、コンピュータ読取可能な記録媒体によって提供されてもよい。また、プログラムは、インターネット、移動体通信網などの電気通信回線を通して提供されてもよい。記録媒体あるいは電気通信回線により提供されるプログラムは、書換可能な不揮発性メモリ(例えば、EEPROM)に格納されることが望ましい。
建物20は、戸建て住宅に限らず、集合住宅、店舗などの他の建物であってもよい。空調システム10として、ヒートポンプ式の熱源機11を備える構成を例示したが、空調システム10は、温水あるいは冷水を複数のファンコイルユニットに通す構成などであってもよい。また、空調システム10は、空調領域ごとにエアーコンディショナを個別に設ける構成であってもよい。上述した空調システム10では、エアフィルタ12としてHEPAフィルタを採用しているが、他の構成のエアフィルタ12を用いることを妨げない。上述した搬送ファン13の台数、ダンパ14及び吹出口15の個数、温度センサ18の個数、空調空間21の個数などは一例であり、適宜に変更される。また、搬送ファン13は空調システム10の必須構成ではない。すなわち、空調システム10は、熱源機11が生成した冷気又は暖気が、加速されることなくダンパ14を通って吹出口15から吹き出す構成であってもよい。
表1に示しているダンパ14の開度は一例であって、空調システム10の仕様に応じて適宜に変更される。例えば、表1のうち、70[%]と記載している値は、50[%]以上90[%]以下の範囲で適宜の値に定められ、40[%]と記載している値は、30[%]以上60[%]以下の範囲で適宜の値に定められる。また、25[%]と記載している値は、15[%]以上30[%]以下の範囲の適宜の値に定められる。表1のうち、5[%]は常時換気の最小限度の換気量を考慮して、5[%]以上10[%]以下の範囲の適宜の値に定められる。空調システム10とは別に常時換気を行う場合には、ダンパ14の開度の最小値は0[%]であってもよい。ここに記載した数値の範囲も一例であり、設計などによって適宜に変更される。
また、表1では、温度差の区間の最小単位は1[℃]に定めているが、温度差の区間の最小単位は0.1[℃]以上1.5[℃]以下の範囲で適宜に定めることが可能であり、0.1[℃]以上1.0[℃]以下の範囲であればなお望ましい。表1の区間の個数は5つに限らず適宜に定めることが可能である。
また、表1では、温度差の区間を2[℃]、1[℃]、0[℃]、−1[℃]で区切っているが、温度差の区間は適宜に定めることが可能である。
上述した空調システム10において、取得部310は、温度センサ18との間で有線通信を行っているが、無線通信を行ってもよく、建物20において有線通信と無線通信とが混在していてもよい。取得部310と温度センサ18との間の通信規約にはとくに制限はない。また、上述した空調システム10では、取得部310が複数の温度センサ18それぞれに現在温度を問い合わせる構成であるが、複数の温度センサ18が適宜のタイミングで現在温度を取得部310に送信する構成であってもよい。
また、空調空間21Aは、建物の2階と3階とがつながる吹き抜け構造であってもよい。すなわち、吹き抜け構造は、特定の階をつなげる構造に限定されない。
上述の実施形態に係る第1の態様の空調システム用の制御装置30は、建物20の空調空間21Aに設けた複数の吹出口151,152から空調空間21A内の複数の空調領域211,212に向かって冷気又は暖気をそれぞれ吹き出す空調システム10が備える制御装置である。制御装置30は、複数の吹出口151,152から空調空間21Aに冷気又は暖気によってそれぞれ供給する熱量を定める処理部31を備える。処理部31は、以下の各機能を有する。
・複数の空調領域211,212にそれぞれ設けられて複数の吹出口151,152にそれぞれ対応付けられている複数の測定点51,52の現在温度と目標温度との温度差を、複数の測定点51,52のそれぞれの温度差Δθ1,Δθ2として求める機能。
・複数の測定点51,52のそれぞれの温度差Δθ1,Δθ2に応じて、複数の吹出口151,152からそれぞれ供給する熱量を決定する機能。
・複数の測定点51,52のうちの第1測定点(51,52の一方)の温度差が、複数の測定点51,52のうちの第2測定点(51,52の他方)の温度差より大きい場合、第2測定点に対応する吹出口から供給する熱量を、第1測定点に対応する温度差に応じて決定する機能。
したがって、制御装置30は、1つの空調空間21Aに複数の吹出口151,152を備える場合に、空調空間21A内の空調効率のさらなる向上を図ることができる。
また、実施形態に係る第2の態様の空調システム用の制御装置30では、第1の態様において、処理部31は、取得部310と、温度計算部311と、決定部312とを備えることが好ましい。取得部310は、複数の測定点51,52のそれぞれの現在温度を取得する。温度計算部311は、複数の測定点51,52のそれぞれの温度差Δθ1,Δθ2を求める。決定部312は、複数の測定点51,52のそれぞれの温度差Δθ1,Δθ2に応じて、複数の吹出口151,152からそれぞれ供給する熱量を決定する。そして、温度計算部311は、複数の吹出口151,152から冷気が吹き出される場合、現在温度から目標温度を引いた値を温度差Δθ1,Δθ2として求め、複数の吹出口151,152から暖気が吹き出される場合、目標温度から現在温度を引いた値を温度差Δθ1,Δθ2として求める。決定部312は、第1測定点の温度差が正の閾値T1より大きく、かつ第2測定点の温度差が正の閾値T1以下で0より大きい場合、第1測定点の温度差に応じて、第1測定点及び第2測定点に対応する吹出口151,152からそれぞれ供給する熱量を決定する。
したがって、制御装置30は、第1測定点に対応する空調領域(211または212の一方)の空調環境の快適性を、第2測定点に対応する吹出口(151または152)から供給される熱量によって向上させることができる。
また、実施形態に係る第3の態様の空調システム用の制御装置30では、第2の態様において、複数の測定点51,52のそれぞれは、優先測定点または非優先測定点に予め設定されている。第1測定点が優先測定点51であり、第2測定点が非優先測定点52である。決定部312は、第1測定点の温度差が正の閾値T1より大きく、かつ第2測定点の温度差が0以下である場合、以下の処理を行う。この場合、決定部312は、第1測定点の温度差に応じて、第1測定点及び第2測定点に対応する吹出口からそれぞれ供給する熱量を決定する。
したがって、制御装置30は、優先度が低い空調領域212の空調環境よりも、優先度が高い空調領域211内の人の快適性を優先して、空調領域211の快適性を向上させることができる。
また、実施形態に係る第4の態様の空調システム用の制御装置30では、第3の態様において、複数の吹出口151,152は、空調空間21Aの上下方向において互いに異なる位置にそれぞれ配置される。この場合、処理部31は、複数の吹出口151,152のうち、空調空間21Aの下方に配置された吹出口151に対応する測定点を、優先測定点51とすることが好ましい。
一般に、上下方向に広い空調空間21Aは、人の居住領域である下方の空調領域211と、天井に近い上方の空調領域212とで温度むらができやすい。例えば、冷房時は冷気が下方にたまりやすくなり、暖房時は暖気が上方にたまりやすくなる。しかし、制御装置30は、優先測定点51の現在温度を目標温度に近付けることを優先させるので、上下方向に広い空調空間21Aにおいても人の快適性を向上させることができる。
また、実施形態に係る第5の態様の空調システム用の制御装置30では、第4の態様において、処理部31は、複数の吹出口151,152のうち、空調空間21Aの最も下に配置された吹出口151に対応する測定点を、優先測定点51とすることが好ましい。
したがって、制御装置30は、人の居住領域に設置された優先測定点51の現在温度を目標温度に近付けることを優先させるので、上下方向に広い空調空間21Aにおいても人の快適性を向上させることができる。
また、実施形態に係る第6の態様の空調システム用の制御装置30では、第1乃至第5の態様のいずれか一つにおいて、冷気又は暖気は、空調システム10の熱源機11が生成することが好ましい。さらに、制御装置30は、熱源機11が生成した冷気又は暖気を複数の吹出口151,152にそれぞれ配分する分配装置102を制御する制御部32をさらに備えることが好ましい。
したがって、制御装置30は、熱源機11が生成した冷気又は暖気を複数の吹出口151,152にそれぞれ配分することによって、複数の吹出口151,152からそれぞれ供給する熱量を制御することができる。
また、実施形態に係る第7の態様の空調システム用の制御装置30では、第6の態様において、分配装置102は、給気ダクト16と、複数のダンパ14とを備えることが好ましい。給気ダクト16は、熱源機11が生成した冷気又は暖気を複数の吹出口151,152にそれぞれ配分するように複数系統に分岐している。ダンパ14は、給気ダクト16の複数系統それぞれから複数の吹出口151,152を通して空調空間21Aに供給する冷気又は暖気の流量を調節する。
したがって、制御装置30は、ダンパ14を制御することによって、複数の吹出口151,152からそれぞれ供給する熱量を制御することができる。
上述の実施形態に係る第8の態様の空調システム10は、熱源機11と、分配装置102と、複数の温度センサ18と、上述の第1乃至第7の態様のいずれか一つの制御装置30とを備える。熱源機11は、建物20の空調空間21Aに設けた複数の吹出口151,152をそれぞれ通して空調空間21Aに供給する冷気又は暖気を生成する。分配装置102は、熱源機11が生成した冷気又は暖気を複数の吹出口151,152にそれぞれ配分する。複数の温度センサ18は、複数の吹出口151,152にそれぞれ対応する複数の測定点51,52の温度を計測する。制御装置30は、複数の温度センサ18が計測した温度を現在温度として取得する。
したがって、空調システム10は、1つの空調空間21A内に2つの空調領域211,212を設けた場合に、2つの空調領域211,212のそれぞれの空調の優先度に応じて空調制御を行うことができる。
以上説明した実施形態は、本発明の様々な実施形態の一部に過ぎない。また、上述した実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。