JP2018106956A - 固体高分子電解質膜、膜電極接合体および固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
アノード:H2 → 2H+ + 2e−
カソード:2H+ + 1/2O2 + 2e− → H2O
したがって、固体高分子電解質膜には、プロトン(H+)を伝導することが求められるが、水素ガス(H2)等の燃料は透過しないことが求められる。
<1>多孔質ナノシートと、電解質ポリマーとを含む、固体高分子電解質膜。
<2>前記多孔質ナノシートの含有量が、前記多孔質ナノシートと前記電解質ポリマーとの合計の質量のうち、0.01〜10質量%である、前記<1>の固体高分子電解質膜。
<3>前記多孔質ナノシートが、グラファイト状窒化炭素である、前記<1>または<2>の固体高分子電解質膜。
<4>前記グラファイト状窒化炭素が、プロトン化されたグラファイト状窒化炭素である、前記<1>〜<3>のいずれかの固体高分子電解質膜。
<5>前記固体高分子電解質膜の厚さが、1〜20μmである、前記<1>〜<4>のいずれかの固体高分子電解質膜。
<6>触媒層を有するアノードと、触媒層を有するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された、前記<1>〜<5>のいずれかの固体高分子電解質膜とを備えた、膜電極接合体。
<7>前記<6>の膜電極接合体を備えた、固体高分子形燃料電池。
本発明の膜電極接合体は、発電性能の低下を抑えつつ、固体高分子電解質膜における燃料のクロスリークが抑えられたものとなる。
本発明の固体高分子形燃料電池は、発電性能の低下を抑えつつ、固体高分子電解質膜における燃料のクロスリークが抑えられたものとなる。
本明細書においては、式(m1)で表される化合物を、化合物(m1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。
「ナノシート」とは、構成原子が二次元方向に結合したシート状の分子もしくはその集合、または構成原子がシート状に配列した結晶を意味する。
「電解質ポリマー」とは、イオン交換基を有するポリマーを意味する。
「イオン交換基」とは、該基に含まれる陽イオンの一部が、他の陽イオンに交換しうる基を意味する。イオン交換基としては、H+、一価の金属カチオン、アンモニウムイオン等を有する基が挙げられる。
「スルホン酸基」は、−SO3 −H+および−SO3 −M+(ただし、M+は、一価の金属イオン、または1以上の水素原子が炭化水素基と置換されていてもよいアンモニウムイオンである。)を包含する。
「単位」とは、モノマーが重合することによって形成された該モノマーに由来する単位を意味する。単位は、モノマーの重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「燃料」とは、燃料電池における燃料となる物質のことであり、固体高分子形燃料電池における水素ガス、直接メタノール燃料電池におけるメタノール等のことである。本発明における「燃料」とは、特に断りのない限り、水素ガスまたはメタノールのことである。
本発明の固体高分子電解質膜は、多孔質ナノシートと、電解質ポリマーとを含む。
本発明の固体高分子電解質膜は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて補強材をさらに含んでいてもよい。
多孔質ナノシートは、プロトンが透過できる程度のナノメートルオーダーの孔を多数有するナノシートである。孔としては、複数の構成単位(たとえば、後述のメレム構造単位)が二次元方向に連結されて形成されたナノシートにおける構成単位間の間隙;規則的な環状構造に由来する孔がその代表例として挙げられる。
前記原子が環状に結合して形成された孔の大きさは、燃料として使用する水素ガス、メタノール等の分子は通さずに、プロトンの透過性に優れる大きさであれば、特に限定されない。炭素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む、10員環以上の孔が好ましく、15員環以上の孔がより好ましく、18員環であるものがさらに好ましい。
グラファイト状窒化炭素の製造方法としては、たとえば、国際公開第2014/098251号公報に記載の方法が挙げられる。
電解質ポリマーは、イオン交換基を有する。
イオン交換基としては、陽イオンがプロトンである酸型と、陽イオンが金属イオン、アンモニウムイオン等である塩型とが挙げられる。固体高分子形燃料電池用の固体高分子電解質膜の場合、通常、酸型のイオン交換基を有する電解質ポリマーが用いられる。酸型のイオン交換基を有する電解質ポリマーにおいては、イオン交換基のプロトンの一部は、セリウムイオン、マンガンイオン等にイオン交換されていてもよい。
ポリマー(H)は、ポリマー(H)の機械的特性および化学的耐久性に優れる点から、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位(以下、TFE単位と記す。)をさらに有することが好ましい。
ポリマー(H)は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて単位(u1)、単位(u2)およびTFE単位以外の、他のモノマーに基づく構成単位(以下、他の単位と記す。)をさらに有していてもよい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、原料のモノマーの沸点が低くなり、蒸留精製が容易となる。また、炭素数が6以下であれば、ポリマー(H)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
Q11、Q12の少なくとも一方は、エーテル性酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。エーテル性酸素原子を有する炭素数1〜6のペルフルオロアルキレン基を有するモノマーは、フッ素ガスによるフッ素化反応を経ずに合成できるため、収率が良好で、製造が容易である。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
単位(u1)が2つ以上のRf1を有する場合、Rf1は、それぞれ同じ基であってもよく、それぞれ異なる基であってもよい。
Y1としては、フッ素原子、またはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素数1〜6の直鎖のペルフルオロアルキル基が好ましい。
ペルフルオロアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
ペルフルオロアルキレン基の炭素数は、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。炭素数が6以下であれば、ポリマー(H)のイオン交換容量の低下が抑えられ、プロトン伝導性の低下が抑えられる。
ペルフルオロアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基等が好ましい。
Y2としては、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が好ましい。
他のモノマーとしては、たとえば、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、ペルフルオロα−オレフィン(ヘキサフルオロプロピレン等)、(ペルフルオロアルキル)エチレン((ペルフルオロブチル)エチレン等)、(ペルフルオロアルキル)プロペン(3−ペルフルオロオクチル−1−プロペン等)、ペルフルオロビニルエーテル(ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エーテル性酸素原子含有アルキルビニルエーテル)等)、国際公開第2011/013578号に記載された5員環を有するペルフルオロモノマー等が挙げられる。
ポリマー(H)は、単位(u1)、単位(u2)および他の単位を、それぞれ1種ずつ有していてもよく、それぞれ2種以上有していてもよい。
化合物(m1)は、たとえば、国際公開第2007/013533号に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
化合物(m2)は、たとえば、D.J.Vaugham著,”Du Pont Inovation”,第43巻、第3号,1973年、p.10に記載の方法、米国特許第4358412号明細書の実施例に記載の方法等、公知の合成方法によって製造できる。
ポリマー(F)の−SO2F基をイオン交換基に変換する方法としては、国際公開第2011/013578号に記載の方法が挙げられる。たとえば、−SO2F基を酸型のスルホン酸基(−SO3 −H+基)に変換する方法としては、ポリマー(F)の−SO2F基を塩基と接触させて加水分解して塩型のスルホン酸基とし、塩型のスルホン酸基を酸と接触させて酸型化して酸型のスルホン酸基に変換する方法が挙げられる。
固体高分子電解質膜の形成方法としては、薄肉でありながら機械的強度が高い固体高分子電解質膜が得られる点から、多孔質ナノシートと電解質ポリマーと液状媒体とを含む混合液を用いて固体高分子電解質膜を形成する方法が好ましい。
混合液を用いて固体高分子電解質膜を形成する方法としては、具体的には、混合液を基材フィルムまたは触媒層の表面に塗布し、乾燥させる方法(キャスト法)が挙げられる。
・多孔質ナノシートと電解質ポリマーと第1の液状媒体とを混合して、第1の液状媒体中に多孔質ナノシートが分散し、電解質ポリマーが分散または溶解した第1の混合液を調製する。
・第1の混合液中で多孔質ナノシートが均一に分散している状態で、多孔質ナノシートの分散性を損なわない乾燥方法(たとえば、凍結乾燥法またはスプレー乾燥法)にて、第1の混合液を乾燥し、電解質ポリマー中に多孔質ナノシートが均一に分散した状態で複合化された複合化物の乾燥物を得る。
・乾燥物と第2の液状媒体とを混合して、第2の液状媒体中に前記複合化物が分散した第2の混合液を調製する。
・第2の混合液を基材フィルムまたは触媒層の表面に塗布し、乾燥させて固体高分子電解質膜を形成する。
第2の混合液においては、多孔質ナノシートと電解質ポリマーは複合化しているため、多孔質ナノシートは凝集しにくい。よって、電解質ポリマー中に多孔質ナノシートが均一に分散した固体高分子電解質膜を形成しやすい。
多孔質ナノシートと電解質ポリマーとの複合化は、多孔質ナノシートと電解質ポリマーのイオン交換基との間の静電的相互作用によるものと考えられる。たとえば、多孔質ナノシートがプロトン化されたグラファイト状窒化炭素である場合、具体的には、正の電荷を有する多孔質ナノシートのプロトン化された窒素と、負の電荷を有する電解質ポリマーのイオン交換基が、相互に働きかけることによって複合化が引き起こされると考えられる。
非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。非プロトン性溶媒としては、多孔質ナノシートの分散性が良好である点から、ジメチルスルホキシドが好ましい。ジメチルスルホキシドは、分子内で分極しており、極性が大きいため、多孔質ナノシートを分散させやすい。また、沸点が高いため、多孔質ナノシートを加熱溶解させる場合にも好適に用いることができる。
水酸基を有する有機溶媒としては、アルコールが好ましく、炭素数1〜12の分岐または直鎖のアルキル基、または炭素数1〜12の分岐または直鎖のポリフルオロアルキル基を有するアルコールがより好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、4,4,5,5,5−ペンタフルオロ−1−ペンタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、3,3,3−トリフルオロ−1−プロパノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロ−1−オクタノール等が挙げられる。水酸基を有する有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水酸基を有する有機溶媒としては、多孔質ナノシートの分散性が良好である点から、メタノールまたはエタノールが好ましい。メタノールおよびエタノールは、極性溶媒であり、安価で取扱いやすい溶媒であるので好ましく利用できる。
多孔質ナノシートと電解質ポリマーとの合計の割合は、第1の混合液全質量のうち、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましい。
多孔質ナノシートと電解質ポリマーとの合計の割合は、第2の混合液全質量のうち、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜25質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
混合液は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて多孔質ナノシート、電解質ポリマーおよび液状媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
すなわち、多孔質ナノシートの遮蔽効果によって、水素ガスやメタノールが固体高分子電解質膜を透過しにくくなり、燃料のクロスリークが抑えられる。なお、多孔質ナノシートが有するナノメートルオーダーの微小の孔は、水素ガスやメタノールよりも比較的小さなプロトンの方を通しやすい。そのため、固体高分子電解質膜に多孔質ナノシートが含まれていても、固体高分子電解質膜のプロトン導電性の低下は、最小限に抑えられる。
図1は、膜電極接合体の一例を示す模式断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で配置された固体高分子電解質膜15とを具備する。
触媒としては、カーボン担体に白金または白金合金を担持した担持触媒が挙げられる。
カーボン担体としては、カーボンブラック粉末、グラファイト化カーボン、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
電解質ポリマーとしては、触媒層に用いられる公知の電解質ポリマーが挙げられ、クラックが入りにくい触媒層を形成できる点から、TFE単位と単位(u2)とを有するポリマーが好ましい。
カーボン層を配置することによって、触媒層の表面のガス拡散性および発電により生成した水の排水性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。カーボン層は、アノードおよびカソードのいずれか一方の触媒層とガス拡散層との間に配置されていてもよく、アノードおよびカソードの両方の触媒層とガス拡散層との間に配置されていてもよい。
カーボン層は、カーボンと非イオン性含フッ素ポリマーとを含む層である。
カーボンとしては、カーボン粒子、カーボンファイバー等が挙げられ、繊維径1〜1,000nm、繊維長1,000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
非イオン性含フッ素ポリマーとしては、PTFE等が挙げられる。
中間層を配置することによって、触媒層と、ガス拡散層またはカーボン層との接着強度が高まり、膜電極接合体としての機械的強度が向上するとともに、湿潤環境下での触媒層からの排水および乾燥下での保湿により固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
中間層は、電解質ポリマーと炭素材料とを含む。
電解質ポリマーとしては、触媒層や固体高分子電解質膜に含まれる電解質ポリマーと同様のものが挙げられ、工業的実施が容易な点から、TFE単位と単位(u2)とを有するポリマーが好ましい。
炭素材料としては、炭素繊維が好ましい。微細でかつ電子伝導性を有する点から、カーボンナノファイバーが好ましい。カーボンナノファイバーとしては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等)等が挙げられる。
膜電極接合体は、本発明の固体高分子電解質膜を用いて、たとえば、国際公開第2008/090990号、国際公開第2009/116630号等に記載される従来公知の方法により製造することができる。中間層についても、たとえば、国際公開第2009/116630号に記載の従来公知のものを用いて、従来公知の方法により、ガス拡散層上に形成できる。
膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝または多数の孔が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。
セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、膜電極接合体を適用できる。
例1、2は実施例であり、例3は比較例である。
GCN:グラファイト状窒化炭素、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
PFA:テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、
フレミオン膜:固体高分子電解質膜(旭硝子社製、フレミオン(登録商標)、膜厚25μm)。
ポリマー(H)からなる固体高分子電解質膜を120℃で12時間真空乾燥した。固体高分子電解質膜を0.85モル/gの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:水/メタノール=10/90(質量比))に浸漬して、イオン交換基を中和した。イオン交換基を中和した後の水酸化ナトリウム溶液を0.1モル/Lの塩酸で逆滴定してポリマー(H)のイオン交換容量を求めた。
デジマチックインジケータ(Mitsutoyo社製、型番:543−250、フラット測定端子:φ5mm)を用いて固体高分子電解質膜の9箇所の厚さを測定し、これらを平均して固体高分子電解質膜の厚さとした。
固体高分子電解質膜の厚さ方向のプロトン導電率は、固体高分子電解質膜の厚さ方向に外部から交流電圧を印加し、その高周波応答特性を解析することによって求めた。
セラミック製鋏を用いて固体高分子電解質膜から2cm角のサンプルを切り出した。サンプルを、金めっきを施した10mmφの電極を備えた専用治具(東陽テクニカ社製、サンプルホルダ SH2−Z)に設置し、電極間に2N・mのトルクで固定化した。高精度インピーダンス装置(英国ウィンカー社製、6440B)を用いて、50mVの交流電圧を印加し、3MHzから20Hzまでの測定周波数領域で周波数応答測定を行い、厚さ方向のプロトン導電率を算出した。プロトン導電率は1.0mS/cm以上であれば実用上好ましい。
評価対象の固体高分子電解質膜をフレミオン膜で挟んだ3層の積層膜をガス透過装置用セルに組み込んだ。80℃の条件下、セル有効ガス透過面積3.3cm2、ガス流量30cm3/minの条件で、該積層膜の一方に湿度を調節した水素ガスを流し、積層膜の他方に湿度を調節したアルゴンガスを流した。アルゴンガス側に透過してくる水素ガスを、ガスクロマトグラフィで検出し、水素ガス透過量を測定した。得られた水素ガス透過量を用いて、標準状態(0℃、1気圧)において、膜面積1cm2、透過ガスの圧力差1Paあたり、1秒間に透過するガスの流量を求め、厚さ1cmの膜に換算した値を積層膜の水素ガス透過係数Pとした。
同様の方法で、フレミオン膜の単独膜の水素ガス透過係数P1を算出した。
積層膜の厚さをL、フレミオン膜の厚さをL1、評価対象の固体高分子電解質膜の厚さをL2とし、積層膜の水素ガス透過係数をP、フレミオン膜の水素ガス透過係数をP1、評価対象の固体高分子電解質膜の水素ガス透過係数をP2としたとき、L/P=L1/P1×2+L2/P2が成り立つ。この式から、評価対象の固体高分子電解質膜の水素ガス透過係数P2を算出した。
ジシアンジアミドをるつぼ内に入れ、マッフル炉内で550℃で熱処理することによってGCNを得た。次に、得られたGCNを濃硫酸中で100℃に加熱してプロトン化処理を行った。プロトン化処理後の液をメタノール中に滴下し、析出させることによってGCN硫酸塩を得た。
GCN硫酸塩をDMSO中に分散させ、GCN硫酸塩分散液(8mg/mL)を得た。
ポリマー(H−1)(旭硝子社製、フレミオン(登録商標)、TFE単位と単位(u2−1)を有する酸型の電解質ポリマー、イオン交換容量1.1ミリ当量/g)を、固形分濃度が26質量%となるように水/エタノール=40/60(質量比)の混合溶媒に分散させ、ポリマー(H−1)分散液を得た。
GCN硫酸塩分散液とポリマー(H−1)分散液とを混合して、第1の混合液を得た。GCN硫酸塩の含有量は、GCN硫酸塩とポリマー(H−1)との合計の質量のうち、4質量%であった。水とDMSOとの質量比(水/DMSO)は、1/5であった。エタノールの割合は、液状媒体全量のうち、20質量%であった。
第1の混合液を液体窒素で凍結させ、このまま減圧下で液状媒体を除去して固形分を得た。固形分を160℃で30分間乾燥させて、乾燥物を得た。
乾燥物を水/DMSO=50/50(質量比)の混合溶媒に分散させて第2の混合液を得た。乾燥後の厚さが20μmになる量の第2の混合液をPFA製のシャーレの底に均一に広がるように入れて、室温で真空乾燥して透明な固体高分子電解質膜Aを得た。固体高分子電解質膜Aの厚さおよびプロトン導電率を表1に示す。
固体高分子電解質膜Aを両側からフレミオン膜で挟み、130℃、5分間、3MPaの条件下で圧着させて積層膜を得た。該積層膜を用いて各湿度下における固体高分子電解質膜Aの水素ガス透過係数を求めた。結果を表2に示す。
GCN硫酸塩の含有量を、GCN硫酸塩とポリマー(H−1)との合計の質量のうち、0.5質量%とした以外は、例1と同様にして固体高分子電解質膜Bを得た。固体高分子電解質膜Bの厚さおよびプロトン導電率を表1に示す。
フレミオン膜のプロトン導電率を表1に示す。
固体高分子電解質膜Aの代わりにフレミオン膜を用いる以外は、例1と同様にして積層膜を得た。該積層膜を用いて各湿度下におけるフレミオン膜の水素ガス透過係数を求めた。例3で得られたフレミオン膜の水素ガス透過係数に対する、例1の固体高分子電解質膜Aの水素ガス透過係数の割合(水素ガス透過係数比)を表2に示す。
11 触媒層、
12 ガス拡散層、
13 アノード、
14 カソード、
15 固体高分子電解質膜、
16 カーボン層。
Claims (7)
- 多孔質ナノシートと、電解質ポリマーとを含む、固体高分子電解質膜。
- 前記多孔質ナノシートの含有量が、前記多孔質ナノシートと前記電解質ポリマーとの合計の質量のうち、0.01〜10質量%である、請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記多孔質ナノシートが、グラファイト状窒化炭素である、請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記グラファイト状窒化炭素が、プロトン化されたグラファイト状窒化炭素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の固体高分子電解質膜。
- 前記固体高分子電解質膜の厚さが、1〜20μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固体高分子電解質膜。
- 触媒層を有するアノードと、
触媒層を有するカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に配置された、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固体高分子電解質膜と
を備えた、膜電極接合体。 - 請求項6に記載の膜電極接合体を備えた、固体高分子形燃料電池。
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