本発明の発明者らは、図8に示すように、基礎構造物1に柱2を立設させた構造について、柱2の下端部3の側面と中間部4の側面との間に段差が生じるように下端部3の幅を中間部4の幅の0.7倍程度とし、下端部3の高さを100mm程度とした試験体を作成して地震力を負荷する実験を行った。その結果、下端部3と中間部4との接合部分に局所的な大きな応力が発生し、下端部3が中間部4にめり込み、さらに、中間部4に、下端部3の外縁との接合部分から縦ひび割れが発生するという問題を発見した。
そこで、本発明は、複数層を有する鉄筋コンクリート造の建物の柱脚接合構造に於いて、地震時の最下層への応力集中を回避するために柱脚接合部の曲げ剛性を減少させるとともに、コンクリートの損傷を抑制できる柱脚接合構造を提供することを目的とする。本発明の少なくともいくつかの実施形態では、上述のめり込みや縦ひび割れの発生を抑制できる柱脚接合構造を提供することを目的とする。
本発明の少なくともいくつかの実施形態は、複数層を有する建物に於いて、最下層への応力集中を回避するべく形成された柱脚接合構造(10,30,40,50,60)であって、鉄筋コンクリート造の基礎構造物(11)と、前記基礎構造物上に立設され、前記基礎構造物に連結された第1主筋(18,32,42,68)、及び前記基礎構造物に連結されていない第2主筋(19,33,43,69)を有する鉄筋コンクリート造の柱(12,31,41,51,61)とを備え、前記柱は、鉛直方向に一定の横断面輪郭で延在する中間部(14,52,62)と、該中間部から下方に延出して該中間部よりも横断面が縮小された下端部(15,53,63)とを有し、前記下端部の高さは、前記中間部の幅又は直径の0.3倍〜1.5倍であることを特徴とする。
この構成によれば、第2主筋が基礎構造物に連結されていないため、柱と基礎構造物との間の曲げ剛性が減少し、地震時の建物の最下層への応力集中を回避することができる。また、下端部の高さが中間部の幅に対して0.3倍以上であることから、中間部と下端部との境界部分に生じる曲げモーメントが、下端部の高さがこれよりも低い場合に比べて減少し、中間部と下端部との境界部分のコンクリートの損傷が抑制される。また、下端部の高さが中間部の幅に対して1.5倍以下であることから、外観を損なわない。
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(10,30,40,60)は、上記構成に於いて、前記下端部(15,63)は、前記中間部(14,62)の下端から下方に向かって先細となるテーパー部(16,64)を有することを特徴とする。
この構成によれば、中間部の側面と下端部の側面との間に段差が生じないようにテーパー部が設けられているため、下端部が中間部にめり込むことやめり込みによって生じる縦ひび割れが抑制される。
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造は、テーパー部を有する上記構成に於いて、前記下端部は、側面が鉛直方向に延在するように前記テーパー部の下端から下方に延出して、前記基礎構造物に接合する立ち上がり部を有することを特徴とする。
この構成によれば、基礎構造物と柱との境界に生じる力が立ち上がり部に分散するため、境界周辺のコンクリートの破損を抑制できる。
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(10,30,40)は、上記構成に於いて、前記テーパー部の側面は、全体に渡って、鉛直方向長さに対する水平方向長さの比で表される勾配が1/6〜1/2であるように傾斜していることを特徴とする。好ましくは、勾配は1/6〜1/3である。
この構成によれば、テーパー部の側面の勾配が1/6以上とすることにより、テーパー部の高さを抑えつつテーパー部の下端側の幅を所定の値以上中間部の幅よりも狭くすることができる。また、テーパー部の側面の勾配が大き過ぎると、中間部の下端近傍に引張応力が発生してコンクリート部分が損傷するおそれが生じるが、その勾配が1/2以下であることにより、このような引張応力を抑制でき、その勾配が1/3以下であることにより、このような引張応力をさらに抑制又は防止できる。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(10,30)は、テーパー部を有する上記構成に於いて、前記第1主筋(18,32)は、平面視で前記下端部の下端の輪郭線よりも内側に配置され、少なくとも一部の前記第2主筋(19,33)は、平面視で前記第1主筋よりも外側に配置されたことを特徴とする。
この構成によれば、第1主筋及び第2主筋を屈曲させる必要がなく、鉛直方向に延在させることができるため、配筋作業が容易となる。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(30)は、上記構成に於いて、前記第1主筋(32)の外側かつ前記少なくとも一部の前記第2主筋(33)の内側に配置されて、前記基礎構造物に連結していない第3主筋(34)をさらに備え、前記第3主筋の上端は、前記第1主筋の上端よりも上方かつ前記少なくとも一部の前記第2主筋の上端よりも下方に位置し、前記第3主筋の下端は、前記第2主筋の下端よりも下方に位置することを特徴とする。
この構成によれば、第1主筋、第3主筋及び第2主筋が、内側から順に上方に向かって段階的に配置されるため、柱の下部の主筋が分断されている領域の曲げ耐力を安定させることができる。
本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(40)は、テーパー部を有する上記構成の内、直上の2つの構成を除いたものに於いて、前記第1主筋(42)は、前記中間部に於いては、平面視で前記下端部の下端よりも外側に配置された主筋の少なくとも一部を構成し、かつ、前記テーパー部内に於いては、該テーパー部の側面に沿って傾斜していることを特徴とする。
この構成によれば、基礎構造物に連結した第1主筋が柱の側面に沿って配置されるため、柱全体の曲げ耐力が安定する。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(50)は、上記の最初の構成に於いて、前記下端部(53)の側面は、全体に渡って鉛直方向に沿って延在することを特徴とする。
この構成によれば、柱を現場打ちコンクリートで形成する場合、型枠を傾斜させる必要がなく、型枠の設置作業が容易となる。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造は、上記構成に於いて、前記中間部は、その下端に水平方向に延在する鋼板(54)を有し、平面視に於いて、前記鋼板は、前記下端部を覆うことを特徴とする。
この構成によれば、下端部の側面と中間部の側面との間に段差が生じているが、中間部の下端に鋼板が存在することにより、下端部が中間部にめり込むことや、そのめり込みによって縦ひび割れが生じることを抑制できる。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(60)は、上記の第2又は第3の構成に於いて、前記中間部(62)は、角柱形状をなし、前記テーパー部(64)は、前記中間部に対応する角柱から下端側の少なくとも一部の角部を切り欠いた形状をなすことを特徴とする。
この構成によれば、テーパー部の曲げモーメントに対する有効せいの減少率が比較的小さいため、軸力が大きく変動する外柱に好適である。
また、本発明の少なくともいくつかの実施形態に係る柱脚接合構造(60)は、上記構成に於いて、前記第1主筋(68)は、平面視で前記下端部(63)の下端の輪郭線よりも内側に配置され、少なくとも一部の前記第2主筋(69)は、平面視で前記下端部の下端の前記輪郭線よりも外側に配置されたことを特徴とする。
この構成によれば、第1主筋及び第2主筋を屈曲させる必要がなく、鉛直方向に延在させることができるため、配筋作業が容易となる。
本発明によれば、複数層を有する鉄筋コンクリート造の建物の柱脚接合構造に於いて、地震時の最下層への応力集中を回避するために柱脚接合部の曲げ剛性を減少させるとともに、コンクリートの損傷を抑制できる柱脚接合構造を提供することができる。本発明の少なくともいくつかの実施形態によれば、柱の下端近傍におけるめり込みや縦ひび割れの発生を抑制できる構造を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態の主形態を説明する。図1は、第1実施形態に係る柱脚接合構造10の配筋図である。
柱脚接合構造10は、フーチング11に、鉄筋コンクリート造の柱12が立設された構造であり、複数層を有する建物の最下層に適用される。
フーチング11は、柱12からの荷重を地盤に伝える鉄筋コンクリート造の部材であって、水平方向に延在している。フーチング11は、水平方向に延在するフーチング主筋13、鉛直方向に延在して下端側が杭(図示せず)に突入しフーチング11を杭に定着させる定着筋(図示せず)、及びあばら筋(図示せず)を有する。フーチング11に代えて、杭、基礎梁等の他の基礎構造物に柱12を立設させてもよい。
柱12は、建物の上部構造の荷重を支持してその荷重をフーチング11に伝える鉄筋コンクリート造の部材であって、フーチング11に立設される。柱12は、平面視で正方形の輪郭を有するが、長方形や、他の多角形、円、長円、楕円等の輪郭に変更してもよい。柱12は、鉛直方向に一定の横断面輪郭で延在する中間部14と、中間部14の下端から下方に延出して中間部14よりも縮小された横断面を有する下端部15とを有する。
下端部15は、中間部14との下端から下方に向かって先細となるテーパー部16を有する。すなわち、テーパー部16の上端の横断面は中間部14の横断面に整合し、テーパー部16の側面は下方に向かうに従って内側に向かって傾斜している。テーパー部16の側面は、それぞれ、中間部14の側面の下方への延長面を中間部14の下端で内側に折り曲げたように形成されている。4つの傾斜した側面の勾配を示す鉛直方向長さに対する水平方向長さの比(水平方向長さ/鉛直方向長さ)は、1/6〜1/2である。4つの傾斜した側面の勾配は、互いに等しいことが好ましいが、相違してもよい。図1では、4つの側面の勾配が互いに等しく1/3である場合を図示している。テーパー部16の下端の幅は、中間部14の幅の0.5〜0.9倍であり、好ましくは約0.7倍(横断面積に換算すると、テーパー部16の下端の横断面積が、中間部14部の横断面積の0.25〜約0.8倍であり、好ましくは約0.5倍)である。
下端部15は、側面が鉛直方向に延在するように前記テーパー部16の下端から下方に延出して、フーチング11に接合する立ち上がり部17を有する。立ち上がり部17の横断面は、テーパー部16の下端の横断面に整合する。図1(b)の二点鎖線は、立ち上がり部17の輪郭を示す。立ち上がり部17の高さは、約100mmから中間部14の幅の0.6倍程度が好ましく、さらに好ましくは、約100mmである。立ち上がり部17を省略して、下端部15をテーパー部16のみからなる構造としてもよい。
下端部15の高さは、中間部14の幅(中間部14の横断面の形状が長方形のときは短辺方向の幅、多角形のときは多角形の中心を通る幅の内の最短の幅、円のときは直径、長円や楕円のときは短径)の約0.3倍(例えば、テーパー部16の下端の幅が中間部14の幅の0.7倍、勾配1/2、立ち上がり部17なしの場合)〜1.5倍(例えば、テーパー部16の下端の幅が中間部14の幅の0.7倍、勾配1/6、立ち上がり部17の高さが中間部14の幅の0.6倍の場合)であり、好ましくは、約0.45倍(例えば、テーパー部16の下端の幅が中間部14の幅の0.7倍、勾配1/3、立ち上がり部17なしの場合)〜約1.0倍(例えば、テーパー部16の下端の幅が中間部14の幅の0.7倍、勾配1/6、立ち上がり部17の高さが100mm、中間部14の幅が1000mmの場合)である。
柱12は、フーチング11に連結されて鉛直方向に延在する第1主筋18と、フーチング11に連結されずに中間部14では鉛直方向に延在する第2主筋19と、帯筋20と、副帯筋21とを有する。第1主筋18の各々は、平面視で下端部15の下端の側面よりも内側に配置され、鉛直方向に延在し、中間部14及び下端部15を通って柱12の下端から延出し、フーチング11の内部に至る。第1主筋18は、下端側がフーチング11に突入しているため、柱12とフーチング11とを連結している。第2主筋19は平面視で第1主筋18よりも外側に配置され、テーパー部16では、鉛直方向に対してテーパー部16の側面に沿って傾斜している。なお、第2主筋19は、その全体が鉛直方向に延在し、その下端は所定のかぶりを確保できる位置、例えば中間部14と下端部15との境界の近傍に位置するように構成してもよい。第2主筋19は、フーチング11に突入していないため、柱12とフーチング11とを連結していない。第1主筋18の横断面積の合計は、第2主筋19の横断面積の合計よりも小さいことが好ましい。図1では、全ての第2主筋19が中間部14の側面に沿った位置に配置されている例が示されているが、他の位置に配置される第2主筋19があってもよい。帯筋20は、下端部15では第1主筋18を囲むように配置され、中間部14では外側に配置された第2主筋19を囲むように配置されている。帯筋20の本数や間隔は適宜変更される。副帯筋21は、帯筋20の間を、柱12の側面に平行な水平方向に沿って第1主筋18及び第2主筋19に近接するように配置される。副帯筋21の本数や間隔は適宜変更され、不要な場合は設置されない。テーパー部16では、補強筋22が第2主筋19を囲むように配置される。テーパー部16における第2主筋19及び補強筋22が協働して、テーパー部16のコンクリートの剥落を抑制している。
なお、第1主筋18は、曲げに抵抗するという点や、柱12の外周に沿って所定の被りをもって配置されている点に於いて柱12の主筋を構成する。しかし、第1主筋18は、柱12からフーチング11にかけて延在し、柱12に於いては少なくとも定着長さ分だけ鉛直方向に延在していればよく、必ずしも柱12の全高にわたって延在している必要はない。
柱脚接合構造10の作用効果を説明する。第2主筋19がフーチング11に連結しておらず、第1主筋18が第2主筋19よりも内側に配置されているため、全ての主筋が基礎に連結される構造に比べて、柱12とフーチング11との接合部は、曲げに対する剛性が低くなっている。そのため、複数層を有する建築物に於いて地震時の最下層への応力集中を回避することができ、柱12や一部の梁(図示せず)の断面を小さくすることができる。特に、第1主筋18の横断面積の合計が、第2主筋19の横断面積の合計よりも小さい場合、この作用効果が顕著となる。
また、下端部15の高さが中間部14の幅に対して0.3倍以上であることから、中間部14と下端部15との境界部分に生じる力が分散して、下端部15の高さが低い場合に比べて応力が減少し、中間部14と下端部15との境界部分のコンクリートの損傷が抑制される。さらに、中間部14の側面と下端部15の側面との間に段差が生じないようにテーパー部16が設けられているため、下端部15が中間部14にめり込むことやめり込みによって生じる縦ひび割れが抑制される。また、下端部15の高さが中間部14の幅に対して1.5倍以下であることから、外観を損なわない。また、テーパー部16の側面の勾配を1/6以上とすることにより、テーパー部16の高さを抑えつつテーパー部16の下端側の横断面を十分に縮小できる。また、テーパー部16の側面の勾配が大き過ぎると、中間部14の下端近傍に引張応力が発生して、コンクリート部分が損傷するおそれが生じるが、その勾配が1/2以下であることにより、このような引張応力を抑制でき、勾配が1/3以下の場合には引張応力をさらに抑制又は防止できる。
第1主筋18及び第2主筋19は、鉛直方向に延在するため、第1主筋18を屈曲させる必要がなく、配筋作業も容易となる。
また、立ち上がり部17を設けた場合、フーチング11と柱12との境界部分に生じる力が、立ち上がり部17を設けない場合に比べて分散するため、コンクリート部分の破損を抑制することができる。
第1実施形態は、主筋の配置に関して変形実施することができる。図2は、第1実施形態の第1変形例を示す。図2は、第1実施形態の第1変形例に係る柱脚接合構造30に於ける柱31の、軸線を通る縦断面に於ける第1〜第3主筋32,33,34の配筋状態を模式的に示す(帯筋及び副帯筋は図示を省略している)。説明に当たって、上記の構成と同様の構成は、同じ符号を付し、その説明を省略する。
第1〜第3主筋32,33,34は、それぞれ鉛直方向に延在する。フーチング11(図1参照)に連結される第1主筋32は、最も内側に位置し、平面視で下端部15の下端の側面よりも内側に配置される。フーチング11に連結されない第2主筋33は、最も外側に配置される。第3主筋34は、フーチング11に連結されず、中心軸に対する近接離間方向に於いて、第1主筋32と第2主筋33との間に配置される。第1主筋32の上端は中間部14内に位置することが好ましく、第3主筋34の上端は第1主筋32の上端よりも上方に位置し、前記第2主筋33の上端は第3主筋34の上端よりも上方に位置する。第3主筋34の下端は、前記第2主筋33の下端よりも下方に位置し、好ましくはテーパー部16内に位置する。また、第1〜第3主筋32,33,34は、鉛直方向に於いて互いに重複する区間が存在するように、第1主筋32の上端は、第2主筋33の下端よりも上方に位置する。換言すると、第1〜第3主筋32,33,34は内側に配置されたものほど、下方に位置するように段階的に配置される。
このように、第1〜第3主筋32,33,34を段階的に配置しても、上述の第1実施形態の主形態と同様の作用効果を発揮するとともに、互いに分離した第1〜第3主筋32,33,34が、段階的に配置されることによって鉛直方向に連続する主筋のように曲げモーメントに抵抗し、柱31の曲げ耐力が安定する。
図3は、第1実施形態の第2変形例に係る柱脚接合構造40を示す。説明に当たって、上記の構成と同様の構成は、同じ符号を付し、その説明を省略する。
フーチング11に連結される柱41の第1主筋42は、最も外側に配置される主筋の一部を構成し、柱41の中間部14に於いては、鉛直方向に延在し、テーパー部16に於いては、傾斜した側面に沿って延在する。第1主筋42の下端側は、立ち上がり部17の近傍で屈曲して鉛直方向に延在する状態でフーチング11に定着されるが、立ち上がり部17の近傍で屈曲せずに傾斜した状態でフーチング11に定着されてもよい。
フーチング11に連結されずに鉛直方向に延在する第2主筋43は、平面視で第1主筋42よりも内側に配置される内側第2主筋43aと、平面視で第1主筋42と同じく最も外側に配置される主筋の一部を構成する外側第2主筋43bとを含む。内側第2主筋43aの下端側は、テーパー部16内の、第1主筋42の配置を阻害しない位置又は所定のかぶりを維持できる位置まで延在する。内側第2主筋43aの上端は、第1主筋42の上端よりも低い位置にある。外側第2主筋43bの下端は、中間部14と下端部15との境界近傍に位置する。外側第2主筋43bの上端側は、第1主筋42と同様に上方まで延出している。第1主筋42の横断面積の合計は、第2主筋43の横断面積の合計よりも小さいことが好ましい。帯筋20は、下端部15では第1主筋42を囲むように配置され、中間部14では第1主筋42及び外側第2主筋43bを囲むように配置されている。なお、第2主筋43として、内側第2主筋43a又は外側第2主筋43bの一方のみを設けてもよい。
一般に、鉄筋を折り曲げて傾斜させる場合、その勾配が1/6(水平方向長さ/鉛直方向長さ)以下であれば特別な配慮をせずに使用できると考えられている。よって、本変形例に於いては、テーパー部16の側面及びテーパー部16内の第1主筋42の勾配は、図3に示すように1/6であることが好ましい。
第2変形例に係る柱脚接合構造40も第1実施形態の主形態と同様の作用効果を有するとともに、第1主筋42が柱41の側面に沿って柱41の全高に渡って配置可能であるため、柱41全体の曲げ耐力が安定する。
次に図4を参照して第2実施形態に係る柱脚接合構造50を説明する。第2実施形態に係る柱脚接合構造50は、柱51の中間部52及び下端部53の構成が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態の柱51の下端部53は、中間部52よりも横断面が縮小されているが、側面が傾斜しておらず、側面の全体が鉛直方向に沿って延在する。そのため、中間部52の側面と下端部53の側面との間に段差が生じている。下端部53の幅は、中間部52の幅の0.5〜0.9倍であり、好ましくは約0.7倍である。下端部53の高さは、中間部52の幅の約0.3倍〜1.5倍であり、好ましくは、約0.45倍〜1.0倍である。図4(b)の二点鎖線は、下端部53の輪郭を示す。
中間部52は、下端に水平方向に延在する鋼板54を有することが好ましい。平面視に於いて、鋼板54は少なくとも下端部53を覆い、好ましくは、鋼板54の輪郭は中間部52の側面に一致する。
第2実施形態に係る柱脚接合構造50の作用効果を説明する。第1主筋18及び第2主筋19の配置並びに下端部53の横断面の形状によって、複数層を有する建築物に於いて地震時の最下層への応力集中を回避することができ、柱51や一部の梁(図示せず)の断面を小さくすることができる点や、下端部53が所定の範囲の高さを有することによって、中間部52と下端部53との境界部分のコンクリートの損傷が抑制される点及び外観を損なわない点は、第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、下端部53の側面が傾斜しておらず、下端部53の側面と中間部52の側面との間に段差が生じている。そこで、中間部52の下端に鋼板54を設置して、下端部53が中間部52にめり込むことや、そのめり込みによって縦ひび割れが生じることを抑制している。
また、柱51を現場打ちで造成する場合、下端部53を形成するための型枠を傾斜させる必要がなく、型枠の設置作業が容易となる。
次に図5及び図6を参照して第3実施形態に係る柱脚接合構造60を説明する。第3実施形態に係る柱脚接合構造60は、柱61の中間部62及び下端部63の構成が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成には、同一の符号を付してその説明を省略する。
柱61の中間部62は、平面視で正方形の輪郭を有するが、長方形や、他の多角形の輪郭に変更してもよい。
下端部63は、中間部14との下端から下方に向かって先細となるテーパー部64を有する。テーパー部64の側面は、角柱の下側の角部を切り欠いて生じる三角形の第1側面65と、中間部62の側面と同一の平面を構成する台形状の第2側面66とからなる。第1側面65の鉛直方向に対する傾斜によって、テーパー部64が下方に向かって先細となっている。
4つの傾斜した第1側面65の勾配を示す鉛直方向長さに対する第2側面66の下底の長さの比(下底長さ/鉛直方向長さ)は、1/3〜1/2である。4つの傾斜した側面の勾配は、互いに等しいことが好ましいが、相違してもよい。テーパー部64の第1側面65の下辺の長さと上辺(中間部62と下端部63との境界)の長さとの比は、1:15〜5:4である。
第1実施形態と同様に、下端部63は、側面が鉛直方向に延在するようにテーパー部64の下端から下方に延出して、フーチング11に接合する立ち上がり部67を有する。立ち上がり部67を省略して、下端部63をテーパー部64のみからなる構造としてもよい。下端部15の高さと中間部14の幅との関係は、第1実施形態と同様である。
柱61は、フーチング11に連結されて鉛直方向に延在する第1主筋68と、フーチング11に連結されずに鉛直方向に延在する第2主筋69と、帯筋70とを有する。第1主筋68は、平面視で下端部63の下端の輪郭線よりも内側に配置される。また、第1主筋68は、中間部62の側面及びテーパー部64の第2側面66に沿って鉛直延在する第1主筋A68aと、テーパー部64の第1側面65の下端近傍の内側から鉛直方向に延在する第1主筋B68bとを有し、その下端は、それぞれ、フーチング11に突入している。第2主筋69は、平面視で下端部63の下端の輪郭線よりも外側に配置され、中間部62の角部及び/又はその近傍に沿って鉛直方向に延在し、その下端は、概ね、中間部62と下端部63との境界付近に位置する。中間部62においては、下側に比べて上側の曲げ耐力は低くても良いため、上側の主筋量は下側の主筋量よりも少なくてもよい。例えば、図示するように、第1主筋B68bの上端を、第1主筋A68a及び第2主筋69の上端よりも低くしてもよい。
帯筋70は、第1主筋68を囲むように配置されるため、テーパー部64において、帯筋70よりも外側に配置されるコンクリート部分が大きくなる。その部分には、第1側面65及び第2側面66の境界線に沿って配置された第1補強筋71、並びに、第1主筋A68a及び第1補強筋71を囲うように配置された第2補強筋72により補強を行い、テーパー部64のコンクリート表面の剥落を抑制している。第2補強筋72は、第1実施形態の補強筋22と比較して鉄筋長さが共通であり、かつ、配筋も容易である。
第3実施形態に係る柱脚接合構造60は、概ね、第1実施形態と同様の作用効果を有する。また、第3実施形態において、テーパー部64の第1側面65の高さを、第1実施形態のテーパー部16の側面の高さと同程度とした場合、テーパー部64の下端の断面積と断面二次モーメントが同程度であれば、第3実施形態に於ける柱脚の曲げ剛性を低下させることによって生じる効果は、第1実施形態と同程度である。しかし、第3実施形態に係る柱脚接合構造60は、テーパー部64の下端の曲げモーメントに対する有効せいが比較的大きいため、軸力が大きく変動する外柱への使用に適する。
従来技術の例及び本発明の実施例に係る柱脚接合構造について、FEM解析を行った。柱の中間部の幅は1000mm×1000mm、下端部の下端側の幅は700mm×700mmとした。実施例は、第1実施形態の主形態又は第2実施形態に対応する。従来例及び実施例の条件は以下の通りである。
(A)従来例1:剛接合、下端部なし。
(B)従来例2:半剛接合、下端部が直立し、高さ100mm。
(C)実施例:第2実施形態に対応、鋼板有り、下端部の高さ500mm。
(D)実施例:実施例Cから鋼板を除去した例。
(E)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配(テーパー)1/6、テーパー部の高さ900mm、立ち上がり部の高さ100mm。
(F)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配1/3、テーパー部の高さ450mm、立ち上がり部なし。
(G)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配1/3、テーパー部の高さ450mm、立ち上がり部の高さ100mm。
(H)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配3/11、テーパー部の高さ550mm、立ち上がり部なし(実施例Gと下端部の高さが等しく、立ち上がり部がない例)。
(I)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配1/2、テーパー部の高さ300mm、立ち上がり部なし。
(J)実施例:第1実施形態の主形態に対応、勾配1/2、テーパー部の高さ300mm、立ち上がり部の高さ100mm。
図7(B)に示すように、従来の半剛接合方式の柱では、図7(A)に示す従来の剛接合方式の柱と異なり、中間部の下部に於いて、幅が絞られた下端部の上縁が中間部の下面に当たる部分の近傍に大きな引張応力(マイナスで表示された応力)が生じている。また、下端部の右側面に大きな圧縮応力(プラスで表示された応力)が生じている。
図7(C)及び(D)に示すように、中間部よりも幅の狭い下端部を直立させて、その高さを従来よりも高くした例では、図7(B)に示す従来例に比べて、圧縮応力が広い範囲に分散して生じている。そのため、圧縮応力による損傷を抑制することができると考えられる。さらに、図7(C)に示すように鋼板を設置した場合には、鋼板によって、下端部が中間部にめり込むことを防止でき、それにより、中間部の下端から生じる縦ひび割れを抑制できる。
図7(E)〜(H)に示すように、下端部にテーパー部を設け、テーパー部の側面の勾配を1/6〜1/3にした場合は、中間部の下端に大きな引張応力は生じなかった。よって、下端部が中間部にめり込むことや中間部と下端部との境界から上方に向かって縦ひび割れが生じることが抑制又は防止される。
立ち上がり部がある場合(図7(G))と、ない場合(図7(F)及び(H))とを比較すると、立ち上がり部がある場合は、フーチングと柱との境界付近に生じる圧縮力は、立ち上がり部に分散している。よって、立ち上がり部を設けることによって、フーチングと柱との境界付近のコンクリートの損傷を抑制できる。
図7(I)及び(J)に示すように、テーパー部の側面の勾配が1/2の時には、中間部の下端近傍に引張応力が発生したが、その範囲は小さかった。よって、下端部が中間部にめり込むことや中間部と下端部との境界から上方に向かって縦ひび割れが生じることが抑制される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、下端部の下端に鋼板等の縁切り部材を配置して、基礎構造物と柱とのコンクリートの接合を切ってもよい。柱は、現場打ちコンクリートでもよく、プレキャストコンクリートでもよい。