JP2018104764A - 溶鋼の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶鋼の真空脱ガス処理の復圧時において、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込みを抑制して、鋼中の粗大なCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造する。
【解決手段】C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に、真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽を減圧状態から大気圧へ復圧して、溶鋼の精錬を終了する方法において、復圧処理を、溶鋼が上昇する浸漬上昇管側の溶鋼盛上り高さΔh[m]が、真空槽内のスラグ厚dS2[m]の2倍を超える高さとなるように行なうことを特徴とする溶鋼の精錬方法。
【選択図】図8

Description

本発明は、清浄性の高い溶鋼を製造する精錬方法、特に、真空脱ガス精錬を終了する時の精錬方法に関するものである。
近年、機械装置の高性能化や機械部品の小型化を図るため、機械特性に優れる鋼が求められている。鋼は、一般に、転炉で、溶鋼を脱珪処理、脱燐処理、さらに、脱炭処理を行った後、二次精錬工程にて、溶鋼の成分組成を調製し、溶鋼中の介在物を低減し、次いで、連続鋳造して製造されるが、機械特性を高めるためには、溶鋼中の介在物をできるだけ低減する必要がある。
例えば、軸受鋼においては、鋼中の介在物の量や大きさが、転動疲労寿命を決定するので、二次精錬工程にて、溶鋼に、取鍋スラグ精錬処理(以下「LF処理」ということがある。)や、真空脱ガス処理(以下「RH処理」ということがある。)を施し、溶鋼中の介在物の低減を図っている。
RH処理は、取鍋中の溶鋼に、二本の浸漬管を浸漬し、浸漬管に繋がる真空槽を減圧して、大気圧との差圧で溶鋼を真空槽内に吸い上げ、溶鋼環流ガスを、一方の浸漬管から溶鋼内に供給し、溶鋼を真空槽内と取鍋の間で環流させて、脱ガスや、介在物の低減を図る処理である。
RH処理では、溶鋼を強撹拌することになるので、介在物の除去は促進されるが、一方で、溶鋼中へのスラグの巻込みが発生するので、溶鋼の環流制御が重要で、これまで、環流制御に関する技術が数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、塩基度3以上のスラグで還元精錬を実施した後、環流式脱ガス装置によって、処理時間の2/3を高環流、1/3を弱環流にして真空脱ガス精錬を行なうことを特徴とする軸受鋼の製造方法が提案されている。
特許文献2には、アーク溶解炉又は転炉で製造した溶鋼を取鍋に移注して精錬する際、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行なうことを特徴とする高清浄鋼の製造方法が提案されている。
特許文献3には、転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬した後、環流式真空脱ガス装置で精錬して高清浄度鋼を製造する際、環流式真空脱ガス装置で行なう精錬処理でのスラグ塩基度を6.5以上13.5以下とし、環流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半処理では、溶鋼環流量180ton/min以上、210ton/min以下の高環流状態とし、後半処理では、溶鋼環流量110ton/min以上、140ton/min以下の弱環流状態とすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法が提案されている。
特許文献4には、溶鋼の真空精錬処理終了時に真空槽内に窒素ガスを導入して、真空から常圧に復圧する真空精錬装置の復圧方法において、溶鋼浴表面にはアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、溶鋼の吸窒を防止する復圧方法が提案されている。
特許文献5には、真空槽内にスラグを持ち込まない状態で、真空槽内の真空度に応じて攪拌用ガスを供給することを特徴とする高清浄度極低炭素鋼の製造方法が提案されている。
特開昭62−063650号公報 特開2001−342516号公報 特開2008−133505号公報 特開平05−331526号公報 特開平08−199225号公報
前述したように、鋼の機械特性に、鋼中に存在する介在物、主に、酸化物系介在物の量と大きさが大きく影響する。鋼中の酸化物系介在物のうち、特に、数10μm程の粗大な介在物は、CaO含有の低融点介在物(CaO含有介在物)である。
粗大なCaO含有介在物は、精錬で使用する取鍋スラグが、溶鋼中に巻き込まれて発生するスラグ系介在物、スラグ中のCaOが還元されて溶鋼に混入し、溶鋼中のAl23やMgO−Al23と反応して生成する介在物、さらに、これらの介在物が溶鋼中の介在物を取り込んで粗大化した介在物である。
粗大なCaO含有介在物は、品質管理指標の極値統計値や、製品特性の疲労寿命を悪化させるので、その量と大きさを低減する必要があるが、そのためには、凝集合体の起点となる低融点介在物の量と大きさを低減するとともに、低融点介在物に取り込まれる溶鋼中の介在物の量と大きさ低減することが有効である。
これら介在物の量と大きさを低減するためには、製造の各工程(取鍋精錬−RH処理−連続鋳造)において、溶鋼中への介在物の混入を防止する、又は、溶鋼中の介在物を除去する等の介在物低減対策が必要である。
溶鋼中への取鍋スラグの巻込みは、RH処理において、溶鋼流速が大きい場合や、スラグ/メタル界面の擾乱が激しい場合に、その頻度が大きくなり、混入するスラグ系介在物の量と大きさが、ともに増大する。
RH処理の終了後は、真空槽内の溶鋼を取鍋に戻すため、真空槽内の減圧状態を大気圧へ戻す「復圧」を実施するが、復圧時には、真空槽内に吸い上げられていた溶鋼、及び、浸漬管内に貯留していた溶鋼が、急激に降下して取鍋内に戻るので、急激に降下する溶鋼が誘起する溶鋼の下降流速は非常に大きく、スラグ/メタル界面が激しく搖動し、スラグが溶鋼に巻き込まれるとともに、巻き込まれたスラグは取鍋の深部まで引き込まれることになる。
また、復圧時の溶鋼環流ガス流量が、RH処理中の溶鋼環流ガス流量と同じ強環流条件であれば、溶鋼は、復圧中も、スラグ巻込みの臨界溶鋼流速を超える流速で環流することになるので、真空槽内のスラグは、常に、溶鋼中に巻き込まれ易い状態におかれることとなる。
さらに、復圧中、溶鋼環流ガスを溶鋼中に供給し続けるので、復圧時、真空槽内に堆積しているスラグが、溶鋼環流用ガスを供給する浸漬管を通って取鍋中に戻る途中、上記ガスによる攪拌によりスラグが溶鋼中に懸濁し、取鍋の深部に浸入する。その結果、鋼の清浄性が悪化する。
特許文献1の方法では、環流式脱ガス処理の前半2/3を高環流とし、後半1/3を弱環流としているが、特許文献1に、復圧時の環流条件は記載されていない。また、環流式脱ガス処理の鋼板を弱環流にすると、溶鋼中の全酸素量T.Oを十分に低減できない可能性がある。
特許文献2の方法では、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を、全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行なうが、特許文献2に、復圧時の環流条件は記載されておらず、また、溶鋼中へのスラグ巻込みに影響する環流条件も不明瞭である。
特許文献3の方法では、環流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半を高環流状態とし、後半を弱環流状態としているが、特許文献1の方法と同様に、復圧時の環流条件は記載されておらず、また、後半を弱撹拌とするので、溶鋼の全酸素量T.Oを十分に下げることができない恐れがある。
特許文献4の方法では、復圧時のガス種等が規定されているが、特許文献4に、真空槽内及び取鍋内にて溶鋼のスラグ巻き込みを抑制する復圧条件は記載されていない。特許文献5の方法では、真空槽内の圧力に応じた適切な攪拌ガス流速が規定されているが、特許文献5に、真空槽内及び取鍋内において、溶鋼中へのスラグ巻込みを抑制する復圧条件は記載されていない。
本発明は、従来技術の現状に鑑み、溶鋼の真空脱ガス処理の復圧時において、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込みを抑制して、鋼中の粗大なCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造することを課題とし、該課題を解決する溶鋼の精錬方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、真空脱ガス処理の復圧時、溶鋼が上昇する浸漬管(以下「浸漬上昇管」ということがある。)側の溶鋼の盛上り高さを最適化すれば、真空槽内に集積するスラグが、浸漬上昇管内に浸入するのを抑制でき、さらに、スラグ系介在物が、取鍋の深部まで浸入するのを抑制でき、その結果、鋼中に存在するCaO含有介在物の量と大きさを大幅に低減できることを見いだした。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。
(1)C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に、真空槽に浸漬上昇管と浸漬下降管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽を減圧状態から大気圧へ復圧して、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、
(i)環流ガス吹込み口を備える浸漬上昇管側の真空槽内の溶鋼に、環流ガス吹込み口から環流ガスを吹き込み、
(ii)下記式(1)で定義し、下記式(2)を満たす高さΔh[m]の溶鋼の盛上りを形成して復圧処理を行なう
ことを特徴とする溶鋼の精錬方法。
Δh[m]=2.0×10-3・H-1.3・ε2/3 ・・・(1)
H[m]:浸漬上昇管の環流ガス吹込み位置から真空槽内の溶鋼湯面までの距離
ε[W]:下記式で定義する溶鋼攪拌力
ε[W]=0.00835・Uo2・Q0
o=(200/3π)・(Qo/D1 2・ρ)
o=11.4・G1/3・D1 4/3・ln(P3/P11/3
o[m/秒]:環流時の浸漬管内の溶鋼平均流速
o[t/分]:溶鋼環流量
G[NL/分]:吹き込みガス流量
1[m]:浸漬管の内径
1[Pa]:復圧開始前の真空槽内の圧力
3[Pa]:環流ガス吹込み位置における静圧
ρ[kg/m3]:溶鋼密度
Δh[m]>2dS2 ・・・(2) dS2=(4/3π)・(Vs/D2 2
s=(D1 2・dS1・π)/2
S2[m]:真空槽内のスラグ厚
s[m3]:真空槽内に持ち込まれるスラグ体積
2[m]:真空槽の内径
S1[m]:取鍋内のスラグ厚
(2)前記真空脱ガス処理をRH式精錬装置で行なうことを特徴とする前記(1)に記載の溶鋼の精錬方法。
(3)前記RH式精錬装置で復圧を行なう際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする前記(2)に記載の溶鋼の精錬方法。
(4)前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする前記(3)に記載の溶鋼の精錬方法。
(5)前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
(6)前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(5)に記載の溶鋼の精錬方法。
本発明によれば、真空脱ガス処理の復圧時、浸漬上昇管側の溶鋼に形成する盛上り高さを最適化して、浸漬上昇管側への真空槽内のスラグの流動を抑制し、粗大なCaO含有介在物の溶鋼中への混入を抑制できるので、鋼中の介在物の量及び大きさを大幅に低減することができ、清浄性が高く、機械特性に優れた鋼を提供することができる。
真空槽の浸漬上昇管と浸漬下降管を溶鋼とスラグに浸漬した態様を示す図である。 真空槽内に溶鋼とスラグを上昇させた態様を示す図である。 真空脱ガス処理の通常の態様を示す図である。 復圧開始時の溶鋼とスラグの一態様を示す図である。 復圧処理中の溶鋼とスラグの一態様を示す図である。 復圧処理中の溶鋼とスラグの別の態様を示す図である。 図6に示す復圧処理の終期における溶鋼とスラグの態様を示す図である。 復圧処理中の溶鋼盛上り高さとスラグの厚さの具体的な関係を示す図である。
本発明の溶鋼の精錬方法(以下「本発明精錬方法」ということがある。)は、
C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に、真空槽と浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽を減圧状態から大気圧へ復圧して、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、
(i)環流ガス吹込み口を備える浸漬上昇管側の真空槽内の溶鋼に、環流ガス吹込み口から環流ガスを吹き込み、
(ii)下記式(1)で定義し、下記式(2)を満たす高さΔh[m]の溶鋼の盛上りを形成して復圧処理を行なう
ことを特徴とする。
Δh[m]=2.0×10-3・H-1.3・ε2/3 ・・・(1)
H[m]:浸漬上昇管の環流ガス吹込み位置から真空槽内の溶鋼湯面までの距離
ε[W]:下記式で定義する溶鋼攪拌動力
ε[W]=0.00835・U0 2・Q0
0=(200/3π)・(Q0/D1 2・ρ)
0=11.4・G1/3・D1 4/3・ln(P3/P11/3
0[m/秒]:環流時の浸漬管内の溶鋼平均流速
0[t/分]:溶鋼環流量
G[NL/分]:吹き込みガス流量
1[m]:浸漬管の内径
1[Pa]:復圧開始前の真空槽内の圧力
3[Pa]:環流ガス吹込み位置における静圧
ρ[kg/m3]:溶鋼密度
Δh[m]>2dS2 ・・・(2) dS2=(4/3π)・(Vs/D2 2
s=(D1 2・dS1・π)/2
S2[m]:真空槽内のスラグ厚
s[m3]:真空槽内に持ち込まれるスラグ体積
2[m]:真空槽の内径
S1[m]:取鍋内のスラグ厚
以下、本発明精錬方法について説明する。
前述したように、鋼中の非金属介在物のうち、特に、粗大なCaO含有介在物の個数及び大きさの増大は、鋼の機械特性、特に、延性、靱性、疲労特性等を阻害する要因である。本発明者らは、粗大なCaO含有介在物の個数及び大きさの増大を抑制する、又は、該個数及び大きさを低減する手法について鋭意検討した。
その結果、真空脱ガス処理の終了後、真空槽内に復圧用ガスを供給して、真空槽内の減圧状態を大気圧へ復圧する際、真空槽内において、浸漬上昇管側の溶鋼の盛上り高さを最適化すれば、有害なCaO含有介在物の溶鋼への混入を抑制して、鋼中の介在物を個数及び大きさを低減することができ、鋼の機械特性が向上することを見いだした。
最初に、真空槽内の溶鋼の盛上り高さ(以下「溶鋼盛上り高さ」ということがある。)と、真空槽内のスラグの厚み(以下「スラグ厚」ということがある。)の関係について説明する。
図1〜図3に、真空脱ガス処理の態様を示す。図1に、真空槽の浸漬上昇管と浸漬下降管を溶鋼とスラグに浸漬した態様を示し、図2に、真空槽内に溶鋼とスラグを上昇させた態様を示し、図3に、真空脱ガス処理の通常の態様を示す。
溶鋼に真空脱ガス処理を施す際、まず、図1に示すように、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bを備え、排気管4を介し排気装置(図示なし)に接続されている真空槽1を降下させ、又は、取鍋2を上昇させ、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bを、スラグ6aを通して溶鋼5aに浸漬する。
真空脱ガス処理を開始する際、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bの浸漬状態において、真空槽1内の大気を排気管4から排気して、真空槽1内を減圧状態にし、図2に示すように、真空槽1内に溶鋼5aとスラグ6aを吸い上げる。取鍋2内の溶鋼5aはスラグ6aに覆われているので、真空槽1内には、溶鋼5aとともにスラグ6aが吸い上げられ、吸い上げられた溶鋼5bはスラグ6bで覆われる。
溶鋼5bがスラグ6bで覆われている状態で、浸漬上昇管2aに設けた環流ガス吹込み口3から、浸漬上昇管2a内の溶鋼に、環流ガス3a(アルゴン、窒素などの不活性ガス)を吹き込む。環流ガス3aの吹込みで生じるポンプ作用によって、浸漬上昇管2a内の溶鋼5bが上昇し、真空槽1内において、溶鋼5bの盛上り5cが形成され、真空槽1内の溶鋼5bは、浸漬下降管2bから、取鍋2へと、時計回りで循環する(図3中「矢印」参照)。
溶鋼5bの盛上り5cが、真空槽1の減圧雰囲気に曝されて、溶鋼5bに対する脱ガス処理が進行し、溶鋼5bが時計回りで循環する間、溶鋼5aに対する真空脱ガス処理が進行する。
真空脱ガス処理を終了する時、真空槽1内の減圧状態を大気圧へ戻すが、このとき、取鍋2へ戻る溶鋼5bの挙動と、真空脱ガス処理の間、浸漬下降管2bの上部に偏って滞留していたスラグ6bの挙動が、溶鋼5bが取鍋2へ戻った後の溶鋼5aの清浄性に大きく影響する。
図4に、復圧開始時の溶鋼とスラグの一態様を示す。図5に、復圧処理中の溶鋼とスラグの一態様を示す。
図4に示すように、真空槽1内の減圧状態を大気圧に戻すと、真空槽1内の溶鋼5bの盛上り5cの高さは低くなり、それに伴い、浸漬上昇管2a近傍に存在するスラグは浸漬上昇管2a側に流動し、浸漬上昇管2aから、溶鋼5bとスラグ6bが取鍋2へ降下する。
復圧処理中も、浸漬上昇管2aの環流ガス吹込み口3から環流ガス3aを供給するので、浸漬上昇管2a側の溶鋼5bとスラグ6bは、強攪拌されることになる。強攪拌によりスラグ6bが懸濁した溶鋼5bが浸漬管上昇管2aから取鍋2へ降下すると、溶鋼5a中にスラグ6bが懸濁した溶鋼域が形成され、取鍋2内の溶鋼5aの深部に浸入し、真空脱ガス処理を施した溶鋼の清浄性が低下する。
そこで、本発明者らは、復圧処理時において、浸漬上昇管内に、真空槽1内に滞留するスラグを浸入させない手法について鋭意検討した。まず、本発明者らは、真空槽内の浸漬上昇管側に形成される溶鋼盛上り高さを、真空槽内に滞留するスラグ厚より高くすれば、真空槽内の浸漬下降管側に滞留するスラグはそのまま滞留し、浸漬上昇管側へは流動せず、浸漬上昇管内へのスラグの浸入は抑制されると発想した。
上記発想について、図面に基づいて説明する。
図6に、復圧処理中の溶鋼とスラグの別の態様を示す。図7に、図6に示す復圧処理の終期における溶鋼とスラグの態様を示す。
図6に示す復圧処理中の溶鋼とスラグの態様において、浸漬上昇管2a側には、溶鋼5bの盛上り5cが形成されていて、浸漬上昇管2a側の溶鋼5bはスラグ6bで覆われていない。
即ち、図3に示す真空脱ガス処理が終了した後、復圧処理を、真空槽1内の溶鋼5bの盛上り5cの高さが、真空槽1内において、浸漬降下管2bの上部に滞留するスラグ6bの厚さより高い状態で開始し、その状態を維持して復圧処理を進める。
高さが、スラグ6bの厚さより高い溶鋼5bの盛上り5cの存在により、復圧処理中、真空槽1内において、浸漬降下管2bの上部に滞留するスラグ6bは、そのまま滞留し、浸漬上昇管2a側に流動しないので、浸漬上昇管2aからは、溶鋼5bのみが取鍋2内に降下して、復圧処理が進行し、復圧処理の終期においても、図7に示すように、溶鋼5bのみが、浸漬上昇管2aから取鍋2内に降下する。
この点が、図4及び図5に示す従来の復圧処理と実質的に異なる点であり、本発明精錬方法の基本思想である。
溶鋼5bが浸漬上昇管2a内を降下する間、環流ガス吹込み口3から環流ガス3aを溶鋼5b内に吹き込むが、溶鋼5bを覆うスラグは存在しないので、溶鋼とスラグとの懸濁状態は生じない。
本発明者らは、上記発想の下で、溶鋼盛上り高さとスラグ厚の具体的な関係について鋭意検討した。その結果、浸漬上昇管側の溶鋼盛上り高さが、浸漬下降管側のスラグ厚の2倍以下であると、浸漬下降管側に滞留しているスラグが浸漬上昇管側に流動して滞留し、図4及び図5に示す復圧処理となり、復圧処理中、溶鋼中へのスラグ巻込みが発生して、鋼中に粗大な介在物が残留することが解った。
図8に、復圧処理中の溶鋼の盛上り高さとスラグの厚さの具体的な関係を示す。
本発明精錬方法においては、復圧処理中、溶鋼が上昇する浸漬上昇管側に形成する溶鋼の盛上り高さを、下記式(1)で定義する。
Δh[m]=2.0×10-3・H-1.3・ε2/3 ・・・(1)
Δh[m]は、浸漬上昇管の環流ガス吹込み位置から真空槽内の溶鋼湯面までの距離:H[m]と、下記式で定まる溶鋼攪拌力:ε[W] で定義できる。
ε[W]=0.00835・Uo 2・Qo
o=(200/3π)・(Qo/D1 2・ρ)
o=11.4・G1/3・D1 4/3・ln(P3/P11/3
o[m/秒]:環流時の浸漬管内の溶鋼平均流速
o[t/分]:溶鋼環流量
G[NL/分]:吹き込みガス流量
1[m]:浸漬管の内径
1[Pa]:復圧開始前の真空槽内の圧力
3[Pa]:環流ガス吹込み位置における静圧
ρ[kg/m3]:溶鋼密度
そして、復圧処理を、上記式(1)で定義する溶鋼盛上り高さΔh[m]が下記式(2)を満たすように行なう。この点が、本発明精錬方法の特徴である。
Δh[m]>2dS2 ・・・(2)
S2は、真空槽内を減圧状態にしたとき、浸漬上昇管と浸漬下降管から真空槽内に侵入するスラグの体積Vs[m3]で定まる真空槽内のスラグの厚さであり、下記式で定義できる。
S2=(4/3π)・(Vs/D2 2
s=(D1 2・dS1・π)/2
2[m]:真空槽の内径
S1[m]:取鍋内のスラグ厚
本発明精錬方法において、真空脱ガス処理に供する、C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼は、通常の精錬工程(一次精錬)で精錬した、通常の成分組成の溶鋼でよい。なお、溶鋼の好ましい成分組成については後述する。
一次精錬に続いて行なう真空脱ガス処理(二次精錬)を、RH式精錬装置を用いて行ない、真空脱ガス処理の終了後の復圧時、上記式(1)で定義する溶鋼の盛上り高さΔhが、上記式(2)を満たすように復圧処理を行ない、復圧後、溶鋼を鋳造する。鋳造は、通常の鋳造でよいが、連続鋳造が好ましい。
例えば、転炉で一次精錬を行ない、次いで、転炉外で二次精錬を行なう精錬工程において、本発明精錬方法を適用すれば、溶鋼中へのスラグの巻込みを極力抑制できるので、本発明精錬方法は、高い清浄性が求められる鋼材、例えば、軸受用の鋼材の製造に好適である。
復圧時、真空槽内の浸漬上昇管側の溶鋼に、上記式(1)で定義する高さΔhの盛上りを形成するため、真空槽内に供給する復圧用ガスは、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位及び真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給する。復圧用ガスを両方の部位から供給する場合、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることが好ましい。
復圧時、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることにより、真空槽内における溶鋼のスラグ巻込みを、より抑制することができる。復圧用ガスは、溶鋼の汚染を防止する観点から、アルゴンや窒素などの、溶鋼と反応し難い不活性ガスが好ましい。
真空脱ガス処理を施す溶鋼は、通常の成分組成の溶鋼、即ち、鋼の基本元素のC、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼であれば、上記式(1)で定義する高さΔhで、上記式(2)を満たす溶鋼の盛上りを形成して、溶鋼中へのスラグ巻込みを抑制して、鋼材における介在物低減効果を得ることができるので、特定の成分組成の溶鋼に限定されないが、上記介在物低減効果が顕著に発現する溶鋼の好ましい成分組成について説明する。以下、%は質量%を意味する。
C:1.20%以下
Cは、焼入れ後の鋼の強度や硬さを確保するのに有効な元素である。1.20%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下したりするので、Cは1.20%以下が好ましい。より好ましくは1.00%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Cを必ずしも必要としないので、下限は特に限定しないが、Cは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Cは0.001%以上が好ましい。
Si:3.00%以下
Siは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.00%を超えると、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Siは3.00%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Siを必要としないので、下限は特に定めないが、Siは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Siは0.001%以上が好ましい。
Mn:1.60%以下
Mnは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。1.60%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Mnは1.60%以下が好ましい。より好ましくは1.20%以下である。
強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種は、Mnを必要としないので、下限は特に定めないが、Mnは、鋼の基本元素であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Mnは0.01%以上が好ましい。
P:0.05%以下
Pは、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Pが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Pは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Pを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
S:0.05%以下
Sは、Pと同様に、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Sが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Sは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Sを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
好ましい成分組成の溶鋼は、鋼の機械特性及び/又は化学特性を阻害しない範囲で、上記基本元素以外に、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.01%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。
Al:0.20%以下
Alは、脱酸元素であり、また、結晶粒を微細化する元素である。0.20%を超えると、粗大な酸化物系介在物が生成し、靭性及び延性が低下するので、Alは0.20%以下が好ましい。結晶粒の微細化効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%がより好ましい。
Cr:3.50%以下
Crは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、3.50%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。Crの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。
Mo:0.85%以下
Moは、焼入れ性を高めて強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Moは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.85%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Moは0.85%以下が好ましい。より好ましくは0.65%以下である。Moの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Ni:4.50%以下
Niは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。4.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Niは4.50%以下が好ましい。より好ましくは3.50%以下である。Niの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Nb:0.20%以下
Nbは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Nbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.10%以下である。Nbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
V:0.45%以下
Vは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Vは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.35%以下である。Vの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
W:0.30%以下
Wは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Wは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.30%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Wは0.30%以下が好ましい。より好ましくは0.25%以下である。Wの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
B:0.006%以下
Bは、焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。また、Bは、オーステナイト粒界に偏析して、Pの粒界偏析を抑制し、疲労強度の向上に寄与する元素である。0.006%を超えると、靱性が低下するので、Bは0.006%以下とする。好ましくは0.004%以下である。Bの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.001%以上がより好ましい。
N:0.060%以下
Nは、微細な窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.060%を超えると、窒化物が過剰に生成して、靱性が低下するので、Nは0.060%以下が好ましい。より好ましくは0.040%以下である。Nの添加効果を確保する点で、0.001%以上が好ましく、0.005%以上がより好ましい。
Ti:0.25%以下
Tiは、微細なTi窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.25%を超えると、Ti窒化物が過剰に生成し、靱性が低下するので、Tiは0.25%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Tiの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Cu:0.50%以下
Cuは、耐食性の向上に寄与する元素である。0.50%を超えると、熱間延性が低下し、割れや疵が発生するので、Cuは0.50%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Cuの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。
Pb:0.45%以下
Pbは、快削性の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性が低下するので、Pbは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Pbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Bi:0.20%以下
Biは、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Biは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Biの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。
Te:0.010%以下
Teは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Teは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Teの添加効果を確保する点で、0.001%以上が好ましく、0.002%以上がより好ましい。
Sb:0.20%以下
Sbは、耐硫酸性及び耐塩酸性を主体とする耐食性の向上、及び、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Sbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Sbの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましい。
Mg:0.010%以下
Mgは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Mgは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Mgの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以上がより好ましい。
Ca:0.010%以下
Caは、脱酸元素であり、脱酸反応で、凝集合し易い低融点のCaO−Al23系介在物を形成する元素である。0.010%を超えると、Al23系介在物が、低融点のCaO−Al23系介在物に複合化して粗大化する。粗大化したCaO−Al23系介在物は、圧延温度で液相化せず、粗大なまま鋼中に残存するので、Caは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。
Caは、少ないほど好ましいので、下限は限定しないが、不可避的に0.0001%程度は残存するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
REM:0.010%以下
REM(希土類元素、La、Ce、Pr、及び、Ndの1種又は2種以上)は、Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、溶鋼中のCaOや、介在物中のCaOを還元して、CaO−Al23系介在物を改質する作用をなす元素である。0.010%を超えると、介在物中に、REM濃度の高い低融点の化合物相が出現し、介在物の凝集合が助長されて、粗大な介在物が生成するので、REMは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.007%以下である。
Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、REMの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以下がより好ましい。
O:0.003%以下
Oは、酸化物を形成する元素である。0.003%を超えると、粗大な酸化物が生成し、転動疲労寿命が低下するので、Oは0.003%以下が好ましい。より好ましくは0.002%以下である。下限は0%を含むが、Oを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。
溶鋼の成分組成において、残部はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素であり、溶鋼の特性、さらに、溶鋼を鋳造した鋼の特性を阻害しない範囲で許容される元素である。
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、本実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。そのため、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
(実施例)
表1に示す成分組成の溶鋼に、転炉による一次精錬、LF処理及びRH処理による二次精錬を施し、連続鋳造して鋼を製造した。
具体的には、270t転炉で一次精錬を施した溶鋼を出鋼する際、溶鋼を、Si、Mn、Alの1種又は2種以上にて脱酸し、脱酸した溶鋼に、LF処理の二次精錬に次いで、表1に示す条件で、RH処理で成分組成を調整し、清浄化処理を施した後、連続鋳造して鋳片とした。この鋳片を、加熱炉にて加熱保持した後、分塊圧延に供し鋼片とした。
Figure 2018104764
上記鋼片において、極値統計法により、予測面積30000mm2における非金属介在物の極値統計最大予測径[μm]を推定した。
極値統計による介在物の最大予測径(√area(max)の推定は、例えば、「金属疲労 微小欠陥と介在物の影響」(村上敬宜著、養賢堂、1993年発行、p.223−239)に記載の方法により行なうことができる。用いた方法は、二次元的検査により、一定面積内で観察される最大介在物径を推定するという二次元的手法である。
上記極値統計法を用いて、鋼片のL断面(ルーズ面の中心線と、この対向面の中心線、及び、鋳片の中心線を含む断面)のルーズ面側の1/4の位置から試料を採取して、光学顕微鏡で撮像した非金属介在物の画像から、検査基準面:100mm2(10mm×10mm)、検査視野:16、予測を行なう面積:30000mm2の介在物の最大予測径√area(max)を算出した。
具体的には、観察で得られた介在物の最大径の16個のデータ(16視野のデータ)を上記文献に記載の方法に従い、極値確率用紙にプロットして、最大介在物分布直線(最大介在物と極値統計基準化変数の一次関数)を求め、最大介在物分布直線を外挿することにより、面積:30000mm2における介在物の最大予測径√area(max)を推定した。
上記推定の結果を、表1に併せて示す。
比較例No.1〜8は、真空脱ガス処理時の復圧処理において、浸漬上昇管側の溶鋼の盛上り高さ(Δh)を、真空槽内のスラグ厚(dS2)の2倍以下とした例であり、極値統計最大予測粒径に改善が見られない。
一方、発明例No.9〜20は、真空脱ガス処理時の復圧処理において、浸漬上昇管側の溶鋼の盛上り高さ(Δh)を、真空槽内のスラグ厚(dS2)の2倍よりも大きくした例であり、比較例に比べ、極値統計による最大予測粒径が21〜26μmで、良好な値を示している。
以上のとおり、発明例では、従来操業の比較例に比較し、介在物の粗大化が抑制されているので、機械特性に優れた鋼が得られることは明らかである。
前述したように、本発明によれば、真空脱ガス処理の復圧時、浸漬上昇管側の溶鋼に形成する盛上りの高さを最適化して、浸漬上昇管側への真空槽内のスラグの流動を抑制し、粗大なCaO含有介在物の溶鋼中への混入を抑制できるので、鋼中の介在物の量及び大きさを低減することができ、清浄性が高く、機械特性に優れた鋼を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。
1 真空増
2 取鍋
3 環流ガス吹込み口
3a 環流ガス
4 排気管
5a、5b 溶鋼
5c 盛上り
6 6a、6b スラグ

Claims (6)

  1. C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼に、真空槽に浸漬上昇管と浸漬下降管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽を減圧状態から大気圧へ復圧して、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、
    (i)環流ガス吹込み口を備える浸漬上昇管側の真空槽内の溶鋼に、環流ガス吹込み口から環流ガスを吹き込み、
    (ii)下記式(1)で定義し、下記式(2)を満たす高さΔh[m]の溶鋼の盛上りを形成して復圧処理を行なう
    ことを特徴とする溶鋼の精錬方法。
    Δh[m]=2.0×10-3・H-1.3・ε2/3 ・・・(1)
    H[m]:浸漬上昇管の環流ガス吹込み位置から真空槽内の溶鋼湯面までの距離
    ε[W]:下記式で定義する溶鋼攪拌力
    ε[W]=0.00835・Uo 2・Q0
    o=(200/3π)・(Qo/D1 2・ρ)
    o=11.4・G1/3・D14/3・ln(P3/P11/3
    o[m/秒]:環流時の浸漬管内の溶鋼平均流速
    o[t/分]:溶鋼環流量
    G[NL/分]:吹き込みガス流量
    1[m]:浸漬管の内径
    1[Pa]:復圧開始前の真空槽内の圧力
    3[Pa]:環流ガス吹込み位置における静圧
    ρ[kg/m3]:溶鋼密度
    Δh[m]>2dS2 ・・・(2) dS2=(4/3π)・(Vs/D2 2
    s=(D1 2・dS1・π)/2
    S2[m]:真空槽内のスラグ厚
    s[m3]:真空槽内に持ち込まれるスラグ体積
    2[m]:真空槽の内径
    S1[m]:取鍋内のスラグ厚
  2. 前記真空脱ガス処理をRH式精錬装置で行なうことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の精錬方法。
  3. 前記RH式精錬装置で復圧を行なう際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。
  4. 前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の精錬方法。
  5. 前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶鋼の精錬方法。
  6. 前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の溶鋼の精錬方法。
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