JP2018103350A - 放電研削用砥石 - Google Patents

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Abstract

【課題】 表面粗さが小さく,硬質な金属炭化物被膜を形成できる放電研削用砥石を提供する.【解決手段】 放電加工と研削加工を同時に行う放電研削加工において,放電加工で移行堆積させた機能性被膜を,研削加工によって即座に仕上げ加工を行うことで,段取り替えなしで,表面粗さおよび形状精度が良い機能性被膜を形成できる放電加工用砥石を提供する.【選択図】図4

Description

本発明は,機能性表面を創成する放電研削用砥石に関するものである.より詳細には,切れ刃となる砥粒と炭化物形成能を有する金属および金属炭化物,炭素材料を含むボンドからなり,研削加工中に,油中での砥石と被加工物との間での放電においてボンド材を加工面に移行させ,被加工物の表面に,表面粗さの良い炭化物の硬質被膜を形成できる砥石に関する.
炭化チタン(TiC)粉体を焼結した電極を用いた放電加工では,連続的なパルス放電の熱により電極の一部が溶融し,被加工物に移行堆積してTiCの硬質被膜が形成されることが知られている.汎用放電加工機で,大気圧下で硬質被膜を形成でき,しかも形成した硬質被膜と母材の密着性が非常に良いという特徴,さらに成膜速度が早いという特徴がある.このため,耐摩耗性が必要となる摺動部材やワイヤーボンダー治工具などへの応用が期待されている.しかし,PVDやCVDなどのコーティング手法に比べて表面粗さが大きく,用途に応じて仕上げ加工が必要になると課題がある.
特許文献1記載の技術では,導電性粒子と絶縁性硬質粒子を少なくとも1つずつ含む放電表面処理用電極材が提案している.コーティング原料として硬質粒子を用い,放電表面処理により硬質な被膜を形成することが可能であるが,前記課題である表面粗さを改善する電極および加工方法ではなく,仕上げ研削加工が必要となる.
特許文献2記載の技術では,放電表面処理用電極材に導電性ダイヤモンドを加え,放電の安定性を改善した電極材が開示されている.放電が安定することで,表面粗さの僅かな改善が得られるが,放電加工は,研削加工に比べて表面粗さが大きいことから,前記課題である表面粗さを改善する電極および加工方法としては不十分である.
特許文献3記載の技術では,電解研削により,電解作用で表面改質を行う方法および装置が提案されている.研削を伴うため,表面粗さの改善は大いに見込めるが,放電を用いた表面改質に比べて,成膜速度が遅いこと,加工液に制限があること,金属をイオン化して被加工物に供給するため,利用できる金属に制限があるなどの課題が残る.
国際公開番号WO01/024961号公報 特開2013−095935号公報 特開2008−105124号公報
放電加工と研削加工を同時に行う放電研削加工において,放電加工で移行堆積させた機能性被膜を,研削加工によって即座に仕上げ加工を行うことで,段取り替えなしで,表面粗さおよび形状精度が良い機能性被膜を形成できる放電加工用砥石を提供することを目的とする.
上記の目的を達成するため、請求項1記載の放電研削用砥石は,砥粒と結合材とからなる砥粒層を有する放電研削用砥石であって,鉄よりも炭化物形成傾向の大きく,融点が2000℃以下である金属元素が原子組成百分率50%以上である結合材に,平均粒径が100μm以下である砥粒を砥粒層全体に対して体積分率35%以下で含有することを特徴とする.
請求項2記載の放電研削用砥石は,前記結合材中に,前記金属からなる金属炭化物を砥粒層全体に対して体積分率25%以上含有し,前記金属炭化物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする
請求項3記載の放電研削用砥石は,前記結合材がチタンであり,前記金属炭化物が炭化チタンであることを特徴とする.
請求項4記載の放電研削用砥石は,前記結合材中に,直径10nm以上,アスペクト比(=長さ/直径)30以上であるカーボン繊維を結合材中の体積分率1%から30%含有することを特徴とする.
請求項5記載の放電研削用砥石は,前記砥粒がダイヤモンド砥粒であり,前記結合材とダイヤモンド砥粒の界面に金属炭化物が存在することを特徴とする.
請求項6記載の放電研削用砥石は,前記結合材が,炭素元素と金属元素の原子組成比が異なる2種類以上の不定比金属炭化物からなり,いずれの不定比金属炭化物も定比の金属炭化物に比べて炭素元素の原子組成比が低いことを特徴とする.
請求項1記載の発明によれば,第1に,鉄よりも炭化物形成傾向の大きい金属を結合材の主成分として用いることにより,砥石と被加工物の間での加工油中のパルス放電によって被加工物表面に金属炭化物被膜を形成されるという効果がある.油中のパルス放電によって砥石より溶融除去された結合材である金属と,放電によって砥石と被加工物間に存在する加工油が分解した分解カーボンとが原料となり,被加工物表面で金属炭化物を生成する過程において,炭化物形成傾向の大きい金属ほど良質な金属炭化物を形成できるという効果がある.さらに,本発明の砥石を用いた放電研削加工の対象となる被加工物が,主に鉄を主成分とする鋼材であることから,鉄よりも炭化物形成傾向の大きいことにより,砥石の結合剤である金属が優先的に金属炭化物を形成できるという効果がある.
第2に,結合剤である金属の融点が2000℃以下であることにより,緻密に焼結した砥石であっても,油中のパルス放電によって砥石より結合材である金属を溶融除去できるという効果がある.結合材が低融点の金属であるほど,溶融除去される結合材である金属が多くなり,被加工物表面に形成される金属炭化物の成膜速度が向上するという効果がある.なお,結合材を緻密に焼結せず,ポーラスな仮焼結状態にすることで,成膜速度を上げる手法もあるが,その場合,結合材として砥粒を保持する能力が著しく低下し,研削能力を下げてしまうため,適切な手法とはいえず,結合材の金属の融点による効果を用いるべきである.
第3に,平均粒径が100μm以下である砥粒を体積分率35%以下で含有することにより,放電状態を安定させ,かつ結合材である金属の供給を確保できるという効果がある.加工油中のパルス放電は,一般に数十ボルトから数百ボルトの電圧下で行われるものであり,放電ギャップは数マイクロメートルから数十マイクロメートルである.本発明の目的である仕上げ粗さの良い金属炭化物被膜の形成においては,放電が発生する砥石と被加工物間の距離である放電ギャップは50μm以下に抑えることが望ましい.砥粒は一般にダイヤモンドやcBNなどの導電性の低い材料であるため,砥粒と被加工物の間ではなく,結合材と被加工物の間で放電が起こる.大きすぎる砥粒を用いた場合,砥石と被加工物の距離を拘束し,放電ギャップ以下にならず,放電が発生しなくなる.同様に砥粒の体積分率が高すぎると放電が安定せず,また原料となる結合材の供給が低下する.
請求項2記載の発明によれば,第1に,結合材中に,結合材と同じ金属からなる金属炭化物を砥粒層全体に対して体積分率25%以上含有することによって,加工油からの前記分解カーボンの供給によらず,良質な金属炭化物被膜を形成できるという効果,その結果,金属炭化物被膜の硬度が向上するという効果がある.
第2に,前記金属炭化物の平均粒径が10μm以下であることによって,仕上げ加工を意識した投入エネルギーの小さい,つまりパルスのピーク電流値やパルス幅の小さい放電加工条件において溶融除去される結合材の領域の体積に比べて,金属炭化物粒子のサイズが小さいことによって,放電によって効率良く金属炭化物粒子を溶融した結合材とともに,被加工物に供給できるという効果がある.
請求項3記載の発明によれば,前記結合材がチタンであり,前記金属炭化物が炭化チタンであることにより,炭化チタン被膜を形成できるという効果がある.
請求項4記載の発明によれば,前記結合材中に,直径10nm以上,アスペクト比(=長さ/直径)30以上であるカーボン繊維を体積分率1%から30%含有することにより,被加工物と砥石の間で発生する単発の放電によって電極表面に形成される放電痕の深さよりも長い繊維状の前記ナノカーボン材料であることを含有することによって,放電を安定させ,含有量によって電極の消耗を制御できるという効果がある.
請求項5記載の発明によれば,前記砥粒がダイヤモンド砥粒であり,前記結合材とダイヤモンド砥粒の界面に金属炭化物が存在することによって,研削加工時の砥粒保持力が向上し,研削加工が安定するという特徴がある.さらに,被加工物が鋼材の場合,ダイヤモンド砥粒表面の金属炭化物が被加工物との反応性を低下させ,砥粒の消耗を減少させる効果がある.
請求項6記載の発明によれば,前記結合材が,炭素元素と金属元素の原子組成比が異なる2種類以上の不定比金属炭化物からなり,いずれの不定比金属炭化物も定比の金属炭化物に比べて炭素元素の原子組成比が低いことによって,炭素との反応性を残しながら,砥石の剛性を高め,研削加工能力を高める効果がある.
以上の発明の効果をまとめると以下のようになる.
1)従来の放電加工のみの表面処理(放電表面処理)から,本発明の砥石を用いた放電研削加工に変更することにより,表面粗さを改善できるという効果がある.放電表面処理では,放電エネルギーを小さくしても,放電によって形成される放電痕のサイズ以下の表面粗さを得ることができない.一方,本発明の放電研削を用いることで,放電表面処理された表面を同時に研削することで,研削面で非常に表面粗さのよい機能性表面を得ることができるという効果がある.
2)結合材に硬質な炭化物を形成する金属を用いることによって,さらにその金属炭化物を含有させることによって,硬質炭化物を効率よく表面に供給でき,表面の硬質化を容易にする効果がある.
3)砥石に形成される放電痕よりも小さい硬質な金属炭化物を含有させることによって,硬質炭化物を効率よく表面に供給できるという効果がある.さらに,油中からの分解カーボンがなくても,硬質炭化物被膜を形成できるという効果がある.
4)適切な砥粒サイズの選定によって,またカーボン繊維の複合化によって,放電を安定させ,また結合材の消耗を制御することができるという効果がある.
5)結合材に不定比金属炭化物を用いる,あるいはダイヤモンド砥粒を選択し,ダイヤモンド表面に金属炭化物を形成することで,砥粒保持力を改善,砥石剛性,砥粒の摩滅を抑制する効果を発現できる.
以下、図を参照して本発明を説明する。この図および説明は単なる一例に過ぎず、本発明の全般的な概念を制限するものではない。
本発明の金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の金属炭化物およびカーボン繊維を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の2種類以上の不定比金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の放電研削用砥石を用いた放電研削加工時の砥石と被加工物間での金属炭化物被膜の形成と研削加工の概念図である. ピーク電流値Ipとパルス幅が表面粗さHに及ぼす影響の計算値である.[表1] 実施例で用いた放電研削加工条件である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,電流値Ip=8A,パルス幅Ton=8μs,休止時間Toff=8μsで放電研削を行ったときの切削速度に対するTi付着量(wt%)と加工速度(単位時間あたりの除去体積,mm/s)である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,パルス幅2μs,8μs(ぞれぞれ休止時間2μs,8μs),切削速度18.9m/minで放電研削を行ったときの電流値に対するTi付着量と加工速度である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,電流値8A,パルス幅2μs,休止時間2μs,切削速度18.9m/minで放電研削を行った加工面のSEM写真と炭素およびチタンの元素分布である.
本発明の放電研削用砥石は,軸付き砥石,平面研削砥石(研削ホイール),薄型切断砥石,研磨砥石など,一般の除去加工としての研削加工に用いられているすべての砥石の形態をとり得る.加工形態としては,穴加工,溝加工,平面加工,3次元形状加工,研磨などに用いることができる.本発明の放電研削用砥石は,回転する主軸あるいは往復する機構に取り付けて用いる.さらに,本発明の放電研削用砥石と被加工物を放電加工用電源に接続し,砥石と被加工物の間にパルス状の電圧・電流を印加しながら,研削を行う.放電ギャップの制御は必ずしも必要ではない.砥石と被加工物の間は,加工液を存在させることが望ましい.放電を伴う加工であるため,被加工物は基本的に導電性材料になる.
本発明の実施形態について図1から図4を参照して説明する.
図1は,本発明の金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図,図2は,発明の金属炭化物およびカーボン繊維を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図,図3は,本発明の2種類以上の不定比金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である.図4は,本発明の放電研削用砥石を用いた放電研削加工時の砥石と被加工物間での金属炭化物被膜の形成と研削加工の概念図である.
図1に示すように,本発明の実施形態に係る放電研削用砥石の砥粒層は,砥粒1と金属炭化物粒子2が結合材3に分散してなる.さらに,図2に示すように,砥粒1と金属炭化物粒子2が結合材3とともにカーボン繊維が分散して構成されていても良い.
この砥粒1は,ダイヤモンド,cBN(立方晶窒化ホウ素),炭化ケイ素などから選択することが望ましい.被加工物10が鋼材などの場合は,cBNを選択する方が望ましい.ただし,被加工物10の表面は,すぐに金属炭化物被膜6となるため,鋼材との反応性が問題となるダイヤモンド砥粒であっても良い.さらに,ダイヤモンド砥粒1と結合材3との界面1aに金属炭化物2を形成することで,被加工物が鋼材であったとしても,十分に加工することができる.
結合材3は,鉄よりも炭化物形成傾向の大きいTi,Nb,V,Ta,W,Mo,Cr,Mn,Zr,Hfの元素のうち,融点が2000℃以下である金属Ti,V,Cr,Mn,Zrを用いることが望ましい.
金属炭化物粒子6は,選択した結合材3である金属の炭化物であることが望ましい.つまり,結合材3がTi,V,Cr,Mn,Zrである場合,それぞれTi,V,Cr,Mn,Zrの炭化物であることが望ましい.さらに,放電による結合材の消耗を大きくし,被膜形成速度を上げたい場合は,熱伝導率が低い方が望ましく,Ti,V,Mn,Zrなどの30W/(m・K)以下の金属元素が望ましい.
カーボン繊維4は,直径10nm以上,アスペクト比(=長さ/直径)30以上である多層カーボンナノチューブ,カーボンファイバーが望ましい.
炭素元素と金属元素の割合が異なる2種類以上の不定比金属炭化物は,いずれの不定比金属炭化物も定比の金属炭化物に比べて炭素元素の割合が低い組成比とする.例えば金属元素をチタンとした場合,定比の炭化チタンのチタンと炭素の原子組成比は5:5であるが,炭素元素の割合が高い不定比金属炭化物2aのチタンと炭素の原子組成比は6:4から7:3程度が望ましく,炭素元素の割合が低い不定比金属炭化物3bのチタンと炭素の原子組成比は,9:1から8:2程度が望ましい.
図4に示すように,本発明の放電研削用砥石による金属炭化物被膜6の形成過程は以下のとおりである.加工液7に満たされた本発明の放電研削用砥石と被加工物10の間に連続的にパルス電圧Vが印加される場合,導電性を有する結合材3(もしくは金属炭化物粒子2,不定比金属炭化物2a,3b)と被加工物10(もしくは形成された金属炭化物被膜6)とのギャップGが印加電圧において絶縁破壊距離未満であるとき,アーク放電が起こり,放電痕の直径Dに相当する放電柱5が発生する.放電柱5の周辺は,高温となり,放電加工用砥石の砥粒層の一部が溶融し,結合材3および金属炭化物粒子2等が被加工物10に移行堆積して金属炭化物被膜6が形成される.この移行にあたり,加工液7として炭化水素系の加工油を用いた場合,炭化水素が分解し,分解カーボンが結合材3の金属と結合し金属炭化物を形成する.最大被膜厚さHの金属炭化物被膜6は,被加工物10と溶け合っており,表面ほど金属炭化物濃度が高くなる.この段階で,金属炭化物被膜6の表面は放電面9であり,放電痕周辺部で大きく盛り上がり,表面粗さを大きくする.ここで,放電痕の凹凸の大きさをHとする.結合材の移行においては,この放電痕の盛り上がりによる結合材3と被加工物10の短絡が関与する場合もある.本発明の放電研削用砥石の目的の一つが,この放電痕の凹凸の大きさHによる表面粗さを小さくすることである.前記放電加工のプロセスと同時に,放電研削加工では,回転等により砥石表面に存在する砥粒1が被加工物10および形成した金属炭化物被膜6を除去する.金属炭化物被膜6の放電面9は,この研削加工によって研削面8になり,表面粗さが向上する.また,この研削加工によって,金属炭化物被膜6の厚みはHとなる.
これらの放電研削加工のプロセスを鑑み,本発明の実施形態について,各構成部位の望ましい寸法について以下にまとめる.
結合材3と被加工物10の放電ギャップGは50μm以下に抑えることが望ましい.したがって,絶縁物である砥粒1は,この放電ギャップにおいて脱落し,放電を妨げないようにしなければならない.砥粒1は,結合材3への埋め込み率が50%以下になると容易に脱落するようになるため,放電ギャップGは50μm以下で脱落する砥粒1の平均粒径dは,100μm以下が望ましい.ただし,これは印加電圧による放電ギャップに依存するため,印加電圧が低い放電条件においては,さらに小さい砥粒が望ましいことになる.
砥粒1の体積分率が高いと研削加工による除去加工が主な加工となり,金属炭化物の形成速度が低下する.ある程度の金属炭化物被膜6の形成速度を得たい場合は,砥粒1の体積分率は35%以下が望ましい.
金属炭化物粒子2の平均粒径dの最適寸法は,放電による結合材3の除去領域と関係するため,放電条件によって変化する.図5にピーク電流値Ipとパルス幅が表面粗さHに及ぼす影響を示す.仕上げの表面粗さを重視する場合,放電面9の表面粗さHが10μm以下のなる放電条件として,ピーク電流値Ipが8Aの場合にパルス幅TONは8μs以下,ピーク電流値Ipが2Aの場合にパルス幅TONは64μs以下が望ましい.このときに結合材3に形成される放電痕(除去領域)を考慮すると,金属炭化物粒子2は放電によって結合材とともに除去されなければならないため,放電面9の表面粗さH以下,つまり平均粒径dは10μm以下が望ましい.特に金属炭化物粒子2を炭化チタンとした場合は,炭化チタン粒子の平均粒径dは2〜3μm程度が良い.
放電の安定化に用いるカーボン繊維は,金属炭化物粒子2とは異なり,放電によって除去されてはいけないため,アスペクト比が高く,長い方が良い.直径150nmのカーボンナノチューブを用いた場合,前記放電加工条件においてカーボンナノチューブの長さは10−20μm程度あることが望ましい。
なお,本発明に包含される権利範囲は,これらの実施形態に限定されないものである.
(通電焼結による放電研削用Ti砥石の作製)
通電焼結法によるTi砥石の製造には,平均粒径45μmの純Ti粉末,e平均粒径2〜3μmのTiC粉末,平均粒径50μmのダイヤモンド砥粒(Sandvik Hyperion製MBG−600)を用いた.純チタン粉末,ダイヤモンド砥粒を自転公転ミキサー(倉敷紡績製KK−250S)で混合した後,黒鉛型に充填した.砥石Aは,純チタン粉末を75vol%,ダイヤモンド砥粒を25vol%を混合した純Ti砥石とした.砥石Bは,純チタン粉末を50vol%,TiC粉末を25vol%,ダイヤモンド砥粒を25vol%を混合したTiC砥石とした.
プラズマ複合材料焼結装置(エス・エス・アロイ製CSP−V−601201)を用い,チャンバー内を真空にした後,パルス通電により,焼結温度1200℃まで加熱し,加圧力30MPaにて30分保持し,直径50mmのTiを結合材とするダイヤモンド複合焼結体を成形した.この手法で形成した焼結体は,ダイヤモンド砥粒と結合材であるTiとの界面で炭化チタン層を形成している.この焼結体からワイヤーカット放電加工によってTi砥石を切り出し,超硬シャンクに取り付けて直径6mmの軸付き砥石を作製した.
(放電研削加工条件)
表1に放電研削加工条件を示す.形彫放電加工機(三菱電機製EX−8)の回転スピンドルに砥石A(純Ti砥石)および砥石B(TiC砥石)を取り付けて,被加工物の側面加工を行った.被加工物は,プリハードン鋼G−star,炭素鋼S50Cとした.砥石の送りは,ギャップ電圧をフィードバックして送りを制御するサーボ送り制御とした.
図6(a),(b)に,砥石A(純Ti砥石)を用い,プリハードン鋼に対して,電流値Ip=8A,パルス幅Ton=8μs,休止時間Toff=8μsで放電研削を行ったときの切削速度に対するTi付着量(wt%)と加工速度(単位時間あたりの除去体積,mm/s)を示す.以降,Ti付着量は,エネルギー分散型X線分析装置(EDS)で分析したものである.切削速度の増加に伴い,Ti付着量が減少し,加工速度が増加している.切削速度が増加すると,加工面の放電痕が少なくなり,研削痕が多く観察されるようになる.これは,切削速度の増加に伴い,放電によるTiの移行堆積よりも,研削による除去が支配的になったためである.
図7(a),(b)に,砥石A(純Ti砥石)を用い,プリハードン鋼に対して,パルス幅2μs,8μs(ぞれぞれ休止時間2μs,8μs),切削速度18.9m/minで放電研削を行ったときの電流値に対するTi付着量と加工速度を示す.電流値の増加に伴い,加工速度が増加している.これは,放電エネルギーの増加に伴い,放電によるTiの移行堆積よりも,放電による除去が支配的になることが分かる一方,Ti付着量は,パルス幅2μsの場合,電流値に対してわずかに増加,パルス幅8μsの場合,電流値に対してわずかに減少する.
図8(a),(b),(c)に,砥石A(純Ti砥石)を用い,プリハードン鋼に対して,電流値8A,パルス幅2μs,休止時間2μs,切削速度18.9m/minで放電研削を行った加工面のSEM写真と炭素およびチタンの元素分布を示す.図8(a)より,加工面には研削痕が見られる.この研削面において,図8(b),(c)より,加工油から供給された炭素とTi砥石より供給されたチタンの分布が確認できる.
被加工物表面の加工変質層の厚さは,数μmから約20μmであった.EDS分析により,この加工変質層には電極(砥石)のボンド材であるTiの分布が確認できた.
砥石A(純Ti砥石)を用いて,炭素鋼(310.4HV,σ=12.7)に対して,電流値4.5A,パルス幅2μs,休止時間64μs,切削速度3.77m/minで放電研削を行った加工面(加工変質層)のビッカース硬度を断面から測定した.Ti砥石による放電研削面に形成された被膜のビッカース硬度は898.3HV(σ=142.8)であり,被加工物である炭素鋼に比べて約3倍となった.加工面の硬度は,Ti付着量およびTiCの形成に依存する.このため,加工条件の他に,Ti供給量を支配するTi砥石の焼結密度,ボンド材にTiCを含有させるなど,Ti付着量およびTiCの形成を促進させる砥石焼結条件,組成を検討する必要がある.さらに放電ギャップを支配するダイヤモンド砥粒の粒径などによっても,Ti付着量および加工面の硬度を制御できると考えられる.
図9に,砥石B(TiC砥石)のうち,ダイヤモンド砥粒を含まない部分の断面SEM写真を示す.Tiを主成分とする結合材は,Ti粉末とTiC粉末の混合比から,全体としてチタンと炭素の原子組成比は2:1である.しかし,図9より,2つの不定比炭化チタンの領域が見られる.EDS分析の結果,図9中の領域Aではチタンと炭素の原子組成比はほぼ9:1で,領域Bではチタンと炭素の原子組成比はほぼ6:4であった.この2つの不定比炭化チタンを含む結合材による砥石B(TiC砥石)を用いて,表1の放電研削条件で加工を行ったところ,純Ti砥石と同様に,被加工物にTiC被膜を形成することができ,被加工物表面の硬度を向上させることができた.
通電焼結法により作製したチタンボンド焼結砥石を用いた放電研削加工において,被加工物表面にチタンが移行堆積し,硬質被膜を形成すること.さらに,研削痕の表面においてもチタンの分布が見られることから,従来の放電加工による硬質被膜形成に比べて,表面粗さの良い硬質被膜を形成できることを示した.
1 砥粒
1a 砥粒と結合材の界面
2 金属炭化物粒子
2a 不定比金属炭化物(炭素元素の割合が高い金属炭化物)
3 結合材(炭化物形成能を有する金属母相)
3a 不定比金属炭化物(炭素元素の割合が低い金属炭化物)
4 カーボン繊維
5 放電柱
6 金属炭化物被膜
7 加工液
8 研削面
9 放電面
10 被加工物
以下、図を参照して本発明を説明する。この図および説明は単なる一例に過ぎず、本発明の全般的な概念を制限するものではない。
本発明の金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の金属炭化物およびカーボン繊維を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の2種類以上の不定比金属炭化物を含む放電研削用砥石の砥粒層を示す部分断面図である. 本発明の放電研削用砥石を用いた放電研削加工時の砥石と被加工物間での金属炭化物被膜の形成と研削加工の概念図である. ピーク電流値Ipとパルス幅が表面粗さHに及ぼす影響の計算値である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,電流値Ip=8A,パルス幅Ton=8μs,休止時間Toff=8μsで放電研削を行ったときの切削速度に対するTi付着量(wt%)と加工速度(単位時間あたりの除去体積,mm/s)である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,パルス幅2μs,8μs(ぞれぞれ休止時間2μs,8μs),切削速度18.9m/minで放電研削を行ったときの電流値に対するTi付着量と加工速度である. 純Ti砥石を用い,プリハードン鋼に対して,電流値8A,パルス幅2μs,休止時間2μs,切削速度18.9m/minで放電研削を行った加工面のSEM写真と炭素およびチタンの元素分布である. 砥石B(TiC砥石)のうち,ダイヤモンド砥粒を含まない部分の断面SEM写真である.

Claims (6)

  1. 砥粒と結合材とからなる砥粒層を有する放電研削用砥石であって,鉄よりも炭化物形成傾向の大きく,融点が2000℃以下である金属元素が原子組成百分率50%以上である結合材に,平均粒径が100μm以下である砥粒を砥粒層全体に対して体積分率35%以下で含有することを特徴とする放電研削用砥石.
  2. 前記結合材中に,前記金属からなる金属炭化物を砥粒層全体に対して体積分率25%以上含有し,前記金属炭化物の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の放電研削用砥石
  3. 前記結合材がチタンであり,前記金属炭化物が炭化チタンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放電研削用砥石
  4. 前記結合材中に,直径10nm以上,アスペクト比(=長さ/直径)30以上であるカーボン繊維を結合材中の体積分率1%から30%含有することを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の放電研削用砥石
  5. 前記砥粒がダイヤモンド砥粒であり,前記結合材とダイヤモンド砥粒の界面に金属炭化物が存在することを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載の放電研削用砥石
  6. 前記結合材が,炭素元素と金属元素の原子組成比が異なる2種類以上の不定比金属炭化物からなり,いずれの不定比金属炭化物も定比の金属炭化物に比べて炭素元素の原子組成比が低いことを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の放電研削用砥石
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN117840824A (zh) * 2024-03-08 2024-04-09 华侨大学 一种用于半导体晶圆表面的磨削方法
CN117840824B (zh) * 2024-03-08 2024-05-28 华侨大学 一种用于半导体晶圆表面的磨削方法

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