JP2018098455A - エッチング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することができるエッチング方法を提供することを課題とする。【解決手段】基板を溶融アルカリでエッチングするエッチング方法であり、高温かつ酸素を含む環境下で基板PLの被エッチング面である基板面PLSに所定厚みの酸化被膜を形成しつつ、所定の高温域にした溶融アルカリを用いてこの酸化被膜を除去する。【選択図】図1

Description

本発明は、基板を溶融アルカリでエッチングするエッチング方法に関する。
半導体の製造などでは、SiC(シリコンカーバイド)などの基板をエッチングして鏡面化することが広く行われている。なお、SiC基板は、その優れた特性から次世代のパワー半導体基板として期待されている。
ダメージの少ない良好な鏡面を基板に形成することは、高性能で歩留まりの高い半導体装置を製造する上で重要である。
特開2014-22677号公報
ところで、ダメージの少ない良好な鏡面を基板に形成するには、必要な処理工程数が多く、多くの時間およびコストがかかるという課題がある。また、欠陥のない状態を得るためには精密な研磨加工が必要なので、必要な処理工程数が多くなり、これも多くの時間およびコストがかかるという要因になっている。
特にSiC基板は、高硬度であり、一部の薬品を除いては化学的に安定な難加工材料、難削材料であるため、研磨、研削に時間がかかり、これらの課題が一層顕著となる。
本発明は、上記課題に鑑み、エッチピットの存在しない状態でエッチングすることが可能で、結果として欠陥の存在しない表面状態と鏡面とを有するウエハを製造可能とするエッチング方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、検討を重ね、溶融アルカリ(溶融しているアルカリ)によるSiCウエハの欠陥を調べる方法に着目した。この方法は、SiCウエハ表面近傍に存在する欠陥を検出する方法であり、溶融アルカリにSiCウエハを浸漬することにより欠陥がエッチピットとして観察されるものである。
そして、実験を重ねて検討することで、基板を溶融アルカリに浸漬せずに、酸化被膜を成形しながら連続的にエッチングすることでエッチピットの存在しない鏡面のウエハを得ることが可能であることを見出した。そして更に実験を重ねて検討を加え、本発明を完成するに至った。
上記課題を解決するための本発明の一態様によれば、基板を溶融アルカリでエッチングするエッチング方法であって、高温かつ酸素を含む環境下で前記基板の被エッチング面に所定厚みの酸化被膜を形成しつつ、所定の高温域にした溶融アルカリを用いて前記酸化被膜を除去することを特徴とするエッチング方法が提供される。これにより、エッチピットの存在しない状態でエッチングすることが可能で、結果として欠陥の存在しない表面状態と鏡面とを有するウエハを製造可能とするエッチング方法とすることができる。
前記高温かつ酸素を含む環境下として、大気中で前記溶融アルカリを用いる環境下としてもよい。
前記高温かつ酸素を含む環境下として、前記被エッチング面に酸素ガスを供給する空間で前記溶融アルカリを用いる環境下としてもよい。
前記基板の被エッチング面に前記溶融アルカリを流すことで前記酸化被膜を除去してもよい。
この場合、前記被エッチング面に前記溶融アルカリを流す際、前記被エッチング面を上面側にして前記基板を水平面に対して所定角度傾斜させ、前記被エッチング面の上部側から下部側へ前記溶融アルカリを流してもよい。
前記溶融アルカリとして溶融水酸化ナトリウム(溶融している水酸化ナトリウム)を用いてもよい。
前記所定の高温域を600℃以上としてもよい。
この場合、前記所定の高温域を650〜1100℃の範囲としてもよい。
前記所定厚みを10〜80μmの範囲としてもよい。
前記基板としてSiC基板を用いてもよい。
この場合、レーザ光を集光するレーザ集光手段をSiC単結晶部材の被照射面上に非接触に配置する工程と、前記レーザ集光手段により、前記被照射面にレーザ光を照射して前記SiC単結晶部材内部に前記レーザ光を集光するとともに、前記レーザ集光手段と前記SiC単結晶部材とを相対的に移動させて、前記SiC単結晶部材内部に2次元状の改質層を形成する工程と、前記改質層により分断されてなる単結晶層を前記改質層から剥離することでSiC単結晶基板を形成する工程と、を行い、前記剥離によって得られた前記SiC単結晶基板を前記SiC基板として用いてもよい。
本発明によれば、良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することができるエッチング方法を提供することができる。
(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の一実施形態に係るエッチング方法で基板を順次エッチングするように浸漬していくことを説明する模式的な正面図である。 図1(b)の部分拡大側面図である。 本発明の一実施形態に係るエッチング方法で、使用する基板を形成するための基板加工装置の一例を示す斜視図である。 図3に示した基板加工装置の補正環内のレンズを説明する側面図である。 本発明の一実施形態の変形例に係るエッチング方法で基板をエッチングすることを説明する模式的な側面図である。 実験例1で、エッチング後の基板面の粗さを示すグラフ図である。 実験例1で、エッチング後の基板面の非浸漬部における界面付近を示す写真図である。 実験例1で、エッチング後の基板面の浸漬部を示す写真図である。 実験例1で、エッチング後の非浸漬部をAFMで撮像して得られた斜視図である。 実験例2で、エッチング温度とエッチングレートとの関係を示すグラフ図である。 実験例2で、(a)は浸漬部におけるエッチング時間と粗さとの関係を示すグラフ図、(b)は非浸漬部の界面付近におけるエッチング時間と粗さとの関係を示すグラフ図である。 実験例2で、(a)は窒素流量とエッチングレートとの関係を示すグラフ図、(b)は窒素流量と粗さとの関係を示すグラフ図である。 実験例2で、(a)は空気流量とエッチングレートとの関係を示すグラフ図、(b)は空気流量と粗さとの関係を示すグラフ図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、すでに説明したものと同一または類似の構成要素には同一または類似の符号を付し、その詳細な説明を適宜省略している。
図1(a)〜(c)は、それぞれ、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係るエッチング方法で、基板を順次エッチングするように浸漬していくことを説明する模式的な正面図である。図2は図1(b)の部分拡大側面図である。
本実施形態に係るエッチング方法は、基板を溶融アルカリでエッチングする(溶融アルカリエッチング)エッチング方法であり、高温かつ酸素を含む環境下で基板の被エッチング面に所定厚みの酸化被膜を形成しつつ、所定の高温域にした溶融アルカリを用いてこの酸化被膜を除去する方法である。
本実施形態では、基板の一例としてSiC基板を用いる。すなわち、高温かつ酸素を含む環境下としては大気中で溶融アルカリALを用いる環境下とし、大気中の酸素でSiC基板PLの被エッチング面である基板面PLSを酸化させることで所定厚みの酸化被膜を形成しつつ、所定の高温域にした溶融アルカリALでこの酸化被膜を除去する。
具体的には、大気中で、容器10に入れた溶融アルカリALにSiC基板PLをまず入れる(図1(a)参照)。そして、SiC基板PLを一定速度で徐々に引き上げていく(図1(a)〜(c)参照)。従って、SiC基板PLの基板面PLSにおける溶融アルカリALの界面位置F(溶融アルカリALの液面位置)が基板上端から下方へ順次移動していく。なお、図1、図2に示すように、本明細書で界面位置Fとは溶融アルカリALの液面位置と同じである。
溶融アルカリALが配置されていることにより、その周囲の大気の温度が上昇する。従って、大気中の酸素によりSiC基板PLの基板面PLSは酸化され易い環境となる。そして、SiC基板PLの界面付近Vでは、大気中の酸素によって酸化反応が効率良く進み、酸化被膜が効率良く形成される。そして、これと併行して溶融アルカリALによって酸化被膜が除去されることで良好なエッチングが高速で行われる。従って、このようにSiC基板PLにおける溶融アルカリALの界面位置Fを順次移動させていくこで、高硬度で難加工材料であるSiC基板PLであっても、エッチングされる面の欠陥も除去され、基板面PLSに良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することができ、
る。すなわち、SiC基板全部を溶融アルカリALにどぶ漬けする(基板全体を浸漬部にする)した状態でエッチングすることに比べて遥かに短時間でこの良好な鏡面を基板全面にわたって形成することができる。どぶ漬けのままでは酸素の影響を受け難く、安定した酸化被膜を形成できないので、通常エッチングと同様なエッチピットを生じる状態にしかならないためと考えられる。
SiC基板PLの引き上げ速度(上昇速度)は、酸化被膜の厚さや酸化被膜形成速度とエッチング速度との関係を考慮し、溶融アルカリの種類、温度、ガス雰囲気中の酸素濃度、などに応じ、良好なエッチングが行われるように決定する。酸化被膜を除去することで等方性エッチングを行うことが好ましく、基板面PLSの欠陥部分が先にエッチングされる異方性エッチングは避けるほうが好ましい。
ここで、溶融アルカリとして溶融水酸化ナトリウムを用いると、安価で入手し易い材料を用いて上記効果を奏することができる。
なお、溶融アルカリALにSiC基板PLを上方から一定速度で徐々に下降させることで、SiC基板PLにおける溶融アルカリALの界面位置F(溶融アルカリALの液面位置)を基板上方へ順次移動させても、SiC基板PLの基板面PLSに良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することができる。
溶融アルカリとしては、溶融水酸化ナトリウム(NaOH)、溶融水酸化カリウム(KOH)などが挙げられるが、コストなどの観点では溶融水酸化ナトリウムSHL(図1、図2参照)が好ましい。
この場合、水酸化ナトリウムを600℃以上(更に好ましくは650〜1100℃の範囲)にした溶融水酸化ナトリウムを用いると、このような高速で良好なエッチングを行い易い。なお、1000℃以上では後述の図10には示された750℃のエッチングレートよりももっと高いエッチングレートになる。
また、溶融アルカリALの温度を高くしていくとエッチングレートが大きく上昇してくとともに界面付近Vの粗さを短時間で小さくすることができるので(後述の実験例2、図10、図11(b)も参照)、基板面PLSの凸部に溶融アルカリALを振りかけて効率的に平滑化させてもよい。
また、基板面PLSに温度分布を形成して温度の高い基板面部分でのエッチングレートを上げることで、基板面PLSの平面度を調整することも可能である。この温度分布は例えばレーザ光照射などで行うことができる。
また、酸化被膜の所定厚みは10〜80μmの範囲とすることが好ましい。10μmよりも薄いと、エッチング量が不足し易くなる懸念があり、80μmよりも厚いと、酸化被膜が厚すぎてエッチング効果が低下し、酸化被膜が残り易くなる。
SiC基板PLとしては、SiC単結晶部材から切り出したものであってもよいし、或いはSiC単結晶部材から剥離させたものであってもよい。
SiC単結晶部材から剥離させてSiC基板PLを得るには、例えば以下のようにして得る。まず、図3に示すように、XYステージ11上にSiC単結晶部材20を載置する。そして、レーザ光Bを集光するレーザ集光手段14をSiC単結晶部材20の被照射面20r上に非接触に配置する工程を行う。
そして、レーザ集光手段14により、SiC単結晶部材20(図3では、一例として基板状で描いている)の被照射面20rにレーザ光Bを照射してSiC単結晶部材20内部の所定厚み位置にレーザ光Bを集光するとともに、レーザ集光手段14とSiC単結晶部材20とを相対的に移動させて、SiC単結晶部材20の内部に2次元状の改質層22を形成する工程を行う。
更に、改質層22により分断されてなる単結晶層を改質層22から剥離することでSiC単結晶基板を形成する工程を行う。この剥離によって得られたSiC単結晶基板をSiC基板PLとして用いる。これにより、所定厚みのSiC単結晶基板の剥離面に、エッチングによって良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することができる。
そしてこの剥離面(基板面)の表面粗さが粗くても剥離面の凸部に溶融アルカリALを振りかけて効率的に平滑化させてもよく、また、剥離面に温度分布を形成して温度の高い基板面部分でのエッチングレートを上げることで剥離面の平面度を調整してもよい。
用いるSiC単結晶部材20は、図3に示すように基板状であってもよく、これにより、改質層22からの剥離によって所定厚みの2枚のSiC単結晶基板を得ることが可能である
また、レーザ集光手段14は、補正環13と、補正環13内に保持された集光レンズ15とを備えていて、SiC単結晶部材20の屈折率に起因する収差を補正する機能、すなわち収差補正環としての機能を有していてもよい。具体的には、図4に示すように、集光レンズ15は、空気中で集光した際に、集光レンズ15の外周部Eに到達したレーザ光Bが集光レンズ15の中央部Mに到達したレーザ光Bよりも集光レンズ側で集光するように補正する。つまり、集光した際、集光レンズ15の外周部Eに到達したレーザ光Bの集光点EPが、集光レンズ15の中央部Mに到達したレーザ光Bの集光点MPに比べ、集光レンズ15に近い位置となるように補正する。これにより、レーザ光の集光によって形成される加工痕のレーザ照射方向における長さを短く、すなわち改質層22の厚みを薄くし易い。
このように改質層22の厚みを薄くするには、この集光レンズ15を、例えば、空気中で集光する第1レンズ16と、この第1レンズ16とSiC単結晶部材20の間に配置される第2レンズ18と、で構成する。そして、補正環13の回転位置を調整すること、すなわち第1レンズ16と第2レンズ18との間隔を調整することにより、集光点EPと集光点MPとの間隔が調整できるようになっており、レーザ集光手段14は、簡単な構成で補正環付きレンズとしての機能を有する構成にされている。
(変形例)
以下、容器内の溶融アルカリを流動させつつエッチングを行う例を説明する。本変形例では、図5に示すように、電気炉30と、電気炉30内に設置され上面側に基板を保持する基板保持部32と、溶融アルカリを貯留して供給口34mから供給可能なタンク34と、基板保持部32上の基板面PLSを流れた溶融アルカリALを流入させて収容する収容部36とを配置する。
基板保持部32には、上面側で基板PL(SiCウエハ)を保持する傾斜保持板38を設けておく。この傾斜保持板38としては、基板PL上部へ流された溶融アルカリALを基板PL下方へ流すように水平方向に対して傾斜角度可変に傾斜していて、かつ、供給口34mに対して基板PL上部全体にわたって水平移動(紙面直交方向に移動)できる構成にしておく。なお、基板PL上部へノズルから溶融アルカリALを吹きかけてもよく、また、傾斜保持板38を回転軸まわりに回転可能な構成にしてもよい。
また、電気炉30には、開閉バルブ39を介して酸素供給部40(例えば酸素ボンベ)を接続する。そして電気炉30には開閉バルブ42を接続し、電気炉内の気体を放出可能にしておく。
本変形例では、酸素雰囲気にした電気炉30内で、基板PLの被エッチング面である基板面(基板上面)PLSにタンク34から溶融アルカリALを流しつつ、傾斜保持板38を水平移動(紙面直交方向に移動)させて基板PL上部全体にわたって溶融アルカリALが流れるようにする。電気炉30内の温度、溶融アルカリALの温度、溶融アルカリALの流量、基板PLの移動速度などは、基板PLの被エッチング面である基板面PLSに形成される酸化被膜が効率良く除去されていくように調整する。
本変形例により、基板面PLSに良好な鏡面を広範囲にわたって高速で形成することを高効率で行うことができる。
なお、本変形例のように電気炉内の全域を酸素で置換しなくても、少なくとも被エッチング面(基板面)を酸素で覆うようにすることで、本変形例と同等の効果が得られる。
<実験例1(ウエットエッチングによる高速鏡面化現象の確認)>
本実験例では、溶融NaOH(溶融水酸化ナトリウム)にSiCウエハを半分程度に浸漬することで、溶融NaOHに浸漬している浸漬部IMと、溶融NaOHに浸漬していない非浸漬部NIMとが生じる状態でエッチングした。なお、以下の実験例で用いたSiCウエハは、前加工としてダイヤモンドホイールの#1000で表面を研削したものである。
(実験条件および実験方法)
本発明者は、Ni(ニッケル)製のるつぼに固形のNaOHを約5g入れ,電気炉で加熱して750℃の溶融状態にし、Ni線で固定したSiCウエハ(SiC基板)を溶融したNaOHに半分程度に浸漬し、20分間のエッチングを行った。使用したウエハはオフ角4°、10mm角の単結晶4H-SiCウエハである。前加工としてはダイヤモンドホイール(SD#1000)によって研削を施した。エッチグレートの評価はエッチング前後の厚さの差分から求めた。粗さ測定には触針式粗さ測定機(Taylor Hobson 社製PGI840)を用いた。
(エッチング面の外観と形状)
図6にエッチング後のSiCウエハ表面の形状を示す。図6を得るための計測では、基板面で直線に沿った表面の高さを計測した。
図6からは、浸漬部IMよりも非浸漬部NIMの方がエッチングで除去されていることが判る。特に非浸漬部NIMでは、界面位置Fから1mm離れた領域では浸漬部IMよりも60μmも多く除去されていた。
(エッチング表面の詳細観察)
また、浸漬部IMと非浸漬部NIMの界面付近Vとをレーザ顕微鏡像によって観察し撮像した。撮像結果をそれぞれ図7、図8に示す。
浸漬部IMではエッチピットの発生が観察されたが(図8参照)、非浸漬部NIMではエッチピットのない平滑面であることが確認された(図7参照)。
さらにAFMで非浸漬部NIMを1μm×1μmで計測した結果を図9に示す。この計測の結果、粗さが0.54nmRa、8.7nmRzの鏡面であることが確認された。
<実験例2(エッチングの基礎特性の調査)>
本実験例では、エッチングの特性が温度、ガス雰囲気でどのように影響されるかを調べる実験を行った。
(温度が到達面粗さとエッチングレートとに及ぼす影響)
実験例1の実験方法を基本にして、実験時間を20〜120分、温度を600〜750℃としてエッチング実験を行った。本実験例では、浸漬部IMと非浸漬部NIMの界面付近Vとについて、エッチング温度とエッチングレーとトの関係を調べた。実験結果を図10に示す。
浸漬部IM、界面付近Vとも、高温度ほどエッチングレートは大きくなる傾向があり、大きくなる割合は両者とも同程度であることが判った。そして、界面付近Vでのエッチングレートは、浸漬部IMよりも2〜3 倍程度高くなっていた。とくに750℃では289μm/h と高い値となった。
また、図11(a)に浸漬部IMのエッチング面の粗さを示し、図11(b)に非浸漬部NIMの界面付近Vのエッチング面の粗さを示す。浸漬部IMでは一度粗さが増大し、その後は減少する傾向が見られた。エッチング面の観察結果から考察すると、エッチング初期でダイヤモンド研削による潜傷が現れ、その後徐々に滑らかになるためであると推察される。
また、浸漬部IMではエッチングレートが低く、120分間の実験では浸漬部IMの粗さを小さくするには不十分な時間であったと思われる。ただし、エッチピットが増加していく傾向が見られることから鏡面化への適用は難しいものと思われた。
一方、非浸漬部NIMでは700℃以上になると到達面粗さ1.4nmRaに達していることが判った。そして、エッチング面の観察結果からはどの条件でもエッチピットの発生は見られなかった。このエッチピットについては、エッチングレートが23μm/hと低い処理条件である600℃120分のエッチング処理後の観察結果からも発生は見られなかった。
(雰囲気が粗さとエッチングレートとに及ぼす影響)
実験例1の実験条件を基本にして、実験時間を30分間とし、ガス雰囲気を大気の場合と窒素(酸素を排除して不活性にするためのガス)の場合とでそれぞれ実験を行い、その影響を調査した。
(窒素雰囲気の影響)
電気炉内に窒素を流しながらエッチングを行った。浸漬部IMと非浸漬部NIMの界面付近Vとについて、窒素流量とエッチングレートとの関係を図12(a)に、窒素流量と粗さとの関係を図12(b)にそれぞれ示す。なお、図12(a)で窒素流量0L/minは、窒素を流さないので、電気炉内が大気雰囲気のままであることを意味する。
エッチングレートは、浸漬部IM、界面付近Vとも、窒素流量10L/minでいずれも大きく低減しており、これ以上の流量ではこれ以上の変化があまり見られなかった。
一方、粗さについては、浸漬部IM、界面付近Vとも、窒素流量が増えるほど増大する傾向にあった。従って、エッチング時にはまず研削による潜傷が露出し,その後消失することで鏡面になると推察される。エッチング面の観察結果からは、浸漬部IM、界面付近Vとも潜傷が観察されており、粗さの増大傾向はエッチングレートの低下による鏡面プロセスの鈍化が原因であると考えられる。
(大気の影響)
次に、大気の影響を調べるためのエッチングを行った。浸漬部IMと非浸漬部NIMの界面付近Vとについて、空気流量とエッチングレートとの関係を図13(a)に、空気流量と粗さとの関係を図13(b)にそれぞれ示す。浸漬部IM、界面付近Vとも、空気流量に関わらずエッチングレートはほとんど変化しなかった。しかし、同じエッチング時間でも浸漬部IMでは空気流量が増加するほど潜傷(エッチプット)が除去されていくことがわかった。また空気流量が20L/minでは界面付近Vに膜状の凹凸ができ、粗さが著しく増大した。
なお、大気中および空気流量10L/minまでで目的とするエッチング状態が得られるという結果になった。空気流量がこれ以上だと酸化被膜が過剰に発生し好ましくない可能性がある。ただし空気流量のみではなくエッチング温度と溶融アルカリの液量との関係を調整することで、空気流量がこれ以上であっても効果が得られる可能性がある。
以上の実験結果、推察により、エッチングには空気が作用していることがわかった。よって、非浸漬部NIMではアルカリ蒸気もしくは表面張力による溶融アルカリの薄膜がSiCと反応する際に大気の酸素を取り込んで酸化を促進させていることが考えられる。
<実験例1、2のまとめ>
以上説明したように、実験例1、2により、溶融NaOHを用いたSiC基板のウエットエッチングで非浸漬部におけるSiC面の高能率な鏡面化現象を見出した。その基礎特性の調査のための実験から、750℃、20分間のエッチングで到達面粗さ1.4nmRaとなり、750℃、45 分間でエッチングレートが最大の304μm/h となることがわかった。さらにエッチング雰囲気においては、空気が作用していることがわかった。
以上、実施形態および実験例を説明したが、これらの実施形態および実験例は、この発明の技術的思想を具体化するための例示であり、発明の範囲はそれらに限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
また、以上の実施形態および実験例ではSiC基板をエッチングする例で説明したが、基板としてはこれら以外の種類の基板(例えばシリコン単結晶基板)であっても適用可能である。
本発明により、エッチングを効率良く行うことができることから、半導体分野、ディスプレイ分野、エネルギー分野などの幅広い分野において利用可能であり、例えば単結晶基板であって、Si基板(シリコン基板)であれば太陽電池に応用可能であり、また、GaN系半導体デバイスなどのサファイア基板などであれば、発光ダイオード、レーザダイオードなどに応用可能であり、SiCなどであればSiC系パワーデバイスなどに応用可能であり、透明エレクトロニクス分野、照明分野、ハイブリッド/電気自動車分野など幅広い分野において適用可能である。
14 レーザ集光手段
20 SiC単結晶部材
20r 被照射面
22 改質層
AL 溶融アルカリ
B レーザ光
F 界面位置
PL SiC基板
SHL 溶融水酸化ナトリウム

Claims (11)

  1. 基板を溶融アルカリでエッチングするエッチング方法であって、
    高温かつ酸素を含む環境下で前記基板の被エッチング面に所定厚みの酸化被膜を形成しつつ、所定の高温域にした前記溶融アルカリを用いて前記酸化被膜を除去することを特徴とするエッチング方法。
  2. 前記高温かつ酸素を含む環境下として、大気中で前記溶融アルカリを用いる環境下とすることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
  3. 前記高温かつ酸素を含む環境下として、前記被エッチング面に酸素ガスを供給する空間で前記溶融アルカリを用いる環境下とすることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
  4. 前記基板の被エッチング面に前記溶融アルカリを流すことで前記酸化被膜を除去することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のエッチング方法。
  5. 前記被エッチング面に前記溶融アルカリを流す際、前記被エッチング面を上面側にして前記基板を水平面に対して所定角度傾斜させ、前記被エッチング面の上部側から下部側へ前記溶融アルカリを流すことを特徴とする請求項4に記載のエッチング方法。
  6. 前記溶融アルカリとして溶融水酸化ナトリウムを用いることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のエッチング方法。
  7. 前記所定の高温域を600℃以上とすることを特徴とする請求項6に記載のエッチング方法。
  8. 前記所定の高温域を650〜1100℃の範囲とすることを特徴とする請求項7に記載のエッチング方法。
  9. 前記所定厚みを10〜80μmの範囲とすることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のエッチング方法。
  10. 前記基板としてSiC基板を用いることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のエッチング方法。
  11. レーザ光を集光するレーザ集光手段をSiC単結晶部材の被照射面上に非接触に配置する工程と、
    前記レーザ集光手段により、前記被照射面にレーザ光を照射して前記SiC単結晶部材内部に前記レーザ光を集光するとともに、前記レーザ集光手段と前記SiC単結晶部材とを相対的に移動させて、前記SiC単結晶部材内部に2次元状の改質層を形成する工程と、
    前記改質層により分断されてなる単結晶層を前記改質層から剥離することでSiC単結晶基板を形成する工程と、
    を行い、前記剥離によって得られた前記SiC単結晶基板を前記SiC基板として用いることを特徴とする請求項10に記載のエッチング方法。
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