JP2018098305A - 高感度面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜、高感度面直通電巨大磁気抵抗素子、及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
電流センサーや地磁気センサー等に磁気抵抗素子を用いる場合、外部磁場に対してセンサー素子の直線的な応答が重要となる。さらに、高い感度のセンサーを実現するために、外部磁場に対してセンサー素子からの大きな電気的応答、つまり大きなMR比が求められる。トンネル磁気抵抗素子を用いて、上下の強磁性層の磁気モーメントが直行する様に積層膜を作成し、フリー層に対して垂直な外部磁場を与えることで直線的な応答と高いMR比(110%)が可能となることが報告されているが(例えば、非特許文献5参照)、その検知可能磁場範囲は±10mT程度と狭く、耐熱性も250℃程度までと低い。また、非特許文献6によれば、トンネル磁気抵抗素子を用いて、上下の強磁性層の磁気モーメントが直行する様に積層膜を作成し、フリー層厚を減少させることで直線応答性の改善を図っているが、直線応答性の改善に伴って、MR比が減少してしまうという欠点がある。
それに対して、ホイッスラー合金(Co2Fe(Al0.5Si0.5))とAgを用いた面直電流巨大磁気抵抗(CPP−GMR)素子において、Ag層の厚さを変えることで、上下の強磁性層の相関交換結合の強さが変わることが報告されており(例えば、非特許文献7参照)、反強磁性結合をとるようなAg膜厚を用いた場合に、検知可能磁場範囲を±40mT程度と広くすることができ、450℃と良好な素子の耐熱性も実現できている。
しかし、より高い感度の磁気センサー等が要求されており、更なる高感度化(MR比の向上)が求められていた。
すなわち本発明は、
[1]
基体と、
該基体上に設けられ、n層の磁気フリー層と、n−1層の非磁性層とを交互に積層してなる積層部と、
を有する面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜であって、
nが奇数であり、
少なくとも1つの該非磁性層が、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有する、上記面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜、である。
[2]
前記非磁性層の全てが、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有する、[1に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[3]
反強磁性層間交換結合が形成されている1つの非磁性層、及びその両面に接する磁気フリー層のペアについて面内方向に測定した残留磁化/飽和磁化の比が0.8以下である、[1]又は[2]に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[4]
前記非磁性層を介して反強磁性層間交換結合を形成する前記磁気フリー層のペアが、同一又は略同一の総磁気モーメントを有する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[5]
前記磁気フリー層が、Co基ホイスラー合金系ハーフメタル材料を含む、[1]から[4]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[6]
前記Co基ホイスラー合金系ハーフメタル材料が、Co2YZ(ここで、Yは、Ti、V、Cr、Mn、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zは、Al、Si,Ga,Ge、In、及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される組成を有する、[5]に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[7]
前記非磁性層が、スピン拡散長が30nm以上である材料系で構成される、[1]から[6]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[8]
前記非磁性層が、Cu、Al、Ag、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、[1]から[7]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[9]
バッファー/電極層及びキャップ層を更に有する、[1]から[8]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
[10]
[1]から[9]のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜を備える、面直通電巨大磁気抵抗素子。
[11]
[10]に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子を備える、地磁気センサー、電流センサー、又は磁気ヘッド。
該基体上に設けられ、n層の磁気フリー層と、n−1層の非磁性層とを交互に積層してなる積層部と、
を有する面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜であって、
nが奇数であり、
少なくとも1つの該非磁性層が、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有する、上記面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜、である。
本発明においては、基体上に、複数の磁気フリー層と複数の非磁性層とを交互に積層してなる積層部が設けられる。
基体は、その上に通常強磁性材料からなる磁気フリー層、及び非磁性材料からなる非磁性を積層することができるものであれば特に制限は無いが、例えば単結晶MgO基体を好ましく用いることができる。あるいは、好ましくはホイスラー合金を含む磁気フリー層が
多結晶となるような、Siや金属、合金等を基体として使ってもよい。コストの観点からは、表面酸化Si基体が安価なため基体として好ましいが、半導体製造用のシリコン基体を用いてもよく、またガラス基体や金属基体を用いてもよい。これらのいずれの材料を基体に用いても、本発明の構成を具備し、かつ適切な設計を行うことで、優れた外部磁場と抵抗値との直線性を示す一方で高い感度を有する、面直通電巨大磁気抵抗素子(CPP−GMR)用積層膜を得ることができる。
基体の厚さには特に限定は無く、本発明の目的に反しない限りにおいて当業者が適宜設定すればよいが、機械的強度、磁気抵抗素子製造プロセスにおける取り扱いの容易さ等の観点から、0.1〜1mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることが特に好ましい。
本発明において基体上に設けられる積層部は、n層の磁気フリー層とn−1層の非磁性層とを交互に積層したものである。
ここで、nは奇数であり、また非磁性層は、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に挟まれるものであるので、フリー層は複数存在するものである。従って、磁気フリー層は、少なくとも3層設けられるものである。この結果、2つの磁気フリー層の間に挟まれる非磁性層は、少なくとも2層設けられる。
磁気フリー層の層数は5層以上であることがより好ましい。磁気フリー層の層数が多いほど、本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜を用いた面直通電巨大磁気抵抗素子は、外部磁場と抵抗値との直線性に優れる傾向があるためである。
磁気フリー層のペアの間に、反強磁性層交換結合が形成されるか否かは、磁気フリー層及び非磁性層の材料が特定されている場合、非磁性層の厚さに依存するので、磁気フリー層のペアの間に反強磁性層交換結合が形成されるということは、非磁性層が、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有することを意味する。非磁性層の厚さは、磁気フリー層のペアの間の強磁性交換結合の強度が最小となり、かつ、それらの間の反強磁性層間交換結合の強度が最大となるような厚さであることが好ましい。
強磁性交換結合の強度が小さいことは、ノイズ低減の観点からも好ましい。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜を構成する積層部においては、非磁性層を介して隣接する2つの磁気フリー層によって構成される磁気フリー層のペアのうち少なくとも1つのペアの間に反強磁性層間交換結合が形成されるが、積層部に存在する全ての磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成されることが好ましく、言い換えれば、積層部に存在する非磁性層の全てが、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有することが好ましい。この様な構成を採用した実施形態においては、磁気抵抗(MR)比は、更に優れたものとなる。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜の積層部を構成する磁気フリー層は、強磁性材料を含む層である点で、いわゆる固定層と共通するが、その磁化の方向が固定されていない点で、いわゆる固定層と区別される。
すなわち、いわゆる固定層は、隣接又は近接するする別の強磁性層(ピニング層ともいう)でその磁化の方向が固定されているのに対して、磁気フリー層は、その磁化の方向が固定されておらず、磁化の方向が外部磁場によって応答可能な構成となっている。
巨大磁気抵抗素子の感度の点などから、磁気フリー層は、Co基ホイスラー合金系ハーフメタル材料を含むものであることが好ましい。
Co2XY(X=Mn,Fe、Y=Si,Ge,Al,Ga,Sn,As,Ti,V,Cr)、
Co2CrZ(Z=Si,Ge,Al,Ga,Sn,As,Ti,V,)、
Co2FeAl0.5Si0.5、
Co2FeCr0.5Al0.5
である合金が知られている。
ホイスラー合金は、Co2MnGeを例に取ると、三つの元素がランダムに配置するA2構造、bcc(体心立方格子)の四隅にCoが配置され、中心にMnとGeがランダムに配置するB2構造とCoが四隅にあってMnとGeが交互に配置するL21構造の3つの状態を持つ。この規則化度がA2構造からB2構造へ、B2構造からL21構造へと進むにつれてハーフメタルの性質を示す分極率が増加する
本実施形態において特に好ましいCo基ホイスラー合金系ハーフメタル材料としては、Co2YZ(ここで、Yは、Ti、V、Cr、Mn、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zは、Al、Si,Ga,Ge、In、及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される組成を有するものを挙げることができる。
層間交換結合は、磁気フリー層と非磁性層との間に形成される量子井戸状態に起因することが報告されており、電子状態が類似する材料であれば同様の効果が得られることが合理的に推定される。上記の材料は、実験的に本発明の効果が確認されているCo基ホイスラー合金系ハーフメタル材料と電子状態が類似しており、同様の効果が得られるであろうことが当業者により合理的に理解される。
一例として磁気フリー層がCFAS(Co2FeAl0.5Si0.5の組成のホイスラー合金)、非磁性層がAgである4から6層構成の積層部を有する場合には、磁気フリー層の厚さは、1〜50nmであることが好ましく、1〜20nmであることが特に好ましい。膜厚が0.5nm以上、より好ましくは1nm以上であることで、成膜の制御が容易になり、50nm以下、より好ましくは20nm以下であることで、その後の微細加工が容易になる。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜の積層部を構成する非磁性層は、非磁性層を介して隣接する2つの磁気フリー層間の反強磁性層間交換結合を維持することができる材料で構成されていればよく、それ以外の制限は無いが、面直方向の電気抵抗を測定することを考慮すれば、非磁性金属元素で構成されることが好ましい。
また、積層部の製造の容易さや、格子不整合による歪等の影響を抑制する観点からは、非磁性層は磁気フリー層と良好な格子整合性を有する材料で構成することが好ましい。
更に、磁気抵抗素子の感度や直線性の観点からは、磁気フリー層の磁化の方向の変化によるスピン散乱の変化をより明確に検出できることが好ましく、従って非磁性層は、スピン緩和が小さな材料、例えばスピン拡散長が30nm以上の材料で構成されることが好ましい。スピン拡散長が100nm以上の材料で構成されることが、より好ましい。
また、金(Au),ルテニウム(Ru)およびマグネシウム(Mg)のうちの少なくとも1種を含有していてもよい。
例えば、磁気フリー層がCFAS(Co2FeAl0.5Si0.5の組成のホイスラー合金)、非磁性層がAgである場合は、Ag層の膜厚に対して周期的に強磁性・反強磁性を繰り返す現象は、Ag層の膜厚が例えば5nmを超えると見られなくなる。一方、Ag層の膜厚が例えば0.5nm未満の場合には、膜の不連続性などにより強磁性的結合が現れるおそれがある。従って、この材料系の場合には、例えば膜厚0.5から5nmの範囲で、実験的又はシミュレーションなどにより最適なAg層の膜厚を設定することが好ましい。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜及びそれを用いた面直通電巨大磁気抵抗素子は、本発明の目的に反しない限りにおいて、上述の基体、磁気フリー層、及び非磁性層以外の層を有していてもよい。
ここでいうバッファー/電極層(下地層)は、磁気抵抗(MR)センサー素子の下地となる層ではなく、センサーの構成の中にある層であり、上記基体と積層部との間に設けられるものである。
バッファー/電極層は、基体と積層部との間の格子整合をとる機能、及び/又は磁気抵抗測定用の電極となる機能を有するものであり、前者の機能を有するときには単にバッファー層と称することもあり、後者の機能を有するときには単に電極層と称することもあり、両機能を総称してバッファー層/電極層と称することもある。また、慣用的に下地層と称することもある。
バッファー層/電極層は、1層で両機能を有するものであってもよく、バッファー層の機能を有する層と、電極層の機能を有する層との積層体であっても良く、好ましい例としてCr/Agの積層体を挙げることができる。
電極層としての機能を有する場合のバッファー/電極層は、磁気抵抗測定用の電極となるものであり、例えばAg、Al、Cu、Au、Cr等から選ばれる少なくとも一種類の金属や、これらの金属元素の合金を好ましく用いることができるが、これらには限定されない。
なお、バッファー/電極層を、複数の金属・合金層から構成される2層構造や、3層以上の多層構造としてもよい。
バッファー/電極層の厚さには特に限定は無く、本発明の目的に反しない限りにおいて当業者が適宜設定すればよいが、導電性確保や、磁性フリー層及び非磁性層への影響を限定する等の観点から、5〜1000nmであることが好ましく、20〜500nmであることが特に好ましい。
バッファー層(配向層)の厚さには特に限定は無く、本発明の目的に反しない限りにおいて当業者が適宜設定すればよいが、フリー磁性層を適切に配向させる等の観点から、0.1〜100nmであることが好ましく、0.1〜20nmであることが特に好ましい。
なお、実施例等には(001)方向に配向した磁気抵抗素子の結果を示したが、本願請求項1に規定する要件を満たす磁気フリー層及び非磁性層であれば素子の成長結晶方位に依存せず(110)、(211)方位などでも同様の効果が得られる。
キャップ層は、例えばAg、Al、Cu、Au、Cr 等から選ばれる少なくとも一種類の金属を含んでいてもよく、またこれら金属元素の合金を用いてもよい。
キャップ層の厚さには特に限定は無く、本発明の目的に反しない限りにおいて当業者が適宜設定すればよいが、表面を十分に保護する等の観点から、1〜100nmであることが好ましく、3〜20nmあることが特に好ましい。
キャップ層は、1種類の材料を用いてもよいし、2種類以上の材料を積層させたものでもよい。
磁気フリー層(強磁性層)間の反強磁性層間交換結合の強度及び安定性の観点からは、重要なのは磁気フリー層/非磁性層の界面の平滑性であるが、それを実現するためにはバッファー/電極層表面の平滑性が重要であり、多くの場合バッファー/電極層表面が高い平滑性を有することが必要となる。なお、バッファー/電極層表面、及び磁気フリー層/非磁性層の界面の平滑性が良い場合には、殆どの場合にキャップ層表面の平滑性も向上するので、キャップ層表面の平滑性を評価することで、磁気フリー層/非磁性層の界面の平滑性を、間接的に評価することができる。
より具体的には、バッファー/電極層表面、磁気フリー層と非磁性層との界面、及びキャップ層表面の少なくとも一つの平滑度Raは、0.75nm以下であることが好ましく、0.5nm以下であることがより好ましく、0.25nm以下であることが特に好ましい。これら表面、界面の全ての平滑度Raが上記条件を満たしていることが、とりわけ好ましい。
バッファー/電極層表面、磁気フリー層と非磁性層との界面、及びキャップ層表面の少なくとも一つの平滑度Raには特に下限は存在しないが、通常のプロセスで得られる平滑度としては、Raが0.1nm以上であることが現実的である。
本願においては、界面平滑性の指標として、50nm×50nm以上のエリアについて測定した算術平均粗さRaを用いる。界面平滑性を測定する方法には特に限定は無く、当該技術分野において用いられている評価方法を適宜使用することができるが、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)による断面観察、AFM(原子間力顕微鏡)による平滑性評価等により測定することができる。
TEMによる断面観察による、積層部等の界面の算術平均粗さRaの測定法の一例について、以下に説明する。
HAADF−STEM( High−angle Annular Dark Field Scanning TEM)と、EDS(エネルギー分散型X線分光器)による元素分析とを併用し、観察試料を調整することで、試料断面の原子レベルの成分分析が可能となる。これを利用して界面付近の成分分析を行い、上層の元素成分と、下層の元素成分とが混在している混合領域の素子厚み方向の厚さを測定し、これから界面平滑性(算術平均粗さ)Raを推定することができる。界面の凹凸があることで、素子厚み方向の同じ位置に、上層の元素成分と下層の元素成分の両者が混在することになるので、Raが大きいほど混在領域の素子厚み方向の厚さが大きくなるためである。
より具体的には、上記方法を用い、素子の断面の観察・元素マッピングを行うと、図4に模式的に示すような、断面解析が可能となる。 図4(a)に示す素子は、上層が成分a、下層が成分bからなる2層構造であり、その界面付近の素子厚み方向に、実線abで示す測定領域について、観察・元素マッピングを行うと、図4(b)に模式的に示すような、素子厚み方向の成分分布が得られる。図4(b)中、横軸は素子厚み方向の位置(任意目盛)であり、基板からの距離を示す。縦軸は、成分比(%)であり、実線が成分a、点線が成分bの割合を表す。横軸(素子厚み方向)で基板に近い左側は下層であり、成分bが大半を占める。横軸(素子厚み方向)で基板から隔たった右側は上層であり、成分aが大半を占める。図中、成分比でa(上層)成分20〜80%の部分は、b(下層)成分も20〜80%となり、これを混在領域と定義する。上述の様に、混在領域は界面の凹凸を示すものとして評価でき、混在領域の素子厚み方向の厚さは界面平滑性Raの2倍となるので、上記測定で得られた混在領域の素子厚み方向の厚さを2で除することで、界面平滑性Raを特定することができる。
この測定法は、間接的に界面平滑性Raを評価するものであり、若干の誤差を含むものではあるが、AFM等による平滑性評価と20%程度以内の精度で一致するものである。
上記方法による、実際の素子の断面観察・元素マッピング結果の例は、Jung et al.,Appl.Phys.Lett.,108,102408(2016)のFIG.4等に記載されている。
上記評価方法に用いるTEMは、原子レベルの分解能をもつものであることが好ましく、例えばFEI Company社製 Titan G2等を好適に使用することができる。
上述のHAADF−STEM(High−angle Annular Dark Field Scanning TEM)像は、細く絞った電子線を試料に走査させながら当て、透過電子のうち高角に散乱したものを環状の検出器で検出することにより得られものである。
試料は一般に数〜数十ナノメートルのTEM試料厚さ(試料の厚み方向は、磁気フリー層/非磁性層等の界面の面内方向に相当)に調整される。本発明の積層部を構成する磁気フリー層/非磁性層として典型的なホイスラー合金/Agのケースでは、一般にTEM試料厚さを30nm〜50nmの範囲で調整する。このとき、解析エリアを本願における界面/表面平滑性測定の際に必要な50nm×50nm以上のエリアとするため、幅70nm以上の界面にて、界面平滑性を評価する
固定層は磁気フリー層と同様に強磁性を示すものであり、磁気フリー層について上記で説明したものと同様の組成、厚さ等を有することができる。
ピニング層としては、当該技術分野において公知の材料を適宜使用することができるが、例えば固定層にホイスラー合金を使用する場合には、FeMn、IrMn等を使用することができる。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜、及びこれを備える面直通電巨大磁気抵抗素子の製造方法には特に制限は無く、金属薄膜、金属化合物薄膜を精密に積層できる方法を当業者が適宜選択すればよいが、スパッタ法により製造することが好ましい。
アニールの温度には特に制限は無いが、例えば300℃以上、好ましくは350℃以上、より好ましくは、400℃以上の温度で行うことで、結晶性を向上させることができる。
本発明の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜を用いた磁気抵抗素子は、高い感度を実現することができ、また外部磁場と抵抗値との直線性を向上させることが比較的容易なので、高感度が求められるHDD用リードヘッド、高感度電流センサー等や、外部磁場と抵抗値との直線性が求められる、地磁気センサー、電流センサー等において、特に好適に使用することができる。
磁気フリー層5層、非磁性層4層(Ag、厚さ:2nm)を有する積層膜
実施例1としてCo2Fe(Al0.5Si0.5))(以下、「CFAS」とも言う。)とAgを用いた面直電流巨大磁気抵抗(CPP−GMR)用積層膜を作製した。磁気フリー層の層数nは奇数である5層とした。Ag層(非磁性層)の膜厚は、反強磁性層間交換結合を示す厚さである2nmとし、その層数(n−1)は、4層とした。
図1に、作製した面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜の層構成(CFAS:5層)を示す。MgO基板/Cr(10nm)/Ag(100nm)/CFAS(3nm)/(Ag(2nm)/CFAS(3nm))n−2/Ag(2nm)/CFAS(3nm)/Ag(5nm)/Ru(8nm)と(001)配向した単結晶CPP−GMR用積層膜を作製した。
磁気フリー層の層数は5層(n=5)とした。
積層膜の熱処理は上部Ru層を積層後に400℃で30分間行った。さらに、フォトリソグラフィーを用いて、200×100nmサイズのピラーを作成した。図2にピラーの断面構造を示す。
磁気抵抗の測定は、フォトリソグラフィーにより得られた長方形の短軸方向に加える磁場を変化させながら、直流4端子法によって電気抵抗を測定することにより行った。磁気抵抗の測定結果を図3に示す。図3中、直線的な応答を示す部分を直線に近似し、下記(式)に従って当該部分の近似直線からのずれである非直線性(Non−linearity)を計算したところ、0.4%FSという良好な直線性を示した。
R(meas): 抵抗Rの測定値
R(fit): 抵抗Rの近似値
(R(meas)−R(fit))max:
直線近似範囲におけるR(meas)−R(fit)の最大値
R(max): 直線近似範囲における抵抗Rの測定値の最大値
R(min): 直線近似範囲における抵抗Rの測定値の最少値
磁気フリー層6層、非磁性層5層(Ag、厚さ:2nm)を有する積層膜
磁気フリー層の層数nを偶数である層とし、Ag層(非磁性層)の層数(n−1)を5層とした他は、実施例1と同様にしてCFASとAgを用いた面直電流巨大磁気抵抗(CPP−GMR)用積層膜を作製した。
図3(b)にピラーの外部磁場に対する抵抗値の変化を示す。非直線性は0.5%FSであり良好な直線性を示したが、MR比は39%であり、実施例1と比較して顕著に低い値であった。
Claims (11)
- 基体と、
該基体上に設けられ、n層の磁気フリー層と、n−1層の非磁性層とを交互に積層してなる積層部と、
を有する面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜であって、
nが奇数であり、
少なくとも1つの該非磁性層が、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有する、上記面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。 - 前記非磁性層の全てが、その両面に接する磁気フリー層のペアの間に反強磁性層間交換結合が形成される厚さを有する、請求項1に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 反強磁性層間交換結合が形成されている1つの非磁性層、及びその両面に接する磁気フリー層のペアについて面内方向に測定した残留磁化/飽和磁化の比が0.8以下である、請求項1又は2に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 前記非磁性層を介して反強磁性層間交換結合を形成する前記磁気フリー層のペアが、同一又は略同一の総磁気モーメントを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 前記磁気フリー層が、Co基ホイスラー合金系ハーフメタル材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 前記Co基ホイスラー合金系ハーフメタル材料が、Co2YZ(ここで、Yは、Ti、V、Cr、Mn、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zは、Al、Si,Ga,Ge、In、及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)で表される組成を有する、請求項5に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 前記非磁性層が、スピン拡散長が30nm以上である材料系で構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 前記非磁性層が、Cu、Al、Ag、及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- バッファー/電極層及びキャップ層を更に有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜。
- 請求項1から9のいずれか一項に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子用積層膜を備える、面直通電巨大磁気抵抗素子。
- 請求項10に記載の面直通電巨大磁気抵抗素子を備える、地磁気センサー、電流センサー、又は磁気ヘッド。
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JP2016239729A Active JP6967259B2 (ja) | 2016-12-09 | 2016-12-09 | 高感度面直通電巨大磁気抵抗素子、及びその用途 |
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Citations (3)
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JP2004259363A (ja) * | 2003-02-26 | 2004-09-16 | Toshiba Corp | 磁気抵抗効果ヘッドおよび磁気記録再生装置 |
WO2007015355A1 (ja) * | 2005-08-02 | 2007-02-08 | Nec Corporation | Mram |
JP2015082338A (ja) * | 2013-10-24 | 2015-04-27 | エイチジーエスティーネザーランドビーブイ | 磁気的安定性を向上させた逆平行フリー(apf)構造を有する平面垂直通電型(cpp)磁気抵抗(mr)センサ |
-
2016
- 2016-12-09 JP JP2016239729A patent/JP6967259B2/ja active Active
Patent Citations (3)
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JP2004259363A (ja) * | 2003-02-26 | 2004-09-16 | Toshiba Corp | 磁気抵抗効果ヘッドおよび磁気記録再生装置 |
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