JP2018096478A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】内周に複列の外側転走面が一体に形成された外輪2と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪3、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪4を有し、このハブ輪3と外輪2のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体列5と、外輪2とハブ輪3および内輪4との間をシールするアウター側シール部材7と、を備えた車輪用軸受装置1において、ハブ輪3の回転によってアウター側からインナー側に送風する羽根部材8がハブ輪3に設けられる。【選択図】図3
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、転動体を介して、車輪に接続されるハブ輪を回転自在に支持する。車輪用軸受装置は、外方部材内部のグリースが減ったり雨水や粉塵が入り込んだりしたりすることで転動体や内方部材の軌道面が損傷して軸受寿命が短くなる。このため、車輪用軸受装置には、外方部材と内方部材との隙間から内部に封入されているグリースの漏出を防止するとともに外部から雨水や粉塵等の入り込みを防止するシール部材がインナー側とアウター側とに設けられている。
このような車輪用軸受装置において、軸受寿命を長くするために、シール部材に複数のシール機構を設けてシール性を向上させているものがある。シール部材には、複数のシールリップによってラビリンスが構成されている。このように構成することで、シール部材は、ラビリンスによりシールリップ先端への雨水や粉塵の入り込みが抑制され、摺動面の発錆や異物によるシールリップ先端の損傷を防止し、シール性を向上させることができる。また、車輪用軸受装置は、ハブ輪側のシール部材のシールリップの摺動面が泥水等にさらされることを極力抑え、シールリップの摩耗によるシール性の低下を防止するために、外方部材の外周面にラビリンスを構成したものが公知である。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、車輪取付用のフランジ(ハブ輪)に筒状のシールド板が設けられている。シールド板は、外方部材に近接した状態で重複するように構成されている。つまり、筒状のシールド板の内部に外方部材が配置されている。これにより、車輪用軸受装置には、外方部材の外周面とシールド板の内周面との間にラビリンスが構成されている。さらに、車輪用軸受装置は、シールド板と重複している外方部材の外周面に溝が形成されている。車輪用軸受装置は、ラビリンス内に進入した泥水等を溝で下方に案内するように構成されている。このような構成によって、車輪用軸受装置は、フランジ側(アウター側)の密封手段である接触シール(シール部材)とラビリンスと溝とによって内部に泥土や異物の混入を防止している。
しかし、特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、ラビリンス近傍の外方部材に泥水や塵埃等が付着することでラビリンス内に泥水等が入り易くなる。また、特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、ラビリンス内に入り込んだ泥水や塵埃等を溝によって排出するように構成されているが、溝によって排出できる泥水等の量を超えたり、塵埃の混入によって溝が堰き止められたりした場合、泥水等が溝から溢れて接触シールに流入する。つまり、外方部材が外部の環境にさらされる車輪用軸受装置は、泥水や塵埃等が付着しやすいためラビリンスシールでは接触シールへの泥水や塵埃等の入り込みを十分に抑制できない可能性があった。
本発明は、以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる好適な車輪用軸受装置の提供を目的とする。
即ち、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材のアウター側端部に設けられたシール部材と、を備える車輪用軸受装置において、前記ハブ輪の回転によって、前記外方部材のアウター側端部からインナー側端部に送風する羽根部材が前記ハブ輪に設けられるものである。
前記車輪用軸受装置は、前記羽根部材が、前記ハブ輪に嵌合される嵌合部を有するものである。
前記車輪用軸受装置は、前記嵌合部が、径方向視で前記外方部材の一部と重複しているものである。
前記車輪用軸受装置は、前記嵌合部の両端のうち少なくとも一方に鍔部が形成されているものである。
前記車輪用軸受装置は、前記ハブ輪を車輪に取り付けるための複数のボルトを更に備え、前記羽根部材は、前記嵌合部の外周面から径方向外側に向けて延出している複数の羽根部を更に有し、前記羽根部は、複数のボルトのうち隣接するボルトの間にそれぞれ配置されているものである。
前記車輪用軸受装置は、前記羽根部材が、その表面が弾性部材で覆われているものである。
前記車輪用軸受装置は、前記羽根部材を前記ハブ輪に着脱自在に固定するクランプが前記嵌合部に構成されるものである。
前記車輪用軸受装置は、前記ハブ輪に前記羽根部材が一体に形成されているものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、車輪用軸受装置によれば、泥水や塵埃等が送風によってハブ輪側(アウター側)のシール部材から遠ざける方向に吹き飛ばされる。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
車輪用軸受装置によれば、ハブ輪に羽根部材が容易に設けられる。
車輪用軸受装置によれば、ハブ輪に羽根部材が設けられるとともに羽根部材によって外方部材を覆うことでラビリンスが形成される。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを更に抑制することができる。
車輪用軸受装置によれば、嵌合部の強度が向上することで羽根部の振れを抑制すると共に、ラビリンスの隙間が均一になる。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
車輪用軸受装置によれば、飛び石等による羽根部の変形や破損が抑制され、外方部材への送風が連続的に継続される。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
車輪用軸受装置によれば、飛び石等によって羽根部に変形や破損が生じても容易に交換される。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
車輪用軸受装置によれば、羽根部材の剛性が高く破損し難いので外方部材への送風が継続される。これにより、シール部材への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
以下に、図1から図3を用いて、車輪用軸受装置の第一実施形態である左側用の車輪用軸受装置1について説明する。以下では、車両側からみて車両の左側に取り付けられる左側用の車輪用軸受装置について主に説明する。
図1に示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外輪2、ハブ輪3、内輪4、転動体である二列のボール列5(図2参照)、インナー側シール部材6、アウター側シール部材7および羽根部材8を具備する。ここで、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
図2に示すように、外方部材である外輪2は、ハブ輪3と内輪4とを支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成され、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。外輪2は、一側端が車載時に車両側であるインナー側に配置され、他側端が車輪側であるアウター側に配置される。外輪2の内周面には、周方向に環状の外側転走面2aがインナー側とアウター側とに平行になるように形成されている。各外側転走面2a・2aには、高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲とする硬化層が形成されている。外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2bが形成されている。外輪2のアウター側端部2eには、アウター側シール部材7が嵌合可能なアウター側開口部2cが形成されている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2dが一体に形成されている。
内方部材の一部であるハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、有底円筒状に形成され、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが軸方向断面視で円弧状に拡径するように一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3cが設けられている(図1参照)。また、ハブ輪3のアウター側の外周面には、周方向に環状の内側転走面3dが形成されている。車輪取り付けフランジ3bのインナー側面には、羽根部材8が圧入嵌合される大径段部3gが形成されている。さらに、大径段部3gと内側転走面3dとの間には、シール摺動面3eが形成されている。
ハブ輪3のインナー側端部の小径段部3aは、内方部材の一部である内輪4が圧入されている。内方部材は、ハブ輪3と内輪4とによって構成されている。内輪4は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側転走面4aが形成されている。内輪4は、ハブ輪3のインナー側端が径方向の外側に向かって塑性変形(加締め)されることで所定の予圧が付与された状態でハブ輪3のインナー側端部に一体的に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側端部には、内輪4によって内側転走面4aが構成されている。
ハブ輪3は、インナー側の小径段部3aからシール摺動面3eまでを高周波焼入れにより表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3bに付加される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪3の耐久性が向上する。なお、ハブ輪3のインナー側端の加締め部分は鍛造加工後の表面硬さのままである。インナー側端部に設けられている内輪4の内側転走面4aが外輪2のインナー側の外側転走面2aに対向し、アウター側端部に形成されている内側転走面3dが外輪2のアウター側の外側転走面2aに対向するように、ハブ輪3は配置されている。
転動体である二列のボール列5は、ハブ輪3を回転自在に支持するものである。二列のボール列5は、複数のボールが保持器によって環状に保持されている。二列のボール列5は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。二列のボール列5のうち一方のボール列5は、内輪4の内側転走面4aと外輪2のインナー側の外側転走面2aとの間に転動自在に挟まれている。二列のボール列5のうち他方のボール列5は、ハブ輪3の内側転走面3dと外輪2のアウター側の外側転走面2aとの間に転動自在に挟まれている。つまり、二列のボール列5は、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。このように、車輪用軸受装置1には、外輪2とハブ輪3と内輪4と二列のボール列5とから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、複列アンギュラ玉軸受が構成されているがこれに限定されるものではなく、複列円錐ころ軸受等で構成されていてもよい。
インナー側シール部材6は、外輪2と内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、略円筒状のシール板6aと略円筒状のスリンガ6bとを具備する。シール板6aは、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)等によって構成され、当該シール板6aには、弾性体であるNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数の一側シールリップが加硫接着されている。スリンガ6bは、シール板6aと同等の鋼板によって構成されている。インナー側シール部材6は、シール板6aが外輪2のインナー側開口部2bに嵌合され、スリンガ6bが内輪4に嵌合されることで、パックシールを構成している。シール板6aの一側シールリップは、油膜を介してスリンガ6bと接触することでスリンガ6bに対して摺動可能に構成されている。これにより、インナー側シール部材6は、外輪2の内部からの潤滑グリースの漏れ、および外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
アウター側シール部材7は、外輪2のアウター側開口部2cとハブ輪3のシール摺動面3eとの隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材7は、弾性体であるNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数のシールリップが芯金に加硫接着されることで構成されている。芯金は、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)によって構成されている。芯金は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲され、外輪2のアウター側開口部2cに嵌合されている。アウター側シール部材7は、そのシールリップが油膜を介してハブ輪3のシール摺動面3eと接触することで、ハブ輪3に対して摺動可能に構成されている。これにより、アウター側シール部材7は、外輪2の内部からの潤滑グリースの漏れ、および外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
左側用の羽根部材8は、アウター側からインナー側に向かって空気の流れを発生させるものである。羽根部材8は、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)によって構成されている。羽根部材8の外径は、車輪取り付けフランジ3bの外径よりも小さい。
図1〜4に示すように、羽根部材8は、嵌合部9と羽根部10とから構成されている。嵌合部9は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲されて円筒状に形成されている。嵌合部9は、ハブ輪3の大径段部3gに圧入嵌合可能な内径を有している。羽根部材8は、ハブ輪3の回転に伴って嵌合部9の軸周りに回転するように構成されている。羽根部10は、嵌合部9の外周面に放射状に設けられた複数の板を有している。羽根部10の板は、湾曲している。また、羽根部10の複数の板は、等角度で周方向に配置されている。さらに、羽根部10は、各板が嵌合部9の軸方向に対して所定の角度θになるように(軸方向に向かってらせん状に)配置されている(図3参照)。これにより、羽根部材8は、嵌合部9の軸周りに回転することで軸方向に送風する機能を有している。
このように構成される車輪用軸受装置1には、ハブ輪3が二列のボール列5を介して外輪2に回転自在に支持されている。さらに、車輪用軸受装置1は、インナー側シール部材6によって外輪2と内輪4との隙間が塞がれ、アウター側シール部材7によって外輪2とハブ輪3との隙間が塞がれることで内部のグリースの流出や水や粉塵等の流入を防止している。また、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の回転に伴ってハブ輪3に設けられた羽根部材8が外輪2の周囲にアウター側からインナー側に向かって(図3における黒塗矢印が示す方向)送風する。即ち、羽根部材8は、ハブ輪3の回転によって、外方部材のアウター側端部からインナー側端部に送風する。ここで、送風の向きは、やや径方向外方向きである。
次に、図3から図5を用いて、左側用の羽根部材8および右側用の羽根部材11の近傍に設けられている外輪2、羽根部材8,11が設けられているハブ輪3、および羽根部材8,11の形状とその作用について説明する。ここで、右側用の羽根部材11は、車両の右側に取り付けられる右側用の車輪用軸受装置1Rに設けられ、アウター側からインナー側に送風するように構成されている(図5参照)。
図3に示すように、外輪2のアウター側端部2eは、その端面から所定の軸方向幅の範囲の外径がハブ輪3の大径段部3gの外径よりも小さく形成されている。また、外輪2のアウター側端部2eは、アウター側シール部材7よりもアウター側に延出するように形成されている。ハブ輪3には、シール摺動面3eよりもアウター側に外輪2のアウター側端部2eが入り込む円環状の凹部3fが形成されている。
車輪用軸受装置1では、外輪2のアウター側端部2eがハブ輪3の凹部3fの空間に配置されている。つまり、車輪用軸受装置1は、外輪2のアウター側端部2eとハブ輪3の凹部3fとが径方向視で重複し、外輪2によってアウター側シール部材7を覆うように構成されている。また、車輪用軸受装置1では、外輪2のアウター側端部2eがハブ輪3の凹部3fとの間に僅かな隙間を有するように配置されている。これにより、車輪用軸受装置1は、外輪2のアウター側端部2eとハブ輪3の凹部3fとの間にラビリンスL1が構成されている。
羽根部材8は、ハブ輪3の大径段部3gに圧入嵌合されている。羽根部材8の嵌合部9のアウター側端部には、径方向外側に屈曲された大鍔部9aが形成され、インナー側端部に径方向外側に屈曲された小鍔部9bが形成されている。これにより、羽根部材8は、嵌合部9の剛性が向上し、嵌合部9の変形による羽根部10の振れを抑制することができる。また、羽根部材8は、小鍔部9bが圧入工具で押圧されてハブ輪3の大径段部3gに圧入嵌合される。これにより、羽根部材8は、小鍔部9bに圧入工具の押圧面が面接触された状態で圧入されるため、圧入時の安定性と組み立て性とを向上させることができる。
羽根部材8は、ハブ輪3の大径段部3gに嵌合された状態で、嵌合部9のインナー側が外輪2のアウター側端面から所定の軸方向幅の範囲において径方向視で重複するように構成されている。つまり、嵌合部9の内部には、外輪2のアウター側端部2e面が挿入されている。嵌合部9は、その内径が大径段部3gの外径と略同一の大きさになるように形成されている。すなわち、嵌合部9の内径は、外輪2のアウター側端面から所定の軸方向幅の範囲の外径よりも大きい。つまり、車輪用軸受装置1は、外輪2のアウター側端面から所定の軸方向幅の範囲おいて、羽根部材8の嵌合部9が外輪2との間に僅かな隙間を有するように配置されている。これにより、車輪用軸受装置1は、外輪2のアウター側端部2eと嵌合部9との間にラビリンスL2が構成されている。
図4に示すように、羽根部10は、嵌合部9の外周面にハブボルト3cのヘッド外径よりも大きい間隔で配置されている。羽根部10の複数の板が軸方向視でハブボルト3cと重複しないように、羽根部材8がハブ輪3の大径段部3gに嵌合されている。すなわち、羽根部10は、複数のハブボルト3cのうち隣接するハブボルト3cの間にそれぞれ配置されている。本実施形態において、羽根部10は、ハブボルト3cの組み込み数と同じ枚数だけ配置されている。これにより、車輪用軸受装置1は、ハブ輪3に羽根部材8が設けられた状態でハブボルト3cを交換することができる。
図3と図4とに示すように、羽根部10は、嵌合部9の外周面にインナー側からアウター側に向かう時計回りのらせんに沿うようにして配置されている。つまり、羽根部材8は、インナー側からの軸方向視で時計回り(以下、単に「時計回り」と記す)に回転する場合(図3および図4における白塗矢印参照)、羽根部10の回転方向における前端部10aが嵌合部9のアウター側に配置され、羽根部10の回転方向における後端部10bが嵌合部9のインナー側に配置されている。これにより、羽根部10は、時計回りの回転により板面に沿って前端部10aから後端部10bに向かって空気が運ばれることで、アウター側からインナー側に送風するように構成されている(図3における黒塗矢印参照)。
図5に示すように、車両の右側に取り付けられる右側用の車輪用軸受装置1Rにおける羽根部材11の羽根部13は、嵌合部12の外周面にインナー側からアウター側に向かう反時計回りのらせんに沿うようにして配置されている。つまり、羽根部材11は、インナー側からの軸方向視で反時計回りに回転する場合(白塗矢印参照)、羽根部13の回転方向における前端部13aが嵌合部12のアウター側に配置され、羽根部10の回転方向における後端部13bが嵌合部12のインナー側に配置されている。これにより、羽根部13は、反時計回りの回転により前端部13aから後端部13bに向かって空気が運ばれることでアウター側からインナー側に送風するように構成されている。
図4に示すように、左側用の車輪用軸受装置1に設けられる羽根部材8には、マーキングMが施されている。マーキングMは、塗料による着色や刻印等によって視覚や触覚でマーキングの有無を識別できるものであればよい。このように構成することで、車輪用軸受装置1は、左側用の羽根部材8を左側用の車輪用軸受装置1に確実に組み込むことができる。なお、マーキングMは、左側用の羽根部材8と右側用の羽根部材11とが区別できるように羽根部材8と羽根部材11との少なくとも一方に施されていればよい。
このように構成される車輪用軸受装置1では、ハブ輪3に羽根部材8の嵌合部9を圧入嵌合するだけでハブ輪3に羽根部材8を容易に設けることができる。この際、羽根部材8は、嵌合部9の小鍔部9bを利用することで安定的に圧入させることができる。また、羽根部材8は、大鍔部9aおよび小鍔部9bによって嵌合部9の強度が向上することで羽根部10の振れを抑制し、均一な風量で連続的に送風することができる。車輪用軸受装置1は、外輪2のアウター側端部2eとハブ輪3の凹部3fとの間、および外輪2のアウター側端面から所定の軸方向幅の範囲の外周面と羽根用部材の嵌合部9との間にラビリンスL2が構成されている。従って、車輪用軸受装置1は、ラビリンスL2によってアウター側シール部材7への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。さらに、車輪用軸受装置1は、羽根部材8による送風によって泥水や塵埃等をアウター側シール部材7から遠ざける方向に吹き飛ばしてアウター側シール部材7への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。車輪用軸受装置1は、アウター側シール部材7のシールリップの摺動面が泥水や塵埃等に曝され難くなることからシール性の低下を抑制して長寿命化を図ることができる。なお、右側用の車輪用軸受装置1Rにおいても、ハブ輪3に羽根部材11の嵌合部12を圧入嵌合するだけでハブ輪3に羽根部材8を容易に設けることができ、上記に示した効果を同様に奏することができる。
次に、図6を用いて、車輪用軸受装置の第二実施形態である車輪用軸受装置14について説明する。なお、以下の実施形態に係る車輪用軸受装置14は、図1から図5に示す車輪用軸受装置1において、車輪用軸受装置1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、記号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図6に示すように、羽根部材8は、嵌合部9と羽根部15とから構成されている。羽根部15は、嵌合部9の外周面に放射状、かつ、らせん状に設けられた複数の板を有している。羽根部15の各板のインナー側の表面には、弾性体であるNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴム15cが加硫接着によって張り合わされている。
このように構成される車輪用軸受装置14は、ステンレス鋼板や冷間圧延鋼板から構成される羽根部15を合成ゴム15c等の弾性体で覆うことによって飛び石等による羽根部15への衝撃が緩和されて羽根部15の変形や破損を抑制することができる。これにより、車輪用軸受装置14は、ハブ輪3の時計回りの回転によって(白塗矢印参照)、板面に沿って羽根部15の前端部15aから後端部15bに向かって空気が運ばれることで外輪2への送風が連続的に継続され(黒塗矢印参照)、アウター側シール部材7への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。なお、本実施形態において、羽根部15は、ステンレス鋼板あるいは冷間圧延鋼板を芯金として、合成ゴム15c等の弾性体を張り合わせて構成されているが、羽根部15全体を樹脂、ゴム等から形成されていてもよい。また、羽根部材8は、羽根部15のインナー側とアウター側とに弾性体を張り合わせてもよい。
次に、図7を用いて、車輪用軸受装置の第三実施形態である車輪用軸受装置16について説明する。
図7に示すように、羽根部材8は、アウター側からインナー側に向かって空気の流れを発生させるものである。羽根部材8は、クランプ部17と羽根部18とから構成されている。クランプ部17は、複数の円環片17aが揺動可能に接続されて円筒状に構成されている。また、クランプ部17には、その内径を縮小させるクランプねじ17bが設けられている。これにより、クランプ部17の内部に配置されている軸等を複数の円環片17aで締め付けて締結可能に構成されている。クランプ部17は、ハブ輪3の大径段部3gを締結可能な内径を有している。羽根部18は、弾性体であるNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムや樹脂等から構成される湾曲された複数の板がクランプ部17の複数の円環片17aに放射状、かつ、らせん状に設けられている。羽根部18は、クランプ部17の締結によってクランプ部17を構成している複数の円環片17aのたわみを阻害したりクランプ部17と羽根部18との間に過大な応力が発生したりしないように弾性変形が容易な材料で構成されている。
このように構成される車輪用軸受装置16は、羽根部18がクランプ部17のクランプねじ17bを用いてハブ輪3の大径段部3gに締結されている。従って、車輪用軸受装置16では、飛び石等によってクランプ部17や羽根部18が破損してもクランプ部17の締結を緩めてハブ輪3から容易に着脱され(矢印参照)、当該クランプ部17及び羽根部18を補修することが可能となる。これにより、車輪用軸受装置16は、継続的に羽根部18によって送風が行われ、アウター側シール部材7への泥水や塵埃等の入り込みを抑制することができる。
次に、図8と図9とを用いて、車輪用軸受装置の第四実施形態である車輪用軸受装置19について説明する。
図8及び9に示すように、ハブ輪3の車輪取り付けフランジ3bのインナー側側面には、羽根部3hが一体に形成されている。羽根部3hは、アウター側からインナー側に向かって空気の流れを発生させるものである。羽根部3hは、車輪取り付けフランジ3bのインナー側端面において、放射状に突出するリブ形状に形成されている。羽根部3hは、隣り合うハブボルト3cの間に等しい数(本実施形態では3本)のリブ形状が配置されている。羽根部3hは、車輪取り付けフランジ3b側の基部からインナー側の先端部に向かうにつれて(羽根部3hを軸方向から見て、車輪取り付けフランジ部3bの外径から内径側に向かって)、その周方向の幅が徐々に小さくなるように形成されている。つまり、羽根部3hは、周方向の両側面が同じ形状の傾斜面Sに形成されている。羽根部3hは、回転方向における前側の傾斜面Sの作用によって羽根部3hの基部側(アウター側)から先端側(インナー側)に向かって空気が運ばれることで、アウター側からインナー側に送風するように構成される。
このように構成される車輪用軸受装置19は、ハブ輪3の回転方向に関わらず、羽根部3hによって車輪取り付けフランジ3bからインナー側に向かって送風することができる。さらに、車輪用軸受装置19では、羽根部3hが鍛造成形されて剛性の高いハブ輪3に一体的に形成されるので飛び石等によって破損することがなく、均一な風量で連続的に送風することができる。
また、図10に示すように、第四実施形態における車輪用軸受装置19の変形例として、ハブ輪3の車輪取り付けフランジ3bのシールランドから径方向外側に形成されているハブボルト用座面の間に羽根部3jを形成してもよい。羽根部3jは、車輪取り付けフランジ3bのシールランドから放射状に突出したリブ形状に形成されている。羽根部3jは、ハブボルト3cと等しい数のリブ形状が配置されている。
以上、本実施形態に係る車輪用軸受装置1・14・16・19は、ハブ輪3の外周にボール列5の内側転走面3dが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置として説明したがこれに限定されるものではなく、例えば、ハブ輪3に一対の内輪4が圧入固定された内輪4回転の第2世代構造であっても良い。また、車輪用軸受装置1・14は、ステンレス鋼板あるいは冷間圧延鋼板によって構成されているが、羽根部10・15を樹脂や合成ゴム等の弾性部材から構成してもよい。上述の実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
1、1R、14、16、19 車輪用軸受装置
2 外輪
2a 外側転走面
3 ハブ輪
3a・4a 小径段部
4 内輪
3d・4a 内側転走面
5 ボール列
7 アウター側シール部材
8、11 羽根部材
2 外輪
2a 外側転走面
3 ハブ輪
3a・4a 小径段部
4 内輪
3d・4a 内側転走面
5 ボール列
7 アウター側シール部材
8、11 羽根部材
Claims (8)
- 内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材のアウター側端部に設けられたシール部材と、を備える車輪用軸受装置において、
前記ハブ輪の回転によって、前記外方部材のアウター側端部からインナー側端部に送風する羽根部材が前記ハブ輪に設けられる車輪用軸受装置。 - 前記羽根部材が、前記ハブ輪に嵌合される嵌合部を有する請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記嵌合部は、径方向視で前記外方部材の一部と重複している請求項2に記載の車輪用軸受装置。
- 前記嵌合部の両端のうち少なくとも一方に鍔部が形成されている請求項2または請求項3に記載の車輪用軸受装置。
- 前記ハブ輪を車輪に取り付けるための複数のボルトを更に備え、
前記羽根部材は、前記嵌合部の外周面から径方向外側に向けて延出している複数の羽根部を更に有し、
前記羽根部は、複数のボルトのうち隣接するボルトの間にそれぞれ配置されている、請求項2から請求項4のうちいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。 - 前記羽根部材は、その表面が弾性部材で覆われている請求項2から請求項5のうちいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
- 前記羽根部材を前記ハブ輪に着脱自在に固定するクランプが前記嵌合部に構成される請求項2または請求項6に記載の車輪用軸受装置。
- 前記ハブ輪に前記羽根部材が一体に形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016242564A JP2018096478A (ja) | 2016-12-14 | 2016-12-14 | 車輪用軸受装置 |
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JP2020159399A (ja) * | 2019-03-25 | 2020-10-01 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置 |
-
2016
- 2016-12-14 JP JP2016242564A patent/JP2018096478A/ja active Pending
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JP2020159399A (ja) * | 2019-03-25 | 2020-10-01 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置 |
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