JP2018095634A - カプセル用組成物及びカプセル剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分の良好な吸収性を有するカプセル用組成物及びカプセル剤を提供すること。【解決手段】カプセル用組成物は、外相は油相であり、内相は水相であり、両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を含むW/Oエマルション型であり、さらに、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分を含み、前記成分の少なくとも一部が水相に含まれている。カプセル剤は、皮膜と、該皮膜に内包された上記カプセル用組成物と、を備える。皮膜は、ゼラチンを含むことが好ましい。【選択図】図1

Description

本発明は、カプセル用組成物及びカプセル剤に関する。
従来、カプセル剤としては、ポリフェノール、アミノ酸、水溶性ビタミン等の機能性素材の粉末を油溶性界面活性剤により油中に分散させてから、カプセル化させたものが使用されている。
例えば、特許文献1には、(A)アントシアニン、プロアントシアニジン、プロシアニジン及びカテキンよりなる群から選択される少なくとも1種のポリフェノール、並びに(B)大豆イソフラボン及び/又はその代謝産物を含む内容物が、ゼラチンを含むカプセル皮膜からなるカプセルに充填されているカプセル剤が開示されている。特許文献1には、上記(A)、(B)成分を油性基剤中に分散させるために、界面活性剤を用いることが記載されている。
特開2016−069335号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたようなカプセル剤は、吸収性が未だ十分でなく、改善の余地を有する。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分の良好な吸収性を有するカプセル用組成物及びカプセル剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を用いて乳化されたW/Oエマルション型のカプセル用組成物が、ポリフェノール、アミノ酸及び/又は水溶性ビタミンの良好な吸収性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
(1) 外相は油相であり、内相は水相であり、
両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を含むW/Oエマルション型であり、
さらに、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分を含み、
前記成分の少なくとも一部が水相に含まれているカプセル用組成物。
(2) 前記油相に含まれる油が、常温常圧下において固形状態である(1)に記載のカプセル用組成物。
(3) 皮膜と、該皮膜に内包された(1)又は(2)に記載のカプセル用組成物と、を備えるカプセル剤。
(4) 前記皮膜がゼラチンを含む、(3)に記載のカプセル剤。
本発明によれば、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分の良好な吸収性を有するカプセル用組成物及びカプセル剤を提供することができる。
実施例1のカプセル用組成物を水に添加させた直後、添加から1分後、2分後の写真、及び顕微鏡観察の画像である。 比較例1のカプセル用組成物を水に添加させた直後、添加から1分後、2分後の写真、及び顕微鏡観察の画像である。 (a)実施例2、比較例2のカプセル用組成物を水に分散させた後の写真、及び、(b)実施例3、比較例3のカプセル用組成物を水に分散させた後の写真である。 実施例5、比較例5〜8のカプセル用組成物における、細胞に対するアントシアニン透過量を示すグラフである。 実施例5〜7、比較例9、10のカプセル用組成物における、細胞に対するアントシアニン透過量を示すグラフである。 実施例8〜10、比較例11〜13のカプセル用組成物における、細胞に対するテクトリゲニン透過量を示すグラフである。 実施例5のカプセル用組成物における、40℃で2ヶ月保管後と保管前の、細胞に対するアントシアニン透過量を示すグラフである。 実施例5のカプセル用組成物における、40℃で2ヶ月保管後と保管前の顕微鏡による画像、乳化状態、水分量、水分活性を示す図である。 実施例5のカプセル用組成物、比較例8のカプセル用組成物及び対照例1のビルベリーエキス水溶液をラットに投与してから2時間及び4時間経過後の、ラットにおけるシアニジン 3−グルコシドの吸収量を示すグラフである。 参考例1、2の乳化状態を表す写真である。 25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液に精製水を加え混合後、さらにビルベリーエキス末を加えて混合した。上記の混合物を油と混合し得たW/O型乳化物を水と油にそれぞれ投入した液体と、ビルベリーエキス末を水に溶かした水溶液を水と油に投入した液体を上方から撮影した写真である。 実施例11、12の乳化状態を表す写真である。 25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液、20%分別レシチン閉鎖小胞体の分散液、又は20%ショ糖脂肪酸エステル閉鎖小胞体の分散液に精製水を加え混合後、さらに葛の花エキス末を加え混合した。上記の混合物を油と混合し得たW/O型乳化物を水と油にそれぞれ投入した液体を上方から撮影した写真である。 実施例13及び比較例14のカプセル用組成物を水に混和させ、ろ過を行った後のろ液を撮影した写真である。 実施例14及び比較例15のカプセル用組成物を水に混和させ、ろ過を行った後のろ液を撮影した写真である。 実施例14、比較例15のカプセル用組成物における、細胞に対する総アミノ酸透過量を示すグラフである。 実施例15、比較例16のカプセル用組成物における、細胞に対する総アミノ酸透過量を示すグラフである。 実施例16、17、比較例17のカプセル用組成物における、細胞に対するビタミンB透過量を示すグラフである。 実施例18、比較例18のカプセル用組成物における、細胞に対するビタミンB透過量を示すグラフである。 実施例19、比較例19のカプセル用組成物における、細胞に対するビタミンB透過量を示すグラフである。 実施例20、比較例20のカプセル用組成物における、細胞に対するビタミンC透過量を示すグラフである。 10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液に黒酢粉末、プレセンタエキス末、又はアミノ酸5種を加えた液を油(サフラワー油)と混合したW/O型乳化物を水と油にそれぞれ滴下後、撮影した写真である。 10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液にビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、又はビタミンCを加えた液を油(サフラワー油)と混合したW/O型乳化物を水と油にそれぞれ滴下後、撮影した写真である。
以下、本発明の実施形態を説明するが、これらに本発明が限定されるものではない。
<カプセル用組成物>
本発明のカプセル用組成物は、外相は油相であり、内相は水相であり、両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を含むW/Oエマルション型であり、さらに、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分(以下、「機能性成分」ということがある。)を含み、機能性成分の少なくとも一部が水相に含まれている。これにより、カプセル用組成物は機能性成分の良好な吸収性を有する。本発明において、良好な吸収性を有する理由は、以下のとおりと推測される。
特許文献1に記載されるような機能性素材の粉末を油性界面活性剤により油中に分散させたものをカプセル用組成物とした場合、機能性素材の粉末が油膜に覆われた状態であるため、人体内の水系においては分散、吸収されにくい。またカプセル用組成物が水に接触しても油性界面活性剤が親水性にとぼしいため、水へと移行しにくい。これに対し、本発明の閉鎖小胞体は表面親水性を有するものであり、W/O型エマルションを水系に展開したときに、水系に高い分散性を有する。このように水に対する高い分散性を有するために、体内に摂取されたときに水相にある機能性成分を良好に水へと放出することができる。これにより、水中に含まれる機能性成分が効率的に吸収されるためであると推測される。
本発明の「カプセル用組成物」とは、カプセルに充填されるために用いられる組成物のことを指す。
閉鎖小胞体は、表面が親水性の粒子であり、ファンデルワールス力によって水相中の油相との界面に介在することで、乳化状態を維持する。この乳化機構は、閉鎖小胞体による三相乳化機構として公知であり、界面活性剤による乳化機構、すなわち親水性部分及び疎水性部分をそれぞれ水相及び油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。
ポリフェノールの種類は、特に限定されず、例えば、アントシアニン(シアニジン等)、イソフラボン(テクトリゲニン等)、フラボノール、タンニン、カテキン、ケルセチン等が挙げられる。なお、本発明における「ポリフェノール」とは、同一分子内にフェノール性ヒドロキシ基2つ以上を有する化合物のことを指す。
アミノ酸の種類は、特に限定されず、例えば、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン、ホモセリン、オルニチン、シトルリン、カルニチン、βアラニン等が挙げられる。使用するアミノ酸としては、合成又は精製したアミノ酸を配合してもよいし、アミノ酸を含む食品(黒酢等)や、植物抽出物(野菜の抽出物、植物発酵エキス等)、動物抽出物(プラセンタエキス等)等を配合してもよい。
水溶性ビタミンの種類は、特に限定されず、例えば、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12、ビタミンC等が挙げられる。使用する水溶性ビタミンとしては、合成又は精製した水溶性ビタミンを配合してもよいし、水溶性ビタミンを含む食品(黒酢等)や、植物抽出物(野菜の抽出物、植物発酵エキス等)、動物抽出物(プラセンタエキス等)等を配合してもよい。
機能性成分の含有量は、必要とされる吸収の程度に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、例えばカプセル用組成物に対し0.001質量%以上50質量%以下であってよい。本発明においては、機能性成分の含有量が多くても、W/O型エマルションの乳化状態を安定に保つことができ、機能性成分を多量に吸収することができる。
この観点で、ポリフェノールの含有量は、カプセル用組成物に対し0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、8.0質量%以上であることが好ましい。他方、ポリフェノールの含有量が少ないと、一般に体内への吸収量が少なくなるが、本発明においては、ポリフェノールの吸収性が良好であるため、低量であっても、効率的にポリフェノールを取り込むことができる。この観点から、ポリフェノールの含有量は、カプセル用組成物に対し30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが好ましい。
また、アミノ酸の含有量は、カプセル用組成物に対し0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、8.0質量%以上であることが好ましい。他方、アミノ酸の含有量が少ないと、一般に体内への吸収量が少なくなるが、本発明においては、アミノ酸の吸収性が良好であるため、低量であっても、効率的にアミノ酸を取り込むことができる。この観点から、アミノ酸の含有量は、カプセル用組成物に対し30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが好ましい。
また、ビタミンB(ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12)の含有量は、カプセル用組成物に対し0.001質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上であることが好ましい。他方、ビタミンBの含有量が少ないと、一般に体内への吸収量が少なくなるが、本発明においては、ビタミンBの吸収性が良好であるため、低量であっても、効率的にビタミンBを取り込むことができる。この観点から、ビタミンBの含有量は、カプセル用組成物に対し3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下であることが好ましい。
また、ビタミンCの含有量は、カプセル用組成物に対し0.01質量%以上、0.1質量%以上、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、8.0質量%以上であることが好ましい。他方、ビタミンCの含有量が少ないと、一般に体内への吸収量が少なくなるが、本発明においては、ビタミンCの吸収性が良好であるため、低量であっても、効率的にビタミンCを取り込むことができる。この観点から、ビタミンCの含有量は、カプセル用組成物に対し30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることが好ましい。
本発明のカプセル用組成物は、機能性成分の少なくとも一部が水相に含まれていればよく、油相にも機能性成分が含まれていてもよい。
例えば、機能性成分が水相に含まれることを確認する方法に特に制限はないが、色をもつ機能性成分の場合、例えば、光学顕微鏡によって水相が着色していることを観察することにより確認することができる。色をもたない機能性成分の場合、例えば、イメージング顕微鏡(島津製作所製「iMScope」等)を用いて確認することができる。具体的には、水相中に含まれる成分をイメージング顕微鏡を用いて質量分析計で測定することで確認することができる。
本発明において水相とは、W/Oエマルションにおける内包された滴状の水のことである。本発明において、閉鎖小胞体が高い乳化能を有するため、水の含有量を、カプセル用組成物に対して、0.1〜50質量%の範囲の幅広い範囲で選択することができる。他方、本発明のカプセル用組成物においては、水の含有量が少なくても、十分な機能性成分の吸収性を得ることができる。この観点から、水の含有量は、カプセル用組成物に対して、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、4.0質量%以下であることが好ましい。また、界面活性剤の場合、水分量を多くすると、W/Oエマルションを形成することができず分離する可能性があり、また、内相の水によりカプセルの皮膜が溶解し、カプセル形状が崩れてしまうため、水分量を減らさざるを得ない。これに対し、本発明においては、水分を多く含むことができ、機能性成分を多く水に含ませて使用できる。このことから、例えば、水の含有量はカプセル用組成物に対して0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1.0質量%以上であってよい。
本発明のカプセル用組成物において水分活性は特に限定されないが、保存状態をよくする観点から、例えば、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下であってよい。
本発明において油相とは、W/Oエマルションにおいて水相を内包する油性成分のことである。油相は、カプセル用組成物として用い得る任意の油で構成されてよいが、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級アルコール、シリコーン油、エステル類、脂肪酸等を挙げることができる。油脂としては、サフラワー油、オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、亜麻仁油、ブドウ種子油、シソの実油、ヒマワリ油、エゴマ油、ゴマ油、パーム油、ヤシ油、チアシード油、ココナツ油、ヘンプ油、魚油、クリルオイル、くるみ油、カシューナッツ油、サチャインチ種子油等が挙げられる。ロウ類としては、ミツロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、カポックロウ、サトウキビロウ等が挙げられる。炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、イソパラフィン、流動イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール等が挙げられる。シリコーン油としては、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリル酸メチルヘプチル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルリコール等が挙げられる。脂肪酸としてはポリヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。特に、油相は、吸収性が良好となることから、サフラワー油、亜麻仁油、ブドウ種子油、シソの実油、ヒマワリ油、エゴマ油、オリーブオイルを用いることが好ましい。これら油の成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
油相に含まれる油は、閉鎖小胞体がカプセルの皮膜に付着して水が移行するのを防ぐ観点で、常温常圧下において固形状態であることが好ましい。常温常圧とは、25℃、1気圧の条件のことを指す。
本発明のカプセル組成物は、任意の成分として、融点の高い油を含んでいてもよい。融点の高い油は保存条件下で粘性が高いため、閉鎖小胞体がカプセルの皮膜に付着して水が移行するのを防ぐ効果が期待できる。この観点で、本発明のカプセル組成物は、融点が−6℃以上の油を含んでいてもよい。他方、本発明のカプセル組成物は、体内で溶けて機能性成分の吸収性が上昇する観点から、融点が70℃以下の油を含んでいてもよい。融点が−6℃以上70℃以下である油としては、サフラワー油、ミツロウ等が挙げられる。これらの範囲の融点の油を含まなくとも本発明の効果は得られるが、本発明の効果をより高める観点から、油相に含まれる油の少なくとも1つの油がこれらの範囲の融点を有するものであってもよく、油相に含まれる全ての油がこれらの範囲の融点を有するものであってもよい。なお、油の融点は、融点測定装置等により測定する。
これらの油の含有量は、特に限定されないが、油の量が多くなり、水の量が相対的に少なくなっても吸収性を維持できる点で、カプセル用組成物に対して、10質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上であることが好ましい。他方、本発明では油の量が少なくとも乳化状態を維持できる点で、上記油性成分の含有量は、カプセル用組成物に対して、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下であることが好ましい。
水相の平均粒子径は、特に限定されないが、0.05〜10μmであってよく、乳化状態の安定性の観点で0.1〜5μmであることが好ましい。このような大粒子径の水相を有する安定なW/Oエマルションは、界面活性剤系では構成するのが困難であるのに対し、本発明では容易に構成し得る。水相の平均粒子径は、エマルションの粘度が十分に低い(必要に応じ、希釈する)状態で、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製作所 SALD2100)により測定される。
閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質としては、特に限定されないが、リン脂質やリン脂質誘導体を採用してもよい。
リン脂質としては、両親媒性物質におけるリン脂質として卵黄レシチン又は大豆レシチン、分別レシチン、リゾレシチン等のレシチン又はそれを水素化したものを採用してもよい。これらのうち、リゾレシチン、分別レシチンが特に好ましい。
両親媒性物質としては、脂肪酸エステルを用いてもよい。脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等の食品用途に適したものを使用することが好ましい。これらのうち、ショ糖脂肪酸エステルが特に好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル等が挙げられる。これらのうち、ショ糖ミリスチン酸エステルが特に好ましい。
閉鎖小胞体は、エマルション形成前では平均粒子径8nm〜800nm程度であるが、W/Oエマルション構造においては平均粒子径8nm〜500nm程度である。また、閉鎖小胞体の量は、油相の量に応じて適宜設定されてよく、特に限定されないが、カプセル用組成物に対し合計で0.0001〜5質量%であってよく、具体的には0.1〜3質量%程度の少量で十分である。
本発明の油相及び水相は、その他、カプセル組成物において使用し得る任意の成分を含んでもよい。
例えば、本発明のカプセル組成物は界面活性剤を含んでもよいが、含まない方が好ましい。界面活性剤を含む場合、カプセル組成物に対して、界面活性剤の含有量が1.0質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下であることが好ましい。
以上のエマルションは、両親媒性物質の二分子膜の層状体を水に分散させ、両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を含む乳化剤分散液を形成する工程と、乳化剤分散液と油性成分とを混合することで、W/Oエマルションを形成する工程と、を有する方法により製造される。
また、閉鎖小胞体を十分に形成することで、大きい粒子径を有する水滴が得られやすくなる。このような方法としては、上記の両親媒性物質を分散媒(つまり水)中に添加して撹拌する。
本発明のカプセル用組成物は、ハードカプセル、ソフトカプセルのいずれに用いてもよいが、吸収性に優れることからソフトカプセルに適している。
<カプセル剤>
本発明は、皮膜と、該皮膜に内包された上述のカプセル用組成物と、を備えるカプセル剤を包含する。
皮膜を構成する成分としては、カプセル剤として用いられているものを用いることができる。例えば、カプセル剤の皮膜を構成する主成分としては、水溶性の皮膜成分であることが好ましい。水溶性の皮膜成分としては、ゼラチン、プルラン等が挙げられる。また、主成分にグリセリン、水、デンプン等を加えて皮膜を構成してもよい。これらのうち、主成分としての皮膜は、水溶性であるにもかかわらず、カプセル用組成物中の水が移行しにくく、皮膜の形状を保つことができることから、ゼラチンが好ましい。
本発明のカプセル剤の種類は特に限定されず、例えば、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤のいずれでもあってもよい。
皮膜の膜厚は、例えば、0.1〜1.0mm(0.2〜0.8mm)(皮膜乾燥後)としてよい。
皮膜には、上記の成分の他、着色剤、保存剤、香料等を配合してもよく、皮膜上にワックス、糖衣、セラック、金、銀箔等をコーティングしてもよい。
本発明のカプセル剤は、常法に従って製造することができる。例えば、ロータリー式カプセル充填機を用いて充填内容物をゼラチンシートに噴射し、ゼラチンシートを打ち抜き成型し、乾燥することにより製造することができる。
以下、ポリフェノールとして、ビルベリーエキス末又は葛の花エキス末を含むカプセル用組成物を調製した例について説明する。
<実施例1>
リゾレシチン(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))を精製水に溶解させた溶液(以下、「リゾレシチンの溶液」と略す)から25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を調製した。25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液に精製水とビルベリーエキス末(アントシアニン37%含有)を投入して混合し、調合液を得た。次いで、サフラワー油をホモミキサーで撹拌しながら調合液を徐々に加え(5,000rpm 10min)、実施例1のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例1>
サフラワー油にリゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))、ビルベリーエキス末(アントシアニン37%含有)を投入してからホモミキサーで撹拌(5,000rpm 10min)し、比較例1のカプセル用組成物を調製した。
実施例1及び比較例1における各成分の配合量を表1に示す。
<分散性試験1>
製造した実施例1、比較例1のカプセル用組成物を水に添加し、分散性を評価した。具体的には、まず、50mLビーカーに室温の超純水を45mL入れ、その上にそれぞれのカプセル用組成物サンプルを5mL添加した。添加後、添加から1、2、5分後の様子を写真撮影した。
実施例1のカプセル用組成物の添加直後、添加から1分後、2分後の写真、及び顕微鏡観察の画像を図1に示す。比較例1のカプセル用組成物の添加直後、添加から1分後、2分後の写真、及び顕微鏡観察の画像を図2に示す。図1、図2の比較からわかるように、三相乳化を用いて製造された実施例1のカプセル用組成物の方が、分散性が高かった。
<実施例2>
リゾレシチン(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))の溶液から25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を調製した。25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液に精製水と葛の花エキス末(イソフラボンとして、テクトリジン、テクトリゲニン、テクトリゲニン7−O−キシロシルグルコシドを合計14.8%含む)を投入し、混合して調合液を得た。サフラワー油をホモミキサーで撹拌しながら調合液を徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例2のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例3>
ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))を精製水に溶解させた溶液(以下、「ショ糖脂肪酸エステルの溶液」と略す)から25%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。25%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液に精製水と葛の花エキス末を投入し、混合して調合液を得た。サフラワー油をホモミキサーで撹拌しながら調合液を徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例3のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例4>
分別レシチン(SLP−PIパウダーA(辻製油株式会社製))の溶液から20%分別レシチンの閉鎖小胞体の分散液を調製した。20%分別レシチンの閉鎖小胞体の分散液に精製水と葛の花エキス末を投入し、混合して調合液を得た。サフラワー油をホモミキサーで撹拌しながら調合液を徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例4のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例2>
サフラワー油にリゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))、葛の花エキス末を投入しホモミキサーで撹拌(5,000rpm 10min)し、比較例2のカプセル用組成物を調製した。
<比較例3>
サフラワー油にショ糖脂肪酸エステル粉末(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))、葛の花エキス末を投入しホモミキサーで撹拌(5,000rpm 10min)し、比較例3のカプセル用組成物を調製した。
<比較例4>
サフラワー油に分別レシチン粉末(SLP−PIパウダーA(辻製油株式会社製))、葛の花エキス末を投入しホモミキサーで撹拌(5,000rpm 10min)し、比較例4のカプセル用組成物を調製した。
実施例2〜4及び比較例2〜4における各成分の配合量を表2に示す。
<分散性試験2>
製造した実施例2〜4、比較例2〜4のカプセル用組成物について、上述の「分散性試験1」と同様の方法により、分散性を評価した。その結果、三相乳化を用いて製造された実施例2〜4のカプセル用組成物の方が、比較例2〜4より分散性が高かった。これらのうち、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3の分散性を比較した写真を図3に示す。図3は、それぞれのカプセル用組成物を水に添加してから、2分後の写真を示す。
<実施例5>
リゾレシチン(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))の溶液から25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液aを得た。また、ビルベリーエキス末に精製水、リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液bを得た。調合液aをホモミキサーで撹拌しながら、調合液bを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例5のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例6>
25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を25%分別レシチン(SLP−PIパウダーA(辻製油株式会社製))の閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外、実施例5と同様の手順で実施例6のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例7>
25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を25%ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外、実施例5と同様の手順で実施例7のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例5〜7>
比較例のカプセル用組成物として、他社品A(ビルベリーエキス末51%含有)(比較例5)、他社品B(ビルベリーエキス末50%含有)(比較例6)、他社品C(ビルベリーエキス末40%含有)(比較例7)を準備した。
<比較例8>
サフラワー油にミツロウ、リゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながらビルベリーエキス末を投入(5,000rpm 10min)し、比較例8のカプセル用組成物を調製した。
<比較例9>
リゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))をグリセリン脂肪酸エステル(ポエムS−100(理研ビタミン株式会社製))に変更した点以外は、比較例8と同様の手順で、比較例9のカプセル用組成物を調製した。
<比較例10>
サフラワー油にミツロウ、油溶性界面活性剤としてショ糖脂肪酸エステル(S−370F(三菱化学フーズ株式会社製))を投入し、70℃まで昇温した後、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、混合液cを得た。他方、ビルベリーエキス末に精製水、混合し、混合液dを得た。調合液cをホモミキサーで撹拌しながら、調合液dを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、比較例10のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
実施例5〜7及び比較例8〜10における各成分の配合量を表3〜4に示す。
<細胞試験1>
実施例5、比較例5〜8のカプセル用組成物について、細胞に対するアントシアニン透過量を評価した。
具体的には、Caco−2 p26(ヒト結腸癌由来細胞)を細胞数4.0x10個で24well plate用insert wellへ播種し、10−14日間培養培地(DMEM、10% FBS、1%nonessential amino acid)で培養した。培養後、HBSS−HEPES buffer(Hanks balanced salt solusion、10mM HEPES)により培地を置換し、15分間馴化させた。馴化後、実施例5、比較例5〜8のそれぞれのカプセル用組成物をHBSS−HEPES bufferで1000倍希釈したサンプル100μLをinsert wellのapical sideへ添加し、6時間培養した。6時間後、basal sideのbufferを回収し、遠心エバポレーター(TOMY製)で完全に乾燥させた。乾燥後100μLの水で溶解し、さらに100μLの2M クエン酸を加え、溶液を520nmの吸光度を測定することでアントシアニン濃度(シアニジン量として)を計測した。その結果を図4に示す。
図4に示すように、三相乳化を用いた実施例5のカプセル用組成物は、比較例5〜8より高いアントシアニンの細胞透過性を有することがわかった。
<細胞試験2>
細胞試験1と同様の手順で、実施例5〜7、比較例9、10について、アントシアニン(シアニジン量として)の細胞に対する透過量を調べた。その結果を図5に示す。
図5に示すように、分別レシチン閉鎖小胞体を用いた実施例6、ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体を用いた実施例7においても、比較例9、10よりアントシアニンの細胞透過性が高いことがわかり、特に、比較例10のような界面活性剤乳化を用いたW/Oエマルション型のカプセル用組成物よりアントシアニンの細胞透過性が高いことがわかった。
<実施例8>
リゾレシチン(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))の溶液から25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液eを得た。また、葛の花エキス末に精製水、リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液fを得た。調合液eをホモミキサーで撹拌しながら、調合液fを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例8のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例9>
25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を25%分別レシチン(SLP−PIパウダーA(辻製油株式会社製))の閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外、実施例8と同様の手順で実施例9のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例10>
25%リゾレシチンの閉鎖小胞体の分散液を25%ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外、実施例8と同様の手順で実施例10のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例11>
サフラワー油にミツロウ、リゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながら葛の花エキス末を投入(5,000rpm 10min)し、比較例11のカプセル用組成物を調製した。
<比較例12>
リゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))を分別レシチン粉末(SLP−PIパウダーA(辻製油株式会社製))に変更した点以外は、比較例11と同様の手順で、比較例12のカプセル用組成物を調製した。
<比較例13>
リゾレシチン粉末(SLP−ホワイトリゾ(辻製油株式会社製))をショ糖脂肪酸エステル粉末(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))に変更した点以外は、比較例11と同様の手順で、比較例13のカプセル用組成物を調製した。
実施例8〜10及び比較例11〜13における各成分の配合量を表5、6に示す。
<細胞試験3>
細胞試験1と同様の手順で、実施例8〜10及び比較例11〜13について、テクトリゲニンの細胞に対する透過量を調べた。その結果を図6に示す。
図6に示すように、三相乳化を用いた実施例8〜10は、比較例11〜13よりテクトリゲニンの細胞透過性が高かった。この結果より、三相乳化を用いることで、葛の花エキス末を用いた場合でも、細胞透過性が高くなることがわかった。
<カプセルの製造>
実施例5のカプセル用組成物から、カプセルを製造した。具体的には、ゼラチン100質量部にグリセリン30〜40質量部、水80〜90質量部を加えて80℃に加温し、撹拌溶解してゼラチン溶液を調製し、ロータリー式カプセル充填機を用いて充填内容物をゼラチンシートに噴射し、ゼラチンシートを打ち抜き成型し、乾燥することにより製造した。
<細胞試験4>
実施例5のカプセルを用いて、水分活性の違いによるアントシアニンの細胞透過性の変化を調べた。具体的には、実施例5のカプセルについて、40℃で2ヶ月保管し、保管前と保管後における水分量、水分活性の変化に対して、アントシアニンの細胞透過性がどのように変化するかを調べた。細胞透過性の変化は、細胞試験1で述べた方法と同様の手順で行った。また、保管前後の乳化状態、水分量、水分活性を測定し、さらに顕微鏡による観察も行った。その結果を図7、8に示す。図7、8中、「0M」は、保管前の実施例5のカプセルを指し、「40℃、2M」は、40℃で2ヶ月保管後の実施例5のカプセルを指す。図7、8に示すように、水分活性が2ヶ月後に低下しているにもかかわらず、アントシアニンであるシアニジンの細胞透過性はほぼ変わらず、乳化状態も維持されていた。この結果より、水分活性(水分量)が低下しても、吸収性は維持されることがわかった。
<動物試験>
実施例5のW/Oエマルション型のカプセル用組成物、比較例8のカプセル用組成物に加え、対照例1としてビルベリーエキス水溶液を準備し、これらについてラットに対するアントシアニン(シアニジン量として)の細胞透過性を評価した。
まず、11週齢の雄性SDラットを16時間以上絶食した。次いで、平均体重値が均一となるように、3群に群分けした(ビルベリーエキス水溶液:n=2、三相乳化製法:n=4、従来製法:n=4)。また、各被験物質中に含まれるビルベリーエキス濃度が200mg/mLとなるようにサフラワー油にて希釈後、10mL/kgにて強制経口投与した。投与2時間後及び4時間後に尾静脈より採血を行い、得られた血液を室温で30分以上静置した後、遠心分離(室温、5分、12,000rpm;センテック3200、株式会社久保田製作所)し、血清を採取した。血清の採取後、固相抽出カラム(Sep−Pak C18 Plus Light Cartridge;日本ウォーターズ株式会社)を用いて血清中の夾雑物を除去後、HPLC/MS(HPLCシステム:Agilent 1260 Infinity LC;アジレント・テクノロジー株式会社、MSD:Agilent 6120 Quadrupole System;アジレント・テクノロジー株式会社)を用いて血清中アントシアニン量(Cyanidin 3−O−glucoside)を測定した。その結果を図9に示す。
図9に示すように、投与後2時間及び4時間のいずれにおいても、比較例8より三相乳化を利用した実施例5の方が、シアニジンの吸収性が高いことがわかった。
<三相乳化能の確認1>
(参考例1)
ビルベリーエキス末を含まない以外は実施例1と同様の手順で、下記の表7の処方のとおりに参考例1のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
(参考例2)
ミツロウ及びビルベリーエキス末を用いない以外は、比較例10と同様の手順で下記の表7の処方のとおりに参考例2のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
図10に示すように、サフラワー油で20倍希釈した後に、参考例1では乳化状態が維持されていたのに対し、参考例2では乳化状態が維持されていなかった。この結果より、リゾレシチン閉鎖小胞体を用いることで三相乳化が実現されていることが確認できた。
<W/O型エマルションの確認1>
25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液に精製水を加え混合後、さらにビルベリーエキス末を加え、混合した。上記の混合物を油(サフラワー油)と混合しW/O型乳化物を得た。これを水と油にそれぞれ投入した。他方、ビルベリーエキス末を水に溶かした水溶液を水と油(サフラワー油)にそれぞれ投入した。その結果を図11に示す。図11中、上段は、25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液に精製水、ビルベリーエキス末を加えて、混合後、この混合物を油と混合し得たW/O型乳化物を水と油にそれぞれ投入した液体についての写真であり、下段は、ビルベリーエキス末のみを水又は油に投入した液体についての写真である。図11に示すように、25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液を用いたものでは、油中に分散できていることから、W/O型エマルションが形成されていることが確認できた。
<三相乳化能の確認2>
(実施例11)
ビルベリーエキス末を葛の花エキス末に変更し、かつ、25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液を20%分別レシチン閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外は、実施例1と同様の手順で、下記の表8の処方のとおりに実施例11のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
(実施例12)
20%分別レシチン閉鎖小胞体の分散液を20%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液に変更した点以外は、実施例11と同様の手順で、下記の表8の処方のとおりに実施例12のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
図12に示すように、サフラワー油で80倍希釈した後に、実施例11、12においてともに乳化状態が維持されていた。この結果より、希釈しても三相乳化により安定に乳化されていることが確認できた。
<W/O型エマルションの確認2>
25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液、20%分別レシチン閉鎖小胞体の分散液、又は20%ショ糖脂肪酸エステル閉鎖小胞体の分散液に葛の花エキス末を加え、混合した。上記の混合物を油(サフラワー油)と混合しW/O型乳化物を得た。これを水と油にそれぞれ投入した。その結果を図13に示す。図13に示すように、25%リゾレシチン閉鎖小胞体の分散液、20%分別レシチン閉鎖小胞体の分散液、又は20%ショ糖脂肪酸エステル閉鎖小胞体の分散液を用いたものでは、油中に分散できていることから、葛の花エキス末を水相に含んだ状態においてもW/O型エマルションが形成されていることが確認できた。
以下、黒酢粉末、プラセンタエキス末、又はこれらに含まれるアミノ酸及び水溶性ビタミンを含むカプセル用組成物を調製した例について説明する。
<実施例13>
ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の溶液から10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液gを得た。また、黒酢粉末(井村屋シーズニング株式会社製)に精製水、ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液hを得た。調合液gをホモミキサーで撹拌しながら、調合液hを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例13のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例14>
ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の溶液から10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液gを得た。また、プラセンタエキス末(株式会社公知貿易製)に精製水、ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液iを得た。調合液gをホモミキサーで撹拌しながら、調合液iを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例14のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例14>
サフラワー油にミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル(ポエムS−100(理研ビタミン株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながら黒酢粉末(井村屋シーズニング株式会社製)を投入(5,000rpm 10min)し、比較例14のカプセル用組成物を調製した。
<比較例15>
サフラワー油にミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル(ポエムS−100(理研ビタミン株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながらプラセンタエキス末(株式会社公知貿易製)を投入(5,000rpm 10min)し、比較例15のカプセル用組成物を調製した。
実施例13、14、及び比較例14、15における各成分の配合量を表9に示す。
<分散性試験3>
製造した実施例13、14、及び比較例14、15のカプセル用組成物5gをチューブに分注し、40℃の水20mLを入れて、20回転倒混和を行った。そして、ろ過を行い、ろ液の色の濃淡を目視で観察した。実施例13及び比較例14のろ過液の写真を図14に示す。実施例14及び比較例15のろ過液の写真を図15に示す。
図14に示すように、三相乳化を用いて製造された実施例13のカプセル組成物では、ろ液が原料の黒酢粉末と同等の色を呈し、比較例14のカプセル組成物に比べ分散性が高いことがわかった。同様に、図15の結果に示すように、三相乳化を用いて製造された実施例14のカプセル組成物では、ろ液が原料のプラセンタエキス末と同等の色を呈し、比較例15のカプセル組成物に比べ分散性が高いことがわかった。
<実施例15>
本実施例では、黒酢に特徴的な5種のアミノ酸粉末(アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、プロリン)を各2%(計10%)ずつ用いて、細胞試験5を行った。なお、アスパラギン酸及びグルタミン酸は、水に難溶であるため、ナトリウム塩を使用した。
具体的には、ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の溶液から10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液gを得た。また、5種のアミノ酸粉末に精製水、ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液jを得た。調合液gをホモミキサーで撹拌しながら、調合液jを徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例15のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例16、18〜20>
本実施例では、代表的な水溶性ビタミンである、ビタミンB(チアミン塩酸塩)、ビタミンB(リボフラビンリン酸エステルナトリウム)、ビタミンB(ピリドキシン塩酸塩)、ビタミンC(アスコルビン酸ナトリウム)をそれぞれ溶解性に合わせて配合割合を調整して用いた。
具体的には、ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の溶液から10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。他方、サフラワー油にミツロウを投入し、70℃まで昇温した。ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液gを得た。また、それぞれの水溶性ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC)に精製水、ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を加え混合し、閉鎖小胞体の調合液k1〜k4を得た。調合液gをホモミキサーで撹拌しながら、調合液k1〜k4を徐々に投入(5,000rpm 10min)し、実施例16、18〜20のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<実施例17>
ショ糖脂肪酸エステル(M−1695(三菱化学フーズ株式会社製))の溶液から10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を調製した。10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液に精製水とビタミンB(チアミン塩酸塩)を投入して混合し、調合液を得た。次いで、サフラワー油をホモミキサーで撹拌しながら調合液を徐々に加え(5,000rpm 10min)、実施例17のW/Oエマルション型のカプセル用組成物を調製した。
<比較例16>
サフラワー油にミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル(ポエムS−100(理研ビタミン株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながら、5種のアミノ酸粉末(アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、アルギニン、プロリン)を各2%(計10%)を投入(5,000rpm 10min)し、比較例16のカプセル用組成物を調製した。
<比較例17〜20>
サフラワー油にミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル(ポエムS−100(理研ビタミン株式会社製))を投入し、70℃まで昇温し、ミツロウが完全に溶解した後に40℃まで冷却し、調合液を得た。該調合液をホモミキサーで撹拌しながら、水溶性ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC)をそれぞれ投入(5,000rpm 10min)し、比較例17〜20のカプセル用組成物を調製した。
実施例15〜20、及び比較例16〜20における各成分の配合量を表10〜12に示す。
<細胞試験5>
実施例14〜20、比較例15〜20のカプセル用組成物について、上述した細胞試験1と同様に細胞試験5を行って、細胞に対する総アミノ酸と各水溶性ビタミンの透過量を評価した。
具体的には、Caco−2(ヒト結腸癌由来細胞)を細胞数4.0×10個で24well plate用insert wellへ播種し、約14日間培養培地(DMEM、10%FBS、1%nonessential amino acid)で培養した。培養後、HBSS−HEPES buffer(Hanks balanced salt solution、10mM HEPES)により培地を置換し、30分間馴化させた。馴化後、実施例14〜20、比較例15〜20のそれぞれのカプセル用組成物をHBSS−HEPES bufferで適宜希釈したサンプル100μLをinsert wellのapical sideへ添加し、約3時間培養した。培養後、basal sideのbufferを回収し、適宜遠心エバポレーター(TOMY製)で濃縮もしくはbufferで希釈した後、L−Amino Acid Quantitation Kit(BioVision社製)、VitaFastビタミンB1(チアミン)キット(アヅマックス株式会社製)、VitaFastビタミンB2(リボフラビン)キット(アヅマックス株式会社製)、VitaFastビタミンB6(ピリドキシン)キット(アヅマックス株式会社製)、ビタミンC定量キット(株式会社シマ研究所製)を用いて、アミノ酸濃度及び各ビタミン濃度を測定した。その結果を図16〜21に示す。
図16〜21に示されるように、三相乳化を用いた実施例14〜20のカプセル用組成物は、比較例15〜20より高い、アミノ酸、又は水溶性ビタミン(ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC)の細胞透過性を有し、良好な吸収性を得られることがわかった。また、実施例16と実施例17との比較から、ミツロウの有無は、細胞透過性には影響をしないことが確認された。
<W/O型エマルションの確認3>
10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液に精製水を加え混合後、さらに黒酢粉末、プラセンタエキス末、アミノ酸5種、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンCを、下記の表13の処方のとおりに加え、混合した。そして、各混合物を油(サフラワー油)と混合しW/O型乳化物を得た。これを水と油にそれぞれ投入した。その結果を図22、23に示す。
図22、23に示すように、10%ショ糖脂肪酸エステルの閉鎖小胞体の分散液を用いた実施例21〜27では、いずれも水中では水と分離し、油中では均一に拡散できていることから、黒酢粉末、プラセンタエキス末、アミノ酸5種、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンCを水相に含んだ状態においてもW/O型エマルションが形成されていることが確認できた。

Claims (4)

  1. 外相は油相であり、内相は水相であり、
    両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を含むW/Oエマルション型であり、
    さらに、ポリフェノール、アミノ酸及び水溶性ビタミンからなる群より選ばれる1種以上の成分を含み、
    前記成分の少なくとも一部が水相に含まれているカプセル用組成物。
  2. 前記油相に含まれる油が、常温常圧下において固形状態である請求項1に記載のカプセル用組成物。
  3. 皮膜と、該皮膜に内包された請求項1又は2に記載のカプセル用組成物と、を備えるカプセル剤。
  4. 前記皮膜がゼラチンを含む、請求項3に記載のカプセル剤。
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