JP2018095532A - ガラスの化学強化処理用溶融塩及び化学強化ガラス物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い圧縮応力値が得られ、得られた化学強化ガラス物品の耐ヤケ性が良好な溶融塩の提供。
【解決手段】ガラスの化学強化処理用溶融塩であって、硝酸塩と、炭酸水素塩及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1つからなる添加物を含む組成物からなり、前記硝酸塩に対して前記添加物をモル比で0.001〜0.035倍未満含み、前記硝酸塩は、硝酸カリウムを含む無機塩であり、前記炭酸水素塩は、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも1つからなり、前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1つからなり、前記溶融塩においてナトリウムイオンのモル数及びカリウムイオンのモル数の合計に対するナトリウムイオンのモル数の比率が0〜5モル%未満である、ガラスの化学強化処理用溶融塩。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガラスの化学強化処理用溶融塩及び化学強化ガラス物品の製造方法に関する。
硝酸カリウムの溶融塩に、ガラス物品を浸漬し、該ガラス物品表層部で、該ガラス物品に含まれていたナトリウムイオンを前記硝酸カリウム由来のカリウムイオンとイオン交換を行うことで前記ガラス物品表面に圧縮応力層を形成する方法が、前記ガラス物品を化学的に強化する方法として行われている。この方法で得られる強化ガラス物品は、化学強化ガラス物品と呼ばれる。
化学強化ガラス物品の強度向上を裏付けるものそして、表面圧縮応力と圧縮応力層深さがある。
表面圧縮応力(Compressive stress、以下CSと記す場合もある)とは、ガラス物品の最表面層に形成されている圧縮応力であり、イオン交換によってよりナトリウムイオンより大きな体積を持つカリウムイオンがガラス物品の表面層に侵入することにより発生する。この圧縮応力が、ガラス物品への破壊をもたらす引張り応力に抵抗することにより、化学強化されたガラス物品はそうでないガラス物品と比較して高い強度を有する。このように表面圧縮応力は、ガラス物品強度向上の直接的指標として用いられる。
また、圧縮応力層深さ(Depth of layer、以下DOLと記す場合もある)とは、ガラス物品の最表面を基準として圧縮応力が形成されている領域の深さであり、この層が深ければ深いほど、ガラス物品の表面に存在するより大きなマイクロクラック(亀裂)を押さえ込むことが可能であり、傷に対するガラス板の強度低下を防ぐことができる。
化学強化処理において同じ溶融塩を使用続けると、化学強化処理に供していない溶融塩(初期状態の溶融塩)、で化学強化した場合と比べて、ガラス物品に付与できる表面圧縮応力値が累積ガラス処理面積に応じて徐々に低下する。
そこで、特許文献1には、溶融塩の使用寿命を十分に延長するために、硝酸カリウムを含有し、さらに炭酸アニオン及びリン酸アニオンのうち少なくとも一方を含有した溶融塩を開示している。具体的には、硝酸カリウムに炭酸カリウムを3.5mol%以上混合することで、無添加の場合と比べて、得られる化学強化ガラスの圧縮応力値が増加することを開示している。得られる化学強化ガラスの圧縮応力値が増加するので、無添加の場合に得られる圧縮応力値を基準として考えれば、溶融塩の使用寿命は延ばすことは可能となる。
化学強化ガラスは、高温高湿度下においてガラス表面にヤケが発生することが知られているが、ヤケが発生しない化学強化ガラスの製造方法として、アルカリイオンとしてナトリウムイオンを含むガラスの表面を0.1規定の硝酸に接触させてガラス表面近傍にナトリウムイオンが除去された層を形成し、しかる後ガラス表面をナトリウムイオンよりも大きいイオン半径を有する硝酸カリウム溶融塩に接触させる方法が特許文献2に開示されている。
また、非特許文献1は、硝酸カリウムに炭酸カリウムを混合した、475℃の溶融塩で、ソーダライムガラスを3.5時間浸漬した場合に得られる化学強化ガラスの圧縮応力値の変化を開示している。同文献によれば、硝酸カリウム100% よりも,炭酸カリウムを数%含む方が、高い圧縮応力値が得られることがわかる。
国際公開2014/045978号 特開平7−223843号公報 NEW GLASS、「イオン交換法によるガラスの化学強化」、 Vol.23、 No.3、2008
硝酸カリウムに炭酸カリウムを添加した、特許文献1又は非特許文献1に記載の混合溶融塩にガラス物品を浸漬して得られる化学強化ガラス物品は、炭酸カリウムが無添加の場合と比べて、高い圧縮応力値が得られる。しかしながら、前記化学強化ガラス物品の表面にはイオン交換により導入された多量のカリウムイオンが存在するため、高温高湿の雰囲気下では導入されたカリウムイオンがガラス表面から溶出して、ガラス表面にいわゆるヤケと呼ばれる異質物が生成しやすいことが、本発明の検討で明らかになった。このヤケの生じ難さ、すなわち耐ヤケ性の良否が化学強化されたガラス物品の製品寿命に影響を与える。
また、ガラス物品の表面近傍にアルカリが少なくシリカが富んだ層を形成させる特許文献2の方法は、溶融塩に接触させて化学強化させる前の工程として、0.1規定の硝酸に硝酸水溶液に20時間漬け、その後洗浄乾燥する工程が必要で、時間当たりの生産効率は悪化する。
本発明は、炭酸カリウムの添加の効果、すなわち、高い圧縮応力値が得られるという効果を得つつ、得られた化学強化ガラス物品の耐ヤケ性を良好とできる溶融塩と該溶融塩を用いた化学強化ガラス物品の製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するためになしたものである。
即ち、本発明は、ガラスの化学強化処理用溶融塩であって、硝酸塩と、炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つとを含む組成物からなり、前記硝酸塩に対して前記の炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つをモル比で0.001倍以上0.035倍未満含む。前記硝酸塩は、硝酸カリウムを含む無機塩を用いる。前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1つからなる。前記溶融塩においてナトリウムイオンのモル数及びカリウムイオンのモル数の合計に対するナトリウムイオン(Naイオン /Naイオン+Kイオン)のモル数の比率が0〜5モル%である。
硝酸塩及び炭酸塩を含む組成物からなる前記化学強化ガラス物品製造用溶融塩に、前記硝酸塩に対して前記炭酸塩をモル比で0.001倍以上0.035倍未満含ませることによって、意外にも、化学強化ガラス物品の良好な耐ヤケ性と高い圧縮応力値を両立できることを見出した。
また、本発明は、前記溶融塩に、ガラス物品を浸漬する工程を含むことを特徴とする、化学強化ガラス物品の製造方法、である。
前記化学強化ガラス物品は、プレッシャークッカー試験(温度が121℃、湿度が99.8%RHの条件下にてガラス板を24時間保持)後のガラスのヘイズ値(Haze)が2%以下であることを特徴とする。
本発明のガラスの化学強化処理用溶融塩は、良好な耐ヤケ性と高い圧縮応力とが両立した化学強化ガラス物品の提供に奏功する。
硝酸カリウム溶融塩中への炭酸カリウム微量添加量と圧縮応力値向上の関係を示したグラフである。 硝酸カリウム溶融塩中への炭酸カリウム微量添加量とプレッシャークッカー試験後のHaze値との関係を示したグラフである。 炭酸カリウム0.15モル%添加時の溶融塩延命効果を示したグラフである。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
本発明の実施形態に係る化学強化ガラス物品とは、ガラス物品表面で、ガラス中に最も多く含有されるナトリウムイオンを、前記ナトリウムイオンよりイオン半径の大きいカリウムイオンに置換するイオン交換により強化されたガラス物品である。
<イオン交換前のガラス物品について>
本発明で用いるイオン交換前のガラス物品のガラス組成はナトリウムを含んでいればよく、成形、化学強化処理による強化が可能な組成を有するものである限り、種々の組成のものを使用することができる。具体的には、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリバリウムガラス、アルミノホウ珪酸ガラス等を挙げることができる。
例えば、ソーダライムガラスとしては、実質的に質量%で、SiO:65〜75%、NaO+KO:5〜20%、CaO:2〜15%、MgO:0〜10%、Al:0〜5%からなる組成を挙げることができる。
イオン交換前のガラス物品の製造方法は特に限定されない。例えば、ガラス物品としてガラス板を挙げることができるが、このガラス板は、所望のガラス原料を連続溶融炉に投入し、ガラス原料を好ましくは1500〜1600℃で加熱溶融し、清澄した後、成形装置に供給した上で溶融ガラスを板状に成形し、徐冷することにより製造することができる。成形装置の種類により、ガラス板の成形には種々の方法を採用することができる。例えば、フロート法、ロールアウト法及びダウンドロー法等、一般的なガラス成形方法を挙げることができるが、これらの中では、フロート法により成形されることが好ましい。
また、イオン交換前のガラス物品としてガラス板の表面は、上記の成形方法により成形されたままの状態でもよいし、弗酸エッチング等を用いて表面を荒らすことにより、防眩性等の機能性を付与した状態でもよい。
ガラス物品は、必要に応じて化学強化処理前に研磨してもよい。研磨方法としては、例えば研磨スラリーを供給しながら研磨パッドで研磨する方法が挙げられ、研磨スラリーには、研磨材と水を含む研磨スラリーが使用できる。研磨材としては、酸化セリウム(セリア)およびシリカが好ましい。
ガラス物品を研磨した場合、研磨後のガラス物品を洗浄液により洗浄する。洗浄液としては、中性洗剤および水が好ましく、中性洗剤で洗浄した後に水で洗浄することがより好ましい。中性洗剤としては市販されているものを用いることができる。
前記洗浄工程により洗浄したガラス基板を、洗浄液により最終洗浄する。洗浄液としては、例えば、水、エタノールおよびイソプロパノールなどが挙げられる。中でも水が好ましい。
前記最終洗浄ののち、ガラス物品を乾燥させる。乾燥条件は、洗浄工程で用いた洗浄液、およびガラス物品の特性等を考慮して最適な条件を選択すればよい。
イオン交換前のガラス物品として、ガラス板の厚さの上限は特に限定されないが、3mmであることが好ましく、2mmであることがより好ましく、1.8mmであることがさらに好ましく、1.1mmであることが特に好ましい。また、イオン交換前のガラス板の厚さの下限も特に限定されないが、0.05mmであることが好ましく、0.1mmであることがより好ましく、0.2mmであることがさらに好ましく、0.3mmであることが特に好ましい。
<ガラスの化学強化処理用溶融塩について>
本発明のガラスの化学強化処理用溶融塩(以下、本発明の溶融塩とも称する)は、無機カリウム塩を含有する。無機カリウム塩としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、炭酸カリウム、または炭酸水素カリウムなどが挙げられるが、被化学強化ガラスの歪点(通常500〜600℃)以下に融点を有するものが好ましく、硝酸カリウム(融点330℃)を主成分として含有する無機カリウム塩がより好ましい。硝酸カリウムが主成分であれば、ガラスの歪点以下で溶融状態とすることが可能であり、かつ使用温度領域においてハンドリングが容易な点から、好ましい。ここで主成分とは50質量%以上含有することを意味する。
また、本発明のガラスの化学強化処理用溶融塩は、前記無機カリウム塩に、炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。前記の炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが挙げられる。
以下、無機カリウム塩として硝酸カリウムを使用する場合について説明する。
本発明の溶融塩はさらに、主成分である硝酸カリウムに加えて、炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する。これにより、炭酸水素塩及び炭酸塩からなる郡より選ばれる少なくとも1つを含まない場合に比して化学強化ガラス物品の耐ヤケ性を良好としつつ高い圧縮応力を得ることができる。また、溶融塩の使用寿命を延ばすことができる。
前記の炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムが挙げられる。前記の炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つは、前記硝酸塩に対して0.035倍以上多く含ませると、化学強化されたガラス物品の耐ヤケ性が低下し好ましくない。前記耐ヤケ性の観点から考慮すると0.03倍以下がより好ましく、さらに0.0015倍以下が好ましい。また、ガラス物品の強度、溶融塩の高寿命化の観点から考慮すると、CSは、700MPa以上有するのが好ましい。そうすると、前記硝酸塩に対して前記炭酸塩0.001倍以上含ませるのが好ましい。
硝酸カリウムを含む溶融塩をガラス物品の化学強化に使用を続けると、ガラス中のナトリウムと溶融塩中のカリウムとのイオン交換によって前記溶融塩中のナトリウムイオン濃度が増加して行き、使用を続けると化学強化したガラス物品の表面圧縮応力値が低下して行く。所定の表面圧縮応力値まで下がると、前記溶融塩の寿命が来たと判断し新しい溶融塩に交換する。しかし、本発明の溶融塩は、使用を続けても従来の溶融塩と比べ高い表面圧縮応力値を得ることができるので、所定の表面圧縮応力値を維持する累積のガラス物品の処理面積の増大が期待できる。
また、前記ガラスの化学強化処理用溶融塩の調製時においてナトリウムイオンのモル数及びカリウムイオンのモル数の合計に対するナトリウムイオン(Naイオン/Naイオン+Kイオン)のモル数の比率が0〜5モル%であることが好ましい。前記モル数の比率が5モル%より大であると、すなわちNaイオン過剰であるとガラス物品の最表面層に十分な表面圧縮応力を得ることができない。前記モル数は3モル%以下がより好ましく、1.5モル%以下がさらに好ましい。
<ガラスの化学強化処理用溶融塩の調製方法について>
容器に、硝酸カリウムと共に、前記の炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つとを仕込み、硝酸カリウムの融点以上の温度に加熱して溶解することで、溶融塩を調製する。前記溶融塩の主成分は硝酸カリウムで、全溶融塩の重量に対して50質量%以上前記溶融塩に含む。硝酸カリウムは、融点が330℃であり、被化学強化ガラス物品の歪点は通常500〜600℃であるので、硝酸カリウムを主成分とする前記溶融塩は、330〜500℃の温度範囲内で溶融を行うのが好ましい。
前記溶融塩の容器は、金属、石英、セラミックスなどを用いることができる。中でも、耐久性の観点から金属素材が好ましく、耐食性の観点からステンレススチール(SUS)が材質として好ましい。
攪拌時間は、1分〜10時間が好ましく、10分〜2時間がより好ましい。その後、析出物が沈殿するまで静置する。この析出物には、飽和溶解度を超えた炭酸カリウムや炭酸ナトリウムが含まれる。
<化学強化ガラス物品の製造方法(化学強化処理方法)について>
次に、本発明の溶融塩を用いた化学強化ガラス物品の製造方法、即ち、化学強化処理方法を説明する。
化学強化処理は、ガラス物品を溶融塩に浸漬し、ガラス物品中の金属イオンを、溶融塩中のイオン半径の大きな金属イオンと置換することで行われる。このイオン交換によってガラス物品表面の組成を変化させ、ガラス物品表面層に圧縮応力を発生させることで、ガラス物品を強化することができる。
先ず、ガラス物品を予熱し、前記溶融塩を、化学強化を行う温度に調整する。次いで予熱したガラス物品を溶融塩中に所定の時間浸漬したのち、ガラス物品を溶融塩中から引き上げ、放冷する。なお、ガラス物品には、化学強化処理の前に、用途に応じた形状加工、例えば、切断、端面加工および穴あけ加工などの機械的加工を行うことが好ましい。
ガラス物品の予熱温度は、溶融塩に浸漬する温度に依存するが、一般に100℃以上であることが好ましい。
化学強化温度は、被強化ガラス物品の歪点(通常500〜600℃)以下が好ましく、より高い圧縮応力層深さ(Depth of Layer:DOL)を得るためには特に350℃以上が好ましい。
ガラス物品の溶融塩への浸漬時間は10分〜12時間が好ましく、30分〜10時間がさらに好ましい。かかる範囲にあれば、強度と圧縮応力層の深さのバランスに優れた化学強化ガラス物品を得ることができる。
以下、本発明の実施形態をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
化学強化後のガラス物品の各特性評価方法は以下の方法で実施した。
<表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)の測定>
表面応力計(株式会社折原製作所製、型番FSM−6000LE)を用いて表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)の測定をした。表面応力計による測定において、屈折率は、1.52、光弾性定数は26.0(nm/cm)/MPaとした。
<耐ヤケ性評価>
プレッシャークッカー試験機(株式会社平山製作所製、型番PC−422R2)を用いて、温度121℃、湿度99.8%の条件下で24時間の高温高湿度下保存試験を実施した。その後、テーブルヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型番HZ−T)を用い、JIS K 7136:2000の規定に基づいてD65光源にてヘイズ(Haze)値を測定した。ヘイズ値は、光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合のことである。ヘイズ値が小さいほどガラス物品の透明性に優れているということであり、即ち、高温高湿度下に保存された場合の耐ヤケ性に優れているということである。
[硝酸カリウム−炭酸カリウム系溶融塩組成の場合]
(参考例1−1)
SUS製の容器に硝酸カリウム350gを投入し、当該塩が430℃となるように加熱を行った。次に、厚さ1.1mmのソーダライムガラス板(質量%でSiO:71.3%、NaO:13.0%、KO:0.85%、CaO:9.0%、MgO:3.6%、Al:2.0%、Fe:0.15%、SO:0.1%)を430℃に保持した電気炉に入れ、約30分予備加熱を行った後に、430℃の溶融塩に浸漬させた。この時、浸漬時間は4時間とした。強化処理後、前記ガラス板を塩浴中から取出し、水洗して試験片を得た。この試験片を用いて、表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)の測定及び、耐ヤケ性評価でHaze値を求めた。
(比較例1)
SUS製の容器に硝酸カリウム350gと炭酸カリウム0.096g(硝酸カリウムに対してモル比で0.0002倍)とを加え、当該塩が430℃となるように加熱を行った。次に、厚みが1.1mmのソーダライムガラス板(質量%でSiO:71.3%、NaO:13.0%、KO:0.85%、CaO:9.0%、MgO:3.6%、Al:2.0%、Fe:0.15%、SO:0.1%)を430℃に保持した電気炉に入れ、約30分予備加熱を行った後に、430℃の溶融塩に浸漬させた。この時、浸漬時間は4時間とした。強化処理後、前記ガラス板を塩浴中から取出し、水洗して試験片を得た。この試験片を用いて、表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)の測定及び、耐ヤケ性評価でHaze値を求めた。
(実施例1−1、2〜5及び比較例2〜4)
表1に示したように、炭酸カリウムの添加量を変えた以外は、硝酸カリウムの添加量、溶融塩温度及びガラス板の溶融塩への浸漬時間は比較例1と同じ条件にして化学強化処理を行い、表面圧縮応力(CS)と圧縮応力層深さ(DOL)の測定及び、耐ヤケ性評価でHaze値を求めた。
上記の参考例1−1と実施例1−1、2〜5及び比較例1〜4との溶融塩組成並びCS、DOL及びHaze値を表1に示す。
Figure 2018095532

[硝酸カリウム−硝酸ナトリウム−炭酸カリウム系溶融塩組成の場合]
(参考例1−2〜1−5)
表2に示した量の硝酸カリウムと硝酸ナトリウムとを投入した以外は、参考例1−1と同様の方法で試験片を得た。この試験片を用いて、表面圧縮応力(CS)を測定した。
(実施例1−2〜1−5)
表2に示した量の硝酸カリウムと炭酸カリウムとさらに硝酸ナトリウムを投入した以外は、実施例1−1と同様の方法で試験片を得た。この試験片を用いて、表面圧縮応力(CS)を測定した。
参考例1−2〜実施例1−5の溶融塩組成及びCSを表2に示す。
Figure 2018095532


[溶融塩への炭酸塩添加の効果]
(CSへの効果)
表1に示した実施例1−1、2〜5及び比較例2〜4の結果に基づき、硝酸カリウムに炭酸カリウムを添加した溶融塩にて化学強化した場合の、硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比(倍)と得られたCSとの関係を図1に示した。図1から、CSが700MPa以上となるのは、硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比が0.001倍以上であることが分った。
(耐ヤケ性への効果)
表1に示した実施例1−1、2〜5及び比較例2〜4の結果に基づき、硝酸カリウムに炭酸カリウムを添加した溶融塩にて化学強化した場合の、硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比(倍)と前記のプレッシャークッカー試験後のHaze値との関係を図2に示した。図2から、硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比が0.038倍以降ではHaze値が2.5%以上と急激に高くなっており、炭硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比が0.035倍辺りを境として、これ以下の添加量であれば、Haze値を2%を超えない程度に低く保て、耐ヤケ性を良好に維持できることがわかった。
以上から、硝酸カリウムに対して炭酸カリウムをモル比で0.001以上0.035倍未満の範囲で含ませることにより高いCSと耐ヤケ性両方を兼ね備えた化学強化ガラス物品を得ることができることが分かった。
(溶融塩の寿命への効果)
表2に示した参考例1−1〜1−5及び実施例1−1〜1−5の結果に基づき、硝酸カリウムに対する炭酸カリウムのモル比(倍)と得られたCSとの関係を図3に示した。溶融塩に硝酸ナトリウムを加えているのは、溶融塩にガラス物品を浸漬し、化学強化ガラス物品を製造する際に、浸漬するガラス物品の延べ個数が増えるにつれ、溶融塩中のナトリウムイオン(硝酸ナトリウム)の濃度が増加することを再現するためである。本図において硝酸ナトリウムの濃度が大きいほど化学強化に供したガラス物品の浸漬個数が多いものに相当する。図3をみると、硝酸カリウムに炭酸カリウムを加えた溶融塩は、硝酸カリウムのみの溶融塩と比較し、高いCSを維持していることから、ある値にCSの基準を設けた場合、硝酸カリウムに炭酸カリウムを加えた溶融塩のほうが多くのガラス物品を浸漬できることができ、溶融塩の寿命を延ばすことが可能となる。


Claims (3)

  1. ガラスの化学強化処理用溶融塩であって、
    硝酸塩と、
    炭酸水素塩及び炭酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1つからなる添加物を含む組成物からなり、
    前記硝酸塩に対して前記添加物をモル比で0.001倍以上、0.035倍未満含み、
    前記硝酸塩は、
    硝酸カリウムを含む無機塩であり、
    前記炭酸水素塩は、
    炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムから選ばれる少なくとも1つからなり、
    前記炭酸塩は、
    炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1つからなり、
    前記溶融塩においてナトリウムイオンのモル数及びカリウムイオンのモル数の合計に対するナトリウムイオンのモル数の比率が0〜5モル%未満であることを特徴とする、ガラスの化学強化処理用溶融塩。
  2. 請求項1に記載の溶融塩に、ガラス物品を浸漬する工程を含むことを特徴とする、化学強化ガラス物品の製造方法。
  3. 前記化学強化ガラス物品は、プレッシャークッカー試験(温度が121℃、湿度が99.8%RHの条件化にてガラス板を24時間保持)後のガラスのヘイズ値(Haze)が2%以下であることを特徴とする請求項2記載の化学強化ガラス物品の製造方法。
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