以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
まず、図1〜図12を参照して、本実施形態に係るワイヤ接続器1の構成について説明する。図1〜図12に示すように、ワイヤ接続器1は、第1のワイヤ2A,3A及び第2のワイヤ2B,3B(図20参照)を配置するためのベース部材4と、ベース部材4に取り付けられて第1のワイヤ2A,3Aを押圧する第1のキャップ部材6Aと、ベース部材4に取り付けられて第2のワイヤ2B,3Bを押圧する第2のキャップ部材6Bと、を備える。ベース部材4は、第1のワイヤ2A,3Aを配置するための第1のワイヤ配置部7Aと、第1のワイヤ配置部7Aに対して並設され、第2のワイヤ2B,3Bを配置するための第2のワイヤ配置部7Bと、を備える。ワイヤ接続器1は、ベース部材4にキャップ部材6A,6Bに取り付けられた状態では、全体として矩形箱状の形状をなしている。
なお、本実施形態において「ワイヤ」という語は、絶縁体からなる部材により被覆された電線を意味するものとして用いる。また、本明細書においては、ワイヤ2A,3A,2B,3Bが延びる第1の方向を「Y軸方向」とする。図1における紙面手前側をY軸正側とする。また、Y軸方向に直行し、第1のワイヤ配置部7Aと第2のワイヤ配置部7Bが並設される第2の方向を「X軸方向」とする。図1における紙面手前側をX軸正側とする。また、Y軸方向及びX軸方向に直交し、キャップ部材6A,6Bがベース部材4に対して移動する第3の方向を「Z軸方向」とする。図1における上側をZ軸正側とする。
ベース部材4は、樹脂製の成型部品である。ベース部材4は、X軸方向及びY軸方向における中央位置においてZ軸方向に延びる中心線を設定した場合に、当該中心線に対して点対称な構造となる。具体的に、ベース部材4のX軸方向における中央位置には、Z軸正側へ向かって立ち上がり、キャップ部材6A,6Bを保持するキャップ保持部11,12が形成されている。キャップ保持部11,12は、ベース部材4のY軸正側の縁部とY軸負側の縁部の両方に設けられている。キャップ保持部11,12は、キャップ部材6A,6Bの一部を挟み込むように保持する機能を有する。また、キャップ保持部11,12同士の間のY軸方向及びX軸方向における中央位置には、キャップ部材6A、6Bの位置決めを行う位置決め部10がZ軸方向正側に突出している。キャップ保持部11,12の構成の詳細については、キャップ部材6A,6Bの説明と合わせて後述する。ベース部材4は、キャップ保持部11,12よりもX軸負側に第1のワイヤ配置部7Aを有し、キャップ保持部11,12よりもX軸正側に第2のワイヤ配置部7Bを有している。また、ベース部材4は、第1のワイヤ配置部7AにおけるX軸方向負側の縁部に、Z軸方向正側へ向かって立ち上り、Y軸方向へ延びる側壁部15Aを備えている。また、ベース部材4は、第2のワイヤ配置部7BにおけるX軸方向正側の縁部に、Z軸方向正側へ向かって立ち上り、Y軸方向へ延びる側壁部15Bを備えている。側壁部15A,15Bは、ワイヤが本圧接されたときに、キャップ部材6A,6Bと係合するための係合部15aを備えている。
第1のワイヤ配置部7Aには、Y軸方向へ延びて第1のワイヤ2Aを配置する半円状の溝部13Aと、当該溝部13AとX軸正側に隣り合う位置でY軸方向へ延びて第1のワイヤ3Aを配置する半円状の溝部14Aが形成されている。第2のワイヤ配置部7Bには、Y軸方向へ延びて第2のワイヤ2Bを配置する半円状の溝部13Bと、当該溝部13BとX軸正側に隣り合う位置でY軸方向へ延びて第2のワイヤ3Bを配置する半円状の溝部14Bが形成されている。
ベース部材4は、接続子50A,50Bを備えている。接続子50Aは、コンタクト部16と、第1の切断部18Aと、第2の切断部18Bと、第1の中継部51Aと、第2の中継部51Bと、を備えている。接続子50Bは、コンタクト部17と、第1の切断部19Aと、第2の切断部19Bと、第1の中継部52Aと、第2の中継部52Bと、を備えている。接続子50A,50Bは、金属によって構成され、成型部品に形成された溝に嵌め込むことによって、ベース部材4に固定される(特に図2参照)。
コンタクト部16は、第1のワイヤ配置部7Aに配置された第1のワイヤ2Aを挟持する第1の挟持部21A、及び第2のワイヤ配置部7Bに配置された第2のワイヤ2Bを挟持する第2の挟持部21Bを有すると共に、第1のワイヤ2Aと第2のワイヤ2Bとを導通させる導通部22と、を備える。第1の挟持部21Aは、第1のワイヤ配置部7Aの溝部13AのY軸方向における中途位置に配置される。第2の挟持部21Bは、第2のワイヤ配置部7Bの溝部13BのY軸方向における中途位置(第1の挟持部21AとY軸方向において同位置)に配置される。導通部22は、ベース部材4の底板内をキャップ保持部11,12の位置を通過するようにX軸方向に延びて、第1の挟持部21Aと第2の挟持部21Bとを接続する。なお、コンタクト部16は、位置決め部10のY軸方向正側の側面と当接する位置に配置されている(例えば、図14(b)参照)。
コンタクト部17は、第1のワイヤ配置部7Aに配置された第1のワイヤ3Aを挟持する第1の挟持部23A、及び第2のワイヤ配置部7Bに配置された第2のワイヤ3Bを挟持する第2の挟持部23Bを有すると共に、第1のワイヤ3Aと第2のワイヤ3Bとを導通させる導通部24と、を備える。第1の挟持部23Aは、第1のワイヤ配置部7Aの溝部14AのY軸方向における中途位置に配置される。第2の挟持部23Bは、第2のワイヤ配置部7Bの溝部14BのY軸方向における中途位置(第1の挟持部23AとY軸方向において同位置)に配置される。第1の挟持部23A及び第2の挟持部23Bは、第1の挟持部21A及び第2の挟持部21BよりもY軸方向負側に配置される。導通部24は、ベース部材4の底板内をキャップ保持部11,12の位置を通過するようにX軸方向に延びて、第1の挟持部23Aと第2の挟持部23Bとを接続する。なお、コンタクト部17は、位置決め部10のY軸方向負側の側面と当接する位置に配置されている(例えば、図14(b)参照)。
次に、図13を参照して、コンタクト部16,17の構成について詳細に説明する。コンタクト部16,17は、互いに同一の形状をなしている。また、コンタクト部16,17は、平板状の板部材を所定の形状に形成することによって構成される。ベース部材4にセットする状態では、コンタクト部16,17は、板部材の厚さ方向がY軸方向となるように配置される。挟持部21A,23A,21B,23Bは、それぞれ複数種類の第1のワイヤ2A,3A及び第2のワイヤ2B,3Bのワイヤ径に対応するように、キャップ部材6A,6Bの第3の方向(Z軸方向負側)に沿って溝幅が複数段階で狭まる仮圧接部26と、仮圧接部26よりも第3の方向におけるベース部材4側に形成される本圧接部27と、を備える。
第1の挟持部21A,23Aは、導通部22,24からZ軸方向に突出する一対の突出部28を有している。一対の突出部28がX軸方向に離間することで形成される隙間によって、仮圧接部26及び本圧接部27が形成される。本実施形態では、突出部28及び仮圧接部26及び本圧接部27は、Z軸方向に延びる中心線CL1を基準に線対称な構成を有している。Y軸方向から見たときに、第2の挟持部21B,23Bの中心線CL1が溝部13B,14BのX軸方向における中心線と一致するように配置される(例えば図6参照)。また、仮圧接部26は、3種類のワイヤ径に対応するように3段階の異なる溝幅を有している。具体的には、突出部28のZ軸方向正側の先端部から、Z軸方向負側へ向かって順に、最もワイヤ径が大きいワイヤ2B,3Bを仮圧接する第1の部分26a、ワイヤ径が小さいワイヤ2B,3Bを仮接合する第2の部分26b、及び最もワイヤ径が小さいワイヤ2B,3Bを仮圧接する第3の部分26cが形成される。本圧接部27は、第3の部分26cから第3の方向へ延びる。なお、本実施形態では、第3の部分26cの溝幅と本圧接部27の溝幅は略同一である。第1の挟持部21A,23Aは、第2の挟持部21B,23Bと同様な構成を有するため、詳細な構成は同一である。
図1〜図12に示すように、第1の切断部18A,19Aは、第1の挟持部21A,23Aに対してY軸方向に対向する位置に配置される。第1の切断部18A,19Aは、Y軸方向が厚み方向である板状部材によって構成されており、Z軸方向正側における先端部が、X軸方向に真っ直ぐに延びる刃部として構成されている。本実施形態では、第1の切断部18A,19Aは、第1のワイヤ配置部7Aの溝部13A,14AのY軸方向における中途位置であって、第1の挟持部21A,23Aに対してY軸方向負側に離間する位置に配置されている。第1の切断部18A,19Aは、ベース部材4のY軸方向負側における縁部付近に配置されている。
第2の切断部18B,19Bは、第2の挟持部21B,23Bに対してY軸方向に対向する位置に配置される。第2の切断部18B,19Bは、Y軸方向が厚み方向である板状部材によって構成されており、Z軸方向正側における先端部が、X軸方向に真っ直ぐに延びる刃部として構成されている。本実施形態では、第2の切断部18B,19Bは、第2のワイヤ配置部7Bの溝部13B,14BのY軸方向における中途位置であって、第2の挟持部21B,23Bに対してY軸方向正側に離間する位置に配置されている。第2の切断部18B,19Bは、ベース部材4のY軸方向正側における縁部付近に配置されている。
ここで、図15(a)、図16(a)、図17(a)に示すように、第1の挟持部23A及び第1の切断部19Aの位置関係は、第1のワイヤ3Aの仮圧接時においては、第1のワイヤ3Aが仮圧接部26で挟持されることでコンタクト部16と導通すると共に第1の切断部19Aで切断されない位置に設定されている。また、図18(a)に示すように、第1の挟持部23A及び第1の切断部19Aの位置関係は、第1のワイヤ3Aの本圧接時においては、第1のワイヤ3Aが本圧接部27で挟持されることでコンタクト部16と導通すると共に第1の切断部19Aで切断される位置に設定されている。なお、第1の挟持部21A及び第1の切断部18Aの位置関係についても、上述の同様の関係が成り立つ。更に、第2の挟持部21B,23B及び第2の切断部18B,19Bの位置関係についても同様の関係が成り立つ。
ここで、図22及び図23を参照して、本実施形態に係る接続子50A,50Bの特徴について説明する。接続子50Aの挟持部21A,21Bを有するコンタクト部16と、切断部18A,18Bとは一体化されている。第1の挟持部21Aと第1の切断部18Aとは、第1の中継部51Aを介して一体化されている。第2の挟持部21Bと第2の切断部18Bとは、第2の中継部51Bを介して一体化されている。接続子50Bの挟持部23A,23Bを有するコンタクト部17と、切断部19A,19Bとは一体化されている。第1の挟持部23Aと第1の切断部19Aとは、第1の中継部52Aを介して一体化されている。第2の挟持部23Bと第2の切断部19Bとは、第2の中継部52Bを介して一体化されている。なお、「一体化されている」とは、互いの部分が継ぎ目なく連結されている状態のことである。本実施形態の接続子50Aは、板金を型抜きした後、対応部分を折り曲げ加工することで、コンタクト部16、切断部18A,18B、及び中継部51A,51Bが一体的に形成されている。
第1の中継部51Aは、第1の挟持部21Aの基端部21Aaと、第1の切断部18Aの基端部18Aaとを接続する。第1の中継部51Aは、第1の挟持部21Aの基端部21Aaと、第1の切断部18Aの基端部18Aaと、の間でY軸方向に延びるように板状に形成されている。第2の中継部51Bは、第2の挟持部21Bの基端部21Baと、第2の切断部18Bの基端部18Baとを接続する。第2の中継部51Bは、第2の挟持部21Bの基端部21Baと、第2の切断部18Bの基端部18Baと、の間でY軸方向に延びるように板状に形成されている。第1の中継部52Aは、第1の挟持部23Aの基端部23Aaと、第1の切断部19Aの基端部19Aa(図23参照)とを接続する。第1の中継部52Aは、第1の挟持部23Aの基端部23Aaと、第1の切断部19Aの基端部19Aaと、の間でY軸方向に延びるように板状に形成されている。第2の中継部52Bは、第2の挟持部23Bの基端部23Baと、第2の切断部19Bの基端部19Baとを接続する。第2の中継部52Bは、第2の挟持部23Bの基端部23Baと、第2の切断部19Bの基端部19Baと、の間でY軸方向に延びるように板状に形成されている。
接続子50A,50Bを構成する金属材料の硬さは、HV140〜260であってよい。なお、硬さの下限値はHV150であってよく、HV180であってもよい。硬さの下限値をこのような値にすることで、切断部18A,18B,19A,19Bでのワイヤの切断を良好に行うことができる。硬さの上限値はHV230であってもよい。硬さの上限値をこのような値にすることで、製造時の型抜きを良好に行うことができる。接続子50A,50Bを構成する金属材料は、例えば、バネ用りん青銅、りん青銅、ベリリウム銅などであってよい。
次に、図23を参照して、切断部19A,19Bの刃構成について詳細に説明する。なお、図23は接続子50Bのみの側面図が示されているが、接続子50Aの切断部18A,18Bも同趣旨の構成を有しているので説明を省略する。図23に示すように、切断部19A,19Bの先端側に形成される刃部54A,54Bは両刃構造を有する。両刃構造とは、厚さ方向における両側の面の先端が傾斜することによって形成された構造である。刃部54Aは、厚さ方向の両側にそれぞれ傾斜面54Aa,51Abを有している。また、刃部54Aは、台形状の断面形状を有している。従って、傾斜面54Aa,54Abの先端部に平面54Acが形成されている。刃部54Bは、厚さ方向の両側にそれぞれ傾斜面54Ba,51Bbを有している。また、刃部54Bは、台形状の断面形状を有している。従って、傾斜面54Ba,54Bbの先端部に平面54Bcが形成されている。平面54Ac,54Bcの幅は、0.03〜0.07mmであってよい。刃部54A,54Bの角度(図においてθ1,θ2で示される角度)は15〜75°である。角度の下限値は20°であってよい。角度の下限値をこのような値にすることで、切断部19A,19Bの刃部54A,54Bのつぶれを抑制することができる。角度の上限値は60°であってよい。角度の上限値をこのような値にすることで、ワイヤ切断時に必要な力を抑制できる。
また、横方向から見た時の切断部19A,19Bは、挟持部23A,23Bが立ち上がる方向に延びる基準線SL1に対し、刃部54A,54Bが挟持部23A,23B側へ近づくように傾斜している。第1の切断部19Aに対して厚み方向の中央位置に基準線SL2を設定した場合、基準線SL1に対して基準線SL2は傾斜する。第2の切断部19Bに対して厚み方向の中央位置に基準線SL3を設定した場合、基準線SL1に対して基準線SL3は傾斜する。基準線SL1に対する切断部19A,19Bの傾斜角度は、1〜15°であってよい。また、傾斜角度の下限値は2°であってもよい。角度の下限値をこのような値にすることで、ワイヤ切断時の切断部19A,19Bの逃げ量を少なくすることができる。また、傾斜角度の上限値は10°であってもよい。角度の上限値をこのような値にすることで、ワイヤ切断時に切断部19A,19Bが過度な傾きによりSL1側に倒れこむことを抑制することができる。
ここで、図24のグラフを参照して、切断部19A,19Bの傾斜角度とワイヤ切断時の逃げ角度との関係について説明する。図24のグラフの横軸は、ワイヤ切断前の切断部19A,19Bの傾斜角度である。この時の刃高さは3.75mmであった。切断部19A,19Bを挟持部23A,23Bとは反対側に傾いた場合の逃げ角度は負であるものとする。図24に示すように、傾斜角度が0の時に比して、ある程度傾斜角度を設けた場合の方が逃げ角度を小さくすることができる。また、傾斜角度が9°付近の場合に、逃げ角度を最も小さくすることができた。
次に、図1〜図12に示すように、第1のキャップ部材6A及び第2のキャップ部材6Bは、ベース部材4と対向する押圧部31A,31B、及び押圧部31A,31Bからベース部材4側へ延びる取付部32A,32Bを有することで、Y軸方向から見て、L字状をなしている。第1のキャップ部材6Aの押圧部31Aは、XY軸平面に沿って広がる形状を有し、取付部32Aは、押圧部31AのX軸正側の縁部からZ軸方向負側へ向かってZY軸平面に沿って広がる形状を有している。押圧部31Aは、Z軸方向から見て、ベース部材4の第1のワイヤ配置部7Aと略同形状の矩形をなしている。取付部32Aは、キャップ保持部11,12間に保持される位置に形成される。第2のキャップ部材6Bの押圧部31Bは、XY軸平面に沿って広がる形状を有し、取付部32Bは、押圧部31BのX軸負側の縁部からZ軸方向負側へ向かってZY軸平面に沿って広がる形状を有している。押圧部31Bは、Z軸方向から見て、ベース部材4の第2のワイヤ配置部7Bと略同形状の矩形をなしている。取付部32Bは、キャップ保持部11,12間に保持される位置に形成される。
図14(a)、図15(a)、図16(a)、図17(a)、図18(a)に示すように、第1のキャップ部材6Aの押圧部31Aは、ベース部材4の第1のワイヤ配置部7Aと対向する天板部33と、天板部33のX軸方向負側の縁部からZ軸方向負側へ突出して側壁部15Aの係合部15aと係合する係合部34と、ワイヤ2Aを押圧する突出部36と、ワイヤ3Aを押圧する突出部37と、を備えている。なお、図14(a)は、図1のXIVa−XIVa線に沿った位置であって、キャップ部材6A,6Bをベース部材4に取り付けた状態における断面図を示している。他の図15(a)、図16(a)、図17(a)、図18(a)も同様な位置において、キャップ部材6A,6Bの状態を適宜変化させた場合の断面図を示している。係合部34は、ワイヤ2A,3Aの本圧接が完了した状態で、側壁部15Aの外周側の面と接触すると共に、係合部15aと係合する。また、図17(a)では、係合部34の一部は係合部15aの一部と係合することで、接続を安定させる機能をもっている。具体的には、係合部15aは、Z軸方向正側の先端部ではX軸方向負側に突出する山形形状を有し、当該山形形状よりもZ軸方向負側には、山形形状よりも突出量が小さい台形形状を有している。図17(a)に示す仮圧接の状態では、係合部34は側壁部15Aの係合部15aにおける山形形状と係合する。図18(a)に示す本圧接の状態では、係合部34は側壁部15Aの係合部15aにおける台形形状と係合する。このように、二段階の係合状態とすることで、仮圧接時においても、ワイヤの押圧状態を安定させることができる。突出部36は、第1の切断部18AとZ軸方向に対向する位置に設けられる。突出部36のZ軸負側の先端部は、ワイヤ2A,3Aの本圧接が完了した状態で、第1の切断部18AのZ軸正側の先端部の刃部と略接触する位置まで近接する。突出部37は、第1の挟持部23Aの本圧接部27とZ軸方向に対向する位置に設けられる。突出部37のX軸方向における幅は、本圧接部27の溝幅以下に設定されることで、本圧接時において突出部37は、本圧接部27に入り込むことができる。突出部37のZ軸負側の先端部は、本圧接が完了した状態で、第1の切断部19AのZ軸正側の先端部の刃部と略接触する位置まで近接する。なお、第2のキャップ部材6Bの押圧部31Bは、第1のキャップ部材6Aの押圧部31AとZ軸方向から見たときに、ベース部材4の中心点を基準として点対称な構成を有し、押圧部31Aと同趣旨の構成を有している。なお、押圧部31Bは、第2の挟持部23Bの本圧接部27に入り込む突出部38を備えているが、押圧部31Aも第1の挟持部21Aの本圧接部27に入り込む突出部を備える。
図14(a)、図15(b)、図16(b)、図17(b)、図18(b)に示すように、第1のキャップ部材6Aの取付部32Aは、ベース部材4のキャップ保持部11,12に嵌め込まれる一対の嵌合部41,42を備えている。嵌合部41,42は、Z軸方向に延びる中心線を基準として互いに線対称な構造を有している。嵌合部41,42は、押圧部31AのX軸方向正側の縁部からZ軸方向負側へ向かって延びる。また、嵌合部41のY軸方向における内側(Y軸方向負側)の縁部41aはZ軸方向負側へ向かって真っ直ぐに延びると共に、Z軸方向負側の端部において矩形状に切り欠かれた切欠き部41bが形成されている。嵌合部42のY軸方向における内側(Y軸方向正側)の縁部42aはZ軸方向負側へ向かって真っ直ぐに延びると共に、Z軸方向負側の端部において矩形状に切り欠かれた切欠き部42bが形成されている。嵌合部41,42は、互いの縁部41a,42a同士がY軸方向に隙間を形成するように互いに離間している。当該隙間の幅(Y軸方向の大きさ)は、ベース部材4の位置決め部10の幅と略同一である。従って、キャップ部材6AがZ軸方向負側へワイヤを押圧するときは、位置決め部10によって嵌合部41,42がZ軸方向負側へガイドされる。
切欠き部41bが位置決め部10のZ軸方向負側の基端部付近まで移動した状態(図17(b)、図18(b)の状態)では、切欠き部41bは、位置決め部10のY軸方向正側の側面との間で、コンタクト部16の導通部22を挟み込むように配置される。また、当該状態では、切欠き部42bは、位置決め部10のY軸方向負側の側面との間で、コンタクト部17の導通部24を挟み込むように配置される。
また、第1のキャップ部材6Aは、仮圧接から本圧接へ移行する状態において、ベース部材4の一部と係止する係止部44,45を有している。具体的には、係止部44は、嵌合部41の切欠き部41bからY軸方向負側へ突出する突起部によって構成される。係止部45は、嵌合部42の切欠き部42bからY軸方向正側へ突出する突起部によって構成される。係止部44のY軸方向負側の先端と位置決め部10のY軸方向正側の側面との間の寸法は、コンタクト部16の導通部22の厚さ(Y軸方向の寸法)よりも小さい。係止部45のY軸方向正側の先端と位置決め部10のY軸方向負側の側面との間の寸法は、コンタクト部16の導通部22の厚さ(Y軸方向の寸法)よりも小さい。また、係止部44,45のZ軸方向における位置は、図17に示すように、設定上最もワイヤ径が小さいワイヤ2B,3Bが、第3の部分26c(図13参照)の位置で仮圧接されている状態(仮圧接から本圧接へ移行する状態)において、ベース部材4の一部であるコンタクト部16,17の導通部22,24の上面に係止する位置に設定される。
第1のキャップ部材6Aは、ベース部材4との間で、仮圧接部26における複数段階の溝幅に応じて嵌合位置が複数段階で設置されるラッチ構造46,47を構成している。具体的には、ラッチ構造46は、第1のキャップ部材6Aの嵌合部41のY軸方向における外側(Y軸方向正側)の縁部に形成される複数の溝部によって構成される。ラッチ構造46の複数の溝部は、ベース部材4のキャップ保持部11のZ軸方向正側の端部から突出する係止部11aが、係止するように構成されている。ラッチ構造47は、第1のキャップ部材6Aの嵌合部42のY軸方向における外側(Y軸方向負側)の縁部に形成される複数の溝部によって構成される。ラッチ構造47の複数の溝部は、ベース部材4のキャップ保持部12のZ軸方向正側の端部から突出する係止部12aが、係止するように構成されている。
図14〜図18を用いて、ワイヤ2A,3Aの状態とラッチ構造46,47と係止部11a,12aの状態の関係について説明する。図14(a)に示すように、ワイヤ2A,3Aを配置する状態では、第1のキャップ部材6Aはベース部材4に対して開いた状態となり、第1のキャップ部材6Aがワイヤ2A,3Aを押圧しない状態となる。このとき、第1のキャップ部材6Aとベース部材4との間の隙間をX軸方向外側から内側(X軸方向負側から正側)へ向かってワイヤ2A,3Aを挿入することで、ワイヤ2A,3Aを第1のワイヤ配置部7Aへ配置することができる。この状態では、図14(b)に示すように、係止部11a,12aは、ラッチ構造46,47のうち、最もZ軸方向負側の溝部に係止する。なお、図14では、設定上、最もワイヤ径の小さいワイヤ2A,3Aが用いられているが、他のワイヤ径のものであっても同様の状態となる。
図15(a)に示すように、設定上、最もワイヤ径の大きいワイヤ2A,3Aを仮圧接する状態では、ワイヤ2A,3Aは第1のキャップ部材6AにZ軸方向負側へ押圧された状態となり、ワイヤ2A,3Aが挟持部21A,23Aの第1の部分26a(図13参照)に仮圧接された状態となる。この状態では、図15(b)に示すように、係止部11a,12aは、ラッチ構造46,47のうち、Z軸方向負側から二番目の溝部に係止する。
図16(a)に示すように、設定上、二番目にワイヤ径の大きいワイヤ2A,3Aを仮圧接する状態では、ワイヤ2A,3Aは第1のキャップ部材6AにZ軸方向負側へ押圧された状態となり、ワイヤ2A,3Aが挟持部21A,23Aの第2の部分26b(図13参照)に仮圧接された状態となる。この状態では、図16(b)に示すように、係止部11a,12aは、ラッチ構造46,47のうち、Z軸方向負側から三番目の溝部に係止する。
図17(a)に示すように、設定上、最もワイヤ径の小さいワイヤ2A,3Aを仮圧接する状態では、ワイヤ2A,3Aは第1のキャップ部材6AにZ軸方向負側へ押圧された状態となり、ワイヤ2A,3Aが挟持部21A,23Aの第3の部分26c(図13参照)に仮圧接された状態となる。この状態では、図17(b)に示すように、係止部11a,12aは、ラッチ構造46,47のうち、Z軸方向負側から四番目の溝部に係止する。また、この時、係止部44,45は導通部22,24の上面と係止する。なお、ワイヤ径の大きなワイヤ2A,3Aを採用した場合であっても、当該ワイヤ2A,3Aが切断部18A,19Aに完全に切断されて本圧接の状態へ移行する直前の状態においては、係止部44,45が導通部22,24の上面と係止する。係合部34の一部は係合部15aの一部と係合することで、接続を安定させる機能をもっている。
図18(a)に示すように、ワイヤ2A,3Aを本圧接する状態では、ワイヤ2A,3Aは第1のキャップ部材6AにZ軸方向負側へ押圧された状態となると共に、ワイヤ2A,3Aが本圧接部27(図13参照)に本圧接された状態となる。ワイヤ2A,3Aは切断部18A,19Aで切断される。この状態では、図18(b)に示すように、係止部11a,12aは、ラッチ構造46,47のうち、最もZ軸方向正側の溝部に係止する。また、この時、係止部44,45は導通部22,24の上面よりもZ軸方向負側まで移動する。なお、ワイヤ径の大きさに関わらず、ワイヤ2A,3Aを本圧接した場合は、図18に示す状態となる。なお、第2のキャップ部材6Bは、第1のキャップ部材6Aと同様な構成を有しているため、図14〜図18と同趣旨の説明が成り立つ。
次に、図19〜図21を参照して、上述のように構成されたワイヤ接続器1を用いたワイヤの接続方法について説明する。ここでは、新設のワイヤ2B,3Bと既設のワイヤ2A,3Aの割入れ作業を行う場合の作業を例にして説明を行う。まず、図19(a)に示すように、新設のワイヤ2B,3Bをベース部材4の第2のワイヤ配置部7Bに配置する。次に、図19(b)に示すように、指(又はペンチ)で第2のキャップ部材6Bを押圧することで、ワイヤ2B,3Bを第2のワイヤ配置部7Bに設けられたコンタクト部で仮圧接を行う。次に、図20(a)に示すように、ペンチで第2のキャップ部材6Bを更に押圧することで、ワイヤ2B,3Bを本圧接して余長部を切断する。なお、新設のワイヤ2B,3Bについては仮圧接の工程を省略してもよい。
次に、図20(b)に示すように、既設のワイヤ2A,3Aをベース部材4の第1のワイヤ配置部7Aに配置する。次に、図21(a)に示すように、指(又はペンチ)で第1のキャップ部材6Aを押圧することで、ワイヤ2A,3Aを第1のワイヤ配置部7Aに設けられたコンタクト部で仮圧接を行う。この状態では、新設のワイヤ2Bと既設のワイヤ2Aが導通し、新設のワイヤ3Bと既設のワイヤ3Aが導通することで、一時的にマルチ接続の状態となる。これによって、ワイヤ2A,3Aからワイヤ2B,3Bへの切り替え時に断線状態となることがなく、システム側においてエラーとなることを回避できる。次に、図21(b)に示すように、ペンチで第1のキャップ部材6Aを更に押圧することで、ワイヤ2A,3Aを本圧接して余長部を切断する。以上によって作業が完了する。
第1の挟持部21A,23Aは、複数種類の第1のワイヤ2A,3Aのワイヤ径に対応するように、第1のキャップ部材6Aの第3の方向に沿って溝幅が複数段階で狭まる仮圧接部26と、仮圧接部26よりも第3の方向におけるベース部材4側(Z軸方向負側)に形成される本圧接部27と、を備えている。また、第1のワイヤ2A,3Aの仮圧接時においては、第1のワイヤ2A,3Aが仮圧接部26で挟持されることでコンタクト部16,17と導通すると共に第1の切断部18A,19Aで切断されない。従って、第1のワイヤ2A,3Aのワイヤ径が複数種類で異なるものであった場合であっても、当該第1のワイヤ2A,3Aの切断を行う前段階にて、仮圧接部26によって仮圧接の状態とすることができる。当該仮圧接状態では、第1のワイヤ2A,3Aの切断は行われないが、コンタクト部16,17との導通はなされた状態とすることができる。従って、システム側においてエラーとなることを回避できる。一方、第1のワイヤ2A,3Aの本圧接時においては、第1のワイヤ2A,3Aが本圧接部27で挟持されることでコンタクト部16,17と導通すると共に第1の切断部18A,19Aで切断される。従って、一旦、第1のワイヤ2A,3Aと第2のワイヤ2B,3Bとを導通させた後は、本圧接を行うことで、第1のワイヤ2A,3Aの余長分を切断することができる。以上により、ワイヤのワイヤ径によらず、効率よくワイヤ同士の接続を行うことができる。
また、ワイヤ接続器1において、第1のキャップ部材6Aは、ベース部材4との間で、仮圧接部26における複数段階の溝幅に応じて嵌合位置が複数段階で設置されるラッチ構造46,47を構成していている。これによって、仮圧接状態において、キャップ部材をベース部材にしっかりと固定することが可能となり、仮圧接状態を維持することができる。
また、ワイヤ接続器1において、第1のキャップ部材6A及び第2のキャップ部材6Bは、ベース部材4と対向する押圧部31A,31B、及び押圧部31A,31Bからベース部材4側へ延びる取付部32A,32Bを有する。これにより、第1のワイヤ2A,3A及び第2のワイヤ2B,3Bが延びる第1の方向から見て、L字状をなしている。また、第1のワイヤ2A,3A及び第2のワイヤ2B,3Bは、ベース部材4と押圧部31A,31Bとの間の隙間へ、第3の方向と直行する第2の方向から挿入されることで、第1のワイヤ配置部7A及び第2のワイヤ配置部7Bへ配置されてよい。これにより、ワイヤのワイヤ配置部7A,7Bへの配置を行い易くなるため、効率よくワイヤ同士の接続を行うことができる。
また、ワイヤ接続器1において、第1のキャップ部材6Aは、仮圧接から本圧接へ移行する状態において、ベース部材4の一部と係止する係止部44,45を有していている。これにより、仮圧接状態を維持する場合に、誤って本圧接へ移行することを抑制することができる。
次に、本実施形態に係る接続子50A,50B及びワイヤ接続器1の作用・効果について説明する。
本実施形態に接続子50A,50Bは、第1のワイヤ2A,3Aを先端側で挟持する第1の挟持部21A,23Aと、少なくとも第1の挟持部21A,23Aに対し、第1のワイヤ2A,3Aの延在方向に離間して対向する位置に配置され、第1の挟持部21A,23Aに挟持された第1のワイヤ2A,3Aを先端側で切断する切断部18A,19Aと、を備え、第1の挟持部21A,23Aと切断部18A,19Aとは一体化されている。
このような形態によれば、接続子50A,50Bは、第1のワイヤ2A,3Aを先端側で挟持する第1の挟持部21A,23Aと、第1の挟持部21A,23Aに挟持された第1のワイヤ2A,3Aを先端側で切断する切断部18A,19Aと、を備えている。従って、第1のワイヤ2A,3Aを第1の挟持部21A,23Aに押し込むことによって、同時に切断部で第1のワイヤ2A,3Aを切断することができる。また、第1の挟持部21A,23Aと切断部18A,19Aとは一体化されている。従って、第1の挟持部21A,23Aと切断部18A,19Aの位置合わせを個別で行う必要がなくなるので、ワイヤ接続器1の製造が容易になる。以上より、接続子50A,50Bとワイヤとの接続を効率よく行うことができるワイヤ接続器1を容易に製造することができる。
接続子50A,50Bにおいて、接続子50A,50Bを構成する金属材料の硬さは、HV140〜260であってよい。これにより、切断部18A,19Aにて良好に切断を行うことができると共に、製造時の型抜きを良好に行うことができる。
接続子50A,50Bにおいて、切断部18A,19Aと第1の挟持部21A,23Aとの間には、互いの基端部同士を接続する中継部51A,52Aが形成されていてよい。これによりベース部材4に切断部及び挟持部を組み込む際の工程を削減することができ、且つ、ワイヤ接続器1の構成部材を削減することができる。また切断部18A,19Aをベース部材4の中で安定して支えることができる。
接続子50A,50Bにおいて、切断部18A,19Aの先端側に形成される刃部は両刃構造を有し、刃部の角度は15〜75°であってよい。このような範囲とすることで、ワイヤ切断時の切断部18A,19Aのつぶれを防止できると共に、ワイヤ切断時に過度な力をかける必要性がない。
接続子50A,50Bにおいて、刃部の先端には平面部が形成されることで、刃部は台形状の断面形状を有してよい。このような構成により、刃部のつぶれを防止できる。
接続子50A,50Bにおいて、横方向から見た時の切断部18A,19Aは、第1の挟持部21A,23Aが立ち上がる方向に延びる基準線SL1に対し、刃部が第1の挟持部21A,23A側へ近づくように傾斜していてよい。これにより、切断時の切断部18A,19Aの逃げ角度を小さくすることができる。
接続子50A,50Bにおいて、基準線SL1に対する切断部18A,19Aの傾斜角度は、1〜15°であってよい。これにより、ワイヤ切断時における切断部18A,19Aの逃げ角度を小さくすることができる。
接続子50A,50Bにおいて、第1の挟持部21A,23Aに並設されて、第2のワイヤ2B,3Bを先端側で挟持する第2の挟持部21B,23Bと、第1の挟持部21A,23Aと第2の挟持部21B,23Bとを電気的に接続する導通部22,24とを備えてよい。
本発明の一形態に係るワイヤ接続器1は、上述の接続子50A,50Bと、接続子50A,50Bを配置するベース部材4と、ベース部材4に対して取り付けられ、第1のワイヤ2A,3A及び第2のワイヤ2B,3Bを第1の挟持部21A,23A及び第2の挟持部21B,23Bへ押圧するキャップ部材とを備える。
このようなワイヤ接続器1によれば、上述の接続子50A,50Bと同様の効果を得ることができる。
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
上述の実施形態においては、各構成要素において便宜上「第1」「第2」の語を用いて説明したが、「第1」と「第2」が逆であってもよい。また、切断部、複数段階の仮圧接構造は、少なくとも一方のキャップ部材及び挟持部が有していればよく、他方のキャップ部材及び挟持部が当該構造を有していなくともよい。
また、上述の実施形態における接続子、ベース部材及びキャップ部材の形状は一例にすぎず、本発明の趣旨が成り立つ限り、適宜構成を変更してもよい。
また、上述の実施形態では、三段階の溝幅に係る仮圧接構造が設けられていたが、二段階であってもよく、四段階以上であってもよい。