JP2018091792A - マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法及び血液分析装置 - Google Patents

マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法及び血液分析装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、簡便に血液試料の劣化を防ぐことができ、且つ、マラリア原虫に感染した赤血球の定量的検出を可能にする手段を提供することを課題とする。
【解決手段】実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料を解凍し、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出することにより、上記の課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法に関する。また、本発明は、マラリア原虫に感染した赤血球の検出するための血液分析装置に関する。
マラリアは、マラリア原虫を病原体とする感染症であり、熱帯及び亜熱帯地方を中心に流行している。マラリア原虫は、ハマダラカを媒介してヒトに感染する。ハマダラカは、池や沼などの豊富な水源に生息するため、マラリア患者の多くは、医療機関等へのアクセスが困難な僻地に見られる。
マラリアにより毎年多くの人命が失われているが、その大部分は5歳以下の小児である。これは、5歳以下の小児はマラリア原虫に対する免疫を獲得しておらず、重篤な症状が起こり、急速に悪化するためである。一方、マラリアの流行地域の成人は、マラリア原虫に対する免疫を獲得しており、マラリアに感染しても症状が出ない無症候患者となっている。ここに、マラリアの根絶が困難である理由の一つがある。まず、ハマダラカは、成人の無症候患者の血を吸うことで、マラリア原虫の宿主となる。そして、このハマダラカが小児の血を吸うことで、マラリア原虫が成人の無症候患者から小児へと感染する。したがって、無症候患者をスクリーニングにより見つけ出して治療をしなければ、小児への感染を防ぎ、マラリアを根絶することはできない。しかし、無症候患者の血液中には免疫によりマラリア原虫の数(濃度)が少ない場合が多いため、一般的なマラリア検査法である顕微鏡検査では感染を特定することは難しい。そのため、無症候患者のスクリーニングには遺伝子検査を要するが、マラリアの流行地域ではそのような検査が可能な施設は少ない。
特開2006-304774号公報
Tamura T, Blood Count Specimen, Rinsho Byori, vol.63, p.1387-1396, 2015 Nguyen-Dinh P.ら, Comparative Studies on the Cryopreservation of Malaria Parasites, WHO Informal Consultation on Malaria Parasite Strain Characterization, Cryopreservation and Banking of Isolates, Geneva, 8-11 December 1980.
特許文献1に示されるように、フローサイトメータ(FCM)により、マラリア原虫に感染した赤血球を検出することが知られている。FCMは、マラリア原虫に感染した赤血球の定量的測定が可能であり、遺伝子検査に比べて低コストである。よって、FCMによる検査は、無症候患者のスクリーニングに極めて有用である。一方で、FCMにより正確なマラリアの検査を行うためには、血液試料の取得後すみやかに該血液試料をFCM測定に供する必要がある。血液試料においては、時間経過により栄養素が不足して、死細胞が増え始める。FCMは細胞を一つ一つ測定するので、時間経過により劣化した血液試料では正確な検査ができない。
ここで、生体試料の劣化を防ぐ手段として凍結保存が知られている。しかし、血液試料を凍結すると、細胞内外の水分が結晶化して細胞膜が物理的に破壊される。凍結は特に赤血球を損傷し、溶血する。よって、解凍した血液試料から細胞を検出することは困難となる。非特許文献1にも、血球数を測定するFCMに供される血液試料の凍結保存は一般的に禁止されていることが記載されている。
一方、非特許文献2には、マラリア感染患者から採取した血液試料に、グリセロールやジメチルスルホキシド(DMSO)といった凍結保存液を添加して凍結保存したことが記載されている。また、この文献には、解凍した血液試料から塗抹標本を作製して原虫の数をカウントしたことが記載されている。凍結保存液の作用により、凍結による血液試料中の細胞の破壊は防止される。
このように、マラリア感染患者から採取した血液試料に凍結保存液を添加して凍結させることにより、該血液試料中の細胞を安定に保存できる。そのため、病院や検査施設等において迅速に測定を行う必要はなく、利便性が向上する。しかし、血液試料に凍結保存液を添加する工程が追加されるので、スクリーニングのように血液試料の数が多い場合は作業が煩雑となる。
さらに、凍結保存液の添加により血液試料は希釈されるので、細胞濃度は、元の血液試料が有していた濃度から変わる。よって、凍結保存液を添加した血液試料をFCMで測定する場合は、解凍後、細胞を回収して測定試料中の細胞濃度を調整する必要がある。あるいは、血液試料に凍結保存液を添加する際に、血液試料及び凍結保存液の量を正確に量り取って混合し、希釈倍率に基づいてFCMの測定結果を補正する必要がある。細胞濃度の調整は、必ずしも正確に元の細胞濃度を反映するものではない。調整時の遠心分離及び再懸濁により細胞が損傷することもある。また、マラリアの流行地域で正確な量での採血及び希釈操作をすることは極めて難しく、現実的でない。よって、簡便に血液試料の劣化を防ぐことができ、且つ、マラリア原虫に感染した赤血球の定量的検出を可能にする手段の開発が求められる。
本発明者は、技術常識に反して、凍結保存液を添加せずに凍結した血液試料から、マラリア原虫に感染した赤血球(以下、「マラリア感染赤血球」ともいう)を検出することを試みた。そして、本発明者は、凍結保存液を添加せずに凍結した血液試料において、正常赤血球は溶血するが、マラリア感染赤血球はほとんど溶血しないことを見出して、本発明を完成した。よって、本発明は、実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料を解凍する工程と、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程とを含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法を提供する。
また、本発明は、実質的に希釈されていない凍結した血液試料を解凍する工程と、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程とを含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法を提供する。
また、本発明は、実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む凍結した血液試料を解凍する工程と、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程とを含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、実質的に凍結保存液を含まない解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、該試料調製部によって調製された測定試料を流すためのフローセルと、該フローセル内を流れる測定試料に光を照射するための光源部と、測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、上記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部とを備える、血液分析装置を提供する。
また、本発明は、実質的に希釈されていない解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、該試料調製部によって調製された測定試料を流すためのフローセルと、該フローセル内を流れる測定試料に光を照射するための光源部と、測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、上記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部とを備える、血液分析装置を提供する。
また、本発明は、実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、該試料調製部によって調製された測定試料を流すためのフローセルと、該フローセル内を流れる測定試料に光を照射するための光源部と、測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、上記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部とを備える、血液分析装置を提供する。
本発明によれば、実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料から、マラリア感染赤血球を検出することを可能にする。すなわち、本発明は、凍結保存液を添加せずに血液試料を凍結保存することを可能にし、簡便に血液試料の劣化を防止できる。また、血液試料は実質的に凍結保存液で希釈されていないので、本発明は、マラリア感染赤血球の定量的検出に利用できる。
スキャッタグラム上において正常赤血球、マラリア感染赤血球、白血球、及び血小板の各粒子群が出現する領域を説明するための図である。 マラリア感染赤血球を含む凍結した血液試料の分析結果を示すスキャッタグラムの一例である。 本実施形態の血液分析装置の構成を示す模式図である。 フローセルの構成を示す斜視図である。 解析部の構成を示すブロック図である。 本実施形態の血液分析装置の動作の流れを示すフローチャートである。 測定試料調製処理の手順を示すフローチャートである。 測定データ解析処理の手順を示すフローチャートである。 凍結保存剤を添加せずに凍結した、健常者由来の血液又は培養マラリア原虫を含む血液試料の分析結果を示すスキャッタグラムである。 左パネルは、未凍結の健常者由来の血液を顕微鏡で観察した写真であり、右パネルは、凍結保存剤を添加せずに凍結した健常者由来の血液を顕微鏡で観察した写真である。 凍結保存剤を添加せずに凍結した培養マラリア原虫を顕微鏡で観察した写真である。 凍結保存剤を添加せずに凍結した試験試料1(培養マラリア原虫及び健常者由来の血液の混合物)を顕微鏡で観察した写真である。 凍結又は再凍結した健常者由来の血液の分析結果を示すスキャッタグラムである。 凍結又は再凍結した培養マラリア原虫の分析結果を示すスキャッタグラムである。 培養マラリア原虫及び健常者由来の血液を含む凍結又は再凍結した血液試料の分析結果を示すスキャッタグラムである。 種々の温度で凍結した血液試料の分析結果を示すスキャッタグラムである。
[1.マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法]
本実施形態に係るマラリア原虫に感染した赤血球の検出方法(以下、単に「検出方法」ともいう)では、まず、実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料を解凍する。
「実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料」とは、凍結した状態にある、実質的に凍結保存液を含まない血液試料である。本明細書において、「実質的に凍結保存液を含まない血液試料」とは、凍結保存液を含まない血液試料、又は、凍結保存液の効果が得られない量で該凍結保存液を含む血液試料をいう。本明細書において、「凍結保存液」とは、試料の凍結時における細胞膜の損傷を防止し、解凍時において細胞の形状を維持する効果を有する液体試薬である。凍結保存液による上記の効果を得るためには、凍結保存液を、一般に、血液試料の量の20〜100%に相当する量を添加する必要がある。凍結保存液の効果が得られない量としては、凍結保存液の種類に応じて、該凍結保存液による上記の効果が得られる量(すなわち、通常の使用量)を下回る量であればよい。凍結保存液の効果が得られない量の一例として、血液試料への凍結保存液の添加による体積の増加が血球数算定(Complete Blood Count:CBC)において無視できる量が挙げられる。このような量であれば、凍結保存液の効果は得られない。一方、凍結保存液を通常の使用量で血液試料に添加すると、元の血液試料の細胞濃度が大きく変わるので、体積の増加はCBCにおいて無視できない。なお、CBCは、FCMを用いるシースフローDC測定法により行われることが好ましい。
凍結保存液の種類は特に限定されないが、例えば、グリセロール、DMSO、ソルビトール溶液、ヒドロキシエチルスターチ溶液、血清アルブミン溶液、デキストラン溶液、ポリフェノール溶液、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、市販の凍結保存液も含まれる。
本実施形態において、実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料は、凍結保存液を除く添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤は、血液検査の分野において用いられる添加剤から適宜選択され、好ましくは抗凝固剤である。
血液試料は、被検者から採取した全血が好ましい。被検者は特に限定されないが、好ましくはマラリア患者又はマラリア原虫に感染している疑いのある者である。マラリア原虫に感染している疑いのある者とは、例えば、マラリアが疑われる症状を有する者及び無症候マラリア患者である。
本実施形態の検出方法は、実質的に希釈していない凍結した血液試料を用いる方法であってもよい。ここで、「実質的に希釈していない凍結した血液試料」とは、凍結した状態にある、実質的に希釈していない血液試料である。本明細書において、「実質的に希釈していない血液試料」とは、被検者から採取した全血からなる試料、又は、被検者から採取した全血と血液検査の分野において用いられる添加剤とからなり、且つ該全血への該添加剤の添加による体積の増加がCBCにおいて無視できる試料をいう。そのような添加剤としては、抗凝固剤が公知である。添加剤は、液体であってもよいし、粉末であってもよい。添加剤を血液検査の分野における通常の使用量の範囲内で用いる限り、添加による体積の増加はCBCにおいて無視してよい。
抗凝固剤は、採取した血液の保管のために最もよく用いられる添加剤である。本明細書では、抗凝固剤を通常の使用量で血液試料に添加することは、血液試料を希釈することには含まれない。すなわち、本明細書において、被検者から採取した全血と抗凝固剤とからなる血液試料は、実質的に希釈していない血液試料に当たる。血液検査の分野においては、粉末の抗凝固剤が使用されることが多いが、そのような粉末の添加による体積の増加は微小である。
凍結保存液は、血液検査の分野において用いられる添加剤の一種である。しかし、上述のとおり、凍結保存液を通常の使用量で血液試料に添加すると、元の血液試料の細胞濃度が大きく変わるので、体積の増加はCBCにおいて無視できない。すなわち、凍結保存液を通常の使用量で血液試料に添加することは、血液試料を希釈することに含まれる。
本実施形態の検出方法は、実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む凍結した血液試料を用いる方法であってもよい。ここで、「実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料」とは、凍結した状態にある、実質的に添加剤を含まない血液試料である。本明細書において、「実質的に添加剤を含まない血液試料」とは、添加剤を含まない血液試料、又は、添加剤の効果が得られない量で該添加剤を含む血液試料をいう。添加剤を含まない血液試料は、換言すれば、被検者から採取した全血からなる試料である。添加剤の効果が得られない量は、添加剤の種類に応じて、該添加剤の通常の使用量を下回る量であればよい。本実施形態では、そのような少量の添加剤が被検者から採取された全血に含まれていてもよい。
「添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む凍結した血液試料」とは、凍結した状態にある、添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む血液試料である。本明細書において、「添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む血液試料」とは、被検者から採取した全血と抗凝固剤とからなる試料、又は、被検者から採取した全血と抗凝固剤と該抗凝固剤以外の添加剤とからなり、且つ抗凝固剤以外の添加剤の量が該添加剤の効果が得られない量である試料をいう。抗凝固剤以外の添加剤は、特に限定されないが、例えば凍結保存液が挙げられる。添加剤の効果が得られない量は、上述のとおりである。
抗凝固剤は、血液検査の分野では、カルシウムイオンキレート剤及び抗トロンビン剤から適宜選択される。具体的には、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩及びクエン酸ナトリウムが挙げられ、抗トロンビン剤として、ヘパリン及びその類似物が挙げられるが、特に好ましくはEDTA塩である。EDTA塩としては、EDTA・2K、EDTA・3K及びEDTA・2Naが挙げられる。
上述した本実施形態の検出方法に用いられる凍結した血液試料を総称して、以下、「凍結試料」と呼ぶ。いずれの凍結試料を用いる場合も、以降のマラリア感染赤血球の検出のための操作は同じである。
凍結試料は、被検者からの採血後4時間以内に、好ましくは直ちに、実質的に凍結保存液を含まない血液試料を凍結させることにより得ることができる。血液試料を凍結する手段は特に限定されず、例えば、冷凍庫、ドライアイスなどの冷却剤を入れた保冷容器、液体窒素などが挙げられる。凍結温度は、−20℃以下であればよく、好ましくは−20℃よりも低い温度であり、より好ましくは−80℃以下である。
凍結試料は、本実施形態の検出方法に用いられるまで冷凍された状態で保存されることが好ましい。しかし、マラリアの流行地域から検査可能な施設までの輸送には、長期間かかる。そのため、輸送の間に凍結試料が融解し、該試料を再凍結しなければならない状況が考えられる。後述の実施例に示されるように、本発明者は、凍結保存液を添加していない血液試料を少なくとも2回凍結融解しても、マラリア感染赤血球の検出に影響はないことを確認している。よって、本実施形態では、凍結試料は、一度解凍した血液試料を再凍結した試料であってもよい。
本実施形態では、凍結試料を解凍する手段は、血球を損傷しない限り特に限定されない。例えば、凍結試料を1℃以上35℃以下の温度で加温することが挙げられる。具体的には、そのような温度に設定されたウォーターバス又はインキュベーターにて凍結試料を加温すればよい。あるいは、室温にて凍結試料を静置するだけでもよい。解凍した血液試料は、すみやかに後述の検出工程に供することが好ましい。
解凍された血液試料においては、正常赤血球の一部が溶血している。具体的には、解凍された血液試料中の正常赤血球数は、凍結前に比べて、約20%、約30%、約40%又は約50%減少する。
次いで、本実施形態の検出方法では、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する。
解凍した血液試料中のマラリア感染赤血球自体は、顕微鏡観察でも確認できる。しかし、顕微鏡観察では、マラリア感染赤血球の定量的検出はできない。顕微鏡観察によるマラリア感染赤血球の定量的検出には、正常赤血球(非感染赤血球)の数とマラリア感染赤血球の数との比率を算出する必要がある。しかし、解凍した血液試料では一部の正常赤血球が溶血しているので、顕微鏡観察では、正常赤血球を正確に計数できず、上記の比率を算出できない。よって、本実施形態においては、FCMを用いて血液試料中のマラリア感染赤血球を検出することが好ましい。FCMは、所定量の血液試料に含まれる全ての血球を測定するので、所定量当たりのマラリア感染赤血球の数を取得できる。よって、解凍した血液試料をFCMで測定すれば、マラリア感染赤血球の定量的検出ができる。
FCMを用いる場合、解凍した血液試料と、血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬(以下、「試料処理液」ともいう)と、核酸染色用蛍光色素を含む試薬(以下、「染色液」ともいう)とを混合して、測定試料を調製することが好ましい。FCMによる測定では、解凍した血液試料の量は、20μL〜500μL程度であればよい。
試料処理液は、正常赤血球、マラリア感染赤血球及び白血球の細胞膜に上記の蛍光色素が透過できる程度の損傷を与えるための界面活性剤を含む。そのような界面活性剤は、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤から適宜選択できるが、好ましくはカチオン系界面活性剤である。カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(LTAC)、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(STAC)、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
本実施形態では、試料処理液は、上記のカチオン系界面活性剤に加えて、ノニオン系界面活性剤を含むことが好ましい。そのようなノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。それらの中でも、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル(PBC-44とも呼ばれる)が特に好ましい。
本実施形態では、赤血球の細胞膜に対する溶解力の異なる少なくとも2種類の界面活性剤を組み合わせて用いることが好ましい。そのような組み合わせとしては、例えば、LTACとSTACとの組み合わせ、LTACとSTACとPBC-44との組み合わせ、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライドとセチルトリメチルアンモニウムクロライドとの組み合わせなどが挙げられる。
試料処理液における界面活性剤の濃度は、界面活性剤の種類に応じて適宜調整できる。また、試料処理液におけるカチオン系界面活性剤の濃度は、後述する測定試料におけるカチオン性界面活性剤の終濃度に応じて調整される。
試料処理液のpHの下限は、通常5.0であり、好ましくは5.5である。試料処理液のpHの上限は、通常7.0であり、好ましくは6.5である。より具体的には、試料処理液のpHは5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9又は7.0である。
試料処理液は、pHを上記の範囲に維持するために緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤は、例えば、クエン酸、リン酸、コハク酸及びグッドの緩衝剤から適宜選択できる。グッドの緩衝剤としては、例えば、ADA、PIPES、MES、トリシン、トリス、ビシン、ビス-トリス、ビス-トリス-プロパン、ACES、MOPS、MOPSO、BES、TES、HEPES、HEPPS、TAPSなどが挙げられる。pHを調節するために、塩酸などの酸、又は水酸化ナトリウムなどの塩基を試料処理液に添加してもよい。
試料処理液の浸透圧の下限は、通常200 mOsm/kg・H2O、好ましくは220 mOsm/kg・H2Oである。試料処理液の浸透圧の上限は、通常300 mOsm/kg・H2O、好ましくは280 mOsm/kg・H2Oである。より具体的には、試料処理液の浸透圧は、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290又は300 mOsm/kg・H2Oである。
試料処理液は、浸透圧を上記の範囲に調節するために浸透圧調整剤を含むことが好ましい。浸透圧調整剤としては、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属の塩、塩化マグネシウムなどのマグネシウム及びアルカリ土類金属の塩、グルコース、マンノースなどの糖類が挙げられる。
試料処理液の溶媒は、FCMによる血液分析を妨げないかぎり特に限定されず、水、有機溶媒、及びそれらの混合物から適宜選択できる。好ましくは水である。有機溶媒としては、例えば、炭素数1〜6の低級アルコール(特にエタノール)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、DMSOなどが挙げられる。
染色液は、核酸、特にDNAを選択的に染色可能な蛍光色素を含む。そのような蛍光色素としては、ビスベンズイミド系蛍光色素が好ましく、下記の化学式で表される蛍光色素(ヘキスト34580:シグマアルドリッチ社)が特に好ましい。
ヘキスト34580は、RNAよりもDNAを強く染色するDNA選択的ビスベンズイミド系蛍光色素であり、405 nmの波長の光により励起される。ヘキスト34580以外に、DNA選択的ビスベンズイミド系蛍光色素としてヘキスト33258及びヘキスト33342を用いてもよい。これらの蛍光色素は、ヘキスト34580とは側鎖が異なるが、いずれも405 nmの波長の光により励起可能である。
染色液における蛍光色素の濃度は、通常3μM以上200μM以下であり、好ましくは10μM以上180μM以下である。測定試料を全自動血液分析装置によって調製する場合、染色液における蛍光色素の濃度は、該装置が吸引可能な液量を考慮して上記の範囲から決定すればよい。
染色液の溶媒は、FCMによる血液分析を妨げないかぎり特に限定されず、水、有機溶媒、及びそれらの混合物から適宜選択できる。好ましくは有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、炭素数1〜6の低級アルコール(特にエタノール)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、DMSOなどが挙げられ、特にエチレングリコールが好ましい。
本実施形態では、測定試料における蛍光色素の終濃度が0.15μM以上1.0μM以下であることが好ましい。このような終濃度で血球を染色することにより、FCMによるマラリア感染赤血球と正常赤血球との分離能がより向上する。本実施形態では、測定試料におけるカチオン性界面活性剤の終濃度は特に限定されないが、例えば1.72 mM以上5.97 mM以下であればよい。
本実施形態では、解凍した血液試料と、試料処理液と、染色液とを混合する順序は特に限定されない。これらを逐次混合してもよいし、同時に混合してもよい。また、試料処理液と染色液との混合液を予め調製し、該混合液と解凍した血液試料とを混合してもよい。これらを混合する際に、30〜45℃の温度で5〜60秒間加温することが好ましい。
試料処理液の作用により、血液試料中の正常赤血球、マラリア感染赤血球及び白血球の細胞膜が一部損傷して、蛍光色素が透過可能になる。本実施形態では、正常赤血球は、試料処理液の作用により収縮していてもよい。正常赤血球は核を有さないので、蛍光色素で染色されない。なお、血小板も核を有さないので、蛍光色素で染色されない。本実施形態では、血小板は凝集していてもよい。一方、マラリア感染赤血球においては、内部に存在するマラリア原虫の核が蛍光色素で染色される。白血球も核を有するので、蛍光色素で染色される。
FCMによる測定では、調製した測定試料に光を照射して、散乱光情報及び蛍光情報を取得することが好ましい。具体的には、まず、測定試料をFCMのフローセルに導入し、該試料中の一つ一つの血球がフローセルを通過するときに該血球に光を照射する。そして、該血球から発せられる散乱光及び蛍光を測定して、散乱光情報及び蛍光情報を取得する。
散乱光情報としては、例えば、前方散乱光(例えば、受光角度0〜20度付近)及び側方散乱光(受光角度90度付近)のパルスのピーク、パルス幅、パルス面積、及び散乱光強度などが挙げられる。当該技術では、側方散乱光は、細胞の核及び顆粒などの内部情報を反映し、前方散乱光は、細胞の大きさを反映することが知られている。本実施形態では、散乱光情報として前方散乱光強度を取得することが好ましい。蛍光情報としては、例えば、蛍光強度、蛍光パルス幅、及び蛍光パルス面積などが挙げられるが、好ましくは蛍光強度である。照射する励起光の波長は、蛍光色素に応じて適宜選択できる。
FCMの光源は特に限定されず、蛍光色素の励起に好適な波長の光源を適宜選択できる。光源としては、例えば、青色半導体レーザ、赤色半導体レーザ、アルゴンレーザ、He-Neレーザ、水銀アークランプなどが使用される。ヘキスト34580を用いる場合、光源は青色半導体レーザが好ましい。
マラリア原虫は、赤血球内でリングフォーム、トロフォゾイト、シゾントの順に成長する。成長に従って、マラリア原虫のDNA量及び感染赤血球のサイズが増大する。よって、本実施形態では、散乱光情報及び蛍光情報に基づいて、マラリア原虫の形態を区別できる。また、リングフォームには、1つの赤血球に1つのマラリア原虫が侵入したリングフォーム(シングル)と、1つの赤血球に複数のマラリア原虫が侵入したリングフォーム(マルチ)とが存在する。DNA量は、リングフォーム(シングル)よりもリングフォーム(マルチ)の方が多い。よって、本実施形態では、蛍光情報に基づいて、リングフォーム(シングル)とリングフォーム(マルチ)とを区別できる。
本実施形態では、上記の散乱光情報及び蛍光情報に基づいて、解凍した血液試料中のマラリア感染赤血球を検出する。散乱光情報及び蛍光情報に基づくマラリア感染赤血球の検出は、散乱光情報と蛍光情報とを二軸とするスキャッタグラムを作成し、該スキャッタグラム上のマラリア感染赤血球が出現する領域を特定することにより行うことが好ましい。
横軸に蛍光強度をとり、縦軸に前方散乱光強度をとったスキャッタグラム上における各細胞群の出現領域について、図1Aを参照して説明する。図1Aに示されるように、マラリア感染赤血球を含む血液試料は、FCMにより、正常赤血球(非感染赤血球)、マラリア感染赤血球、白血球及び血小板の4群に分類される。なお、スキャッタグラムの作成と細胞群の分類は、適当な解析ソフトを用いて行うことができる。そのような解析ソフトは、通常、FCM自体又はFCMを制御するコンピュータに格納されている。
図1Aを参照して、白血球を含む群は、前方散乱光強度及び蛍光強度が大きい領域10に出現する。血小板を含む群は、前方散乱光強度が白血球を含む群と同程度であり、且つ、蛍光強度が白血球を含む群よりも小さい領域20に出現する。血小板を含む群は、2つ以上の血小板の凝集物を含んでいてもよい。正常赤血球は、上述のとおり、染色液でほとんど染色されず、また、試料処理液の作用によって収縮する。そのため、正常赤血球を含む群は、前方散乱光強度及び蛍光強度が小さい領域30に出現する。マラリア感染赤血球は、試料処理液の作用によって収縮するが、内部に存在するマラリア原虫の核が染色される。そのため、マラリア感染赤血球を含む群は、前方散乱光強度が白血球を含む群より小さく、且つ、蛍光強度が正常赤血球を含む群より大きい領域40に出現する。
実際に、マラリア感染赤血球を含む血液試料の測定結果に基づいてスキャッタグラムを作成すると、図1Bのようなスキャッタグラムが得られる。上記の試料処理液及び染色液を用いることにより、解凍した血液試料中の血球成分は、図1Bに示されるように、正常赤血球(非感染赤血球)と、マラリア感染赤血球とを良好に分離できる。なお、図1Bでは、蛍光強度が所定の閾値以下である粒子を除外しているので、正常赤血球を示す粒子のほとんどはスキャッタグラムから除かれている。
解析ソフトにより、スキャッタグラム上の任意の領域内に出現したドット(細胞を表す)の数を計数することもできる。本実施形態では、図1Aの領域40内にマラリア感染赤血球が出現する。この領域に出現した細胞数を計数することにより、マラリア原虫に感染した赤血球数を取得できる。よって、本実施形態の検出方法は、マラリア原虫に感染した赤血球を計数する工程をさらに含んでもよい。
上述のように、FCMは、フローセルに導入した所定量の血液試料中の全ての血球を測定する。また、後述の実施例に示されるように、凍結保存液を添加せずに凍結融解した血液試料において、正常赤血球は溶血するが、マラリア感染赤血球は溶血しない。したがって、スキャッタグラム上のマラリア感染赤血球が出現する領域内の細胞数から、所定量(例えば1μL)当たりのマラリア感染赤血球数、すなわち、血液試料におけるマラリア感染赤血球の濃度を取得できる。よって、本実施形態の検出方法は、計数工程で取得した、マラリア原虫に感染した赤血球の数に基づいて、血液試料におけるマラリア原虫に感染した赤血球の濃度を取得する工程をさらに含んでもよい。
上記のフローサイトメトリ法による光学的測定に加えて、シースフローDC測定法によるCBCも行う場合は、解凍した血液試料と、DC測定用希釈液とを混合して、第2測定試料を調製してもよい。DC測定用希釈液は、試料処理液とは異なり、血球の細胞膜を損傷させる作用はない。DC測定用希釈液自体は当該技術において公知であり、例えば、セルパック(シスメックス株式会社)などが挙げられる。DC測定用希釈液は、光学的測定及びDC測定のためのシース液として用いることもできる。
[2.血液分析装置]
本発明の範囲には、本実施形態の検出方法を実行するための血液分析装置も含まれる。すなわち、本実施形態の血液分析装置は、実質的に凍結保存液を含まない解凍した血液試料中のマラリア感染赤血球を検出するための装置である。ここで、実質的に凍結保存液を含まない解凍した血液試料とは、上記の「実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料」を解凍して得られる試料である。凍結試料を解凍する手段は、本実施形態の検出方法について述べたことと同様である。
さらなる実施形態においては、血液試料は、実質的に希釈されていない解凍した血液試料であってもよい。実質的に希釈されていない解凍した血液試料とは、上記の「実質的に希釈されていない凍結した血液試料」を解凍して得られる試料である。
さらなる実施形態においては、血液試料は、実質的に添加剤を含まない解凍した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む解凍した血液試料であってもよい。実質的に添加剤を含まない解凍した血液試料とは、上記の「実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料」を解凍して得られる試料である。添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む解凍した血液試料とは、上記の「添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む凍結した血液試料」を解凍して得られる試料である。
上述した本実施形態の血液分析装置に供される解凍した血液試料を総称して、以下、「解凍試料」と呼ぶ。いずれの解凍試料を用いる場合も、血液分析装置の構成及び動作は同じである。
<血液分析装置の構成>
本実施形態に係る血液分析装置の一例を、図面を参照して説明する。しかし、本実施形態はこの例のみに限定されない。図2に示されるように、血液分析装置1は、測定部2と、解析部3とを備える。測定部2は、血液試料を取り込み、血液試料から測定試料を調製し、測定試料を光学測定する。解析部3は、測定部2の測定により得られた測定データを処理し、血液試料の分析結果を出力する。
測定部2は、吸引部4と、試料調製部5と、光学検出部6と、第2検出部7と、信号処理回路81と、マイクロコンピュータ82と、通信インターフェース83とを備える。吸引部4は、図示しない吸引管を有する。吸引部4は、試験管に収容された解凍試料を吸引管によって吸引する。
試料調製部5は、反応槽54を有し、試薬容器51、52及び53に接続されている。試薬容器52は、試料処理液を収容する。試薬容器53は、染色液を収容する。試薬容器51は、DC測定用希釈液(以下、単に「希釈液」ともいう)を収容する。試料処理液、染色液及び希釈液は、本実施形態の検出方法について述べたことと同様である。吸引部4は、吸引管を反応槽54の上方へ移動させ、吸引された解凍試料を反応槽54に吐出する。解凍試料と試料処理液と染色液とが反応槽54で混合され、測定試料が調製される。試料処理液と染色液とを混合した1つの試薬を、解凍試料と混合して測定試料を調製してもよい。測定試料は、フローサイトメトリ法による血球の光学的測定に供される。吸引部4によって吸引された解凍試料と希釈液とが反応槽54で混合され、第2測定試料が調製される。第2測定試料は、シースフローDC測定法によるCBCに供される。なお、この例では、1つの反応槽を備える態様について説明したが、本実施形態の血液分析装置は2つ以上の反応槽を備えてもよい。
光学検出部6は、フローサイトメトリ法による血球の光学的測定に用いられる。光学検出部6は、フローセル61と、光源部62と、検出部63及び64とを備える。フローセル61は、試薬容器51に収容された希釈液及び試料調製部5により調製された測定試料が供給される。
フローセル61は、透光性を有する石英、ガラス、合成樹脂などの材料によって管状に構成される。フローセル61の内部は、測定試料及びDC測定用希釈液であるシース液が流れる流路となっている。図3を参照して、フローセル61には、内部空間が他の部分よりも細く絞り込まれたオリフィス61aが設けられている。また、オリフィス61aの入口付近は二重管構造となっており、その内側管部分は試料ノズル61bとなっており、これを介して、試料調製部5により調製された測定試料が供給される。試料ノズル61bの外側の空間は、シース液が流れる流路61cである。シース液は、流路61cを通って、オリフィス61aに導入される。このように、フローセル61に供給されたシース液は、試料ノズル61bから吐出された測定試料を包むように流れる。そして、オリフィス61aによって測定試料の流れが細く絞り込まれ、シース液で包まれた測定試料中の血球が1つずつオリフィス61aを通過する。
光源部62は、半導体レーザ光源であり、波長405 nmの青紫色レーザ光をフローセル61のオリフィス61aへ照射する。検出部63及び64は、フローセル61中の測定試料の流れに光が照射されたときに、測定試料中の個々の細胞から発せられる光を検出する。検出部63及び64には、アバランシェフォトダイオードを採用できる。以下の説明では、光源部62とフローセル61とを結ぶ方向を「X方向」といい、X方向に対して直交する方向を「Y方向」という。検出部63は、フローセル61からY方向側に配置されたミラー65を介して、測定試料中の個々の細胞から発せられる蛍光を検出できる。検出部64は、フローセル61からX方向側に配置される。具体的には、検出部64は、フローセル61を挟んで光源部62の反対側に配置される。検出部64は、測定試料中の個々の細胞から発せられる前方散乱光を検出できる。なお、前方散乱光に代えて、側方散乱光、後方散乱光などの他の散乱光を検出してもよい。
本実施形態では、光源部62とフローセル61との間に、図示しない複数のレンズからなる照射レンズ系を配置してもよい。照射レンズ系によって、半導体レーザ光源から射出された平行ビームがビームスポットに集束できる。また、光源部62から直線的に延びた光軸上に、フローセル61を挟んで光源部62に対向するように、図示しないビームストッパを配置してもよい。ビームストッパにより半導体レーザ光源からの直接光が遮断され、検出部64は、測定試料からの前方散乱光のみを受光できる。
検出部63及び64のそれぞれは、受光した蛍光及び前方散乱光を光電変換して、受光強度を示すアナログ信号を出力する。以下、検出部63から出力されるアナログ信号を「蛍光信号」といい、検出部64から出力されるアナログ信号を「前方散乱光信号」という。
第2検出部7は、シースフローDC測定法によるCBCに用いられる。第2検出部7には、試料調製部5から第2測定試料が供給される。第2検出部7は、図示しないシースフローセルを備え、シースフローセル内を流れる第2測定試料に電圧を印加する。血球がシースフローセルを通過すると、血球の電気抵抗によって電圧が変化する。第2検出部7は、電圧の変化を捉えて電気抵抗を検出し、これによって血球を検出する。第2検出部7は、電圧を示すアナログ信号を出力する。
解凍試料では、正常赤血球、白血球及び血小板の数が、凍結前に比べて変化している。特に正常赤血球が溶血しているので、解凍試料のCBCで得られる正常赤血球数は、凍結前の血液の状態を正確に反映していない。したがって、第2検出部7は、本実施形態の血液分析装置に必須ではない。しかし、血液分析装置は、シースフローDC測定法によるCBCを実行するための構成を有することが一般的である。
信号処理回路81は、検出部63及び64、並びに第2検出部7が出力するアナログ信号に対して信号処理を行う。信号処理回路81は、蛍光信号及び前方散乱光信号に含まれるパルスのピーク値を特徴パラメータとして抽出する。以下、蛍光信号のピーク値を「蛍光強度」といい、前方散乱光信号のピーク値を「前方散乱光強度」という。信号処理回路81は、第2検出部7の出力信号のピーク値を、血球の検出データとして抽出する。
マイクロコンピュータ82は、吸引部4、試料調製部5、光学検出部6、第2検出部7、信号処理回路81、及び通信インターフェース83を制御する。通信インターフェース83は、通信ケーブルによって解析部3に接続される。測定部2は、通信インターフェース83によって、解析部3とデータ通信を行う。通信インターフェース83は、解凍試料の測定が行われると、各特徴パラメータを含む測定データを解析部3へ送信する。
図4を参照し、解析部3の構成について説明する。解析部3は、本体300と、入力部309と、出力部310とを備えている。本体300は、CPU(Central Processing Unit)301と、ROM(Read Only Memory)302と、RAM(Random Access Memory)303と、ハードディスク304と、読出装置305と、入出力インターフェース306と、画像出力インターフェース307と、通信インターフェース308とを有する。本実施の形態においては、出力部310として画像を表示するディスプレイを用いている。出力部310として、印刷により紙などに出力するプリンタを用いてもよい。
CPU301は、ROM302に記憶されているコンピュータプログラム及びRAM303にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM303は、ROM302及びハードディスク304に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。RAM303は、コンピュータプログラムを実行するときに、CPU301の作業領域としても利用される。ハードディスク304には、測定部2から与えられた測定データを解析して分析結果を出力するためのコンピュータプログラム320がインストールされている。
読出装置305は、フレキシブルディスクドライブ、CD-ROMドライブ又はDVD-ROMドライブなどであり、可搬型記録媒体321に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体321には、コンピュータを解析部3として機能させるためのコンピュータプログラム320が格納されている。可搬型記録媒体321から読み出されたコンピュータプログラム320は、ハードディスク304にインストールされる。
入力部309は、入出力インターフェース306に接続される。出力部310は、画像出力インターフェース307に接続される。通信インターフェース308は、測定部2の通信インターフェース83に接続される。
<血液分析装置の動作>
図5を参照して、血液分析装置1の動作について説明する。まず、解析部3のCPU301が、ユーザからの測定実行の指示を、入力部309を介して受け付ける(ステップS101)。測定実行の指示を受け付けると、CPU301は、測定部2に測定開始を指示する指示データを送信し(ステップS102)、測定部2が指示データを受信する(ステップS103)。マイクロコンピュータ82は、測定試料調製処理を実行し(ステップS104)、第1測定処理を実行し(ステップS105)、第2測定処理を実行する(ステップS106)。
図6を参照して、測定試料調製処理について説明する。マイクロコンピュータ82が吸引部4を制御して、反応槽54に所定量(例えば17μL)の解凍試料を供給する(ステップS201)。次に、マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、試薬容器52から反応槽54に所定量(例えば1mL)の試料処理液を供給し、試薬容器53から反応槽54に所定量(例えば20μL)の染色液を供給する(ステップS202)。反応槽54は、ヒータによって所定温度になるように加温されている。加温された状態で、反応槽54内の混合物の撹拌が行われる(ステップS203)。ステップS201〜S203の動作により、反応槽54において測定試料が調製される。マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、測定試料を反応槽54から光学検出部6へ導出する(ステップS204)。
次に、マイクロコンピュータ82が吸引部4を制御して、反応槽54に所定量(例えば4μL)の解凍試料を供給する(ステップS205)。次に、マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、試薬容器51から反応槽54に所定量(例えば2000μL)の希釈液を供給する(ステップS206)。試料調製部5が反応槽54内の混合物を撹拌する(ステップS207)。ステップS205〜S207の動作により、反応槽54において第2測定試料が調製される。マイクロコンピュータ82が試料調製部5を制御して、第2測定試料を反応槽54から第2検出部7へ導出する(ステップS208)。上述のとおり、CBCのための第2測定試料の調製は、本実施形態の血液分析装置に必須ではない。しかし、血液分析装置は、シースフローDC測定法によるCBCを実行可能であることが一般的である。
ステップS208の処理が終了すると、マイクロコンピュータ82は、メインルーチンへ処理をリターンする。
図5を参照して、第1測定処理では、光学検出部6による測定試料の測定が行われる。試料調製部5が、シース液と共に測定試料をフローセル61に供給する。測定試料がフローセル61内を流れると、血球が1つずつ、フローセル61のオリフィス61aを順次通過する。ここで、血球には、2つ以上の血小板の凝集物が含まれてもよい。光源部62が、フローセル61内を流れる測定試料に光を照射する。より具体的には、光源部62は、フローセル61のオリフィス61aを通過する個々の血球に光を照射する。血球に光が照射されるたびに、該血球から蛍光及び前方散乱光が発せられる。
血球から発せられた蛍光は、検出部63によって検出される。血球から発せられた前方散乱光は、検出部64によって検出される。検出部63及び64のそれぞれは、受光レベルに応じた電気信号を、蛍光信号及び前方散乱光信号として出力する。信号処理回路81は、蛍光信号から蛍光強度を抽出し、前方散乱光信号から前方散乱光強度を抽出する。
第2測定処理では、第2検出部7による第2測定試料の測定が行われる。第2検出部7は、シースフローセル内を流れる第2測定試料中の個々の血球に電圧を印加し、電圧を示すアナログ信号を信号処理回路81へ出力する。血球がシースフローセルを通過するたびに、その電気抵抗に応じて電圧が変化する。信号処理回路81は、信号処理により電気抵抗の変化を捉え、血球を検出する。これにより、信号処理回路81は、第2検出部7の出力信号を血球の検出データに変換する。第2測定処理の後、マイクロコンピュータ82は、各特徴パラメータを含む測定データを解析部3へ送信し(ステップS107)、処理を終了する。
解析部3は、測定データを受信する(ステップS108)。その後、CPU301は、測定データ解析処理を実行し、血液試料の分析結果を生成して、分析結果をハードディスク304に格納する(ステップS109)。
図7を参照し、測定データ解析処理について説明する。測定データ解析処理を開始すると、まずCPU301は、測定データに含まれる蛍光強度及び前方散乱光強度に基づいて、正常赤血球、マラリア感染赤血球、白血球、及び血小板を分類する(ステップS301)。CPU301は、前方散乱光強度及び蛍光強度のデータを用いて、キャッタグラムを作成してもよい。ここで、正常赤血球は核を有さないので蛍光色素でほとんど染色されず、測定試料中の正常赤血球は蛍光をほとんど発しない。そこで、ステップS301の処理では、蛍光強度が所定の閾値以下である粒子を除外してもよい。これにより、ほとんどの正常赤血球がスキャッタグラムから除外され、正常赤血球とマラリア感染赤血球との分離が良好になる。
ステップS301の処理において、CPU301は、前方散乱光強度の粒度分布と、蛍光強度の粒度分布とを組み合わせて、白血球を含む群、血小板凝集を含む群、正常赤血球を含む群、及びマラリア感染赤血球を含む集団を特定する。より具体的には、CPU301は、白血球を含む群として、蛍光強度及び前方散乱光強度の両方が大きい粒子群を特定する。CPU301は、血小板を含む群として、前方散乱光強度が白血球を含む群と同程度であり、且つ、蛍光強度が白血球を含む群よりも小さい群を特定する。CPU301は、正常赤血球を含む群として、前方散乱光強度が白血球を含む群よりも小さく、且つ蛍光強度が血小板を含む群より小さい群を特定する。CPU301は、マラリア感染赤血球を含む群として、前方散乱光強度が白血球を含む群より小さく、且つ、蛍光強度が正常赤血球を含む群より大きい群を特定する。
次に、CPU301は、ステップS301で分類したマラリア感染赤血球を含む群の細胞数を計数する(ステップS302)。また、CPU301は、計数したマラリア感染赤血球の数及び測定試料の調製に用いた解凍試料の量に基づいて、所定量(例えば1μL)あたりの解凍試料におけるマラリア感染赤血球の濃度を算出する(ステップS303)。
そして、CPU301は、測定データに含まれる、シースフローDC測定法による血球検出データを用いて、血球数算定を行う(ステップS304)。シースフローDC測定法に代えて、測定データに含まれる前方散乱光強度及び蛍光強度を用いて血球数算定を行うこともできる。上述のとおり、試料処理液及び染色液での処理により、正常赤血球、マラリア感染赤血球、白血球及び血小板はそれぞれ、スキャッタグラム上に所定の領域内に出現する。したがって、ステップS301で分類した各群の細胞数を計数することにより、血球数算定を行うことができる。前方散乱光強度に代えて、前方散乱光のパルス幅、パルス面積を用いてもよい。前方散乱光に代えて、側方散乱光を検出し、側方散乱光のパルスのピーク値、パルス幅、またはパルス面積を用いてもよい。
以上で、CPU301は、測定データ解析処理を終了し、メインルーチンへ処理をリターンする。図5を参照して、上記のような測定データ解析処理を終了すると、CPU301は、分析結果を出力部310に出力して(ステップS110)、処理を終了する。
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 凍結保存した血液試料のFCMによる測定
凍結保存液を添加せずに凍結保存した血液試料をFCMで測定することにより、マラリア感染赤血球を検出できるか否かを検討した。
(1) 血液試料
培養マラリア原虫(国立大学法人大阪大学微生物病研究所から入手:以下、「培養マラリア」ともいう)を、健常ボランティアから採取した血液(以下、「ヒト全血」ともいう)に添加して、マラリア感染血液を模した試験試料1及び2を調製した。ヒト全血には、抗凝固剤が通常の使用量で添加されている。よって、試験試料1及び2にも抗凝固剤が含まれる。なお、培養マラリア原虫とは、白血球を除去したヒト血液にマラリア原虫を感染させて得た培養物であり、マラリア原虫そのものではない。該培養物において、マラリア原虫はヒト赤血球内に存在する。試験試料1は、マラリアの症状のある患者を想定した試料であり、マラリア感染赤血球を約2,000/μLで含む。試験試料2は、無症候患者を想定した試料であり、マラリア感染赤血球を約200/μLで含む。対照の血液試料として、ヒト全血及び培養マラリアのそれぞれを用いた。
(2) 試薬
血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬(試料処理液)として、以下の組成の溶液(pH 6.1、277 mOsm/kg・H2O)を調製した。溶媒には精製水(1.0 L)を用いた。
[試料処理液の組成]
LTAC (カチオン系界面活性剤) 2.95 mM
STAC (カチオン系界面活性剤) 1.11 mM
PBC-44 (ノニオン系界面活性剤) 2.90 mM
ADA (緩衝剤) 20 mM
NaCl 適量 (浸透圧が上記の値となる量)
核酸染色用蛍光色素を含む試薬(染色液)を、12.5μgのヘキスト34580(シグマアルドリッチ社)をエチレングリコール(1mL)に溶解して調製した。染色液におけるヘキスト34580の濃度は約22.3μMであった。
(3) 血液試料の凍結、解凍及び測定
1.5 mLエッペンドルフチューブに各血液試料を500μLずつ分注した。これらのチューブを冷凍庫内に入れ、−20℃で一晩(約18時間)保存した。凍結した血液試料を室温にて解凍した。解凍後、すみやかに血液試料(17μL)に処理液(1mL)及び染色液(20μL)を添加し、41℃にて20秒間混合して、測定試料を調製した。測定試料を、光源として波長405 nmの青色半導体レーザを用いるフローサイトメータXN-30(シスメックス株式会社)により測定した。各血液試料より得られた前方散乱光強度及び蛍光強度に基づいてスキャッタグラムを作成した。比較のため、上記(1)で調製した各血液試料の一部を取り、冷凍せずに上記と同様にして測定を行い、スキャッタグラムを作成した。また、各血液試料の血球数算定(CBC)も行った。
(4) 結果
各血液試料のスキャッタグラムを図8に示した。また、ヒト全血、培養マラリア、試験試料1及び2のCBCデータをそれぞれ表1〜4に示した。図8中の数値(/μL)は、スキャッタグラム上のマラリア感染赤血球の出現領域内の粒子数(細胞数)である。本実施例では、この粒子数をマラリア感染赤血球数として計数した。表中、WBCは白血球、RBCは赤血球、Hgbはヘモグロビン、Hctはヘマトクリット、MCVは平均赤血球容積、MCHは平均赤血球ヘモグロビン量、MCHCは平均赤血球ヘモグロビン濃度、PLTは血小板、MI-RBC#はマラリア感染赤血球を指す。
図8に示す凍結前の各血液試料のスキャッタグラムからわかるように、上記のFCM測定は、正常赤血球、マラリア感染赤血球及び白血球を弁別できた。凍結後の各血液試料のスキャッタグラムは、凍結前の各血液試料のスキャッタグラムと同様の分布を示した。一方、正常赤血球(RBC)の数は、表1〜4より、凍結した血液試料では、凍結前の血液試料よりも約20%〜約30%減少していた。これは、凍結によって赤血球が溶血したことを示す。このことから、マラリア感染赤血球も凍結によって溶血することが予想された。しかし、表2〜4に示されるように、凍結後のマラリア感染赤血球の数は、凍結前の数からほとんど変化はなかった。このことは、図8からもわかる。凍結前の試験試料1及び2のスキャッタグラムでは、1μL当たりのマラリア感染赤血球の数がそれぞれ2321/μL及び220/μLであった。そして、凍結後の試験試料1及び2のスキャッタグラムでは、1μL当たりのマラリア感染赤血球の数がそれぞれ2252/μL及び252/μLであった。これらの値は、各試験試料の調製時に想定したマラリア感染赤血球の濃度とほぼ同じである。このように、血液試料を凍結してもマラリア感染赤血球の数に変化はほとんど見られないことが、FCMによっても確かめられた。
もしマラリア感染赤血球が溶血した場合、マラリア原虫(メロゾイト)が感染赤血球から遊離することが考えられる。しかし、図8に示す凍結後の培養マラリア、試験試料1及び2のスキャッタグラムにおいて、メロゾイトの出現領域には粒子は認められなかった。これらのことから、血液試料の凍結により、正常赤血球は溶血するが、マラリア感染赤血球はほとんど溶血しないことがわかった。よって、凍結保存液を添加せずに凍結保存した血液試料をFCMで測定することにより、マラリア感染赤血球を検出できることがわかった。
実施例1では、血液試料を凍結保存液で希釈していないので、血液試料は本来の細胞濃度を保持している。したがって、FCMにより、所定量の血液試料におけるマラリア感染赤血球の数をカウントすることができる。このことから、FCMでの測定により、凍結保存液を添加せずに凍結保存した血液試料からマラリア感染赤血球を定量的に検出できることがわかった。
実施例2 凍結保存した血液試料の顕微鏡観察
凍結保存液を添加せずに凍結保存した血液試料を顕微鏡で観察することにより、マラリア感染赤血球を検出できるか否かを検討した。
(1) 血液試料の調製、染色及び観察
血液試料として、実施例1で調製した、凍結したヒト全血、培養マラリア及び試験試料1を用いた。これらの血液試料を実施例1と同様にして解凍し、塗抹標本を作製した。これらの塗抹標本を常法に従ってギムザ染色して、顕微鏡で観察した。比較のため、凍結保存していないヒト全血から塗抹標本を作製し、これをギムザ染色して顕微鏡で観察した。
(2) 結果
染色した各血液試料の写真を図9A〜Cに示す。図中、矢印は、マラリア感染赤血球を示す。図9A(ヒト全血)の左パネルには、正常赤血球が多数存在しており、赤血球に特徴的な窪みのある形状を明確に認識できる。これに対して、図9Aの右パネルには、正常赤血球は全く見当たらず、凍結により溶血したことが分かる。図9B(培養マラリア)及び図9C(試験試料1)でも同様に、正常赤血球(非感染赤血球)は全く見当たらず、赤血球は溶血している。しかし、図9B及びCでは、リングフォームやトロフォゾイトのマラリア原虫を内包する赤血球を見出すことができた。よって、血液試料を実質的に希釈せずに凍結しても、マラリア感染赤血球自体は検出できることがわかった。しかし、非感染赤血球は溶血しているので、マラリア感染赤血球の定量的検出はできない。顕微鏡による定量的検出(感染率の算出)のためには、非感染赤血球の数を計数する必要があるからである。
実施例3 血液試料の再凍結のFCM測定への影響
マラリアの流行地域から検査機関までの血液試料の輸送に長期間かかった場合、輸送の間に保冷材が溶けて、凍結した血液試料が解凍することがあり得る。また、保冷材の追加投入により、解凍した血液試料が再凍結することも十分に考えられる。そこで、血液試料の再凍結及び再解凍によるマラリア感染赤血球及びその測定への影響を検討した。
(1) 血液試料の調製及び測定
血液試料として、実施例1で調製した、凍結したヒト全血、培養マラリア及び試験試料1を用いた。これらの血液試料を室温にて解凍した後、再び冷凍庫内に入れて−20℃で凍結させた。再凍結した血液試料を室温にて解凍した。解凍後、実施例1と同様にして、測定試料を調製してフローサイトメータXN-30(シスメックス株式会社)により測定した。各血液試料より得られた前方散乱光強度及び蛍光強度に基づいてスキャッタグラムを作成した。また、再凍結した各血液試料の血球数算定も行った。
(2) 結果
実施例1のスキャッタグラムと合わせて、再凍結した各血液試料のスキャッタグラムを図10A〜Cに示した。また、実施例1のデータと合わせて、再凍結した各血液試料のCBCデータをそれぞれ表5〜7に示した。
表5〜7から分かるように、血液試料を再凍結すると、正常赤血球の数はさらに減少したが、マラリア感染赤血球の数はほとんど変化しなかった。同様の傾向は、図10A〜Cに示されるスキャッタグラムでも認められた。図10B及びCに示されるように、血液試料を再凍結してもマラリア感染赤血球の分布に変化はほとんど認められなかった。これらのことから、凍結保存液を添加していない血液試料の凍結融解を少なくとも2回繰り返しても、マラリア感染赤血球に影響はなく、FCMで検出可能であることが示された。
実施例4 凍結温度の検討
−20℃での凍結保存は、一般的な冷凍庫の温度を想定している。実際の試料輸送時には、保冷材としてドライアイスや液体窒素を用いることが想定される。そこで、より低い温度で凍結させても、FCMによるマラリア感染赤血球の検出が可能か否かを検討した。比較のため、凍結保存液を添加した血液試料についても検討した。
(1) 血液試料
培養マラリア原虫をヒト全血に添加して、マラリア感染赤血球を約4,000/μLで含む試験試料3を調製した。1.5 mLエッペンドルフチューブに試験試料3を300μLずつ分注した。試験試料3が入っているチューブの一部に、下記の組成の凍結保存液を1.0 mLずつ添加して、試験試料4を調製した。
[凍結保存液]
超純水 72 mL
ソルビトール 4.2 g
塩化ナトリウム 0.9 g
グリセロール 28 mL
得られた溶液を0.22μmフィルターでろ過滅菌した。
(2) 血液試料の凍結、解凍及び測定
チューブを−20℃(冷凍庫)、−80℃(冷凍庫)又は-196℃(液体窒素)にて2日間保存した。凍結した血液試料を室温にて解凍した。試験試料3については、解凍後すみやかに試験試料3(17μL)に実施例1と同じ処理液(1mL)及び染色液(20μL)を添加し、41℃にて20秒間混合して、測定試料を調製した。試験試料4については、解凍後すみやかに遠心分離を行い、上清を1mL除去した(残量は約300μL)。上清を除いた試験試料4から17μL取り、上記と同様にして測定試料を調製した。調製した測定試料を、実施例1と同様にしてフローサイトメータXN-30(シスメックス株式会社)により測定した。各血液試料より得られた前方散乱光強度及び蛍光強度に基づいてスキャッタグラムを作成した。対照として、上記(1)で調製した試験試料3の一部を取り、冷凍せずに上記と同様にして測定を行い、スキャッタグラムを作成した。
(3) 結果
各血液試料のスキャッタグラムを図11に示した。図11中の数値(/μL)は、スキャッタグラム上のマラリア感染赤血球の出現領域内の粒子数(細胞数)である。試験試料3(凍結保存液なし)のスキャッタグラムより、−80℃以下で血液試料を凍結保存した場合、感染赤血球の数はほとんど減少しなかった。一方、−20℃で血液試料を凍結保存した場合は、感染赤血球の数がわずかに減少したことから、凍結による細胞の損傷が、−80℃以下での保存に比べて大きいと推測された。試験試料4(凍結保存液あり)については、凍結保存液の添加により試料が希釈されているので、定量的評価には誤差が生じ得る。そのため、試験試料4を定量的に評価することは適切ではないが、−20℃での凍結保存により、マラリア感染赤血球数が顕著に低下していた。
1 血液分析装置
2 測定部
3 解析部
5 試料調製部
6 光学検出部
7 第2検出部
61 フローセル
62 光源部
63 検出部
64 検出部
301 CPU
310 表示部
320 コンピュータプログラム
321 可搬型記録媒体

Claims (16)

  1. 実質的に凍結保存液を含まない凍結した血液試料を解凍する工程と、
    解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程と、
    を含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法。
  2. 凍結した血液試料が、−20℃以下で凍結された血液試料である請求項1に記載の方法。
  3. 凍結した血液試料が、−80℃以下で凍結された血液試料である請求項1に記載の方法。
  4. マラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程において、フローサイトメータを用いて血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する工程をさらに含み、
    前記マラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程において、調製した測定試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記マラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程において、
    調製した測定試料に光を照射して、散乱光情報及び蛍光情報を取得し、
    取得した散乱光情報及び蛍光情報に基づいて、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 検出したマラリア原虫に感染した赤血球に基づいて、血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を計数する工程をさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 計数したマラリア原虫に感染した赤血球の数に基づいて、血液試料におけるマラリア原虫に感染した赤血球の濃度を取得する工程をさらに含む請求項7に記載の方法。
  9. 凍結した血液試料を解凍する工程において、一部の赤血球を溶血させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 実質的に希釈されていない凍結した血液試料を解凍する工程と、
    解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程と、
    を含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法。
  11. 実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む凍結した血液試料を解凍する工程と、
    解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程と、
    を含む、マラリア原虫に感染した赤血球の検出方法。
  12. 解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する工程をさらに含み、
    前記マラリア原虫に感染した赤血球を検出する工程において、
    調製した測定試料に光を照射して、散乱光情報及び蛍光情報を取得し、
    取得した散乱光情報及び蛍光情報に基づいて、解凍した血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する、請求項10又は11に記載の方法。
  13. 検出したマラリア原虫に感染した赤血球に基づいて、血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を計数する工程をさらに含む請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 実質的に凍結保存液を含まない解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、
    前記試料調製部によって調製された前記測定試料を流すためのフローセルと、
    前記フローセル内を流れる前記測定試料に光を照射するための光源部と、
    前記測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、
    前記散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、前記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部と
    を備える、血液分析装置。
  15. 実質的に希釈されていない解凍した血液試料又は添加剤として抗凝固剤のみを含む解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、
    前記試料調製部によって調製された前記測定試料を流すためのフローセルと、
    前記フローセル内を流れる前記測定試料に光を照射するための光源部と、
    前記測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、
    前記散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、前記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部と
    を備える、血液分析装置。
  16. 実質的に添加剤を含まない凍結した血液試料又は添加剤として実質的に抗凝固剤のみを含む解凍した血液試料、核酸染色用蛍光色素を含む試薬、及び血球の細胞膜を部分的に損傷させる試薬から測定試料を調製する試料調製部と、
    前記試料調製部によって調製された前記測定試料を流すためのフローセルと、
    前記フローセル内を流れる前記測定試料に光を照射するための光源部と、
    前記測定試料に光が照射されたときに得られる散乱光情報及び蛍光情報を取得する光学検出部と、
    前記散乱光情報及び前記蛍光情報に基づいて、前記血液試料中のマラリア原虫に感染した赤血球を検出する解析部と
    を備える、血液分析装置。
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