JP2018090837A - ワークの熱処理装置 - Google Patents

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幸満 山路
憲次郎 池田
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憲次郎 池田
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Yukitomo Kanaike
幸倫 金池
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Abstract

【課題】軸振れや歪を低減させるワークの熱処理装置を提供する。【解決手段】軸部加圧ローラー25は、ワーク10の軸部21の先端部外周面に当接する大径のローラーであり、カップ部加圧ローラー26は、カップ部20の底部外周面に当接する小径のローラーである。軸部加圧ローラー25とカップ部加圧ローラー26とは、同軸上に一体的にかつワーク10の軸方向に平行に設けられて回転する。軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、合金工具鋼により形成されている。3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26のうち1つがワーク10の径方向に移動可能に設けられ、残り2つが加圧方向Fと直交する方向に対向して所定位置でワーク10を支持するように等間隔に設けられている。1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26が回転駆動装置55により回転すると、ワーク10は反対方向に回転する。【選択図】図3

Description

本発明は、ワークの熱処理装置に関し、特に、ワークを加熱後、加圧しながら冷却し、矯正保持するワークの熱処理装置に関するものである。
従来、等速ジョイント用外輪には、硬度を向上させるために高周波誘導加熱および冷却による熱処理が施されている(例えば、特許文献1参照)。この等速ジョイント用外輪の高周波誘導加熱を用いた焼入れ(または焼戻し)工程では、外輪(ワーク)の軸部を誘導加熱用の外コイルに挿入し、一方、外輪のカップ内に誘導加熱用の内コイルを挿入して、外コイルと外コイル用高周波電源とを接続し、内コイルと内コイル用高周波電源とを接続して、外コイルと内コイルとに高周波電流を供給し外輪を加熱する。加熱が終了すると、所定の時間冷却水等で冷却して熱処理を終了する。
特開2007−254838号公報
しかしながら、上記のような高周波誘導加熱による熱硬化処理では、ワーク形状によって軸部の軸振れや、カップ部の焼入れ範囲に歪が発生する可能性がある。そのため、加熱時に軸振れや歪が発生した場合には、高周波誘導による加熱条件を変更したり、後加工を行ったり、ワーク形状を変更したりする必要がある。また、後加工が発生することにより、製造コストが増加するおそれがある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、軸振れや歪を低減させるワークの熱処理装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、丸棒状の軸部と椀状のカップ部とを軸方向にずらして同軸上に連結したワークであって、前記ワークを加熱する加熱手段と、加熱後の前記ワークを回転させながら前記軸部と前記カップ部とを同時に加圧しながら冷却し、矯正保持する矯正保持手段と、を備え、前記矯正保持手段は、前記軸部を加圧する複数の軸部加圧ローラーと、前記カップ部を加圧する複数のカップ部加圧ローラーと、前記複数の軸部加圧ローラーのそれぞれと前記複数のカップ部加圧ローラーのそれぞれとを同軸にかつ回転可能に一体構造的に支持する複数の支持装置と、少なくとも1つの前記支持装置を前記ワークの径方向に移動させる搬送装置と、前記ワークの軸線を中心とする同心円上に前記複数の軸部加圧ローラーおよび前記複数のカップ部加圧ローラーを配置したときに、少なくとも1つの前記軸部加圧ローラーもしくは前記カップ部加圧ローラーを回転させる回転駆動装置と、を有することを要旨とする。
上記構成によれば、少なくとも1つの支持装置が搬送装置により移動し、加熱後のワークの軸部とカップ部とを支持装置により同軸にかつ回転可能に一体的に支持された軸部加圧ローラーとカップ部加圧ローラーとで加圧する。このとき、少なくとも1つの軸部加圧ローラーもしくはカップ部加圧ローラーは回転駆動装置により回転する。こうすることによって、ワークの軸心の同心円上に配置された複数の軸部加圧ローラーおよび複数のカップ部加圧ローラーは、剛体と加圧力を有して回転し、ワークは回転しながら軸部とカップ部とが同軸になるように矯正しながら保持される。このため、軸部の軸振れとカップ部外周面の円周方向の歪とを同時に矯正保持することができる。これにより、ワークを加圧しながら冷却し、矯正保持することで、軸振れや歪を発生させない熱処理を行うことができる。その結果、最終目標のワーク形状に近づけ、所定の寸法を満たすことができる。さらに、熱処理後に行う後加工を省き、加工時間を短縮するとともに、製造コストの低減を図ることが可能になる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のワークの熱処理装置において、前記複数の支持装置は、3つの支持装置であり、1つの支持装置を前記ワークの径方向に移動させ、残り2つの支持装置を固定してなることを要旨とする。
上記構成によれば、矯正保持手段の支持装置は、搬送装置によりワークの径方向に移動する1つの支持装置と、所定位置に固定した安価な2つの支持装置とからなるので、設備コストの低減を図ることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のワークの熱処理装置において、前記複数の支持装置は、3つの支持装置であり、3つの支持装置を前記ワークの径方向に移動させてなることを要旨とする。
上記構成によれば、矯正保持手段の支持装置は、搬送装置によりワークの径方向に移動する3つの支持装置からなるので、ワークの搬入出スペースを確保し、ワークの搬入、搬出を容易に行うことができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のワークの熱処理装置において、前記加熱手段は、前記ワークの前記軸部の外周面を加熱する軸用コイルと、前記カップ部の内周面を加熱するカップ用コイルと、前記軸用コイルと前記カップ用コイルとに個別に接続する高周波電源とを有することを要旨とする。
上記構成によれば、ワークの軸部の外周面を加熱する軸用コイルとカップ部の内周面を加熱するカップ用コイルとを個別に設け、それぞれ個別に高周波電源を接続するようにしたので、各コイルに供給する高周波電流を個別に調整することができ、軸部とカップ部との加熱を個別に調整できる。その結果、加熱処理の品質を確保することができる。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のワークの熱処理装置において、前記ワークは、等速ジョイント用外輪であることを要旨とする。
上記構成によれば、等速ジョイント用外輪の熱処理に際して、軸部とカップ部とを同時に加熱し、その後、加圧しながら冷却し、矯正保持することができる。その結果、軸振れや歪の少ない等速ジョイント用外輪を提供できる。
本発明によれば、軸振れや歪を低減させるワークの熱処理装置を提供できる。
本実施形態に係る等速ジョイントの軸方向に沿う断面図。 本発明の一実施形態に係るワークの熱処理装置の加熱手段の概略構成を示す模式図。 本発明の一実施形態に係るワークの熱処理装置の矯正保持手段の概略構成を示す側面図。 本発明の一実施形態に係るワークの熱処理装置の矯正保持手段の概略構成を示す正面図。
以下、本発明の実施の形態に係るワークの熱処理装置について、図に基づいて説明する。
この熱処理装置で外輪10が熱処理される。外輪10を有するボール型等速ジョイント1(以下、単に等速ジョイント(CVJ)という)の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る等速ジョイント1の所定角度のジョイント作動角θをとった状態の軸方向断面図である。
本実施形態の等速ジョイント1は、ジョイント中心固定式ボール型等速ジョイント(ツェッパ形等速ジョイントともいう)であって、Rr車両においてリヤ側に設置されるドライブシャフトのアウトボードジョイントとして使用されるものである。そのため、等速ジョイント1のジョイント作動角θは、小さい角度範囲(例えば、23°以下)となるように設定されている。この等速ジョイント1は、図1に示すように、複数の外輪ボール溝23を有する外輪10と、複数の内輪ボール溝32を有する内輪30と、複数のボール40と、保持器50とから構成されている。以下、各構成部品について詳細に説明する。
外輪10は、鋼材(例えば、炭素鋼等)により形成されたカップ部20と軸部21とから構成されている。カップ部20は、図1の左側に開口部を有する椀状(有底筒状)に形成されている。このカップ部20のカップ底部の外方(図1の右側)には、棒状の軸部21が外輪軸方向に延びるように一体形成されている。この軸部21は、他の動力伝達軸に連結される。カップ部20の内周面は、凹球面状に形成されている。具体的には、カップ部20の凹球面状内周面22は、外輪軸線L1と内輪軸線L2との交点Oを曲率中心として描かれる球面の一部により形成されており、外輪軸方向に切断した断面で見た場合に円弧凹状に形成されている。
さらに、カップ部20の内周面には、外輪軸直交方向断面がほぼ円弧凹状の複数(本実施形態では、6本)の外輪ボール溝23が、ほぼ外輪軸方向に延びるように形成されている。これら複数の外輪ボール溝23は、径方向に切断した断面で見た場合に、周方向に等間隔(60度間隔)に形成されている。ここで、外輪軸方向とは、外輪10(カップ部20)の中心軸を通る方向、すなわち外輪10の回転軸方向を意味する。
内輪30は、環状に形成され、外輪10の内側に配置されている。この内輪30の外周面31は、凸球面状に形成されている。具体的には、内輪30の凸球面状外周面31は、外輪軸線L1と内輪軸線L2との交点Oを曲率中心として描かれる球面の一部により形成されており、内輪軸方向に切断した断面で見た場合に一様な円弧、すなわち凸状の部分球面状に形成されている。
また、内輪30の外周面には、内輪軸直交方向断面がほぼ円弧凹状からなる複数(本実施形態では、6本)の内輪ボール溝32が、ほぼ内輪軸方向に延びるように形成されている。これら複数の内輪ボール溝32は、径方向に切断した断面で見た場合に、周方向に等間隔(60度間隔)にかつカップ部20に形成される外輪ボール溝23と同数形成されている。すなわちそれぞれの内輪ボール溝32が、外輪10(カップ部20)のそれぞれの外輪ボール溝23に対向するように位置する。
隣り合う内輪ボール溝32の間には、径方向外方に突出する突部33がそれぞれ形成されている。各突部33の軸方向一端側(図1の左側)の凸球面状外周面31側には、切欠き34が設けられており、これにより各突部33の半径方向先端部の軸方向長さが短くされている。
また、内輪30の内周面には、内輪軸方向に延びる内周スプライン35が形成されている。この内周スプライン35は、動力伝達軸36の外周スプラインに嵌合されている。ここで、内輪軸方向とは、内輪30の中心軸を通る方向、すなわち内輪30の回転軸方向を意味する。
複数のボール40は、それぞれ、外輪10の外輪ボール溝23と、外輪ボール溝23に対向する内輪30の内輪ボール溝32とに挟まれるようにして1つずつ配置されている。そして、それぞれのボール40は、それぞれの外輪ボール溝23およびそれぞれの内輪ボール溝32に対して、転動自在で周方向(外輪軸回りまたは内輪軸回り)に係合している。したがって、ボール40は、外輪10と内輪30との間でトルクを伝達する。
保持器50は、鋼材により環状に形成されている。この保持器50の外周面51は、カップ部20の凹球面状内周面22にほぼ対応する部分球面状、すなわち凸球面状に形成されている。一方、保持器50の内周面52は、内輪30の凸球面状外周面31にほぼ対応する部分球面状、すなわち凹球面状に形成されている。この保持器50は、外輪10の凹球面状内周面22と内輪30の凸球面状外周面31との間に配置されている。この保持器50は、保持器軸心の周方向に等間隔に配置された、ほぼ矩形の貫通孔である複数の窓部53を有する。保持器50の窓部53は、ボール40と同数形成されている。そして、それぞれの窓部53に、ボール40が1つずつ収容されている。各窓部53の4箇所の角部には円弧凹状が設けられている。これにより、隣り合う窓部53の間に位置するそれぞれの柱部の強度向上が図られている。
次に、本実施形態の熱処理装置について、図2〜図4を参照して詳細に説明する。
本熱処理装置は、図2の加熱装置(加熱手段)2と図3および図4の矯正保持装置(矯正保持手段)3とを備えている。等速ジョイント用外輪(以下、ワークという)10は、図示しない搬入出装置により加熱装置2に搬入され、加熱処理後に加熱装置2から搬出され、矯正保持装置3へ搬送されて冷却しながら矯正保持する冷却処理が行われる。
図2は、本発明の一実施形態に係るワーク10の熱処理装置の加熱装置2の概略構成を示す模式図(一部断面図)である。
図2に示すように、加熱装置2は、軸用コイル11、カップ用コイル12、軸用コイル用高周波電源13、カップ用コイル用高周波電源14、およびワーク載置台15を有している。
軸用コイル11は、ワーク10の軸部21が挿入されて、軸全体を覆って誘導加熱するためのもので、軸用コイル用高周波電源13に接続されている。軸用コイル11には、例えば円弧状の導体と、この導体に連結された一対の導体とからなる半開放型コイル(ヘアピンコイル)が用いられる。図中、焼入れ範囲16は硬度を必要とする部位(軸振れ、歪発生範囲)を示し、軸部21の一部と、軸部21とカップ部20との間の段部である。
カップ用コイル12は、ワーク10のカップ部20へ挿入して、カップ部20の内側を誘導加熱するためのもので、カップ用コイル用高周波電源14と接続されている。カップ用コイル12には、カップ部20へ挿入できるように、例えば丸型のマルチターンコイル(ソレノイドコイル)が用いられる。図中、焼入れ範囲17は硬度を必要とする部位(歪発生範囲)を示す。
軸用コイル用高周波電源13とカップ用コイル用高周波電源14とは、例えばインバータ電源が用いられ、パソコン等と接続されて電流、周波数等を個別に制御でき、加熱温度を制御できるようになっている。
ワーク10は、ワーク載置台15に載置され、カップ用コイル12はワーク載置台15の下方から中央に設けた貫通孔を通って上昇してカップ部20の内側に挿入される。そして、この状態で軸用コイル11とカップ用コイル12とに接続された各高周波電源13、14を作動させて、ワーク10の軸部21の外部とカップ部20の内部とを同時に高周波誘導により加熱する。
次に、図3は、本発明の一実施形態に係るワーク10の熱処理装置の矯正保持装置3の概略構成を示す側面図(一部断面図)、図4は、本発明の一実施形態に係るワーク10の熱処理装置の矯正保持装置3の概略構成を示す正面図である。
図3および図4に示すように、矯正保持装置3は、複数(本実施形態では、3つ)の軸部加圧ローラー25、複数(本実施形態では、3つ)のカップ部加圧ローラー26、複数(本実施形態では、3つ)の加圧ローラー支持装置(以下、支持装置という)27a,27b、1つの加圧ローラー回転駆動装置(以下、回転駆動装置という)55、および1つの油圧シリンダ(搬送装置)58を有している。
軸部加圧ローラー25は、ワーク10の軸部21の先端部外周面に当接する大径のローラーである。カップ部加圧ローラー26は、カップ部20の底部外周面に当接する小径のローラーである。軸部加圧ローラー25とカップ部加圧ローラー26とは、同軸上に一体的にかつワーク10の軸方向に平行に設けられて回転する。軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、合金工具鋼(炭素鋼にマンガン、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン、バナジウム等の合金元素を添加した工具鋼、例えば、SKD61等)により形成されている。
3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26のうち1つがワーク10の径方向(図中、加圧方向F)に移動可能に設けられ、残り2つが加圧方向Fと直交する方向に対向して所定位置でワーク10を支持するように等間隔に設けられている。1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26が回転すると、ワーク10は反対方向に連れ回り回転する。
支持装置27aは、断面コの字形状の加圧ローラー支持部(以下、支持部という)28aと、軸部加圧ローラー25側およびカップ部加圧ローラー26側に設けられた2つの軸受29とから構成されている。支持部28aは、軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26を2つの軸受29を介して同軸上にかつ回転可能に一体的に支持する。油圧シリンダ58は、支持装置27aをワーク10の径方向であるワーク10の加圧方向Fに移動させる。2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26の回転軸線を結ぶ線分Aがあり、この線分Aの中間点で線分Aに対して垂直に延びる線分B上を残りの1つの軸部加工ローラー25およびカップ部加工ローラー26が移動できるように油圧シリンダ58を設置する。
支持装置27bは、断面ロの字形状の加圧ローラー支持部(以下、支持部という)28bと、軸部加圧ローラー25側およびカップ部加圧ローラー26側に設けられた2つの軸受29とから構成されている。支持部28bは、上および下に設けられた上梁および下梁と、上梁および下梁の両端に設けられ、これらを繋ぐ連結柱とからなる。2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、それぞれの軸中心回りに軸受29を介して支持部28bに回転可能に設置されている。さらに、支持装置27bは、受け台54に固定設置されている。支持部28bの下梁にワーク10が載置される。
回転駆動装置55は、1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26を回転させるアクチュエータであり、駆動モータ56と、減速機57とから構成されている。回転駆動装置55は、支持部27aの上部に取り付けられる。1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、回転駆動装置55によって所定の回転速度(例えば、300〜800min−1程度)で回転駆動されている。この回転駆動装置55は、例えば油圧式の駆動モータ56と、この駆動モータ56の出力軸に取り付けられ、軸部加圧ローラー25に接続される減速機57とからなる。駆動モータ56が駆動されると、減速機57を介して1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26に回転伝達される。
さらに、図4に示すように、ワーク10は、軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26から回転力を受けて回転する。ワーク10の軸部21とカップ部20とは、同時に3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26と3点で当接し、加圧された状態で回転する。対向する2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、ワーク10に対して同一方向に回転する。このときの回転方向を図中、矢印で示す。
このように、上記のような熱処理装置を用いて、ワーク10の軸部21とカップ部20とに当接するように配置され、ワーク10の径方向に移動可能な1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26と、固定位置に配設された2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26とによって加熱後のワーク10を加圧する。そして、ワーク10を回転させながら冷却し、軸部21とカップ部20とは同軸となり、カップ部20に対して軸部21は軸振れしないように矯正保持する。これにより、熱処理後の後加工を行うことなく、ワーク10の軸部21の軸振れやカップ部20外周面の円周方向の歪を発生させないことが可能になる。
なお、図3および図4では、ワーク10の径方向に移動可能な1つの支持装置27aと固定位置に配設された2つの支持装置27bとの3つの支持装置からなる矯正保持装置3について説明したが、ワーク10の径方向に移動可能な3つの支持装置27aからなる矯正保持装置3を構成してもよい。この場合、ワーク10の軸線から120度の等角度間隔で外径方向に延びる3つの線分上を3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26がそれぞれ移動できるように3つの油圧シリンダ58をそれぞれ設置する。
次に、本実施形態に係る熱処理装置の動作を説明する。
まず、ワーク10を図2の加熱装置2に搬入する。ワーク10をワーク載置台15に載置し、カップ用コイル12をカップ部20の内側に挿入して取り付ける。続いて、例えば図示しない昇降装置を作動してワーク載置台15、ワーク10およびカップ用コイル12を上昇させる。上昇したワーク10は、軸部21が上方の軸用コイル10に挿入されると、昇降装置が停止する。その後、軸用コイル11およびカップ用コイル12のそれぞれの高周波電源13、14を作動してワーク10の軸部21とカップ部20の内部とを同時に誘導加熱する。そして、加熱処理後、上述した動作と逆の動作を行い、ワーク10を搬出する。
次いで、加熱されたワーク10を図3および図4の矯正保持装置3に搬入する。ワーク10を支持装置27bに取り付けた2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26に当接させ、支持装置27bの所定位置に配置する。続いて、1つの軸部加圧ローラー25、カップ部加圧ローラー26および回転駆動装置55を取り付けた支持装置27aを油圧シリンダ58によってワーク10の径方向内径側に移動させる。この1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26をワーク10の軸部21とカップ部20とにそれぞれ当接させ、ワーク10を同心円上に配置した3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26で加圧すると、油圧シリンダ58を停止する。その後、回転駆動装置55を作動して1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26を回転させると、ワーク10は反対方向に回転しながら、さらに支持装置27bに支持された2つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26を回転させる。そして、ワーク10は軸部21とカップ部20とが同軸になり、軸振れがないように矯正保持され、冷却される。冷却処理後、上述した動作と逆の動作、すなわち1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26を油圧シリンダ58によってワーク10の径方向外径側に移動させ、ワーク10を搬出する。
次に、上記のように構成された本実施形態であるワーク10の熱処理装置の作用および効果について説明する。
上記構成によれば、1つの支持装置27aが油圧シリンダ58により移動し、加熱後のワーク10の軸部21とカップ部20とを、支持装置27a、27bにより同軸にかつ回転可能に一体的に支持された軸部加圧ローラー25とカップ部加圧ローラー26とで加圧する。1つの支持装置27aは油圧シリンダ58により移動し、1つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は回転駆動装置55により回転する。こうすることによって、ワーク10の軸心の同心円上に配置された3つの軸部加圧ローラー25およびカップ部加圧ローラー26は、剛体と加圧力を有して回転し、ワーク10は回転しながら軸部21とカップ部20とが同軸になるように矯正しながら保持される。このため、軸部21の軸振れとカップ部20外周面の円周方向の歪とを同時に矯正保持することができる。これにより、ワーク10を加圧しながら冷却し、矯正保持することで、軸振れや歪を発生させない熱処理を行うことができる。その結果、最終目標のワーク形状に近づけ、所定の寸法を満たすことができる。さらに、熱処理後に行う後加工を省き、加工時間を短縮するとともに、製造コストの低減を図ることが可能になる。
また、3つの支持装置は、油圧シリンダ58によりワーク10の径方向に移動する1つの支持装置27aと、所定位置に固定した安価な2つの支持装置27bとからなるので、設備コストの低減を図ることができる。もしくは支持装置は、油圧シリンダ58によりワーク10の径方向に移動する3つの支持装置27aからなるので、ワーク10の搬入出スペースを確保し、ワーク10の搬入、搬出を容易に行うことができる。
また、ワーク10の軸部21の外周面を加熱する軸用コイル11とカップ部20の内周面を加熱するカップ用コイル12とを個別に設け、それぞれ個別に高周波電源13、14を接続するようにしたので、各コイル11、12に供給する高周波電流を個別に調整することができ、軸部21とカップ部20との加熱を個別に調整できる。その結果、加熱処理の品質を確保することができる。
これにより、ワーク10の熱処理に際して、軸部21とカップ部20とを同時に加熱し、その後、加圧しながら冷却し、矯正保持することができる。その結果、軸振れや歪の少ないワーク(等速ジョイント用外輪)10を提供できる。
以上のように、本実施形態によれば、軸振れや歪を低減させるワークの熱処理装置を提供できる。
以上、本発明に係る一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、さらに他の形態で実施することも可能である。
上記実施形態では、3つの支持装置からなる矯正保持装置3の例を示したが、支持装置の個数、配置はこれに限定されるものでなく、4つ以上であってもよい。また、ワーク10の径方向に移動可能な支持装置の個数についても限定されない。さらに、油圧シリンダ58と回転駆動装置55とを別個の支持装置に設けるようにしてもよい。
上記実施形態では、支持装置27aを油圧シリンダ58により移動させる例を示したが、これに限らず、他の搬送装置、例えばエアシリンダや電動シリンダを使用してもよい。
上記実施形態では、車両のリヤ側に設置されるドライブシャフトのタイヤ側のアウトボードジョイントとして使用される等速ジョイント用外輪に適用する例を示したが、これに限らず、例えばディファレンシャルギヤ側のインボードジョイントとして使用される等速ジョイント(CVJアウトアウタ)に適用してもよい。
上記実施形態では、軸用コイル11として半開放タイプのヘアピンコイルを例に説明したが、これに限らず、他のコイル、例えばリング状のソレノイドコイルを用いてもよい。また、加熱装置2では、ワーク10をワーク載置台15に載置するようにしたが、必要に応じてワーク10を回転させながら加熱するようにしてもよい。
上記実施形態では、回転駆動装置55を支持装置27aの軸部加圧ローラー25側に設置する例を示したが、これに限らず、カップ部加圧ローラー26側に設けるようにしてもよい。
1:等速ジョイント、2:加熱装置(加熱手段)、3:矯正保持装置(矯正保持手段)、10:等速ジョイント用外輪(ワーク)、11:軸用コイル、12:カップ用コイル、
13:軸用コイル用高周波電源、14:カップ用コイル用高周波電源、
15:ワーク載置台、16,17:焼入れ範囲、20:カップ部、21:軸部、
22:凹球面状内周面、23:外輪ボール溝、25:軸部加圧ローラー、
26:カップ部加圧ローラー、27a,27b:支持装置、28a,28b:支持部、
29:軸受、30:内輪、31:凸球面状外周面、32:内輪ボール溝、33:突部、
34:切欠き、35:内周スプライン、36:動力伝達軸、40:ボール、
50:保持器、51:外周面、52:内周面、53:窓部、54:受け台、
55:回転駆動装置、56:駆動モータ、57:減速機、
58:油圧シリンダ(搬送装置)、
L1:外輪軸線、L2:内輪軸線、θ:ジョイント作動角、O:交点、
F:加圧方向(移動方向)

Claims (5)

  1. 丸棒状の軸部と椀状のカップ部とを軸方向にずらして同軸上に連結したワークであって、前記ワークを加熱する加熱手段と、
    加熱後の前記ワークを回転させながら前記軸部と前記カップ部とを同時に加圧しながら冷却し、矯正保持する矯正保持手段と、を備え、
    前記矯正保持手段は、前記軸部を加圧する複数の軸部加圧ローラーと、
    前記カップ部を加圧する複数のカップ部加圧ローラーと、
    前記複数の軸部加圧ローラーのそれぞれと前記複数のカップ部加圧ローラーのそれぞれとを同軸にかつ回転可能に一体構造的に支持する複数の支持装置と、
    少なくとも1つの前記支持装置を前記ワークの径方向に移動させる搬送装置と、
    前記ワークの軸線を中心とする同心円上に前記複数の軸部加圧ローラーおよび前記複数のカップ部加圧ローラーを配置したときに、少なくとも1つの前記軸部加圧ローラーもしくは前記カップ部加圧ローラーを回転させる回転駆動装置と、を有することを特徴とするワークの熱処理装置。
  2. 請求項1に記載のワークの熱処理装置において、
    前記複数の支持装置は、3つの支持装置であり、1つの支持装置を前記ワークの径方向に移動させ、残り2つの支持装置を固定してなることを特徴とするワークの熱処理装置。
  3. 請求項1に記載のワークの熱処理装置において、
    前記複数の支持装置は、3つの支持装置であり、3つの支持装置を前記ワークの径方向に移動させてなることを特徴とするワークの熱処理装置。
  4. 請求項1〜3の何れか1項に記載のワークの熱処理装置において、
    前記加熱手段は、前記ワークの前記軸部の外周面を加熱する軸用コイルと、前記カップ部の内周面を加熱するカップ用コイルと、前記軸用コイルと前記カップ用コイルとに個別に接続する高周波電源とを有することを特徴とするワークの熱処理装置。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載のワークの熱処理装置において、
    前記ワークは、等速ジョイント用外輪であることを特徴とするワークの熱処理装置。
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