以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態に係るハイブリッド車両の構成を示す概念図である。ハイブリッド車両1は、内燃機関であるエンジン10と、このエンジン10に動力分配機構14を介して夫々接続されている回転電機MG1及びMG2とを含んだ駆動系を備えている。動力分配機構14、回転電機MG1,MG2及び有段変速部15は、動力伝達機構110を構成する。回転電機MG1,MG2は、例えば永久磁石式の三相同期電動発電機からなる。第1回転電機MG1は、主に、エンジン10の制御、及びエンジン10から伝達される回転動力による発電に用いられる。他方、第2回転電機MG2は、主に、ハイブリッド車両1の力行及び回生ブレーキに用いられる。
エンジン10には、吸気通路11及び排気通路12が接続されている。吸気通路11には、エアフローメータ21、スロットル弁22、ターボチャージャ23のコンプレッサ23c及びインタークーラ24が設けられている。排気通路12には、ターボチャージャ23のタービン23t、スタートコンバータ25及び後処理装置26が設けられている。排気通路12には更に、タービン23t上流と、このタービン23tとスタートコンバータ25との間を連通するバイパス通路が設けられており、このバイパス通路にはウェイストゲートバルブ27が設けられている。
スタートコンバータ25は、後処理装置26が活性化していない機関始動時に排気を浄化するものであり、例えば三元触媒から構成される。後処理装置26は、例えば吸蔵還元型NOx触媒(NSR: NOx Storage Reduction)及び選択還元型NOx触媒(SCR: Selective Catalytic Reduction)のいずれかから構成される。
本発明における触媒装置である後処理装置26には、電力の供給によって触媒を加熱可能に構成された電気ヒータ28が設けられている。電気ヒータ28の熱源としては、ジュール熱を発生させるもの(例えば電熱線)や、電磁波の作用により誘電加熱又は誘導加熱を行うもの(例えばマグネトロン)などを用いることができる。電気ヒータ28に接続されたヒータ電源29は、内部にリレーなどを備えており、不図示のバッテリからの電力を電気ヒータ28に供給するように構成される。ヒータ電源29内部のリレーが閉じられると、電気ヒータ28が通電され、後処理装置26内の触媒が昇温される。ヒータ電源29内部のリレーが開かれると、電気ヒータ28の通電が停止される。このように、ヒータ電源29を制御することによって電気ヒータ28の通電量(以下適宜「ヒータ通電量」という)が制御される。
図2に示されるように、動力伝達機構110は、エンジン10の出力する回転動力を入力される入力軸111と、デファレンシャルギヤ(差動歯車装置)150に連結されて左右の駆動輪109のそれぞれに伝達する回転動力を出力する出力軸112と、入力軸111および出力軸112との間に介在して回転動力を中継するように伝達する伝達軸113と、入力軸111と伝達軸113の間に配置されてエンジン10の回転動力を回転電機MG1,MG2に分配して出力させる動力分配機構14と、出力軸112と伝達軸113との間に配置されて動力分配機構14から伝達される回転動力を備える変速段で自動変速して出力する有段変速部15と、を備えて構築されている。
この動力伝達機構110は、軸心が共通の軸線となるように、入力軸111、出力軸112および伝達軸113がトランスミッションケース119内に直列に収容されて、それぞれ回転自在に軸受などを介して支持されている。ここで、出力軸112の回転速度(回転数)は車速センサ51が検出し、第1回転電機MG1のロータの回転速度は第1MG回転数センサ53が検出し、第2回転電機MG2のロータと一体の伝達軸113の回転速度は第2MG回転数センサ54が検出するようにそれぞれ設置されている。これら車速センサ51、第1MG回転数センサ53及び第2MG回転数センサ54は、後述のHVECU31にセンサ信号を送信可能に接続されている。なお、図2は、動力伝達機構110が入力軸111などの軸心を中心にして回転対称に構成されているため、図中下側を省略する骨子図(スケルトン図)である。
動力分配機構14は、第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とが切換クラッチC0および切換ブレーキB0を備えるシングルピニオン型の遊星歯車機構121に連結されて、エンジン10の回転動力を分配出力するようになっている。遊星歯車機構121は、サンギヤS0、プラネタリギヤP0、キャリヤCA0、およびリングギヤR0を回転要素として備えている。第1回転電機MG1は、遊星歯車機構121のサンギヤS0にロータが一体回転するように連結されている。第2回転電機MG2は、遊星歯車機構121のリングギヤR0および伝達軸113と一体的にロータが回転するように連結されている。また、遊星歯車機構121のキャリヤCA0は入力軸111、すなわちエンジン10の出力軸に連結されている。切換ブレーキB0はトランスミッションケース119に設置されて、サンギヤS0を締結または解放する。切換クラッチC0はそのサンギヤS0とキャリヤCA0との間を締結または解放する。なお、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、油圧により駆動して圧接する対象部材との係合圧力を調整することにより締結状態や解放状態や摩擦接触(所謂、摺動)状態を維持する摩擦係合要素により構築されている。
この動力分配機構14は、例えば、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放状態にされると、サンギヤS0、キャリヤCA0、リングギヤR0がそれぞれ相対回転可能な差動状態にされる。このとき、エンジン10の出力(回転動力)が第1回転電機MG1と第2回転電機MG2(伝達軸113)とに分配されて、例えば、そのエンジン10の分配出力で第1回転電機MG1が発電機として駆動され、また、第2回転電機MG2が電動機として駆動される。これにより、動力分配機構14は、回転電機MG1,MG2による所謂、無段変速状態(電気的CVT:Continuously Variable Transmission)になり、エンジン10の所定回転数に拘わらずに、伝達軸113の回転数を連続的に変化させる差動状態にすることができ、入力軸111の回転速度/伝達軸113の回転速度の変速比を連続的に変化させて駆動輪側に出力する電気的な無段変速機として機能可能である。なお、回転電機MG1,MG2は、電動機として機能する際にインバータ107を介してバッテリ108内に蓄電されている電力の供給(放電)を受けて回転駆動し、また、発電機として機能する際の発電電力はインバータ107を介してバッテリ108に充電(蓄電)される。
また、動力分配機構14は、切換クラッチC0または切換ブレーキB0の一方が締結状態にされると、差動回転不能な非差動状態にされる。例えば、動力分配機構14は、サンギヤS0とキャリヤCA0とが切換クラッチC0により締結されると、リングギヤR0も含めて一体回転されるロック状態にされて差動回転不能な非差動状態とされる。このとき、エンジン10の回転数と伝達軸113の回転数とが一致する変速比「1」に固定される。これにより、動力分配機構14が非無段変速状態の定変速状態になって、有段変速部15による有段変速可能な状態にされる。
また、この動力分配機構14は、サンギヤS0が切換ブレーキB0によりトランスミッションケース119側に連結されてロック状態にされても、差動回転不能な非差動状態にされる。このとき、リングギヤR0はキャリヤCA0よりも増速回転される。これにより、動力分配機構14が非無段変速状態の定増速(変速)状態になって、有段変速部15による有段変速可能な状態にされる。
有段変速部15は、いずれもシングルピニオン型の第1遊星歯車機構125、第2遊星歯車機構126、および第3遊星歯車機構127と共に、切換クラッチC1、C2および切換ブレーキB1、B2、B3を備えて、4速の有段式自動変速機として機能する。第1遊星歯車機構125は、サンギヤS1、プラネタリギヤP1、キャリヤCA1、およびリングギヤR1を回転要素として備えている。第2遊星歯車機構126は、サンギヤS2、プラネタリギヤP2、キャリヤCA2、およびリングギヤR2を回転要素として備えている。第3遊星歯車機構127は、サンギヤS3、プラネタリギヤP3、キャリヤCA3、およびリングギヤR3を回転要素として備えている。なお、切換クラッチC1、C2および切換ブレーキB1、B2、B3は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0と同様の摩擦係合要素により構築されている。
この有段変速部15では、サンギヤS1およびサンギヤS2が一体回転するように連結されて、切換クラッチC2を介して伝達軸113に締結または解放可能に連結されている。また、リングギヤR2およびサンギヤS3は一体回転するように連結されて、切換クラッチC1を介して伝達軸113に締結または解放可能に連結されている。さらに、リングギヤR1、キャリヤCA2およびキャリヤCA3は出力軸112に一体回転するように連結されている。そして、切換ブレーキB1、B2、B3はトランスミッションケース119に設置されており、切換ブレーキB1は一体回転するサンギヤS1およびサンギヤS2を締結または解放し、切換ブレーキB2はキャリヤCA1を締結または解放し、切換ブレーキB3はリングギヤR3を締結または解放する。
このように構成された動力伝達機構110は、後述するHVECU31の駆動制御によって、動力分配機構14の切換クラッチC0と切換ブレーキB0のいずれかが駆動されて締結状態にされ、有段変速部15の切換クラッチC1、C2および切換ブレーキB1、B2、B3が選択的に駆動されて締結状態にされる。これにより、動力分配機構14から伝達軸113を介して伝達されるエンジン10や回転電機MG1,MG2の回転動力は、車速等の各種運転状況に応じて後述の変速段に切り換えられることにより、変速されつつ出力軸112から駆動輪109側へと出力される。すなわち、動力伝達機構110が有段変速機を構成している。
また、動力伝達機構110は、後述するHVECU31の駆動制御によって、動力分配機構14の切換クラッチC0と切換ブレーキB0が解放状態にされることで無段変速状態とされ、有段変速部15を含めて電気的な無段変速機として機能可能な状態にされる。
なお、動力伝達機構110は、有段変速部15の切換クラッチC1、C2の一方が締結状態にされることにより回転動力を出力可能に伝達経路が形成されるが、その双方共に解放状態にされることにより回転動力の伝達経路が遮断状態にされる。
詳細には、この動力伝達機構110は、図3の締結作動表に示すように、動力分配機構14の切換クラッチC0および切換ブレーキB0と、有段変速部15の切換クラッチC1、C2および切換ブレーキB1、B2、B3とが選択的に締結されることにより、無段変速段、あるいは、1速(1st)、2速(2nd)、3速(3rd)、4速(4th)、5速(5th)、R(Reverse)、N(Neutral)のいずれかの有段変速段が選択されて伝達経路が形成される。なお、図3に図示する「○」は選択駆動時に締結状態にされることを示し、また「◎」は上述の有段変速時の選択駆動時には締結状態にされるが無段変速時の選択駆動時には解放状態にされることを示している。また、本実施形態に係るハイブリッド車両1は、不図示のシフトレバーの選択操作により、例えば、駐車「P(パーキング)」、後進走行「R(リバース)」、動力伝達経路遮断の中立「N(ニュートラル)」、前進走行「D(ドライブ)」、前進走行「M(マニュアル)」のいずれかを選択可能に備えており、「D」ポジションの選択時に無段変速制御を実行し、また、「M」ポジションの選択時に有段変速制御を実行するようになっている。
この動力伝達機構110の動力分配機構14や有段変速部15は、切換クラッチC0、C1、C2および切換ブレーキB0、B1、B2、B3が適宜締結されることにより、それぞれの回転要素(サンギヤS、キャリヤCA、リングギヤR)が図4の共線図に示す回転速度の関係を維持する状態で回転する。なお、図4の共線図では、連結されて一体回転する回転要素(サンギヤS、キャリヤCA、リングギヤR)が一つの縦線にまとめられて、所定の回転速度比(変速比)になるように各縦線の離隔間隔が設定されており、その縦線を横断する直線状の交差線とその縦線との交点がその回転要素毎の回転速度になるように作図されている。
図6に示されるように、ハイブリッド車両1には、更に制御装置として、エンジン10を制御するエンジンECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)32と、回転電機MG1及びMG2を夫々制御するMGECU33と、ハイブリッド車両1に設けられた各種センサの出力等に基づいて、エンジンECU32及びMGECU33を統括制御するHVECU31と、が搭載されている。HVECU31、エンジンECU32及びMGECU33は相互に情報交換可能な状態で電気的に接続されている。なお、これらHVECU31、エンジンECU32及びMGECU33は本発明における制御手段を構成する。これらHVECU31、エンジンECU32及びMGECU33の機能が統合された単一の制御装置を用いても良い。
主要なコンピュータとして設けられたHVECU31には、各種のセンサからの信号が入力される。例えばHVECU31には、ハイブリッド車両1の車速に応じた信号を出力する車速センサ51、不図示のアクセルペダルの踏み込み量に応じた信号を出力するアクセル開度センサ52、第1回転電機MG1の回転速度に応じた信号を出力する第1MG回転数センサ53、第2回転電機MG2の回転速度に応じた信号を出力する第2MG回転数センサ54、バッテリ108の充電状態(State of charge;SOC)に応じた信号を出力するSOCセンサ56、及び後処理装置26内に設けられて触媒床温を出力する触媒温度センサ57等の出力信号が入力される。
HVECU31は、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2に発生させるトルクを算出し、発生させるトルクについてMGECU33に指令を出力する。また、HVECU31は、エンジン10の運転条件を決定し、エンジン10の運転条件についてエンジンECU32に指令を出力する。さらに、HVECU31は、所定のシフトスケジュール又は運転者によるシフトチェンジ要求等に応じた変速段が実現できるように、有段変速部15における複数のクラッチ及び複数のブレーキを個別に制御する。MGECU33は、HVECU31から入力された指令に基づき、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2に発生させるトルクに対応した電流を算出し、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2に電流を出力する。エンジンECU32は、HVECU31から入力された指令に基づき、スロットル弁22、点火プラグ37、及びウェイストゲートバルブ27等のエンジン10の各部に対して各種の制御を行うと共に、上述したヒータ電源29の動作を制御する。
HVECU31は、アクセル開度センサ52の出力信号と車速センサ51の出力信号とを参照して、運転者がハイブリッド車両1に対して要求する要求駆動力(パワー)を計算し、その要求駆動力に対するシステム効率が最適となるように各種の走行モードを切り替えながらハイブリッド車両1を制御する。例えば、エンジン10の熱効率が低下する低負荷領域ではエンジン10の燃焼を停止して第2回転電機MG2を駆動するEV走行モードが選択される。一方、EV走行モードを選択すべき運転領域でない場合は、エンジン10とともに第2回転電機MG2等を作動させるハイブリッド走行モードが選択される。
HVECU31は、例えば、効率のよい走行を実現するために、図5の変速線図に示すように、出力軸112から出力することを要求されるトルクと車速とをパラメータとして、動力伝達機構110の切換クラッチC0、C1、C2と切換ブレーキB0、B1、B2、B3とを締結状態または解放状態にする駆動制御信号を出力して変速制御処理を実行するようになっている。ここで、図5は、車速と出力(要求)トルクとをパラメータとして変速切換制御を実行する際に用いる変速線SHd、SHuを示す変速線図の一例を示している。この図5には、有段変速と無段変速とを切り換えるための有段変速領域と無段変速制御領域との変速境界線GCc、GCtを示す変速切換線図の一例も図示されている。さらに、図5には、エンジン10の回転動力を走行トルクにするエンジン走行と、回転電機MG1,MG2の回転動力を走行トルクにするモータ走行とを切り換えるために、エンジン走行領域とモータ走行領域との動力境界線PTを示す動力源切換線図の一例も図示されている。
詳細には、HVECU31は、図5中の変速線SHd、SHuを横切るタイミングに変速段切換制御処理を実行するようになっている。このとき、HVECU31は、加速中に、低速側から高速側に向かってアップシフト変速線SHuを横切るタイミングに、例えば、2速から3速にアップシフトさせる変速段切換制御処理を実行する。また、HVECU31は、減速中に、高速側から低速側に向かってダウンシフト変速線SHdを横切るタイミングに、例えば、4速から3速にダウンシフトさせる変速段切換制御処理を実行する。
このHVECU31は、図5中の変速境界線GCc、GCtを横切るタイミングに有段変速と無段変速とを切り換える制御処理を実行するようになっている。このとき、HVECU31は、高トルク側から低トルク側に向かって無段変速境界線GCcを横切るタイミングに、有段変速部15の変速段はそのままで、動力分配機構14の切換クラッチC0と切換ブレーキB0とを解放状態にして無段変速制御領域に移行する変速種切換制御処理を実行する。また、HVECU31は、低トルク側から高トルク側に向かって有段変速境界線GCtを横切るタイミングに、有段変速部15の変速段はそのままで、動力分配機構14の切換クラッチC0または切換ブレーキB0の一方を締結状態にして有段変速制御領域に移行する変速種切換制御処理を実行する。
さて、ハイブリッド走行モードが選択された場合、基本的には無段変速モードが実施されて、エンジンの動作点は概ね図7に示される最適燃費線Lに沿って移動するように、エンジン10及び第1回転電機MG1等が制御される。エンジン10の動作点は、エンジン回転数とエンジントルクとで定義されたものであり、最適燃費線Lはエンジン10の熱効率が最適となるように、すなわち、エンジン10単体につき様々なエンジンパワーを最小の燃料消費量で実現する点をプロットして繋ぐことによって、あらかじめ設定されたものである。
しかしながら、冷間始動時のように、後処理装置26の触媒の昇温要求がある場合には、後処理装置26を所定の時間内に所定の昇温状態、すなわち所定の活性化温度に移行させるために、昇温モードによる運転が行われる。そして本実施形態におけるHVECU31には、この昇温モードとして2つの異なるモード、すなわち第1モード及び第2モードが実装されている。
第1モードは、エンジン10の触媒昇温制御によって後処理装置26を昇温させるものである。そのようなエンジン10の触媒昇温制御は、具体的には、エンジン10の出力パワーの目標値である目標パワーを通常時(すなわち、運転中であって昇温要求が成立していない場合)の値に維持しながら、エンジン10の出力回転数の目標値である目標回転数を増大側に変更することである。第1モードにおける動作点の設定は、例えば図7に示されるように、現在の動作点Sから、後処理装置26の昇温に必要な熱量を供給するために必要なだけ、動作点を等パワー線P上で、エンジン回転数の増大側に移動させることによって行われる(A0点、矢印m1)。エンジン回転数が増大することにより、排気損失[kW]、すなわちエンジン10から排気通路中に排出される熱流量が増大し、これによって後処理装置26が昇温される。
第2モードは、エンジン10を第1モードと比較して燃料消費率の低いエンジン回転数及びエンジントルクで運転しつつ、第1回転電機MG1によって発電した電力を電気ヒータ28に供給することによって後処理装置26を昇温させるものである。本実施形態における第2モードは、エンジン10の動作点を最適燃費線L上で、パワー増大側に移動させるものである。第2モードにおける動作点の設定は、例えば図7に示されるように、現在の動作点Sから、後処理装置26の昇温に必要な熱量を供給するために必要なだけ、動作点を最適燃費線L上で、エンジンパワーの増大側に移動させることによって行われる(B0点、矢印m2)。エンジン回転数が増大することにより、排気損失[kW]、すなわちエンジン10から排気通路中に排出される熱流量が増大し、かつ第2モードの実行によるエンジンパワーの増大分によって第1回転電機MG1が発電動作(回生動作)させられ、その電力が電気ヒータ28に供給され、両者によって後処理装置26が昇温される。
さらにHVECU31には、これら第1モード及び第2モードのうちいずれか一方を、燃料消費率の予測に基づいて選択するモード選択処理が実装されている。
このモード選択処理について、図8に従って説明する。図8の処理ルーチンは、無段変速モードが選択されており、且つ触媒昇温要求が成立している場合に、所定の制御周期Δtごとに繰り返し実行される。触媒昇温要求は、例えば触媒温度センサ57の検出値が所定値以下の場合に成立する。本ルーチンが開始されると、まずHVECU31は、触媒温度センサ57の検出値に基づいて、後処理装置26内の触媒床温が所定時間内に所定の活性化温度に達するのに必要とされる熱量である必要熱量Qrを算出する(S10)。
次にステップS20では、HVECU31は、第1モードによって必要熱量Qrを供給する場合の動作点A0(図7参照)を算出し、その場合のエンジン回転数の現在の動作点Sからの変化量である回転数変化量ΔNeAを算出する。すなわちHVECU31は、エンジン10の動作点を等パワー線P上で変更する場合(すなわち、第1モードによって運転する場合)について、ステップS10で算出された必要熱量Qrを後処理装置26に供給して活性化温度に移行させるために必要な回転数変化量ΔNeAを算出する。
次にステップS30では、算出された回転数変化量ΔNeAが、所定の上限値ΔNe1よりも小さいかを判定する。この上限値ΔNe1は、エンジン回転数の所定時間内(例えば、制御周期Δt内)の変化量がそれよりも大きい場合に乗員の感じる不快感が許容範囲外となるような閾値である。すなわちステップS30では、ステップS20で算出された回転数変化量ΔNeAどおりに動作点を変更(すなわち動作点を現在の動作点Sから動作点A0に変更)した場合に不快感が許容範囲内となるかが判定される。上限値ΔNe1は、本発明におけるガード領域を画定するガード値に相当する。
ステップS30で否定、すなわち回転数変化量ΔNeAが上限値ΔNe1以上である場合、次に回転数変化量ΔNeAが上限値ΔNe1で更新され(ステップS40)、この更新された値によって、動作点が再計算される(ステップS50)。
この動作点の再計算の手順につき、図9に従って説明すると、ステップS20で算出された動作点A0についての回転数変化量ΔNeAが、上限値ΔNe1以上である場合には、まず(i)回転数変化量ΔNeAが上限値ΔNe1で更新され、(ii)その場合(すなわち、動作点A1による場合)の第1モードによる供給熱量での不足分の熱量(必要熱量Qrとの差分)を、動作点のトルク増大側への変更によって確保するように、動作点A’が新たに算出される。
ステップS30で肯定の場合、及びステップS50で再計算が行われた場合には、当該動作点(ステップS30で肯定の場合には動作点A0、ステップS50で再計算が行われた場合には動作点A’)についての正味燃料消費率FCa[g/kWh]が算出される(ステップS60)。
ステップS70〜S90においては、ステップS20〜S60において第1モードについて行われたものと同様の処理が、第2モードについて実行される。
すなわち、まずステップS70では、第2モードによって必要熱量Qrを供給する場合の動作点B0(図7参照)を算出し、その場合のエンジン回転数の変化量ΔNeBを算出する。すなわち、ステップS10で算出された必要熱量Qrを後処理装置26に供給して活性化温度に移行させるために必要なエンジン回転数の変化量ΔNeBを、最適燃費線上でエンジンの動作点を変更した場合(すなわち、第2モードによって運転する場合)について算出する。
次にステップS80では、算出された回転数変化量ΔNeBが、上述した所定の上限値ΔNe1よりも小さいかを判定する。すなわちステップS80では、ステップS70で算出された回転数変化量ΔNeBどおりに動作点を変更(すなわち動作点を現在の動作点Sから動作点B0に変更)した場合に不快感が許容範囲内となるかが判定される。
ステップS80で否定、すなわち回転数変化量ΔNeBが上限値ΔNe1以上である場合、次に回転数変化量ΔNeBが上限値ΔNe1で更新され(ステップS100)、この更新された値によって、動作点が再計算される(ステップS110)。
この動作点の再計算の手順につき、図9に従って説明すると、ステップS70で算出された動作点B0についての回転数変化量ΔNeBが、上限値ΔNe1以上である場合には、まず(i)回転数変化量ΔNeBが上限値ΔNe1で更新され、(ii)その場合(すなわち、動作点B1による場合)の第2モードによる供給熱量での不足分の熱量(必要熱量Qrとの差分)を、動作点のトルク増大側への変更によって確保するように、動作点B’が新たに算出される。
ステップS80で肯定の場合、及びステップS110で再計算が行われた場合には、当該動作点(ステップS80で肯定の場合には動作点B0、ステップS110で再計算が行われた場合には動作点B’)についての正味燃料消費率FCb[g/kWh]が算出される(ステップS90)。なお、ステップS60,S90における処理は、本発明における燃費予測手段に相当する。
なお、各動作点の算出にあたっては、エンジントルクを増大側に補正することによる排気損失(エンジン10を熱源として後処理装置26に供給される熱流量)の増大と、当該補正による増大分のエンジントルクによって第1回転電機MG1で発電した電力を電気ヒータ28に供給することによる供給熱量の増大と、の両者が考慮すなわち反映される。エンジン10から後処理装置26までの排気通路で失われる熱量は差し引いて計算される。また、発電効率は第1回転電機MG1の回転数に応じて異なる(例えば、低回転では発電効率が悪い)ため、回転数に応じた発電効率も考慮すなわち反映される。
そしてステップS120において、HVECU31は、先にステップS60で算出された第1モードについての正味燃料消費率FCaが、ステップS90で算出された第2モードについての正味燃料消費率FCbよりも小さいかを判断する。
ステップS120で肯定、すなわち第1モードについての正味燃料消費率FCaが相対的に小さい(すなわち、燃費効率が良い)場合には、第1モードによる運転が実行される(ステップS130)。この場合の動作点は、ステップS30で肯定の場合には動作点A0、ステップS50で再計算が行われた場合には動作点A’が採用される。
ステップS120で否定、すなわち第2モードについての正味燃料消費率FCbが正味燃料消費率FCa以下である(すなわち、燃費効率が等しいあるいは良い)場合には、第2モードによる運転が実行される(ステップS140)。この場合の動作点は、ステップS80で肯定の場合には動作点B0、ステップS110で再計算が行われた場合には動作点B’が採用される。このようにして、ステップS130,S140においては、採用された動作点に従って、エンジン回転数の変化量が上限値ΔNe1以上である場合には、当該変化量として上限値ΔNe1が適用されたエンジン回転数及び補正後のエンジントルクによってエンジン10を制御すると共に、当該補正に伴う増大分のエンジンパワーによって第1回転電機MG1で発電した電力を電気ヒータ28に供給するように、エンジン10、動力分配装置14、第1回転電機MG1及びヒータ電源29が制御される。
例えば、図10に示されるように、第1モードによってエンジン回転数を現在値Rsから目標値R0まで増大させる場合には、排気損失の増大分はΔEL1[kW]である一方、正味燃料消費率FCaの増大分はΔFCa[g/kWh]である。これに対し、図11に示されるように、第2モードによってエンジンパワー(出力軸パワー[kW])を現在値Psから目標値P0まで増大させる場合には、排気損失の増大分はΔEL2[kW]である一方、正味燃料消費率FCbの増大分はΔFCb[g/kWh]である。この場合、ステップS120においては、FCa>FCbとなることから否定され、動作点(B)、すなわち第2モードによる運転が選択される。
このようなステップS120での判断において、ステップS50で再計算が行われた場合には動作点A’が採用され、また、ステップS110で再計算が行われた場合には動作点B’が用いられることになる。動作点A’又はB’が採用された場合には、エンジントルクを増大側に補正したことに伴う増大分のエンジンパワーによって第1回転電機MG1で発電した電力が、電気ヒータ28に供給される。
動作点A0,B0がいずれも現在の動作点Sからの回転数変化量の上限値ΔNe1の範囲内にある場合には、第2モードにより設定される動作点B0が最適燃費線L上にあることから、通常は第2モードが採用・実行されると考えられる。これに対し、動作点A0,B0の一方又は両方が、現在の動作点Sからの上限値ΔNe1の範囲外にある場合(例えば寒冷地など、触媒温度が極めて低い場合)には、第1モードと第2モードとのどちらが採用・実行されるかは正味燃料消費率FCa,FCbに応じて異なり、また、第1モードでは動作点A0が上限値ΔNe1の範囲内にある場合には電気ヒータ28の動作が行われないところ、動作点A0が上限値ΔNe1の範囲内にない場合には、第1モードであっても電気ヒータ28の通電が実行されることになる。すなわち本実施形態では、第1モードが採用・実行される場合であっても電気ヒータ28の通電が行われる場合が生じ、したがって、単なる2状態(常に等パワー線P上でエンジン10の触媒昇温制御のみを行い電気ヒータ28の通電を行わない第1モードと、常に最適燃費線L上での運転及び電気ヒータ28の通電を行う第2モード)からの選択ではなく、エンジン回転数−エンジントルクマップ上を格子状に区切った全ての点のうちから、必要な昇温性能を確保でき且つ燃料消費率の最も小さい動作点を任意に採用できることになる。
以上のとおり、本実施形態では、第1モード及び第2モードのうち燃料消費率の低い方のモードに従って、エンジン10、無段変速機として機能する動力分配機構14、第1回転電機MG1及び電気ヒータ28を制御する。したがって、要求される触媒昇温性能を実現しながら、燃費効率を考慮していずれかの昇温モードを選択することで、燃費を向上することができる。
また本実施形態では、エンジン回転数の現在値からの変化量ΔNeA,ΔNeBが所定の上限値ΔNe1以上である場合には、エンジン回転数の変化量ΔNeA,ΔNeBを上限値ΔNe1に制限すると共に、エンジン回転数の変化量として上限値ΔNe1が適用されたエンジン回転数での運転による不足分の熱量を供給すべく、エンジントルクを増大側に補正すると共に当該補正に伴う増大分のエンジンパワーによって第1回転電機MG1で発電した電力を電気ヒータ28に供給するものとして、燃料消費率を予測する。また、エンジン回転数の変化量として上限値ΔNe1が適用されたエンジン回転数及び前記補正後のエンジントルクによってエンジン10を制御すると共に、前記補正に伴う増大分のエンジンパワーによって第1回転電機MG1で発電した電力を電気ヒータ28に供給する。したがって、エンジン回転数の急激な変化に起因する違和感ないし不快感を抑制することができ、また補正の結果を燃料消費率の予測、昇温モードの選択及び動作の仕様(すなわち動作点の位置)に反映させることができる。
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
例えば、昇温モードの選択において、バッテリ108のような蓄電装置の充電状態(SOC)を考慮してもよい。例えば、エンジン回転数の現在値からの変化量ΔNeA,ΔNeBが所定の上限値ΔNe1以上である場合であっても、SOCが十分に高い場合には、エンジントルクの増大量を抑制して、不足分の電力を蓄電装置から電気ヒータ28に供給する、というように、SOCが高い(満充電に近い)ほど、蓄電装置からの電力供給の割合を増大させても良い。この場合には燃料消費率を更に低減することが可能になる。さらに、このように蓄電装置から電気ヒータ28への給電を行う場合には、蓄電装置の温度が低いほど、蓄電装置からの電力供給の割合を減少させても良い。一般に蓄電装置の内部抵抗は低温時ほど大きくなる傾向があるため、このような構成によれば燃料消費率を更に低減することが可能になる。
さらに、本発明における燃料消費率の算出(S60,S90)においては、無段変速部の動力伝達効率をも考慮すると更に好適である。すなわち、変速比に応じた既知の動力伝達効率の値を用いて燃料消費率を算出ないし補正することにより、燃料消費率の算出精度を向上し、燃料消費率のより低い昇温モードの選択によって燃料消費率を更に低減することが可能になる。
また、第1モード及び第2モードのうち少なくとも一方におけるエンジンの制御は、目標回転数を減少側に変更するものであってもよい。例えば、第1モードにおいて動作点を等パワー線上で回転数減少側(トルク増大側)に変更する場合には、動作点が最適燃費線Lから外れることから燃焼効率が低下し、その低下分に相当するエネルギーが触媒に供給されることにより、触媒を昇温させることができる。第2モードにおいて目標回転数を減少側に変更する場合には、目標トルクも減少することから、エンジンの制御自体による触媒昇温は見込めないが、蓄電装置のSOCが十分に高い場合のように不足分の電力を蓄電装置から電気ヒータ28に供給することによって、所望の触媒昇温を行うことができる。第2モードにおいて目標回転数を所定の下限値以下まで減少させる必要性は通常考えにくいが、本発明はこのような構成を排除しない。以上のことから、本発明における第1モード及び第2モードの少なくとも一方では、エンジン10の目標回転数を減少側に変更すると共に、その場合のエンジン回転数の現在の動作点Sからの変化量である回転数変化量ΔNeAが、負の値である所定の下限値以下である場合、回転数変化量ΔNeAを当該下限値で更新し、この更新された値によって、動作点を再計算してもよい。すなわち、本発明における燃費予測手段は、第1モードと第2モードとのそれぞれについて、触媒装置を所定の昇温状態に移行させるために必要な出力回転数及び出力トルクを算出すると共に、算出した出力回転数及び出力トルクで運転する場合の燃料消費率を予測し、且つ、当該算出した出力回転数の現在値からの変化量が、(正のガード値及び負のガード値の少なくとも一方によって画定された)所定のガード領域から外れる場合には、出力回転数の変化量を前記ガード領域を画定するガード値に制限すると共に、前記変化量として前記ガード値が適用された出力回転数での運転による不足分の熱量を供給すべく、前記算出した出力トルクを増大側に補正すると共に当該補正に伴う増大分の出力パワーによって前記回転電機で発電した電力を前記電気ヒータに供給するものとして、燃料消費率を予測するように構成されていてもよい。換言すれば、本発明で用いられるガード領域は、第1モード及び第2モードのいずれについても、正のガード値のみ(この場合には、当該昇温モードが出力回転数の増大によるものであり、且つ出力回転数が当該正のガード値以上である場合に当該正のガード値が適用される)、負のガード値のみ(この場合には、当該昇温モードが出力回転数の減少によるものであり、且つ出力回転数が当該負のガード値以下である場合に当該負のガード値が適用される)、及び正及び負のガード値(この場合には、当該昇温モードが出力回転数の増大又は減少によるものであり、且つ出力回転数が正のガード値以上である場合に当該正のガード値が適用され、出力回転数が負のガード値以下である場合に当該負のガード値が適用される)によって構成されていても良い。
また、エンジン10の触媒昇温制御としては、他の方法、例えばエンジン10の点火時期を通常時よりも遅角させる方法、空燃比を通常時よりもリッチ化させる方法、及び複数のそのような方法の組み合わせを採用することができる。上記実施形態では駆動源として利用可能な回転電機を有するハイブリッド車に本発明を適用した例について説明したが、本発明は専ら発電のみに用いられる回転電機(例えばスリップリング励磁式の三相交流同期発電機からなるオルタネータ)を有する車両にも適用することができる。本発明における無段変速機としては、上述した電気的な無段変速機に代えて、機械的な無段変速機(例えばベルト式CVT、チェーン式CVTあるいはトロイダル式CVT)を採用しても良い。