以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置および医用画像処理装置を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを備える。超音波プローブ101、入力装置102、およびディスプレイ103は、それぞれ装置本体100に接続される。
超音波プローブ101は、被検体Pの体表面に接触され、超音波の送受信(超音波走査)を行う。例えば、超音波プローブ101は、所定方向に1次元で配列された複数の圧電振動子を有する1Dアレイプローブ(探触子)である。これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体100が有する送信回路110から供給される駆動信号に基づいて、超音波を発生させる。発生した超音波は、被検体内の音響インピーダンスの不整合面で反射され、組織内の散乱体によって散乱された成分等を含む反射波信号として複数の圧電振動子にて受信される。超音波プローブ101は、複数の圧電振動子にて受信した反射波信号を、送信回路110へ送る。
なお、本実施形態では、超音波プローブ101として1Dアレイプローブを用いる場合を説明するが、これに限定されるものではない。例えば、超音波プローブ101としては、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2Dアレイプローブや、1次元で配列された複数の圧電振動子が機械的に揺動することで3次元領域を走査するメカニカル4Dプローブなど、如何なる形態の超音波プローブが用いられてもよい。
入力装置102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて、超音波画像データを生成する装置である。図1に示すように、装置本体100は、例えば、送信回路110と、受信回路120と、信号処理回路130と、画像処理回路140と、画像メモリ150と、記憶回路160と、制御回路170とを有する。送信回路110、信号処理回路130、画像処理回路140、画像メモリ150、記憶回路160、および制御回路170は、通信可能に互いに接続される。
送信回路110は、超音波プローブ101による超音波の送信を制御する。例えば、送信回路110は、後述する制御回路170の指示に基づいて、振動子ごとに所定の送信遅延時間が付与されたタイミングで超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。これにより、送信回路110は、超音波がビーム状に集束された超音波ビームを送信させる。
受信回路120は、送信超音波が体内組織で反射された反射波信号の受信を制御する。例えば、受信回路120は、後述する制御回路170の指示に基づいて、超音波プローブ101が受信した反射波信号に所定の遅延時間を与えて加算処理を行う。これにより、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。そして、受信回路120は、加算処理後の反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、受信回路120は、I信号及びQ信号(以下、IQ信号と記載する)を反射波データとして、信号処理回路130へ送る。なお、受信回路120は、加算処理後の反射波信号を、RF(Radio Frequency)信号に変換した上で、信号処理回路130へ送ってもよい。IQ信号や、RF信号は、位相情報が含まれる信号(反射波データ)となる。
信号処理回路130は、受信回路120が反射波信号から生成した反射波データに対して各種の信号処理を行う。例えば、信号処理回路130は、以下に説明する処理により、被検体内の構造物の形態に基づく形態情報、被検体内の血流に基づく血流情報、および被検体内の組織弾性に基づく弾性情報を生成する。
図2は、第1の実施形態に係る信号処理回路130の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、信号処理回路130は、Bモード処理回路131と、ドプラ演算処理回路132と、歪み分布演算回路133とを備える。
Bモード処理回路131は、反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理等を行って、複数のサンプル点(観測点)それぞれの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路131は、生成したBモードデータを画像処理回路140へ送る。なお、Bモードデータは、断層情報および形態情報の一例である。
ドプラ演算処理回路132は、反射波データから速度情報を周波数解析することで、走査範囲内にある移動体のドプラ効果に基づく運動情報をサンプル点ごとに抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、ドプラ演算処理回路132は、移動体の運動情報として、平均速度、分散値、パワー値などを、複数のサンプル点それぞれで抽出したドプラデータを生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。本実施形態に係るドプラ演算処理回路132は、血流の運動情報(血流情報)として、血流の平均速度、血流の平均分散値、血流の平均パワー値等を、複数のサンプル点それぞれで推定した情報を生成する。すなわち、血流情報は、各サンプル点の血流に基づく値(血流を表す値)を含む情報である。
図2に示すように、ドプラ演算処理回路132は、MTI(Moving Target Indicator)フィルタ132Aと、血流情報生成回路132Bと、組織移動速度生成回路132Cとを備える。
MTIフィルタ132Aおよび血流情報生成回路132Bは、カラードプラ法により血流情報を算出する。カラードプラ法では、超音波の送受信が同一の走査線上で複数回行なわれ、同一位置のデータ列に対してMTIフィルタ132を掛けることで、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、カラードプラ法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等の血流情報を推定する。
具体的には、MTIフィルタ132Aは、フィルタ行列を用いて同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、クラッタ成分が抑制され、血流に由来する血流信号が抽出されたデータ列を出力する。血流情報生成回路132Bは、MTIフィルタ132Aが出力したデータを用いた自己相関演算等の演算を行って、血流情報を推定し、推定した血流情報を出力する。
なお、MTIフィルタ132Aとしては、例えば、バタワース型のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ、多項式回帰フィルタ(Polynomial Regression Filter)等の係数が固定されたフィルタ、または固有ベクトル(eigenvector)等を用いて入力信号に応じて係数を変化させる適応型のフィルタが適用可能である。
また、組織移動速度生成回路132Cは、組織の弾性を表す弾性情報を生成するために、組織の運動に関する情報の空間分布を表示するための組織ドプラ(TDI:Tissue Doppler Imaging)法を実行する。TDI法では、上記のカラードプラ法と同様に、超音波の送受信が同一の走査線上で複数回行われるものの、MTIフィルタ132Aを介することなく、上記のデータ列の位相差、さらに組織移動速度を算出する点がカラードプラ法とは相違する。生成された組織移動速度情報は、歪み分布演算回路133によって組織の弾性を表す弾性情報に変換される。
つまり、組織移動速度生成回路132Cは、同一位置の連続した反射波データのデータ列に対して(MTIフィルタ132Aを介さずに)自己相関演算等の演算を行って、組織の移動速度を表す組織移動速度情報(組織運動情報)を出力する。そして、歪み分布演算回路133は、組織移動速度情報に基づいて、組織の変形が開始してからの移動速度を時間積分して変位を算出し、さらに変位を空間微分することにより組織の歪みを表す歪みデータを弾性情報として算出する。なお、ここでは、弾性情報を生成するためにTDI法を行う場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、TDI法は、組織移動速度の空間分布を画像化するために、生成された組織移動速度情報そのものを出力してもよい。また、弾性情報は、被検体内の各位置における組織性状(硬さ)に基づく値(組織性状を表す値)を含む組織性状情報の一例である。また、MTIフィルタ132Aは、クラッタ除去フィルタの一例である。
このように、信号処理回路130は、反射波データに対してBモード処理回路131、ドプラ演算処理回路132、および歪み分布演算回路133による各種の信号処理を行うことで、形態情報、血流情報、および弾性情報を生成する。具体的には、信号処理回路130は、同一位置に対する複数回の超音波送受信によって得られた受信データ列に対して、クラッタ成分を除去するクラッタ除去フィルタを適用し、クラッタ除去フィルタ適用後の受信データ列から血流情報を取得する。また、信号処理回路130は、クラッタ除去フィルタ適用前の受信データ列から組織性状情報を取得する。また、組織性状情報は、血流情報の取得に用いた受信データを含む複数の受信データ間の相関演算に基づいて取得される。
なお、図2は一例に過ぎない。例えば、組織移動速度生成回路132Cの前段に、血流に由来する信号を除くための血流信号除去フィルタを配置してもよい。つまり、組織移動速度生成回路132Cは、反射波データのデータ列に対して血流信号除去フィルタを適用し、適用後のデータ列から組織移動速度情報を生成する。なお、この血流信号除去フィルタは、例えば、血流信号に対応する周波数成分を除去するローパスフィルタである。
また、第1の実施形態に係る信号処理回路130は、同一の超音波走査の結果に対してカラードプラ法およびTDI法を行って、同一のデータ列から血流情報および弾性情報を生成する。
図3は、第1の実施形態に係るスキャンシーケンスの一例を示す図である。図3において、横軸は、時間に対応する。また、各フレームの超音波走査には、第1の超音波走査および第2の超音波走査が含まれる。
図3に示すように、各フレームにおいて、第1の超音波走査および第2の超音波走査が行われる。ここで、第1の超音波走査は、超音波の送受信が同一の走査線上で複数回(アンサンブル数)行われる走査である。信号処理回路130は、第1の超音波走査の結果に対してカラードプラ法およびTDI法を行うことで、同一のデータ列から血流情報および弾性情報をそれぞれ生成する。具体的には、信号処理回路130は、nフレーム目の第1の超音波走査により得られた反射波データのデータ列に対して、MTIフィルタ132Aを適用し、自己相関演算等の演算を行って、血流情報を生成する。また、nフレーム目の第1の超音波走査により得られた反射波データのデータ列に対して、MTIフィルタ132Aを介さずに)自己相関演算等の演算を行って、組織移動速度情報を生成する。また、第2の超音波走査は、超音波の送受信がそれぞれの走査線に対して1回ずつ行われる走査である。信号処理回路130は、第2の超音波走査の結果から形態情報を生成する。
このように、信号処理回路130は、同一の超音波走査の結果から血流情報および弾性情報を生成する。なお、第1の実施形態において、同一の超音波走査の結果から血流情報および弾性情報が生成されるのは、クラッタ信号が少なく、かつ、組織の歪み情報を生成可能な反射波データが収集されるからである。すなわち、操作者が超音波プローブ101を積極的に加振しなくても、超音波プローブ101を体表に当接させる行為により発生する微弱な振動に基づいて、歪み情報が生成可能である。このため、超音波プローブ101を積極的に加振せずに収集された反射波データは、歪み情報を含むと共に、加振に由来するクラッタ信号が少ないため、同一のデータ列から血流情報および弾性情報が生成可能となる。
なお、図3は一例に過ぎず、例えば、必ずしも第1の超音波走査の後に第2の超音波走査が行われなくてもよい。また、例えば、必ずしも同一の超音波走査の結果から血流情報および弾性情報が生成されなくてもよい。
図1の説明に戻る。画像処理回路140は、画像データ(超音波画像データ)の生成処理や、画像データに対する各種の画像処理等を行う。例えば、画像処理回路140は、信号処理回路130により生成されたBモードデータ(形態情報)、血流情報、および弾性情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換(スキャンコンバート)する。これにより、画像処理回路140は、被検体の構造物の形態を表すBモード画像データ(形態画像データ)、被検体内の血流の運動を表す血流画像データ、および被験体内の組織弾性を表す弾性画像データをそれぞれ生成する。画像処理回路140は、生成した画像データや、各種の画像処理を行った画像データを、画像メモリ150に格納する。なお、画像処理回路140は、各画像データの表示位置を示す情報、超音波診断装置の操作を補助するための各種情報、患者情報等の診断に関する付帯情報についても画像データとともに生成し、画像メモリ150に格納してもよい。
また、第1の実施形態に係る画像処理回路140は、取得機能141と、画像生成機能142と、合成機能143とを実行する。ここで、制御回路170の構成要素である取得機能141、画像生成機能142、及び合成機能143が実行する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路160に記録されている。画像処理回路140は、各プログラムを記憶回路160から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。すなわち、取得機能141は、画像処理回路140が取得機能141に対応するプログラムを記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。また、画像生成機能142は、画像処理回路140が画像生成機能142に対応するプログラムを記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。また、合成機能143は、画像処理回路140が合成機能143に対応するプログラムを記憶回路160から読み出し実行することで、実現される機能である。換言すると、各プログラムを読み出した状態の画像処理回路140は、図1の画像処理回路140内に示された各機能を有することとなる。取得機能141、画像生成機能142、および合成機能143の各機能については、後述する。
なお、図1においては単一の画像処理回路140にて取得機能141、画像生成機能142、及び合成機能143にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路160にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
画像メモリ150は、画像処理回路140が生成した画像データ(Bモード画像データ、血流画像データ、弾性画像データ等)を記憶するメモリである。また、画像メモリ150は、信号処理回路130が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ150が記憶するBモードデータ、血流情報、および弾性情報は、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像処理回路140を経由して表示用の超音波画像データとなる。
記憶回路160は、超音波送受信、画像処理および表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路160は、必要に応じて、画像メモリ150が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路160が記憶するデータは、図示しないインタフェース部を介して、外部装置へ転送することができる。
制御回路170は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、制御回路170は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路160から読み込んだ各種制御プログラムおよび各種データに基づき、送信回路110、受信回路120、信号処理回路130、画像処理回路140等の処理を制御する。また、制御回路170は、画像メモリ150が記憶する超音波画像データをディスプレイ103に表示させる。
なお、装置本体100に内蔵される送信回路110、受信回路120、信号処理回路130、画像処理回路140、および制御回路170等は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、集積回路等)のハードウェアにより構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたプログラムにより構成される場合もある。
ところで、血流画像又は弾性画像を、位置が対応しているBモード画像と合成して表示することが行われている。具体的には、Bモード画像上の対応する位置に血流画像又は弾性画像を重畳させることにより、視認性が向上し、診断の正確性向上や診断時間の短縮に寄与している。
しかしながら、単に合成するだけで視認性が向上するとは限らない。例えば、血流画像および弾性画像は一般的に彩色されて表示されるため、両者を重畳させるとかえって視認性が低下してしまう場合がある。具体的には、血流画像においては、血流の方向によって「赤−青」で彩色される。また、弾性画像においては、歪みの程度(大きさ)によって「青−緑−赤」と連続的に変化するグラデーションで彩色される。このため、血流画像および弾性画像を所定の透過度で重畳させた場合、例えば「赤」の画素が血流の向きを示しているのか歪みの程度を示しているのかを区別することができず、かえって視認性が低下してしまう。このような視認性の低下は、両者の透過度の調整や画像化領域の分割によって解決するものではない。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流および組織性状を適切に表現した合成画像を生成するために、開示の構成を備える。
取得機能141は、被検体に対する超音波走査の結果に基づいて、Bモードデータ(形態情報)、血流情報、および弾性情報を取得する。例えば、取得機能141は、信号処理回路130により生成されたBモードデータ、血流情報、および弾性情報を取得する。そして、取得機能141は、取得したBモードデータ、血流情報、および弾性情報を画像生成機能142へ送る。なお、取得機能141は、取得部の一例である。また、弾性情報は、組織性状情報の一例である。
なお、ここでは、取得機能141がBモードデータ、血流情報、および弾性情報を取得する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、取得機能141は、上記の情報以外の情報(例えば、付帯情報等)を取得してもよい。また、例えば、取得機能141は、必ずしも上記の情報を取得しなくてもよく、例えば、以下の処理にてBモードデータを用いない場合には、Bモードデータを取得しなくてもよい。この場合、取得機能141は、血流情報および弾性情報を信号処理回路130から取得する。
画像生成機能142は、被検体Pに対する超音波走査の結果に基づき、被検体内の構造物の形態を表すBモード画像、血流情報の値の違いが色相の違いで表現された血流画像、および弾性情報の値の違いがグレースケールで表現された弾性画像をそれぞれ生成する。なお、画像生成機能142は、画像生成部の一例である。
図4Aおよび図4Bは、第1の実施形態に係る画像生成機能142の処理を説明するための図である。図4Aには、画像生成機能142により生成される弾性画像10を例示する。また、図4Bには、画像生成機能142により生成される血流画像20を例示する。なお、図4Bの破線は、図4Aの弾性画像10との位置が対応づけられていることを表すものであり、血流画像20上に実際に表示されるものではない。
図4Aに示すように、例えば、画像生成機能142は、信号処理回路130により生成された弾性情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換する。ここで変換されたデータは、弾性情報の各サンプル点における組織の歪みを表す値が、表示画像の各画素の画素値に置き換えられたデータである。そして、画像生成機能142は、変換後のデータにおける各画素に対して、弾性画像用のカラールックアップテーブル(LUT)にしたがって画素値に応じた色を割り当てる。ここで、この弾性画像用のカラーLUTには、画素値に応じてグレースケールの色が設定されている。つまり、画像生成機能142は、弾性画像における各画素値の違いをグレースケールで表示する。一例としては、画像生成機能142は、硬い部分(歪みが小さい部分)に対して暗いグレーを割り当て、軟らかい部分(歪みが大きい部分)に対して明るいグレーを割り当てることで、弾性画像10を生成する。
なお、図4Aは一例に過ぎず、例えば、弾性画像10は、グレースケールに対して単色が割り当てられたカラーLUTによって表現されてもよい。言い換えると、弾性画像10は、色の三要素(色相、明度、彩度)のうち色相以外の要素で表現される。すなわち、弾性画像10の値の違いは、明度、彩度、および明度と彩度との組合せのうちのいずれか1つの違いで表現される。なお、弾性画像10を単色で表現する場合、後述の血流画像20の色相とは異なる色(色空間で接近しない色)で表現されるのが視認性の見地から好ましい。
また、図4Bに示すように、画像生成機能142は、信号処理回路130により生成された血流情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換する。ここで変換されたデータは、血流情報の各サンプル点における血流を表す値が、表示画像の各画素の画素値に置き換えられたデータである。そして、画像生成機能142は、変換後のデータにおける各画素に対して、血流画像用のカラーLUTにしたがって画素値に応じた色を割り当てる。ここで、この血流画像用のカラーLUTには、画素値に応じて異なる色相(色温度)を含む色が設定されている。つまり、画像生成機能142は、血流画像における各画素値の違いを色相で表示する。一例としては、画像生成機能142は、血流情報として血流のパワーが画像化される場合には、パワーが大きい部分に対して暗い赤を割り当て、パワーが小さい部分に対して明るい赤を割り当てることで、血流画像20を生成する。
なお、図4Bは一例に過ぎず、例えば、血流画像20は、赤以外の色相で表現されてよい。また、血流画像20は、血流の方向別に赤系と青系の色で表現されてもよいし、更に、血流の速度成分および分散成分を表示する場合には、2つの異なる色成分を用いて2次元の色の変化で表現されてもよい。言い換えると、血流画像20は、色の三要素(色相、明度、彩度)のうち少なくとも色相の違いにより表現される。すなわち、血流画像20の値の違いは、色相、色相と明度との組合せ、色相と彩度との組合せ、色相と明度と彩度との組合せのうちのいずれか1つの違いで表現される。
このように、画像生成機能142は、血流情報の値の違いが、少なくとも色相の違いで表現された血流画像20、および弾性情報の値の違いが、色相以外の違いで表現された弾性画像10を生成する。
合成機能143は、血流画像20と弾性画像10とを合成することで合成画像を生成する。例えば、合成機能143は、弾性画像10上の対応する位置に血流画像20を重畳させることで、合成画像を生成する。なお、合成機能143は、合成部の一例である。
図5および図6は、第1の実施形態に係る合成機能143の処理を説明するための図である。図5には、図4Aの弾性画像10と図4Bの血流画像20とが合成された合成画像30を例示する。図6には、合成画像30を用いて生成される表示用画像40を例示する。
図5に示すように、合成機能143は、弾性画像10上に血流画像20を重畳させて、合成画像30を生成する。ここで、弾性画像10および血流画像20は、それぞれ同一の超音波走査の結果から生成される画像データであるので、両画像データのサンプル点(画素)の位置は対応している。つまり、合成機能143は、両画像データの位置合わせを行うことなく、弾性画像10上の対応する位置に血流画像20を重畳させる。
具体的には、合成機能143は、血流画像20から血流領域を抽出する。例えば、合成機能143は、血流画像20のうちドプラ情報を有する領域(例えば、パワー値が閾値以上の領域)を血流領域として認識し、認識した血流領域の画像を切り出す。図4Bの例では、合成機能143は、4つの網掛け領域を血流領域として切り出す。そして、合成機能143は、切り出した血流領域の画像を、弾性画像10上の対応する位置に重畳させることで、合成画像30を生成する。なお、ここで重畳される血流領域の画像は、所定の透過度で透過させてもよい。また、図5の例では、血流画像20の一例としてパワー画像を用いる場合を説明したが、これに限らず、例えば、速度画像や分散画像が用いられてもよい。
また、図6に示すように、合成機能143は、合成画像30およびBモード画像41A,41Bを組み合わせることで、ディスプレイ103に表示させるための表示用画像40を生成する。具体的には、表示用画像40は、左右に同一の断層画像であるBモード画像41A,41Bが表示される領域に分割されている。
具体的には、合成機能143は、Bモード画像41A上の対応する位置に、合成画像30を非透過で重畳させる。この位置は、例えば、第1の超音波走査および第2の超音波走査における各サンプル点の位置に基づいて決定される。このように、合成画像30を非透過でBモード画像41A上に重畳させることにより、合成画像30の領域にBモード画像41Aの輝度成分が混在し、視認性が低下するのを防ぐことができる。
また、合成機能143は、Bモード画像41Aと同一のBモード画像41Bを、合成画像30を重畳させたBモード画像41Aの隣に並列表示させる。また、合成機能143は、Bモード画像41Bに、合成画像30の範囲に対応する枠線42を表示させる。この枠線42の表示により、合成画像30の範囲に対応するBモード画像(断層画像)の様子を容易に閲覧することができるので、合成画像30およびBモード画像41Bの比較観察が容易になる。
このように、合成機能143は、表示用画像40を生成する。合成機能143により生成された表示用画像40は、制御回路170によりディスプレイ103に表示される。
なお、図6は一例に過ぎない。例えば、図6では、Bモード画像41B上に他の画像が重畳されない場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Bモード画像41上の対応する位置に、弾性画像10または血流画像20が所定の透過度で重畳されてもよい。また、例えば、合成機能143は、合成画像30そのものを表示用画像40として出力してもよいし、Bモード画像41Aに合成画像30を非透過で重畳させた画像を表示用画像40として出力してもよい。また、例えば、合成機能143は、合成画像30の隣にBモード画像41Bを並列させた画像を表示用画像40として表示してもよい。すなわち、表示用画像40は、少なくとも合成画像30を含み、位置が対応する他の画像と適宜組み合わせて生成することが可能である。
また、例えば、図6では、2つのBモード画像41A,41Bを左右に並列表示させる場合を説明したが、この他にも、2画像を上下に配置した並列表示や、異なる大きさでの並列表示、異なる表示デバイス上での同時表示等、様々な形態にて並列表示可能である。また、並列表示される画像は、3画像以上であっても良い。3画像で並列表示する場合、うち2画像をBモード画像41Aとし、1画像をBモード画像41Bとする。また、合成画像30をBモード画像41Aに重畳させず、Bモード画像41Bに重畳させてもよい。
図7は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の処理手順を示すフローチャートである。図7に示す処理手順は、例えば、超音波プローブ101が被検体Pの体表面に当接された状態において、合成画像30の撮影を開始する旨の指示を操作者から受け付けることにより開始される。
ステップS101において、超音波診断装置1は、撮影を開始する。例えば、制御回路170は、合成画像30の撮影を開始する旨の指示を操作者から受け付けると、合成画像30の撮影を開始する。なお、ステップS101が否定される場合には、制御回路170は、撮影を開始せず、待機状態である。
ステップS101が肯定されると、ステップS102において、超音波プローブ101は、被検体Pに対して超音波走査を行う。例えば、超音波プローブ101は、フレームごとに第1の超音波走査および第2の超音波走査を行う(図3参照)。
ステップS103において、信号処理回路130は、形態情報、血流情報、および弾性情報を生成する。例えば、Bモード処理回路131は、第2の超音波走査により収集された反射波データに対して対数増幅、包絡線検波処理等を行って、Bモードデータを生成する。また、ドプラ演算処理回路132は、第1の超音波走査により収集された受信データ列に対して、クラッタ除去フィルタを適用して、受信データ列から血流情報を生成する。また、歪み分布演算回路133は、クラッタ除去フィルタ適用前の受信データ列から取得される組織移動速度情報に基づいて、組織の変形が開始してからの移動速度を時間積分して変位を算出し、さらに変位を空間微分することにより弾性情報を生成する。
ステップS104において、画像処理回路140は、形態画像データ、血流画像データ、および弾性画像データを生成する。例えば、取得機能141は、信号処理回路130によって生成されたBモードデータ、血流情報、および弾性情報を取得する。そして、画像生成機能142は、取得機能141によって取得されたBモードデータ、血流情報、および弾性情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換(スキャンコンバート)することで、Bモード画像データ、血流画像データ、および弾性画像データをそれぞれ生成する。なお、ここで生成される血流画像データは、血流情報の値の違いが少なくとも色相の違いで表現され、弾性画像データは、グレースケールで表現される。
ステップS105において、合成機能143は、合成画像データを生成する。例えば、合成機能143は、弾性画像10上の対応する位置に血流画像20を重畳させることで、合成画像30を生成する。そして、合成機能143は、生成した合成画像30を含む表示用画像40を合成する(図6参照)。
ステップS106において、制御回路170は、画像処理回路140によって生成された合成画像データをディスプレイ103に表示する。例えば、制御回路170は、図6に示した合成画像30を含む表示用画像40をディスプレイ103に表示する。
ステップS107において、制御回路170は、撮影を終了する旨の指示を操作者から受け付けたか否かを判定する。ここで、ステップS107が否定される場合には、制御回路170は、ステップS102の処理へ移行する。つまり、超音波診断装置1は、次のフレームの超音波走査を行って、次のフレームの合成画像30を生成し、表示する。
ステップS107が肯定されると、超音波診断装置1は、合成画像30を生成し、表示するための処理を終了する。なお、図7は一例に過ぎない。例えば、上記の処理手順は、必ずしも上述した順序で実行されなくてもよい。例えば、上記のステップS101〜S107は、処理内容が矛盾しない範囲で、適宜順序を変えて実行されてもよい。
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、取得機能141は、被検体に対する超音波走査の結果に基づいて、血流情報、および組織性状情報を取得する。画像生成機能142は、血流情報の値の違いが、少なくとも色相の違いで表現された血流画像、および組織性状情報の値の違いが、色相以外の違いで表現された組織性状画像を生成する。合成機能143は、血流画像と組織性状画像とを合成することで合成画像を生成する。このため、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流および組織性状を適切に表現した合成画像を生成することができる。
例えば、超音波診断装置1は、同一の超音波走査、すなわち同一断面において弾性画像10および血流画像20を取得する。このため、超音波診断装置1は、両画像を重畳が正確になり、診断の正確性向上が期待される。診療科や検査種別によっては、弾性画像10と血流画像20とが併用される場合が多く、特に有用である。
また、超音波診断装置1は、各フレームにおいて実行される超音波走査の回数が低減するため、フレームレートが向上する。また、超音波診断装置1は、弾性画像10および血流画像20を個別に収集するための撮像モード切り替えも不要になる結果、診断時間を削減することができる。
また、超音波診断装置1において、画像生成機能142は、被検体に対する超音波走査の結果に基づいて、形態画像、血流画像、および組織性状画像を生成する。そして、制御回路170は、血流画像と組織性状画像とが合成された合成画像30を含む表示画像と、形態画像41Bを含む表示画像とを並べてディスプレイ103に表示させる。これにより、超音波診断装置1は、形態画像、血流画像、および組織性状画像を、視認性を損なうこと無く同時に閲覧させることができる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、血流画像20と弾性画像10とを合成する際に、色相で描出された血流画像20と単色の色階調(例えばグレースケール)で描出された弾性画像10とを合成させる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、単色の色階調で描出された血流画像と色相で描出された弾性画像とを合成させてもよい。そこで、第2の実施形態では、超音波診断装置1が、単色の色階調で描出された血流画像と色相で描出された弾性画像とを合成させる場合について説明する。
第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、画像生成機能142および合成機能143の処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、説明を省略する。
第2の実施形態に係る画像生成機能142は、弾性情報の値の違いが、少なくとも色相の違いで表現された弾性画像、および血流情報の値の違いが、色相以外の違いで表現された血流画像を生成する。
図8Aおよび図8Bは、第2の実施形態に係る画像生成機能142の処理を説明するための図である。図8Aには、画像生成機能142により生成される弾性画像を例示する。また、図8Bには、画像生成機能142により生成される血流画像を例示する。なお、図8Bの破線は、図8Aの弾性画像との位置が対応づけられていることを表すものであり、血流画像上に実際に表示されるものではない。
図8Aに示すように、例えば、画像生成機能142は、信号処理回路130により生成された弾性情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換する。そして、画像生成機能142は、変換後のデータにおける各画素に対して、弾性画像用のカラールックアップテーブル(LUT)にしたがって画素値に応じた色を割り当てる。ここで、この弾性画像用のカラーLUTには、画素値に応じて異なる色相(色温度)を含む色が設定されている。つまり、画像生成機能142は、硬さ(歪み)が小さい値(軟らかい)から大きい値(硬い)に変化するにしたがって、「青−緑−赤」と連続的に変化するグラデーションを割り当てることで、弾性画像50を生成する。
また、図8Bに示すように、画像生成機能142は、信号処理回路130により生成された血流情報の走査方式を、表示用のデータ形式に変換する。そして、画像生成機能142は、変換後のデータにおける各画素に対して、血流画像用のカラーLUTにしたがって画素値に応じたグレースケールを割り当てる。つまり、画像生成機能142は、血流情報として血流のパワーが画像化される場合には、パワーの小さい値(軟らかい)から大きい値(硬い)に変化するにしたがって、輝度が変化するグレースケールを割り当てることで、血流画像60を生成する。
第2の実施形態に係る合成機能143は、血流画像60上に弾性画像50を重畳させることで、合成画像70を生成する。
図9は、第2の実施形態に係る合成機能143の処理を説明するための図である。図9に示すように、例えば、合成機能143は、血流画像60から血流領域を抽出し、抽出した血流領域以外の領域を所定の輝度(例えば黒)で塗りつぶす。そして、合成機能143は、血流領域以外の領域を塗りつぶした血流画像60上に、弾性画像50を所定の透過度(下層の血流画像60が閲覧可能な程度の透過度)で重畳させることで、合成画像70を生成する。これにより、血流領域が明確な合成画像70が得られる。
なお、合成機能143は、血流画像60から血流領域を切り出して、切り出した血流領域を弾性画像50上に重畳させることで、合成画像70を生成してもよい。ここで、血流画像60に単色の色階調を割り当てる場合、弾性画像50のカラーLUTの色相と近接しないようにするのが好ましい。
このように、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、単色の色階調で描出された血流画像60と色相で描出された弾性画像50とを合成することで、合成画像70を生成する。これにより、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、血流および組織性状を適切に表現した合成画像を生成することができる。
(第3の実施形態)
上述した第1および第2の実施形態では、TDI法を用いて弾性画像を生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、隣接フレーム間の相関演算に基づいて弾性画像を生成してもよい。そこで、第3の実施形態では、超音波診断装置1が、隣接フレーム間の相関演算に基づいて弾性画像を生成する場合を説明する。
第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、信号処理回路130の処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、説明を省略する。
図10は、第3の実施形態に係る信号処理回路130の構成例を示すブロック図である。図10に示すように、信号処理回路130は、Bモード処理回路131と、歪み分布演算回路133と、ドプラ演算処理回路134と、相互相関演算回路135とを備える。なお、Bモード処理回路131および歪み分布演算回路133は、図2に示したBモード処理回路131および歪み分布演算回路133と同様であるので、説明を省略する。
ドプラ演算処理回路134は、図2に例示したドプラ演算処理回路132と同様に、MTIフィルタ132Aと、血流情報生成回路132Bとを備え、組織移動速度生成回路132Cを備えない点が相違する。MTIフィルタ132Aおよび血流情報生成回路132Bは、図2に示したMTIフィルタ132Aおよび血流情報生成回路132Bと同様であるので、説明を省略する。つまり、ドプラ演算処理回路134は、実質的にはドプラ演算処理回路132と同様の処理により、血流情報を生成する。
相互相関演算回路135は、受信回路120からの反射波データに基づいて、組織変位情報を生成する。この組織変位情報は、弾性情報を生成する歪み分布演算回路133の入力となる情報である。
図11は、第3の実施形態に係る相互相関演算回路135の処理を説明するための図である。図11には、図3と同様のスキャンシーケンスを例示する。すなわち、第3の実施形態においても、図3に示した第1の実施形態のスキャンシーケンスと同様のスキャンシーケンスが実行される。
ここで、相互相関演算回路135は、隣接するフレーム間において、同一位置におけるIQ信号(若しくはRF信号)の相互相関(若しくは位相差)を演算することで、当該フレーム間における組織の変位を表す組織変位情報を生成する。具体的には、図11の矢印で示すように、相互相関演算回路135は、nフレーム目およびn+1フレーム目においてそれぞれ実行される第1の超音波走査からIQ信号を取得する。そして、相互相関演算回路135は、nフレーム目およびn+1フレーム目の間において、同一位置のIQ信号の相互相関を演算することで、これらのフレーム間における組織変位情報を生成する。そして、歪み分布演算回路133は、相互相関演算回路135によって生成された組織の変位を空間微分することにより、弾性情報を算出する。
このように、ドプラ演算処理回路134は、隣接フレーム間における受信データ間の相関演算に基づいて、弾性情報(組織性状情報)を生成することができる。なお、nフレーム目およびn+1フレーム目の受信データを用いて生成された弾性情報(弾性画像)は、nフレーム目またはn+1フレーム目の受信データから生成される断層画像および血流画像と同時に表示することで、ほぼ同一時刻かつほぼ同一断面の情報を同時表示することが可能となる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、上述した第1〜第3の実施形態と比較して高フレームレートで超音波走査を実行する場合について、説明する。
例えば、第1〜第3の実施形態にて説明した構成において、MTIフィルタ132Aの性能を向上させるには、各フレームの超音波走査により得られる反射波データのデータ列(パケット)を増加させるのが好ましい。しかしながら、この場合、パケットサイズの増加に伴ってフレームレートが低下してしまう。そこで、第4の実施形態では、フレームレートを上げるための構成を説明する。
第4の実施形態に係る制御回路170は、血流情報(および弾性情報)の収集については、走査範囲内に対する超音波走査を、同一位置の反射波データを複数フレームにわたって収集可能な走査形態で繰り返し実行する。また、制御回路170は、断層情報の収集については、走査範囲を分割した部分的な超音波走査を、分割範囲を切り替えながら複数フレームにわたって実行する。すなわち、制御回路170は、複数フレームにわたって繰り返し実行される血流情報の超音波走査の合間に、走査範囲が分割された部分的な超音波走査を、分割範囲を切り替えながら実行する。
図12は、第4の実施形態に係る制御回路170の処理を説明するための図である。図12に示す「B」は、Bモード用の送受信条件を用いて超音波走査が行なわれている範囲を示している。つまり、Bモード用の超音波走査が行われる範囲は、4つの分割範囲(第1分割範囲〜第4分割範囲)に分割されている。また、図12に示す「D」は、カラードプラモード用の送受信条件を用いて超音波走査が行なわれている範囲を示している。例えば、図12に示す「D」は、上記の高フレームレート法で行なわれる超音波走査が行なわれている範囲となる。すなわち、図12に例示する超音波走査は、一般的なカラードプラ法のように、超音波を同一方向に複数回送信して、複数回反射波を受信するのではなく、各走査線で超音波送受信を1回行なっている。制御回路170は、カラードプラモード用の超音波走査として、走査範囲を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波送受信を行ない、複数フレーム分の反射波を用いて血流情報を取得する方法(高フレームレート法)に基づく超音波走査を実行させる。
まず、制御回路170は、第1分割範囲に対してBモード用の超音波走査を実行させ(図12の(1)を参照)、1フレーム分の走査範囲に対してカラードプラモード用の超音波走査を実行させる(図12の(2)を参照)。そして、制御回路170は、第1分割範囲に対してBモード用の超音波走査を実行させ(図12の(3)を参照)、1フレーム分の走査範囲に対してカラードプラモード用の超音波走査を実行させる(図12の(4)を参照)。そして、制御回路170は、第1分割範囲に対してBモード用の超音波走査を実行させ(図12の(5)を参照)、1フレーム分の走査範囲に対してカラードプラモード用の超音波走査を実行させる(図12の(6)を参照)。そして、制御回路170は、第1分割範囲に対してBモード用の超音波走査を実行させ(図12の(7)を参照)、1フレーム分の走査範囲に対してカラードプラモード用の超音波走査を実行させる(図12の(8)を参照)。
ここで、図12に例示するように、制御回路170は、カラードプラモード用の超音波走査が行なわれる間隔を等間隔とする。すなわち、走査範囲上の「点X」は、図12の(2)、(4)、(6)及び(8)の超音波走査で1回ずつ走査されるが、その走査間隔は、一定の「T」となるように制御される。具体的には、制御回路170は、Bモード用の超音波走査で行なわれる各分割走査に要する時間を同一として、カラードプラモード用の超音波走査が行なわれる間隔を等間隔とする。例えば、制御回路170は、図12の(1)、(3)、(5)及び(7)で行われるBモード用の超音波走査の分割走査に要する時間を、必ず同じ時間となるように制御する。制御回路170は、各分割範囲の大きさや、走査線数、走査線密度及び深度等を同一とする。例えば、走査線数が同じであるならば、Bモード用の超音波走査の各分割走査に要する時間は、同じとなる。信号処理回路130は、「D」のフレーム間の同じ位置のデータ列(図12に示す「Xn−3、Xn−2、Xn−1、Xn、・・・」)に対して、相関演算等の処理を行なって、「点X」の血流情報や弾性情報を出力する。
このように、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、高フレームレートで超音波走査を実行可能である。このため、超音波診断装置1は、1枚の断層画像を形成するためのフレーム期間において、血流情報および弾性情報を生成し、それらの画像化および表示を行うことにより、ほぼ同一時刻かつほぼ同一断面の情報を同時表示することが可能となる。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(形態画像、血流画像、および弾性画像が異なる超音波走査により生成される場合)
上記の実施形態では、例えば、血流画像および弾性画像が同一の超音波走査によって生成される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、形態画像、血流画像、および弾性画像は、互いに異なる超音波走査により生成されてもよい。
図13は、その他の実施形態に係るスキャンシーケンスの一例を示す図である。図13において、横軸は、時間に対応する。また、各フレームの超音波走査には、第1の超音波走査、第2の超音波走査、および第3の超音波走査が含まれる。ここで、第1の超音波走査および第2の超音波走査は、図3で示したものと同様である。つまり、第1の超音波走査から血流画像(血流情報)が生成され、第2の超音波走査から形態画像(形態情報)が生成される。
ここで、第3の超音波走査は、弾性画像(弾性情報)を生成するために実行される。この場合、例えば、信号処理回路130は、第3の超音波走査で得られる反射波データからTDI法により組織移動速度情報を生成して、弾性情報を算出する。なお、これに限らず、信号処理回路130は、隣接フレーム間の相関演算に基づいて弾性画像を生成してもよい。
(シェアウェーブ・エラストグラフィの適用)
また、上記の実施形態では、超音波プローブ101を体表に当接させる行為により発生する微弱な振動により生じる歪み(ストレイン)を画像化するストレイン・エラストグラフィにより弾性画像が生成される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、体表から生体組織に音響放射力(プッシュパルス)を与えてせん断波(Shear Wave)に基づく変位を発生させ、走査断面内の各点における変位を経時的に観測することで、せん断波の伝播速度から弾性率を求めるシェアウェーブ・エラストグラフィが適用されてもよい。
図13を用いて、シェアウェーブ・エラストグラフィが適用される場合の超音波走査について説明する。この場合、第1の超音波走査および第2の超音波走査は、上記の説明と同様である。つまり、第1の超音波走査から血流画像(血流情報)が生成され、第2の超音波走査から形態画像(形態情報)が生成される。
ここで、第3の超音波走査は、シェアウェーブ・エラストグラフィにより弾性画像(弾性情報)を生成するための超音波走査である。ただし、シェアウェーブ・エラストグラフィでは、1回のプッシュパルス送信によって生じるせん断波が伝播とともに減衰してしまうため、1つの関心領域を複数の小領域に分けて走査することが行われる。図13では、関心領域を3つの小領域にわけて走査し、3つの小領域の弾性画像を合成することで、関心領域に対応する1枚の弾性画像を得る場合を説明する。ここで、説明の便宜上、3つの小領域を、小領域A,B,Cと表記する。
すなわち、nフレーム目において、第1の超音波走査から血流画像が生成され、第2の超音波走査から形態画像が生成され、第3の超音波走査から小領域Aの弾性画像が生成される。続いて、n+1フレーム目において、第1の超音波走査から血流画像が生成され、第2の超音波走査から形態画像が生成され、第3の超音波走査から小領域Bの弾性画像が生成される。そして、n+2フレーム目において、第1の超音波走査から血流画像が生成され、第2の超音波走査から形態画像が生成され、第3の超音波走査から小領域Cの弾性画像が生成される。ここで、小領域A,B,Cの弾性画像を合成することで、関心領域に対応する1枚の弾性画像を生成可能となる。言い換えると、シェアウェーブ・エラストグラフィにより生成される弾性画像は、血流画像及び形態画像と比較して、小領域の数に応じてフレームレートが低くなる。なお、シェアウェーブ・エラストグラフィにより生成された弾性画像は、フレームレートが低い点を除き、上記の実施形態にて説明したストレイン・エラストグラフィにより生成される弾性画像と同様に合成画像データの生成/表示に利用可能である。
(他の組織性状画像)
また、上述した弾性画像以外にも、減衰画像、ASQ(acoustic structure quantification)モード画像、微小石灰化強調画像などの画像についても組織性状画像として適用可能である。
ここで、減衰画像とは、生体内を伝播する超音波の減衰の様子を画像化したものである。例えば、超音波の減衰量は、所定の周波数の超音波を送受信して得られる反射波信号の信号強度から推定される。
また、ASQモード画像とは、受信信号の信号振幅分布のレイリー分布(Rayleigh distribution)からの逸脱度(分散値)を統計フィルタ処理により求め、かかる分散値が画像化されたものである。
微小石灰化強調画像とは、Bモード画像から、観察対象となる組織内で生じた微細な石灰化を抽出し、抽出した微細石灰化を画像化したものである。
上記の減衰画像、ASQモード画像、微小石灰化強調画像が組織性状画像として血流画像と合成される場合には、血流画像が色相の違いで表現され、組織性状画像が色相以外の違いで表現されるのが好適である。
(医用画像処理装置)
また、上述した実施形態において説明した処理は、医用画像処理装置において実行されてもよい。
図14は、その他の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示すブロック図である。図14に示すように、医用画像処理装置200は、入力装置201と、ディスプレイ202と、記憶回路210と、処理回路220とを備える。
入力装置201は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、医用画像処理装置200の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を各処理部へ転送する。
ディスプレイ202は、医用画像処理装置200の操作者が入力装置201を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したり、医用画像処理装置200において生成された情報等を表示したりする。
記憶回路210は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等の不揮発性の記憶装置である。
処理回路220は、ASICやFPGA等の集積回路や、CPUやMPU等の電子回路であり、医用画像処理装置200の処理全体を制御する。
また、処理回路220は、取得機能221と、画像生成機能222と、合成機能223とを実行する。取得機能221、画像生成機能222、および合成機能223は、上記の実施形態にて説明した取得機能141、画像生成機能142、および合成機能143とそれぞれ同様の機能を備える。
すなわち、取得機能221は、血流情報および組織性状情報を取得する。画像生成機能222は、取得機能221によって取得された血流情報から、被検体内の各位置における血流に基づく値を含む血流情報の値の違いが、少なくとも色相の違いで表現された血流画像20を生成する。また、画像生成機能222は、取得機能221によって取得された組織性状情報から、被検体内の各位置における組織性状に基づく値を含む組織性状情報の値の違いが、色相以外の違いで表現された弾性画像10を生成する。そして、画像生成機能222は、生成した血流画像20および弾性画像10を記憶回路210へ格納する。そして、合成機能223は、血流画像20および弾性画像10を合成することで合成画像30を生成する。
なお、医用画像処理装置200は、生成済みの血流画像20および弾性画像10をモダリティから取得し、取得した画像同士を合成する場合であってもよい。この場合、取得機能221は、血流画像20および弾性画像10をそれぞれモダリティから取得し、取得した血流画像20および弾性画像10を記憶回路210に格納する。そして、合成機能223は、血流画像20および弾性画像10を合成することで合成画像30を生成する。
また、図14では、血流画像20および弾性画像10を合成することで合成画像30を生成する場合を説明したが、血流画像60および弾性画像50を合成することで合成画像70を生成してもよい。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上記の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上記の実施形態で説明した医用画像処理方法は、予め用意された医用画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用画像処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、血流および組織性状を適切に表現した合成画像を生成することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。