以下、図面を参照して、実施形態に係る画像解析装置を説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用可能である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子等の複数の素子を有する。これら複数の素子は、装置本体100が有する送受信回路110の送信回路111から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ101が有する複数の素子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。そして、超音波プローブ101は、反射波信号を後述する送受信回路110の受信回路112に出力する。
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行う場合、操作者は、例えば、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブは、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等である。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行う場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データにより示される超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。なお、超音波画像データは、画像データの一例である。装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの2次元領域に対応する反射波データに基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101が受信した被検体Pの3次元領域に対応する反射波データに基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。
図1に示すように、装置本体100は、送受信回路110と、バッファメモリ120と、Bモード処理回路130と、ドプラ処理回路140と、記憶回路150と、処理回路160とを有する。
送受信回路110は、処理回路160による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させるとともに、超音波プローブ101に超音波(超音波の反射波)を受信させる。すなわち、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して超音波走査(超音波スキャン)を実行する。送受信回路110は、送受信部の一例である。送受信回路110は、送信回路111と、受信回路112とを有する。
送信回路111は、処理回路160による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させる。送信回路111は、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。送信回路111は、被検体P内の2次元領域を走査(スキャン)する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路111は、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
レートパルサ発生回路は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の圧電振動子まで伝達した後に、圧電振動子において電気信号から機械的振動に変換される。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部に送信される。ここで、圧電振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
なお、送信回路111は、処理回路160による制御を受けて、所定の走査シーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の圧電振動子まで到達した後、圧電振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信回路112に入力される。受信回路112は、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。そして、受信回路112は、生成した反射波データをバッファメモリ120に格納する。
プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行う。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、A/D変換された反射波信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてバッファメモリ120に格納する。
受信回路112は、超音波プローブ101が受信した2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路112は、超音波プローブ101が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
ここで、本実施形態に係る超音波診断装置1は、血流情報を示す血流画像、造影剤により微細な毛細血管等の組織灌流が描出された造影画像、及び、組織形状を示す組織画像を表示する。なお、血流画像は、血流画像データであるカラードプラ画像データにより示される画像である。また、造影画像は、造影画像データであるBモード画像データにより示される画像である。また、組織画像は、組織画像データであるBモード画像データにより示される画像である。
そして、かかる表示を行うために、送受信回路110は、ドプラモードで血流画像データを収集するための超音波走査(第1超音波走査)を実行するとともに、Bモードで組織画像データ及び造影画像データを収集するための超音波走査(第2超音波走査)を実行する。第1超音波走査は、造影剤が注入された被検体P内の領域(第1走査領域)に対する超音波走査であり、第1走査領域内の血流情報を取得する超音波走査である。第2超音波走査は、被検体P内の領域(第2走査領域)内の組織形状の情報、及び、微細な毛細血管等の組織灌流に関する情報を取得する超音波走査である。
すなわち、送受信回路110は、組織画像データ及び造影画像データを収集する際に、組織画像を収集するための超音波走査、及び、造影画像を収集するための超音波走査を別々に行うのではなく、1つの第2超音波走査を実行する。すなわち、送受信回路110が第1超音波走査及び第2超音波走査の2種類の超音波走査を実行するだけで、超音波診断装置1は、血流画像、組織画像及び造影画像の3種類の画像を収集することができる。
第1走査領域と第2走査領域とは少なくとも一部で重なっていればよい。第1走査領域の範囲と第2走査領域の範囲は、同じ範囲であってもよく、第1走査領域の範囲が第2走査領域の範囲より小さくてもよく、第2走査領域の範囲が第1走査領域の範囲より小さくても良い。
バッファメモリ120は、送受信回路110により生成された反射波データを一時的に記憶するメモリである。例えば、バッファメモリ120は、数フレーム分の反射波データ、又は、数ボリューム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、受信回路112の制御により、所定数のフレーム分の反射波データを記憶する。そして、バッファメモリ120は、所定数のフレーム分の反射波データを記憶している状態で、新たに1フレーム分の反射波データが受信回路112により生成された場合、受信回路112による制御を受けて、生成された時間が最も古い1フレーム分の反射波データを破棄し、新たに生成された1フレーム分の反射波データを記憶する。例えば、バッファメモリ120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子によって実現される。
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から反射波データを読み出し、読み出した反射波データに対して、各種の信号処理を行う信号処理部である。
Bモード処理回路130は、バッファメモリ120から読み出した反射波データに対して、対数増幅及び包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。Bモード処理回路130は、生成したBモードデータを処理回路160に出力する。Bモード処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。
なお、Bモード処理回路130は、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。このBモード処理回路130の機能を用いることにより、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、造影剤からの非線形信号を映像化するコントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)を実行可能である。例えば、Bモード処理回路130は、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成することができる。第1の実施形態に係るBモード処理回路130が行う具体的な処理については、後に詳述する。
ドプラ処理回路140は、バッファメモリ120から読み出した反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を抽出し、抽出した運動情報を示すデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、移動体の運動情報として、平均速度、平均分散値及び平均パワー値等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。ドプラ処理回路140は、生成したドプラデータを処理回路160に出力する。
上記のドプラ処理回路140の機能を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、カラーフローマッピング(CFM:Color Flow Mapping)法とも呼ばれるカラードプラ法を実行可能である。カラーフローマッピング法では、超音波の送受信が複数の走査線上で複数回行われる。そして、カラーフローマッピング法では、同一位置のデータ列に対してMTI(Moving Target Indicator)フィルタを掛けることで、同一位置のデータ列から、静止している組織、或いは、動きの遅い組織に由来する信号(クラッタ信号)を抑制して、血流に由来する信号を抽出する。そして、カラーフローマッピング法では、この血流信号から血流の速度、血流の分散、血流のパワー等の血流情報を推定する。後述する処理回路160は、血流情報の推定結果の分布を、例えば、2次元でカラー表示した超音波画像データ(血流画像データ:カラードプラ画像データ)を生成する。そして、ディスプレイ103は、血流画像データが示す血流画像を表示する。
本実施形態に係るドプラ処理回路140は、MTIフィルタとして、入力信号に応じて係数を変化させる適応型のMTIフィルタを用いる。例えば、ドプラ処理回路140は、適応型のMTIフィルタとして、「Eigenvector Regression Filter」と呼ばれるフィルタを用いる。以下、固有ベクトルを用いた適応型MTIフィルタである「Eigenvector Regression Filter」を、「固有ベクトル型MTIフィルタ」と記載する。
固有ベクトル型MTIフィルタは、相関行列から固有ベクトルを計算し、計算した固有ベクトルから、クラッタ成分抑制処理に用いる係数を計算する。この方法は、主成分分析や、カルーネン・レーベル変換(Karhunen-Loeve transform)、固有空間法で使われている手法を応用したものである。
固有ベクトル型MTIフィルタを用いる第1の実施形態に係るドプラ処理回路140は、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、第1走査領域の相関行列を計算する。そして、ドプラ処理回路140は、相関行列の固有値及び当該固有値に対応する固有ベクトルを計算する。そして、ドプラ処理回路140は、各固有値の大きさに基づいて各固有ベクトルを並べた行列のランクを低減した行列を、クラッタ成分を抑制するフィルタ行列として計算する。
そして、ドプラ処理回路140は、フィルタ行列を用いて、同一位置(同一サンプル点)の連続した反射波データのデータ列から、クラッタ成分が抑制され、血流に由来する血流信号が抽出されたデータ列を特定する。そして、ドプラ処理回路140は、特定したデータ列を用いた自己相関演算等の演算を行って、血流情報を推定する。そして、ドプラ処理回路140は、推定した血流情報を示すドプラデータを処理回路160に出力する。なお、第1の実施形態に係るドプラ処理回路140が行う具体的な処理については、後に詳述する。ドプラ処理回路140は、例えば、プロセッサにより実現される。ドプラ処理回路140は、血流情報取得部の一例である。
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。例えば、記憶回路150は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、又は光ディスクによって実現される。
例えば、記憶回路150は、処理回路160により生成された各種の画像データを記憶する。また、記憶回路150は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140により生成されたデータも記憶する。記憶回路150が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、処理回路160を経由して表示用の超音波画像データとなる。
処理回路160は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路160は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信回路110、Bモード処理回路130、及びドプラ処理回路140の処理を制御する。また、処理回路160は、記憶回路150に記憶された表示用の超音波画像データにより示される超音波画像を表示するようにディスプレイ103を制御する。処理回路160は、例えば、プロセッサにより実現される。超音波画像は、画像の一例である。
また、処理回路160は、送受信回路110を介して超音波プローブ101を制御することで、超音波走査の制御を行う。例えば、処理回路160は、上述した第1超音波走査及び第2超音波走査の制御を行う。
処理回路160は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140が出力したデータから超音波画像データを生成する。処理回路160は、Bモード処理回路130が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度で表した2次元Bモード画像データを生成する。また、処理回路160は、ドプラ処理回路140が生成した2次元のドプラデータから血流情報が映像化された2次元ドプラ画像データを生成する。2次元ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。処理回路160は、血流情報としてのドプラデータから、ドプラ画像データとして、血流情報がカラーで表示される血流画像データを生成したり、1つの血流情報がグレースケールで表示される血流画像データを生成したりする。処理回路160は、プロセッサにより実現される。
ここで、処理回路160は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(走査コンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、処理回路160は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、処理回路160は、走査コンバート以外に種々の画像処理として、例えば、走査コンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、処理回路160は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
更に、処理回路160は、Bモード処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行うことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、処理回路160は、ドプラ処理回路140により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行うことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、処理回路160は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、処理回路160は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行う。
処理回路160が行うレンダリング処理としては、例えば、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行ってボリュームデータからMPR画像データを生成する処理がある。また、処理回路160が行うレンダリング処理としては、例えば、3次元の情報を反映した2次元画像データを生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。処理回路160は、画像生成部の一例である。
Bモードデータ及びドプラデータは、走査コンバート処理前の超音波画像データであり、処理回路160が生成するデータは、走査コンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の全体構成について説明した。
ところで、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)において、造影剤は、血管から漏出し、組織に滞留する場合がある。造影剤の滞留箇所では、造影剤が流れている箇所(つまり血管)との目視による識別が困難になるため、血流動態が把握し難くなってしまう。また、腫瘤における造影剤の滞留箇所の均一性が、乳房に生じた腫瘤の良悪性判別に利用される場合がある。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、造影剤の滞留箇所の解析を行うために、以下の処理機能を実行する。すなわち、超音波診断装置1において、処理回路160は、組織画像生成機能161と、造影画像生成機能162と、血流画像生成機能163と、特定機能164と、出力制御機能165とを実行する。
第1の実施形態に係る組織画像生成機能161、造影画像生成機能162、及び血流画像生成機能163は、送受信回路110により実行される超音波走査により収集される信号に基づいて、各種の超音波画像データを生成する。
送受信回路110は、超音波プローブ101を介して、第1超音波走査及び第2超音波走査を交互に実行する複合超音波走査を実行する。また、第1超音波走査の走査形態は、複数の走査線で形成される第1走査領域での超音波送受信を各走査線で1回とする走査形態である。かかる走査形態により、フレームレートを向上させることができる。以下、上記の第1超音波走査を「高フレームレート用超音波走査」と記載し、「高フレームレート用超音波走査」により行われるCFM法を「高フレームレート法」と記載する。
ここで、通常のカラードプラ法では、超音波送受信を同一方向で複数回行い、これにより受信した信号から、血流信号を抽出する。かかる超音波送受信により得られる同一位置からの反射波信号(反射波データ)のデータ列は、パケットと呼ばれる。パケットサイズは、1フレームの血流情報を得るために同一方向で行われる超音波送受信の回数となる。一般的なカラードプラ法でのパケットサイズは、5から16程度である。固有ベクトル型MTIフィルタの性能は、パケットサイズが大きい方が、向上するが、パケットサイズを大きくすると、フレームレートは、低下する。
一方、高フレームレート法では、各フレームの同じ位置のデータ列に対してフレーム方向(時間方向)で処理を行うことができる。例えば、高フレームレート法では、MTIフィルタ処理を、パケットという有限長のデータ処理から無限長のデータに対する処理とすることができる。その結果、高フレームレート法により、MTIフィルタの性能を向上させることができる結果、低流速の血流に関する血流情報をも検出可能になり、また、高いフレームレートで血流情報を示す血流画像を表示することが可能になる。
第1の実施形態に係る処理回路160は、高フレームレート用超音波走査による第1超音波走査とともに、第2超音波走査を、以下に説明する走査形態で実行させる。
処理回路160は、第2走査領域を複数の分割領域に分割し、複数の分割領域それぞれに対する第2超音波走査を、第1超音波走査の間に時分割で超音波プローブ1に実行させる。すなわち、送受信回路110は、第1超音波走査、及び、第2走査領域を分割した複数の分割領域それぞれに対する第2超音波走査を、超音波プローブ101を介して交互に実行する。したがって、第1の実施形態では、送受信回路110は、第1超音波走査の間に第2超音波走査を実行し、数フレーム分の第1超音波走査を行う期間で、1フレーム分の第2超音波走査を完結させる。かかる走査形態により、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1超音波走査と第2超音波走査とで超音波送受信条件(画質条件)を独立に設定可能となる。
第1超音波走査及び第2超音波走査について説明する。図2及び図3は、第1の実施形態に係る第1超音波走査及び第2超音波走査の一例を説明するための図である。図2に示すように、処理回路160は、操作者からの指示や、初期設定された情報等に基づいて、第2走査領域を4つの分割領域(第1分割領域~第4分割領域)に分割する。図2に示す「C」は、Bモードにおけるコントラストハーモニックイメージング用の送受信条件を用いて第2超音波走査が行われる分割領域を示している。分割領域は、少なくとも1つの走査線により形成される。
例えば、本実施形態では、第2超音波走査において、位相変調法(PM:Phase Modulation)を用いてもよい。位相変調法は、例えば、走査範囲を構成する各走査線で位相の異なる2種類の超音波を送信し、2種類の超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する手法である。本実施形態では、位相変調法が用いられる場合には、送受信回路110が、分割領域を構成する各走査線で位相の異なる2種類の超音波を送信し、Bモード処理回路130が、2種類の超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加算する。位相変調法を用いる場合、第2超音波走査は、位相が異なる2種類の超音波それぞれの送受信を含む。
なお、第2超音波走査において、振幅変調法(AM:Amplitude Modulation)を用いてもよい。振幅変調法は、例えば、走査範囲を構成する各走査線で、同一の位相で振幅の比率が「1:2:1」に変調された3つの超音波を送信し、3つの超音波それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する手法である。本実施形態では、振幅変調法が用いられる場合には、送受信回路110が、分割領域を構成する各走査線で、振幅が「0.5」である超音波、振幅が「1」である超音波、及び、振幅が「0.5」である超音波を、この順で送信する。すなわち、送受信回路110が、振幅が異なる2種類の超音波を送信する。そして、Bモード処理回路130が、3つの超音波(2種類の超音波)それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する。振幅変調法を用いる場合、第2超音波走査は、振幅が異なる2種類の超音波それぞれの送受信を含む。
第2超音波走査において、位相変調法、及び、振幅変調法のいずれを用いるのかについては、操作者により選択される。例えば、位相変調法は、送信超音波の周波数が比較的高いため、空間分解能が比較的高い超音波画像が得られる一方、ペネトレーションが良好でないという特性がある。一方、振幅変調法は、送信超音波の周波数が比較的低いため、ペネトレーションが良好である一方、超音波画像の空間分解能が比較的低くなるという特性がある。操作者は、このような特性を考慮して、入力装置102を操作して、位相変調法、又は、振幅変調法のいずれかを選択する。
例えば、操作者により位相変調法が選択された場合には、処理回路160は、位相変調法を示す情報「0」を記憶回路150の全記憶領域のうち所定領域に格納する。また、操作者により振幅変調法が選択された場合には、振幅変調法を示す情報「1」を記憶回路150の所定領域に格納する。そして、処理回路160は、第2超音波走査を実行する際に、記憶回路150の所定領域を参照する。参照した結果得られた情報が「0」を示す場合には、処理回路160は、上述した位相変調法を用いた処理が実行されるように、送受信回路110やBモード処理回路130を制御する。一方、参照した結果得られた情報が「1」を示す場合には、処理回路160は、上述した振幅変調法を用いた処理が実行されるように、送受信回路110やBモード処理回路130を制御する。
また、図2に示す「D」は、カラードプラモード用の送受信条件を用いて第1超音波走査が行われる第1走査領域を示している。例えば、図2に示す「D」は、上記の高フレームレート法で行われる超音波走査が行われている範囲となる。すなわち、第1超音波走査は、一般的なカラードプラ法のように、超音波を同一方向に複数回送信して、複数回反射波を受信するのではなく、各走査線で超音波送受信を1回行う。送受信回路110が、第1超音波走査として、第1走査領域を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波送受信を行うことにより、複数フレーム分の反射波を用いて血流情報を取得する方法(高フレームレート法)に基づく超音波走査を実行する。
図2に示すように、まず、送受信回路110は、第1分割領域に対する第2超音波走査を実行し(ステップS1)、第1走査領域(1フレーム分)に対する第1超音波走査を実行する(ステップS2)。そして、送受信回路110は、第2分割領域に対する第2超音波走査を実行し(ステップS3)、第1走査領域に対する第1超音波走査を実行する(ステップS4)。そして、送受信回路110は、第3分割領域に対する第2超音波走査を実行し(ステップS5)、第1走査領域に対する第1超音波走査を実行する(ステップS6)。そして、送受信回路110は、第4分割領域に対する第2超音波走査を実行し(ステップS7)、第1走査領域に対する第1超音波走査を実行し(ステップS8)、ステップS1に戻る。
ここで、図2に例示するように、送受信回路110による第1超音波走査を制御する処理回路160は、第1超音波走査が行われる間隔を等間隔とする。すなわち、第1走査領域の「ある走査線」上の「点X」は、図2のステップS2,S4,S6及びS8の第1超音波走査で1回ずつ走査されるが、その走査間隔は、一定の「T」となるように制御される。例えば、処理回路160は、第2超音波走査に要する時間を同一として、第1超音波走査が行われる間隔を等間隔とする。例えば、処理回路160は、図2のステップS1,S3,S5及びS7で行われる第2超音波走査に要する時間を、同じ時間となるように制御する。処理回路160は、第2走査領域を分割した各分割領域の大きさや、走査線数、走査線密度及び深度等を同一とする。例えば、走査線数が同じであるならば、第2超音波走査に要する時間は、同じとなる。ドプラ処理回路140は、第1走査領域のフレーム間の同じ位置のデータ列(図2に示す「Xn-3、Xn-2、Xn-1、Xn、・・・」)に対して、後述する処理を行って、「点X」の血流情報を出力する。なお、上記の方法では、表示制御機能を有する処理回路160は、ディスプレイ103に表示された組織画像を「4T」間隔で更新するのではなく、「T」間隔で分割領域に対応する組織画像の一部分を更新する。
従来のカラードプラの処理では、パケット内で閉じたデータ列に対して、「MTIフィルタ処理」及び「速度・分散・パワー推定処理」を行う。このため、従来のカラードプラの処理では、1つのパケットで1つの血流情報しか出力できない。これに対して、高フレームレート法の走査形態で行われるカラードプラの処理では、走査自体にパケットという概念がない。このため、上記の走査形態で行われるカラードプラの処理では、1つの血流情報を出力するための処理に使用するデータ列のデータ長は、任意に変更可能である。
更に、上記の走査形態で行われるカラードプラの処理では、前の時相の血流情報を出力するための処理に使用したデータ列と、次の時相の血流情報を出力するための処理に使用するデータ列とを重複させることが可能である。
この点について、図3を用いて説明する。図3では、第1走査領域と第2走査領域とが同じ走査範囲であり、この走査範囲が第1走査線から第8走査線の8本の走査線により形成される場合を例示している。また、図3では、8本の走査線それぞれを、方位方向(超音波プローブ1の振動子の配列方向)に沿って、「1,2,3,4,5,6,7,8」と示している。また、図3では、第2超音波走査を黒塗りの矩形で示し、第1超音波走査を白抜きの矩形で示している。図3は、図2に示す走査範囲を、第1の実施形態で行われる走査形態で走査する場合を例示した図である。具体的には、図3では、図2に示す第1走査領域が8本の走査線により形成され、第1走査領域と同一の領域である第2走査領域を4つに分割した分割領域が2本の走査線により形成される場合が示されている。
図3に例示する走査では、第1走査線から第2走査線の順で第2超音波走査が行われる。第2走査線の第2超音波走査が行われた後、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波走査(1回目の第1超音波走査)が行われる。
そして、1回目の第1超音波走査が行われた後、第3走査線から第4走査線の順で第2超音波走査が行われる。第4走査線の第2超音波走査が行われた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波走査(2回目の第1超音波走査)が行われる。
そして、第5走査線から第6走査線の順で第2超音波走査が行われた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波走査(3回目の第1超音波走査)が行われる。
そして、第7走査線から第8走査線の順で第2超音波走査が行われた後、再び、第1走査線から第8走査線の順で第1超音波走査(4回目の第1超音波走査)が行われる。4回目の第1超音波走査以降についても、同様に、第2超音波走査と第1超音波走査とが交互に実行される。すなわち、第1の実施形態では、送受信回路110は、第1走査領域に対する第1超音波走査、及び、第2走査領域の一部(分割領域)に対する第2超音波走査を交互に実行する。
ここで、例えば、データ列のデータ長が「4」に設定され、表示されるフレーム間におけるデータ列の重複数が「3」に設定されている場合について説明する。かかる場合、ドプラ処理回路140は、1回目の第1超音波走査から4回目の第1超音波走査までに収集された反射波データから、第1フレーム用のドプラデータを生成する。すなわち、ドプラ処理回路140は、データ列のデータ長「4」に対応する4回分の第1超音波走査により収集された反射波データから、第1フレーム用のドプラデータを生成する。このドプラデータは、血流画像データの元となるデータである。そして、処理回路160は、第1フレーム用のドプラデータから、第1フレームの血流画像データを生成する。そして、処理回路160は、第1フレームの血流画像データが示す第1フレームの血流画像をディスプレイ103に表示させる。
次に、ドプラ処理回路140は、2回目の第1超音波走査から5回目の第1超音波走査までに収集された反射波データから、第2フレーム用のドプラデータを生成する。ここで、2回目の第1超音波走査から5回目の第1超音波走査までに収集された反射波データと、上述した1回目の第1超音波走査から4回目の第1超音波走査までに収集された反射波データとは、2回目の第1超音波走査から4回目の第1超音波までに収集された反射波データが重複している。すなわち、反射波データは、重複数「3」に相当する数だけ重複している。
そして、第2フレーム用のドプラデータから、第2フレームの血流画像データが生成される。そして、第2フレームの血流画像データが示す第2フレームの血流画像がディスプレイ103に表示される。同様に、3回目の第1超音波走査から6回目の第1超音波走査までに収集された反射波データから、第3フレーム用のドプラデータが生成される。すなわち、Nを正の整数とすると、N回目の第1超音波走査から(N+3)回目の第1超音波走査までに収集された反射波データから、第Nフレーム用のドプラデータが生成される。
なお、1フレーム分の第2超音波走査は、図3に例示する場合、4フレーム分の第1超音波走査が完了すると完結する。図3に例示する場合では、血流画像の1フレームが表示される間に、第2走査領域を4つに分割した分割領域の画像(組織画像の一部及び造影画像の一部)が更新される表示形態となる。
次に、第2超音波走査において位相変調法が用いられる場合の一例について説明する。図4は、第1の実施形態において位相変調法が用いられる場合の一例を説明するための図である。位相変調法が用いられる場合には、送受信回路110は、同一の走査線において、図4に示すように、互いに極性の異なる2種類の超音波11及び超音波12を超音波プローブ101に送信させる。
そして、送受信回路110は、超音波11の反射波に基づく反射波データ、及び、超音波12の反射波に基づく反射波データを生成する。そして、Bモード処理回路140は、超音波11の反射波に基づく反射波データに対して、包絡線検波処理等を施して、組織画像データの元となるBモードデータ(第1のBモードデータ)を生成する。また、Bモード処理回路140は、超音波11の反射波に基づく反射波データに、超音波12の反射波に基づく反射波データを加算したデータに対して、包絡線検波処理等を施して、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成する。
そして、組織画像生成機能161は、第1のBモードデータに基づいて、組織画像51の一部(分割領域)を示す組織画像データを生成する。また、造影画像生成機能162は、第2のBモードデータに基づいて、造影剤からの非線形信号が映像化された造影画像52の一部(分割領域)を示す造影画像データを生成する。
次に、第2超音波走査において選択可能な振幅変調法が用いられる場合の一例について説明する。図5は、第1の実施形態において振幅変調法が用いられる場合の一例を説明するための図である。振幅変調法が用いられる場合には、送受信回路110は、同一の走査線において、例えば、図5に示すように、振幅が「0.5」である超音波13a、振幅が「1」である超音波13b、及び、振幅が「0.5」である超音波13cを、この順で送信する。すなわち、送受信回路110は、振幅が「0.5」である超音波13a,13c、及び、振幅が「1」である超音波13bの2種類の超音波を送信する。
そして、Bモード処理回路130が、3つの超音波(2種類の超音波)それぞれの反射波に基づく反射波データを加減算処理する。具体的には、超音波13aの反射波に基づく反射波データを「R1」とし、超音波13bの反射波に基づく反射波データを「R2」とし、超音波13cの反射波に基づく反射波データを「R3」とすると、Bモード処理回路130は、次の処理を行う。例えば、Bモード処理回路130は、「R1-R2+R3」の加減算処理を行ったデータに対して、絡線検波処理等を施して、造影画像データの元となるBモードデータ(第2のBモードデータ)を生成する。また、Bモード処理回路140は、超音波13bの反射波に基づく反射波データ「R2」に対して、包絡線検波処理等を施して、組織画像データの元となるBモードデータ(第1のBモードデータ)を生成する。
そして、組織画像生成機能161は、第1のBモードデータに基づいて、組織画像51の一部(分割領域)を示す組織画像データを生成する。また、造影画像生成機能162は、第2のBモードデータに基づいて、造影剤からの非線形信号が映像化された造影画像52の一部(分割領域)を示す造影画像データを生成する。
つまり、位相変調法及び振幅変調法のいずれが用いられる場合であっても、造影画像データを収集するための走査である第2超音波走査により収集された反射波データの一部が用いられて、組織画像データが生成される。したがって、本実施形態によれば、1つの第2超音波走査を実行するだけで、造影画像及び組織画像を収集することができる。
次に、第1超音波走査の一例について説明する。図6は、第1の実施形態に係る第1超音波走査の一例について説明するための図である。
第1超音波走査では、送受信回路110は、超音波プローブ101を介して、各走査線で超音波送受信を1回のみ行う。具体的には、送受信回路110は、第1超音波走査として、第1走査領域を形成する複数の走査線それぞれで1回ずつ超音波14を送信し、超音波14の反射波を受信する。そして、送受信回路110は、走査線ごとに、超音波14の反射波に基づく反射波データを生成する。そして、送受信回路110は、このようにして反射波データを生成する処理を複数フレーム分繰り返す。そして、ドプラ処理回路140は、複数フレーム分の超音波14の反射波に基づく反射波データに基づいて血流情報を推定する。そして、ドプラ処理回路140は、推定した血流情報を示すドプラデータを生成する。そして、処理回路160は、このドプラデータに基づいて、血流画像53を示す血流画像データを生成する。
次に、第1の実施形態に係るMTIフィルタ行列を生成する方法の一例について説明する。まず、ドプラ処理回路140は、複数の走査線で形成される第1走査領域での超音波送受信を各走査線で1回とする走査形態を繰り返すことで収集された同一位置の連続した反射波データのデータ列から、走査範囲の相関行列を計算する。
具体的には、ドプラ処理回路140は、以下に示す式(1)により相関行列「Rxx」を計算する。
ここで、式(1)に示す「xm」は、ある位置「m」におけるデータ列を列ベクトルとしたものである。列ベクトル「xm」の長さ「L」は、1フレームのドプラデータ(血流情報)の推定計算に使用するデータ長である。例えば、図3に例示する場合、「L」は、「4」である。また、式(1)に示す「xm
H」は、「xm」の各要素の複素共役を取った行列の転置行列を示す。
ここで、位置「m」は、高フレームレート用超音波走査を行う全空間で設定されるサンプル点の位置である。位置「m」は、2次元走査の場合は、2次元座標系で示され、3次元走査の場合は、3次元座標系で示される。また、式(1)に示す「M」は、位置「m」の総数である。
すなわち、ドプラ処理回路140は、式(1)により、複数のサンプル点それぞれで、データ列の自己相関行列を計算し、複数のサンプル点それぞれの自己相関行列の平均を計算する。これにより、ドプラ処理回路140は、第1走査領域の相関行列を計算する。相関行列「Rxx」は、式(1)により、L行L列の行列となる。なお、上述したように、相関行列が計算されるデータ列のデータ長「L」は、任意に変更可能である。また、相関行列が計算されるデータ列は、表示フレーム間で重複して設定可能である。
そして、ドプラ処理回路140は、相関行列の固有値及び当該固有値に対応する固有ベクトルを計算する。すなわち、ドプラ処理回路140は、相関行列「Rxx」から、L組の固有値及び固有ベクトルを計算する。そして、ドプラ処理回路140は、各固有値の大きさに基づいてL個の固有ベクトルを並べた行列「V」を設定する。そして、ドプラ処理回路140は、行列「V」のランクを低減した行列を、クラッタ成分を抑制するMTIフィルタ行列として計算する。ドプラ処理回路140は、L個の固有ベクトルそれぞれをL個の列ベクトルとし、L個の列ベクトルを、固有値の大きい順に並べた行列を「V」として、以下の式(2)により、MTIフィルタ行列「W」を計算する。
ここで、式(2)に示す「VH」は、「V」の複素共役転置行列である。また、式(2)の右辺において、「V」と「VH」との間の行列は、L行L列の対角行列である。MTIフィルタ行列「W」は、式(2)により、L行L列の行列となる。ここで、低減されるランク数は、L行L列の対角行列の対角要素を何個「0」にするかにより、定まる。以下、低減されるランク数を「ランクカット数」と記載する。
固有値が大きい列ベクトル(固有ベクトル)は、ドプラ用の走査範囲内で、ドプラ効果による周波数偏移が小さい、すなわち、移動速度が低いクラッタ成分に対応する。言い換えると、フレーム方向(時間方向)における信号変化の主成分が、クラッタ成分に対応する。式(2)は、行列「V」のランクを固有値の大きい方からランクカット数個分の成分をカットした行列を計算し、この行列に対して「VH」による逆変換を行う。この式(2)により、組織の動き成分(クラッタ成分)を除去するハイパスフィルタとして機能するMTIフィルタ行列「W」を得ることができる。
ここで、ドプラ処理回路140は、例えば、予め設定された値、或いは、操作者が指定した値により、ランクカット数の値を決定する。以上のようにして、適応型MTIフィルタが生成される。すなわち、ドプラ処理回路140は、第1走査領域内の各位置について、複数回の第1超音波スキャンで収集されたデータ列を取得し、このデータ列に基づいて適応型MTIフィルタを生成する。そして、ドプラ処理回路140は、生成された適応型MTIフィルタに、データ列を入力することで血流情報を取得する。そして、血流画像生成機能163は、ドプラ処理回路140により取得された血流情報に基づいて、血流画像データを生成する。
このように、送受信回路110は、被検体Pから造影信号を収集する第2超音波走査(造影用超音波走査)と、血流信号を収集する第1超音波走査(血流用超音波走査)とを実行する。そして、組織画像生成機能161は、第2量音波走査により収集された信号に基づいて組織形状を示す組織画像データを生成する。また、造影画像生成機能162は、被検体Pから収集されたハーモニック成分の信号である造影信号に基づいて造影画像データを生成する。また、血流画像生成機能163は、被検体Pから収集されたハーモニック成分の信号に対し、フレーム方向における信号変化の主成分を除去するフィルタ処理を行うことで推定した血流信号に基づいて血流画像データを生成する。なお、造影画像データは、走査領域内の各位置(画素位置)に対して、造影信号に応じた画素値が割り当てられた画像データである。なお、血流画像データは、走査領域内の各位置(画素位置)に対して、血流信号に応じた画素値が割り当てられた画像データである。
なお、上述した説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、図3では、第1走査領域及び第2走査領域が同じ走査範囲である場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、第1走査領域及び第2走査領域は少なくとも一部が重なっていればよい。つまり、送受信回路110は、被検体Pの第1走査領域から造影信号を収集する造影用超音波走査と、第1走査領域と少なくとも一部が重なる第2走査領域から血流信号を収集する血流用超音波走査とを実行する。
特定機能164は、造影画像データ及び血流画像データに基づいて、関心領域(Region Of Interest:ROI)のうち造影信号を有し且つ血流信号を有しない第1領域を特定する。例えば、特定機能164は、造影画像データと血流画像データとの差分により第1領域を特定する。また、特定機能164は、造影信号及び血流信号を有する第2領域を特定する。また、特定機能164は、血流信号を有する領域のうち、閾値より大きい血流速度を有する第3領域を特定する。また、特定機能164は、血流信号を有する領域のうち、閾値より小さい血流速度を有する第4領域を特定する。
図7及び図8を用いて、第1の実施形態に係る特定機能164の処理を説明する。図7及び図8は、第1の実施形態に係る特定機能164の処理を説明するための図である。図7には、特定機能164が第1領域及び第2領域を特定する場合の処理を例示する。図8には、特定機能164が第3領域及び第4領域を特定する場合の処理を例示する。なお、図7及び図8において、血流画像53は、組織画像51の内側に設定された表示用ROIにおける血流を示す。図示の都合上、血流画像53には、均一なハッチングにより2本の血管が図示されているが、実際には血流の方向や血流速度(流速)に応じたカラー(画素値)が割り当てられるのが好適である。
図7の上段には、造影画像52と、組織画像51上に血流画像53を重畳した重畳画像とを例示する。ここで、組織画像51には、例えば、腫瘤の輪郭が描出される。特定機能164は、組織画像51に描出された腫瘤の輪郭に沿って解析用ROI54を設定する。なお、解析用ROI54の設定は、操作者により手動的に行われても良いし、セグメンテーション処理等を利用して自動的に行われても良い。
そして、特定機能164は、同じ時相において収集された造影画像データ及び血流画像データを用いて、特定処理を実行する。例えば、特定機能164は、造影画像データから血流画像データを減算することで、解析用ROI54のうち造影信号を有し、且つ、血流信号を有しない第1領域55を特定する。この領域は、図7の下段において、白抜きの領域として図示される。
また、特定機能164は、造影画像データ及び血流画像データに基づいて、解析用ROI54のうち造影信号を有し、且つ、血流信号を有する第2領域56を特定する。この領域は、図7の下段において、ハッチングの領域として図示される。
また、特定機能164は、血流画像データに基づいて、解析用ROI54のうち、第1閾値より大きい血流速度を有する第3領域を特定する。この第1閾値は、例えば、動脈の流速と静脈の流速との間の値が設定される。つまり、特定機能164により特定される第3領域は、動脈の位置を示す。
また、特定機能164は、例えば、血流画像データに基づいて、解析用ROI54のうち、第2閾値より小さい血流速度を有する第4領域を特定する。この第2閾値は、例えば、動脈の流速と静脈の流速との間の値が設定される。つまり、特定機能164により特定される第4領域は、静脈の位置を示す。なお、第2閾値は、動脈の位置を特定するための第1閾値と同じ値であっても、異なる値であっても良い。
このように、特定機能164は、同じ時相における各種の超音波画像データに基づいて、各種の領域(第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域)を特定する。そして、特定機能164は、他の時相における各種の超音波画像データに基づいて、当該時相における第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域を特定する。これにより、特定機能164は、全ての時相について、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域を特定する。
なお、上述した説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、図7及び図8では、ノイズやアーチファクトの影響が極めて少ない場合を例示して説明したが、ノイズやアーチファクトの影響がある場合には、閾値を設定して所定範囲内の画素値(パワー値)を有する領域を特定しても良い。例えば、特定機能164は、極めて高い画素値を有する画素を排除するため、及び/又は、一定未満の低い画素値を有する画素を排除するために、少なくとも一つの閾値を設定し、ノイズやアーチファクトの影響を除去した上で、上記の特定処理を実行する。
また、例えば、図7及び図8では、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域の4つの領域を特定する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能164は、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域のうち、少なくとも一つの任意の領域について上記の特定処理を実行しても良い。
また、例えば、上記の説明では、超音波画像データが収集された全ての時相について特定処理を実行する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能164は、任意に選択された一つ以上の時相について、上記の特定処理を実行しても良い。
また、例えば、図7及び図8では、画像データに対する処理により各種の領域が特定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能164は、画像データに変換される前の情報(走査領域における各種の信号の分布情報)に基づいて、各種の領域を特定することも可能である。
出力制御機能165は、特定された第1領域に関する出力情報を出力する。例えば、出力制御機能165は、出力情報として、造影画像データ、血流画像データ、及び組織画像データのうち少なくとも一方に第1領域を表示させる。
例えば、出力制御機能165は、特定機能164により特定された各種の領域(第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域)をディスプレイ102に表示させる。この場合、出力制御機能165は、各種の領域を他の領域とは識別可能に表示させる。また、各領域には、画素値(パワー値)、又は、血流の方向や血流速度(流速)に応じたカラー(画素値)が割り当てられるのが好適であるが、各領域の枠線のみを表示させることも可能である。また、各領域は、組織画像51、造影画像52、及び血流画像53等の超音波画像上に重畳表示されるのが好適であるが、各領域のみを描出した画像として表示させることも可能である。
また、例えば、出力制御機能165は、出力情報として、各種の領域(第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域)における輝度値の経時的変化を示すグラフを表示させる。また、出力制御機能165は、出力情報として、各種の領域が所定領域に占める面積比を表示させる。
図9、図10、及び図11を用いて、第1の実施形態に係る出力制御機能165の処理を説明する。図9、図10、及び図11は、第1の実施形態に係る出力制御機能165の処理を説明するための図である。図9、図10、及び図11において、横軸は時間に対応し、縦軸はパワー値又は面積比に対応する。なお、各画素の面積は一定であるので、以下では「面積=画素数(ピクセル数)」として説明する。
図9に示すように、例えば、出力制御機能165は、出力情報として、第1領域における画素値の経時的変化を示すグラフ(Time Intensity Curve:TIC)を表示させる。具体的には、出力制御機能165は、各時相について、第1領域に含まれる複数の画素それぞれのパワー値の平均値を算出する。そして、出力制御機能165は、算出したパワー値の平均値を図9のグラフにプロットすることで、曲線61を表示する。
また、例えば、出力制御機能165は、出力情報として、解析用ROI54のうち第1領域が占める面積比を表示させる。具体的には、出力制御機能165は、各時相について、解析用ROI54に対する第1領域の面積比を算出する。ここで、解析用ROI54の面積(ピクセル数)が「Px1」であり、第1領域の面積が「Px2」である場合には、出力制御機能165は、面積比「Px2/Px1」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px2/Px1」を図9のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフ(曲線62)を表示させる。
なお、図9の説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、図9では、第1領域のTICを表示させる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、第2領域、第3領域、第4領域、血流画像53における血流信号を有する領域、及び、造影画像52における造影信号を有する領域の各領域について、TICを表示することも可能である。また、出力制御機能165は、各領域に含まれる画素値の平均値のみならず、他の算出方法により算出された値をTICとしてプロットしても良い。例えば、出力制御機能165は、各領域の中心画素の画素値をTICとしてプロットすることも可能である。
また、例えば、図9では、解析用ROI54に対する第1領域の面積比「Px2/Px1」を表示させる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、出力情報として、造影信号を有する領域(図7の造影画像52における白抜き領域)のうち第2領域が占める面積比を表示させる、ここで、造影信号を有する領域の面積が「Px3」であり、第2領域の面積が「Px4」である場合には、出力制御機能165は、面積比「Px4/Px3」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px4/Px3」を図9のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフを表示させる。
図10に示すように、出力制御機能165は、血流画像データに基づいて、解析用ROI54のうち血流信号を有する領域を特定する。そして、出力制御機能165は、出力情報として、解析用ROI54のうち血流信号を有する領域のTIC(曲線63)を表示させる。このTICを表示させる処理は、図9の説明と同様であるので説明を省略する。
また、出力制御機能165は、出力情報として、解析用ROI54のうち第2領域が占める面積比を表示させる。ここで、解析用ROI54のうち第2領域の面積が「Px4」である場合には、出力制御機能165は、面積比「Px4/Px1」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px4/Px1」を図9のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフ(曲線64)を表示させる。
ここで、曲線64を表示させるのは、この曲線の周期性に基づいて動脈か静脈かを判断することができるからである。つまり、動脈の太さは拍動に応じて周期的に変化するため、血流画像53における血流信号を有する領域の面積も拍動に応じて周期的に変化する。そこで、操作者は、この曲線64の周期性を確認することで、その血管が動脈か静脈かを容易に判断することができる。なお、この判断は、造影の後期相で特に判別容易となる。
なお、図10の説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、出力情報として、解析用ROI54のうち造影信号を有する領域(図7の造影画像52における白抜き領域)が占める面積比を表示させることも可能である。この場合、出力制御機能165は、面積比「Px3/Px1」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px3/Px1」を図10のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフを表示させる。
また、例えば、図10では、曲線64の周期性を操作者が目視で判断する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、曲線64の周期性を解析することで、その血管が動脈か静脈かを自動的に判定することも可能である。例えば、出力制御機能165は、曲線64の最大値と最小値との差分が閾値以上である場合、又は、曲線64の微分値の最大値が閾値以上である場合、又は、フーリエ解析等によって周期性が確認される場合に、動脈と判定することができる。
図11に示すように、出力制御機能165は、出力情報として、第3領域のTIC(曲線65)を表示させる。このTICを表示させる処理は、図9の説明と同様であるので説明を省略する。
また、出力制御機能165は、出力情報として、第2領域のうち第3領域が占める面積比を表示させる。ここで、第3領域の面積が「Px5」である場合には、出力制御機能165は、面積比「Px5/Px4」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px5/Px4」を図11のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフ(曲線66)を表示させる。
ここで、曲線66を表示させるのは、この曲線の周期性に基づいて動脈か静脈かを判断することができるからである。つまり、動脈は拍動性を有するため、一定以上の流速の血流量が拍動に応じて周期的に変化する。このため、第2領域に対する第3領域の面積比も拍動に応じて周期的に変化する。そこで、操作者は、この曲線66の周期性を確認することで、その血管が動脈か静脈かを容易に判断することができる。なお、この判断は、造影の後期相で特に判別容易となる。
なお、図11の説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、出力情報として、第2領域のうち第4領域が占める面積比を表示させることも可能である。ここで、第4領域の面積が「Px6」である場合には、出力制御機能165は、面積比「Px6/Px4」を算出する。そして、出力制御機能165は、算出した面積比「Px6/Px4」を図11のグラフにプロットすることで、面積比の経時的変化を示すグラフを表示させる。
また、例えば、図11では、曲線66の周期性を操作者が目視で判断する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、曲線66の周期性を解析することで、その血管が動脈か静脈かを自動的に判定することも可能である。例えば、出力制御機能165は、曲線66の最大値と最小値との差分が閾値以上である場合、又は、曲線66の微分値の最大値が閾値以上である場合、又は、フーリエ解析等によって周期性が確認される場合に、動脈と判定することができる。
このように、出力制御機能165は、出力情報として、各種の領域(第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域)における輝度値の経時的変化を示すグラフや、各種の領域が所定領域に占める面積比を表示させる。ここで、出力制御機能165は、上述した複数のグラフのうち、2つ以上のグラフを同時に表示させることができる。同時に表示されるグラフは、操作者の任意に組み合わせ可能である。
また、例えば、出力制御機能165は、TICや面積比をグラフとして表示するだけでなく、数値として表示することも可能である。この場合、出力制御機能165は、各時相の数値の一覧を表示してもよいし、ある一時点(一時相)における数値、ある期間に含まれる数値の平均値などを表示してもよい。
次に、図12を用いて、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理手順を説明する。図12は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理手順を示すフローチャートである。図12に示す処理手順は、例えば、操作者により入力された撮像開始要求を契機として開始される。
図12に示すように、送受信部110は、複合超音波走査を実行する(ステップS101)。そして、組織画像生成機能161は、組織画像生成処理を実行する(ステップS102)。ここで、図13を用いて、図12に示す組織画像生成処理の処理手順を説明する。図13は、第1の実施形態に係る組織画像生成処理における処理手順を示すフローチャートである。
図13に示すように、Bモード処理回路130は、組織画像データの元となる第1のBモードデータを生成する(ステップS201)。そして、組織画像生成機能161は、第1のBモードデータから組織画像データを生成する(ステップS202)。そして、組織画像生成機能161は、組織画像データを記憶回路150に格納し(ステップS203)、組織画像生成処理を終了する。
また、造影画像生成機能162は、造影画像生成処理を実行する(ステップS103)。ここで、図14を用いて、図12に示す造影画像生成処理の処理手順を説明する。図14は、第1の実施形態に係る造影画像生成処理における処理手順を示すフローチャートである。
図14に示すように、Bモード処理回路130は、造影画像データの元となる第2のBモードデータを生成する(ステップS301)。そして、造影画像生成機能162は、第2のBモードデータから造影画像データを生成する(ステップS302)。そして、造影画像生成機能162は、造影画像データを記憶回路150に格納し(ステップS303)、造影画像生成処理を終了する。
また、血流画像生成機能163は、血流画像生成処理を実行する(ステップS104)。ここで、図15を用いて、図12に示す血流画像生成処理の処理手順を説明する。図15は、第1の実施形態に係る血流画像生成処理における処理手順を示すフローチャートである。
図15に示すように、ドプラ処理回路140は、第1走査領域の相関行列を計算する(ステップS401)。そして、ドプラ処理回路140は、相関行列からL組の固有値及び固有ベクトルを計算する(ステップS402)。
そして、ドプラ処理回路140は、L組の固有値及び固有ベクトルに基づいて、MTIフィルタ行列を計算する(ステップS403)。そして、ドプラ処理回路140は、同一位置のデータ長分の反射波データに対してMTIフィルタ処理を行う(ステップS404)。そして、ドプラ処理回路140は、MTIフィルタ処理で出力された出力データを用いて、自己相関演算処理を行う(ステップS405)。そして、ドプラ処理回路140は、自己相関演算処理の結果から血流情報を推定し、血流情報を示すドプラデータを生成する(ステップS406)。
そして、血流画像生成機能163は、血流情報を示すドプラデータから血流画像データを生成する(ステップS407)。すなわち、血流画像生成機能163は、複数回の第1超音波走査の結果に基づく血流画像を生成する。そして、血流画像生成機能163は、血流画像データを記憶回路150に格納し(ステップS408)、血流画像生成処理を終了する。
そして、出力制御機能165は、組織画像、造影画像、及び血流画像を表示させる(ステップS105)。そして、特定機能164は、組織画像上で解析用ROIを設定する(ステップS106)。例えば、特定機能164は、組織画像上で解析用ROIを設定する入力を操作者から受け付けることで、解析用ROIの設定を受け付ける。
そして、出力制御機能165は、各種の領域を特定する(ステップS107)。例えば、出力制御機能165は、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域を特定する。そして、出力制御機能165は、出力情報を出力する(ステップS108)。
なお、図12~図15の説明はあくまで一例であり、上記の説明により限定されるものではない。例えば、図12~図15に示した処理手順はあくまで一例であり、処理内容に矛盾が生じない範囲で順番を任意に入れ替えることが可能である。例えば、図12に示した組織画像生成処理、造影が造成性処理、及び血流が造成性処理は、図示の順序に限らず、任意の順序に入れ替えたり、並列処理として同時に実行したりすることが可能である。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第1の実施形態では、上述したように、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。例えば、超音波診断装置1は、造影剤の滞留箇所に対応する第1領域を特定し、特定した第1領域に関する各種の出力情報を出力する。これにより、超音波診断装置1は、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。
また、超音波診断装置1は、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域を識別可能に表示させる。これにより、操作者は、造影剤の滞留箇所や、その周辺の領域を目視により容易に識別することができ、血流動態を容易に把握することができる。
また、超音波診断装置1は、第1領域、第2領域、第3領域、及び第4領域の各領域について、他の領域に対する面積比を表示する。この面積比は、均一性の指標となる。例えば、面積比「Px2/Px1」が高い場合には、腫瘤における造影剤の滞留箇所の均一性が高いと言える。これにより、操作者は、腫瘤における造影剤の滞留箇所の均一性を容易に把握することができるので、乳房に生じた腫瘤の良悪性判別の一助とすることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の機能に加えて、造影剤バブルの経時的な移動を表すベクトルに基づいてベクトル画像データを生成する機能を備える。これにより、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、第1の実施形態にて説明した解析に加え、造影剤バブルの移動ベクトルに関する情報を出力することが可能となる。
第2の実施形態に係る処理回路160は、造影剤バブルの経時的な移動を表すベクトルに基づいて追跡画像データを生成する追跡画像生成機能を更に備える。追跡画像生成機能は、追跡画像生成部の一例である。
例えば、処理回路160は、特許文献3に記載された技術により、造影剤に含まれる個々のマイクロバブルの移動ベクトルを算出する。そして、処理回路160は、算出した移動ベクトルに関する情報を出力する。
具体的には、処理回路160は、造影画像生成機能162により生成された時系列に並ぶ複数の造影画像52のうち、2つの時相に対応する2つの造影画像52それぞれにおける造影剤バブルの位置を特定する。そして、処理回路160は、2つの造影画像52においてそれぞれ特定した造影剤バブルの位置に基づいて、造影剤バブルの移動を表す移動ベクトルを算出する。そして、処理回路160は、算出した移動ベクトルを示す追跡画像データを生成する。そして、出力制御機能165は、生成された追跡画像データを表示させる。
図16を用いて、第2の実施形態に係る処理回路160の処理を説明する。図16は、第2の実施形態に係る処理回路160の処理を説明するための図である。図16において、バブル追跡画像59は、バブルの移動ベクトルを示す追跡画像データに対応する。
図16に示すように、処理回路160は、バブル追跡画像59を生成する。例えば、このバブル追跡画像59に描出される矢印は、造影剤バブルの移動を表す。具体的には、バブル追跡画像59に描出される矢印の方向は、その時相における造影剤バブルの移動方向を示す。また、バブル追跡画像59に描出される矢印の長さは、その時相における造影剤バブルの移動速度を示す。
例えば、出力制御機能165は、造影画像52上にバブル追跡画像59を重畳させた画像をディスプレイ103に表示させる。また、出力制御機能165は、第1領域における造影剤バブルの平均速度の経時的変化を示すグラフを表示させる。例えば、バブル追跡画像59に描出される移動ベクトルの平均速度を算出し、算出した平均速度をグラフにプロットする。また、出力制御機能165は、血流信号を有する領域における造影剤バブルの平均速度の経時的変化を示すグラフを表示させる。
これにより、超音波診断装置1は、造影信号を有する領域における造影剤バブルの移動ベクトルをリファレンスとして表示させることが可能となる。この結果、操作者は、造影信号を有する領域のうち、造影剤バブルの移動ベクトルが存在しない、又は造影剤バブルの移動速度が充分小さい領域(つまり、移動ベクトルの大きさが閾値未満である領域)を造影剤の滞留箇所として把握することができるので、滞留箇所の解析を行うことができる。
なお、第2の実施形態では、造影剤の流入量が比較的少ない初回の注入(first Injection)における最初の数秒間で適用するか、フラッシュ(Flash)により走査範囲内に存在する造影剤を一旦破壊した直後に適用するのが好適である。或いは、通常の造影エコー法で用いられる造影剤よりも少ない量の造影剤を用いて造影する場合に適用するのが好適である。これは、造影剤の量が多い場合には、注入された造影剤が造影画像データ上で点として検出されず、造影剤が繋がって検出されてしまう可能性があるからである。
また、上記の説明では、造影画像生成機能162により生成された造影画像52を用いて追跡画像データを生成する場合、つまり、同一の第2超音波走査により収集された信号に基づいて、造影画像データ及び追跡画像データを生成する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、追跡画像データを生成するために、送受信部110は、上述した第1超音波走査及び第2超音波走査とは異なる個別の超音波走査(追跡用超音波走査)を実行しても良い。追跡用超音波走査を第1超音波走査及び第2超音波走査とは充分異なる時相に行う場合、生成された追跡画像データは、画像中の特徴に基づいて造影画像データと位置合わせされた上で重畳されるのが好適である。また、追跡用超音波走査を第1超音波走査及び第2超音波走査とほぼ同じ時相に行う場合、位置合わせせずに重畳されるのが好適である。
また、第2の実施形態では、特定機能164は、造影画像データ及び追跡画像データに基づいて、関心領域のうち造影信号を有し、且つ、移動ベクトルの大きさが閾値未満である領域を特定することも可能である。そして、出力制御機能165は、特定した領域に関する出力情報を出力する。
また、図16では、バブル追跡画像59が造影画像52上に重畳される場合を例示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力制御機能165は、バブル追跡画像59及び造影画像52を同時に表示(並列表示)させても良い。また、出力制御機能165は、バブル追跡画像59を、血流画像53等、他の超音波画像とともに表示させることも可能である。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(信号を用いた特定処理)
上述した実施形態では、画像データに対する処理により各種の領域が特定される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能164は、画像データに変換される前の情報(走査領域における各種の信号の分布情報)に基づいて、各種の領域を特定することも可能である。
例えば、特定機能164は、造影信号及び血流信号に基づいて、解析用ROI54のうち造影信号を有し且つ血流信号を有しない第1領域を特定可能である。また、特定機能164は、造影信号及び血流信号に基づいて、解析用ROI54のうち造影信号を有し、且つ、血流信号を有する第2領域56を特定可能である。また、特定機能164は、血流信号に基づいて、解析用ROI54のうち、第1閾値より大きい血流速度を有する第3領域を特定可能である。また、特定機能164は、血流信号に基づいて、解析用ROI54のうち、第2閾値より小さい血流速度を有する第4領域を特定可能である。
(画像解析装置)
また、例えば、上述した実施形態では、開示の技術が超音波診断装置1に適用される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、開示の技術は、医用情報処理装置200に適用されても良い。医用情報処理装置200は、例えば、ワークステーションやPACS(Picture Archiving Communication System)ビューワ等に対応する。なお、医用情報処理装置200は、画像解析装置の一例である。
図17は、その他の実施形態に係る医用情報処理装置200の構成例を示すブロック図である。図17に示すように、医用情報処理装置200は、入力インタフェース201、ディスプレイ202、NWインタフェース203、及び処理回路210を備える。入力インタフェース201、ディスプレイ202、NWインタフェース203、及び処理回路210は、相互に通信可能に接続される。
入力インタフェース201は、マウス、キーボード、タッチパネル等、操作者からの各種の指示や設定要求を受け付けるための入力装置である。ディスプレイ202は、医用画像を表示したり、操作者が入力インタフェース201を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したりする表示装置である。
NWインタフェース203は、医用情報処理装置200と外部装置との間で行われる通信を制御する。具体的には、NWインタフェース203は、外部装置から各種の情報を受信し、受信した情報を処理回路210に出力する。例えば、NWインタフェース203は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
記憶回路204は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。
処理回路210は、医用情報処理装置200における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。処理回路210は、取得機能211、特定機能212、及び出力制御機能213を実行する。取得機能211、特定機能212、及び出力制御機能213は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路210内に記録されている。処理回路220は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能(取得機能211、特定機能212、及び出力制御機能213)を実現する。
取得機能211は、造影画像データ及び血流画像データを取得する。例えば、取得機能211は、外部装置(例えば超音波診断装置1又は医用画像補間装置)から造影画像データ、組織画像データ、及び血流画像データを受信することで取得する。特定機能212は、図1に示した特定機能164と基本的に同様の処理を実行可能である。また、出力制御機能213は、図1に示した出力制御機能165と基本的に同様の処理を実行可能である。これにより、医用情報処理装置200は、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。
なお、図17の説明はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、医用情報処理装置200は、組織画像生成機能161、造影画像生成機能162、及び血流画像生成機能163それぞれに対応する機能を備えていても良い。この場合、取得機能211は、各画像データの元になる反射波データを超音波診断装置1から取得することができる。
また、その他の実施形態に係る医用情報処理装置200は、造影剤が投与された被検体から収集されたハーモニック成分の信号である造影信号に基づいて造影画像データを生成する。また、医用情報処理装置200は、造影剤バブルの経時的な移動を表すベクトルに基づいて追跡画像データを生成する。医用情報処理装置200は、造影画像データ及び追跡画像データに基づいて、関心領域のうち造影信号を有し、且つ、移動ベクトルに起因する信号を有しない領域を特定する。ここで、移動ベクトルに起因する信号とは、例えば、図16の右上図に図示した矢印の画素値に対応する。医用情報処理装置200は、特定した領域に関する出力情報を出力する。これにより、医用情報処理装置200は、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。
また、その他の実施形態に係る医用情報処理装置200は、造影剤が投与された被検体から収集されたハーモニック成分の信号に対し、フレーム方向における信号変化の主成分を除去するフィルタ処理を行うことで推定した血流信号に基づいて血流画像データを生成する。医用情報処理装置200は、造影剤バブルの経時的な移動を表すベクトルに基づいて追跡画像データを生成する。医用情報処理装置200は、血流画像データ及び追跡画像データを表示させる。これにより、医用情報処理装置200は、造影剤の滞留箇所の周辺の血流の移動ベクトルを示すバブル追跡画像を表示するので、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。
また、上述した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
また、上述した実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上述した実施形態で説明した画像解析方法は、予め用意された画像解析プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像解析プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この画像解析プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、造影剤の滞留箇所の解析を行うことができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。