以下、図面を参照して、実施形態に係る医用画像処理装置及び医用画像処理プログラムを説明する。なお、以下の実施形態では、医用画像処理装置の一例として超音波診断装置について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像処理装置としては、超音波診断装置以外にも、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT−CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET−CT装置、又はこれらの装置群等の医用画像診断装置が適用可能である。また、医用画像処理装置としては、医用画像診断装置に限らず、任意の情報処理装置が適用可能である。また、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用可能である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。超音波プローブ101、入力装置102、及びディスプレイ103は、装置本体100に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。
超音波プローブ101は、複数の振動子(例えば、圧電振動子)を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101が有する複数の振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号(エコー信号)として超音波プローブ101が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、第1の実施形態は、図1に示す超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
入力装置102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置であり、図1に示すように、送受信回路110と、信号処理回路120と、画像生成回路130と、画像メモリ140と、記憶回路150と、処理回路160とを有する。送受信回路110、信号処理回路120、画像生成回路130、画像メモリ140、記憶回路150、及び処理回路160は、相互に通信可能に接続される。
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路110は、後述する処理回路160の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信回路110は、被検体Pの2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信回路110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。信号処理回路120により生成されたBモードデータは、画像生成回路130に出力される。
また、信号処理回路120は、フィルタ処理により、検波周波数を変化させることで、映像化する周波数帯域を変えることができる。この信号処理回路120の機能を用いることにより、造影エコー法、例えば、コントラストハーモニックイメージング(CHI:Contrast Harmonic Imaging)を実行可能である。すなわち、信号処理回路120は、造影剤が注入された被検体Pの反射波データから、造影剤である微小気泡(マイクロバブル)を反射源とする反射波データ(高調波成分又は分周波成分)と、被検体P内の組織を反射源とする反射波データ(基本波成分)とを分離することができる。これにより、信号処理回路120は、被検体Pの反射波データから高調波成分又は分周波成分を抽出して、造影画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。造影画像データを生成するためのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表わしたデータとなる。また、信号処理回路120は、被検体Pの反射波データから基本波成分を抽出して、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
なお、CHIを行う際、信号処理回路120は、上述したフィルタ処理を用いた方法とは異なる方法により、ハーモニック成分(高調波成分)を抽出することができる。ハーモニックイメージングでは、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法や位相変調(PM:Phase Modulation)法、AM法及びPM法を組み合わせたAMPM法と呼ばれる映像法が行なわれる。AM法、PM法及びAMPM法では、同一の走査線に対して振幅や位相が異なる超音波送信を複数回(複数レート)行う。これにより、送受信回路110は、各走査線で複数の反射波データを生成し出力する。そして、信号処理回路120は、各走査線の複数の反射波データを、変調法に応じた加減算処理することで、高調波成分を抽出する。そして、信号処理回路120は、高調波成分の反射波データに対して包絡線検波処理等を行なって、Bモードデータを生成する。
例えば、PM法が行われる場合、送受信回路110は、処理回路160が設定したスキャンシーケンスにより、例えば(−1,1)のように、位相極性を反転させた同一振幅の超音波を、各走査線で2回送信させる。そして、送受信回路110は、「−1」の送信による反射波データと、「1」の送信による反射波データとを生成し、信号処理回路120は、これら2つの反射波データを加算する。これにより、基本波成分が除去され、2次高調波成分が主に残存した信号が生成される。そして、信号処理回路120は、この信号に対して包絡線検波処理等を行って、CHIのBモードデータ(造影画像データを生成するためのBモードデータ)を生成する。CHIのBモードデータは、造影剤を反射源とする反射波の信号強度を輝度で表わしたデータとなる。また、CHIでPM法が行われる場合、信号処理回路120は、例えば、「1」の送信による反射波データをフィルタ処理することで、組織画像データを生成するためのBモードデータを生成することができる。
また、信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理回路120は、反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。信号処理回路120により得られた運動情報(血流情報)は、画像生成回路130に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、若しくはこれらの組み合わせ画像としてディスプレイ103にカラー表示される。
画像生成回路130は、信号処理回路120により生成されたデータから超音波画像データを生成する。画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像生成回路130は、信号処理回路120が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像生成回路130は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成回路130は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路130は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成回路130は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路130が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像生成回路130は、信号処理回路120が3次元のデータ(3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータ)を生成した場合、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像生成回路130は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行って、表示用の2次元画像データを生成する。
画像メモリ140は、画像生成回路130が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ140は、信号処理回路120が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ140が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路130を経由して表示用の超音波画像データとなる。
記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路150は、必要に応じて、画像メモリ140が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路150が記憶するデータは、図示しないインタフェースを介して、外部装置へ転送することができる。
処理回路160は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路160は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路120、及び画像生成回路130の処理を制御する。また、処理回路160は、画像メモリ140が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
また、処理回路160は、図1に示すように、特定機能161と、設定機能162と、演算機能163と、表示制御機能164とを実行する。ここで、例えば、図1に示す処理回路160の構成要素である特定機能161、設定機能162、演算機能163、及び表示制御機能164が実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路150)に記録されている。処理回路160は、各プログラムを記憶装置から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路160は、図1の処理回路160内に示された各機能を有することとなる。なお、特定機能161、設定機能162、演算機能163、及び表示制御機能164が実行する各処理機能については、後述する。
なお、図1においては、単一の処理回路160にて、特定機能161、設定機能162、演算機能163、及び表示制御機能164にて行われる処理機能が実現されるものとして説明するが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の基本的な構成について説明した。このような構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、以下に説明する処理により、造影剤の流れを描出することを可能にする。例えば、超音波診断装置1は、造影エコー法にて造影剤として用いられる微小気泡(マイクロバブル)の一つ一つをトラッキング(追跡)することで、造影剤が流れる向き及び移動速度を定量的に表示することができる。
なお、以下の実施形態では、被検体Pに造影剤を注入して撮像された超音波画像データに対して略リアルタイムの処理を行って造影剤の流れを描出する場合を説明する。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、撮影済みの超音波画像データ(若しくは反射波データなど)に対して事後的に処理を行うことも可能である。なお、以下では、造影剤を、単に「バブル」とも表記する。
特定機能161は、第1時相に対応する第1医用画像及び第2時相に対応する第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置を特定する。例えば、特定機能161は、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける組織の動きを補正し、補正後の第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置を特定する。そして、特定機能161は、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける固定位置に基づく高調波成分を除去し、除去後の第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤に基づく高調波成分を用いて造影剤の位置を特定する。なお、特定機能161は、特定部の一例である。
まず、特定機能161は、略リアルタイムで撮像される造影画像データにおいて、組織の動きを補正する処理を実行する。ここで、補正対象となる組織の動きは、例えば、被検体Pの実質組織の動き(体動)や超音波プローブ101のずれ(揺れ)に基づく画像の全体的な位置ずれである。つまり、このような位置ずれがある場合には、造影画像データによって描出されるバブルの位置は、被検体の動きや超音波プローブ101のずれを含んだものとなってしまうため、造影画像データにおける組織の動きを補正する。
例えば、特定機能161は、現在のフレーム(「Nフレーム」とも表記する)の組織画像データと、N−1フレーム目の組織画像データとを、画像メモリ140から読み出す。ここで、組織画像データは、反射波データからフィルタ処理により分離された基本波成分に基づいて生成された超音波画像データ(Bモード画像データ)である。そして、特定機能161は、Nフレーム目の組織画像データと、N−1フレーム目の組織画像データとの相互相関法によるパターンマッチングを行って、Nフレーム目の組織画像データと、N−1フレーム目の組織画像データとの間におけるずれ量を求める。そして、特定機能161は、求めたずれ量を用いて、Nフレーム目の組織画像データの座標系をN−1フレーム目の組織画像データの座標系に一致させるための補正量を算出する。そして、特定機能161は、算出した補正量を用いて、Nフレーム目の造影画像データの座標系を補正する。
このように、特定機能161は、N−1フレーム目とNフレーム目との間における組織の動き(位置ずれ)を、Nフレーム目の造影画像データから除く補正を行う。これにより、特定機能161は、略リアルタイムで連続的に撮像される各フレームの造影画像データの組織の動きを、1フレーム目の組織の位置を基準として補正する。
なお、上記の説明では、フィルタ処理によって得られた基本波成分に基づく組織画像データを用いて処理を行う場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、PM法により造影画像データが生成される場合には、PM法で得られる反射波データから生成された組織画像データであってもよい。例えば、PM法において、(−1,1)の2回の送信により反射波データが得られる場合には、「1」の送信による反射波データから得られるBモード画像データを、上記の組織画像データとして利用しても良い。若しくは、「1」の送信による反射波データから「−1」の送信による反射波データを減算した減算信号から得られるBモード画像データを、上記の組織画像データとして利用しても良い。
また、上記の例では、1フレーム目の組織の位置を基準として補正する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、Nフレーム目の組織の位置を基準として他のフレームの組織の位置を補正する場合であっても良い。
次に、特定機能161は、固定位置に基づく高調波成分を除去する。ここで、固定位置に基づく高調波成分とは、例えば、被検体Pの組織(固定組織)に由来する高調波成分や、体内で停滞してしまったバブル(停滞バブル)に由来する高調波成分を指す。例えば、肝臓組織では、バブルがクッパー細胞に取り込まれて固定化し、停滞バブルとなることが知られている。このため、特定機能161は、固定位置に基づく高調波成分を造影画像データから除去する。
例えば、特定機能161は、組織の動きを補正後の造影画像データについて、フレーム方向の信号の統計的な処理に基づいて、固定位置に基づく高調波成分を除去する。一例としては、特定機能161は、Nフレーム目からN−10フレーム目までの造影画像データにおける各画素の値(信号値)の分散を算出する。ここで、算出された分散値が高い場合には、その画素における信号値が経時的に変化していることを表しているため、その画素の高調波成分は移動体(つまりバブル)に基づいていると判断される。一方、算出された分散値が低い場合には、その画素における信号値が経時的に変化していないことを表しているため、その画素の高調波成分は固定位置に基づくと判断される。そこで、特定機能161は、算出された分散値と閾値とを比較し、閾値より低い分散値が算出された画素の高調波成分を固定位置に基づく高調波成分として除去する。
このように、特定機能161は、組織の動きを補正後の造影画像データから、固定位置に基づく高調波成分を除去する。なお、上記の説明では、Nフレーム目からN−10フレーム目までの信号値を用いて分散値を算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能161は、任意のフレーム数の信号値を用いて分散値を算出してもよい。また、例えば、特定機能161は、任意の2つのフレームの信号値を用いて分散値を算出しても良い。例えば、特定機能161は、Nフレーム目とN−10フレーム目の2つのフレームにおける信号値を用いて分散値を算出しても良い。なお、2つのフレームを用いて分散値を算出する場合には、連続する2つのフレームではなく、数フレーム程度離れた2つのフレームのデータが用いられるのが好ましい。
また、上記の説明では、フレーム方向の信号の統計的な処理として、複数フレームにおける信号値の分散値を算出して比較する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能161は、分散値に代えて、標準偏差や標準誤差などのばらつきを表す統計値を算出し、閾値との比較に用いても良い。
そして、特定機能161は、バブルの位置を特定する。例えば、特定機能161は、固定位置に基づく高調波成分を除去した造影画像データを生成することで、バブルの位置(バブル位置)を特定する。
図2は、第1の実施形態に係る特定機能161の処理を説明するための図である。図2には、組織の動きが補正され、固定位置に基づく高調波成分が除去された造影画像データを例示する。図2において、黒丸印は、バブル位置を示す。
図2に示すように、特定機能161は、造影画像データが生成されるごとに、組織の動きが補正され、固定位置に基づく高調波成分が除去された造影画像データを生成する。例えば、特定機能161は、Nフレーム目の造影画像データが生成されると、Nフレーム目の造影画像データから組織の動きを補正し、固定位置に基づく高調波成分を除去することで、図2に示す造影画像データを生成する。そして、特定機能161は、生成した造影画像データにおいて、閾値以上の輝度を有する画素の位置(座標)を、バブル位置として特定する。図2に示す例では、特定機能161は、黒丸印で示される位置をバブル位置として特定する。なお、造影画像データにおいて、バブルの位置を強調するフィルタ処理によって得られた画素値や信号強度に閾値判定を行なっても良い。
このように、特定機能161は、バブル位置を特定する。なお、上記の説明では、特定機能161により生成される造影画像データを例示したが、例示の造影画像データをディスプレイ103に表示することに限定されるものではない。つまり、特定機能161の処理は、造影画像データをディスプレイ103に表示しなくとも、処理回路160の内部処理として実行可能である。
設定機能162は、第1医用画像における造影剤の位置を参照することにより、第2医用画像に探索範囲を設定する。例えば、設定機能162は、前のフレームのバブル位置に基づいて、現在のフレームに探索範囲を設定する。なお、設定機能162は、設定部の一例である。
図3は、第1の実施形態に係る設定機能162の処理を説明するための図である。なお、図3に示すN−1フレーム目及びNフレーム目の造影画像データには、それぞれ3つのバブルが描出されている。また、N−1フレーム目の造影画像データに描出されたバブルには、バブルID「1」、「2」、及び「3」が付与されている。なお、バブルIDは、バブルを識別するための識別番号である。
図3に示すように、設定機能162は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、N−1フレーム目の各バブル位置に対応する位置をそれぞれ特定する。そして、設定機能162は、特定した各位置を中心とする所定の大きさ及び形状を有する範囲を、探索範囲として設定する。
具体的には、設定機能162は、N−1フレーム目のバブルID「1」の座標を取得する。そして、設定機能162は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルID「1」の座標に対応する位置を、位置P1として特定する。そして、設定機能162は、位置P1を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R1として設定する。また、設定機能162は、N−1フレーム目のバブルID「2」の座標を取得する。そして、設定機能162は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルID「2」の座標に対応する位置を、位置P2として特定する。そして、設定機能162は、位置P2を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R2として設定する。また、設定機能162は、N−1フレーム目のバブルID「3」の座標を取得する。そして、設定機能162は、Nフレーム目の造影画像データにおいて、取得したバブルID「3」の座標に対応する位置を、位置P3として特定する。そして、設定機能162は、位置P3を中心とする所定の大きさの矩形範囲を、探索範囲R3として設定する。
このように、設定機能162は、N−1フレーム目のバブル位置に基づいて、Nフレーム目の造影画像データに探索範囲を設定する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、探索範囲の中心位置は、必ずしもN−1フレーム目のバブル位置に一致していなくても良い。また、例えば、探索範囲の大きさ及び形状は、任意に設定されても良い。また、上記の説明では、造影画像データ上に探索範囲を設定する場合を例示したが、造影画像データをディスプレイ103に表示することに限定されるものではない。つまり、設定機能162の処理は、造影画像データをディスプレイ103に表示しなくとも、処理回路160の内部処理として実行可能である。
演算機能163は、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置に基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。演算機能163は、探索範囲内における造影剤の位置と、探索範囲を設定するために参照した造影剤の位置に基づいてベクトルを算出する。なお、演算機能163は、演算部の一例である。
まず、演算機能163は、バブルの追跡処理(トラッキング)を行う。この追跡処理は、N−1フレーム目のバブル位置と、Nフレーム目のバブル位置との間の対応関係を推定することで、各バブルが移動したのか、消滅したのか、若しくは新規に出現したのかを識別する処理である。
図4は、第1の実施形態に係る演算機能163の処理を説明するための図である。図4の左図には、設定機能162によって探索範囲R1〜R3が設定されたNフレーム目の造影画像データを例示する。
図4の左図に示すように、探索範囲R1の中にはバブルが存在しない。ここで、探索範囲R1は、N−1フレーム目のバブルID「1」の位置に対応する位置P1を中心として設定された範囲である。この場合、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルID「1」に対応するバブルがNフレーム目に存在しないと識別する。言い換えると、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルID「1」のバブルが、Nフレーム目において消滅したものと識別する。この結果、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルID「1」を消滅させる。
また、探索範囲R2の中にはバブルが一つ存在する。ここで、探索範囲R2は、N−1フレーム目のバブルID「2」の位置に対応する位置P2を中心として設定された範囲である。この場合、演算機能163は、探索範囲R2の中のバブルが、N−1フレーム目のバブルID「2」に対応するバブルであると識別する。言い換えると、演算機能163は、探索範囲R2の中のバブルが、位置P2から移動したバブルであると識別する。この結果、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルID「2」を、探索範囲R2の中のバブルに割り当てる(図4の右図参照)。
また、探索範囲R3の中にはバブルが一つ存在する。ここで、探索範囲R3は、N−1フレーム目のバブルID「3」の位置に対応する位置P3を中心として設定された範囲である。この場合、演算機能163は、探索範囲R3の中のバブルが、N−1フレーム目のバブルID「3」に対応するバブルであると識別する。言い換えると、演算機能163は、探索範囲R3の中のバブルが、位置P3から移動したバブルであると識別する。この結果、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルID「3」を、探索範囲R3の中のバブルに割り当てる(図4の右図参照)。
また、探索範囲R1〜R3のいずれにも含まれないバブルが存在する場合、演算機能163は、このバブルは、Nフレーム目において新規に出現したバブルであると識別する。図4の例では、Nフレーム目の右下のバブルがいずれの探索範囲にも含まれないバブルである。この場合、演算機能163は、Nフレーム目の右下のバブルが新規に出現したバブルであると識別する。この結果、演算機能163は、新規のバブルID「4」を発番し、新規に出現したバブルに割り当てる。
なお、探索範囲の中にバブルが二つ以上存在する場合もある。この場合、演算機能163は、探索範囲を設定するために参照したN−1フレーム目のバブル位置との距離が最も近い位置のバブル、若しくは形状が最も類似するバブルを、N−1フレーム目から移動したバブル(移動後のバブル)と識別すればよい。或いは、演算機能163は、距離と形状に基づくスコアが最も優れたバブルを、N−1フレーム目から移動したバブルと識別してもよい。
また、探索範囲の中にバブルが一つしか存在しない場合においても、N−1フレーム目とNフレーム目のバブルの形状を比較する処理を行っても良い。この場合、類似度が低い(所定の閾値未満)の場合には、両者を異なるバブルであると識別する。この場合、演算機能163は、N−1フレーム目のバブルは消滅したものと識別し、Nフレーム目のバブルは新規に出現したバブルであると識別する。
次に、演算機能163は、現在のフレームにおける造影剤の位置と、前のフレームにおける造影剤の位置とに基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。例えば、演算機能163は、N−1フレームからNフレームにかけて継続してバブルIDが割り当てられたバブルについて、ベクトルを算出する。
図4に示す例では、バブルID「2」及び「3」のバブルは、N−1フレームからNフレームにかけて継続してバブルIDが割り当てられたバブルである。この場合、演算機能163は、図4の右図において、位置P2を始点とし、Nフレーム目のバブルID「2」の位置を終点とするベクトルV1を算出する。ここで、ベクトルV1は、バブルが移動した向きと、バブルが移動した移動速度とを示す。ここで、バブルの移動速度は、始点と終点との間の距離を実空間における長さ(ピッチサイズ)に変換し、フレーム間隔で除算することで算出される。バブルID「3」についても同様に、演算機能163は、位置P3を始点とし、Nフレーム目のバブルID「3」の位置を終点とするベクトルV2を算出する。すなわち、演算機能163は、第1時相と第2時相の間の時相差及びベクトルの実空間における長さから造影剤の移動速度を算出する。
このように、演算機能163は、バブルの移動を表すベクトルを算出する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、上記の説明では、造影画像データ上でベクトルを算出する場合を例示したが、造影画像データをディスプレイ103に表示することに限定されるものではない。つまり、演算機能163の処理は、造影画像データをディスプレイ103に表示しなくとも、処理回路160の内部処理として実行可能である。
また、演算機能163は、第1時相又は第2時相と基準時相の間の時相差を算出する。例えば、演算機能163は、撮像開始時点から各バブルが検出された時点までの時間を、バブルの到達時間として算出する。この場合、各フレームの撮影時刻が到達時間に対応する。演算機能163は、各フレームにおいて各バブルが検出されるごとに、各バブルの到達時間を算出する。
なお、上記の説明では、撮像開始時点から各バブルの検出時点までを到達時間として算出する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、所定の時相を基準時相として指定し、指定された基準時相と現在のフレーム(時相)との間の経過時間を算出してもよい。例えば、演算機能163は、造影剤を注入後、バブルが最初に造影画像データ上に検出された時刻を基準時相とし、この基準時相からの経過時間を各バブルの到達時間として算出してもよい。
表示制御機能164は、ベクトルを示す形状を有するインジケータを、所定の医用画像上に表示させる。例えば、表示制御機能164は、演算機能163によって算出されたベクトルの向きを示す矢印形状を有するインジケータを、現在のフレームの組織画像データ上に重畳表示させる。なお、表示制御機能164は、表示制御部の一例である。
図5A、図5B、及び図5Cは、第1の実施形態に係る表示制御機能164によるベクトルの表示例を説明するための図である。図5A〜図5Cには、矢印形状を有するインジケータでベクトルを表示する場合の例を例示する。なお、図5A〜図5Cでは、前のフレームのバブル位置を破線丸印で示し、現在のフレームのバブル位置を黒丸印で示す。
図5Aに示す例では、表示制御機能164は、算出したベクトルを表す矢印(Arrow)を、対応する位置に表示させる。つまり、表示制御機能164は、前のフレームのバブル位置を始点とし、現在のフレームのバブル位置を終点とする矢印で、算出したベクトルを表示する。この場合、矢印が示す方向は、ベクトルの方向に対応する。また、矢印の長さは、前のフレームから現在のフレームまでの間にバブルが移動した距離、つまりバブルが移動した移動速度に対応する。なお、ベクトルを表す矢印は、インジケータの一例である。
図5Bに示す例では、表示制御機能164は、前のフレームのバブル位置と現在のフレームのバブル位置との間の長さを有する矢印を、矢印の中心が現在のフレームのバブル位置に対応するように表示させる。この場合、矢印が示す方向は、ベクトルの方向に対応する。また、矢印の長さは、前のフレームから現在のフレームまでの間にバブルが移動した距離、つまりバブルが移動した移動速度に対応する。
図5Cに示す例では、表示制御機能164は、バブルの移動速度を表す色を有する所定の長さの矢印を、矢印の中心が現在のフレームのバブル位置に対応するように表示させる。この場合、矢印が示す方向は、ベクトルの方向に対応する。また、バブルの移動速度は、0°〜360°に応じた色が割り当てられたカラースケールによって表される。
このように、表示制御機能164は、図5A〜図5Cに示したベクトルの表示パターンのうち、任意の表示パターンを用いてベクトルを表示することができる。なお、上記の説明はあくまで一例であり、図5A〜図5Cの内容に限定されるものではない。例えば、ベクトルから得られる情報は、矢印(Arrow)に限らず、例えば、点や線(線分)によって表示されてもよい。具体的には、表示制御機能164は、ベクトルから得られる向き又は移動速度に応じた色を点や線に割り当てて表示してもよいし、移動速度に応じた長さの線で表示してもよい。なお、点で表示する場合には、表示制御機能164は、現在のフレームにおけるバブル位置に点を表示するのが好ましい。また、線で表示する場合には、表示制御機能164は、現在のフレームにおけるバブルの位置に線の中心点を表示してもよいし、前のフレームのバブルの位置と現在のフレームのバブルの位置とを結ぶ線として表示してもよい。
図6A、図6B、及び図6Cは、第1の実施形態に係る表示制御機能164により表示される表示画像の一例を説明するための図である。図6A〜図6Cには、3つの血管が描出される背景画像(例えば組織画像データ)上で、図5Aの矢印形状で表示する場合を例示する。また、図6A〜図6Cには、連続する3フレーム分の表示画面の遷移を例示する。また、図6A〜図6Cでは、前のフレームで算出されたベクトルを現在のフレームにも保持して表示させる機能(ホールド機能)について説明する。
図6Aに示す例では、ホールド機能を適用しない場合(Hold Off)の表示画像の遷移を例示する。この場合、各フレームの表示画像では、各フレームにおいて算出されたベクトルが表示される。
図6Aに示すように、表示制御機能164は、「Frame 1」の表示画像、「Frame 2」の表示画像、及び「Frame 3」の表示画像を順に表示させる。「Frame 1」の表示画像には、矢印10、矢印20、及び矢印30が表示される。矢印10、矢印20、及び矢印30は、「Frame 1」の表示画像と、前のフレーム(図示しない「Frame 0」)の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。
また、「Frame 2」の表示画像には、矢印11、矢印31、及び矢印40が表示される。矢印11、矢印31、及び矢印40は、「Frame 2」の表示画像と、「Frame 1」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。
また、「Frame 3」の表示画像には、矢印12及び矢印41が表示される。矢印12及び矢印41は、「Frame 3」の表示画像と、「Frame 2」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。
図6Bに示す例では、ホールド機能「All Hold」が適用される場合の表示画像の遷移を例示する。この場合、各フレームの表示画像では、各フレームにおいて算出されたベクトルと、過去の全てのフレームにおいて算出されたベクトルとが表示される。
図6Bに示すように、表示制御機能164は、「Frame 1」の表示画像、「Frame 2」の表示画像、及び「Frame 3」の表示画像を順に表示させる。「Frame 1」の表示画像には、矢印10、矢印20、及び矢印30が表示される。矢印10、矢印20、及び矢印30は、「Frame 1」の表示画像と、前のフレーム(図示しない「Frame 0」)の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。
また、「Frame 2」の表示画像には、矢印10、矢印11、矢印20、矢印30、矢印31、及び矢印40が表示される。このうち、矢印11、矢印31、及び矢印40は、「Frame 2」の表示画像と、「Frame 1」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。また、破線で囲まれる矢印10、矢印20、及び矢印30は、「Frame 1」の表示画像から保持されたベクトルである。
ここで、矢印10の終点の位置と、矢印11の始点の位置とが一致しており、矢印10及び矢印11が繋がった状態で表示される。これは、繋がって表示される矢印10及び矢印11が、一つのバブルの移動を表すことを示す。言い換えると、繋がって表示される矢印10及び矢印11は、前のフレームで矢印10の向き及び移動速度で移動したバブルが、現在のフレームでは矢印11の向き及び移動速度で移動したことを表す。同様に、繋がって表示される矢印30及び矢印31は、前のフレームで矢印30の向き及び移動速度で移動したバブルが、現在のフレームでは矢印31の向き及び移動速度で移動したことを表す。すなわち、表示制御機能164は、前のフレームの矢印10及び矢印30を保持して現在のフレームに表示(累積表示)させることで、時系列に沿ったバブルの軌跡を表示させることができる。
なお、「Frame 2」において算出されたベクトルに対応する矢印40は、前のフレームから保持されたいずれの矢印にも繋がっていない。これは、矢印40に対応するバブルが「Frame 1」において新規に出現したバブルであり、「Frame 2」において1回目の移動をしたバブルであることを示す。
また、「Frame 3」の表示画像には、矢印10、矢印11、矢印12、矢印20、矢印30、矢印31、矢印40、及び矢印41が表示される。このうち、矢印12及び矢印41は、「Frame 3」の表示画像と、「Frame 2」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。また、破線で囲まれる矢印10、矢印11、矢印20、矢印30、矢印31、及び矢印40は、「Frame 2」の表示画像から保持されたベクトルである。
ここで、繋がって表示される矢印10、矢印11、及び矢印12は、矢印10及び矢印11に沿って移動してきたバブルが、現在のフレームにおいて矢印12の向き及び移動速度で移動したことを表す。同様に、繋がって表示される矢印40及び矢印41は、前のフレームで矢印40の向き及び移動速度で移動したバブルが、現在のフレームでは矢印41の向き及び移動速度で移動したことを表す。すなわち、表示制御機能164は、前のフレームの矢印10、矢印11、及び矢印40を保持して現在のフレームに表示させることで、時系列に沿ったバブルの軌跡を表示させることができる。
図6Cに示す例では、ホールド機能「Bubble Hold」が適用される場合の表示画像の遷移を例示する。この場合、各フレームの表示画像では、現在のフレームにおいて算出された矢印(ベクトル)と、現在のフレームの矢印に繋がる矢印とが表示される。
図6Cに示すように、表示制御機能164は、「Frame 1」の表示画像、「Frame 2」の表示画像、及び「Frame 3」の表示画像を順に表示する。ここで、「Frame 1」の表示画像には、矢印10、矢印20、及び矢印30が表示される。矢印10、矢印20、及び矢印30は、「Frame 1」の表示画像と、前のフレーム(図示しない「Frame 0」)の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。
また、「Frame 2」の表示画像には、矢印10、矢印11、矢印30、矢印31、及び矢印40が表示される。矢印11、矢印31、及び矢印40は、「Frame 2」の表示画像と、「Frame 1」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。また、矢印10及び矢印30は、「Frame 1」の表示画像から保持されたベクトルである。
ここで、「Bubble Hold」では、「All Hold」(図6B)の場合と比較して、矢印20が表示されない点が異なる。これは、矢印20に対応するバブルが現在のフレームにおいて消失したことを示す。言い換えると、表示制御機能164は、現在のフレームにおいて算出されたベクトルに対応する矢印11、矢印31、及び矢印40にそれぞれ繋がる矢印を表示させ、矢印11、矢印31、及び矢印40のいずれにも繋がらない矢印を削除する(非表示とする)。具体的には、表示制御機能164は、矢印11に繋がる矢印10を表示させるとともに、矢印31に繋がる矢印30を表示させる。また、「Frame 1」の矢印20は、矢印11、矢印31、及び矢印40のいずれにも繋がらない矢印である。このため、表示制御機能164は、「Frame 1」の矢印20を保持せずに削除する。これにより、表示制御機能164は、現在のフレームで消失したバブルを、矢印の削除により表すことができる。すなわち、表示制御機能164は、バブルの軌跡を表示させるとともに、バブルの消失を表現することができる。
また、「Frame 3」の表示画像には、矢印10、矢印11、矢印12、矢印40、及び矢印41が表示される。矢印12及び矢印41は、「Frame 3」の表示画像と、「Frame 2」の表示画像とを用いて算出されたベクトルを表す。ここで、矢印10、矢印11、及び矢印40は、「Frame 2」の表示画像から保持されたベクトルである。
すなわち、表示制御機能164は、現在のフレームにおいて算出されたベクトルに対応する矢印12及び矢印41にそれぞれ繋がる矢印を表示させ、矢印12及び矢印41のいずれにも繋がらない矢印を削除する。具体的には、表示制御機能164は、矢印12に繋がる矢印10及び11を表示させるとともに、矢印41に繋がる矢印40を表示させる。また、「Frame 2」の矢印30及び31は、矢印12及び矢印41のいずれにも繋がらない矢印である。このため、表示制御機能164は、「Frame 2」の矢印30及び31を保持せずに削除する。これにより、表示制御機能164は、矢印12及び矢印41に対応するバブルの軌跡を表示させるとともに、消失したバブル(矢印30及び31に対応するバブル)を削除(非表示)により表すことができる。
このように、表示制御機能164は、各ベクトルを表すインジケータを、現在の医用画像データ(組織画像データ)上に表示させる。なお、上記の説明はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、図6A〜図6Cでは、各インジケータが、背景画像である組織画像データ上に表示される場合を示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、表示制御機能164は、組織画像データに限らず、THI(Tissue Harmonic Imaging)法による画像データなど、任意の医用画像データを背景画像として用いることができる。また、表示制御機能164は、必ずしも背景画像を表示しなくてもよい。この場合、表示制御機能164は、走査範囲を示す枠線内にインジケータを表示してもよい。なお、背景画像を表示する場合には、特定機能161によって算出される組織の動きの補正量を用いて、背景画像の座標系を補正するのが好適である。
次に、表示制御機能164が、矢印形状とは異なる形状のインジケータを用いてベクトルを表示する場合の表示例について説明する。ここでは、表示制御機能164が、矢印形状とは異なる形状として、点で表されるインジケータを用いてベクトルを表示する場合を説明する。
図7A、図7B、及び図7Cは、第1の実施形態に係る表示制御機能164により表示される表示画像の一例を説明するための図である。図7Aには、バブルの移動速度を表す色が割り当てられた点をインジケータとして表示する場合を例示する。図7Bには、バブルの基準時相からの時相差(到達時間)を表す色が割り当てられた点をインジケータとして表示する場合を例示する。図7Cには、バブルが移動した向きを表す色が割り当てられた点をインジケータとして表示する場合を例示する。なお、図7A〜図7Cには、3つの血管が描出される背景画像上で、図6Bの「All Hold」によって各インジケータが表示される場合を例示する。
図7Aに示すように、表示制御機能164は、バブルの移動速度を表す色が割り当てられた点51、点52、点53、点54、点55、点56、点57、点58、及び点59を表示させる。また、表示制御機能164は、バブルの移動速度に対応するカラースケール(Velocity)を表示させる。ここで、点51、点52、点53、及び点54に対応する各バブルは、他のバブル(点55、点56、点57、点58、及び点59に対応する各バブル)よりも移動速度が速い。このため、点51、点52、点53、及び点54に対応する各バブルは、他のバブルよりも速い移動速度に対応する色が割り当てられる。また、点55及び点56に対応する各バブルは、他のバブル(点51、点52、点53、点54、点57、点58、及び点59に対応する各バブル)よりも移動速度が遅い。このため、点55及び点56に対応する各バブルは、他のバブルよりも遅い移動速度に対応する色が割り当てられる。また、点57、点58、及び点59に対応する各バブルは、点51〜点54に対応する各バブルよりも移動速度が遅く、点55及び点56に対応する各バブルよりも移動速度が速い。このため、点57、点58、及び点59に対応する各バブルは、点51〜点54に対応する各バブルよりも遅い移動速度に対応する色であって、点55及び点56に対応する各バブルよりも速い移動速度に対応する色が割り当てられる。
図7Bに示すように、表示制御機能164は、バブルの到達時間を表す色が割り当てられた点61、点62、点63、点64、点65、点66、点67、点68、及び点69を表示させる。また、表示制御機能164は、バブルの到達時間に対応するカラースケール(Arrival Time)を表示させる。図7に示す例では、点61、点65、及び点67は、1番目のフレームにおいて検出されたバブルである。また、点62、点66、及び点68は、2番目のフレームにおいて検出されたバブルである。また、点63及び点69は、3番目のフレームにおいて検出されたバブルである。また、点64は、4番目のフレームにおいて検出されたバブルである。この場合、表示制御機能164は、1番目、2番目、3番目、4番目の各フレームにおいて各バブルが検出された時間に対応する色を、各バブルに割り当てて表示させる。
図7Cに示すように、表示制御機能164は、バブルが移動した向きを表す色が割り当てられた点71、点72、点73、点74、点75、点76、点77、点78、及び点79を表示させる。また、表示制御機能164は、バブルが移動した向きに対応するカラースケール(Direction)を表示させる。ここで、点71、点72、点73、及び点74に対応する各バブルは、図中の上の方へ移動するバブルである。このため、点71、点72、点73、及び点74に対応する各バブルは、図中の上の方に対応する色が割り当てられる。また、点75及び点76に対応する各バブルは、図中の左上の方へ移動するバブルである。このため、点75及び点76に対応する各バブルは、図中の左上の方に対応する色が割り当てられる。また、点77、点78、及び点79に対応する各バブルは、図中の下の方へ移動するバブルである。このため、点77、点78、及び点79に対応する各バブルは、図中の下の方に対応する色が割り当てられる。
このように、表示制御機能164は、演算機能163によって算出されたベクトルを、矢印、点などの各種の形状を有するインジケータ、若しくは移動速度、向き、及び到達時間などの各種のパラメータに応じた色を有するインジケータを表示させる。なお、上記の説明では、各種の表示例を説明したが、表示制御機能164は、上述した表示例のうち少なくともいずれか一つの表示形態にてベクトルに関する情報を表示すればよい。
図8は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1における処理手順を説明するためのフローチャートである。図8に示す処理手順は、例えば、表示要求を操作者から受け付けた場合に、開始される。
図8に示すように、例えば、入力装置102が表示要求を操作者から受け付けると(ステップS101肯定)、処理回路160は、ステップS102以降の処理を開始する。なお、表示要求を受け付けるまで(ステップS101否定)、処理回路160は、以下の処理を開始せず、待機状態である。
表示要求を受け付けると、送受信回路110は、医用画像を撮像する(ステップS102)。例えば、送受信回路110は、処理回路160の制御により、超音波画像データを撮像するための超音波走査を超音波プローブ101に実行させる。そして、信号処理回路120及び画像生成回路130は、送受信回路110によって収集された反射波データを用いて、造影画像データ及び組織画像データを略リアルタイムに撮像する。
続いて、特定機能161は、組織の動きを補正する(ステップS103)。例えば、特定機能161は、Nフレーム目の組織画像データの座標系をN−1フレーム目の組織画像データの座標系に一致させるための補正量を算出する。そして、特定機能161は、算出した補正量を用いて、Nフレーム目の造影画像データの座標系を補正する。
そして、特定機能161は、固定位置に基づく高調波成分を除去する(ステップS104)。例えば、特定機能161は、組織の動きを補正後の造影画像データについて、フレーム方向の信号の統計的な処理に基づいて、固定位置に基づく高調波成分を除去する。
そして、特定機能161は、造影剤(バブル)の位置を特定する(ステップS105)。例えば、特定機能161は、固定位置に基づく高調波成分を除去した造影画像データを生成することで、バブル位置を特定する。
そして、設定機能162は、前のフレームの造影剤の位置に基づいて、現在のフレームに探索範囲を設定する(ステップS106)。例えば、設定機能162は、N−1フレーム目のバブル位置に基づいて、Nフレーム目の造影画像データに探索範囲を設定する。
そして、演算機能163は、探索範囲内の造影剤の位置と、前のフレームの造影剤の位置とに基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する(ステップS107)。例えば、演算機能163は、N−1フレームからNフレームにかけて継続してバブルIDが割り当てられたバブルについて、ベクトルを算出する。
そして、表示制御機能164は、ベクトルを示すインジケータを、医用画像上に表示させる(ステップS108)。例えば、表示制御機能164は、演算機能163によって算出されたベクトルを、矢印、点などの各種の形状を有するインジケータ、若しくは移動速度、向き、及び到達時間などの各種のパラメータに応じた色を有するインジケータを表示させる。また、例えば、表示制御機能164は、ベクトルを示すインジケータを、組織画像データなどの背景画像上に表示させる。
そして、処理回路160は、撮像が終了されたか否かを判定する(ステップS109)。処理回路160は、撮像が終了されるまで(ステップS109否定)、ステップS102の処理へ移行して、ステップS102〜ステップS108の処理を繰り返し実行する。そして、撮像が終了された場合には(ステップS109肯定)、処理回路160は、図8の処理手順を終了する。
なお、上記の説明はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ステップS103及びステップS104の処理は、必ずしも実行されなくてもよい。また、略リアルタイムの処理ではなく、撮影済みの超音波画像データを用いて事後的に処理を行う場合には、ステップS102の医用画像を撮像する処理は実行されない。
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、特定機能161は、各フレームの超音波画像データにおける造影剤の位置を特定する。そして、演算機能163は、特定された各フレームにおける造影剤の位置に基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出する。そして、表示制御機能164は、算出されたベクトルを示す形状を有するインジケータを、所定の背景画像上に表示させる。これによれば、超音波診断装置1は、造影剤の流れを描出することができる。例えば、超音波診断装置1は、造影エコー法にて造影剤として用いられるバブルの一つ一つをトラッキングすることで、造影剤が流れる向き及び移動速度を定量的に表示することができる。
例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、血管を全体的に描出する従来の造影エコー法やMFI(Micro Flow Imaging)とは異なり、造影剤として用いられるバブルの一つ一つをトラッキングする。これにより、超音波診断装置1は、造影剤であるバブルが流れる向き及び移動速度をベクトルとして定量的に表示することができる。
また、例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、ベクトルを表す矢印を繋げて表示することで、複数フレームにわたって移動する造影剤の流れの軌跡を表示することができる。これにより、例えば、超音波診断装置1は、腫瘍組織への血流の流入や流出を描出することができる。腫瘍組織への血流の流入や流出を明確にすることで、例えば、肝動脈塞栓術における治療箇所の特定や、腫瘍の種類の特定での活用が期待される。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、更に、速度、時間、若しくは方向に関する条件を設定することで、設定された条件を満たすバブルを選択的に表示させる場合を説明する。
図9は、第2の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、処理回路160が条件設定機能165を更に備える点と、表示制御機能164の処理の一部が相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
条件設定機能165は、例えば、速度、時間、若しくは方向に関する条件を設定する。例えば、条件設定機能165は、表示画像に表示されるバブルの移動速度の範囲(下限値及び上限値)を指定する旨の操作を操作者から受け付けて、受け付けた操作にて指定された移動速度の範囲を設定する。
そして、表示制御機能164は、バブルの移動速度、到達時間、若しくは移動した向きが、条件設定機能165によって設定された条件を満たす場合に、バブルに関するインジケータを表示させる。例えば、表示制御機能164は、条件設定機能165によって設定された移動速度の範囲内に含まれる移動速度のバブルについて、インジケータを表示させる。
図10は、第2の実施形態に係る条件設定機能165の処理を説明するための図である。図10の上図には、バブルの移動速度を表す色が割り当てられた点をインジケータとして表示する場合を例示する(図7Aと同様)。なお、図10の上図では、速度に関する条件として、移動速度の下限値「0.0」及び上限値「10.0」が設定されている場合を例示する。
図10に示すように、操作者が速度条件を変更する指示を入力すると、条件設定機能165は、入力された指示に応じて速度条件を変更する。ここで、例えば、移動速度の範囲の下限値が「0.0」から「3.0」に上昇させる変更が行われると、条件設定機能165は、移動速度の範囲の下限値を「0.0」から「3.0」に上昇させる変更を行う。
そして、表示制御機能164は、速度条件の変更に応じて、バブルの移動速度に対応するカラースケールを変更する。図10に示す例では、表示制御機能164は、カラースケールの下限値を「0.0」から「3.0」に上昇させる変更を行う。また、表示制御機能164は、変更後のカラースケールを用いて、各点に割り当てられる色を変更する。例えば、点55及び点56の移動速度が「3.0」より低い値であって場合には、図10の下図に示すように、表示制御機能164は、点55及び点56を非表示とする。また、表示制御機能164は、点51、点52、点53、点54、点57、点58、及び点59に割り当てられる色を変更する。
このように、条件設定機能165は、速度に関する条件を設定する。そして、表示制御機能164は、バブルの移動速度が設定された条件を満たす場合に、バブルに関するインジケータを表示させる。なお、上記の説明では、一例として、速度に関する条件が設定される場合を説明したが、これに限らず、例えば、時間、若しくは方向に関する条件が設定される場合にも同様である。また、図10では、下限値及び上限値が設定される場合を説明したが、これに限らず、下限値及び上限値のうちいずれか一方のみが設定される場合であっても良い。
すなわち、第2の実施形態に係る超音波診断装置1において、条件設定機能165は、速度に関する条件を設定する。そして、特定機能161は、第1時相に対応する第1医用画像及び第2時相に対応する第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置を特定する。そして、演算機能163は、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置に基づいて、造影剤の移動を表すベクトルを算出し、第1時相と第2時相の間の時相差及びベクトルの実空間における長さから造影剤の移動速度を算出する。そして、表示制御機能164は、移動速度が条件を満たす場合に、第1医用画像又は第2医用画像における造影剤の位置を示すインジケータを、所定の医用画像上に表示させる。これによれば、超音波診断装置1は、所望の条件を満たす移動速度のバブルを表示させることができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、ベクトルを算出することなく到達時間を表すインジケータを表示する場合を説明する。
図11は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、処理回路160が設定機能162及び演算機能163を備えない点と、表示制御機能164における処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
表示制御機能164は、第1時相と基準時相の間の時相差を表す第1の色を有し、第1医用画像における造影剤の位置を示す第1インジケータと、第2時相と基準時相の間の時相差を表す第2の色を有し、第2医用画像における前記造影剤の位置を示す第2インジケータを、所定の医用画像上に表示させる。なお、以下では、バブルの到達時間(時相差)として、撮像開始時点から各バブルが検出された時点までの時間が用いられる場合を説明するが、これに限らず、任意の基準時相と各バブルが検出された時点との間の時間を到達時間として算出してもよい。
例えば、表示制御機能164は、特定機能161によってバブル位置が特定されるごとに、バブル位置が特定されたフレームの撮像時刻に応じた色を、各バブル位置を示すインジケータ(例えば、点の画像)に割り当てる。具体的には、表示制御機能164は、図7Bで示したように、1番目のフレームにおいて検出されたバブル(点61、点65、及び点67)に対して、1番目のフレームの撮影時刻に応じた色を割り当てる。また、表示制御機能164は、2番目のフレームにおいて検出されたバブル(点62、点66、及び点68)に対して、2番目のフレームの撮影時刻に応じた色を割り当てる。また、表示制御機能164は、3番目のフレームにおいて検出されたバブル(点63及び点69)に対して、3番目のフレームの撮影時刻に応じた色を割り当てる。また、表示制御機能164は、4番目のフレームにおいて検出されたバブル(点64)に対して、4番目のフレームの撮影時刻に応じた色を割り当てる。
このように、表示制御機能164は、各バブルの到達時間に応じた色を割り当てたバブル位置を、複数フレームにわたって累積表示させる。
図12は、第3の実施形態に係る超音波診断装置1における処理手順を説明するためのフローチャートである。図12に示す処理手順は、例えば、表示要求を操作者から受け付けた場合に、開始される。なお、図12に示す処理手順において、ステップS201〜ステップS205の処理は、図8に示したステップS101〜ステップS105の処理と同様であるので、説明を省略する。
図12に示すように、例えば、表示制御機能164は、特定機能161によって造影剤の位置が特定されると、造影剤の到達時間を示すインジケータを、医用画像上に表示させる(ステップS206)。例えば、表示制御機能164は、各バブルの到達時間に応じた色を割り当てたバブル位置を、複数フレームにわたって累積表示させる。
そして、処理回路160は、撮像が終了されたか否かを判定する(ステップS207)。処理回路160は、撮像が終了されるまで(ステップS207否定)、ステップS202の処理へ移行して、ステップS202〜ステップS206の処理を繰り返し実行する。そして、撮像が終了された場合には(ステップS207肯定)、処理回路160は、図12の処理手順を終了する。
このように、第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、ベクトルを算出することなく、到達時間を表すインジケータを複数フレームにわたって累積表示することができる。
なお、第3の実施形態に係る超音波診断装置1は、第2の実施形態において説明した条件設定機能165を更に備えることにより、設定された条件を満たすインジケータのみを表示させてもよい。すなわち、表示制御機能164は、第1時相と基準時相の間の時相差が条件を満たす場合に、第1のインジケータを表示させ、第2時相と基準時相の間の時相差が条件を満たす場合に、第2のインジケータを表示させる。図7Bの例において、3番目のフレームと4番目のフレームの撮像時刻に対応する時間を表示対象とする旨の条件が設定された場合には、表示制御機能164は、点63、点64、及び点69を表示させ、点61、点62、点65、点66、点67、及び点68を非表示とする。
(第4の実施形態)
第1の実施形態では、バブルが移動する向きが、画像平面上の0°〜360°の角度により表される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、基準位置を設定し、基準位置に対する方向(角度)で表すことも可能である。
図13は、第4の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、図1に例示した超音波診断装置1と同様の構成を備え、処理回路160が移動方向決定機能166を更に備える点と、表示制御機能164の処理の一部が相違する。そこで、第4の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
移動方向決定機能166は、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置と、第1医用画像又は第2医用画像における基準位置とに基づいて、基準位置に対する造影剤の移動方向を決定する。
図14A及び図14Bは、第4の実施形態に係る移動方向決定機能166の処理を説明するための図である。図14A及び図14Bでは、前のフレームのバブル位置及び現在のフレームのバブル位置を白丸印で示し、基準位置を黒丸印で示す。なお、基準位置としては、例えば、腫瘍の中心などが指定されるのが好ましいが、如何なる点であっても指定可能である。また、基準位置は、操作者によって用手的に設定されても良いし、画像(例えば、組織画像データ)上における画像処理により自動的に設定されても良い。
図14Aに示す例では、基準位置に対するバブルの移動方向を、角度θで表す場合を説明する。ここで、角度θは、前のフレームのバブル位置と基準位置とを結ぶ直線と、バブルの移動を表すベクトルとがなす角で表される。角度θは、バブルが基準位置に近づくほど0°に近い値となり、バブルが基準位置から遠ざかるほど180°に近い値となる。この場合、表示制御機能164は、前のフレームのバブル位置と基準位置とを結ぶ直線と、バブルの移動を表すベクトルとがなす角を算出することで、基準位置に対するバブルの移動方向を表す角度θを算出する。なお、バブルの移動を表すベクトルは、第1の実施形態において説明した処理により算出される。
図14Bに示す例では、基準位置に対するバブルの移動方向を、近づいたか遠ざかったかに応じて2値化して表す場合を説明する。この場合、表示制御機能164は、前のフレームのバブル位置と基準位置との間の距離LN−1と、現在のフレームのバブル位置と基準位置との間の距離LNとを比較する。そして、表示制御機能164は、距離LN−1>距離LNを満たす場合には、バブルが基準位置に近づいたと判定し、距離LN−1≦距離LNを満たす場合には、バブルが基準位置から遠ざかったと判定する。図14Bの例では、距離LN−1>距離LNを満たすので、表示制御機能164は、Nフレーム目においてバブルが基準位置に近づいたと判定する。
このように、移動方向決定機能166は、基準位置に対するバブルの移動方向を決定する。なお、上記の説明はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、移動方向決定機能166は、図14Aの例において、角度θを算出した後に、角度θが90°より小さいか大きいかに応じて2値化して表しても良い。また、移動方向決定機能166は、図14Bの例では、距離LN−1=距離LNとなる場合には、バブルが基準位置から遠ざかったと判定される場合を説明したが、「基準位置に対して移動方向を有しない」と判定してもよい。
表示制御機能164は、移動方向を表す色を有し、第1医用画像又は第2医用画像における造影剤の位置を示すインジケータ、或いは、移動方向を表す色を有し、第1医用画像及び第2医用画像それぞれにおける造影剤の位置に基づいて算出されたベクトルを示す形状を有するインジケータを、所定の医用画像上に表示させる。
図15A及び図15Bは、第4の実施形態に係る表示制御機能164により表示される表示画像の一例を説明するための図である。図15Aには、基準位置に対するバブルの移動方向に応じた色が割り当てられた点をインジケータとして表示する場合を例示する。図15Bには、基準位置に対するバブルの移動方向に応じた色が割り当てられ、バブルが移動した向きを示す矢印をインジケータとして表示する場合を例示する。図15A及び図15Bには、腫瘍組織の輪郭80と腫瘍組織の中心位置81が描出される背景画像(例えば、組織画像データ)上で、「All Hold」によって各インジケータが表示される場合を例示する。なお、図15A及び図15Bでは、腫瘍組織の中心位置81が基準位置として設定される場合を説明する。
図15Aに示すように、表示制御機能164は、時系列に沿って、点82、点83、点84、点85、及び点86の位置を順に移動するバブルの各位置を表示する。ここで、点82、点83、点84、点85、及び点86には、腫瘍組織の中心位置81(基準位置)に対するバブルの移動方向に応じた色が割り当てられる。例えば、点82及び点83は、中心位置81に近づく方向へ移動するバブルである。このため、点82及び点83には、0°に近い色(例えば、青)が割り当てられている。また、例えば、点85及び点86は、中心位置81から遠ざかる方向へ移動するバブルである。このため、点85及び点86には、180°に近い色(例えば、赤)が割り当てられている。また、例えば、点84は、中心位置81に対して訳90°の方向へ移動するバブルである。このため、点84には、90°に近い色(例えば、緑)が割り当てられている。
図15Bに示すように、表示制御機能164は、時系列に沿って、矢印90、矢印91、矢印92、矢印93、及び矢印94の中心位置を順に移動するバブルの移動を表示する。ここで、矢印90、矢印91、矢印92、矢印93、及び矢印94には、腫瘍組織の中心位置81(基準位置)に対するバブルの移動方向に応じた色が割り当てられる。例えば、矢印90及び矢印91は、中心位置81に近づく方向へ移動するバブルである。このため、矢印90及び矢印91には、0°に近い色(例えば、青)が割り当てられている。また、例えば、矢印93及び矢印94は、中心位置81から遠ざかる方向へ移動するバブルである。このため、矢印93及び矢印94には、180°に近い色(例えば、赤)が割り当てられている。また、例えば、矢印92は、中心位置81に対して訳90°の方向へ移動するバブルである。このため、矢印92には、90°に近い色(例えば、緑)が割り当てられている。これにより、表示制御機能164は、基準位置に対する移動方向と、バブルが移動する向きとを、一つのインジケータで表示することができる。
図16は、第4の実施形態に係る超音波診断装置1における処理手順を説明するためのフローチャートである。図16に示す処理手順は、例えば、表示要求を操作者から受け付けた場合に、開始される。なお、図16に示す処理手順において、ステップS301〜ステップS305の処理は、図8に示したステップS101〜ステップS105の処理と同様であるので、説明を省略する。
図16に示すように、例えば、移動方向決定機能166は、特定機能161によって造影剤の位置が特定されると、基準位置に対する造影剤の移動方向を決定する(ステップS306)。例えば、移動方向決定機能166は、前のフレームのバブル位置と基準位置とを結ぶ直線と、バブルの移動を表すベクトルとがなす角を算出することで、基準位置に対するバブルの移動方向を表す角度θを算出する。
そして、表示制御機能164は、造影剤の移動方向を表すインジケータを、医用画像上に表示させる(ステップS307)。例えば、表示制御機能164は、基準位置に対するバブルの移動方向に応じた色が割り当てられた点、若しくは矢印を、インジケータとして累積表示させる。
そして、処理回路160は、撮像が終了されたか否かを判定する(ステップS308)。処理回路160は、撮像が終了されるまで(ステップS308否定)、ステップS302の処理へ移行して、ステップS302〜ステップS307の処理を繰り返し実行する。そして、撮像が終了された場合には(ステップS308肯定)、処理回路160は、図16の処理手順を終了する。
このように、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、基準位置に対する方向(角度)で表すことができる。なお、第4の実施形態に係る超音波診断装置1は、第2の実施形態において説明した条件設定機能165を更に備えることにより、設定された条件を満たすインジケータのみを表示させてもよい。すなわち、表示制御機能164は、基準位置に対する方向が条件を満たすバブルのインジケータを表示させ、基準位置に対する方向が条件を満たさないバブルのインジケータを非表示とする。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(プロトコル)
例えば、上記の実施形態に係る処理(バブルをトラッキングする処理)は、造影剤の流入量が比較的少ない初回の注入(first Injection)における最初の数秒間で適用するか、フラッシュ(Flash)により走査範囲内に存在する造影剤を一旦破壊した直後に適用するのが好適である。或いは、通常の造影エコー法で用いられる造影剤よりも少ない量の造影剤を用いて造影する場合に適用するのが好適である。これは、造影剤の量が多い場合には、注入された造影剤が造影画像データ上で点として検出されず、造影剤が繋がって検出されてしまう可能性があるからである。
また、フラッシュしてからバブルをトラッキングする処理を繰り返し行って、繰り返し得られたベクトルを示すインジケータを重畳表示させてもよい。これにより、超音波診断装置1は、サンプル数を増やすことができるので、より正確なバブルの軌跡を表示することができる。また、この場合、呼吸などの体動によって位置ずれが生じる可能性があるため、上述した組織の動きを補正する処理を適用するか、超音波プローブ101に磁気センサなどの位置センサを取り付けることで組織の動きを補正するのが好適である。
(表示パターンの組み合わせ)
また、例えば、上記の実施形態にて説明した表示パターンのうち任意の2つの表示パターンを、左右のツインビュー(Twin View)により表示してもよし、重畳表示しても良い。例えば、バブルの移動速度、バブルが移動した方向、バブルの到達時間、及び基準位置に対する移動方向のうち任意のパラメータに応じた色を有する点又は矢印による各種の表示パターンを適宜組み合わせて同時に表示してもよいし、重畳表示しても良い。
(MFIとの併用)
また、上記の実施形態では、背景画像として、組織画像データやTHI法による画像データが表示される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、MFIやパラメトリックMFIによる画像データを背景画像として表示させ、この背景画像上にインジケータを表示させてもよい。
(ボリュームデータへの適用)
また、上記の実施形態では、2次元の超音波画像データにおける処理を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではなく、3次元の超音波画像データ(ボリュームデータ)に対しても同一の処理を適用可能である。
例えば、2次元アレイプローブやメカニカルプローブによって収集されても良いし、2次元の超音波画像データから磁気センサーによる位置情報や手動により再構成されてもよい。そして、超音波診断装置1は、得られた3次元の超音波画像データに対して、特定機能161、設定機能162、演算機能163、及び表示制御機能164の各処理を実行する。これにより、超音波診断装置1は、ベクトルを表す矢印を立体的に表示することが可能となる。なお、この場合、背景画像は表示されなくてもよいし、3次元の組織画像データを所定の透過率でボリュームレンダリングした画像を背景として表示してもよい。また、バブルが移動した向きに応じた色を割り当てて表示する場合には、図7CのDirectionのカラーコードも3次元的に表示される。
上記説明において用いた「プロセッサ(回路)」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
また、上記の実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上記の実施形態で説明した医用画像処理方法は、予め用意された医用画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この医用画像処理方法は、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この医用画像処理方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
また、上記の実施形態において、略リアルタイムとは、処理対象となる各データが発生するたびに、即時に各処理を行うことを指す。つまり、リアルタイムとは、被検体が撮像される時刻と画像が表示される時刻とが完全に一致する場合に限らず、画像生成処理に要する時間によって画像がやや遅れて表示される場合を含む。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、造影剤の流れを描出することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。