以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
本実施形態に係る超音波診断装置1を図1のブロック図を参照して説明する。本実施形態に係る超音波診断装置1は、例えば、エラストグラフィを実行可能な装置である。エラストグラフィとは、生体組織の硬さを測定し、測定した固さの分布を映像化する技術である。例えば、本実施形態に係る超音波診断装置1は、音響放射力を与えて生体組織に変位を発生させることでエラストグラフィを実行する。
図1に示されるように、超音波診断装置1は、装置本体10、超音波プローブ70、表示機器50、及び入力装置60を備える。装置本体10は、ネットワーク100を介して外部装置40と接続される。また、装置本体10は、表示機器50、及び入力装置60と接続される。
超音波プローブ70は、複数の圧電振動子、整合層、及びバッキング材等を有する。整合層は、圧電振動子に設けられる。バッキング材は、圧電振動子によって発生する超音波の後方への伝播を防止する。超音波プローブ70は、装置本体10と着脱自在に接続される。複数の圧電振動子は、装置本体10が有する超音波送信回路11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ70には、例えば、画像をフリーズさせるボタンなどが配置されてもよい。
超音波プローブ70から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波(エコー)として超音波プローブ70が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波により発生する受信信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の受信信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移を受ける。超音波プローブ70は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号(受信信号)に変換する。これにより、受信信号が発生される。なお、受信信号は、反射波信号と換言してもよい。超音波プローブ70は、例えば、複数の圧電振動子が所定の方向に沿って配列された1Dアレイプローブ、複数の圧電振動子がマトリックス状に配列された2Dアレイプローブ、又は圧電振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なメカニカル4Dプローブ等である。
図1に示される装置本体10は、超音波プローブ70が受信した受信信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、図1に示すように、超音波送信回路11、超音波受信回路12、処理回路15、内部記憶回路17、画像メモリ18、画像データベース19、入力インタフェース20、及び通信インタフェース21を含む。
超音波送信回路11は、超音波プローブ70に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路11は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、及びパルサ回路等により実現される。トリガ発生回路は、処理回路15の制御の下、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ70から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、トリガ発生回路が発生する各レートパルスに対し与える。パルサ回路は、処理回路15の制御の下、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ70に駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
また、本実施形態に係る超音波送信回路11は、生体内の関心領域(ROI:Region Of Interest)の内部又は近傍に、プッシュパルスを超音波プローブ70から送信させる。このプッシュパルスは、例えば通常の超音波パルスと比して波連長の長いパルスである。プッシュパルスの音響放射力により、生体内にせん断波(Shear Wave)が生じ、このせん断波が生体内を伝播することにより、プッシュパルスの送信位置から離れた位置において変位が生じる。そして、本実施形態に係る超音波送信回路11は、プッシュパルスにより発生する、関心領域内の各サンプル点における変位を観測するためのトラッキングパルスを、関心領域に対して超音波プローブ70から複数回送信させる。サンプル点は、例えば、被検体Pの関心領域内の位置を表す。
ここで、1回のプッシュパルスの送信で発生するせん断波は、伝播とともに、減衰する。広い領域に渡ってせん断波の伝播の様子を観測しようとした場合、ある特定の位置において送信されたプッシュパルスにより発生したせん断波は、伝播に伴い減衰し、プッシュパルスの送信位置から十分離れると、やがて観測が困難となる。
かかる場合、プッシュパルスを方位方向(ラテラル方向)における複数の位置において送信する必要がある。例えば、関心領域は、方位方向に沿って複数の領域に分割される。超音波送信回路11は、分割された各領域(以下、分割領域と表記)においてトラッキングパルスを送受信する前に、それぞれ異なる位置に対してプッシュパルスを送信し、せん断波を発生させる。この際、典型的には、プッシュパルスの送信位置は、各分割領域の近傍に設定される。並列同時受信数(一度の受信タイミングで生成する受信ビームの数)が少数に限定されている場合、超音波送信回路11は、プッシュパルスを送信した後に、ある分割領域の各サンプル点でトラッキングパルスを複数回送信する処理を、方位方向に沿って複数の分割領域それぞれで実行する。例えば、超音波送信回路11は、複数の分割領域それぞれで、プッシュパルスを送信した後に、トラッキングパルスを送受信する。
超音波受信回路12は、超音波プローブ70が受信した受信信号に対して各種処理を施すプロセッサである。超音波受信回路12は、例えば、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、及び加算器等により実現される。アンプ回路は、超音波プローブ70が受信した受信信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された受信信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた複数のデジタル信号を加算する。加算器の加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が発生する。この受信信号には、例えば、生体組織間の音響インピーダンスの差を反映した振幅情報と、生体組織の動き、例えば運動又は移動速度等を反映した位相情報とが含まれる。
また、本実施形態に係る超音波受信回路12は、超音波送信回路11により関心領域に対して送信されたトラッキングパルスに対する受信信号に各種処理を施す。
処理回路15は、例えば、超音波診断装置1の中枢として機能するプロセッサである。処理回路15は、内部記憶回路17に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、処理回路15は、信号処理機能151(信号処理部)、計算機能153(計算部)、画像生成機能155(画像生成部)、表示制御機能157(表示制御部)、及びシステム制御機能159を有する。
信号処理機能151は、超音波受信回路12により生成された受信信号に対して各種の信号処理を行う機能である。
例えば、信号処理機能151の実行により処理回路15は、超音波受信回路12から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数増幅処理等を施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元又は3次元的に分布する超音波走査線上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
また、信号処理機能151の実行により処理回路15は、超音波受信回路12から受け取った受信信号を解析して、例えば、関心領域内の複数のサンプル点それぞれにおける移動体(血液又は組織)の移動速度を計算し、計算した移動速度に基づいてドプラデータを生成する。生成されたドプラデータは、2次元又は3次元的に分布する超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
また、本実施形態に係る信号処理機能151の実行により処理回路15は、超音波受信回路12により生成された受信信号に基づいて、反射波のうち、特定の周波数成分に対応する周波数信号に基づく周波数信号データを生成する。具体的には、処理回路15は、例えば、周波数フィルタを用いて、反射波の基本波成分に対応する基本波信号、又は、高調波成分に対応する高調波信号を生成する。周波数フィルタは、例えば特定の周波数成分を抽出するバンドパスフィルタ、又は、ハイパスフィルタである。また、周波数フィルタは、反射波が発生する深さに応じた受信周波数を通過域とするように少なくとも1つ以上設けられる。即ち、処理回路15は、受信信号を、深さに応じた周波数フィルタで濾波することによって、特定の周波数成分を抽出する。
また、信号処理機能151の実行により処理回路15は、例えば位相変調(PM:Phase Modulation)法、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)法、並びに、PM法及びAM法を組み合わせた変調法等を用いて反射波の高調波信号に基づく高調波信号データを生成する。AM法、PM法、及びPM法及びAM法を組み合わせた変調法では、同一のサンプル点に対して振幅、及び/又は、位相が異なる超音波送信を複数回行う。このとき、処理回路15は、超音波受信回路12により生成された各サンプル点の複数の受信信号を、変調法に応じた加算処理又は/及び減算処理することで、高調波成分を抽出する。以下、PM法が用いられる場合について具体的に説明する。
例えば、信号処理機能151の実行により処理回路15は、超音波プローブ70により同一方向に続けて位相がお互いに180度異なる2回の超音波送信が行われ、この2回の超音波送信に対して生成された2つの受信信号を減算、又は、加算することにより、基本波成分及び奇数次高調波成分、又は、偶数次高調波成分のみ抽出する。処理回路15は、2つの受信信号を減算処理すると、振幅が2倍の基本波成分、及び、奇数次高調波成分が抽出される。また、2つの受信信号を加算処理すると、振幅が2倍の偶数次高調波成分が抽出される。処理回路15は、抽出された基本波成分及び奇数次高調波成分、又は、偶数次高調波成分に対し、例えば、さらに周波数フィルタを用いて、反射波の高調波成分に対応する高調波信号を生成する。処理回路15は、抽出された基本波成分及び奇数次高調波成分に対し、さらに周波数フィルタを用いて、基本波成分に対応する基本波信号を生成してもよい。尚、位相変調法において、超音波の送信回数は2回に限られない。例えば、お互いに120度位相が異なる超音波を3回送信させて、3回の送信に対する受信信号を合成することにより3次高調波成分を抽出するようにしてもよい。例えば、3回の送信のうち1回の送信に対する受信信号から基本波成分を抽出する。
また例えば、信号処理機能151の実行により処理回路15は、超音波プローブ70により異なる複数の中心周波数の超音波送信を同時に行い、この超音波送信に対して生成された受信信号について周波数フィルタを用いて、基本波成分に対応する基本波信号、差音成分に対応する差音信号、及び高調波成分に対応する高調波信号を生成してもよい。或いは、和音成分に対応する和音信号を生成しても良い。
計算機能153は、信号処理機能151により生成された基本波信号、及び/又は高調波信号等に基づいて、被検体P内の組織性状を表す指標値を計算する機能である。計算機能153の実行により処理回路15は、例えば、信号処理機能151により生成された基本波信号、及び/又は高調波信号等に含まれる位相情報を用いて、被検体P内で生じた変位を計算し、計算した変位に基づいて、被検体P内の組織性状を表す指標値を計算する。具体的には、処理回路15は、例えば、トラッキングパルスに関する基本波信号、及び/又は高調波信号を解析して、関心領域内の複数のサンプル点それぞれにおける組織性状を表す指標値を計算する。組織性状を表す指標値は、例えば組織の弾性又は粘性を表す指標値である。組織の弾性を示す指標値は、例えばプッシュパルスによって発生したせん断波の伝播速度である。以下、「せん断波の伝播速度」を「せん断速度(shear wave speed)」と記載する。ここで、硬い組織ではせん断速度が大きく、柔らかい組織ではせん断速度が小さくなる。すなわち、せん断速度が大きくなるほど、組織の硬さ(弾性率)を示す値も大きくなる。
より具体的には、計算機能153の実行により処理回路15は、例えば、トラッキングパルスに関する基本波信号の位相情報、及び/又は高調波信号の位相情報を用いて、関心領域内の複数のサンプル点それぞれで、組織の移動速度を複数時相に渡って計算する。そして、処理回路15は、計算された複数時相の移動速度を時間積分する。これにより、処理回路15は、関心領域内の複数のサンプル点それぞれの変位を複数時相に渡って算出する。続いて、処理回路15は、各サンプル点で変位が最大となる時間を求める。そして、処理回路15は、各サンプル点で最大変位が得られた時間を、各サンプル点におけるせん断波の到達時間として取得する。続いて、処理回路15は、各サンプル点におけるせん断波の到達時間に基づいて、各サンプル点でのせん断速度を計算する。
なお、処理回路15は、せん断速度を、各サンプル点で変位が最大となる時間に基づくのではなく、例えばラテラル方向に並んだ2つサンプル点それぞれについて生成された変位の時間変化の間の相互相関により計算してもよい。
また、処理回路15は、せん断速度から、ヤング率又はせん断弾性率を算出し、算出したヤング率又はせん断弾性率を組織の弾性を示す指標値としてもよい。変位、せん断速度、ヤング率及びせん断弾性率は、いずれも生体組織の硬さに関する物理量である。なお、変位、せん断速度等は、生体組織の動きに関する物理量でもある。
また、処理回路15は、所望のサンプル点(局所的なROI)について、ヤング率を用いて硬度を計算してもよい。
画像生成機能155は、信号処理機能151、又は計算機能153の実行により生成されたデータに基づき、各種超音波画像データを生成可能な機能である。画像生成機能155の実行により処理回路15は、RAWデータメモリに記憶されたBモードRAWデータに基づいてBモード画像データを生成する。Bモード画像データに基づくBモード画像は、例えば被検体P内の構造物の形態を表す。Bモード画像データは、音波の集束などの超音波プローブの特性や超音波ビーム(例えば、送受信ビーム)の音場特性などが反映された画素値(輝度値)を有する。例えば、Bモード画像データにおいて、超音波のフォーカス付近では、非フォーカス部分よりも相対的に高輝度となる。
また、画像生成機能155の実行により処理回路15は、RAWデータメモリに記憶されたドプラRAWデータに基づいて、移動体の情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
また、本実施形態に係る画像生成機能155の実行により処理回路15は、計算機能153により被検体Pの関心領域内の各サンプル点について計算された組織性状を表す指標値に基づいて、当該関心領域の組織性状画像を表す組織性状画像データを生成する。例えば、処理回路15は、計算機能153の実行により計算されたせん断速度から、生体組織の硬さがカラー表示された弾性画像データを生成する。例えば、処理回路15は、関心領域内の各点におけるせん断速度に応じた画素値を各点に割り当てたせん断速度画像データ(shear wave speed image data)を、弾性画像データとして生成する。弾性画像データは、組織性状画像データの例である。
表示制御機能157は、第1指標値と第2指標値とに基づく解析結果を表示する機能である。表示制御機能157の実行により処理回路15は、例えば、画像生成機能155により生成された弾性画像データに基づく弾性画像を表示機器50に表示させる。
なお、解析結果は、例えば、合成された組織性状画像(第3の組織性状画像)を含む。また、「解析結果を表示すること」は、例えば、「第1の組織性状画像と第2の組織性状画像とを重畳した組織性状画像(第3の組織性状画像)を表示すること」「第3の組織性状画像および後述する差分画像(後述される)を同時に表示すること」「第3の組織性状画像および等高線画像(後述される)を同時に表示すること」および「等高線画像および差分画像を同時に表示させること」などの少なくとも一つを含む。
ここで、表示制御機能157の実行により処理回路15は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、処理回路15は、超音波プローブ70による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。
また、表示制御機能157の実行により処理回路15は、生成した各種超音波画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、及びRGB変換などの各種処理を実行してもよい。また、処理回路15は、生成した各種超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディマーク等の付帯情報を付加してもよい。
なお、表示制御機能157の実行により処理回路15は、操作者(例えば、術者)が入力インタフェース20により各種指示を入力するためのユーザインタフェース(GUI:Graphical User Interface)を生成し、GUIを表示機器50に表示させてもよい。表示機器50としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
また、解析結果は、画像に限らない。解析結果は、数値情報、例えば硬度でもよい。表示制御機能157の実行により処理回路15は、計算機能153により計算された硬度の値を表示機器50に表示させる。
システム制御機能159は、超音波診断装置1の入出力、及び超音波送受信等の基本動作を制御する機能である。システム制御機能159の実行により処理回路15は、入力インタフェース20を介し、各種撮像モードを開始する開始指示を受け付ける。各種撮像モードには、例えば、Bモード、ドプラモード、及びエラストグラフィモード等が含まれる。本実施形態に係るエラストグラフィモードは、超音波プローブで体表から生体組織に音響放射力を与えて、せん断波(shear wave)による変位を発生させ、走査断面内の各点における変位を経時的に観測する撮像モードである。例えば、処理回路15は、入力インタフェース20を介し、種々の撮像モードを開始する開始指示を受け付ける。例えば、処理回路15は、入力インタフェース20を介し、例えばエラストグラフィモードを開始する開始指示を受け付ける。
信号処理機能151、計算機能153、画像生成機能155、及びシステム制御機能159は、制御プログラムとして組み込まれていてもよいし、処理回路15自体または装置本体10に処理回路15が参照可能な回路として、各機能を実行可能な専用のハードウェア回路が組み込まれていてもよい。
内部記憶回路17は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。内部記憶回路17は、超音波送受信を実現するための制御プログラム、画像処理を行うための制御プログラム、及び表示処理を行なうための制御プログラム等を記憶している。また、内部記憶回路17は、本実施形態に係る各種機能を実現するための制御プログラムを記憶している。また、内部記憶回路17は、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、ボディマーク生成プログラム、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位ごとに予め設定する変換テーブルなどのデータ群を記憶している。また、内部記憶回路17は、生体内の臓器の構造に関する解剖学図譜、例えば、アトラスを記憶してもよい。
また、内部記憶回路17は、入力インタフェース20を介して入力される記憶操作に従い、画像生成機能155の実行により生成された各種超音波画像データを記憶する。なお、内部記憶回路17は、入力インタフェース20を介して入力される記憶操作に従い、画像生成機能155の実行により生成された各種超音波画像データを、操作順番及び操作時間を含めて記憶してもよい。内部記憶回路17は、記憶しているデータを、通信インタフェース21を介して外部装置へ転送することも可能である。
画像メモリ18は、例えば、磁気的若しくは光学的記録媒体、又は半導体メモリ等のプロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。画像メモリ18は、画像生成機能155の実行により生成された表示用の画像データを記憶する。画像メモリ18は、入力インタフェース20を介して入力されるフリーズ操作直前の複数フレームに対応する画像データを記憶する。画像メモリ18に記憶されている画像データは、例えば、連続表示(シネ表示)される。画像メモリ18に記憶されている画像データは、例えば、実際に表示機器50に表示される画像を表す画像データである。当該画像には、超音波スキャンにより取得された超音波画像データに基づく画像、並びに、CT画像データ、MR画像データ、X線画像データ、及びPET画像データ等の他のモダリティにより取得された医用画像データに基づく画像が含まれる場合がある。
また、画像メモリ18は、信号処理機能151の実行により生成されたデータを記憶することも可能である。画像メモリ18が記憶するBモードデータ、又はドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、処理回路15を経由して表示用の超音波画像データとなる。
画像データベース19は、外部装置40から転送される画像データを記憶する。例えば、画像データベース19は、過去の診察において取得された同一患者に関する過去画像データを、外部装置40から取得して記憶する。過去画像データには、超音波画像データ、CT(Computed Tomography)画像データ、MR(Magnetic Resonance)画像データ、PET(Positron Emission Tomography)−CT画像データ、PET−MR画像データ及びX線画像データが含まれる。また、過去画像データは、例えばボリュームデータ、及びレンダリング画像データとして記憶されている。
なお、画像データベース19は、MO、CD−R、DVDなどの記録媒体(メディア)に記録された画像データを読み込むことで、所望の画像データを格納してもよい。
入力インタフェース20は、入力装置60を介して、操作者からの各種指示を受け付ける。入力装置60には、例えば、マウス、キーボード、パネルスイッチ、スライダースイッチ、ダイヤルスイッチ、トラックボール、ロータリーエンコーダ、操作パネル及びタッチコマンドスクリーン(TCS)等が含まれる。また、入力装置60には、超音波の送受信方式、及び受信信号の処理方式等を含む各種撮像モードを切り替えるためのスイッチ群が含まれる。スイッチ群は、ダイヤルスイッチ、及び/又はトラックボール等の機械的なデバイスのみならず、TCS上に表示される操作パネル画像、又は、外部装置40におけるセカンドコンソール上に表示される操作パネル画像等のいずれであってもよい。
入力インタフェース20は、例えばバスを介して処理回路15に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を処理回路15へ出力する。なお、本明細書において入力インタフェース20は、マウス及びキーボード等の物理的な操作部品と接続するものだけに限られない。例えば、超音波診断装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を無線信号として受け取り、この電気信号を処理回路15へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース20の例に含まれる。
通信インタフェース21は、ネットワーク100等を介して外部装置40と接続され、外部装置40との間でデータ通信を行う。外部装置40は、例えば、各種の医用画像のデータを管理するシステムであるPACS(Picture Archiving and Communication System)のデータベース、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステムのデータベース等である。また、外部装置40は、例えば、X線CT装置、及びMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、核医学診断装置、及びX線診断装置等、本実施形態に係る超音波診断装置1以外の各種医用画像診断装置である。なお、外部装置40との通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、DICOMが挙げられる。
次に、本実施形態に係る超音波診断装置1の動作について、図を参照して説明する。まず、図2を参照して本実施形態に係る超音波診断装置1が行う超音波スキャンの流れについて説明する。図2は、本実施形態に係る超音波診断装置1が行う超音波スキャンの流れを表すフローチャートである。当該フローチャートの動作は、例えばシステム制御機能159により実現される。以下の説明では、入力インタフェース20を介し、エラストグラフィモードを開始する開始指示が入力されるものとする。また、処理回路15は、PM法及びフィルタ処理を実施して反射波の高調波信号を生成するものとする。
図2に示されるように、処理回路15は、システム制御機能159を実行し、入力インタフェース20を介し、エラストグラフィモードを開始する開始指示を受け付ける。処理回路15は、開始指示を受け付けると、超音波送信回路11を制御し、被検体Pの特定の分割領域(以下、注目領域と称する)に対してリファレンスパルスを送信する(ステップSA1)。そして、処理回路15は、超音波受信回路12を制御し、送信したリファレンスパルスに対応する超音波プローブ70が受信した受信信号に各種処理を施し、リファレンスパルスの受信信号を生成する。なお、リファレンスパルスは、被検体Pの各サンプル点での変位の基準を計算するために送信されるパルスである。
次に、処理回路15は、超音波送信回路11を制御し、注目領域に対してプッシュパルスを送信する(ステップSA2)。例えば、処理回路15は、注目領域においてトラッキングパルスを送受信する前に、注目領域の特定の送信位置に対してプッシュパルスを送信し、せん断波を発生させる。この際、典型的には、プッシュパルスの送信位置は、注目領域の近傍に設定される。
続いて、処理回路15は、超音波送信回路11を制御し、注目領域に対してトラッキングパルスを複数回送信する処理を、各サンプル点で方位方向に沿ってそれぞれ実行する(ステップSA3)。このとき、処理回路15は、正極のトラッキングパルスと、正極のトラッキングパルスとは180度位相が異なる負極のトラッキングパルスとを注目領域の各サンプル点で少なくとも1回ずつ送信する。そして、処理回路15は、超音波受信回路12を制御し、送信した正極のトラッキングパルスの受信信号に各種処理を施す。また、処理回路15は、負極のトラッキングパルスの受信信号に各種処理を施す。尚、「180度位相が異なる」ことを「位相を反転させた」と読み替えてもよい。
処理回路15は、ステップSA1からステップSA3までの処理を分割領域それぞれで実行する。
図3は、本実施形態に係る超音波診断装置1が行う超音波スキャンの流れの例を説明する図である。図3に示されるように、処理回路15は、超音波送信回路11を制御し、リファレンスパルス、プッシュパルス、及びトラッキングパルスの順で超音波パルスを送信する。また、図3に示されるように、処理回路15は、正極のトラッキングパルスP、及び負極のトラッキングパルスNを注目領域の各サンプル点に対して少なくとも1回ずつ送信する。図3に示されるようなスキャンシーケンスは、例えば、分割領域毎に繰り返される。
なお、本実施形態ではトラッキングパルスだけを正極及び負極のスキャンシーケンスにしているが、リファレンスパルスについても同様に、正極及び負極のスキャンシーケンスを行っても良い。
次に、図4を参照して本実施形態に係る超音波診断装置1が合成弾性画像を表示する際の処理回路15の動作について説明する。図4は、本実施形態に係る超音波診断装置1が合成弾性画像を表示する際の処理回路15の動作の例を示すフローチャートである。当該フローチャートの動作は、信号処理機能151、計算機能153、及び画像生成機能155により実現される。なお、以下の説明では、図2に示されるステップSA1からステップSA3までの処理がすべての分割領域で実行された後に、図4に示されるステップSB1の処理が開始されるものとする。なお、図2に示されるステップSA1からステップSA3までの処理、及び、図4に示されるステップSB1からステップSB4までの処理を分割領域毎に実行してもよい。
処理回路15は、信号処理機能151を実行し、すべての分割領域について、正極のトラッキングパルスの受信信号(第1受信信号)、及び負極のトラッキングパルスの受信信号(第2受信信号)を取得する(ステップSB1)。第1受信信号と、第2受信信号との位相差は、例えば180度である。このとき、処理回路15は、図2に示されるステップSA1おいて生成されたリファレンスパルスの受信信号も取得する。
処理回路15は、ステップSB1において取得された第1受信信号、及び第2受信信号に基づいて、基本波成分が除去された受信信号(第3受信信号)を生成する(ステップSB2)。例えば、処理回路15は、第1受信信号、及び第2受信信号を加算処理することにより、偶数次高調波成分、例えば2次高調波成分のみ抽出した第3受信信号を生成する。
処理回路15は、生成した第3受信信号に対し、2次高調波成分のみを抽出するフィルタ(第1周波数フィルタ)を用いてフィルタ処理を実施する。また、処理回路15は、第1受信信号に対し、基本波成分のみを抽出するフィルタ(第2周波数フィルタ)を用いてフィルタ処理を実施する。これらの処理により、2次高調波成分に対応する高調波信号、及び基本波成分に対応する基本波信号がそれぞれ生成される(ステップSB3)。なお、ステップSB3のフィルタ処理は、各受信信号に含まれる高調波成分が無視できる程低レベルである場合には、省略することも可能である。
なお、基本波成分に対応する基本波信号は、以下のように生成されてもよい。すなわち、処理回路15は、第1受信信号、及び第2受信信号の差分を取ることにより偶数次高調波成分が除去された受信信号を生成する。処理回路15は、生成した受信信号に対し、第2周波数フィルタを用いてフィルタ処理を実施することにより基本波成分に対応する基本波信号を生成する。
処理回路15は、計算機能153を実行し、ステップSB3において生成された高調波信号に含まれる位相情報を用いて、組織性状を表す指標値、例えば、各サンプル点でのせん断速度(第1指標値)を計算する。また、処理回路15は、ステップSB3において生成された基本波信号に含まれる位相情報を用いて、組織性状を表す指標値、例えば、各サンプル点でのせん断速度(第2指標値)を計算する(ステップSB4)。
具体的には、まず、処理回路15は、例えば、ステップSB1において取得したリファレンスパルスの受信信号を用いて、被検体P内で生じた各サンプル点での基準となる変位を計算する。続いて、処理回路15は、リファレンスパルスの受信信号について計算した変位を基準として、高調波信号に含まれる位相情報を用いて、被検体P内で生じた各サンプル点での変位を計算する。そして、処理回路15は、計算した各サンプル点での変位に基づいて、各サンプル点でのせん断速度(第1指標値)を計算する。
また、処理回路15は、リファレンスパルスの受信信号について計算した変位を基準として、基本波信号に含まれる位相情報を用いて、被検体P内で生じた各サンプル点での変位を計算する。そして、処理回路15は、計算した各サンプル点での変位に基づいて、各サンプル点でのせん断速度(第2指標値)を計算する。
処理回路15は、画像生成機能155を実行し、ステップSB4において計算された第1指標値に基づいて、高調波信号に基づく弾性画像(第1組織性状画像)を表す弾性画像データを生成する。また、処理回路15は、ステップSB4において生成された第2指標値に基づいて、基本波信号に基づく弾性画像(第2組織性状画像)を表す弾性画像データを生成する(ステップSB5)。具体的には、例えば、処理回路15は、高調波信号について計算したせん断速度をカラーコード化し、対応するサンプル点にマッピングすることで、高調波信号に基づく弾性画像を表す弾性画像データを生成する。また、処理回路15は、基本波信号について計算したせん断速度をカラーコード化し、対応するサンプル点にマッピングすることで、基本波信号に基づく弾性画像を表す弾性画像データを生成する。
処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像データ、及び、基本波信号に基づく弾性画像データを合成し、合成弾性画像データを生成する(ステップSB6)。処理回路15は、例えば、基本波信号に基づく弾性画像のうち多重反射の影響を大きく受ける領域(以下、多重領域と称する)を、高調波信号に基づく弾性画像に含まれ、当該領域に対応する領域で置き換えることにより、合成弾性画像データを生成する。
処理回路15は、表示制御機能157を実行し、生成した合成弾性画像データに基づく合成弾性画像を表示機器50に表示させる(ステップSB7)。図5は、本実施形態に係る超音波診断装置1が表示機器50に表示する合成弾性画像データに基づく合成弾性画像を説明するための図である。図5では、エラストグラフィモードにおいて、Bモード画像上の対応する位置に弾性画像が重畳表示される場合を例示している。図5によれば、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像201を表す弾性画像データ、及び、基本波信号に基づく弾性画像202を表す弾性画像データを合成し、合成弾性画像203を表す合成弾性画像データを生成している。以下、具体的な合成方法を説明する。
図5において、弾性画像201には、多重領域は含まれていない。一方、図5において、弾性画像202には、多重反射によるノイズが領域R10に含まれている。領域R10は、多重領域に相当する。領域R10では、一般的に多重反射の影響によって推定されたせん断速度は高い値を示す傾向にある。この高い値は、せん断速度に応じた画素値を各点に割り当てた弾性画像上にノイズとして表れる。このため、処理回路15は、例えば、弾性画像202の領域C及び領域Dのうち領域R10を含まない領域Dと、弾性画像201の領域A及び領域Bうち、弾性画像202の領域R10が含まれる領域Cに対応する領域Aとを合成処理する。これにより、多重反射の影響が低減された合成弾性画像203を表す合成画像データが生成される。尚、領域Aおよび領域Cは、第1の領域に対応する。領域Bおよび領域Dは、第2の領域に対応する。
なお、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像、及び基本波信号に基づく弾性画像を表示機器50に重畳表示させてもよい。このとき、処理回路15は、以下の式(1)に従って重畳画像を表す重畳画像データを生成する。
ここで、例えば、Vsweは重畳画像における伝播速度に基づく画素値を表す。また、Vfundは基本波信号に基づく弾性画像における伝播速度に基づく画素値を表す。また、Vthiは高調波信号に基づく弾性画像における伝播速度に基づく画素値を表す。αは、処理回路15が制御可能なパラメータである。例えば、式(1)において、α=0.5が設定されることにより、高調波信号に基づく弾性画像、及び基本波信号に基づく弾性画像の各画素値の平均値からなる画像を表す画像データが生成される。
また、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像データ、及び基本波信号に基づく弾性画像データに対し、差分処理を施すことによって、多重反射の影響を受けやすい領域を差分画像として抽出し、差分画像を表す差分画像データを生成してもよい。差分処理は、例えば以下の式(2)で表される。
ここで、Vthreshは、高調波信号に基づく弾性画像、及び基本波信号に基づく弾性画像の画素値の差、すなわち伝播速度の差に対して予め設定される閾値である。なお、処理回路15は、Vthreshを任意の値に変更することができる。一般的に、多重反射の影響を受やすい領域以外の領域では、高調波信号に基づく弾性画像、及び基本波信号に基づく弾性画像の画素値の差はない。一方、多重反射の影響を受やすい領域は、当該領域において多重反射が発生しない場合と比して大きな画素値が表れる。このため、一定の閾値Vthresh以上である画素値である領域を抽出することで、多重反射の影響を受やすい領域を特定することが可能となる。
そして、処理回路15は、生成した差分画像データに基づく差分画像を表示機器50に表示させる。図6は、実施形態に係る超音波診断装置1が表示機器50に表示する差分画像の模式図の例を表す図である。図6では、エラストグラフィモードにおいて、Bモード画像上の対応する位置に差分画像が重畳表示される場合を例示している。差分画像204は、例えば基本波信号に基づく弾性画像の各画素の画素値、及び基本波信号に基づく弾性画像の各画素の画素値の差が閾値Vthresh以上である画素のみが強調された画像である。差分画像204のうち、例えば斜線で示される領域205が閾値Vthresh以上の画素群である。この斜線で示される領域205には、当該領域に含まれる各画素について、基本波信号に基づく弾性画像の画素の画素値から、高調波信号に基づく弾性画像の基本波信号に基づく弾性画像に対応する画素の画素値が減算された画素値が割り当てられている。
また、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像と、及び基本波信号に基づく弾性画像とを表示機器50に並列表示させてもよい。また、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像を単独で表示機器50に表示させてもよい。また、処理回路15は、差分画像と、合成画像とを同時に表示機器50に表示させるようにしてもよい。処理回路15は、例えば、差分画像と、合成画像とを並列表示、又は、重畳表示する。
本実施形態によれば、処理回路15は、システム制御機能159を実行し、超音波送信回路11、及び超音波受信回路12を制御し、超音波プローブ70から被検体Pに対して超音波を送信し、被検体P内で発生した超音波の反射波に基づく受信信号を受信する。処理回路15は、信号処理機能151を実行し、受信した受信信号に基づいて、被検体P内で発生した超音波の反射波の高調波成分に対応する高調波信号を生成する。処理回路15は、計算機能153を実行し、生成した高調波信号に含まれる位相情報を用いて、被検体P内で生じた変位を計算し、当該変位に基づいて、被検体P内の組織性状を表す指標値であるせん断速度を計算する。
一般的に、受信信号に含まれる高調波成分は、基本波成分に比べてメインローブが細いため、基本波成分よりも多重反射の影響を受けにくい。このため、算出されるせん断速度を、多重反射の影響が低減された値とすることができる。
したがって、エラストグラフィにおいて、多重反射の影響を低減することが可能となる。
また、多重反射によるノイズは、特に胸壁の厚い被検体Pについて取得される弾性画像に顕著に表れる。このため、従来は多重反射の発生する胸壁及び胸壁付近を避けて深い位置に計測位置を設定し、エラストグラフィを実施する必要があった。本実施形態によれば、胸壁及び胸壁付近の深さにおいても、多重反射の影響を低減しつつ、エラストグラフィを実施することが可能となる。
また、上記実施形態では、処理回路15は、画像生成機能155を実行し、被検体の関心領域内の各位置について計算された高調波信号について計算したせん断速度に基づいて、関心領域の高調波信号に基づく弾性画像を表す弾性画像データを生成する。処理回路15は、表示制御機能157を実行し、生成した高調波信号に基づく弾性画像、例えば図5に示される弾性画像201を表示機器50に表示させる。これにより、例えば操作者に対して多重反射によるノイズが低減された弾性画像を表示することが可能となる。
また、上記実施形態では、処理回路15は、信号処理機能151を実行し、受信した受信信号に基づいて、被検体P内で発生した超音波の反射波の基本波成分に対応する基本波信号を生成する。処理回路15は、計算機能153を実行し、生成した基本波信号に含まれる位相情報を用いて、被検体P内で生じた変位を計算し、当該変位に基づいて、被検体P内の組織性状を表す指標値であるせん断速度を計算する。処理回路15は、画像生成機能155を実行し、被検体の関心領域内の各位置について計算された高調波信号について計算したせん断速度に基づいて、関心領域の高調波信号に基づく弾性画像を表す弾性画像データを生成する。また、処理回路15は、被検体の関心領域内の各位置について計算された基本波信号について計算したせん断速度に基づいて、関心領域の基本波信号に基づく弾性画像を表す弾性画像データを生成する。そして、処理回路15は、生成した高調波信号に基づく弾性画像データと、基本波信号に基づく弾性画像とを合成し、合成弾性画像データを生成する。
一般的に、受信信号に含まれる2次高調波成分は、基本波成分と比して、減衰の影響が大きく、距離に関する感度が低い。本実施形態によれば、処理回路15は、超音波プローブ70から遠距離に位置する領域を高調波信号に基づく弾性画像、超音波プローブ70から近距離に位置する領域を基本波信号に基づく弾性画像として合成処理する。これにより、多重領域においても生体組織の硬さを正しく描出することができる。これにより、エラストグラフィにおいて、多重反射の影響を低減しつつ、ペネトレーションを担保することが可能となる。
(変形例)
上記実施形態では、処理回路15は、PM法及びフィルタ処理を実施して反射波の高調波信号を生成する場合について説明した。変形例では、フィルタ処理のみを実施して高調波成分に対応する高調波信号を生成する場合について説明する。
変形例に係る超音波診断装置の構成は、図1に示される超音波診断装置1の構成と同様である。
以下、変形例に係る超音波診断装置1の動作について、図を参照して説明する。まず、図7を参照して変形例に係る超音波診断装置1が行う超音波スキャンの流れについて説明する。図7は、変形例に係る超音波診断装置1が行う超音波スキャンの流れを表すフローチャートである。当該フローチャートの動作は、例えばシステム制御機能159により実現される。以下の説明では、入力インタフェース20を介し、エラストグラフィモードを開始する開始指示が入力されるものとする。また、処理回路15は、周波数フィルタのみを用いて反射波の高調波信号を生成するものとする。
図7に示されるステップSC1、及び、ステップSC2は、図2に示されるステップSA1、及び、ステップSA2と同様である。
ステップSC2の後、処理回路15は、超音波送信回路11を制御し、注目領域の各サンプル点でトラッキングパルスを少なくとも1回送信する処理を、方位方向に沿って実行する(ステップSC3)。このとき、処理回路15は、正極のトラッキングパルスのみを注目領域の各サンプル点で少なくとも1回送信する。そして、処理回路15は、超音波受信回路12を制御し、送信した正極のトラッキングパルスの受信信号に各種処理を施す。なお、処理回路15は、負極のトラッキングパルスのみを注目領域の各サンプル点に送信するようにしてもよい。
処理回路15は、ステップSC1からステップSC3までの処理を分割領域それぞれで実行する。
次に、図8を参照して本実施形態に係る超音波診断装置1が合成弾性画像を表示する際の処理回路15の動作について説明する。図8は、変形例に係る超音波診断装置1が合成弾性画像を表示する際の処理回路15の動作の例を示すフローチャートである。当該フローチャートの動作は、信号処理機能151、計算機能153、及び画像生成機能155により実現される。なお、以下の説明では、図7に示されるステップSC1からステップSC3までの処理がすべての分割領域で実行された後に、図8に示されるステップSD1の処理が開始されるものとする。なお、図7に示されるステップSC1からステップSC3までの処理、及び、図8に示されるステップSD1からステップSD4までの処理を分割領域毎に実行してもよい。また、信号処理機能151により抽出される高調波成分は、2次高調波成分であるものとする。なお、信号処理機能151により抽出される高調波成分は、3次以上の次数に対応する高調波成分であってもよい。
処理回路15は、信号処理機能151を実行し、すべての分割領域について、正極のトラッキングパルスの受信信号(第1受信信号)を取得する(ステップSD1)。このとき、処理回路15は、図7に示されるステップSC1おいて生成されたリファレンスパルスの受信信号も取得する。
処理回路15は、第1受信信号に対し、例えば2次高調波成分のみを抽出するための周波数フィルタ(第1周波数フィルタ)を用いてフィルタ処理を実施する。また、処理回路15は、第1受信信号に対し、例えば基本波成分のみを抽出するための周波数フィルタ(第2周波数フィルタ)を用いてフィルタ処理を実施する。これらの処理により、2次高調波成分に対応する高調波信号、及び基本波成分に対応する基本波信号がそれぞれ生成される(ステップSD2)。
なお、本実施形態ではトラッキングパルスに複数のフィルタ処理を行っているが、リファレンスパルスについても同様に、複数のフィルタ処理を行っても良い。
図8に示されるステップSD4からステップSD6までの処理は、図4に示されるステップSB4からステップSB7までの処理と同様である。
変形例では、処理回路15は、フィルタ処理のみを実施して高調波成分に対応する高調波信号を生成した。これにより、上記実施形態のように、PM法を用いるためにトラッキングパルスを複数回送信しなくてもよいため、エラストグラフィにおいて、PM法を実施する場合に比して生成される弾性画像データのフレームレートを向上させることが可能となる。また、より簡易に多重反射の影響を低減することが可能となる。
[他の実施形態]
上記実施形態では、超音波診断装置1は、高調波信号、及び、基本波信号を生成するために、PM法を用いる場合に実行される超音波スキャンを1回行っていたがこれに限定されない。超音波診断装置1は、例えば、高調波成分を生成するために、PM法を用いる場合に実行される超音波スキャンを行い、基本波信号を生成するために通常のエラストグラフィで実行される超音波スキャンを別途行ってもよい。
上記実施形態では、超音波診断装置1は、プッシュパルスにより音響放射力を与えて生体組織に変位を発生させることでエラストグラフィを実行していたがこれに限定されない。超音波診断装置1は、例えば外部装置により機械的振動を与えて生体組織に変位を発生させることでエラストグラフィを実行してもよい。このとき、上記実施形態において、超音波スキャンを実行する際に、プッシュパルスを送信する処理、例えば、図2に示されるステップSA2、及び図7に示されるステップSC2の処理を省略することができる。
また、上記実施形態では、超音波診断装置1は、プッシュパルスにより発生するせん断波の伝播速度を算出することにより、生体組織の硬さを測定し、弾性画像データを生成していたがこれに限定されない。例えば、超音波診断装置1は、超音波プローブ70を用いて被検体Pに圧迫を加えることで生じる歪みに基づいて生体組織の硬さを測定し、弾性画像データを生成するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、超音波診断装置1は、生体組織の硬さを測定するためにエラストグラフィを実行していたがこれに限定されない。超音波診断装置1は、エラストグラフィを実行し、例えば、せん断波の周波数と伝播速度との関係に基づいて生体組織の粘性を評価してもよい。生体組織の粘性を表す指標値は、壊死、及び炎症によって粘性が大きく増加する症例、例えば急性肝炎の診断に利用されている。
また、上記実施形態において、処理回路15は、合成弾性画像とともに組織性状を表す指標値を表示するようにしてもよい。このとき、処理回路15は、被検体内で生じた変位に基づいて、組織性状に関する複数の指標値を計算する。処理回路15は、例えば、合成弾性画像データを生成する際に用いた各サンプル点でのせん断速度に基づいて、弾性率、及び粘性率等を計算する。処理回路15は、計算した複数の指標値のうち、少なくとも2つ以上の指標値を表す画像を生成する。この画像は、例えば関心部位に関する定性的なデータを表現する診断支援情報として表示されるダイアグラムの態様で表示される。処理回路15は、合成弾性画像とともに、生成した指標値を表す画像を表示機器50に重畳、又は並列表示させる。
また、上記実施形態において、処理回路15は、差分画像を、複数の線画像と同時に表示機器50に表示させるようにしてもよい。線画像は、例えば関心領域内の各点(各位置)にせん断波が到達した到達時間が略同一の線を表す線状の画像(これは、等高線画像とも称する)である。このとき、処理回路15は、複数の線画像に対応する線画像データをそれぞれ生成する。この線画像データは、例えば、到達時間が略同一の位置を線で結んだ等高線を表示するための情報である。例えば、処理回路15は、関心領域内の各点(各サンプル点)のうち、所定の到達時間を有する点を複数抽出する。そして、処理回路15は、抽出した複数の点を結ぶことで、線画像データを生成する。処理回路15は、このような線画像データの生成処理を複数の時相について実行する。なお、所定の到達時間とは、超音波診断装置1の操作者若しくは設計者によって予め指定された値であり、通常、複数の値が指定される。処理回路15は、例えば、差分画像と、複数の線画像とを並列表示、又は、重畳表示する。これにより、操作者は、せん断波がどのように伝わっているか、又は、せん断波が期待通り発生及び伝播しているかを確認しながら弾性画像を視認することが可能となる。
図9は、他の実施形態に係る超音波診断装置において、差分画像と等高線画像とを並列して表示する例を示す図である。図9において、表示機器50の表示領域210が示される。表示領域210には、2つのBモード画像が並列して表示されている。一方のBモード画像(表示領域210の左)には、斜線で示される領域205を含む差分画像204が重畳されている。他方のBモード画像(表示領域210の左)には、等高線画像206が重畳されている。
図10は、他の実施形態に係る超音波診断装置において、差分画像と等高線画像とを重畳して表示する例を示す図である。図10において、表示機器50の表示領域211が示されている。表示領域210には、Bモード画像が表示されている。このBモード画像には、斜線で示される領域205と等高線画像207とが重畳されている。
また、上記実施形態において、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像と基本波信号に基づく弾性画像との合成を画像全体に亘って実施してもよい。また、処理回路15は、高調波信号に基づく弾性画像と基本波信号に基づく弾性画像との合成を高調波信号に基づく弾性画像、又は、基本波信号に基づく弾性画像のうち指定された特定の領域に対してのみ実施してもよい。
また、上記実施形態において、超音波診断装置1は、1つの超音波プローブ70により、プッシュパルスの送信、及びトラッキングパルスの送受信を行うとしていたがこれに限定されない。超音波診断装置1は、例えば、複数の超音波プローブを有し、プッシュパルスを送信する超音波プローブとトラッキングパルスを送受信する超音波プローブが異なっていてもよい。
上記実施形態では、超音波診断装置1は、第1の組織性状画像および第2の組織性状画像を生成し、これら2つの組織性状画像を合成または重畳することによって1つの組織性状画像(第3の組織性状画像)を生成していがこれに限定されない。超音波診断装置1は、例えば、受信信号に対して関心領域内の各位置に基づく2種類のフィルタ処理を実施することによって、即ち、受信信号を、深さに応じた周波数フィルタで濾波することによって、2つの組織性状画像を生成することなく、1つの組織性状画像を生成してもよい。
この場合、処理回路15は、信号処理機能151により、超音波受信回路12から受け取った受信信号を、深さに応じた周波数フィルタで濾波して、解析信号を生成する。解析信号は、例えば、高調波成分に対応する高調波信号および基本波成分に対応する基本波信号を含む。処理回路15は、計算機能153により、生成された解析信号に基づいて、被検体内の組織性状を表す指標値を計算する。処理回路15は、表示制御機能157により、計算された指標値に基づいて、解析結果を表示する。
さらに、処理回路15は、画像生成機能155により、上記解析結果としての関心領域に対応する組織性状画像を生成してもよい。処理回路15は、計算機能153により、生成された解析信号の位相情報を用いて、被検体内で生じた変位を計算し、計算された変位に基づいて、上記指標値を計算してもよい。
さらに、処理回路15は、画像生成機能155により、上記関心領域の各位置にせん断波が到達した到達時間が略同一の等高線画像を生成し、表示制御機能157により、上記解析結果を表示することとして、上記組織性状画像および生成された等高線画像を同時に表示してもよい。
図11は、他の実施形態に係る超音波診断装置が合成弾性画像を表示する処理を説明するための図である。図11には、Bモード画像と、体表からの距離(深さ)毎に設定される周波数フィルタとが対応付けて示される。図11に図示している深さは、例えば、体表からの深さであり、Bモード画像に表示されているスキャン断面の深さと対応している。尚、上記スキャン断面は、腹部をスキャンした際の断面であるものとする。
以降では、関心領域内の各位置は、腹部のスキャン断面における深さに相当するものとする。また、長さL1は、腹壁の存在する範囲を示し、長さL2は、腹壁によって多重反射の受ける範囲を示す。長さL1は、例えば、Bモード画像等に対する画像解析または操作者の入力により設定される。或いは、患者情報(例えば体脂肪率、BMI指数等の体型に関する情報)とL1(又はL2)の関係を表すテーブルを参照することで、患者情報からL1(又はL2)が設定されても良い。ここで、一般的に、腹壁の存在する範囲と多重反射を受ける範囲とは略等しい深さを有することから、長さL1および長さL2は、略等しい値となる。即ち、長さL1が設定されると、長さL2が決定される。よって、処理回路15は、長さL1および長さL2を足し合わせた長さ(深さ)の範囲(以降、多重反射領域と称する)において、2次高調波成分のみを抽出するための第1周波数フィルタを設定し、他の範囲(以降、深部領域と称する)において、基本波成分のみを抽出するための第2周波数フィルタを設定する。
Bモード画像上の合成弾性画像301には、2つの領域である第1領域302と第2領域303とが示されている。合成弾性画像301は、組織性状画像に相当する。合成弾性画像301の表示される領域は、イメージングROI(関心領域)に相当する。第1領域302は、例えば、多重反射領域に含まれ、第2領域303は、深部領域に含まれる。
処理回路15は、信号処理機能151により、スキャン断面の深さに対応する周波数フィルタを設定する。一例として、処理回路15は、長さL1および長さL2を足し合わせた深さ0cmから4cmまでの範囲において、中心周波数2f0の第1周波数フィルタを設定し、深さ4cm以降の範囲において、中心周波数f0の第2周波数フィルタを設定する。
例えば、深さ0cmから1cmの範囲において、受信周波数特性グラフG11を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF11は、中心周波数2f0である。深さ1cmから2cmの範囲において、受信周波数特性グラフG12を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF12は、中心周波数2f0である。深さ2cmから3cmの範囲において、受信周波数特性グラフG13を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF13は、中心周波数2f0である。深さ3cmから4cmの範囲において、受信周波数特性グラフG14を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF14は、中心周波数2f0である。よって、周波数フィルタF11から周波数フィルタF14は、それぞれ第1周波数フィルタである。
例えば、深さ4cmから5cmの範囲において、受信周波数特性グラフG15を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF15は、中心周波数f0である。深さ5cm以降の範囲において、受信周波数特性グラフG16を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF16は、中心周波数f0である。よって、周波数フィルタF15および周波数フィルタF16は、それぞれ第2周波数フィルタである。
概括すると、処理回路15は、腹壁と関心領域との相対的な位置関係によって、関心領域内における各位置のそれぞれについて第1周波数フィルタまたは第2周波数フィルタを設定する。第1領域302では、多重反射領域に含まれているため、処理回路15は、第1周波数フィルタを用いる。第2領域303では、深部領域に含まれているため、処理回路15は、第2周波数フィルタを用いる。
図12は、他の実施形態に係る超音波診断装置が合成弾性画像を表示する際の処理回路の動作を示すフローチャートである。当該フローチャートの動作は、信号処理機能151、計算機能153、画像生成機能155、及び表示制御機能157により実現される。以下の説明では、図7に示されるステップSC1からステップSC3までの処理が関心領域において実行された後に、図12に示されるステップSE1の処理が開始されるものとする。また、信号処理機能151により抽出される高調波成分は、2次高調波成分であるものとする。尚、信号処理機能151により抽出される高調波成分は、3次以上の次数に対応する高調波成分であってもよい。
(ステップSE1)
処理回路15は、関心領域について、正極のトラッキングパルスに対応する受信信号を取得する。このとき、処理回路15は、図7に示されるステップSC1において生成されたリファレンスパルスの受信信号も取得する。
(ステップSE2)
処理回路15は、信号処理機能151を実行し、受信信号を、深さに応じた周波数フィルタで濾波して、解析信号を生成する。具体的には、処理回路15は、腹壁と関心領域との相対的な位置関係によって、関心領域内における各位置のそれぞれについて第1周波数フィルタまたは第2周波数フィルタを設定する。処理回路15は、例えば、関心領域における第1の領域に対応する受信信号に対して第1周波数フィルタ処理を実施し、関心領域における第2の領域に対応する受信信号に対して第2周波数フィルタ処理を実施する。尚、リファレンスパルスの受信信号についても、上記と同様の処理を行ってもよい。
(ステップSE3)
処理回路15は、計算機能153を実行し、解析信号に含まれる位相情報から組織性状を表す指標値を計算する。
(ステップSE4)
処理回路15は、画像生成機能155を実行し、指標値に基づいて組織性状画像を生成する。
(ステップSE5)
処理回路15は、表示制御機能157を実行し、表示機器50に組織性状画像を表示する。
以上説明したように、超音波診断装置1は、例えば、受信信号に対して関心領域内の各位置に基づく2種類のフィルタ処理を実施することによって、第1の組織性状画像および第2の組織性状画像を生成することなく、一度の処理で組織性状画像を生成する。
なお、解析結果として数値情報(例えば、硬度の値)を表示する場合、ステップSE2において、処理回路15は、信号処理機能151を実行し、関心領域内の所望の位置に対応する周波数フィルタ(第1の周波数フィルタまたは第2の周波数フィルタ)を設定する。処理回路15は、関心領域内の所望の位置に対応する受信信号に対して上記周波数フィルタ処理を実施し、解析信号を生成する。ステップSE3において、処理回路15は、計算機能153を実施し、解析信号を用いて硬度を算出する。ステップSE5において、処理回路15は、表示制御機能157を実行し、表示機器50に硬度の値を表示する。尚、ステップSE4の処理は省略される。
また、関心領域全体が多重反射領域に含まれる場合は、第1周波数フィルタのみを使用して指標値を計算し、関心領域全体が深部領域に含まれる場合は、第2周波数フィルタのみを利用して指標値を計算しても良い。すなわち、関心領域の大きさと位置に応じて、周波数フィルタを選択しても良い。
上記実施形態では、超音波診断装置1は、受信信号に対して関心領域内の各位置に基づく2種類のフィルタ処理を実施することによって、第3の組織性状画像を生成していたがこれに限定されない。超音波診断装置1は、例えば、受信信号に対して関心領域内の各位置に基づく3種類以上のフィルタ処理を実施することによって、第3の組織性状画像を生成してもよい。
この場合、処理回路15は、信号処理機能151により、超音波受信回路12から受け取った受信信号と、関心領域内の各位置とに基づいて、各位置における解析信号を生成する。解析信号は、例えば、高調波成分に対応する高調波信号および基本波成分に対応する基本波信号を含む。また、解析信号は、例えば、非線形効果によって発生した差音に基づく差音成分に対応する差音信号が含まれてもよい。また更に、解析信号は、任意の受信中心周波数の帯域幅に含まれる成分(例えば和音成分)に対応する信号が含まれてもよい。なお、高調波成分、差音成分、及び和音成分は、その発生原理からそれぞれ非線形成分と呼ばれることもある。
図13は、他の実施形態に係る超音波診断装置が合成弾性画像を表示する処理を説明するための図である。図13には、図11と同様に、Bモード画像と、周波数フィルタとが対応付けられて示されている。尚、図13の説明において、超音波診断装置は、中心周波数f1のパルスおよび中心周波数f2のパルスを同時に送信し、中心周波数(f2−f1)および中心周波数2f1にそれぞれ対応する差音成分および高調波成分を利用するものとする。
Bモード画像上の合成弾性画像311には、4つの領域である第1領域312、第2領域313、第3領域314、及び第4領域315が示されている。合成弾性画像311は、組織性状画像に相当する。合成弾性画像311の表示される領域は、関心領域に相当する。第1領域312および第2領域313は、例えば、多重反射領域に含まれ、第3領域314および第4領域315は、深部領域に含まれる。
処理回路15は、信号処理機能151により、スキャン断面の深さに対応する周波数フィルタを設定する。一例として、処理回路15は、深さ0cmから3cmまでの範囲において、中心周波数2f1の周波数フィルタを設定し、深さ3cmから4cmまでの範囲において、中心周波数f2−f1と中心周波数2f1の間の中心周波数のフィルタを設定する。また、処理回路15は、深さ4cmから5cmまでの範囲において、中心周波数f2−f1の周波数フィルタを設定し、深さ5cm以降の範囲において、中心周波数f1の周波数フィルタを設定する。
例えば、深さ0cmから1cmの範囲において、受信周波数特性グラフG21を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF21は、中心周波数2f1である。深さ1cmから2cmの範囲において、受信周波数特性グラフG22を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF22は、中心周波数2f1である。深さ2cmから3cmの範囲において、受信周波数特性グラフG23を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF23は、中心周波数2f1である。
深さ3cmから4cmの範囲において、受信周波数特性グラフG24を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF24は、中心周波数f2−f1と中心周波数2f1の間の中心周波数である。深さ4cmから5cmの範囲において、受信周波数特性グラフG25を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF25は、中心周波数f2−f1である。深さ5cm以降の範囲において、受信周波数特性グラフG26を示す受信信号が得られた場合、周波数フィルタF26は、中心周波数f1である。
概括すると、処理回路15は、腹壁と関心領域との相対的な位置関係によって、関心領域内における各位置のそれぞれに対応する周波数フィルタを設定する。差音成分である中心周波数(f2−f1)の信号が発生する場合、処理回路15は、中心周波数f1である基本波周波数から中心周波数2f1である高調波周波数までの内の任意の中心周波数を有する周波数フィルタを設定することができる。また、送信波に含まれる周波数成分の組み合わせによっては、複数の非線形成分が同一の周波数帯で重なることがあり、その場合、1つのフィルタで複数の非線形成分の抽出が可能である。
(他の変形例)
上記各実施形態では、超音波診断装置1において合成弾性画像を生成した。他の変形例では、超音波診断装置1の処理回路15の各機能を少なくとも有する解析装置において合成弾性画像を生成する。
本他の変形例に係る解析装置は、例えば、図1に示される、処理回路15と、内部記憶回路17と、入力インタフェース20と、表示機器50と、入力装置60とを有する。尚、解析装置は、直接、又はネットワーク100を介して、例えば超音波診断装置と接続される。
本変形例において、処理回路15は、解析装置の中枢として機能するプロセッサである。処理回路15は、内部記憶回路17に記憶されている動作プログラムを実行することとで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。具体的には、処理回路15は、信号処理機能151(信号処理部)、計算機能153(計算部)、画像生成機能155(画像生成部)、表示制御機能157(表示制御部)、及びシステム制御機能159を有する。
信号処理機能151は、超音波診断装置により生成された受信信号に対して各種の信号処理を行う機能である。
具体的には、処理回路15は、信号処理機能151の実行により、被検体に対して超音波を送信し、被検体内で発生した超音波の反射波を受信し、反射波に基づいて受信信号を発生する超音波プローブにより収集された受信信号に基づいて、反射波の高調波成分に対応する高調波信号を生成し、反射波の基本波成分に対応する基本波信号を生成する。
または、処理回路15は、信号処理機能151の実行により、被検体に対して超音波を送信し、被検体内で発生した超音波の反射波を受信し、反射波に基づいて受信信号を発生する超音波プローブにより収集された受信信号と、関心領域内の各位置とに基づいて、各位置における解析信号を生成する。
システム制御機能159は、解析装置の入出力を制御する機能である。処理回路15は、システム制御機能159により、入力インタフェース20を介し、合成弾性画像を生成する処理を開始する開始指示を受け付ける。
なお、計算機能153、画像生成機能155、表示制御機能157、及びシステム制御機能159は、前述の内容と略同様のため説明を省略する。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、組織性状の定量化の質を向上させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。