以下、図面を参照して、実施形態に係る解析装置及び超音波診断装置を説明する。なお、以下の実施形態では、解析装置の一例として超音波診断装置について説明するが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、解析装置としては、超音波診断装置以外にも、パーソナルコンピュータやワークステーション、PACS(Picture Archiving Communication System)ビューワなど、超音波走査によって収集されたスキャンデータ群を処理することが可能な医用情報処理装置が適用可能である。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力インターフェース102と、ディスプレイ103とを有する。超音波プローブ101、入力インターフェース102、及びディスプレイ103は、装置本体100に接続される。なお、被検体Pは、超音波診断装置1の構成に含まれない。
超音波プローブ101は、複数の振動子(例えば、圧電振動子)を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体100が有する送受信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101が有する複数の振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号(エコー信号)として超音波プローブ101が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
なお、第1の実施形態は、図1に示す超音波プローブ101が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
入力インターフェース102は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体100に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
ディスプレイ103は、超音波診断装置1の操作者が入力インターフェース102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
装置本体100は、超音波プローブ101が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置であり、図1に示すように、送受信回路110と、信号処理回路120と、画像処理回路130と、画像メモリ140と、記憶回路150と、処理回路160とを有する。送受信回路110、信号処理回路120、画像処理回路130、画像メモリ140、記憶回路150、及び処理回路160は、相互に通信可能に接続される。
送受信回路110は、パルス発生器、送信遅延部、パルサ等を有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。パルス発生器は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延部は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束し、かつ送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルス発生器が発生する各レートパルスに対し与える。また、パルサは、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延部は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面から送信される超音波の送信方向を任意に調整する。
なお、送受信回路110は、後述する処理回路160の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
また、送受信回路110は、プリアンプ、A/D(Analog/Digital)変換器、受信遅延部、加算器等を有し、超音波プローブ101が受信した反射波信号に対して各種処理を行って反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャネル毎に増幅する。A/D変換器は、増幅された反射波信号をA/D変換する。受信遅延部は、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。加算器は、受信遅延部によって処理された反射波信号の加算処理を行って反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
送受信回路110は、被検体Pの2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、送受信回路110は、被検体Pの3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元方向に超音波ビームを送信させる。そして、送受信回路110は、超音波プローブ101が受信した反射波信号から3次元の反射波データを生成する。なお、送受信回路110は、送受信部の一例である。
信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。信号処理回路120により生成されたBモードデータは、画像処理回路130に出力される。
また、信号処理回路120は、例えば、送受信回路110から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理回路120は、反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。信号処理回路120により得られた運動情報(血流情報)は、画像処理回路130に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、若しくはこれらの組み合わせ画像としてディスプレイ103にカラー表示される。
また、信号処理回路120は、図1に示すように、解析機能121を実行する。ここで、例えば、図1に示す信号処理回路120の構成要素である解析機能121が実行する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路150)に記録されている。信号処理回路120は、各プログラムを記憶装置から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の信号処理回路120は、図1の信号処理回路120内に示された機能を有することとなる。なお、解析機能121が実行する処理機能については、後述する。解析機能121は、解析部の一例である。
画像処理回路130は、信号処理回路120により生成されたデータから超音波画像データを生成する。画像処理回路130は、信号処理回路120が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像処理回路130は、信号処理回路120が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
ここで、画像処理回路130は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像処理回路130は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像処理回路130は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像処理回路130は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像処理回路130が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像処理回路130は、信号処理回路120が3次元のデータ(3次元Bモードデータ及び3次元ドプラデータ)を生成した場合、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像処理回路130は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行って、表示用の2次元画像データを生成する。
画像メモリ140は、画像処理回路130が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ140は、信号処理回路120が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ140が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像処理回路130を経由して表示用の超音波画像データとなる。
記憶回路150は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路150は、必要に応じて、画像メモリ140が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、記憶回路150が記憶するデータは、図示しないインターフェースを介して、外部装置へ転送することができる。
処理回路160は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。具体的には、処理回路160は、入力インターフェース102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路150から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信回路110、信号処理回路120、及び画像処理回路130の処理を制御する。また、処理回路160は、画像メモリ140が記憶する表示用の超音波画像データをディスプレイ103にて表示するように制御する。
また、処理回路160は、図1に示すように、算出機能161と、生成機能162と、出力制御機能163とを実行する。算出機能161は、算出部の一例である。生成機能162は、生成部の一例である。出力制御機能163は出力制御部の一例である。
ここで、例えば、図1に示す処理回路160の構成要素である算出機能161と、生成機能162と、出力制御機能163とが実行する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で超音波診断装置1の記憶装置(例えば、記憶回路150)に記録されている。処理回路160は、各プログラムを記憶装置から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路160は、図1の処理回路160内に示された各機能を有することとなる。なお、算出機能161、生成機能162、及び出力制御機能163が実行する各処理機能については、後述する。
上記説明において用いた「プロセッサ(回路)」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路150に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路150にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、各図における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、生体組織の硬さを測定し、測定した硬さの分布を映像化するエラストグラフィ(Elastography)を実行可能な装置である。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、音響放射力を与えて生体組織に変位を発生させることで、シアウェーブ・エラストグラフィ(Shear Wave Elastography:SWE)を実行可能な装置である。
SWEにおいて、せん断波は、硬さが異なる組織間の境界面で反射する性質がある。この反射したせん断波は、プッシュパルスから直接的に発生したせん断波に重なって変位波形の外形変化を引き起こす。この外形変化は、変位のラグ(時間的なズレ)を推定する際に推定精度に悪影響を与える結果、正確な硬さの計測を阻害する。
図2及び図3は、せん断波の反射について説明するための図である。図2及び図3の上図において、ROI(Region Of Interest)内の中央に位置する楕円形のハッチング領域は、他の領域とは硬さが異なる領域(構造物)を示す。つまり、ハッチング領域の輪郭部分は、構造的な境界面に対応する。また、図2及び図3の下図には、変位波形(時間変位曲線)を示す。つまり、図2及び図3の下図において、横軸は時間(トラッキングパルスの送信回数)に対応し、縦軸は変位の振幅に対応する。また、図2は、境界面の近傍にプッシュパルスが照射される場合の一例である。また、図3は、図2と比較して境界面から離れた位置にプッシュパルスが照射される場合の一例である。
図2に示すように、プッシュパルスが照射されると、プッシュパルスが照射された位置(照射位置)からせん断波が伝播する。ここで、照射位置から図中の右方向へ伝播するせん断波Aは、例えば、トラッキングパルスの送受信位置において図2の下図に示す変位波形(破線)として観測される。なお、せん断波Aは、プッシュパルスの照射位置からトラッキングパルスの送受信位置まで反射せずに(直接的に)伝播するせん断波の一例である。
一方、照射位置から図中の左方向へ伝播するせん断波Bは、境界面で反射され、その後図中の右方向へ伝播する。このため、せん断波Bは、例えば、トラッキングパルスの送受信位置において図2の下図に示す変位波形(一点鎖線)として観測される。
すなわち、境界面の近傍にプッシュパルスが照射される場合、実際に観測される変位波形(実線)は、せん断波Aによって生じた変位波形(破線)とせん断波Bによって生じた変位波形(一点鎖線)とが重なって、ブロードな形状となる。
また、図3に示すように、図2と比較して境界面から離れた位置にプッシュパルスが照射される場合には、実際に観測される変位波形(実線)は、せん断波Cによって生じた変位波形(破線)とせん断波Dによって生じた変位波形(一点鎖線)とが重なって、ツインピーク形状となる。
このように、本来観測すべきせん断波(せん断波A又はせん断波C)の変位波形がブロードになる、又はツインピークになるなどして変形すると、ピークの振幅や時間(到達時間)が本来観測すべき変位波形とは異なってしまい、推定精度に悪影響を与える結果、安定的な硬さの計測を阻害する。
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、生体組織の硬さの安定的な計測を支援するために、以下に説明する処理機能を備える。
なお、SWEは、例えば、びまん性肝疾患において非常に有用な定量化技術の一つとなっている旨を説明したが、本実施形態は、びまん性肝疾患に限定されるものではない。例えば、本実施形態は、SWEが適用可能な部位や症例に広く適用可能である。
解析機能121は、生体組織の硬さを計測するための処理を実行する。例えば、解析機能121は、送受信回路110を制御することで、プッシュパルスの送信及びトラッキングパルスの送受信によりスキャンデータを収集する。なお、プッシュパルスは、音響放射力に基づいて生体組織にせん断波(Shear Wave)と呼ばれる横波を発生させる集束超音波パルスであり、せん断波を発生するための超音波の一例である。また、トラッキングパルスは、せん断波を観測する超音波パルスであり、せん断波を観測するための超音波の一例である。
例えば、送受信回路110は、プッシュパルスを超音波プローブ101から送信させて、生体組織にせん断波を発生させる。そして、送受信回路110は、プッシュパルスに基づいて発生するせん断波を観測するトラッキングパルスを超音波プローブ101から送信させる。トラッキングパルスは、プッシュパルスにより発生したせん断波の伝播速度を、ROI内の各サンプル点で観測するために送信される。通常、トラッキングパルスは、ROI内の各走査線に対して、複数回(例えば、100回)送信される。送受信回路110は、ROI内の各走査線で送信されたトラッキングパルスの反射波信号から、反射波データ(スキャンデータ)を生成する。
そして、解析機能121は、ROI内の各走査線で複数回送信されたトラッキングパルスの反射波データを解析して、ROI内の硬さの分布を示す硬さ分布データを算出する。具体的には、解析機能121は、プッシュパルスによって発生したせん断波の伝播速度を各サンプル点で測定することで、ROIの硬さ分布データを生成する。
例えば、解析機能121は、トラッキングパルスの反射波データを周波数解析する。これにより、解析機能121は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで、運動情報(組織ドプラデータ)を複数時相にわたって生成する。そして、解析機能121は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで得られた複数時相の組織ドプラデータの速度成分を時間積分する。これにより、解析機能121は、各走査線の複数のサンプル点それぞれの変位を複数時相にわたって算出する。つまり、変位は、変位波形(時間変位曲線)として検出される。すなわち、解析機能121は、プッシュパルスの送信及びトラッキングパルスの送受信により収集したスキャンデータを解析することで、被検体内の複数の位置それぞれにおける組織の動き(変位)を検出する検出部の一例である。また、変位波形は、変位の時系列変化を表す波形情報の一例である。
続いて、解析機能121は、各サンプル点で変位が最大となる時間を求める。そして、解析機能121は、各サンプル点で最大変位が得られた時間を、各サンプル点にせん断波が到達した到達時間として決定する。続いて、解析機能121は、各サンプル点におけるせん断波の到達時間の空間的微分を行うことで、各サンプル点でのせん断波の伝播速度を算出する。なお、せん断波の到達時間としては、各サンプル点で変位が最大となる時間のみに限定されるものではなく、例えば、各サンプル点における変位の変化量が最大となる時間を用いても良い。
そして、解析機能121は、ROI内の各サンプル点におけるせん断波の伝播速度の情報を、硬さ分布データとして生成する。硬い組織ではせん断波の伝播速度が大きく、柔らかい組織では伝播速度が小さくなる。すなわち、せん断波の伝播速度の値は、組織の硬さ(弾性率)を示す値となる。上記の場合、トラッキングパルスは、組織ドプラ用の送信パルスである。なお、上記のせん断波の伝播速度は、隣接する走査線における組織の変位の相互相関により算出することも可能である。
なお、解析機能121は、せん断波の伝播速度から、弾性率(ヤング率、せん断弾性率)を算出し、算出した弾性率により硬さ分布データを生成しても良い。せん断波の伝播速度、ヤング率及びせん断弾性率は、いずれも生体組織の硬さを表す物理量(指標値)として用いることができる。なお、硬さは、組織の性状を表すパラメータ(「組織性状パラメータ」とも表記)の一例である。
そして、解析機能121は、硬さ分布データを画像処理回路130に出力し、硬さ画像データを生成させる。具体的には、画像処理回路130は、硬さ分布データの各サンプル点におけるせん断波の伝播速度に応じた画像値を、ROI内の各位置に割り当てることで、硬さ画像データを生成する。
図4は、第1の実施形態に係る硬さ画像の一例を示す図である。図4に示すように、画像処理回路130によって生成された硬さ画像データは、例えば、Bモード画像I10上に硬さ画像I11として重畳され、ディスプレイ103に表示される。
このように、解析機能121は、生体組織の硬さを計測する処理を実行する。なお、上述した生体組織の硬さを計測する処理はあくまで一例であり、上述した内容に限定されるものではない。例えば、解析機能121は、せん断波により生じた組織の動き(例えば、変位)を検出可能であれば、エラストグラフィに関する公知の技術を任意に適用可能である。
算出機能161は、組織の動きに基づいて、複数の位置それぞれにおける組織の動きに関する指標値を算出する。例えば、算出機能161は、指標値として、組織の動き(変位)の減衰遅延に関する値を算出する。
一例としては、算出機能161は、組織の動きの大きさに対する閾値を用いて、指標値を算出する。言い換えると、算出機能161は、変位波形と閾値とに基づいて、指標値を算出する。具体的には、指標値として、組織の動きの波形情報が閾値以上となる時間幅を算出する。
図5〜図10は、第1の実施形態に係る算出機能161の処理を説明するための図である。図5〜図10には、あるサンプル点における変位波形(時間変位曲線)を例示する。つまり、図5〜図10において、横軸は時間(トラッキングパルスの送信回数)に対応し、縦軸は変位の振幅に対応する。つまり、変位波形における変位の観測時間は、トラッキングパルスの送受信の間隔及び回数に基づいて決定される。なお、図5〜図10において、閾値は、予め設定された値(固定値)である。閾値は、例えば、操作者によって予め入力され、記憶回路150に記憶されている。
例えば、算出機能161は、指標値として、変位波形が閾値以上となる時間幅を算出する。図5に示す例では、算出機能161は、時間T1を指標値として算出する。図6に示す例では、算出機能161は、時間T2を指標値として算出する。図7に示す例では、算出機能161は、時間T3と時間T4の和を指標値として算出する。図8に示す例では、算出機能161は、時間T5を指標値として算出する。
ここで、図9に示す例は、観測された変位波形が小さく、変位波形が閾値以上となる時間が存在しない場合の例である。この場合、算出機能161は、「0」を指標値として算出する。また、図10に示す例は、閾値以上となった変位波形が閾値未満に減衰しなかった場合の例である。この場合、算出機能161は、時間T6を指標値として算出する。
このように、算出機能161は、ROI内の各サンプル点について、変位波形が閾値以上となる時間幅(時間間隔)を指標値として算出する。言い換えると、時間幅は、変位の値(振幅)が閾値を超えた時刻から、変位の値が閾値を下回った時刻までの間隔、又は、変位の値が閾値を超えた時刻から、変位が最後に観測された時刻までの間隔に対応する。これにより、算出機能161は、各位置における変位波形がどの程度ブロードな形状となっているかを指標値として表すことができる。
なお、上述した指標値を算出する処理はあくまで一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、算出機能161は、必ずしも時間幅の値そのものを指標値として算出しなくても良い。一例としては、算出機能161は、時間幅の値に所定の値を加減乗除した値、又は、時間幅の値を所定の関数に入力して求めた値などであっても良い。つまり、算出機能161は、時間幅の値の増減に応じて増減する値を指標値として算出することができる。
また、例えば、算出機能161は、予め設定された固定値ではなく、組織の動きの波形情報におけるピーク値に対する割合を閾値として用いても良い。例えば、算出機能161は、「ピーク値の60%の値」を閾値として用いる。この場合、変位波形のピーク値の大きさに応じて閾値が変動するので、図9に示した例においても「0」ではない値が算出される。なお、閾値として用いる割合は、例えば、操作者によって予め入力され、記憶回路150に記憶されている。
また、算出機能161は、時間幅ではなく、組織の動きの波形情報が閾値以上となる範囲におけるピークの数を指標値として算出しても良い。ピークの数を指標値として算出する場合、算出機能161は、例えば、図5の変位波形では「1」を算出し、図6〜図10の変位波形では「2」を算出する。これにより、算出機能161は、各位置における変位波形が単一のピークを有するのか、ツインピーク或いは3つ以上のピークを有するのかを指標値として表すことができる。なお、時間幅やピークの数以外の指標値の例については、変形例にて後述する。
生成機能162は、複数の位置それぞれに対して、各位置の指標値に応じた画素値を割り当てたパラメトリック画像を生成する。なお、このパラメトリック画像は、第1指標画像の一例である。
図11は、第1の実施形態に係る生成機能162の処理を説明するための図である。図11に示すように、生成機能162は、Bモード画像I10上に設定されたROI内の各位置に対して、各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、パラメトリック画像I12を生成する。なお、パラメトリック画像I12の領域は、硬さ画像I11の領域に対応する。
このように、生成機能162は、パラメトリック画像I12を生成する。なお、生成機能162の処理は、画像処理回路130が実行することも可能である。
出力制御機能163は、指標値を出力する。例えば、出力制御機能163は、生成機能162によって生成されたパラメトリック画像I12を、ディスプレイ103に表示させる。
図12は、第1の実施形態に係る出力制御機能163の処理を説明するための図である。図12に示すように、出力制御機能163は、パラメトリック画像I12を硬さ画像I11と同時にディスプレイ103上に表示させる。
なお、図12に図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、パラメトリック画像I12及び硬さ画像I11は、Bモード画像I10に重畳表示されていなくても良い。また、例えば、パラメトリック画像I12は、硬さ画像I11上に重畳表示されても良い。
また、出力制御機能163は、必ずしもパラメトリック画像I12を表示しなくても良い。例えば、出力制御機能163は、指標値を数値としてディスプレイ103上に表示することもできる。数値として表示する場合、出力制御機能163は、例えば、操作者によって指定された位置(サンプル点)の指標値を表示するのが好適である。操作者によって領域が指定される場合には、出力制御機能163は、領域内の指標値の統計値(平均値、最大値、最小値など)を表示してもよいし、領域内の代表点における指標値を表示してもよい。また、パラメトリック画像I12が表示されない場合には、処理回路160は、生成機能162を備えていなくても良い。
また、出力制御機能163による情報の出力先は、ディスプレイ103に限定されるものではない。例えば、出力制御機能163は、ネットワークを介して超音波診断装置1に接続される外部装置に情報を送信しても良い。また、出力制御機能163は、記憶回路150、又は、可搬性の記録媒体に情報を格納しても良い。
図13は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1による処理手順を示すフローチャートである。図13に示す処理手順は、エラストグラフィを行うための撮像モードであるエラストモードを開始する旨の指示が操作者によって入力されることにより開始される。なお、図13の各処理手順における詳細な処理内容は、超音波診断装置1の各処理機能として説明した内容と同様であるため、適宜省略して説明する。
図13に示すように、超音波診断装置1は、エラストモードを開始する旨の指示が操作者によって入力された場合に(ステップS101肯定)、ステップS102以降の処理を開始する。なお、エラストモードを開始する旨の指示が入力されるまで(ステップS101否定)、ステップS102以降の処理は開始されず、図13の処理は待機状態である。
超音波診断装置1が開始されると、解析機能121は、ROIを設定する(ステップS102)。例えば、エラストモードが開始されると、超音波プローブ101の当接位置に応じたBモード画像が自動的に表示される。操作者は、表示されたBモード画像上に、硬さ画像を表示するためのROIを配置するための入力操作を行う。解析機能121は、操作者によって配置された位置にROIを設定する。
続いて、解析機能121は、ROIに対応する硬さ画像を生成する(ステップS103)。例えば、操作者が硬さ画像の撮像ボタンを押下すると、解析機能121は、送受信回路110を制御して、プッシュパルスの送信及びトラッキングパルスの送受信を行って、ROI内の各位置についてスキャンデータを収集する。そして、解析機能121は、収集したスキャンデータに基づいて、ROIに対応する硬さ画像を生成する。
そして、算出機能161は、組織の動き(変位)に基づいて、動きの減衰に関する指標値を算出する(ステップS104)。例えば、算出機能161は、ROI内の各位置の指標値として、変位波形が閾値以上となる時間幅を算出する。
そして、生成機能162は、ROIに対応するパラメトリック画像を生成する(ステップS105)。例えば、生成機能162は、ROI内の各位置に対して、各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、パラメトリック画像を生成する。
そして、出力制御機能163は、硬さ画像及びパラメトリック画像を表示させる(ステップS106)。出力制御機能163は、ディスプレイ103上に、硬さ画像及びパラメトリック画像を並列表示させる。
なお、図13に図示した内容はあくまで一例であり、図示の内容に限定されるものではない。例えば、変位が検出された後であれば、指標値を算出する処理(ステップS104)及びパラメトリック画像を生成する処理(ステップS105)は、硬さ画像を生成する処理(ステップS103の処理)より先に実行されても良いし、並行処理として実行されても良い。
上述してきたように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1において、送受信回路110は、せん断波発生用超音波の送信及びせん断波観測用超音波の送受信を実行することで、スキャンデータを収集する。続いて、解析機能121は、スキャンデータを解析することで、被検体内の複数の位置それぞれにおける組織の動きを検出する。そして、算出機能161は、組織の動きに基づいて、複数の位置それぞれにおける組織の動きの波形情報に関する指標値を算出する。そして、出力制御機能163は、指標値を出力する。これによれば、超音波診断装置1は、生体組織の硬さの安定的な計測を支援することができる。
例えば、超音波診断装置1は、硬さ画像とともに、変位波形が閾値以上となる時間幅に応じた画素値を有するパラメトリック画像を表示する。操作者は、このパラメトリック画像を閲覧することで、反射したせん断波を含み難い安定した位置でスキャンデータを収集できていたか否かを判断することができる。これにより、超音波診断装置1は、必要に応じて硬さ画像の再撮像を行わせるなど、生体組織の硬さの安定的な計測を支援することが可能となる。
(変形例1)
第1の実施形態では、組織の動きとして「変位」が用いられる場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置1は、「変位」ではなく、「瞬時変位」又は「瞬時速度」を組織の動きとして用いることができる。
例えば、上述した生体組織の硬さを計測する処理において得られる組織ドプラデータの速度成分は、「瞬時変位」に対応する。瞬時変位の波形情報も、反射したせん断波の成分を含む場合には、変位の波形情報と同様の波形の変化が認められる。このため、算出機能161は、変位と同様に瞬時変位を扱うことで、指標値を算出することができる。
なお、「瞬時速度」は、瞬時変位を微分することで得られる値である。瞬時速度についても変位、瞬時変位と同様の特徴を有するので、算出機能161は、変位と同様に瞬時速度を扱うことで、指標値を算出することができる。
(変形例2)
また、第1の実施形態では、閾値として用いられる固定値及び割合は、プッシュパルスの照射位置からの方位方向の距離に基づいて設定されてもよい。
せん断波によって生じる変位は、せん断波の伝播距離に応じて減衰することが知られている。そこで、算出機能161は、各位置における閾値を、プッシュパルスの照射位置からの方位方向の距離に基づいて設定する。
例えば、算出機能161は、プッシュパルスの照射位置に近いサンプル点の閾値を、プッシュパルスの照射位置から離れたサンプル点の閾値より高い値に設定する。これにより、算出機能161は、せん断波の伝播距離に応じた閾値を設定することができる。
(変形例3)
また、変形例2にて説明した「せん断波の伝播距離に応じた閾値」は、リファレンス領域に基づいて設定してもよい。
図14は、第1の実施形態の変形例3に係る算出機能161の処理を説明するための図である。図14の上図には、硬さ画像I11上に設定されたリファレンス領域R10を例示する。図14の下図には、リファレンス領域R10内のトラッキングパルスの送受信位置P1,P2,P3における変位波形を例示する。なお、図14において、位置P1は、位置P2よりプッシュパルスの照射位置に近く、位置P3は、位置P2よりプッシュパルスの照射位置から遠い。
図14に示すように、操作者は、硬さ画像I11上にリファレンス領域R10を設定する。このとき、リファレンス領域R10は、組織(又は硬さ)が均一に見える領域に設定されるのが好適である。
そして、算出機能161は、各位置P1,P2,P3における変位波形の振幅に基づいて、せん断波の伝播距離に応じた閾値Th1,Th2,Th3(Th1>Th2>Th3)を設定する。ここで、閾値Th1は、せん断波の伝播距離が位置P1相当である場合の閾値である。また、閾値Th2は、せん断波の伝播距離が位置P2相当である場合の閾値である。また、閾値Th3は、せん断波の伝播距離が位置P3相当である場合の閾値である。
このように、算出機能161は、各位置における閾値を、リファレンス領域における組織の動きに基づいて設定する。なお、リファレンス領域R10は、硬さ画像I11ではなく、Bモード画像I10上に設定されても良い。
(変形例4)
また、指標値としては、時間幅及びピークの数に限らず、例えば、面積を利用することも可能である。ただし、変位波形の面積は、組織の動きの減衰遅延だけでなく、振幅の大きさも反映した値となってしまう。このため、面積を利用する場合には、振幅の値で正規化した後に面積を算出するのが好適である。
例えば、算出機能161は、指標値の算出対象となる複数の位置それぞれの変位波形の振幅を正規化する。具体的には、算出機能161は、ROI内の各サンプル点の変位波形を、ピークの振幅値が100%となるように正規化する。そして、算出機能161は、正規化後の変位波形が閾値以上となる領域の面積を算出する。例えば、正規化後の変位波形として図5に示したような変位波形が得られた場合には、算出機能161は、変位波形を示す曲線と閾値のライン(水平線)とで囲まれた領域の面積を算出する。
このように、算出機能161は、指標値として、正規化された組織の動きの波形情報が閾値以上となる領域の面積を算出する。
(変形例5)
また、指標値としては、時間幅、ピークの数、及び面積に限らず、例えば、一定の減衰率に到達するまでの時間を利用することも可能である。
図15は、第1の実施形態の変形例5に係る算出機能161の処理を説明するための図である。図15には、あるサンプル点における変位波形を例示する。図15において、横軸は時間(トラッキングパルスの送信回数)に対応し、縦軸は変位の振幅に対応する。
図15の例では、減衰率は「30%」に設定されている。この場合、算出機能161は、指標値として、変位波形のピークが減衰率「30%」に到達するまでの時間T7を算出する。なお、減衰率は、操作者によって予め入力され、記憶回路150に記憶されている。
このように、算出機能161は、指標値として、組織の動きの波形情報におけるピーク値が所定の減衰率に到達するまでの時間を算出する。なお、減衰率は、30%に限らず、任意の値が設定可能である。
(変形例6)
また、指標値としては、時間幅、ピークの数、面積、及び一定の減衰率に到達するまでの時間のうち2以上の値を組み合わせたものを利用することも可能である。
例えば、算出機能161は、時間幅(図5の時間T1)と、一定の減衰率に到達するまでの時間(図15の時間T7)とを組み合わせたものを、指標値として算出する。組み合わせ方としては、単純に加算した値(T1+T7)を用いても良いし、重み付け等を行う任意の関数に入力して算出することも可能である。
すなわち、算出機能161は、指標値として、組織の動きの波形情報が閾値以上となる時間幅、組織の動きの波形情報が閾値以上となる範囲におけるピークの数、正規化された組織の動きの波形情報が閾値以上となる領域の面積、及び、組織の動きの波形情報におけるピーク値が所定の減衰率に到達するまでの時間のうちの少なくとも一つを算出することができる。
(第2の実施形態)
生体組織の硬さの信頼性を表示する技術の一つとして、伝播画像が知られている(特許文献2:特開2015−131097号公報)。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態にて説明した指標値と伝播画像とを組み合わせることにより、生体組織の硬さの信頼性とともに、生体組織の硬さの計測環境の安定性を示す場合について説明する。
図16及び図17は、第2の実施形態に係る生成機能162の処理を説明するための図である。図16には、伝播画像の一例を示す。図17には、第1の実施形態にて説明した指標値と伝播画像とを組み合わせたパラメトリック画像の一例を示す。
図16に示すように、生成機能162は、伝播画像I13を生成する機能を備える。ここで、伝播画像I13は、せん断波の到達時間が略同一となる位置(例えば、到達時間が略同一となる位置)を線で結んだ線状の画像(線画像)が描出された画像である。例えば、所定の範囲内に含まれる到達時間を略同一とみなすことができる。伝播画像I13は、地図上に引かれた等高線のように、せん断波が同程度の時間で到達した位置(線)を操作者に提示するものである。なお、伝播画像I13を生成する機能としては、例えば、特開2015−131097号公報(特許文献2)に開示の技術を適用可能である。
例えば、生成機能162は、ROIに含まれる各位置の到達時間に基づいて、各位置の「到達度」を算出する。この到達度は、ROIに含まれる各位置の到達時間のうち最大の到達時間を100%として、各位置の到達時間を換算した値である。そして、生成機能162は、到達度が30%となる位置を繋げることにより、線画像L10を生成する。また、生成機能162は、到達度が60%となる位置を繋げることにより、線画像L11を生成する。また、生成機能162は、到達度が90%となる位置を繋げることにより、線画像L12を生成する。そして、生成機能162は、3つの線画像L10,L11,L12を含む画像を伝播画像I13として生成する。なお、伝播画像I13のうち、線画像L10,L11,L12が描出されない領域には、例えば、任意の画素値が透過度100%で割り当てられることとなる。
なお、図16に図示した内容はあくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、線画像は、到達度が一定の値となる位置を結ぶのではなく、到達度が一定の範囲に含まれる位置を結ぶこととしても良い。例えば、生成機能162は、到達度が29〜%〜31%に含まれる位置を繋げることにより、線画像L10を生成しても良い。また、生成機能162は、到達度を用いるのではなく、例えば、到達時間の積算値を用いてもよい。
また、図16では、各線画像が一定の幅で描出されているが、実際には、到達度が略同一となる位置を結んだ結果、幅にばらつきのある線画像(太くなったり細くなったりする画像)が生成される場合がある。このような場合、生成機能162は、幅にばらつきのある線画像をそのまま伝播画像としても良いし、線画像の幅が一定になるように加工して伝播画像としても良い。
そして、図17の上図に示すように、生成機能162は、各線画像に対して、各線画像に含まれる各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、パラメトリック画像I14を生成する。つまり、生成機能162は、線画像L10の領域に、線画像L10に含まれる各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、線画像L14を生成する。また、生成機能162は、線画像L11の領域に、線画像L11に含まれる各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、線画像L15を生成する。また、生成機能162は、線画像L12の領域に、線画像L12に含まれる各位置の指標値に応じた画素値を割り当てることで、線画像L16を生成する。そして、生成機能162は、3つの線画像L14,L15,L16を含む画像をパラメトリック画像I14として生成する。なお、パラメトリック画像I14は、第2指標画像の一例である。
なお、図17の上図では、図示の都合上、各線画像L14,L15,L16には均一なハッチングが施されているが、実際には、各線画像L14,L15,L16に含まれる各位置(各ピクセル)には指標値に応じた個別の画素値が割り当てられる。例えば、図17の領域R11を拡大すると、図17の下図に示すように、線画像には各々の指標値に応じた画素値が割り当てられており、均一な画素値が割り当てられているわけではない。
このように、生成機能162は、ROIに含まれる複数の位置のうち、せん断波の到達時間が所定の範囲内に含まれる領域に対して、その領域に含まれる各位置の指標値に応じた画素値を割り当てたパラメトリック画像I14を生成する。これにより、第2の実施形態に係る超音波診断装置1は、生体組織の硬さの信頼性とともに、生体組織の硬さの計測環境の安定性を操作者に提示することができる。
なお、上述した内容はあくまで一例であり、上述した内容に限定されるものではない。例えば、伝播画像I13及びパラメトリック画像I14を順番に説明したのは説明の都合であり、生成機能162が画像を生成する順序を示すものではない。つまり、生成機能162は、伝播画像I13を生成することなく、パラメトリック画像I14を生成することができる。
また、図17では、パラメトリック画像I14がBモード画像I10上に重畳表示される場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、パラメトリック画像I14は、硬さ画像I11上に重畳表示されても良いし、如何なる画像にも重畳されずに単独で表示されてもよい。また、パラメトリック画像I14は、硬さ画像I11及び/又はパラメトリック画像I12と並列表示されても良い。
また、パラメトリック画像I14を生成する処理は、図17にて説明した処理に限定されるものではない。例えば、生成機能162は、伝播画像I13のうち線画像L10,L11,L12が描出されない領域をマスクするマスク画像を用いて、パラメトリック画像I14を生成することができる。具体的には、生成機能162は、伝播画像I13のうち、線画像L10,L11,L12に含まれる領域を「1」、線画像L10,L11,L12が描出されない領域を「0」に設定したマスク画像を生成する。そして、生成機能162は、生成したマスク画像を用いて、図11に示したパラメトリック画像I12に対するマスク処理を実行する。この結果、生成機能162は、パラメトリック画像I14を生成することができる。
(その他の実施形態)
上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてもよい。
(解析装置)
上記の実施形態では、解析装置の一例として超音波診断装置1について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、解析装置としては、パーソナルコンピュータやワークステーション、PACSビューワなど、超音波走査によって収集されたスキャンデータ群を処理することが可能な医用情報処理装置が適用可能である。
図18は、その他の実施形態に係る解析装置200の構成例を示すブロック図である。解析装置200は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーション、PACSビューワなど、超音波走査によって収集されたスキャンデータ群を処理することが可能な医用情報処理装置によって構成される。
図18に示すように、解析装置200は、入力インターフェース201、ディスプレイ202、記憶回路210、及び処理回路220を備える。入力インターフェース201、ディスプレイ202、記憶回路210、及び処理回路220は、相互に通信可能に接続される。
入力インターフェース201は、マウス、キーボード、タッチパネル等、操作者からの各種の指示や設定要求を受け付けるための入力装置である。ディスプレイ202は、医用画像を表示したり、操作者が入力インターフェース201を用いて各種設定要求を入力するためのGUIを表示したりする表示装置である。
記憶回路210は、例えば、NAND(Not AND)型フラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)であり、医用画像データやGUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。
処理回路220は、解析装置200における処理全体を制御する電子機器(プロセッサ)である。処理回路220は、解析機能221、算出機能222、生成機能223、及び出力制御機能224を実行する。解析機能221、算出機能222、生成機能223、及び出力制御機能224は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路210内に記録されている。処理回路220は、各プログラムを読み出し、実行することで読み出した各プログラムに対応する機能(解析機能221、算出機能222、生成機能223、及び出力制御機能224)を実現する。
解析装置200は、例えば、エラストグラフィを実行可能な超音波診断装置から、せん断波発生用超音波の送信及びせん断波観測用超音波の送受信により収集されたスキャンデータを受信する。
そして、解析装置200において、解析機能221は、せん断波発生用超音波の送信及びせん断波観測用超音波の送受信により収集したスキャンデータを解析することで、被検体内の複数の位置それぞれにおける組織の動きを検出する。算出機能222は、組織の動きに基づいて、複数の位置それぞれにおける組織の動きに関する指標値を算出する。生成機能223は、複数の位置それぞれに対して、各位置の指標値に応じた画素値を割り当てた第1指標画像を生成する。出力制御機能224は、指標値を出力する。これによれば、解析装置200は、生体組織の硬さの安定的な計測を支援することができる。
なお、図18の説明はあくまで一例であり、上記の説明に限定されるものではない。例えば、解析装置200は、指標値を数値として出力する場合には、生成機能223を備えていなくても良い。
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。例えば、送受信回路110、信号処理回路120、画像処理回路130、及び処理回路160の全て、又は、任意に選択される2つ以上の回路の処理機能を一つの処理回路で実行することも可能である。
また、上記の実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
また、上記の実施形態及び変形例で説明した解析方法は、予め用意された解析プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この解析プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この超音波イメージング方法は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、生体組織の硬さの安定的な計測を支援することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。