JP2018085591A - 原子発振器、原子発振器の周波数調整方法、および出力周波数調整システム - Google Patents

原子発振器、原子発振器の周波数調整方法、および出力周波数調整システム Download PDF

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健一 小野
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Abstract

【課題】原子発振器の出力周波数の調整を効率的に行うことができるようにする。【解決手段】原子発振器は、外部の周波数発振器から第2の周波数信号が入力される入力端子と、逓倍手段に入力される周波数信号を、第1の周波数信号と、第2の周波数信号との間で切り替える切り替え手段と、逓倍手段に第2の周波数信号が入力されているときに、光強度検出手段によって検出された光の光強度に応じて、逓倍手段から出力される周波数信号の周波数が、ガスセルの共鳴周波数と合致するように、逓倍手段の逓倍比を制御する制御手段と、逓倍手段から出力された周波数信号の周波数が、ガスセルの共鳴周波数と合致したときの、逓倍手段の逓倍比を記憶する記憶手段とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、原子発振器、原子発振器の周波数調整方法、および出力周波数調整システムに関する。
従来、CPT(Coherent Population Trapping)共鳴という量子現象を利用して、ガスセルに封入されているアルカリ金属原子(例えば、セシウム(Cs)等)の共鳴周波数を参照し、出力周波数を一定に制御する原子発振器が知られている。このような原子発振器においては、ガスセル内のバッファガスの状態の変化に伴い、共鳴周波数が変化するため、出力周波数も変化してしまう。そのため、適宜、原子発振器の出力周波数を調整しなければならない。
このための調整方法として、例えば、下記特許文献1には、磁界発生部が調整可能な共鳴周波数の最大桁を境界桁として、少なくとも境界桁よりも上の桁をフラクショナルN−PLL(Phase Locked Loop)で調整する技術が開示されている。
また、従来、高精度の周波数発振器(例えば、セシウム周波数標準等)を用い、周波数発振器の出力周波数と、原子発振器の出力周波数とが同じ周波数とになるように、原子発振器の出力周波数を調整する方法が知られている。
しかしながら、この方法では、原子発振器に内蔵されている周波数発振器の短期安定度が低いことから、精密な周波数の調整に時間がかかるという課題が生じていた。また、原子発振器の出力周波数を計測するために、周波数カウンタなどの計測器が必要であるという課題も生じていた。
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、原子発振器の出力周波数の調整を効率的に行うことができるようにすることを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明の原子発振器は、周波数信号の周波数を逓倍して出力する逓倍手段と、前記逓倍手段から出力された前記周波数信号を用いた駆動電流により発光する発光手段と、前記発光手段から発せられた光を透過するガスセルと、前記ガスセルを透過した前記光の光強度を検出する光強度検出手段と、第1の周波数信号を出力する周波数発振器と、外部の周波数発振器から第2の周波数信号が入力される入力端子と、前記逓倍手段に入力される周波数信号を、前記第1の周波数信号と、前記第2の周波数信号との間で切り替える切り替え手段と、前記逓倍手段に前記第2の周波数信号が入力されているときに、前記光強度検出手段によって検出された前記光の光強度に応じて、前記逓倍手段から出力される前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致するように、前記逓倍手段の逓倍比を制御する制御手段と、前記逓倍手段から出力された前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致したときの、前記逓倍手段の逓倍比を記憶する記憶手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、原子発振器の出力周波数の調整を効率的に行うことができる。
本発明の第1実施形態に係る原子発振器の回路構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る原子発振器が備える周波数シンセサイザの回路構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る原子発振器が備える量子部の構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係る原子発振器による出力周波数調整動作の手順を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態に係る原子発振器の回路構成を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る出力周波数調整システムの構成を示す図である。 本発明の第3実施形態に係る出力周波数調整システムに対する比較例を示す図である。
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
(原子発振器100の回路構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器100の回路構成を示す図である。最初に、原子発振器100の基本構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の原子発振器100は、電圧制御水晶発振器101、周波数シンセサイザ102、励起用レーザ駆動回路103、量子部104、制御部105、不揮発性メモリ106、クロック出力端子107、およびセレクタ110を備えている。
電圧制御水晶発振器(VCXO:Voltage Controlled Crystal Oscillator)101は、本発明の「周波数発振器」の一例である。電圧制御水晶発振器101は、所定の周波数(例えば、10MHz)のクロック信号(本発明の「第1の周波数信号」の一例)を出力する。
周波数シンセサイザ102は、本発明の「逓倍手段」の一例である。周波数シンセサイザ102は、PLL回路を構成しており、入力されたクロック信号を所定の逓倍率で逓倍することにより、所望の周波数を有する高周波クロック信号を生成して出力する。周波数シンセサイザ102の出力クロック信号は、励起用レーザ駆動回路103に入力される。例えば、量子部104のガスセル302(図3参照)に封入されているアルカリ金属原子がセシウムの場合、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号の周波数は約4.6GHzとされる。この場合、周波数シンセサイザ102に入力されるクロック信号(例えば、電圧制御水晶発振器101の出力クロック信号)の周波数が10MHzであれば、逓倍率は約460倍となる。この逓倍率は、制御部105の制御により、周波数シンセサイザ102に設定される。なお、逓倍率は、整数の倍率に限らず、周波数シンセサイザ102にフラクショナルN−PLLを用いることにより、小数点以下の倍率とすることもできる。なお、周波数シンセサイザ102の具体的な構成については、図2を用いて後述する。
励起用レーザ駆動回路103は、量子部104が備える励起用レーザ301(図3参照)を駆動するための直流電流に、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号による変調を加えて、当該変調後の直流電流を駆動電流として、量子部104に供給する。
量子部104は、励起用レーザ301、ガスセル302、および光検出器303を備えている(図3参照)。量子部104においては、励起用レーザ301が、励起用レーザ駆動回路103から供給された駆動電流によって発光する。励起用レーザ301から発せられた光は、ガスセル302内を透過して光検出器303に入射される。そして、光検出器303が、当該光検出器303に入射された光の光強度に応じた光検出信号を出力する。なお、量子部104の具体的な構成については、図3を用いて後述する。
制御部105は、本発明の「制御手段」の一例である。制御部105の動作は、後述する「調整モード」と「実使用モード」とで異なる。例えば、「調整モード」においては、制御部105は、光検出器303から出力された光検出信号に応じて、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致するように、周波数シンセサイザ102の逓倍比を制御する。一方、「実使用モード」においては、制御部105は、光検出器303から出力された光検出信号に応じて、光検出器303の出力に対するロックインアンプの出力が0に合い続ける方向、すなわちCPT共鳴のピークに向かうように、電圧制御水晶発振器101の出力周波数を微調整する。
不揮発性メモリ106は、本発明の「記憶手段」の一例である。不揮発性メモリ106は、「調整モード」において、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致したときの、周波数シンセサイザ102の逓倍比を記憶する。不揮発性メモリ106に記憶された周波数シンセサイザ102の逓倍比は、「実使用モード」において、制御部105によって読み出され、周波数シンセサイザ102に設定されることとなる。
クロック出力端子107は、電圧制御水晶発振器101の出力クロック信号を、外部へ出力する。
次に、原子発振器100のさらなる構成について説明する。図1に示すように、本実施形態の原子発振器100は、選択信号入力端子111、外部クロック入力端子112、およびセレクタ110をさらに備えている。
外部クロック入力端子112は、本発明の「入力端子」の一例である。外部クロック入力端子112は、セシウム周波数標準120が接続され、セシウム周波数標準120から出力された外部クロック信号(本発明の「第2の周波数信号」の一例)が入力される。
セシウム周波数標準120は、本発明の「外部の周波数発振器」の一例である。セシウム周波数標準120は、原子発振器100の周波数確度よりも、高い周波数確度を有する。セシウム周波数標準120には、例えば、Microsemi社の5071Aを用いることができる。この装置は、周波数確度が±1.0E-12(標準)/±5.0E-13(ハイパフォーマンス)という高いクロック信号を出力することができる。
セレクタ110は、本発明の「切り替え手段」の一例である。セレクタ110は、電圧制御水晶発振器101および外部クロック入力端子112と、周波数シンセサイザ102との間に設けられている。セレクタ110の一方の入力端子は、電圧制御水晶発振器101に接続されている。セレクタ110の他方の入力端子は、外部クロック入力端子112に接続されている。セレクタ110の出力端子は、周波数シンセサイザ102に接続されている。
この構成により、セレクタ110は、周波数シンセサイザ102に入力されるクロック信号を、電圧制御水晶発振器101の出力クロック信号と、外部クロック入力端子112から入力された外部クロック信号との間で切り替えることができるようになっている。セレクタ110の切り替えは、外部の装置から選択信号入力端子111を介して入力された、基準周波数選択信号に従って行われる。
例えば、外部の装置から第1の基準周波数選択信号が入力されると、セレクタ110の入力は、外部クロック入力端子112から入力された外部クロック信号に切り替わる。これにより、原子発振器100は、「調整モード」になる。反対に、外部の装置から第2の基準周波数選択信号が入力されると、セレクタ110の入力は、電圧制御水晶発振器101の出力クロック信号に切り替わる。これにより、原子発振器100は、「実使用モード」になる。
(周波数シンセサイザ102の回路構成)
図2は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器100が備える周波数シンセサイザ102の回路構成を示す図である。図2に示すように、周波数シンセサイザ102は、R分周器201、位相比較器202、チャージポンプ203、ループフィルタ204、電圧制御高周波発振器205、およびフラクショナルN分周器206を備えている。
周波数シンセサイザ102は、これらの構成部201〜206により、PLL回路を構成している。これにより、周波数シンセサイザ102は、入力されたクロック信号の周波数を所定の逓倍率で逓倍することにより、所望の周波数を有する高周波クロック信号を生成して出力することができるようになっている。なお、ここでは、入力されたクロック信号の周波数を10MHzとし、この周波数を460倍に逓倍することにより、4.6GHzのクロック信号を出力する例を説明する。
R分周器201は、周波数シンセサイザ102に入力されたクロック信号(10MHz)をR分周する。位相比較器202は、R分周器201によってR分周されたクロック信号と、フラクショナルN分周器206によって分周されたクロック信号との位相差を検出し、当該位相差に応じた信号を出力する。チャージポンプ203は、位相比較器202から出力された信号に応じて、ループフィルタ204内のコンデンサをチャージまたはディスチャージする。これにより、ループフィルタ204は、位相比較器202によって検出された位相差に応じた制御電圧を出力する。
電圧制御高周波発振器205は、ループフィルタ204から出力された制御電圧により、当該制御電圧に応じた周波数(すなわち、位相比較器202によって検出された位相差に応じた周波数)のクロック信号を出力する。
フラクショナルN分周器206は、電圧制御高周波発振器205から出力されるクロック信号の周波数を分周する。フラクショナルN分周器206は、整数部と小数部の設定が可能で、入力周波数に対し、整数分周を行うことができるだけでなく、小数点以下の分周を行うことも可能である。
このように構成された周波数シンセサイザ102は、R分周器201によってR分周されたクロック信号の位相と、フラクショナルN分周器206によって生成されたクロック信号の位相とがロックするように、電圧制御高周波発振器205から出力されるクロック信号の周波数に対して、フィードバック制御がなされる。これにより、最終的に、電圧制御高周波発振器205から、所望の周波数(4.6GHz)のクロック信号が出力されることとなる。
(量子部104の構成)
図3は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器100が備える量子部104の構成を示す図である。量子部104は、励起用レーザ301、ガスセル302、および光検出器(PD:Photo Diode)303を備えている。
励起用レーザ301は、本発明の「発光手段」の一例である。励起用レーザ301は、励起用レーザ駆動回路103から供給された駆動電流により発光する。
励起用レーザ301から発せられた光は、ガスセル302内を透過して、光検出器303に入射される。ガスセル302には、アルカリ金属原子(例えば、セシウム、ルビジウム、ナトリウム等)およびバッファガス(例えば、窒素、ネオン、アルゴン等)が封入されている。このため、ガスセル302内を光が透過することに伴い、アルカリ金属原子にEIT(Electromagnetically induced transparency)現象が生じ、アルカリ金属原子の光吸収率が変化することとなる。
光検出器303は、本発明の「光強度検出手段」の一例である。光検出器303は、当該光検出器303に入射された光の光強度に応じた光検出信号を出力する。光検出器303から出力された光検出信号は、制御部105に供給される。
なお、図3の例では、量子部104は、加熱器304および磁場発生装置305をさらに備えている。加熱器304は、ガスセル302を一定の温度に保つために設けられている。また、磁場発生装置305は、本発明の「磁場発生手段」の一例である。磁場発生装置305は、ガスセル302に一定の磁場を与えるために設けられている。例えば、磁場発生装置305には、コイルが用いられる。量子部104は、加熱器304および磁場発生装置305を備えることにより、気温および磁場の影響による共鳴周波数の変化を抑制することができるようになっている。
(原子発振器100による周波数調整動作の手順)
図4は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器100による出力周波数調整動作の手順を示すフローチャートである。
まず、外部の装置から、選択信号入力端子111を介して、セレクタ110に第1の基準周波数選択信号を供給する。これにより、セレクタ110の入力を、セシウム周波数標準120から出力された外部クロック信号に切り替える(ステップS401:第1の切り替え工程)。これにより、原子発振器100は、「調整モード」となり、周波数シンセサイザ102には、セシウム周波数標準120から出力された、周波数確度に優れた周波数(例えば、10MHz)のクロック信号が入力されることとなる。
周波数シンセサイザ102は、入力されたクロック信号を逓倍し、所望の周波数(約4.6GHz)のクロック信号を出力する(ステップS402:逓倍工程)。周波数シンセサイザ102から出力された所望の周波数(約4.6GHz)のクロック信号は、励起用レーザ駆動回路103に入力される。
励起用レーザ駆動回路103は、励起用レーザ301の駆動用の直流電流に対し、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号による変調を加えて、当該変調後の直流電流を駆動電流として、量子部104に供給する(ステップS403:駆動電流供給工程)。
量子部104においては、励起用レーザ301が、励起用レーザ駆動回路103から供給された駆動電流によって発光する(ステップS404:発光工程)。励起用レーザ301から発せられた光は、ガスセル302内を透過して光検出器303に入射される。そして、光検出器303が、当該光検出器303に入射された光の光強度に応じた光検出信号を出力する(ステップS405:光検出信号出力工程)。
次に、制御部105が、光検出器303から出力された光検出信号に応じて、周波数シンセサイザ102(PLL)の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致するように、周波数シンセサイザ102の逓倍比を制御する(ステップS406:逓倍比制御工程)。
そして、不揮発性メモリ106が、周波数シンセサイザ102(PLL)の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致したときの、周波数シンセサイザ102の逓倍比を記憶する(ステップS407:逓倍比記憶工程)。
上記ステップS401〜S407の動作により、不揮発性メモリ106には、ガスセル302内のバッファガスの現状に応じた適切な周波数シンセサイザ102の逓倍比が、記憶されることとなる。
その後、外部の装置から、選択信号入力端子111を介して、セレクタ110に第2の基準周波数選択信号を供給する。これにより、セレクタ110の入力を、電圧制御水晶発振器101の出力クロック信号に切り替える(ステップS408:第2の切り替え工程)。これにより、原子発振器100は、「実使用モード」となり、周波数シンセサイザ102には、電圧制御水晶発振器101から出力されたクロック信号が入力されることとなる。
この「実使用モード」では、制御部105が、不揮発性メモリ106から、周波数シンセサイザ102の逓倍比を読み出して、当該逓倍比を周波数シンセサイザ102(PLL)に設定する(ステップS409:逓倍比設定工程)。
そして、原子発振器100は、このように周波数シンセサイザ102に適切な逓倍比が設定されている状態で、出力周波数を一定に制御する通常の動作(電圧制御水晶発振器101の出力周波数をフィードバック制御する動作)を行う(ステップS410)。例えば、制御部105が、ガスセル302を透過して光検出器303に入射される光の検出量が最大となるように、電圧制御水晶発振器101の発振周波数を制御する。これにより、電圧制御水晶発振器101は、安定して発振動作を継続することができる。したがって、原子発振器100は、周波数安定度が高い出力クロック信号を発生させることができる。
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る原子発振器100では、周波数シンセサイザ102に入力されるクロック信号を、セシウム周波数標準120から出力された外部クロック信号(第2の周波数信号)に切り替えることが可能な構成を採用している。これにより、原子発振器100によれば、短期安定度がより高い出力クロック信号を用いた出力周波数の調整を行うことができるため、出力周波数の調整をより短時間で行うことができる。
特に、原子発振器100では、周波数シンセサイザ102に第2の周波数信号が入力されているときに、周波数シンセサイザ102から出力された周波数信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数と合致したときの、周波数シンセサイザ102の逓倍比を、不揮発性メモリ106が記憶するようにしている。これにより、原子発振器100によれば、原子発振器100の実使用を開始する際に、不揮発性メモリ106に記憶された逓倍比を、周波数シンセサイザ102に設定することで、直ちに、出力周波数が高精度に調整された状態とすることができる。
さらに、原子発振器100によれば、出力周波数の調整を行う際、周波数カウンタなどの計測器は不要である。したがって、原子発振器100によれば、当該原子発振器100の出力周波数の調整を効率的に行うことができる。
〔第2実施形態〕
次に、図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る原子発振器100'の回路構成を示す図である。この第2実施形態の原子発振器100'は、制御部105の代わりに制御部105'を備える点で、第1実施形態(図1)の原子発振器100と異なる。
制御部105'は、制御部105と同様の機能に加え、「調整モード」において、光検出器303によって検出された光強度に応じて、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致するように、量子部104の磁場発生装置305(図3参照)が発生する磁場の強度をさらに制御することが可能である。具体的には、制御部105'は、磁場発生装置305の制御値(電流値)を制御することにより、磁場発生装置305が発生する磁場の強度を制御することが可能である。
これに伴い、不揮発性メモリ106は、「調整モード」において、周波数シンセサイザ102の出力クロック信号の周波数が、ガスセル302の共鳴周波数に合致したときの、磁場発生装置305の電流値をさらに記憶することが可能である。このため、制御部105'は、「実使用モード」において、不揮発性メモリ106から、磁場発生装置305の制御値(電流値)をさらに読み出して、当該制御値による磁場発生装置305の制御を行うことが可能である。
第2実施形態の原子発振器100'によれば、磁場発生装置305がガスセル302に与える磁場の強度を制御することで、出力周波数をさらに高精度に調整することができる。また、原子発振器100'によれば、原子発振器100の実使用を開始する際に、不揮発性メモリ106に記憶された制御値をさらに読み込んで、磁場発生装置305の制御を行うことで、直ちに、出力周波数がより高精度に調整された状態とすることができる。
〔第3実施形態〕
次に、図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る出力周波数調整システム600の構成を示す図である。図6に示す出力周波数調整システム600は、複数の原子発振器100(第1実施形態の原子発振器100と同じもの)と、モード切り替え手段601と、セシウム周波数標準120とを備えて構成されている。
モード切り替え手段601は、本発明の「切り替え制御装置」の一例である。モード切り替え手段601は、複数の原子発振器100の各々の選択信号入力端子111に接続されている。これにより、モード切り替え手段601は、複数の原子発振器100の各々に対し、基準周波数選択信号を供給して、セレクタ110の切り替えを行うことができるようになっている。
セシウム周波数標準120は、複数の原子発振器100の各々の外部クロック入力端子112に接続されている。これにより、セシウム周波数標準120は、複数の原子発振器100の各々に対し、周波数確度が高いクロック信号を出力することができる。
ここで、図7に示す比較例との比較により、出力周波数調整システム600の効果について説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る出力周波数調整システム600に対する比較例を示す図である。
図7に示す比較例では、複数の原子発振器700の各々の出力周波数を調整するために、複数の周波数カウンタ702と、セシウム周波数標準701と、逓倍数設定手段703とを設けている。この構成は、本発明を適用せずに、複数の原子発振器の出力周波数を調整する場合に、考え得る構成である。この構成では、各原子発振器700について、セシウム周波数標準701の出力周波数と、原子発振器700の出力周波数との誤差を、周波数カウンタ702にて検出する。そして、検出された誤差に応じて、逓倍数設定手段703により、原子発振器700の周波数シンセサイザに設定する逓倍比を変更することで、原子発振器700の出力周波数を所望の周波数に近づけるように調整する。
しかしながら、この比較例の構成では、各原子発振器700の内部で行われる調整動作は、原子発振器700に内蔵されている、短期安定度が比較的低い周波数発振器の出力クロック信号に基づいて行われる。したがって、各原子発振器700の内部で行われる調整動作に時間がかかる。また、この比較例の構成では、図7から明らかなように、各原子発振器700の出力周波数を計測するために、複数の周波数カウンタ702を設ける必要がある。
一方、図6に示す第3実施形態の出力周波数調整システム600では、各原子発振器100の内部で行われる調整動作は、短期安定度が比較的高いセシウム周波数標準120の出力クロック信号に基づいて行われる。したがって、各原子発振器100の内部で行われる調整動作の短時間化が可能である。また、第3実施形態の出力周波数調整システム600では、周波数カウンタなどの計測器が必要なく、比較的簡単な構成により、複数の原子発振器100の出力周波数を調整することができる。
なお、上記各実施形態において、外部の装置から供給された基準周波数選択信号により、セレクタ110の入力を切り替えるようにしているが、これに限らない。例えば、制御部105,105'が、セレクタ110の入力を切り替えるようにしてもよい。
また、上記各実施形態において、外部の周波数発振器として、セシウム周波数標準120を用いているが、少なくとも、電圧制御水晶発振器101よりも短期安定度が高いものであれば、その他の周波数発振器を用いてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
100,100' 原子発振器
101 電圧制御水晶発振器(周波数発振器)
102 周波数シンセサイザ(逓倍手段)
103 励起用レーザ駆動回路
104 量子部
105,105' 制御部(制御手段)
106 不揮発性メモリ(記憶手段)
110 セレクタ(切り替え手段)
111 選択信号入力端子
112 外部クロック入力端子(入力端子)
120 セシウム周波数標準(外部の周波数発振器)
301 励起用レーザ(発光手段)
302 ガスセル
303 光検出器(光強度検出手段)
304 加熱器
305 磁場発生装置(磁場発生手段)
600 出力周波数調整システム
601 モード切り替え手段(切り替え制御装置)
特開2014−192669号公報

Claims (6)

  1. 周波数信号の周波数を逓倍して出力する逓倍手段と、
    前記逓倍手段から出力された前記周波数信号を用いた駆動電流により発光する発光手段と、
    前記発光手段から発せられた光を透過するガスセルと、
    前記ガスセルを透過した前記光の光強度を検出する光強度検出手段と、
    第1の周波数信号を出力する周波数発振器と、
    外部の周波数発振器から第2の周波数信号が入力される入力端子と、
    前記逓倍手段に入力される周波数信号を、前記第1の周波数信号と、前記第2の周波数信号との間で切り替える切り替え手段と、
    前記逓倍手段に前記第2の周波数信号が入力されているときに、前記光強度検出手段によって検出された前記光の光強度に応じて、前記逓倍手段から出力される前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致するように、前記逓倍手段の逓倍比を制御する制御手段と、
    前記逓倍手段から出力された前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致したときの、前記逓倍手段の逓倍比を記憶する記憶手段と
    を備えることを特徴とする原子発振器。
  2. 前記ガスセルに磁場を与える磁場発生手段をさらに備え、
    前記制御手段は、
    前記逓倍手段に前記第2の周波数信号が入力されているときに、前記光強度検出手段によって検出された前記光の光強度に応じて、前記逓倍手段から出力される前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致するように、前記磁場発生手段が前記ガスセルに与える前記磁場の強度をさらに制御し、
    前記記憶手段は、
    前記逓倍手段に前記第2の周波数信号が入力されているときに、前記逓倍手段から出力された前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致したときの、前記磁場発生手段の制御値をさらに記憶する
    ことを特徴とする請求項1に記載の原子発振器。
  3. 外部の装置から基準周波数選択信号が入力される選択信号入力端子をさらに備え、
    前記切り替え手段は、前記選択信号入力端子に前記基準周波数選択信号が入力されたことに応じて、前記逓倍手段に入力される周波数信号を、前記第1の周波数信号または前記第2の周波数信号に切り替える、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の原子発振器。
  4. 前記外部の周波数発振器は、セシウム周波数標準である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の原子発振器。
  5. 周波数信号の周波数を逓倍して出力する逓倍手段と、
    前記逓倍手段から出力された前記周波数信号を用いた駆動電流により発光する発光手段と、
    前記発光手段から発せられた光を透過するガスセルと、
    前記ガスセルを透過した前記光の光強度を検出する光強度検出手段と
    を備えた原子発振器の周波数調整方法であって、
    前記逓倍手段に入力される周波数信号を、外部の周波数発振器から入力される第2の周波数信号に切り替える切り替え工程と、
    前記逓倍手段に前記第2の周波数信号が入力されているときに、前記光強度検出手段によって検出された前記光の光強度に応じて、前記逓倍手段から出力される前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致するように、前記逓倍手段の逓倍比を制御する逓倍比制御工程と、
    前記逓倍手段から出力された前記周波数信号の周波数が、前記ガスセルの共鳴周波数と合致したときの、前記逓倍手段の逓倍比を、前記原子発振器の記憶手段に記憶させる記憶工程と
    を含むことを特徴とする原子発振器の周波数調整方法。
  6. 請求項3に記載の複数の原子発振器と、
    前記複数の原子発振器の各々の前記入力端子に、前記第2の周波数信号を供給可能に接続された、前記外部の周波数発振器と、
    前記複数の原子発振器の各々の前記選択信号入力端子に、前記基準周波数選択信号を供給可能に接続された、切り替え制御装置と
    を備えることを特徴とする出力周波数調整システム。
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