JP2018080253A - エポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、ABS樹脂やポリカーボネート樹脂/ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂を主成分とする強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品に加工した際の剛性が高く、筐体を薄肉化できる反面、成形品に加工した際の耐衝撃性が不十分であるという問題がある。
上記材料のうち、特に、ポリカーボネート樹脂/ポリエステル樹脂を主成分とする強化熱可塑性樹脂組成物は、熱安定性も低い。このため、成形工程においてシリンダー内で高温に保持されることにより、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂とのエステル交換反応により分解ガスが発生し、泡やシルバーストリークと称される成形品の外観不良も生じやすい。また、ポリカーボネート樹脂の分子量低下により、ポリカーボネート樹脂本来の耐衝撃性や耐熱性等が損なわれることもある。さらに、強化熱可塑性樹脂組成物が高温下で滞留することによってポリカーボネート樹脂の粘度が変化し、射出成形時の成形安定性が損なわれ、得られる成形品のショートショットやバリが発生するという問題もある。
一方、ポリアミド樹脂を主成分とする強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品にした際の機械強度には優れるものの、上述した反りや寸法変化、外観劣化の問題は解消できない。これは、成形後の成形品が吸湿することによって生じる問題であり、仮に、成形前に成形材料を乾燥させたとしても解決できる問題ではない。さらに、ポリアミド樹脂を主成分とする強化熱可塑性樹脂組成物は、フロントガラス用エポキシ系接着剤との接着強度が低いという問題もある。
(1)ポリカーボネート樹脂と、グラフト共重合体と、水溶性ポリウレタンで表面処理されたガラス繊維と、グリシジルエーテル単位含有重合体と、燐酸エステル系難燃剤とを特定量含有する強化熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献1を参照)。
(2)芳香族ポリカーボネート樹脂と、ポリアミドで表面処理された繊維状充填材と、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、エポキシ基、およびオキサゾリン基から選択された少なくとも1種の官能基を有する滑剤とを特定量含んでなる強化熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献2を参照)。
(3)特定量のポリカーボネート樹脂と、ゴム含有ポリマーと、ナイロン系収束剤で収束された炭素繊維とからなる強化熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献3を参照)。
(4)ポリカーボネート樹脂と、重縮合触媒の失活処理がなされたポリエチレンテレフタレート樹脂と、カーボンブラックとを特定量配合してなる強化熱可塑性樹脂組成物(例えば、特許文献4を参照)。
また、上記(2)の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品に加工した際の機械的強度(曲げ強度等)が低下する問題を有していた。
また、上記(3)の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品に加工した際の耐衝撃性が不十分であった。
また、上記(4)の強化熱可塑性樹脂組成物は、成形品に加工した際の剛性が低かった。
しかしながら、成形性および得られる成形品の剛性、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性、難燃性、およびフロントガラス用エポキシ系接着剤との接着強度の全てにおいてバランスに優れた強化熱可塑性樹脂組成物は、いまだ提案されていない。
[1]ポリカーボネート樹脂(A)の80〜100質量%と、ゴム質重合体(G1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(G)の0〜20質量%とからなる(ただし、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記グラフト共重合体(G)との合計は100質量%である。)樹脂主成分(C)と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と、無機充填材(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)と、を含有する強化熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が、リサイクルおよび/またはリペレットされたものであり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、5〜30質量部であり、
前記無機充填材(D)の含有量が、当該強化熱可塑性樹脂組成物100質量%中、20〜45質量%であり、
前記グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の質量平均分子量が3,800〜60,000であり、前記グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、3〜10質量部であり、
前記燐酸エステル系難燃剤(F)は質量平均分子量が326を超え、前記燐酸エステル系難燃剤(F)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、3〜25質量部である、エポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記樹脂主成分(C)が、前記ポリカーボネート樹脂(A)の80〜95質量%と、前記グラフト共重合体(G)の5〜20質量%とからなる、[1]に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記無機充填材(D)が炭素繊維である、[1]又は[2]に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
[4]前記無機充填材(D)がガラス繊維である、[1]又は[2]に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
[5][1]〜[4]のいずれか一項に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工された、少なくともエポキシ系接着剤を使用する成形品。
本発明の成形品は、剛性、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性、難燃性、およびフロントガラス用エポキシ系接着剤との接着強度の全てが高いものである。
なお、以下の説明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。また、「成形品」とは、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物を成形加工してなるものである。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、樹脂主成分(C)と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と、無機充填材(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)と、を含有する。
樹脂主成分(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)の80〜100質量%と、グラフト共重合体(G)の0〜20質量%とからなる(ただし、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記グラフト共重合体(G)との合計は100質量%である。)。
グラフト共重合体(G)は、ゴム質重合体(G1)の存在下に、単量体混合物(m1)を重合して得られたものである。
また、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、燐酸エステル系難燃剤(F)以外の他の難燃剤(I)を含んでいてもよい。
さらに、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、樹脂主成分(C)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)、無機充填材(D)、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)、燐酸エステル系難燃剤(F)、難燃助剤(H)および他の難燃剤(I)以外の他の成分を含んでいてもよい。
以下、各成分((A)〜(I)、(G1)、(m1)等)について説明する。
ポリカーボネート樹脂(A)は、ジヒドロキシジアリールアルカンから得られる樹脂である。ポリカーボネート樹脂(A)は、分岐していない構造のものであってもよく、分岐した構造のものであってもよい。本発明の強化熱可塑性樹脂組成物において、ポリカーボネート樹脂(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリカーボネート樹脂(A)は、市販品を用いてもよく、公知の製造方法により製造したものを用いてもよい。
ジヒドロキシジアリールアルカンとしては、例えば、ヒドロキシ基に対してオルトの位置にアルキル基を有するものが挙げられる。ジヒドロキシジアリールアルカンの好ましい具体例としては、例えば、4,4−ジヒドロキシ2,2−ジフェニルプロパン(すなわち、ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、およびビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
分岐したポリカーボネート樹脂(A)は、例えば、ジヒドロキシ化合物の一部(例えば0.2〜2モル%)をポリヒドロキシ化合物で置換することにより製造される。ポリヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、フロログリシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、および1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)として、コンパクトディスク等からリサイクルしたものを用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、例えば溶液粘度法により求めることができる。市販のポリカーボネート樹脂(A)を用いる場合は、カタログ値の粘度平均分子量を用いてもよい。
ゴム質重合体(G1)としては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ジエン−アクリル複合ゴム、およびシリコーン−アクリル複合ゴム等が挙げられる。
ジエン−アクリル複合ゴムのアクリルゴム成分は、アルキル(メタ)アクリレート(f)と多官能性単量体(g)とが重合したものである。
ゴム質重合体(G1)は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下に、ゴム質重合体(G1)を形成する単量体を乳化重合することによって調製される。このような乳化重合法による調製方法は、ゴム質重合体(G1)の粒子径を制御しやすいというメリットがある。
ゴム質重合体(G1)の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性をさらに高くできる点から、0.1〜0.6μmが好ましい。
本発明において説明する体積平均粒子径とは、例えば、レーザー回折・散乱法などの方法によって測定される値である。
単量体混合物(m1)は、芳香族アルケニル化合物(以下、単量体(a)ともいう。)およびシアン化ビニル化合物(以下、単量体(b)ともいう。)を含む。必要に応じて、単量体(a)および単量体(b)と共重合可能な他の単量体(以下、単量体(c)ともいう。)をさらに含んでもよい。
単量体(b)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
単量体(c)としては、例えば、アルキルメタクリレート(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等)、アルキルアクリレート(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等)、およびマレイミド化合物(N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。
グラフト共重合体(G)は、ゴム質重合体(G1)の存在下に、単量体混合物(m1)を重合して得られたものである。つまりグラフト共重合体(G)は、ゴム質重合体(G1)に、単量体混合物(m1)から形成された分子鎖(G2)がグラフトされたものである。
より具体的には、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(G)は、例えば、体積平均粒子径が0.1〜0.6μmであるゴム質重合体(G1)の粒子に、芳香族アルケニル化合物の単量体(a)単位およびシアン化ビニル化合物の単量体(b)単位を有する分子鎖(G2)が結合したものであり、ゴム質重合体(G1)からなるコア部と、単量体(a)単位(芳香族アルケニル化合物)および単量体(b)単位(シアン化ビニル化合物)からなる外層部から構成される。
グラフト共重合体(G)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アセトン可溶分が30質量%以下(アセトン不溶分が70質量%以上)であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性がさらに良好になり、成形品の表面外観もさらに良好となる。アセトン可溶分が1質量%以上(アセトン不溶分が99質量%以下)であれば、成形品の引き裂き強度が向上する。
アセトン可溶分の前記還元粘度が0.3dl/g以上であれば、成形品の引き裂き強度が向上する。アセトン可溶分の前記還元粘度が0.7dl/g以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性がさらに良好になり、得られる成形品の表面外観が良好となる。
本発明において説明する還元粘度は、粘度平均分子量の場合と同様、例えば、溶液粘度を測定する方法によって求められる。
グラフト共重合体の2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱した後、遠心分離機を用い、1500rpmの回転数にて30分間遠心分離する。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤する。その質量差分(2.5g−乾燥後の試料の質量)から、グラフト共重合体におけるアセトン可溶分の割合(%)を求めることができる。
アセトン可溶分の還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定する。
尚、グラフト共重合体(G)は、ゴム質重合体(G1)と単量体混合物(m1)とがどのように重合しているか、詳細に特定することは困難である。すなわち、グラフト共重合体(G)を、その構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。
グラフト共重合体(G)は、ゴム質重合体(G1)の存在下に、単量体混合物(m1)をグラフト重合させることによって得られる。
グラフト重合法としては、特に制限はないが、乳化重合法が好ましい。また、グラフト重合時には、グラフト共重合体(G)の分子量、グラフト率、アセトン可溶分の還元粘度を調整するために、各種連鎖移動剤を添加してもよい。
樹脂主成分(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)の80〜100質量%と、グラフト共重合体(G)の0〜20質量%とからなり、ポリカーボネート樹脂(A)の80〜95質量%と、グラフト共重合体(G)の5〜20質量%とからなることが好ましく、ポリカーボネート樹脂(A)の90〜95質量%と、グラフト共重合体(G)の5〜10質量%とからなることがさらに好ましい。ただし、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記グラフト共重合体(G)との合計は100質量%であり、例えば、樹脂主成分(C)の総質量(100質量%)に対してグラフト共重合体(G)の割合が0%の場合には、ポリカーボネート樹脂(A)の割合が100質量%となる。
ポリカーボネート樹脂(A)の割合が上記範囲内であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が良好である。特に、ポリカーボネート樹脂(A)の割合が上記範囲の下限値以上であれば、成形品の難燃性、機械的強度、剛性が高くなり、上限値以下であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性がさらに良好になる。
グラフト共重合体(G)の割合が上記範囲内であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性が良好である。特に、グラフト共重合体(G)の割合が上記範囲の上限値以下であれば成形品の難燃性、機械的強度、剛性が高くなり、下限値以上であれば、強化熱可塑性樹脂組成物の成形性がさらに良好になる。
ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)樹脂(B)は、リサイクルおよび/またはリペレットされたものである。具体的には、リサイクルされたPET樹脂、リペレットされたPET樹脂、リサイクルされ、リペレットされたPET樹脂等が挙げられる。
使用済みPETボトルや食品トレー等を回収して得られるリサイクル材については、分別により、異種材料や金属の混入を避ける必要が有る。また、回収した使用済みPET樹脂製品をアルカリ水等によって洗浄した場合には、PET樹脂の加水分解を促進させるアルカリ分が残留しないように、十分に水洗した後、乾燥処理を施すことが必要である。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)に用いられる、リサイクルされたPET樹脂の形状としては、フレーク状が一般的であり、平均粒径としては2〜5mmが好ましい。また、異物除去のために、一旦、ペレット化(リペレット)したものを用いてもよい。
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)に用いられる、リペレットされたPET樹脂としては、上記リサイクルされたPET樹脂をペレット化したもの、市販されているペレット状製品(バージン材)をペレット化したもの等が挙げられる。上記のようなPET樹脂のペレット化は、例えば、押出機等を用いて実施できる。
PET樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填材(D)としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維、無機繊維に金属コーティングしたもの、ウオラスナイト、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、チタン酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の無機物、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属や合金、およびそれらの酸化物の繊維、粉末等が挙げられる。これらのうち、少ない配合で高い剛性が得られることから、ガラス繊維や炭素繊維を用いることが好ましい。
また、ガラス繊維、炭素繊維は、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体やポリアミド等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、またはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
繊維断面における長径/短径は、例えば電子顕微鏡を用いて、繊維断面を8箇所で観察し、8箇所の長径/短径を平均して求める。市販品を用いる場合は、例えば、カタログ値における繊維断面の長径/短径を用いてもよい。
無機充填材(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)は、分子中にグリシジルエーテル単位を有する重合体である。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)は、ハロゲン原子(臭素等)を有しないことが好ましい。また、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)は、ブロック型重合体ではないことが好ましい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ビフェニル型エポキシ樹脂等の高分子量体であって、下記式(1)で表される単位を分子中に有する分子鎖を有するもの(例えば、エポキシ基含有フェノキシ樹脂)等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の質量平均分子量は、質量分析法により求めることができる。市販のグリシジルエーテル単位含有重合体(E)を用いる場合は、カタログ値の質量平均分子量を用いてもよい。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の市販品としては、例えば、三菱化学社製のjER(登録商標)シリーズ、新日鉄住金化学社製のエポトート(登録商標)シリーズ、フェノトート(登録商標)シリーズ、旭化成イーマテリアルズ社製のAER(登録商標)シリーズ、およびDIC社製のエピクロン(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
燐酸エステル系難燃剤(F)としては、公知のものを用いることができ、例えば下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
(q+1)価の有機基としては、前記1価の有機基から、炭素原子に結合している水素原子のq個を除いた構造の官能基が挙げられる。水素原子が取り除かれる炭素原子の位置は任意である。(q+1)価の有機基の具体例としては、アルキレン基、(置換)フェニレン基等が挙げられる。
ポリホスフェートは、例えば、多核フェノール類(例えば、ビスフェノールA類等)等の各種ジオール体とオルト燐酸との脱水縮合によって得られる。ジオール体としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフェニロールメタン、ジフェニロールジメチルメタン、ジヒドロキシビフェニル、p,p’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、およびジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量は、成形品の難燃性の点から、692以下が好ましく、690以下がより好ましく、686以下が特に好ましい。
燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量は、質量分析法により求めることができる。市販の燐酸エステル系難燃剤(F)を用いる場合は、カタログ値の質量平均分子量を用いてもよい。
燐酸エステル系難燃剤(F)の市販品としては、例えば、ADEKA社製のFPシリーズ、味の素ファインテクノ社製のクロニテックス(登録商標)シリーズ、ケムチュラジャパン社製のレオフォス(登録商標)シリーズ、大八化学社製のCRシリーズ、PXシリーズ等が挙げられる。
難燃助剤(H)は、強化熱可塑性樹脂組成物の燃焼時のドリップを防止する成分である。難燃助剤(H)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン単位を有する共重合体、およびシリコーン系重合体等が挙げられる。
燐酸エステル系難燃剤(F)以外の他の難燃剤(I)としては、公知の各種難燃剤を用いることができ、燐酸エステル系難燃剤(F)以外の非ハロゲン系難燃剤が好ましい。該非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、リン含有ポリエステル、無機系難燃剤(赤燐、水酸化アルミニウム等)、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤、およびポリリン酸メラミン等のイントメッセント系難燃剤などが挙げられる。
赤燐系難燃剤としては、熱硬化性樹脂で被覆されて安定化されたもの、または熱硬化性樹脂および金属水酸化物で被覆されて安定化されたものが用いられる。赤燐系難燃剤は、単独では発火性があるため、あらかじめ樹脂主成分(C)の少なくとも一部またはポリカーボネート樹脂(A)に混合してマスターバッチ化してもよい。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物に含有される他の成分としては、例えば、他の改質剤、離型剤、光または熱に対する安定剤、帯電防止剤、染料、および顔料等が挙げられる。
強化熱可塑性樹脂組成物中、PET樹脂(B)の含有量は、樹脂主成分(C)100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。PET樹脂(B)の含有量が5質量部以上30質量部以下であれば、耐衝撃性に優れる。
本発明においては、無機充填材(D)の含有量として上記範囲を選択することにより、成形品の剛性等を維持しながら、良好な成形性、および優れたエポキシ系接着剤との接着強度を実現できるものである。
本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、樹脂主成分(C)(ポリカーボネート樹脂(A)および必要に応じてグラフト重合体(G))と、リサイクルおよび/またはリペレットされたPET樹脂(B)と、無機充填材(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)と、必要に応じて難燃助剤(H)、燐酸エステル系難燃剤(F)以外の難燃剤(I)、その他の成分を配合することによって得られる。具体的には、各成分を、混合装置(例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、ナウターミキサー等)を用いて混合することによって得られる。さらに、上記の各成分を、混練装置(例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等)を用いて混練してもよい。
以上説明したような、本発明に係るエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物によれば、樹脂主成分(C)と、リサイクルおよび/またはリペレットされたPET樹脂(B)と、特定量の無機充填材(D)と、特定の質量平均分子量のグリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)とを、特定の割合で含有するため、成形性が良好であり、また、得られる成形品の剛性、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性、難燃性、フロントガラス用エポキシ系接着剤との接着強度を高くできる。
また、成形性が良好であることから、得られる成形品に、シルバーストリーク等の外観不良が生じにくい。
本発明の成形品は、本発明に係るエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物が成形加工されたものである。
強化熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては、例えば、射出成形法(フィルムやガラス板などのインサート成形を含む。)、射出圧縮成形法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法、およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのうち、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができる点から、射出成形法、または射出圧縮成形法を採用することが好ましい。
なお、以下の説明において、「部」および「%」は、それぞれ、特に規定のない限り、「質量部」および「質量%」を意味する。
各種測定および評価に用いた方法、ならびに使用した成分は、以下の通りである。
[アセトン可溶分]
グラフト共重合体の2.5gをアセトン90ml中に浸漬し、65℃で3時間加熱した後、遠心分離機を用い、1500rpmの回転数にて30分間遠心分離した。その後、上澄み液を除去し、残分を真空乾燥機にて65℃で12時間乾燥し、乾燥後の試料を精秤した。その質量差分(2.5g−乾燥後の試料の質量(g))から、グラフト共重合体におけるアセトン可溶分の割合(%)を求めた。アセトン可溶分の還元粘度は、0.2g/dlのN,N−ジメチルホルムアミド溶液とし、25℃で測定した。
ISO 179−1:2013年度版に記載の方法に準じ、シャルピー衝撃強度を測定した。
ISO 178:2013年度版に記載の方法に準じ、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。曲げ強度は成形品の機械的強度の指標であり、曲げ弾性率は成形品の剛性の指標である。
ISO 75−2:2013年度版に記載の方法準じ、1.80MPa荷重フラットワイズ法での撓み温度を測定した。
A4サイズのノート型パーソナルコンピュータの液晶ディスプレイカバー(厚さ1mm)を、強化熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形機(日本製鋼所社製、J350E、350tアキュームレーター付き)によって、成形温度290℃、射出速度99%、金型温度85℃の成形条件で成形した。そして、成形の際のショートショット(未充填部分)の有無およびヒケやシルバーストリーク、ガス焼けの有無により、以下の評価基準で成形性を評価した。
◎:未充填やヒケ、ガス焼けはなかった。
○:一部にヒケが見られた。
×:未充填であるか、ガスやけやシルバーストリークが見られた。
強化熱可塑性樹脂組成物を、上記の成形性の評価と同様の射出成形法により成形して試験片(幅12.7mm、長さ127mm、厚さ1.8mm)を作製し、UL94に記載の方法に準拠して、下記のようにして難燃性を評価した。
まず、垂直に支持した前記試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後、バーナー炎を試験片から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により、UL94におけるV−1相当であるかどうかの判定を行い、以下の評価基準にて難燃性を評価した。なお、V−1の基準は、「1回目の有炎燃焼持続時間が10秒超30秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がない。」である。
○:V−1レベルの難燃性を有していた。
×:V−1レベルの難燃性を有していなかった。
強化熱可塑性樹脂組成物を、上記の成形性及び難燃性の評価と同様の射出成形法により成形して試験片(幅12.7mm、長さ127mm、厚さ2.0mm)を作製した。そして、この試験片を、接着面積169mm2(縦13mm×横13mm)で、接着剤を用いて一対で張り合わせ、つかみ間距離178mm、速度5mm/minで引っ張った際の最大点試験力(N)により、接着剤との接着強度を評価した。この際、接着剤として、(株)スリーボンド製エポキシ系接着剤「スリーボンド2082C」を用いた。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
ポリカーボネート樹脂(A−1)として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製のノバレックス7021PJ(粘度平均分子量:18,800)を用いた。
固形分濃度35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス(固形分として100部)に、n−ブチルアクリレート単位85%およびメタクリル酸単位15%からなる平均粒子径0.08μmの共重合体ラテックス(固形分として2部)を、撹拌しながら添加した。30分間撹拌を続けて、平均粒子径0.28μmの肥大化ブタジエン系ゴム質重合体(G1−1)ラテックスを得た。
得られた肥大化ブタジエン系ゴム質重合体(G1−1)ラテックスを反応器に仕込み、蒸留水100部、ウッドロジン乳化剤4部、デモールN(花王社製、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物)0.4部、水酸化ナトリウム0.04部、デキストローズ0.7部を添加した。この混合物を、反応器内で撹拌しながら昇温させ、内温60℃の時点で、硫酸第一鉄0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.4部、亜ジチオン酸ナトリウム0.06部を添加した後、下記成分を含む混合物を90分間にわたり連続的に滴下し、その後1時間保持して冷却することにより、グラフト共重合体(G−1)ラテックスを得た。
アクリロニトリル 30部。
スチレン 70部。
クメンヒドロペルオキシド 0.4部。
tert−ドデシルメルカプタン 1部。
このグラフト共重合体(G−1)のアセトン可溶分は27%であった。また、このアセトン可溶分の還元粘度は0.3dl/gであった。
反応器に下記の割合で原料を仕込み、窒素置換下50℃で4時間撹拌しながら重合させて、ゴム質重合体(G1−2)ラテックスを得た。
n−ブチルアクリレート 98部。
1,3−ブチレングリコールジメタクリレート 1部。
アリルメタクリレート 1部。
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム 2.0部。
脱イオン水 300部。
過硫酸カリウム 0.3部。
リン酸二ナトリウム12水塩 0.5部。
リン酸水素ナトリウム12水塩 0.3部。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物100部に、ベンゾイルペルオキシド0.7部を溶解し、窒素置換した後、前記ゴム質重合体(G1−2)ラテックスが入った反応器に、上記の単量体混合物を、30部/時間の速度で定量ポンプにより添加した。単量体混合物を全て添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間撹拌を続けて、グラフト共重合体(G−2)ラテックスを得た。この際の重合率は99%であった。
このグラフト共重合体(G−2)のアセトン可溶分は21%であった。また、このアセトン可溶分の還元粘度は0.70dl/gであった。
ポリブタジエン/ポリブチルアクリレートの複合ゴムをゴム質重合体(G1−3)とするグラフト共重合体(G−3)を下記の方法によって得た。
まず、固形分濃度35%、平均粒子径0.08μmのポリブタジエンラテックス(固形分として20部)に、n−ブチルアクリレート単位82%およびメタクリル酸単位18%からなる平均粒子径0.10μmの共重合ラテックス(固形分として0.4部)を撹拌しながら添加した。そして、30分間撹拌を続けて、平均粒子径0.36μmの肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。
n−ブチルアクリレート 80部。
アリルメタクリレート 0.32部。
エチレングリコールジメタクリレート 0.16部。
これとは別に、アクリロニトリル/スチレン=29/71(質量比)からなる単量体混合物50部に、ベンゾイルペルオキシド0.35部を溶解し、窒素置換した。そして、単量体混合物を15部/時間の速度で、ゴム質重合体(G1−3)ラテックスが入った反応器に、定量ポンプにより添加した。単量体混合物の全てを添加した後、反応器内の温度を80℃に昇温し、30分間撹拌を続けて、グラフト共重合体(G−3)ラテックスを得た。この際の重合率は99%であった。
このグラフト共重合体(G−3)のアセトン可溶分は20%であった。また、アセトン可溶分の還元粘度は0.7dl/gであった。
リサイクルされたPET樹脂(B−1)として、山一社製のPET−NPRを用いた。
リペレットされたPET樹脂(B−2)として、三菱化学社製のGM502Sを、二軸押出機を用いて260℃にてリペレットしたものを用いた。
リサイクルもリペレットもされていないPET樹脂(B−3)として、三菱化学社製のGM502Sを用いた。
無機充填材(D−1)として、炭素繊維チョップドファイバー(三菱レイヨン社製、TR06U、表面処理剤:ポリウレタン)を用いた。
無機充填材(D−2)として、ガラス繊維チョップドファイバー(日東紡績社製、CSG 3PA−820、表面処理剤:ポリウレタン、長径/短径の比:4)を用いた。
無機充填材(D−3)として、ガラス繊維チョップドファイバー(日東紡績社製、CSH 3PA−870、表面処理剤:ポリウレタン、長径/短径の比:2)を用いた。
無機充填材(D−4)として、ガラス繊維チョップドファイバー(日東紡績社製、CSH 3PA−850、表面処理剤:エポキシ樹脂、長径/短径の比:2)を用いた。
無機充填材(D−5)として、ガラス繊維チョップドファイバー(日東紡績社製、CS3PE−455、表面処理剤:ポリウレタン、長径/短径の比:1)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−1)として、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(三菱化学社製、jER4250、質量平均分子量:60,000)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−2)として、エポキシ基含有フェノキシ樹脂(三菱化学社製、jER1256、質量平均分子量:50,000)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−3)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER1010、質量平均分子量:5,500)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−4)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER1009、質量平均分子量:3,800)を用いた。
グリシジルエーテル単位含有重合体(E−5)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、jER1004、質量平均分子量:1,650)を用いた。
まず、撹拌装置、温度計、窒素導入口および冷却管を備えた容量500mlのセパラブルフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:467g/eq):82.42部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:210g/eq、加水分解可能塩素:1.79%):6.3部、ビスフェノールA:13.95部、p−クミルフェノール:19.6部、ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、GV−335、酸価:30KOHmg/g):7.5部、およびキシレン30部を仕込み、窒素雰囲気下で加熱して昇温させた。反応系の内温が80℃に到達したところで、5%塩化リチウム水溶液を0.18部添加し、さらに昇温させた。また、反応系の内温が130℃に到達したところで、反応系内を減圧にして、キシレンおよび水を系外に抜き出した。その後、反応温度を160℃に維持しながら反応させ、1時間後に反応系内に窒素を導入して反応系の内圧を常圧に戻した。そして、反応温度が160℃に到達した時から7時間経過した時点で、高分子量ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:2700g/eq)20.25部を加え、1時間撹拌後、ポリエステル樹脂(日本ユピカ社製、GV−730、酸価:3KOHmg/g)100部を加え、180℃で10時間反応させることにより、高分子量エポキシ樹脂を得た。得られた高分子量エポキシ樹脂をGPCによる分子量測定に供するため、試料0.1gをテトラヒドロフラン10mlに溶解させようとしたところ、約0.05gが不溶であった。5C濾紙でろ過後、濾液をGPCによる分子量測定に供したところ、質量平均分子量は70,200であった。
燐酸エステル系難燃剤(F−1)として、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(味の素ファインテクノ社製、BAPP、質量平均分子量:692、カタログ値)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−2)として、フェニレンビス(ジキシリルホスフェート)(大八化学社製、PX−200、質量平均分子量:686、カタログ値)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−3)として、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)(大八化学社製、CR−733S、質量平均分子量:574、カタログ値)を用いた。
燐酸エステル系難燃剤(F−4)として、トリフェニルホスフェート(大八化学社製、TPP、質量平均分子量:326、カタログ値)を用いた。
難燃助剤(H−1)として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いた。
上述した各成分を下記表1〜3に示すように配合し、二軸押出機を用いて混練することにより、強化熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットについて、100℃で3時間乾燥した後、射出成形により成形性を評価した。また、得られた成形品のシャルピー衝撃強度、曲げ強度、曲げ弾性率、耐熱性、難燃性、及び接着強度を測定した。その評価結果を下記表1〜3に示す。
具体的には、ポリカーボネート樹脂(A)の割合が少なく、グラフト共重合体(G)の割合が多く、さらに、無機充填材(D)の割合が少ない比較例1においては、成形品の耐熱性、難燃性、剛性、および機械的強度が劣っていた。
また、無機充填材(D)の割合が多い比較例6−1,7−1,及び比較例2においては、成形性、成形品の難燃性、および接着強度が劣っていた。
また、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の含有量が樹脂主成分(C)100部に対して12部であり、かつ、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の質量平均分子量が70,200である比較例5においては、成形性、および成形品の難燃性が劣っていた。
また、燐酸エステル系難燃剤(F)の含有量が樹脂主成分(C)100部に対して30部である比較例6においては、成形品の耐熱性が劣っていた。
また、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の質量平均分子量が1,650である比較例7においては、成形品の耐衝撃性が劣っていた。
また、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の含有量が樹脂主成分(C)100部に対して12部である比較例8においては、成形品の難燃性が劣っていた。
また、実施例12、17と比較例4との比較から、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、リサイクルもリペレットもされていないPET樹脂(B)を含有した強化熱可塑性樹脂組成物よりも、成形性や、成形品に加工した際の耐衝撃性に優れていることがわかる。
さらに、実施例1,及び実施例3〜5と、比較例6−1,7−1,及び比較例2との比較から、本発明の強化熱可塑性樹脂組成物は、無機充填材(D)の割合が過剰である強化熱可塑性樹脂組成物よりも、エポキシ系接着剤との接着強度に優れていることがわかる。
Claims (5)
- ポリカーボネート樹脂(A)の80〜100質量%と、ゴム質重合体(G1)の存在下に、芳香族アルケニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(G)の0〜20質量%とからなる(ただし、前記ポリカーボネート樹脂(A)と前記グラフト共重合体(G)との合計は100質量%である。)樹脂主成分(C)と、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と、無機充填材(D)と、グリシジルエーテル単位含有重合体(E)と、燐酸エステル系難燃剤(F)と、を含有する強化熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)が、リサイクルおよび/またはリペレットされたものであり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、5〜30質量部であり、
前記無機充填材(D)の含有量が、当該強化熱可塑性樹脂組成物100質量%中、20〜45質量%であり、
前記グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の質量平均分子量が3,800〜60,000であり、前記グリシジルエーテル単位含有重合体(E)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、3〜10質量部であり、
前記燐酸エステル系難燃剤(F)の質量平均分子量が326超であり、前記燐酸エステル系難燃剤(F)の含有量が、前記樹脂主成分(C)100質量部に対して、3〜25質量部である、エポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。 - 前記樹脂主成分(C)が、前記ポリカーボネート樹脂(A)の80〜95質量%と、前記グラフト共重合体(G)の5〜20質量%とからなる、請求項1に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
- 前記無機充填材(D)が炭素繊維である、請求項1又は2に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
- 前記無機充填材(D)がガラス繊維である、請求項1又は2に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のエポキシ系接着剤との接着強度に優れる強化熱可塑性樹脂組成物が用いられた、少なくともエポキシ系接着剤を使用する成形品。
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