[金属メッキ層形成用組成物]
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、下記(A)、(B)、(C)、及び(D)成分を含み、(B)成分を(A)成分100重量部に対して20〜100重量部、(C)成分を(A)成分100重量部に対して4〜10重量部含むことを特徴とする。
(A)成分:金属ナノ粒子の表面が、有機保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属ナノ粒子
(B)成分:アルコール(b-1)と炭化水素(b-2)とを含む分散媒
(C)成分:(メタ)アクリレート
(D)成分:熱ラジカル重合開始剤
(表面修飾金属ナノ粒子(A))
本発明における表面修飾金属ナノ粒子(A)は、金属ナノ粒子の表面が、有機保護剤で被覆された構成を有する。そのため、本発明における表面修飾金属ナノ粒子(A)は、金属ナノ粒子間の間隔が確保され、凝集が抑制される。すなわち、本発明における表面修飾金属ナノ粒子(A)は、分散性に優れる。
前記表面修飾金属ナノ粒子(A)は、金属ナノ粒子部と、これを被覆する表面修飾部(すなわち、金属ナノ粒子を被覆している部分であって、有機保護剤により形成されている部分)から成り、前記表面修飾部の割合は、金属ナノ粒子部の重量の例えば1〜20重量%程度(好ましくは、1〜10重量%)である。尚、表面修飾金属ナノ粒子における金属ナノ粒子部と表面修飾部の各重量は、例えば、表面修飾金属ナノ粒子を熱重量測定に付し、特定温度範囲における減量率から求めることができる。
前記表面修飾金属ナノ粒子(A)における、金属ナノ粒子部の平均一次粒子径は、例えば0.5〜100nm、好ましくは0.5〜80nm、より好ましくは1〜70nm、さらに好ましくは1〜60nmである。
前記表面修飾金属ナノ粒子(A)における金属ナノ粒子部を構成する金属としては、導電性を有する金属であれば良く、例えば、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ロジウム、コバルト、ルテニウム等を挙げることができる。本発明における金属ナノ粒子としては、なかでも、100℃程度の温度で相互に融着し、耐熱性の低い汎用プラスチック基板上でも導電性を有する電子部品を形成することができる点で銀ナノ粒子が好ましい。従って、本発明における表面修飾金属ナノ粒子としては、表面修飾銀ナノ粒子が好ましく、本発明の金属メッキ層形成用組成物としては、銀メッキ層形成用組成物が好ましい。
前記表面修飾金属ナノ粒子(A)における表面修飾部を構成する有機保護剤としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物が好ましく、特に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する、炭素数4〜18の化合物が好ましく、最も好ましくはアミノ基を有する化合物であり、とりわけ好ましくはアミノ基を有する炭素数4〜18の化合物(すなわち、炭素数4〜18のアミン)である。
前記表面修飾金属ナノ粒子(A)として、例えば表面修飾銀ナノ粒子は、後述の製造方法等によって製造することができる。
(分散媒(B))
本発明における分散媒(B)は、前記表面修飾金属ナノ粒子(A)を分散する分散媒である。分散媒(B)は、少なくとも、アルコール(b-1)と炭化水素(b-2)とを含む。前記(b-1)と前記(b-2)は、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて含有することができる。尚、前記(b-1)、(b-2)は、単独では、常温、常圧下で液体であっても、また固体であってもよいが、これらを共に含有する分散媒(B)は、常温、常圧下で液体の分散媒(液体分散媒)である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、分散媒(B)として前記(b-1)と前記(b-2)とを組み合わせて含有するため、上記表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散性、及び分散安定性に優れる。
(アルコール(b-1))
前記(b-1)には、第1級アルコール、第2級アルコール、及び第3級アルコールが含まれる。本発明においては、なかでも、表面修飾金属ナノ粒子(A)の表面修飾部との反応性が低く、表面修飾部の損失を抑制することができるため、表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散性を長期安定的に維持することができる、すなわち分散安定性に優れる点、及び、特に低温焼結の場合においても速やかに蒸散することにより金属ナノ粒子の焼結性が向上する、すなわち低温焼結性を付与することができる点で、第2級アルコール及び/又は第3級アルコールが特に好ましい。
また、前記(b-1)には、脂肪族アルコール、脂環式アルコール、及び芳香族アルコールが含まれるが、なかでも表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散性に優れる点で、脂環式アルコール(すなわち、脂環構造を有するアルコール)が好ましい。
従って、前記(b-1)としては、脂環式第2級アルコール及び/又は脂環式第3級アルコールが好ましい。
前記脂環式アルコールには、単環式アルコール及び多環式アルコールが含まれるが、特に単環式アルコールが表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散性に特に優れる点、及び低粘度で塗布性(インクジェット印刷法で塗布する場合は、ヘッドノズルからの射出安定性)に優れる点で好ましい。
前記(b-1)の沸点は、例えば130℃以上であることが好ましく、より好ましくは170℃以上であり、特に前記表面修飾金属ナノ粒子(A)を高濃度に含有する場合(例えば、(A)含有量(金属元素換算)が金属メッキ層形成用組成物全量の45重量%以上である場合)等は、185℃以上が好ましく、更に好ましくは190℃以上である。また、沸点の上限は、例えば300℃、好ましくは250℃、特に好ましくは220℃である。沸点が130℃以上であると、印刷時温度における揮発を抑制することができ、優れた塗布性(インクジェット印刷法で塗布する場合は、ヘッドノズルからの射出安定性)が得られる。また、沸点が300℃以下であると、低温焼結の場合にも速やかに揮発して、導電性を有する焼結体が得られる。すなわち、低温焼結性に優れる。一方、沸点が上記範囲を下回ると、塗布時に金属メッキ層形成用組成物の流動性が低下して、均一な塗膜を形成することが困難となる場合がある。例えば、インクジェット印刷法で塗布する場合は、ヘッドのノズル口に金属メッキ層形成用組成物が固化して付着しやすくなり、特に間欠的に射出を行う場合に、射出が不安定となり、飛行曲がりにより所望のパターンを精度良く印字することが困難となったり、ノズル口が目詰まりして射出不能となったりする恐れがある。
単環式第2級アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール、2−エチルシクロヘキサノール、1−シクロヘキシルエタノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、2,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、3,4,5−トリメチルシクロヘキサノール、2,3,4−トリメチルシクロヘキサノール、4−(tert−ブチル)−シクロヘキサノール、3,3,5,5−テトラメチルシクロヘキサノール、2−イソプロピル−5−メチル−シクロヘキサノール(=メントール)等の、置換基を有していてもよいシクロヘキサノールや、対応するシクロヘプタノールが好ましく、特に、炭素数1〜3のアルキル基を有するシクロヘキサノール若しくはシクロヘプタノールが好ましく、とりわけ、炭素数1〜3のアルキル基を有するシクロヘキサノールが好ましい。
単環式第3級アルコールとしては、例えば、1−メチルシクロヘキサノール、4−イソプロピル−1−メチルシクロヘキサノール、2−シクロヘキシル−2−プロパノール、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−プロパノール等の、6〜7員環(特に、シクロヘキサン環)構造を有する第3級アルコールが好ましい。
前記(b-1)としては、とりわけ、第2級アルコール(特に、単環式第2級アルコール)を少なくとも含有することが、表面修飾金属ナノ粒子(A)の初期分散性に優れ、且つ優れた分散性を長期安定的に維持することができる点で好ましい。第2級アルコールの含有量は、前記(b-1)全量の、例えば60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
(炭化水素(b-2))
前記(b-2)には脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、及び芳香族炭化水素が含まれる。本発明においては、なかでも、表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散性に特に優れる点で脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素が好ましい。
前記(b-2)の沸点は、(b-1)と同様の理由から、例えば130℃以上であることが好ましく、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは190℃以上であり、特に前記表面修飾金属ナノ粒子(A)を高濃度に含有する場合(例えば、(A)含有量(金属元素換算)が金属メッキ層形成用組成物全量の45重量%以上である場合)等は、200℃以上が好ましく、より好ましくは230℃以上、特に好ましくは250℃以上、最も好ましくは270℃以上である。また、沸点の上限は、例えば300℃である。
前記脂肪族炭化水素としては、例えば、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等の炭素数10以上(例えば、10〜20)、なかでも、炭素数12以上(例えば12〜20、好ましくは12〜18)、とりわけ、炭素数15以上(例えば15〜20、好ましくは15〜18)の鎖状脂肪族炭化水素が好ましい。
前記脂環式炭化水素としては、例えば、シクロヘキサン類、シクロヘキセン類、テルペン系6員環化合物、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロデカン、シクロドデセン等の単環化合物;ビシクロ[2.2.2]オクタン、デカリン等の多環化合物が挙げられる。
前記シクロヘキサン類には、例えば、エチルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、sec−ブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン等の6員環に炭素数2以上(例えば、2〜5)のアルキル基を有する化合物;ビシクロヘキシル等が含まれる。
前記テルペン系6員環化合物には、例えば、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン等が含まれる。
前記(b-2)としては、とりわけ、脂肪族炭化水素(特に好ましくは鎖状脂肪族炭化水素、最も好ましくは炭素数15以上の鎖状脂肪族炭化水素)を少なくとも含有することが好ましい。脂肪族炭化水素の含有量は、前記(b-2)全量の、例えば60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。
((メタ)アクリレート(C))
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、(メタ)アクリレート(C)を(A)成分100重量部に対して4〜10重量部含有する。その為、塗布性を損なうことなく、当該金属メッキ層形成用組成物の焼結体に優れた基板密着性(特に、ガラス基板等の平滑基板に対する密着性)を付与することができる。尚、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」及び「メタクリロイル」を意味する。
前記(メタ)アクリレート(C)としては、なかでも(メタ)アクリロイル基を1分子中に2個以上有する化合物、すなわち多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
前記(メタ)アクリレート(C)の分子量(GPCによるポリスチレン換算分子量、(メタ)アクリレート(C)として2種以上の化合物を含有する場合は、分子量の加重平均値)としては、例えば500〜10000、好ましくは750〜5000、特に好ましくは1000〜2000である。(メタ)アクリレート(C)の分子量が500以上であると、当該(メタ)アクリレート(C)を含有する金属メッキ層形成用組成物の焼結体に優れた基板密着性(特に、ガラス基板等の平滑基に対する密着性)を付与することができる。また、(メタ)アクリレート(C)の分子量が10000以下であると、当該(メタ)アクリレート(C)を含有する金属メッキ層形成用組成物は良好な塗布性を有する。
(メタ)アクリレート(C)の分子量が上記範囲を上回ると、分散媒(B)に対する溶解性が低下する傾向があり、たとえ分散媒(B)に溶解しても、良好な塗布性が得られにくくなる傾向がある。また、分子量が上記範囲を下回る(メタ)アクリレート(C)は、金属メッキ層形成用組成物に添加しても、基板密着性を付与する効果が得られにくくなる傾向がある。
前記(メタ)アクリレート(C)の(メタ)アクリロイル当量[(メタ)アクリレート(C)として2種以上の化合物を含有する場合は、(メタ)アクリロイル当量の加重平均値]は、例えば250〜5000g/eq、好ましくは300〜3000g/eq、より好ましくは450〜3000g/eq、特に好ましくは500〜2500g/eq、最も好ましくは600〜2500g/eqである。(メタ)アクリロイル当量が上記範囲を上回ると、十分な基材密着性が得られにくくなる傾向がある。また、(メタ)アクリロイル当量が上記範囲を下回ると、低温焼結が困難となり、導電性が低下する傾向がある。
前記(メタ)アクリレート(C)のガラス転移温度(Tg)は、例えば−70℃〜0℃が好ましく、より好ましくは−60℃〜−10℃、更に好ましくは−60℃〜−20℃である。尚、(メタ)アクリレート(C)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)、動的粘弾性測定等により測定することが可能である。
前記(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレートが、分散媒(B)への溶解性の点で好ましい。
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールとポリイソシアネートとの付加反応物の末端イソシアネート基にヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させることにより得られる、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン化合物である。
前記ウレタン(メタ)アクリレートには、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、及び芳香族ウレタン(メタ)アクリレートが含まれるが、なかでも脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートが、金属ナノ粒子間の凝集を抑制する効果に優れる点で好ましい。
前記ポリオールには、例えば、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、及び芳香族ポリオールが含まれるが、中でも脂肪族又は脂環式ポリオールが好ましい。また、ポリオールには、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、低分子量グリコールなどが含まれる。
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)とジオール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール等)との反応物が挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等)のアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加重合体であるポリ(オキシアルキレン)グリコール等が挙げられる。
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ジオール(例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)とジメチルカーボネートやホスゲン等との反応生成物が挙げられる。
前記低分子量グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能以上のヒドロキシル基含有化合物等が挙げられる。
前記ポリイソシアネートには、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが含まれるが、中でも脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートが好ましい。前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。前記脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
前記ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどが挙げられる。
前記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、商品名「EBECRYL 230」、「EBECRYL 270」(以上、ダイセル・オルネクス(株)製)等の市販品を好適に使用することができる。
(熱ラジカル重合開始剤(D))
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、(メタ)アクリレート(C)と共に熱ラジカル重合開始剤(D)を含有する。熱ラジカル重合開始剤(D)には、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、有機過酸化物等が含まれるが、本発明においては、なかでも、有機過酸化物を使用することが金属ナノ粒子の分散性、及び金属メッキ層形成用組成物の流動性の観点から好ましい。
一方、アゾ系化合物は、当該化合物中のN原子に含まれる非共有電子対が上述の有機保護剤と同様に金属ナノ粒子に作用するため、本発明の金属メッキ層形成用組成物にアゾ化合物を添加すると、金属ナノ粒子の分散性が低下し、粘度が上昇して、塗布性が低下する傾向があるため好ましくない。本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる熱ラジカル重合開始剤全量(100重量%)におけるアゾ系化合物の占める割合は、例えば30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは1重量%以下である。尚、下限値はゼロである。
前記有機過酸化物類としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等(具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)パーオキシヘキサン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジブチルパーオキシヘキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,4−ジ(2−tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等)が挙げられる。
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、上記(A)〜(D)成分以外にも、例えば、分散剤、表面エネルギー調整剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて含有することができる。
(金属メッキ層形成用組成物の製造方法)
本発明の金属メッキ層形成用組成物は、例えば、金属化合物と有機保護剤とを混合して、前記金属化合物と有機保護剤を含む錯体を生成させる工程(錯体生成工程)、前記錯体を熱分解させる工程(熱分解工程)、及び、必要に応じて反応生成物を洗浄する工程(洗浄工程)を経て表面修飾金属ナノ粒子(A)を製造し、得られた表面修飾金属ナノ粒子(A)に、分散媒(B)と(メタ)アクリレート(C)とを混合する工程(金属メッキ層形成用組成物の調製工程)を経て製造することができる。
(錯体生成工程)
錯体生成工程は、金属化合物と有機保護剤とを混合して、金属化合物と有機保護剤を含む錯体を生成する工程である。本発明においては、前記金属化合物として銀化合物を使用することが、ナノサイズの銀粒子は100℃程度の温度で相互に融着するため、耐熱性の低い汎用プラスチック基板上にも導電性を有する電子部品を形成することができる点で好ましく、特に、加熱により容易に分解して、金属銀を生成する銀化合物を使用することが好ましい。このような銀化合物としては、例えば、ギ酸銀、酢酸銀、シュウ酸銀、マロン酸銀、安息香酸銀、フタル酸銀等のカルボン酸銀;フッ化銀、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀等のハロゲン化銀;硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、銀含有率が高く、且つ、還元剤を使用することなく熱分解することができ、金属メッキ層形成用組成物に還元剤由来の不純物が混入しにくい点で、シュウ酸銀が好ましい。
有機保護剤としては、ヘテロ原子中の非共有電子対が金属ナノ粒子に配位することで、金属ナノ粒子間の凝集を強力に抑制する効果を発揮することができる点で、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物が好ましく、特に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基、及びチオール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する炭素数4〜18の化合物が好ましい。
有機保護剤としては、特にアミノ基を有する化合物が好ましく、最も好ましくはアミノ基を有する炭素数4〜18の化合物、すなわち炭素数4〜18のアミンである。
前記アミンはアンモニアの少なくとも1つの水素原子が炭化水素基で置換された化合物であり、第一級アミン、第二級アミン、及び第三級アミンが含まれる。また、前記アミンはモノアミンであっても、ジアミン等の多価アミンであってもよい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記アミンとしては、なかでも、下記式(a-1)で表され、式中のR
1、R
2、R
3が同一又は異なって、水素原子又は1価の炭化水素基(R
1、R
2、R
3が共に水素原子である場合は除く)であり、総炭素数が6以上であるモノアミン(1)、下記式(a-1)で表され、式中のR
1、R
2、R
3が同一又は異なって、水素原子又は1価の炭化水素基(R
1、R
2、R
3が共に水素原子である場合は除く)であり、総炭素数が5以下であるモノアミン(2)、及び下記式(a-2)で表され、式中のR
4〜R
7は同一又は異なって、水素原子又は1価の炭化水素基であり、R
8は2価の炭化水素基であり、総炭素数が8以下であるジアミン(3)から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、前記モノアミン(1)と、モノアミン(2)及び/又はジアミン(3)とを併せて含有することが好ましい。
前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基が含まれるが、なかでも脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基が好ましく、特に脂肪族炭化水素基が好ましい。従って、上記モノアミン(1)、モノアミン(2)、ジアミン(3)としては、脂肪族モノアミン(1)、脂肪族モノアミン(2)、脂肪族ジアミン(3)が好ましい。
また、1価の脂肪族炭化水素基には、アルキル基及びアルケニル基が含まれる。1価の脂環式炭化水素基には、シクロアルキル基及びシクロアルケニル基が含まれる。更に、2価の脂肪族炭化水素基には、アルキレン基及びアルケニレン基が含まれ、2価の脂環式炭化水素基には、シクロアルキレン基及びシクロアルケニレン基が含まれる。
R1、R2、R3における1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜18程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、5−ヘキセニル基等の炭素数2〜18程度のアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜18程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の炭素数3〜18程度のシクロアルケニル基等を挙げることができる。
R4〜R7における1価の炭化水素基としては、例えば、上記例示のうち、炭素数1〜7程度のアルキル基、炭素数2〜7程度のアルケニル基、炭素数3〜7程度のシクロアルキル基、炭素数3〜7程度のシクロアルケニル基等を挙げることができる。
R8における2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基等の炭素数1〜8のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2〜8のアルケニレン基等を挙げることができる。
上記R1〜R8における炭化水素基は、種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基、C6-10アリールオキシカルボニル基、C7-16アラルキルオキシカルボニル基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、複素環式基等]を有していてもよい。また、前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
モノアミン(1)は、金属ナノ粒子の表面に吸着することにより、金属ナノ粒子が凝集して肥大化することを抑制する、すなわち、金属ナノ粒子に高分散性を付与する機能を有する化合物であり、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第一級アミン;イソヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、tert−オクチルアミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第一級アミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキル基を有する第一級アミン;オレイルアミン等のアルケニル基を有する第一級アミン等;N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジペンチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジペプチルアミン、N,N−ジオクチルアミン、N,N−ジノニルアミン、N,N−ジデシルアミン、N,N−ジウンデシルアミン、N,N−ジドデシルアミン、N−プロピル−N−ブチルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第二級アミン;N,N−ジイソヘキシルアミン、N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン;トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第三級アミン;トリイソヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第三級アミン等が挙げられる。
上記モノアミン(1)のなかでも、アミノ基が金属ナノ粒子表面に吸着した際に他の金属ナノ粒子との間隔を確保できるため、金属ナノ粒子同士の凝集を防ぐ効果が得られ、且つ焼結時には容易に除去できる点で、総炭素数6〜18(総炭素数の上限は、より好ましくは16、特に好ましくは12である)の直鎖状アルキル基を有するアミン(特に、第一級アミン)が好ましく、とりわけ、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン等が好ましい。
モノアミン(2)は、モノアミン(1)に比べると炭化水素鎖が短いので、それ自体は金属ナノ粒子に高分散性を付与する機能は低いが、前記モノアミン(1)より極性が高く金属原子への配位能が高いため、錯体形成促進効果を有する。また、炭化水素鎖が短いため、低温焼結においても、短時間(例えば30分間以下、好ましくは20分間以下)で金属ナノ粒子表面から除去することができ、導電性に優れた焼結体が得られる。
モノアミン(2)としては、例えば、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert−ペンチルアミン等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2〜5(好ましくは総炭素数4〜5)の第一級アミンや、N,N−ジエチルアミン等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2〜5(好ましくは総炭素数4〜5)の第二級アミンを挙げることができる。本発明においては、なかでも、直鎖状アルキル基を有する総炭素数2〜5(好ましくは総炭素数4〜5)の第一級アミンが好ましい。
ジアミン(3)の総炭素数は8以下であり、前記モノアミン(1)より極性が高く金属原子への配位能が高いため、錯体形成促進効果を有する。また、前記ジアミン(3)は、錯体の熱分解工程において、より低温且つ短時間での熱分解を促進する効果があり、ジアミン(3)を使用すると表面修飾金属ナノ粒子の製造をより効率的に行うことができる。さらに、ジアミン(3)を含む保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属ナノ粒子は、極性の高い分散媒中において優れた分散安定性を発揮する。さらに、前記ジアミン(3)は、炭化水素鎖が短いため、低温焼結でも、短時間(例えば30分間以下、好ましくは20分間以下)で金属ナノ粒子表面から除去することができ、導電性に優れた焼結体が得られる。
前記ジアミン(3)としては、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン等の、式(a-2)中のR4〜R7が水素原子であり、R8が直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であるジアミン;N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の式(a-2)中のR4、R6が同一又は異なって直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R5、R7が水素原子であり、R8が直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であるジアミン;N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジエチル−1,4−ブタンジアミン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等の式(a-2)中のR4、R5が同一又は異なって直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であるジアミン等を挙げることができる。
これらのなかでも、前記式(a-2)中のR4、R5が同一又は異なって直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基であるジアミン[特に、式(a-2)中のR4、R5が直鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状アルキレン基であるジアミン]が好ましい。
式(a-2)中のR4、R5が同一又は異なって直鎖状又は分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であるジアミン、すなわち第一級アミノ基と第三級アミノ基を有するジアミンは、前記第一級アミノ基は金属原子に対して高い配位能を有するが、前記第三級アミノ基は金属原子に対する配位能が乏しいため、形成される錯体が過剰に複雑化することが防止され、それにより、錯体の熱分解工程において、より低温且つ短時間での熱分解が可能となる。これらのなかでも、低温焼結において短時間で金属ナノ粒子表面から除去できる点から、総炭素数6以下(例えば1〜6、好ましくは4〜6)のジアミンが好ましく、総炭素数5以下(例えば1〜5、好ましくは4〜5)のジアミンがより好ましい。
本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる有機保護剤全量におけるモノアミン(1)の含有量の占める割合、及びモノアミン(2)とジアミン(3)の合計含有量の占める割合としては、下記範囲であることが好ましい。
モノアミン(1)の含有量:例えば5〜65モル%(下限は、好ましくは10モル%、特に好ましくは20モル%、最も好ましくは30モル%である。また、上限は、好ましくは60モル%、特に好ましくは50モル%である)
モノアミン(2)とジアミン(3)の合計含有量:例えば35〜95モル%(下限は、好ましくは40モル%、特に好ましくは50モル%である。また、上限は、好ましくは90モル%、特に好ましくは80モル%、最も好ましくは70モル%である)
本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる有機保護剤全量におけるモノアミン(2)の含有量の占める割合、及びジアミン(3)の含有量の占める割合としては、下記範囲であることが好ましい。
モノアミン(2)の含有量:例えば5〜65モル%(下限は、好ましくは10モル%、特に好ましくは20モル%、最も好ましくは30モル%である。また、上限は、好ましくは60モル%、特に好ましくは50モル%である)
ジアミン(3)の含有量:例えば5〜50モル%(下限は、好ましくは10モル%である。また、上限は、好ましくは40モル%、特に好ましくは30モル%である)
モノアミン(1)を上記範囲で含有することにより、金属ナノ粒子の分散安定性が得られる。モノアミン(1)の含有量が上記範囲を下回ると、金属ナノ粒子が凝集し易くなる傾向がある。一方、モノアミン(1)の含有量が上記範囲を上回ると、焼結温度が低い場合は短時間で金属ナノ粒子表面からアミンを除去することが困難となり、得られる焼結体の導電性が低下する傾向がある。
前記モノアミン(2)を上記範囲で含有することにより、錯体形成促進効果が得られる。また、焼結温度が低くても短時間で有機保護剤を金属ナノ粒子表面から除去することが可能となる。
前記ジアミン(3)を上記範囲で含有することにより、錯体形成促進効果及び錯体の熱分解促進効果が得られやすい。また、ジアミン(3)を含む保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属ナノ粒子は、極性の高い分散媒中において優れた分散安定性を発揮する。
本発明においては、金属化合物の金属原子への配位能が高いモノアミン(2)及び/又はジアミン(3)を用いると、それらの使用割合に応じて、モノアミン(1)の使用量を減量することができ、焼結温度が低くても短時間で金属ナノ粒子表面から有機保護剤を除去することができる点で好ましい。
本発明において有機保護剤として使用するアミンには上記モノアミン(1)、モノアミン(2)、及びジアミン(3)以外にも他のアミンを含有していても良いが、有機保護剤に含まれる全アミンに占める上記モノアミン(1)、モノアミン(2)、及びジアミン(3)の合計含有量の割合は、例えば60重量%以上が好ましく、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。すなわち、他のアミンの含有量は、40重量%以下が好ましく、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
有機保護剤[特に、モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3)]の使用量は特に限定されないが、原料の前記金属化合物の金属原子1モルに対して、1〜50モル程度が好ましく、特に好ましくは2〜50モル、最も好ましくは6〜50モルである。有機保護剤の使用量が上記範囲を下回ると、錯体の生成工程において、錯体に変換されない金属化合物が残存しやすくなり、金属ナノ粒子に十分な分散性を付与することが困難となる傾向がある。
本発明においては、金属ナノ粒子の分散性をさらに向上させることを目的に、有機保護剤として、アミノ基を有する化合物と共に、カルボキシル基を有する化合物(例えばカルボキシル基を有する炭素数4〜18の化合物、好ましくは炭素数4〜18の脂肪族モノカルボン酸)を1種又は2種以上含有しても良い。
前記脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸等の炭素数4以上の飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸等の炭素数8以上の不飽和脂肪族モノカルボン酸を挙げることができる。
これらのなかでも、炭素数8〜18の飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン(特に、オクタン酸、オレイン酸等)が好ましい。前記脂肪族モノカルボン酸のカルボキシル基が金属ナノ粒子表面に吸着した際に、炭素数8〜18の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素鎖が立体障害となることにより他の金属ナノ粒子との間隔を確保することができ、金属ナノ粒子同士の凝集を防ぐ作用が向上する。
前記カルボキシル基を有する化合物の使用量としては、金属化合物の金属原子1モルに対して、例えば0.05〜10モル程度、好ましくは0.1〜5モル、特に好ましくは0.5〜2モルである。前記カルボキシル基を有する化合物の使用量が、上記範囲を下回ると、分散安定性向上効果が得られにくい。一方、前記カルボキシル基を有する化合物を過剰に使用しても分散安定性向上効果は飽和する一方で、低温焼結で除去することが困難となる傾向がある。
有機保護剤と金属化合物との反応は、分散媒の存在下又は不存在下で行われる。前記分散媒としては、例えば、炭素数3以上のアルコールを使用することができる。
前記炭素数3以上のアルコールとしては、例えば、n−プロパノール(沸点:97℃)、イソプロパノール(沸点:82℃)、n−ブタノール(沸点:117℃)、イソブタノール(沸点:107.89℃)、sec−ブタノール(沸点:99.5℃)、tert−ブタノール(沸点:82.45℃)、n−ペンタノール(沸点:136℃)、n−ヘキサノール(沸点:156℃)、n−オクタノール(沸点:194℃)、2−オクタノール(沸点:174℃)等が挙げられる。これらのなかでも、後に行われる錯体の熱分解工程の温度を高く設定できること、得られる表面修飾金属ナノ粒子の後処理での利便性の点で、炭素数4〜6のアルコールが好ましく、特に、n−ブタノール、n−ヘキサノールが好ましい。
また、分散媒の使用量は、金属化合物100重量部に対して、例えば120重量部以上、好ましくは130重量部以上、より好ましくは150重量部以上である。尚、分散媒の使用量の上限は、例えば1000重量部、好ましくは800重量部、特に好ましくは500重量部である。
有機保護剤と金属化合物との反応は、常温(5〜40℃)で行うことが好ましい。前記反応には、金属化合物への有機保護剤の配位反応による発熱を伴うため、上記温度範囲となるように、適宜冷却しつつ行ってもよい。
有機保護剤と金属化合物との反応時間は、例えば30分〜3時間程度である。これにより、金属−有機保護剤の錯体(有機保護剤としてアミンを使用した場合は、金属−アミン錯体)が得られる。
(熱分解工程)
熱分解工程は、錯体生成工程を経て得られた金属−有機保護剤の錯体を熱分解させて、表面修飾金属ナノ粒子を形成する工程である。金属−有機保護剤の錯体を加熱することにより、金属原子に対する有機保護剤の配位結合を維持したままで金属化合物が熱分解して金属原子を生成し、次に、有機保護剤が配位した金属原子が凝集して、有機保護膜で被覆された金属ナノ粒子が形成されると考えられる。
前記熱分解は、分散媒の存在下で行うことが好ましく、分散媒としては上述のアルコールを好適に使用することができる。また、熱分解温度は、表面修飾金属ナノ粒子が生成する温度であればよく、金属−有機保護剤の錯体がシュウ酸銀−有機保護剤の錯体である場合には、例えば80〜120℃程度、好ましくは95〜115℃、特に好ましくは100〜110℃である。表面修飾金属ナノ粒子の表面修飾部の脱離を防止する観点から、前記温度範囲内のなるべく低温で行うことが好ましい。熱分解時間は、例えば10分〜5時間程度である。
また、金属−有機保護剤の錯体の熱分解は、空気雰囲気下や、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
(洗浄工程)
金属−有機保護剤の錯体の熱分解反応終了後、過剰の有機保護剤が存在する場合は、これを除去するために、デカンテーションを1回、又は2回以上繰り返して行うことが好ましい。また、デカンテーション終了後の表面修飾金属ナノ粒子は、乾燥・固化することなく、湿潤状態のままで後述の金属メッキ層形成用組成物の調製工程へ供することが、表面修飾金属ナノ粒子の再凝集を抑制することができ、高分散性を維持することができる点で好ましい。
デカンテーションは、例えば、懸濁状態の表面修飾金属ナノ粒子を洗浄剤で洗浄し、遠心分離により表面修飾金属ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去する方法により行われる。前記洗浄剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の、炭素数1〜4(好ましくは1〜2)の直鎖状又は分岐鎖状アルコールを1種又は2種以上使用することが、表面修飾金属ナノ粒子の沈降性が良好であり、洗浄後、遠心分離により効率よく洗浄剤を分離・除去することができる点で好ましい。
(金属メッキ層形成用組成物の調製工程)
金属メッキ層形成用組成物の調製工程は、上記工程を経て得られた表面修飾金属ナノ粒子(A)(好ましくは、湿潤状態の表面修飾金属ナノ粒子(A))と分散媒(B)と(メタ)アクリレート(C)と、必要に応じて添加剤とを混合して、本発明の金属メッキ層形成用組成物を調製する工程である。前記混合には、例えば、自公転式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、3本ロールミル、ビーズミル等の一般的に知られる混合用機器を使用することができる。また、各成分は、同時に混合してもよいし、逐次混合してもよい。各成分の配合割合は、下記範囲において、適宜調整することができる。
本発明の金属メッキ層形成用組成物全量(100重量%)における、表面修飾金属ナノ粒子(A)の含有量(金属元素換算)は、例えば35〜70重量%程度である。下限は、より高膜厚の塗膜若しくは焼結体が得られる観点から、好ましくは40重量%、特に好ましくは45重量%、最も好ましくは50重量%、とりわけ好ましくは55重量%である。上限は、塗布性(インクジェット印刷法で塗布する場合は、ヘッドノズルからの射出安定性)の観点から、好ましくは65重量%、特に好ましくは60重量%である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物における、分散媒(B)の含有量(金属元素換算)は、表面修飾金属ナノ粒子(A)100重量部に対して、20〜100重量部、好ましくは30〜90重量部、より好ましくは40〜80重量部、更に好ましくは50〜75重量部、特に好ましくは55〜75重量部、最も好ましくは60〜75重量部である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物全量(100重量%)における、分散媒(B)の含有量は、例えば20〜65重量%、好ましくは25〜60重量%、更に好ましくは30〜55重量%、最も好ましくは30〜50重量%である。本発明の金属メッキ層形成用組成物は、分散媒(B)を前記範囲で含有するため塗布性に優れ、例えば、インクジェット印刷法で塗布する場合は、ヘッドのノズルからの射出安定性を良好に維持することが可能となる。
前記(b-1)(特に、単環式第2級アルコール)の含有量は、表面修飾金属ナノ粒子(A)100重量部に対して例えば15〜70重量部、好ましくは20〜60重量部、特に好ましくは30〜55重量部、最も好ましくは40〜55重量部である。
前記(b-2)(特に、脂肪族炭化水素)の含有量は、表面修飾金属ナノ粒子(A)100重量部に対して例えば5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部、特に好ましくは15〜30重量部、最も好ましくは15〜25重量部である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる分散媒(B)全量における前記(b-1)と前記(b-2)との含有量の比(前者/後者(重量比))は、例えば50/50〜95/5、好ましくは60/40〜90/10、特に好ましくは65/35〜85/15である。前記(b-1)の含有量が上記範囲を下回ると、塗膜の平滑性が低下する傾向がある。その他、低温焼結性が低下する傾向がある。一方、前記(b-2)の含有量が上記範囲を下回ると、塗布性が低下する傾向がある。
本発明における分散媒(B)は、前記(b-1)と前記(b-2)以外にも、他の分散媒を1種又は2種以上含有していても良いが、前記(b-1)と前記(b-2)との合計含有量が(B)全量の70重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは75重量%以上、最も好ましくは80重量%以上である。従って、他の分散媒の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、(B)全量の30重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは25重量%以下、最も好ましくは20重量%以下である。他の分散媒の含有量が上記範囲を上回ると、増粘により塗布性が低下したり、金属ナノ粒子が凝集し易くなり、分散性が低下する傾向がある。
更に、本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる分散媒(B)全量(100重量%)における、第1級アルコールの含有量は、例えば30重量%以下程度であることが好ましく、より好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物における(メタ)アクリレート(C)(特に、ウレタン(メタ)アクリレート)の含有量は、表面修飾金属ナノ粒子(A)100重量部(金属元素換算)に対して4〜10重量部であり、下限は、好ましくは5重量部、特に好ましくは6重量部、最も好ましくは7重量部である。また、上限は、好ましくは9重量部である。(メタ)アクリレート(C)を4重量部以上の範囲で使用すると、基板密着性に優れた焼結体が得られる。また、(メタ)アクリレート(C)を10重量部以下の範囲で使用すると、導電性を有する焼結体が得られる。
本発明における(メタ)アクリレート(C)には、ウレタン(メタ)アクリレート以外にも他の(メタ)アクリレート(例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル当量が250g/eq未満である(メタ)アクリレート)を含有していても良いが、本発明の金属メッキ層形成用組成物に含まれる(メタ)アクリレート(C)全量におけるウレタン(メタ)アクリレートの含有量の占める割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは55重量%以上である。従って、(メタ)アクリロイル当量が250g/eq未満である(メタ)アクリレートの含有量は、(メタ)アクリレート(C)全量の50重量%以下、好ましくは45重量%以下である。
また、本発明の金属メッキ層形成用組成物は、(メタ)アクリレート(C)以外にも他の硬化性化合物を含有していても良いが、金属メッキ層形成用組成物に含まれる全硬化性化合物に占める、(メタ)アクリレート(C)の割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。尚、上限は、100重量%である。
また、本発明の金属メッキ層形成用組成物全量(100重量%)における、表面修飾金属ナノ粒子(A)と分散媒(B)と(メタ)アクリレート(C)の合計の占める割合は、例えば70重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
熱ラジカル重合開始剤(D)の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、(メタ)アクリレート(C)100重量部に対して、例えば0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5.0重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物の粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における)は、例えば1〜100mPa・sである。粘度の上限は好ましくは50mPa・s、特に好ましくは20mPa・s、最も好ましくは15mPa・sである。粘度の下限は、好ましくは2mPa・s、特に好ましくは3mPa・s、最も好ましくは5mPa・sである。
本発明の金属メッキ層形成用組成物は分散安定性に優れ、例えば金属濃度65重量%の金属メッキ層形成用組成物を5℃で保管した場合、1ヶ月間以上の期間において金属ナノ粒子の凝集を抑制することができる。
本発明の金属メッキ層形成用組成物は上述の通り低粘度で塗布性に優れる。その上、表面修飾金属ナノ粒子(A)の分散安定性に優れ、表面修飾金属ナノ粒子(A)を高濃度に含有しても良好な塗布性を維持することができる。また、本発明の金属メッキ層形成用組成物は低温焼結性に優れ、低温焼結により基材密着性に優れた焼結体が得られる。更にまた、本発明の金属メッキ層形成用組成物を焼結することにより、導電性を有する焼結体が得られる。そのため、本発明の金属メッキ層形成用組成物は、インクジェット印刷、グラビア印刷、又はフレキソ印刷によって、基板(特に、汎用プラスチック基板等の耐熱性の低い基板や、ガラス基板等の耐熱性は高いが表面が平滑でアンカー効果が得られにくい基板)に金属メッキ層を形成する用途に好適に使用することができる。
[金属メッキ層の形成方法]
本発明の金属メッキ層の形成方法は、金属メッキ層形成用組成物を用いて基板に金属メッキ層を形成することを特徴とする。
前記金属メッキ層の厚みとしては、例えば0.1〜5μm(好ましくは、0.5〜2μm)の範囲であることが好ましい。
本発明の金属メッキ層の形成方法では、上記金属メッキ層形成用組成物を使用するため、低温で焼結が可能であり、焼結温度は、例えば150℃以下(焼結温度の下限は、例えば60℃であり、短時間で焼結可能な点で100℃がより好ましい)、特に好ましくは130℃以下、最も好ましくは120℃以下である。焼結時間は、例えば0.5〜3時間、好ましくは0.5〜2時間、特に好ましくは0.5〜1時間である。
本発明の金属メッキ層形成用組成物を使用すれば、低温焼結でも(例えば、120℃で30分のような、低温で短時間の焼結でも)、金属ナノ粒子の焼結が十分に進行する。その結果、優れた基板密着性を有する焼結体(特に、ガラス等の表面平滑性に優れた基材に対しても優れた密着性を有する焼結体)が得られる。そのため、前記焼結体に、例えば損傷防止等を目的として表面に保護フィルムを貼り合わせても、前記保護フィルムを剥がす際に焼結体が一緒に剥がれることがない。
また、本発明の金属メッキ層形成用組成物を焼結することで、導電性を有する焼結体が得られる。
本発明の金属メッキ層形成用組成物を使用すれば上記の通り基材に対して優れた密着性を有する焼結体が得られるので、基板としては、ガラス基板等の表面が平滑でアンカー効果が得られにくい基板を好適に用いることができる。
また、本発明の金属メッキ層形成用組成物を使用すれば上記の通り低温焼結が可能であるので、基板としては、ガラス基板や、ポリイミド系フィルム等の耐熱性プラスチック基板の他に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムのような耐熱性の低い汎用プラスチック基板も好適に用いることができる。
本発明の金属メッキ層の形成方法により得られる金属メッキ層を備えた基板は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、ICカード、ICタグ、太陽電池、LED素子、有機トランジスタ、コンデンサー(キャパシタ)、電子ペーパー、フレキシブル電池、フレキシブルセンサ、メンブレンスイッチ、タッチパネル、EMIシールド等に好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
調製例1(表面修飾銀ナノ粒子の調製)
錯体生成工程
硝酸銀(和光純薬工業(株)製)とシュウ酸二水和物(和光純薬工業(株)製)から、シュウ酸銀(分子量:303.78)を得た。
500mLフラスコに前記シュウ酸銀20.0g(65.8mmol)を仕込み、これに、n−ブタノール30.0gを添加し、シュウ酸銀のn−ブタノールスラリーを調製した。
このスラリーに、30℃で、n−ブチルアミン(分子量:73.14、(株)ダイセル製)57.8g(790.1mmol)、n−ヘキシルアミン(分子量:101.19、東京化成工業(株)製)40.0g(395.0mmol)、n−オクチルアミン(分子量:129.25、商品名「ファーミン08D」、花王(株)製)38.3g(296.3mmol)、n−ドデシルアミン(分子量:185.35、商品名「ファーミン20D」、花王(株)製)18.3g(98.8mmol)、及びN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン(分子量:102.18、広栄化学工業(株)製)40.4g(395.0mmol)のアミン混合液を滴下した。
滴下後、30℃で2時間撹拌して、シュウ酸銀とアミンの錯形成反応を進行させ、白色物質(シュウ酸銀−アミン錯体)を得た。
熱分解工程
シュウ酸銀−アミン錯体の形成後に、反応液温度を30℃から105℃程度(103〜108℃)まで昇温し、その後、前記温度を保持した状態で1時間加熱して、シュウ酸銀−アミン錯体を熱分解させて、濃青色の表面修飾銀ナノ粒子がアミン混合液中に懸濁した懸濁液を得た。
洗浄工程
冷却後、得られた懸濁液にメタノール200gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、再度、メタノール60gを加えて撹拌し、その後、遠心分離により表面修飾銀ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。このようにして、湿潤状態の表面修飾銀ナノ粒子を得た。
実施例1(銀メッキ層形成用組成物の調製)
下記表1に記載の処方(単位:重量部)に従って各成分をはかり取り、オイルバス(100rpm)で3時間攪拌し、その後、自転公転式混練機(倉敷紡績(株)製、マゼルスターKKK2508)で攪拌混練(2分間×3回)して、黒茶色の銀メッキ層形成用組成物(1)(銀濃度:50重量%、粘度(25℃、せん断速度10(1/s)における):10.1mPa・s)を得た。
得られた金属メッキ層形成用組成物(1)について、分析装置として商品名「ゼータナノサイザーシリーズ ナノ−S」(マルバーン社製)を使用して、動的光散乱法にて、表面修飾銀ナノ粒子の平均粒子径を確認したところ、25nmであった。
実施例2〜4、比較例1〜3
下記表1に記載の通りに処方を変更した以外は実施例1と同様に行って銀メッキ層形成用組成物(銀濃度:50重量%)を得た。
実施例及び比較例で得られた銀メッキ層形成用組成物の焼結体の基板密着性について下記方法により評価した。
(焼結体の基板密着性評価)
実施例及び比較例で得られた銀メッキ層形成用組成物を無アルカリガラス板上に塗布して塗膜を形成した。ホットプレートを使用して、得られた塗膜を、速やかに、条件1(100℃30分間後、120℃30分間)、若しくは条件2(100℃30分間後、150℃1時間)で焼結し、およそ1μm厚みの焼結体を得た。
得られた焼結体/無アルカリガラス板積層体についてテープ剥離試験(JIS K 5600に準拠)を行い、テープを剥離した際に、無アルカリガラス板上に残った焼結体の割合(残存率:%)から基板密着性を評価した。
<表面修飾金属ナノ粒子>
・表面修飾銀ナノ粒子:調製例1で得られた表面修飾銀ナノ粒子
<分散媒>
・ヘキサデカン:沸点287℃、東京化成工業(株)製試薬
・3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール:沸点193−196℃、東京化成工業(株)製試薬
<(メタ)アクリレート>
・EBECRYL 230:2官能脂肪族ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス社(株)製、分子量:5000、アクリロイル当量:2500、Tg:−55℃、樹脂分100重量%
・EBECRYL 270:2官能脂肪族ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、分子量:1500、アクリロイル当量:750、Tg:−27℃、樹脂分100重量%
・EBECRYL 303:2官能脂肪族ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、分子量:900、該樹脂成分55重量%の他に1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを45重量%含有
・EBECRYL 767:2官能脂肪族ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)製、分子量:1500、該樹脂成分70重量%の他にイソボルニルアクリレートを30重量%含有
<熱ラジカル重合開始剤>
パーブチルO:tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、日本油脂(株)製、発熱開始温度106℃