図1は、本発明の音響トランスデューサー(たとえば、マイクロホン、スピーカー、イアホン等、以下はマイクロホンと記載)の第1の実施形態(第1の構造)を示す図で、その構造を半導体基板111の断面図で示す。半導体基板111の第1面111−S1から第2面111−S2へ形成された凹部(図1では、貫通孔)112(112−1、112−2、112−3)の側面に絶縁膜113が形成されている。半導体基板111は、たとえばシリコン(Si)、炭素(C)、ゲルマニウム(Ge)等の単元素半導体基板、或いは、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)等の二元素半導体基板、或いは多元素半導体基板である。或いは、半導体基板ではなく、絶縁基板や導電体基板でも良い。たとえば、絶縁体基板として、ガラス、プラスチック等の高分子、セラミック、ゴム等の絶縁体基板である。絶縁体基板の場合には、絶縁膜113は形成しなくても良い場合がある。導電体基板として、たとえば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、各種合金(ステンレス等)、導電性ゴム、導電性プラスチックである。以下の説明では、主に半導体基板として説明する。
凹部112は、半導体基板111の第1面111−S1および/または第2面111−S2に対し略垂直に形成されており、第1面111−S1および第2面111−S2で完全に貫通した貫通孔であっても良い。図1では貫通孔として説明する。半導体基板111の第2面111−S2側は薄板110が付着しており、貫通孔112(112−1、2、3)は半導体基板111の第2面111−S2で閉じている。この薄板110は貫通孔112を形成する前に付着しても良いし、貫通孔112を形成した後に付着しても良い。薄板110を貫通孔112を形成した後に付着する場合は、絶縁膜113を形成した後、或いはその後のプロセスで薄板110を付着させることもできる。
貫通孔112(112−1、3)の側面には導電体膜115(115−1、2、3、4)が形成される。貫通孔112−1において、導電体膜115−1および115−2は対向しており、接続していない。すなわち、紙面に垂直方向において、導電体膜115−1および115−2は接続していない。さらに貫通孔112−1以外の領域においても導電体膜115−1および115−2は接続していないので、導電体膜115−1および115−2は、貫通孔112−1において、貫通孔112−1内空間を容量成分とするコンデンサの対向電極となっている。
また、貫通孔112−3において、導電体膜115−3および115−4は対向しており、接続していない。すなわち、紙面に垂直方向において、導電体膜115−3および115−4は接続していない。さらに貫通孔112−3以外の領域においても導電体膜115−3および115−4は接続していないので、導電体膜115−3および115−4は、貫通孔112−1において、貫通孔112−1内空間を容量成分とするコンデンサの対向電極となっている。
貫通孔112−2は外部からの音波を受信し導入する部分であり、その音波により貫通孔112−1および貫通孔112−2、並びに貫通孔112−3および貫通孔112−2によって挟まれた基板(これを基板側壁と呼ぶ)111(111−1、111−2)が振動する。いわば、これらの基板側壁111(111−1、111−2)はダイヤフラムの役割を果たす。このダイヤフラムが振動板に相当する。
導電体膜115−1および115−2の間に一定電圧Vをかけておけば、この基板側壁111(111−1)の振動によって、貫通孔112(112−1)における対向する導電体膜(コンデンサの電極ともなっているので、電極と呼ぶこともある)115−1および115−2の間の静電容量が変化する。また、導電体膜115−3および115−4の間に一定電圧Vをかけておけば、貫通孔112(112−3)における対向する導電体膜(コンデンサの電極ともなっているので、電極と呼ぶこともある)115−3および115−4の間の静電容量が変化する。この静電容量の変化量を電圧の変化へ変換することにより、音波の音圧レベルを得ることができる。
半導体基板111の第2面111−S2側は薄板110が付着しているが、第1面111−S1側に薄板119を付着しても良い。貫通孔112(112−1、2、3)の表面および裏面は薄板110および119でカバーされているので、本発明のマイクロホンは機械的衝撃に強く、外界の変化(耐環境性)等にも強い。図1にも示すように、音源126からの音波127を受ける貫通孔112(112−2)をカバーする薄板119には音波127を導入する音波導入孔(開口)122が一つまたは複数設けられ、音波127が効率的に貫通孔112(112−2)内に導入される。あるいは、貫通孔112(112−2)の第1面111−S1側に音波導入孔(開口)122が大きく一つだけ開けられたり、または貫通孔全体に音波導入孔(開口)122が開けられていても良い。
貫通孔112(112−2)内に導入された音波が貫通孔内で留まるのを防止するために、半導体基板111の第2面111−S2側をカバーしている薄板110の貫通孔112(112−2)の部分における一部に音波抜け孔127を設けても良い。音波とは空気の振動であるから、空気振動は速やかに音波抜け孔127から抜けていく。尚、当然貫通孔112(112−2)内に導入された音波は、音波導入孔(開口)122からも抜けてゆく。従って、半導体基板111の第2面111−S2側をカバーしている薄板110の音波抜け孔127を音波導入孔とすることもでき、その場合には、半導体基板111の第2面111−S2側からの音も検知することができる。
音波を受けて基板側壁111(111−1、111−2)が振動し、その振動によって容量空間である112(112−1、112−2)の静電容量が変化する。このとき容量空間である貫通孔112(112−1、112−2)内にエアー等の気体が入っていて、かつ薄板110および119で貫通孔112(112−1、112−2)が密閉されていると、貫通孔112(112−1、112−2)内の圧力が変化する。この圧力変化が基板側壁111(111−1、111−2)の振動に影響を与える可能性があるので、貫通孔112(112−1、112−2)内の圧力が変化しないようにするために、貫通孔112(112−1、112−2)をカバーしている薄板110にガス抜き孔128(128−1、128−2)を空けておく。これは薄板119側にあけても良いし、両方に開けておいても良い。ただし、このガス抜き孔128(128−1、128−2)から音波が入らないようにする必要がある。ガス抜き孔128(128−1、128−2)から音波が入ると、こちらの方からも側壁111(111−1、111−2)が振動してしまうからである。尚、貫通孔112(112−1、112−2)内が真空(に近い)状態で密閉されていれば、圧力変動はない。
貫通孔112(112−1、112−2)の電極・配線(導電体膜)115(115−1、2、3、4)上は絶縁膜117が形成され保護されている。絶縁膜113、導電体膜115、および絶縁膜117は貫通孔内だけでなく、半導体基板111の第1面111−S1(または第2面111−S2)上にも形成される。図1から分かるように、導電体膜115は貫通孔112(112−1、112−2)内でコンデンサの電極・配線となるようにパターニングされ、半導体基板111の第1面111−S1(または第2面111−S2でも良い)上まで引き出される。半導体基板111の第1面111−S1上の所定部分で、絶縁膜117はコンタクト孔123が開口され、このコンタクト孔123から電圧Vが供給される。また、薄板119においても、コンタクト孔123を電源供給部領域(電源供給開口部)121は開口される。
図2は、本発明のマイクロホンを平面的に見たものである。矩形状の貫通孔112(112−1、112−2、112−3)が並行に配置されている。貫通孔112−1および112−2の間に基板側壁111−1、貫通孔112−2および112−3の間に基板側壁111−2があり、これらの基板側壁111−1および111−2はダイヤフラムとなり、貫通孔112−2に導入された音波によって振動する。図1および図2から分かるように、基板側壁111−1および111−2は矩形状(長方形形状)であり、立体的に言えば直方体形状である。基板側壁111−1および111−2の厚みをa、幅をb、深さをhとすれば、基板側壁の大きさ(体積)はabhとなる。貫通孔112−1の幅をe、貫通孔112−2の幅をd、貫通孔112−3の幅をfとすると、貫通孔112−1の大きさ(体積)はbhe、貫通孔112−2の大きさ(体積)はbhd、貫通孔112−3の大きさ(体積)はbhfとなる。通常は貫通孔112−1と貫通孔112−3は同じサイズとするので、e=fとなる。貫通孔の場合には、hは基板111の厚みとほぼ等しい。凹部の場合には、hは基板111の厚みより小さい。
図2では、基板111上に形成した薄膜の状態が分かるように一部の薄膜のみ示しているが、薄膜の構成は図1と同じである。容量空間となる貫通孔112−1および112−3においては、貫通孔の側面に絶縁膜113が形成され、その上に導電体膜115が形成されている。導電体膜115は必要なパターニングがなされる。貫通孔112−1において、導電体膜115−1および115−2は互いに対向する電極・配線となるので、導通していない。それら(導電体膜115−1および115−2の側面電極)の大きさ(面積)は貫通孔112−1の側面とほぼ同じであるから、bhである。導電体膜115−1および115−2の側面電極間距離はeである(厳密には、絶縁膜113および導電体膜115の厚みを考慮する必要がある)から、導電体膜115−1および115−2の側面電極間に発生する静電容量C1は、C1=ε・ε0・e/bhとなる。ここで、ε0は真空中の誘電率、εは誘電係数である。
貫通孔112−3において、導電体膜115−3および115−4は互いに対向する電極・配線となるので、導通していない。それら(導電体膜115−3および115−4の側面電極)の大きさ(面積)は貫通孔112−3の側面とほぼ同じであるから、bhである。導電体膜115−3および115−4の側面電極間距離はfである(厳密には、絶縁膜113および導電体膜115の厚みを考慮する必要がある)から、導電体膜115−3および115−4の側面電極間に発生する静電容量C2は、C1=ε・ε0・f/bhとなる。
基板側壁111−1および111−2が振動するとe、fが変化するので、静電容量C1およびC2が変化する。この変化を検出すれば音波に対応する容量変化(これに対応する電圧変化)の信号を得ることができるから、音波に再び戻すことができる。パターニングされた導電体膜115上に絶縁膜117が形成される。図2では記載していないが、基板111上には絶縁膜113や117が形成され、導電体膜117は電極・配線引き出し用にパターニングされている。貫通孔112−2においては、導電体膜115は必要がないのでエッチング除去しておくことが望ましいが、音波を受け取る上で問題なければ残しておいても良い。従って、貫通孔112−2においては、絶縁膜113や117が積層された状態となっている。また、図2では記載していないが、貫通孔112−1、112−2、112−3の底部は、図1から分かるように薄板110が存在するが、貫通孔を形成した後に絶縁膜113等を形成するので、これらの膜を残しておいても良い。ただし、容量空間を構成する貫通孔112−1および112−3においては、導電体膜115は除去しておく必要があることは当然である。(コンデンサの電極が導通しないようにする。)
図1および図2においては、音波導入用貫通孔112−3の両側に容量空間を構成する貫通孔112−1および112−3を形成しているが、片側だけに貫通孔を形成するだけでも音波による容量変化を検出することができる。両側に貫通孔を形成することによって、片側だけの場合よりも容量変化量が約2倍になるので、検出感度を増大することができる。
図3は、さらに容量空間を構成する貫通孔112−4、112−5を貫通孔112−2の側面に設けた構造を示す図である。従って、矩形形状の音波導入用貫通孔112−2の4つの側面全部に容量空間を構成する貫通孔が形成されているので、これらの貫通孔同士の間に4つの基板側壁111−1、111−2、111−3、111−4が存在する。音波導入用貫通孔112−2に導入された音波によってこれらの4つの基板側壁111−1、111−2、111−3、111−4が振動し、これに伴い貫通孔112−1、112−3、112−4、112−5における静電容量が変化するので、音波を検出することができ、しかも静電容量の変化量が増幅されているので、音波の検出感度が増大する。尚、図3では、基板111上に形成した薄膜の状態が分かるように一部の薄膜のみ示しているが、薄膜の構成は図1と同じである。
基板側壁111−3の幅をj、貫通孔112−4の幅をgとすれば、貫通孔112−4の大きさは、dhgである。基板側壁111−4の幅をk、貫通孔112−5の幅をmとすれば、貫通孔112−5の大きさは、dhmである。音波導入用貫通孔112−2の平面形状を正方形に形成し(すなわち、b=d)、それぞれの基板側壁111−1、111−2、111−3、111−4の幅を同じにすれば(すなわち、a=j=k)、基板側壁111−1、111−2、111−3、111−4の振動モードは同じとなる。(半導体基板がシリコンの単結晶基板であるとき、基板側壁111−1、111−2、111−3、111−4の各面は、基板面に垂直でありかつ互いに垂直であるから、結晶面が同系の結晶方向である。)また、貫通孔貫通孔112−1、112−3、112−4、112−5の大きさも同じくすれば(すなわち、e=f=j=m)、貫通孔貫通孔112−1、112−3、112−4、112−5におけるコンデンサの容量変化が同じとなる。このようにすることによって、静電容量の変化量が約4倍に増幅され、音波の検出感度が増大する。
図4は、平面形状(基板面に平行な断面)が円形状(立体的に見れば、円柱形状)であるマイクロホンを示す図である。音波導入用の貫通孔132(132−1)は半径r1の円形状であり、その周囲に半径r2で、幅(厚み)がr2−r1の基板側壁131(131−1)が取り囲んでいる。さらに、その周囲に半径r3で、幅がr3−r2の容量空間となる貫通孔132(132−2)が取り囲んでいる。すなわち、この貫通孔132(132−2)はドーナツ形状となっている。また、貫通孔132(132−1)、基板側壁131(131−1)および貫通孔132(132−2)は同心円状となっている。図4では、絶縁膜等を記載していないが、実際には断面構造は図1と同様であり、絶縁膜や導電体膜の構成も図1〜図3と同様である。図4では、基板111上に形成した薄膜の状態が分かるように一部の薄膜のみ示しているが、薄膜の構成は図1と同じである。
基板側壁131(131−1)の外周には導電体膜135(135−1)が積層され、また貫通孔貫通孔132(132−2)の外周にも導電体膜135(135−2)が積層されている。導電体膜135(135−1)および導電体膜135(135−2)は導通せず、距離r3−r2を有するコンデンサの電極を構成する。(実際には、導電体膜の厚みや他の絶縁膜の厚みも考慮する必要がある。)貫通孔132(132−1)に音波が導入されると、基板側壁131(131−1)は音波の振動に合わせて振動する。この基板側壁131(131−1)の振動に合わせて導電体膜135(135−1)および導電体膜135(135−2)間の静電容量が変化するので、これらの電極間に一定電圧Vを印加すれば、静電容量の変化を検出することができる。すなわち、音波信号を検出することができる。
図4に示すような同心円形状のマイクロホンでは、コンデンサを構成する電極は2つであり、図2や図3に比較すると少なくてすみ、しかもコンデンサを構成する対向電極の面積を大きくできる(単位面積当たり)ので、マイクロホンの感度を高めることができ、非常に効率の良いマイクロホンデバイスを作製できる。図4に示す円形形状の場合には、基板面において等方的であるから、音波信号の検出には好適である。図5は矩形(正方形または長方形)形状のマイクロホンで、コンデンサを構成する電極は2つの場合を示す図である。図2や図3のように電極を分割しても良いが、図5のようにコンデンサを結合して対向電極を2つにすることによって、電極・配線を少なくすることができるとともに、全体の面積を小さくすることができ、さらに全体の静電容量を増大させることができる。従って、単位面積当たりの検出感度を増大することが可能となる。尚、図6では、基板111上に形成した薄膜の状態が分かるように一部の薄膜のみ示しているが、薄膜の構成は図1と同じである。
図1〜図5から分かるように、平面形状(基板面に平行な断面)が他の形状でも良い。たとえば、三角形状、5角形以上の多角形状、あるいは楕円形状でも良い。三角形以上の多角形の場合、正多角形がそれぞれの面における振動による変形が同じまたは類似するので望ましい。図2〜図5では電極取り出し口を記載していないが、図1の断面形状に示すように、基板側壁の上面に付着した薄板にコンタクト孔をあけて、このコンタクト孔に基板側壁の上面にも積層した導電体膜を露出させて電極取り出し口とする。基板側壁上面に積層した導電体膜は基板側壁の側面に積層された導電体膜(たとえば、図4における135−1や135−2)と連続した薄膜である。また、基板側壁の側面、上面、貫通孔底部に積層した導電体膜は必要なパターニングが行なわれる。
図6は、本発明の加速度センサを示す平面図である。基板面に平行な断面図または上面または下面を見た図と考えれば良い。薄膜構造は図1と同様であるが、必要な薄膜のみ示している。図6に示すように、略矩形形状(立体的には略直方体形状)の貫通孔211を中心において、直方体の4つの各側面に平行に基板側壁201(201−1、201−2、201−3、201−4)を挟んで4つの貫通孔213、214、215、216が配置されている。これらの4つの貫通孔213、214、215、216は、幅がp、長さがq、深さがsの略直方体形状の空間であり、中央の貫通孔211は長さがqの正方形で、深さがsの略直方体形状の空間である。また、基板側壁201(201−1、201−2、201−3、201−4)の幅(厚み)はtである。p、q、s、tは各貫通孔や各基板側壁で変えても良いが、その場合は各貫通孔で検出する加速度の大きさを比較するために容量変換回路を用いて換算比較回路を設ける必要があるので、各貫通孔(中央の貫通孔211を除く)や各基板側壁は同じ大きさとした方が良く、p、q、s、tは同じ値とした方が望ましい。
容量空間となるコンダンサ用貫通孔213において、基板側壁側面に形成された導電体膜221はコンデンサ213の一方の電極となり、これと対向する他方の電極である導電体膜222はコンダンサ用貫通孔213の他方の内側面に形成される。これらの2つの電極の間の距離はpであるから、(実際には、貫通孔213内に形成された絶縁膜や導電体膜等の厚みを考慮する必要がある。)2つの電極の間の静電容量Cは、C=ε・ε0・p/(qs)となる。
同様に、容量空間となるコンダンサ用貫通孔214において、基板側壁側面に形成された導電体膜223はコンデンサ214の一方の電極となり、これと対向する他方の電極である導電体膜224はコンダンサ用貫通孔214の他方の内側面に形成される。これらの2つの電極の間の距離はpであるから、(実際には、貫通孔214内に形成された絶縁膜や導電体膜等の厚みを考慮する必要がある。)2つの電極の間の静電容量Cは、C=ε・ε0・p/(qs)となる。
同様に、容量空間となるコンダンサ用貫通孔215において、基板側壁側面に形成された導電体膜225はコンデンサ215の一方の電極となり、これと対向する他方の電極である導電体膜226はコンダンサ用貫通孔215の他方の内側面に形成される。これらの2つの電極の間の距離はpであるから、(実際には、貫通孔215内に形成された絶縁膜や導電体膜等の厚みを考慮する必要がある。)2つの電極の間の静電容量Cは、C=ε・ε0・p/(qs)となる。
同様に、容量空間となるコンダンサ用貫通孔216において、基板側壁側面に形成された導電体膜218はコンデンサ216の一方の電極となり、これと対向する他方の電極である導電体膜219はコンダンサ用貫通孔216の他方の内側面に形成される。これらの2つの電極の間の距離はpであるから、(実際には、貫通孔216内に形成された絶縁膜や導電体膜等の厚みを考慮する必要がある。)2つの電極の間の静電容量Cは、C=ε・ε0・p/(qs)となる。
図7は加速度による基板側壁の変形状態を示す模式図である。横方向をX、縦方向をYとし、加速度αがY方向に働くとする。基板側壁201−4にはこの加速度αによる力F(=mα、mは基板の質量)が働く。基板側壁201−4は周囲がその変形を規制されているが、その内側は規制されていないので、基板側壁201−4が貫通孔216の内部に膨らんだ湾曲形状に変形する。加速度αによる力Fは基板基板側壁201−4の側面においてY方向に均一に作用するので、基板側壁201−4の中心部付近が最も湾曲している。基板側壁201−4のX方向における変位をyとすれば、x=0、qでy=0で、x=q/2でy=y0(最大値)となる。y0はおおよそ以下の関係式で求められる。
y0=β*F*s4/(Et3)
(Eは基板側壁(ダイヤフラム)のヤング率、βはダイヤフラムの縦横比により変化する定数)
従って、貫通孔216の電極218と219の間の電極間距離が変化するので、電極218と219の間の静電容量が変化する(静電容量が増加する)。逆にこの静電容量を測定して、電極間距離を求めて、加速度による力を求め加速度を計算できる。
基板側壁201−4と反対側の基板側壁201−2も加速度αによる力Fが働き、基板側壁201−2も基板側壁201−4と同じ方向に変形する。すなわち、基板側壁201−2は中央の貫通孔211の内部側に変形し、貫通孔214の外側へ変形する。従って、貫通孔214の電極223と224の間の電極間距離が変化するので、電極223と224の間の静電容量が変化する(静電容量が減少する)。逆にこの静電容量を測定して、電極間距離を求めて、加速度による力を求め加速度を計算できる。また、静電容量が、貫通孔214では減少し、貫通孔216では増加する場合、加速度はY方向(図7において、下側から上側)であるということも分かる。すなわち、加速度の向きも分かる。
Y方向の加速度に対して、基板側壁201−1や201−3は変形しないので、貫通孔213や215における静電容量の変化はない。X方向の加速度に対しては、基板側壁201−1や201−3は変形するので、貫通孔213や215における静電容量の変化が起こり、X方向の加速度の大きさや向きを知ることができる。
X方向やY方向に対して一定方向の角度を有する加速度に対しては、4つの基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4のすべてが変形するので、貫通孔213、214、215、216の静電容量が変化する。隣接する貫通孔2個だけの静電容量変化を検出すれば加速度(大きさ、向き)を検出できる。たとえば、貫通孔213と214における静電容量を検出すれば良い。もう2つの貫通孔215と216における静電容量は検出精度を上げるために用いれば良い。
図8は、本発明の加速度センサの断面図である。薄膜構造は図1と同様であるから、一部を省略している。図8は、たとえば、図6におけるC−Dにおける断面図である。基板201の基板面の第1面201−S2および第2面201−S2に垂直な貫通孔211と隣接する貫通孔213または215を隔てる基板側壁201−1または201−3が存在し、基板側壁201−1または201−3は加速度による力によって変形する。貫通孔213には基板側壁201−1上に導電体膜221が形成されている。貫通孔213は容量空間となっており、導電体膜221はコンデンサの一方の電極となる。この導電体膜221に対向するコンデンサの他方の電極となる導電体膜222は、貫通孔213において基板側壁201−1と対向する基板211の内側面に形成されている。導電体膜222が形成された基板201−5は加速度による力では殆ど変形しない。
貫通孔215は容量空間となっており、導電体膜225はコンデンサの一方の電極となる。この導電体膜225に対向するコンデンサの他方の電極となる導電体膜226は、貫通孔215において基板側壁201−3と対向する基板211の内側面に形成されている。導電体膜226が形成された基板201−7は加速度による力では殆ど変形しない。基板201の第1面201−S1上には薄板232が付着し、基板201の第2面201−S2上には薄板231が付着しており、貫通孔211、213、215をカバーしている。貫通孔211、213、215は完全に密閉していても良いし、外部との通気孔234、235、236−1、236−2を設けても良い。完全密閉の場合には、貫通孔内部を真空にしたり、あるいは空気、窒素等を充填しても良い。完全密閉の場合の方が外部環境の変化によって貫通孔内部の変化が小さい。尚、通気孔234、235、236−1、236−2は薄板231や232に形成することができる。
さて、基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4は加速度による力によって変形するが、その力は基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4の質量に依存する。(F=mα)基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4は余り厚くできないので質量を大きくできない。そこで、貫通孔211内へ液体229を入れて、この液体にかかる加速度による力を用いて基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4を大きく変形させることができる。すなわち、基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4を重くしなくても大きく変形させることができる。基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4はできるだけ薄くして変形しやすくして、加速度による力は貫通孔211に入れた液体229によって発生させる。液体は加速度によって加速度方向に配置されている基板側壁を液体に加わる加速度力で押すので、それに対応して基板側壁が変形し、この変形による貫通孔における静電容量が変化する。基板側壁は基板側壁自体に加わる加速度力に加えて液体による力が加わることになる。
液体の質量は大きいほど加速度力が発生する。たとえば、水銀(Hg)は比重が約13.8であり、本発明には最適の液体である。他にポリタングステンナトリウム(比重は、約3〜5)、四臭化アセチレン(比重は、約3)等も使用できる。比重は余り大きくないが水や重油等、種々の液体を使用できる。貫通孔211の薄板232に複数の孔236−1、236−2を空けて、一方の孔236−1から入れて他方の孔236−2から出せば貫通孔211へ液体229を入れることができる。液体229を入れた後で孔236−1、236−2を塞げば、液体229が漏れる心配もない。薄板232を基板201−S1上に付着する前に液体229を貫通孔211に入れても良い。この場合は、貫通孔211の通気孔236−1、236−2を設けなくても良い。液体229は貫通孔211全体に充填しても良いし、一部だけ入れても良い。基板側壁を変形する量と加速度力の大きさに合わせて貫通孔211に入れる量を調整すれば良い。
図9は、中央の貫通孔211の周囲のコンデンサ用貫通孔213、214、215、216がつながった構造を有する加速度センサを示す図である。中央の矩形状の貫通孔211の周囲に基板側壁201−1、201−2、201−3、201−4が取り巻き、その周囲を容量空間となる217(貫通孔213、214、215、216がつながった容量空間を217とする)が取り囲んでいる。容量空間217の内側側面と外側側面は、矩形の各辺において距離pだけ離間している。(基板側壁の厚みはtである。)容量空間217の内側側面と外側側面には電極となる導電体膜218、221、223、225、および216、222、224、226が積層され、コンデンサを形成している。このように容量空間となる貫通孔をつなげることによって、平面的な面積を小さくすることができる。さらに、貫通孔の内側側面上の導電体膜(218、221、223、225)または貫通孔の外側側面上の導電体膜(216、222、224、226)のどちらかは接続することができるので、パターニングが必要がなく電極配線を減らすことができる。すなわち、プロセスを簡略できる。
図9において、基板をシリコンウエハとし、基板面を(100)面としたとき、X方向を<01−1>方向とすれば、Y方向は<011>方向となるから、基板側壁201−1〜4は(011)面となり結晶軸が等価となっている。従って、同じ厚みであれば、同じ加速度に対して各基板側壁の変形量は同じとなるので、計算で換算することなく容易に比較することができる。尚、貫通孔217の外側は厚い基板201(201−5〜8)で囲まれているので、加速度によってこれらの基板は殆ど変化しないので、各容量空間(213、214、215、216)の静電容量変化は、基板側壁201−1〜4の変形によって起こると考えて良い。尚、図9においても絶縁膜等は記載していないが、その構造は図1等に示す場合と同様である。
図10は、断面(基板面に平行な面)が円形状(立体的には円柱状となる)の貫通孔および基板側壁を有する本発明の加速度センサを示す図である。基板301内に中央に円形状(立体的には円柱状)の貫通孔311(半径r5)があり、その周りを半径r6の円形状の基板側壁301(301−2)が取り囲んでいる。さらにその周囲を半径r7の円形状の貫通孔313が取り囲んでいる。貫通孔313は基板301(301−1)で囲まれている。従って、基板側壁301(301−2)は厚みr6−r5のドーナツ形状となっている。また、貫通孔313も幅r7−r6のドーナツ形状の空洞となっている。貫通孔311、基板側壁301−2、貫通孔313は同心円状に配置されている。
容量空間となる貫通孔313の内側側面(すなわち基板側壁301(301−2)の外側面)に導電体膜315が積層され、貫通孔213の外側側面(すなわち基板301(301−1)の内側面)に導電体膜317が積層されている。(尚、薄膜構造は図1等に示す場合と同様で、絶縁膜等も積層されているが、図10では省略する。)
導電体膜317は円周上でほぼ等分の長さで分割されている。たとえば、円周上で長さu1の電極と電極間距離u2でn個に分割されているとすれば、n(u1+u2)=2πr7が成り立つ。導電体膜317の1つの電極を317−1、その隣(時計の周る方向)の電極を317−2、、その隣(時計の周る方向)の電極を317−3とする。導電体膜315および導電体膜317の間でコンデンサを形成している。すなわち、電極317−1や317−2等と導電体膜315の間で容量を測定できる。加速度がないときは、これらの電極間距離wはどのコンデンサでも等しく、w=r7−r6=w0であり(実際は、導電体膜の厚みを考慮する必要がある)、どのコンデンサにおいても容量は等しい(この容量をC0とする)。今加速度を受けて基板側壁301−2が変形したとする。加速度方向が電極317−2の方向であれば、電極317−2に面している側の基板側壁301−2が変形して、電極317−2と導電体膜317との距離がw0より小さくなり、容量がC0より大きくなる。電極317−2に隣接する電極317−1や317−3における静電容量もC0より小さくなるが、電極317−2における静電容量が最も大きくなる。この静電容量の変化量から加速度の大きさを計算できる。すなわち、n個の電極317(317−1〜n)のそれぞれの静電容量を見て、容量が最も大きい箇所の電極の方向が加速度の向きであり、その容量の変化量から加速度の大きさを計算できる。
導電体膜317の分割個数を増やすことによって加速度の向きおよび加速度の大きさをより精度良く検出することができる。貫通孔313の内側側面の導電体膜315を分割して、導電体膜317を分割せずつないでも同様に加速度の向きと大きさを測定できる。あるいは両方の導電体膜315および317を分割しても良い。さらに、貫通孔311内に液体を入れて基板側壁301−2の変形量を増大させても良い。
図11は断面が8角形形状である貫通孔および基板側壁を有する本発明の加速度センサを示す図である。中央の8角形形状の空洞を有する貫通孔333の周囲に8角形形状(立体的には六角柱状)の基板側壁331−2が取り囲み、さらにその周囲を、容量空間となる8角形状の空洞を有する貫通孔334が取り囲み、その周囲は厚い基板331−1が囲んでいる。基板側壁331−2は加速度による力によって変形する。基板側壁331−2の各辺(面)上には導電体膜336が形成され、一方の電極(たとえば、336−1、2)にパターニングされている。容量空間となる貫通孔334の外側側面上に歯導電体膜338が形成され、他方の電極(たとえば、338−1、2)にパターニングされている。
貫通孔334において、内側側面上の電極と外側側面上の電極との間でコンデンサが形成され静電容量を測定できる。たとえば、電極336−1とこれと対向する電極338−1で静電容量を測定できる。尚、どちらかの電極336または338はつながっていても、各領域(各辺(面)に対応する)における静電容量を測定可能である。各辺における変形を直接比較するために、8角形形状は正8角形形状が望ましい。ただし、基板が各方向に対して等方的でない場合には、加速度による力の大きさによって各辺の変形の大きさが異なるので、その相違量を補正して加速度の大きさを計算する必要がある。たとえば、基板が単結晶シリコン(シリコンウエハ)の場合において、基板面が(100)面で、基板側壁331−2の1つの辺(面)(たとえば、331−2−1)が{110}面系であるとき、隣接する面は{111}面系となりヤング率が異なるので、同じ力が加わっても変形量が異なる。従って、コンデンサの容量変化から変形量を求め、さらに変形量から力の大きさを計算するときにこの結晶方位を考慮する必要がある。
このような8角形形状である基板側壁および貫通孔を有する加速度センサを用いれば、8方向の加速度方向を正確に検出することができる。すなわち、最も変形量の大きい(静電容量が大きい)コンデンサを検出すれば(これは極めて簡単である)、その基板方向が加速度の向きとなる。さらに各コンデンサの変形量を精密に分析することにより、方向をもっと細かく検出することもできる。ただし、この加速度の向きをより正確に求めるには、さらに辺を増やしていけば良い。本発明は貫通孔333や334を形成するときのマスクを変更することによって、種々の多角形状の貫通孔および基板側壁を形成できる。正多角形の作製も容易である。たとえば、貫通孔333の外接円の半径を100μmである正100面体の1辺は約6、3μmになるので、問題なくパターニングできる。従って、360°全方位に対して、3.6°の間隔で加速度の向きを正確に検出可能である。さらに他の辺(面)の加速度量もそれぞれ比較することによって、さらに細かい方向を計算することができる。これは、図10に示す円形形状の加速度センサでも同様である。また、中央の貫通孔333に液体を入れて、基板側壁の加速度による変形量を増大することもできる。
次に本発明のマイクロホンデバイスまたは加速度センサデバイスの製造プロセスを示す。本発明のマイクロホンデバイスおよび加速度センサデバイスの基本構造はこれまでに説明したように類似しているので、まとめて説明する。
図12は、本発明のマイクロホンデバイスまたは加速度センサデバイスの製造プロセスを示す図である。図12(a)に示すように、基板401の第1面(表面、または主面と呼んでも良い)401−S1上に絶縁膜402を形成する。基板401は、シリコン(Si)、ゲルマニウム、炭素(或いはダイヤモンド)等の単元素半導体基板、炭化ケイ素(SiC)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、インジウムリン(InP)等の二元素半導体基板、三元系以上の多元系半導体基板、ガラス、セラミック、(絶縁性)プラスチック、(絶縁性)コム、(絶縁性)高分子樹脂等の絶縁性基板、あるいは、金属(鉄、銅、亜鉛、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル、クロウム、アルミニウム、各種合金)、導電性プラスチック、導電性ゴム、導電性高分子樹脂等の導電体基板である。或いは、これらの基板を重ねた基板、たとえば貼り合わせ基板でも良い。SOI(Silicon On Insulator)基板でも良い。
基板は円形状、矩形状等の形状で、円形状であれば1インチ直径以上、矩形状であれば1インチ□以上であれば実用的であるが、大きいサイズほど取れ個数(チップ)が増える。また他のデバイス、たとえばICやLSIと同じ基板であれば、基板は半導体基板となる。基板の厚みは、0.1mm〜1.0mm程度が扱いやすいが、特に限定されず、0.1mmより薄い基板でも良いし、1.0mmより厚い基板でも良い。
絶縁膜402上に感光性膜404を形成し、露光法を用いて必要な窓開けを行なう。絶縁膜402は、感光性膜404の窓開けをしやすくする目的や、この後の基板401のエッチング時のマスクとなる目的や、あるいは基板401を保護する目的であるが、絶縁膜402がなくてもこれらの目的を実現できれば形成しなくても良い。絶縁膜は、CVDやPVD等で積層するシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)等である。基板がシリコンである場合には熱酸化膜や熱窒化膜でも良い。絶縁膜402の厚みは、上記の目的によって異なるが、約0.1μm〜2μmである。もちろん、上記の目的を達成できれば、これよりも薄くても良いし、厚くても良い。尚、基板401の第2面(裏面または副面とも言う)401−S2上にも絶縁膜403を積層しても良い。特に基板401の反り防止には、第1面と同程度の絶縁膜を形成すると良い。
感光性膜404は、たとえばフォトレジスト膜や感光性シートである。感光性膜404の厚みは、基板401をどの程度の深さまでエッチングするかということや、基板401のエッチング時のエッチング選択比(すなわち、基板401のエッチング速度と感光性膜404のエッチング速度の比)、エッチング速度のバラツキ等によって決定する。たとえば、基板401のエッチング量(貫通孔の深さ、あるいは凹部(貫通孔ではなく、途中で止める場合)の深さで、貫通孔の場合は基板の厚みに相当する)が400μm、基板401と感光性膜404のエッチング選択比が50、絶縁膜402の厚みが1μm、絶縁膜402と感光性膜404のエッチング選択比が10であるとき、まず絶縁膜1μmを完全にエッチングするときに感光性膜404は約0.1μmエッチングされ、基板を400μmエッチングするときに感光性膜404は約8μmエッチングされる。バラツキを10%とすれば、感光性膜404は約10μmの厚みがあれば良い。以上から、基板401と感光性膜404とのエッチング選択比を大きくすることが重要である。
感光性膜404の窓開けは、中央の貫通孔(マイクロホンデバイスでは音波導入用貫通孔)405−1およびコンデンサ用の貫通孔405−2や405−3を形成ずる領域における感光性膜を除去する。感光性膜がポジ型の場合にはこの領域には光をあてて、感光性膜を残す部分に光を当てない。感光性膜がネガ型の場合にはこの逆である。このためのマスクやレチクルを使用して露光する。光には、X線、γ線等の電磁波、紫外線、可視光等を言う。また電子線も含むものとする。感光性膜を露光後、現像液により必要な部分を残し不要な部分を除去して、感光性膜404のパターニングを行なう。感光性膜の形状は、下地のエッチングを感光性膜のパターンにできるだけ忠実に行なうために、垂直形状が望ましい。
次に図12(b)に示すように、感光性膜404をマスクにして窓開けされた領域405−1、2、3等における絶縁膜402のエッチングを行なう。この絶縁膜のエッチングも感光性膜404にできるだけ忠実に垂直なエッチングを行なうことが望ましい。たとえば、シリコン酸化膜(SiOx)のエッチングでは、CHF3ガスや、C2F6+H2ガス等を用いたRIE(反応性ドライエッチング)により垂直パターンに近い異方性エッチングを行なうことができる。
絶縁膜402をエッチングした後、感光性膜404の開口部405−1、2、3等において、露出した基板401をエッチングし、貫通孔406(406−1、406−2、406−3)を作製する。貫通孔406(406−1、406−2、406−3)および基板側壁401−1、401−2はできるだけ正確に形成する必要があるので、略垂直感光性膜パターンに忠実に形成することが望ましい。(サイドエッチングする場合も、サイドエッチング量ができるだけ正確にコントロールされることが望ましい。)基板が単結晶シリコンの場合(いわゆる、シリコンウエハ)、基板側壁401−1および401−2の幅w1は、約1μm〜20μm、貫通孔(または凹部)の深さは約50μm〜1000μmであるから、可能な限りサイドエッチングの少ない垂直エッチングが望ましい。
このようなエッチングとしてたとえば深堀りRIE(DEEP RIE)がある。たとえば高密度プラズマを使い、低温に冷やしてエッチングする方法や、ボッシュプロセス法がある。その他種々の方法も本プロセスに採用できる。基板401をすべてエッチングして貫通孔を形成する場合、オーバーエッチングを10%程度行なうので、絶縁膜403も除去される可能性が大きい。(図12(b)では残している。)従って、貫通孔を形成する場合は、絶縁膜403も含めて完全にエッチングするプロセスが望ましい。この場合、十分なオーバーエッチングを行なうことができるので、基板401の第2面401−S2まで完全に貫通した貫通孔を形成することができる。
貫通孔を形成する場合、基板側壁404−2や404−3はアスペクト比が大きいので、不安定になる場合もあるので、あらかじめ第2面側に薄板410を付着させておくこともできる。この薄板410は、ガラス、セラミック、プラスチック、高分子材料等の絶縁体基板が望ましいが、構造やプロセスを工夫すれば導電体基板や半導体基板でも使用できる。基板401の第2面401−S2に絶縁膜403を形成後に薄板410を付着させても良い。基板401の深堀りエッチングのときに、基板401と薄板410とのエッチング選択比を大きくする条件を用いれば、薄板410をエッチングする量を小さくすることができるので、薄板410にも貫通孔が開くこともない。
基板401に薄板410を付着させる方法として、たとえば接着剤を用いる方法、常温接合や高温融着法、あるいは静電接合など種々の付着方法を使用できる。たとえば、基板がシリコン基板の場合、薄板410としてガラス基板を用いて陽極接合方式で静電接合をすることができる。基板401をエッチングしたときに、感光性膜404がなくならないようにすることが望ましい。ただし、絶縁膜402を形成しておけば、基板401にダメッジが入ることもない。
次にアッシングや感光性膜剥離液等を用いて感光性膜404を除去する。その後、絶縁膜407を形成する。この絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)やシリコン酸窒化膜(SiOxNy)等で、CVD法やPVD法で積層する。熱酸化法を用いても良い。絶縁膜407は貫通孔406(406−1、2、3)の内部にも積層される。次に、導電体膜408を積層する。絶縁膜407は貫通孔406(406−1、2、3)の内部、基板側壁401(401−1,2)や基板401の表面を保護したり、導電体膜408と基板401との電気的接触を防止することなどを目的として積層される。絶縁膜407の膜厚は約0.1〜2.0μmである。上記の目的が達成できれば積層する必要はない。たとえば、基板401が絶縁基板であるときは、貫通孔406(406−1,2,3)を形成した後に、絶縁膜407を形成せずに導電体膜408を積層できる。導電体膜の厚みは約0.1μm〜2.0μmである。貫通孔406の内部まで積層する必要があるので、基板401の表面上はある程度厚く積層する必要がある。
導電体膜408は、アルミニウム、銅、タングステン、ニッケル、チタン、クロウム、金、銀、亜鉛、鉛、スズ等の金属や合金、あるいは窒化チタン、窒化タンタル、導電性多結晶シリコン膜、導電性アモルファスシリコン膜、導電性高分子、導電性ゴム等である。貫通孔406(406−1,2、3)の内部にも積層する必要があるので、CVDやPVD、イオンプレーテイング、メッキ等によって積層することができる。次に感光性膜409を形成し、必要な窓開けを行なう。容量空間となる貫通孔406(406−2、3)において、基板側壁401(401−1、2)側の導電体膜はコンデンサの一方の電極となり、基板側壁401(401−1、2)と対向する貫通孔406(406−2、3)を囲む基板401側の導電体膜はコンデンサの他方の電極となるので、これらの電極間を分離する必要がある。貫通孔406(406−2、3)の底部406−2B、406−3B等に形成された感光性膜409は除去する。また、基板側壁401(401−1、2)側とこれと対向する基板401をつなぐ基板401があるときは、この部分にも導電体膜膜408が積層されているので、この部分における感光性膜409を除去する。コンデンサの電極となる部分や電極を引き出すための配線部分や、その他必要な配線を形成する部分の感光性膜は残しておく。感光性膜409の厚みは約0.1μm〜3μmであるが、貫通孔底部はこれらの値よりも厚くなる場合がある。露光用の光が入る厚みがあれば良い。
また、中央の貫通孔406−1内の導電体膜408は本デバイスでは必要がないので、残しておいても良いし、除去しても良い。中央の貫通孔406−1内の導電体膜408を残す場合には、コンデンサの特性に影響を与えないようにする。加速度センサデバイスの場合には、基板側壁401−1や401−2を重くした方が良いので、コンデンサの特性に影響を与えないように残しておいても良い。感光性膜408を貫通孔内部にパターニングできるように形成するには、たとえば電着法を用いる。あるいは、ドライフィルムを基板表面に付着させてドライフィルムを軟化させて貫通孔内部に入れることができる。あるいは感光性膜をCVD法やPVD法で積層して貫通孔内部の基板側面に形成することもできる。
感光性膜を形成した後、必要な熱処理または環境処理を行なって感光性の感度を高めておき、その後で露光する。貫通孔底部および貫通孔側面(側面がある場合、貫通孔が周囲でつながっている場合には側面はない)の感光性膜を除去すれば良いので、たとえば感光性膜がネガ型であれば、基板側壁401−1および401−2の側に形成された感光性膜、並びに基板側壁401−1および401−2と対向する基板401の側に形成された感光性膜に光を照射する。その他感光性膜を残したい部分に光を当てる。この後現像処理を行なえば、光を照射した部分の感光性膜を残すことができる。ポジ型の場合にはこの逆である。現像処理後必要なベークを行なう。露光は斜め露光法によって行なうことができる。(図12(c))次に、パターニングされた感光性膜をベークする。
次にパターニングされた感光性膜409をマスクにして導電体膜408をエッチングする。エッチングはウエットまたはドライエッチングを行なう。図12(d)は導電体膜408をエッチングし、感光性膜409をリムーブ後の状態を示す図である。貫通孔406−2において、コンデンサの一方の電極となる408−1および他方の電極となる408−2が形成される。また、貫通孔406−3において、コンデンサの一方の電極となる408−3および他方の電極となる408−4が形成される。また、中央の貫通孔406−1内の導電体膜は除去されている。各導電体膜電極はそれぞれ必要な配線が接続されている。
次に、図12(e)に示すように、導電体膜408上に絶縁膜411が積層される。この絶縁膜411は導電体膜408を保護したり、水分等が付着して分離している導電体膜の間が短絡することを防止したりする役目を果たす。絶縁膜411は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)等であり、CVD法やPVD法で積層する。絶縁膜411の厚みは約0.5μm〜2μmである。
次に、図12(f)に示すように薄板413を貫通孔406を塞ぐように基板401上に付着させる。この付着は、たとえば接着剤や常温接合等で行なう。特に基板側壁401−1および401−2はこの薄板413で上部を規制される。この結果、基板側壁401−1および401−2は周囲を規制されたダイヤフラムとなり、音波振動や加速度によってこのダイヤフラムが変形する。薄板413は絶縁体基板が望ましいが、導電体膜や半導体基板でも使用できる。絶縁基板として、たとえばガラス基板を用いれば貫通孔内も観察できる。絶縁基板の厚みは約100μm〜1000μmであり、研磨やエッチング等でさらに薄くしても良い。貼り合わせ基板を薄板413として付着した後で、貼り合わせた厚い基板を取り除いて薄い基板を残しても良い。この場合は、上記の100μmよりさらに薄くでき、約10μm程度にすることも可能である。この薄板413は貫通孔を保護する役目も果たす。
薄板413において必要な部分を除去する。たとえば、貫通孔406−1上をカバーしている薄板413には通気孔415(415−1、2)をあける。これらの通気孔415は、内部の圧力が変動しないようにすることが一つの目的である。あるいはこの通気孔415を通して内部に液体を入れることもできる。通気孔415のサイズは約1μm〜10μmであるが、貫通孔406−1の大きさや最適の液体導入口サイズ、最適の音波導入口サイズ、最適の通気口サイズにすれば良い。1つの通気孔415−1から貫通孔406−1内のエアー等を抜きながら、別の通気孔415−2から液体を入れると簡単に貫通孔406−1内へ液体を入れることができる。必要な量だけ液体を入れた後、通気孔415を塞げば、その後に液体が外へ漏れることもない。また音波を貫通孔406−1内へ導入する場合にも最適の通気孔の大きさを選定すれば良い。
貫通孔406−2、406−3をカバーする薄板413にも通気口416(416−1、2)を空けることが望ましい。これらの通気口によって、基板側壁401−1や401−2の変形によって貫通孔406−2、3内の気圧を一定に保持することができる。通気口416(416−1,2)のサイズは約1μm〜10μmであるが、貫通孔406−2、3のサイズに合わせて適宜選択すれば良い。
さらに、外部への電極取り出し領域417(417−1、2)の薄板413も除去しておく。その後、絶縁膜411の必要な部分を除去して導電体膜408のコンタクト部分418(418−1、2)を形成する。このコンタクト418にさらに必要な配線を接続したり、ワイヤボンディングしたり、バンプを接続したりすることができる。薄板413の除去部分415、416、417は薄板413を付着した後、フォトリソ法を用いてパターニングして薄板413の必要な部分をエッチング(ドライまたはウエット)したり、レーザー除去したり、液体ジェット除去などによって除去できる。或いは、あらかじめ必要な部分を窓開けした薄板413を付着させても良い。あるいは、通気孔等は薄板410に設けることもできる。
上記した本発明のデバイスのプロセスから容易に分かるように、基板401がシリコン基板等の半導体基板であるときは、ICやトランジスタ等と一緒に搭載することができる。従って、加速度検出用回路や音波検出用回路などを有するICに本発明のデバイスを直接接続することによって、簡単に加速度や音波を検出できる。しかも、上記した絶縁膜や導電体膜はICやトランジスタに用いられるものと兼用できるので、同じプロセスを採用できプロセス上の負荷も少なく、安価なセンサを作製できる。さらに、貫通孔ではなくシリコン基板内に設けた凹部にすれば、第2面401−S2に付着した薄板410も必要がなくなる。
図13は、コンデンサの電極を形成する別の方法を示す図である。図13に示す実施例では、基板はシリコン等の半導体基板とする。図13に示すセンサの構造は、中央に矩形状(断面が正方形状、立体的には直方体形状)の貫通孔431−1、その周囲に基板側壁421−1、2,3、4を挟んで4つの貫通孔431−2、3、4、5が配置された構造を有する。基板421に貫通孔431(431−1〜5)を形成した後、基板421上に絶縁膜432を形成する。この後絶縁膜上に感光性膜433を形成し、感光性膜433を露光し現像しパターニングする。この状態を示した図が図13である。この後にパターニングされた感光性膜433をマスクにした開口された部分の絶縁膜432をエッチング除去し基板421を露出させ、さらに露出した部分から拡散層を形成するプロセスとなる。
感光性膜433の開口部は容量空間となる貫通孔431(431−2〜5)の周りと、必要な拡散層を形成する部分である。図13は平面図(基板面に平行な上部から見た図)である。貫通孔431−5において、基板側壁421−4の側面431−5−1、これと対面する基板421の側面431−5−2、これらの側面と直交する側面431−5−3、431−5−4の4つの基板側面がある。これらの側面は絶縁膜で被覆されているが、電極となる基板側面431−5−1および431−5−2側の絶縁膜をエッチング除去するためにこの部分の感光性膜を開口する。また、残りの2つの基板側面431−5−3および431−5−4側の絶縁膜はエッチング除去しないので、感光性膜433(433−5−1、433−5−2)でカバーする。貫通孔431−5の底部431−5−5には基板421は存在しない。
薄板を付着させているときは薄板が存在し、その上に絶縁膜432が形成されている。薄板が絶縁体である場合には、絶縁膜432がなくなっても拡散層は形成されたとしても導電性はないので特に問題はない。薄板が半導体の場合は、薄板と基板421との間に絶縁膜を挟んでおけばコンデンサ電極が導通することはない。貫通孔ではなく凹部である場合には、基板421が半導体基板であるから、絶縁膜432がなくなり拡散層が形成されるとコンデンサの電極間が導通するので、凹部431−5の底部431−5−5上の絶縁膜432を残す必要がある。従って、凹部431−5の底部431−5−5上においても感光性膜を形成しておく。
基板421の表面において、基板側壁421−4における貫通孔431−5の側面側の平面421−4−1、これと対向する基板421−8における貫通孔431−5の側面側の平面421−8−1の部分を、図13に示すように開口する。また、これらと接続し配線領域となる部分435、436も感光性膜433は開口しておく。貫通孔431−2〜4においても同様である。
次に、感光性膜433をマスクにして、感光性膜433のない部分における絶縁膜432をエッチング除去する。この絶縁膜432のエッチングはウエットエッチングや等方性ドライエッチングで行なう。絶縁膜432がシリコン酸化膜(SiOx)の場合は、緩衝フッ酸溶液(BHF)や希釈フッ酸溶液等のウエットエッチング、あるいはCF4やC2F6ガス等を用いたプラズマエッチングを使用する。このエッチングによって、感光性膜433のない部分において、半導体基板(たとえば、シリコン基板)が露出する。
次に感光性膜433をリムーブして、半導体基板の導電型と逆の導電型の不純物元素を拡散する。たとえば、シリコン基板がP型の場合は、N型のリン、アンチモン、ヒ素などを拡散する。シリコン基板がN型の場合は、P型のホウ素(B)などを拡散する。これらの拡散方法として、まずプリデポを行なってから拡散用熱処理を行なう方法、不純物元素を含む絶縁膜(たとえば、PSGやBSG)を積層してから拡散熱処理を行なう方法、あるいはイオン注入してから活性および拡散熱処理を行なう方法がある。これらの不純物元素の拡散処理によって、絶縁膜432のない基板が露出している領域(イオン注入拡散法の場合は、絶縁膜432が全部またはある程度残っていても良い。)において、不純物拡散層が形成される。
この不純物拡散層の不純物濃度は、10×1019/cm3〜10×1022/cm3程度であり、抵抗率も約0.02Ωcm以下と小さくなるので、配線や電極として使用できる。この結果、導電体膜を形成しなくても、貫通孔431(431−2〜5)において、基板側壁421(421−1〜4)の側面およびこれらと対面する基板側面が電極となりコンデンサを形成できる。たとえば、貫通孔431−5において、側面領域421−4−1と421−8−1でコンデンサを形成し、拡散配線層435および436に電圧を印加すれば静電容量を測定できる。図13に示す構造では、コンデンサ電極としての導電体膜の積層は不要である。
図14は、円環状の構造を有する本発明のセンサにおいて、拡散層をコンデンサ電極に用いる場合の構造および製造方法を示す図である。本センサは、中央の円形状貫通孔452−1、これを囲む基板側壁451−1、さらにそれを囲む円環状の貫通孔452−2、これを囲む厚い基板を有する。貫通孔452を形成後、絶縁膜455を形成し、さらに絶縁膜455上に感光性膜457を形成している。絶縁膜455は基板451の表面および貫通孔452内部など全面に積層している。感光性膜457は必要なパターニングをしている。
基板側壁451−1は、本実施形態では感光性膜457を形成していない。(現像して除去している。)(尚、基板側壁451−1は、感光性膜457でパターニングする方法もある。)貫通孔452−2の外側を取り囲んでいる基板451−2の側面および表面上に形成された絶縁膜455において感光性膜457をパターニングしている。すなわち、この部分には電極を分割して形成する必要があるので、それに対応した感光性膜457のパターニングを行なっている。また基板451の表面においても配線等を形成するために感光性膜457のパターニングをしている。貫通孔452−2の外側の基板側面およびそれにつながる基板451−2の表面部分451−2−1、2、3、・・・において感光性膜457を除去し、これらの間に感光性膜457のパターン457−1、2、3、4、・・・を形成する。451−2−1、2,3、・・・は互いにつながらないようにする必要がある。この部分が個々のコンデンサの電極となるからである。
感光性膜457をパターニングした後で、絶縁膜455をエッチング除去する。図14に示す実施形態では、基板側壁451−1に形成された絶縁膜もエッチング除去される。図14に示す場合も基板は半導体(たとえばシリコン)であり、基板451の裏面に付着した薄板はガラス基板やセラミック基板等の絶縁体であるから、貫通孔452の底部については絶縁膜455が除去されても特に問題はない。(尚、薄板を付着せずにこのプロセスを行なうこともできる。)感光性膜457がない部分における絶縁膜は除去され半導体基板が露出される。この後の不純物拡散プロセスで、これらの感光性膜457がない部分に不純物拡散層が形成される。尚、イオン注入で不純物元素を半導体基板中に導入する場合は、絶縁膜を一部または全部残しておいても良い。たとえば、451−2−1、2、3、・・・等に不純物拡散層が形成され、これらがコンデンサの一方の電極となる。またこれらの個々の電極・配線は互いに接続しないようにパターニングされている。コンデンサの他方の電極は基板側壁451−1である。多角形形状のセンサ等も同様の構造および方法で不純物拡散層を電極・配線とすることができる。
図15は、本発明の電荷蓄積型センサの構造を示す図である。この電荷蓄積型センサはたとえばマイクロホンに用いることができる。中央の貫通孔511(511−1)の周囲を基板側壁501(501−1、501−2)を囲んでいる。さらにその周囲を貫通孔511(511−2、511−3)が囲んでいる。その貫通孔を厚い基板501(501−3、4)が囲んでいる。貫通孔511(511−2,3)は容量空間となるコンデンサを形成し、その電極は、図13および図14に示した基板501内に形成した拡散層である。たとえば、貫通孔511(511−2)において、基板501(501−3)に形成した拡散層503(503−1)および基板側壁501(501−1)に形成した拡散層503が2つの電極となる。また、貫通孔511(511−3)において、基板501(501−4)に形成した拡散層503(503−2)および基板側壁501(501−2)に形成した拡散層503が2つの電極となる。
拡散層503上に2層の絶縁膜513および絶縁膜515が形成されている。絶縁膜513はシリコン酸化膜(SiOx)で、絶縁膜515はシリコン窒化膜(SiNx)またはシリコン酸窒化膜(SiNyOx)である。さらにこのシリコン窒化(SiNy)膜の上にシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜(SiNyOx)を積層しても良い。このように二層膜または三層膜にすることによって、これらの膜中に電荷(マイナスまたはプラス)をトラップさせて(520で示す)、コンデンサ間に印加する電圧を下げることができる。たとえば、音波による基板側壁501(501−1、2)の変化量が小さい場合には、コンデンサの容量変化が小さくなるので検出が困難であるが、電圧レベルを上げることによって微小な変化量が検出可能となる。しかし、高電圧を外部から供給することは困難であるが、誘電体膜(エレクトレット)中に電荷を蓄積しておけば外部からの高電圧供給は不要となり、1〜5V程度の低電圧で本発明のマイクロホンデバイスを動作させることができる。
コンデンサ電極である拡散層503への電圧供給は、図15に示す拡散層配線を基板表面まで引き出して、絶縁膜513および515にコンタクト孔517を形成してアルミニウム膜やポリシリコン膜等の導電体膜518で接続する。この後、これまでに説明した様に、保護膜となる絶縁膜を積層して、貫通孔511上に薄板をカバーする。シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の誘電体膜(絶縁体膜)513や515に電荷をトラップさせる方法として、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等を形成後のプロセスにおいて、X線照射法やコロナ放電法等を用いる方法がある。尚、絶縁膜513をシリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiNyOx)とし、絶縁膜515をシリコン酸化膜(SiOx)としても電荷蓄積が可能である。これらの絶縁膜は熱酸化や熱窒化で形成することもできるし、CVD法やPVD法によって積層することもできる。これらの絶縁膜の厚みは、好適には、シリコン酸化膜(SiOx)は50nm〜1000nm、シリコン窒化膜(SiNx)やシリコン酸窒化膜(SiNyOx)は10nm〜1000nmである。
本発明のセンサは、基板としてシリコン等の半導体基板を用いることによって、ICやトランジスタと一緒の基板に搭載することができる。また、貫通孔形成や薄板付着プロセス以外の絶縁膜や導電体膜形成プロセスはICやトランジスタ製造プロセスと同時に行なうこともできる。貫通孔形成プロセスや薄板付着プロセスもICにも兼用することもできる。従って、本発明のセンサの特性(コンデンサの容量特性)を直接ICの演算処理回路へ接続し、音波信号や加速度を算出することもできる。このことは、センサとICを別個に作製し、実装基板にそれらを搭載し、それぞれの電極をワイヤボンディング等で接続する従来の手段と比較すれば、全体のコストを大幅に低減することができる。たとえば、それぞれのチップを作製するコストを低減することができ、実装面積を大幅に縮小でき、良品の判定を2つまとめて行なうことができ歩留まりを大幅に向上することができる。
本発明のセンサは、インプリントプロセスを用いて製造することができる。図16は本発明のセンサのインプリントプロセスによる製造方法を示す図である。これまでに述べた本発明のセンサはICやトランジスタ等の能動デバイスと一緒に基板内に製造するときは、シリコン基板等の半導体基板を基板側壁として用いている。これに対して本実施形態では、半導体基板内に凹部を形成し、その凹部にポリマーを充填して、インプリント法によってポリマー内に凹部(第2凹部)を形成する。この第2凹部がこれまでに述べた加速度センサやマイクロホンデバイスの貫通孔(凹部)に相当する。
図16(a)において、半導体基板611においてIC等の能動デバイスを作製する領域をA、本発明のセンサを作製する領域をBとする。領域Bにおいて、センサを形成する領域において基板611をエッチングして薄くする。これは、本発明のセンサ領域とA領域を同じレベルにすることと、ポリマーを厚く形成しやすくすることが目的である。
図16(a)に示すように基板内の圧電デバイスを形成する領域611のB内に凹部614を形成する。フォトリソ法やインプリント法を用いてレジストパターンを形成して、ウエットエッチングまたはドライエッチングで凹部614を形成する。ポリマーが凹部614内に入りやすくするために凹部に斜面616(破線で示す)を形成しても良い。たとえば基板611が(100)シリコン基板の場合において、KOH溶液でエッチングすると傾斜した斜面{(111)面}を得ることができる。あるいはフッ硝酸系エッチング液によって等方性エッチングが可能であり、またドライエッチングでも等方性エッチングが可能である。
次に図16(b)に示すようにポリマー615を塗布等して凹部614に厚く積層する。ポリマー615を塗布前に基板611上に絶縁膜を形成しても良い。この後熱処理を行ない軟化させて、図16(d)に示すようにこのポリマー615にモールド617の凸状パターン619を押しつける。ポリマー615を硬化させた後モールド617を引き抜くと、基板611内の凹部領域614内の厚く積層したポリマー615内に凹部621が形成される。{図61(e)}このように基板611に凹部(第1凹部)614を形成して、この部分に塗布されたポリマー615内に凹部(第2凹部)621を形成することにより、半導体基板611内にセンサを形成することができる。
図16(b)においてポリマー塗布前に絶縁膜を形成してポリマー615との密着性等を改良しても良い。ポリマー615はシート状のポリマーを付着させて軟化させて基板611内の凹部614へポリマーを入れても良い。凹部(第1凹部)614の深さは、センサの容量空間(第2凹部)の深さまたは中央の空洞(第2凹部)の深さによって決定する。これらの第2凹部の深さをH1としたとき、第1凹部の深さH0はH1より約1〜50μm深くするのが良い。(厳密には、H1には基板表面からの厚み分が加わる。)
ポリマー615は、硬化系から分類すれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、または紫外線硬化性樹脂である。たとえば、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル、液晶ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリジメチルシロクサン(PDMS)、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸、各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン(VDF/TrFE)共重合体、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン(VDF−TeFE)等の強誘電性高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン−11等の極性高分子等の圧電性高分子など種々の高分子材料である。
これらの材料を溶剤等で溶解した溶液を塗布・滴下してポリマー膜層を作り、必要ならプリベーク等した後にモールドをこのポリマー膜層615に押し入れる。その後、光硬化性樹脂であれば紫外線等の光照射を行ないポリマーを硬化させたり、熱硬化性樹脂であれば硬化温度以上の熱処理でポリマーを硬化させたり、熱軟化性(熱可塑性)樹脂であれば一度軟化温度以上にしてポリマーを軟化させた後軟化温度以下に温度を下げてポリマーを硬化させたりする。あるいは、熱軟化性樹脂シートの場合は、軟化温度以上にしてポリマーを軟化した後モールドを押し入れた後軟化温度以下でポリマーを硬化させる。
すなわち、図16(c)に示すように、凹部形成用のモールドパターン619が形成されたモールド617を基板611の凹部614に形成されたポリマー615にプレスする。たとえば、ポリマー615は熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tg)であり、Tgより高い温度でポリマー615内に押し込む。モールド全体617をポリマー615中に全部入れて押し込んでも良いし、少しの隙間をあけてポリマー615中に入れても良い。隙間をあける場合には、ポリマー615は硬化後体積変化するので、その体積変化を考慮して隙間の間隔を選定する。熱可塑性樹脂として、具体的にはポリカーボネート(PC)、アクリル(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセタール(PCM)、ポリプロピレン(PP)各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー615は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂でも良いが、一度硬化した後は熱を加えても軟化できないことに注意する必要がある。熱可塑性樹脂の場合は、何度でも軟化できるので、たとえばパターン崩れが発生しても再度軟化させてモールを押し込めば良い。
モールド617のパターン619をポリマー615に押し込んだ後、冷却しTgより低くするとポリマー615が硬化する。その後、モールド617を引き上げると、図16(e)に示すように、ポリマー615内にモールド617のパターン619が転写され、凹部621(621−1、2、3)が形成される。モールドをポリマーに挿入前にモールド表面に離型剤を塗布等しておけばポリマーを硬化後に硬化したポリマーからモールドを分離することが容易となる。
紫外線硬化型のポリマーを用いれば常温でもポリマー615を硬化させることができる。紫外線を照射すると硬化するUVポリマー615を用いて、モールド617および619をポリマー615内に押し込んだ後で、モールド617、619を通して、および/または基板611、絶縁膜613を通してポリマー615を硬化できる波長の光を照射する。この波長の光は紫外線やγ線やX線等が多い。従って、モールド617、619や基板611、絶縁膜613はこれらの光が透過できる材料を用いる。たとえば、ガラス製や石英製である。紫外線照射によりポリマー615が硬化した後で、モールド617および619を引き抜くと、凹部621が形成される。モールド617および619にポリマー615が付着してパターン崩れが発生しないように、モールド617および619をポリマー615に入れる前にモールド617および619の表面に離型剤を塗布しても良い。あるいはモールド617および619の表面にフッ素樹脂等をコーティングしても良い。この後、さらに硬化を確実にするために熱処理を行なう場合もある。
この後、基板611の表面に形成されたポリマー615Sや凹部615の底部に形成されたポリマー615Bを除去しても良い。たとえば、酸素プラズマによる異方性エッチングを基板全面(ポリマー615上面から全面)で行なえば良い。全面異方性エッチングであるから、凹部底部のポリマー615Bだけでなく、ポリマー615Sもエッチングされるので、全体のポリマー615の厚みが減少するが、凹部621の形状やポリマー側壁615(615−1〜3)の形状は維持される。ただし、凹部底部のポリマー615Bを基板内全体で除去するには、オーバーエッチングが必要となる。先にポリマー615Bがエッチングされた所は、下地の絶縁膜613(絶縁膜613がない場合は基板611)が露出するが、絶縁膜613や基板611がシリコン酸化膜系であれば酸素プラズマでは殆どエッチングされないし、シリコン窒化膜系でも余りエッチングされない。一方ポリマー上面はエッチングされるので、余りオーバーエッチングを行なうと凹部深さH1が減少する。従って、オーバーエッチング量を小さくするために、酸素プラズマによるポリマーの異方性エッチング量のバラツキを小さくすると同時に凹部底部のポリマー615Bの厚みをできるだけ小さくする必要がある。モールドパターン619の深さバラツキを小さくするとともに、モールド本体617の平坦度のバラツキも小さくし、さらにモールドのプレス圧力が基板全体で均一になるようにする。モールドのプレス圧力が基板全体で均一にするには、モールドパターン619を基板全体で均一に配置しておくと良い。さらに、凹部底部のポリマー615Bがエッチングされ下地が露出し始めると、CO等の反応種が少なくなるので、その量をセンシングしてエンドポイントを決めることもできる。
中央に形成された凹部621−1は、マイクロホンであれば音波導入用であり、加速度センサであれば加速度を受ける部分または液体を入れる部分である。この中央の凹部621−1を囲んでポリマー基板側壁615−1、615−2が配置される。このポリマー基板側壁615−1、615−2が音波や加速度によって変形するダイヤフラムとなる。その外側に容量空間となる凹部621−2、621−3があり、この容量空間を囲んでポリマー基板615−3、615−4が存在する。これらのポリマー基板615−3、615−4は半導体基板611に規制されているので、加速度や音波によっても殆ど変形しない。このように基板凹部(第1凹部)内に形成されたポリマー中へ形成された凹部(第2凹部)を用いた本発明のセンサは、これまでに説明した基板内に形成した貫通孔や凹部を用いた本発明のセンサと構造は同じである。尚、ポリマー内の凹部はインプリント法で形成したが、通常のフォトリソ法およびエッチング法でも形成できることは言うまでもない。
この後のプロセスはこれまでに説明した本発明のセンサ製造プロセスと同様である。すなわち、図16(f)に示すように凹部621および基板上に絶縁膜623を形成する。この絶縁膜はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等でCVD法やPVD法で積層する。絶縁膜の厚みは約0.1μm〜1.0μmである。次に導電体膜625を積層し、所望のパターニングを行ない、電極・配線625(625−1、2、3、4)を形成する。導電体膜625は、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、金、白金、チタン、タングステン、モリブデン、クロウム、タンタル、鉛、スズ等の金属、またはこれらの合金、その他の各種合金、あるいは導電性ポリマー等であり、PVD法やCVD法、イオンプレーティング法、メッキ法等で形成する。絶縁膜623は導電体膜625との密着性向上や絶縁性確保の目的であるが、ポリマー615は絶縁体であるため、これらの目的が達成できれば、絶縁膜623は不要である。導電体膜の厚みは約0.1μm〜2.0μmである。導電体膜のパターニングはこれまでに説明したように、電着法や、感光性シートを用いる方法、感光性膜をCVD法やPVD法で形成する方法、あるいは通常の塗布法などで行なうことができる。
凹部621−2において、電極・配線625−1と625−2でコンデンサを形成する。また凹部621−3において、電極・配線625−3と625−4でコンデンサを形成する。次に絶縁膜627を積層する。この絶縁膜は導電体膜625を保護するためで、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等でCVD法やPVD法で積層する。この絶縁膜の厚みは約0.1μm〜2μmである。次に薄板629を付着させ、凹部621をカバーする。必要な開口部および通気孔631、632を形成する。あらかじめ開口部および通気孔631、632を形成した薄板629を付着しても良い。薄板の厚みは、付着前は好適には約0.05mm〜1mmであるが、付着後に研磨や貼り合わせ基板を用いた方法でもっと薄くすることもできる。
基板611の表面の薄板の開口部632の領域で、必要な場合には絶縁膜627に窓開けを行ないコンタクト孔633を形成する。このコンタクト孔に再配線をしても良いし、ワイヤボンドやバンプを形成して、他のデバイスと接続することもできる。また導電体膜625は、半導体基板に作製した他のデバイス(トランジスタ、IC、抵抗等)と兼用も可能なので、本発明のセンサ電極・配線とこれらのデバイスの配線と直接接続することも可能である。
ポリマー内に形成した本発明のコンデンサにおいて、(ポリマー)基板側壁615−1や615−2はポリマーであるから、シリコン等の半導体基板と比較するとヤング率が非常に小さい。(シリコンのヤング率約130GPa、ポリマー約0.1〜5GPa、ゴム約0.01〜0.1GPa)前述した式{y0=β*F*s4/(Et3)}から分かるように、基板側壁の変形量はヤング率に反比例するので、ヤング率の小さな材料を使用すれば、コンデンサ容量の変化量を大きくすることができる。あるいは同じ変化量にするためにサイズを小さくできる。たとえば、PETではヤング率が約3GPaであるから、シリコンのヤング率(約130GPa)の1/40である。
図16に示すインプリント法を用いた本発明のセンサの製造方法は、基板内に作製した凹部内のポリマーだけでなく、基板上に作製したポリマーにも使用できることは言うまでもない。
図18は、本発明の加速度センサの別の実施形態を示す図である。本実施形態は、基板に導電体基板を用いて、導電体基板内に貫通孔を形成し、その貫通孔を上下の絶縁体基板(薄板)でカバーするものである。導電体基板711に平行な平面図である図18(a)に示すように、導電体基板の基板側壁711(711−2)と導電体基板の基板側壁711(711−3)が平行に配置され、これらの基板側壁の間の貫通孔712(712−1)が容量空間となり、これを挟んで対向する基板側壁711(711−2)と711(711−3)が電極となり、コンデンサを形成する。
図18(b)は、図18(a)における基板側壁711(711−2)と711(711−3)に垂直な方向717の断面図を示す図である。これらの基板側壁711(711−2)と711(711−3)の下面は絶縁体基板713が付着しており、上面は絶縁体基板714が付着している。絶縁体基板714には各基板側壁711(711−2)と711(711−3)と付着している領域の一部にそれぞれコンタクト孔716、718が形成され、コンタクト孔内およびその上にそれぞれ導電体膜717、719が形成され電極・配線を形成している。(図18(a)では、コンタクト孔7、導電体膜は破線で示す。)各基板側壁711(711−2)と711(711−3)は貫通孔712を挟んでセンサパッケージ(センサPKG)の枠基板711(711−1)に囲まれている。
図18から分かるように、基板側壁711(711−2)、711(711−3)、および枠基板711(711−1)は基板711内では完全に分離していて、上下面が絶縁体基板714、713に付着した構造となっている。従って、これらの基板側壁711(711−2)、711(711−3)、および枠基板711(711−1)は電気的に接続していない。加速度を受けないとき、基板側壁711(711−2)および基板側壁711(711−3)の対向面は平行になっているので、基板側壁711(711−2)および基板側壁711(711−3)は電極間距離dがd1の平行平板型のコンデンサ電極となっている。一方の電極となる基板側壁711(711−2)はコンタクト孔716を通じて導電体膜電極・配線717と接続し、他方の電極となる基板側壁711(711−3)はコンタクト孔718を通じて導電体膜電極・配線718と接続しているから、導電体膜電極・配線717および導電体膜電極・配線718に一定電圧を印加すれば、静電容量Cを測定できる。電極間距離dがd1のときの静電容量C0は、電極面積をS0とすれば、C0=ε・ε0・S0/dとなる。(基板側壁の長さをkとすれば、S0=keである。)
基板側壁711(711−2)の側面に垂直方向(717の方向)の加速度を受けて基板側壁711(711−2)に力が加わると、基板側壁711(711−2)は上下面だけが絶縁体基板714および713に規制され(他の規制はない)、かつ、基板側壁711(711−2)の厚み(幅)n(n1)が薄い(基板厚みeに対して薄い。たとえば、基板がシリコン基板であり、e=500μmであるときは約100μm以下)ので、基板側壁711(711−2)は湾曲する。この基板側壁711(711−2)と対向する基板側壁711(711−3)の厚み(幅)m(m1)は厚い(基板厚みeに対して厚い。たとえば、基板がシリコン基板であり、e=500μmであるときは約100μm以上)ので、基板側壁711(711−2)の変形量に対して殆ど変化がない。従って、電極間距離dはd1から変化し、たとえば図18において左向きの加速度ならばd<d1となるから、コンデンサ容量が大きくなり、右向きの加速度ならばd>d1となるから、コンデンサ容量が小さくなる。(尚、基板側壁711(711−2)は湾曲しているので、dは一定ではなく、容量計算では積分して計算した値と、実測値から加速度の大きさを求める。)
導電体基板711はたとえば、不純物濃度が高いシリコン基板である。N型シリコン基板では不純物濃度が1019/cm3以上になると抵抗率が0.01Ωcm以下となるので導電体基板と考えて良い。また、P型シリコン基板では不純物濃度が2×1019/cm3以上になると抵抗率が0.01Ωcm以下となるので導電体基板と考えて良い。あるいは、他の半導体基板でも抵抗率が低いものを使用することができる。導電体基板711はあるいは、銅、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケル、亜鉛、鉛、スズ、銀、金、タングステン、モリブデン、タンタル、コバルト等の金属や合金である。導電体基板711はあるいは、導電性ポリマー等や、グラフェンやカーボンナノチューブ等も使用できる。導電体基板でない場合でも、貫通溝を形成後、貫通溝の周りに導電体膜を積層することによって、同様の構造の圧力センサを作製できる。
図18に示す加速度センサでは、一方向の加速度しか検出できないが、このような構造のセンサを種々の方向へ合わせて作成すれば、種々の方向の加速度を検出できる。たとえば、基板側壁711−2および711−3のコンデンサを一組として、これらを種々の方向を有するように配置し、それら全体を枠基板711−1のような枠で囲めば、種々の方向の加速度を検出する加速度センサPKGを作製できる。尚、図18(b)に示すように通気孔721をあけておけば外界との圧力差をなくすことができる。たとえば、加速度によって内部の気圧が変化する場合があるが、これらの変化を小さくすることができる。しかし、水分等の浸入が予想される場合には、このような通気孔721をあけずに完全密閉した貫通孔空間712を作製できるので、耐環境性に優れた加速度センサPKGを実現できる。内部の気圧変化をなくすために、貫通孔空間712を真空に完全密閉すれば良い。これは、薄板713および714を基板711に付着して密閉するときに、真空中でプロセス(付着工程)を行なうことによって実現できる。
破線で示す715はスクライブラインであり、たとえばシリコンウエハに本発明の加速度センサPKGを多数(図18に示すパターンをつなげてゆく)作製し、このスクライブライン715に沿ってたとえばダイシングソーやダイサーでチップ化すれば良い。
図19は、導電体基板を使用した加速度センサの別の実施形態を示す図である。本実施形態は、図9で説明した実施形態と類似するが、導電体基板を使用するため基板側壁上に導電体膜を形成しなくても良い。従って、図18で説明した場合と同様にプロセスが非常に簡単である。図19に示すように、中央に断面が矩形状(好適には断面形状が正方形形状)の角柱形状の貫通孔732(732−1)が存在し、その貫通孔732(732−1)の周りに相似形の基板側壁731(731−2)が囲み、さらにその周りに貫通孔732が取り囲んでいる。断面が矩形形状の基板側壁731(731−2)の4つの各面731−2(731−2−1、2、3、4)に対して、貫通孔732を挟んで、厚い基板側壁731(3、4、5、6)が配置されている。これらの基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)と厚い基板側壁731(3、4、5、6)は対向電極となり、貫通孔732(732−2、3、4、5)を容量空間とするコンデンサを形成する。
基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)は厚み(幅)が薄いので加速度に伴う力によって変形するが、これらの基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)と対向する基板側壁731(731−3、5、4、6)は厚み(幅)が厚いので加速度に伴う力によって殆ど変形しないので、これらのコンデンサの容量が変化する。基板731の上下に絶縁体基板(薄板)739、738が付着しており、基板側壁731(731−3、5、4、6)上に付着した絶縁基板(薄板)739に開けられたコンタクト孔736(736−2,3等)に積層されパターニングされた導電体膜・電極・配線737(737−2,3等)と、基板側壁731−2上に付着した絶縁基板(薄板)739に開けられたコンタクト孔736(736−1)に積層されパターニングされた導電体膜・電極・配線737(737−1)との間に一定電圧を印加すれば、これらのコンデンサの個々の容量変化を測定できる。
図19に示すコンデンサは90度間隔で4つ配置されているので、これらの4つの方向は確実に加速度を検出することができる。その他の方向についても、それぞれのコンデンサの容量の大きさを比較することによって、ある程度まで正確に加速度の向きを検出することができる。その向きをさらに正確に求めるには、矩形形状よりも多角形形状としていけば良い。尚、加速度によって、厚い側壁を有する基板側壁731(731−3、4、5、6)をできるだけ変形させないようにするために、図19(a)に示すように、コンデンサ電極面積に関与しない部分をたとえば破線で示すような領域まで広げて、基板側壁と絶縁基板738および739との付着面積を増大させると良い。これらの厚い側壁を有する基板側壁731(731−3、4、5、6)の外側に貫通孔732をはさんで枠基板731(731−1)が取り囲んでいる。尚、必要な場合には、図19(b)に示すように、貫通孔に通気孔741、742を形成することもできる。(図19(b)は、図19(a)における一点鎖線735に沿った断面図である。ただし、図19(a)では、通気孔、コンタクト孔、導電体膜・電極・配線は記載していない。)
中央の貫通孔732−1に重い液体を入れることによって、前述したように、加速度の検出感度を大きくすることができる。基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)は全体が同電位となっているので、液体が導電性を有するものでも問題ない。液体の重さに対する力(F=mα)が基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)に作用するので、加速度による変形量が大きくなる。
尚、図19においては4つの厚い基板側壁を使用しているが、これらのうちの1つ、または2つ、または3つでも加速度を検出できることは当然である。
図19に示す構造は、図1に類似する構造とすることによってマイクロホンデバイスにも使用することができる。すなわち、中央の貫通孔732へ音波を導入することによって、基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)を振動させ、その振動に伴い基板側壁731−2(731−2−1、2、3、4)と、これと対向する基板側壁731−3、5、4、6)との間のコンデンサの容量が変化する。この信号変化を測定して音波を検出することができる。すなわちマイクロホンデバイスとなる。中央の貫通孔732−1をカバーする絶縁体基板738、または739の一部または全部に音波導入用の開口部を設けて音波が貫通孔732−1に効果的に導入されるようにする。また基板側壁732の外側の貫通孔732(732−2、3、4,5、6)にも振動した空気が抜けやすいような空気抜け孔を設けることが望ましい。ただし、貫通孔732(732−2、3、4,5、6)が真空の場合には空気振動はないので、(当然だが)このような孔は必要はない。尚、マイクロホンデバイスの場合も、厚い基板側壁731(3、4、5,6)は1つでも、2つでも、3つでも良い。また、これらの基板側壁は接続していても音波検出は可能である。さらに枠基板731−1とこれらの基板側壁とは接続しても良い。また、マイクオホンデバイスでは加速度の力はかからないので、余り厚くする必要がないので、これらの基板側壁および枠基板を小さくできる。
図20は、本発明の加速度センサの別の実施形態を示す図である。本実施形態では、中央の貫通孔は断面が円形形状の円柱形状であり、その半径はr1である。その周りを断面が半径r2の円形形状の円柱形状を有する基板側壁751(751−2)が囲んでいる。従って基板側壁751(751−2)の厚み(幅)はr2−r1である。そのまわりを断面が半径r3の円形形状の円柱形状を有する貫通孔752(752−2)が囲んでいる。この貫通孔752を内側面の断面形状が円形の円柱形状であって、幾つかに分割された厚い基板側壁751(751−3、4、5、6、7、8、9、10)が取り囲んでいる。これらの基板側壁751(751−3、4、5、6、7、8、9、10を貫通孔752が取り囲んでいて、その周りを枠基板751(751−1)が囲んでいる。図20は平面構造であるが、断面構造は図18や図19と同様である。基板751は導電体基板であり、円環状の一方の電極751−2とこれと対向する半径r3の円形状の側面電極である基板側壁751(751−3、4、5、6、7、8、9、10)とは容量空間を752−2とするコンデンサを形成している。
加速度がないときは、基板側壁751−2は変形しないので、コンデンサ電極間距離はr3−r2となる。加速度を受けると円環状の基板側壁751−2が変形する。加速度方向にある基板側壁751−2の変形が大きくなるので、その変形の大きい部分と対向する厚い基板側壁751(751−3、4、5、6、7、8、9、10)のうちのどれかのコンデンサ容量が大きく変化する。この変化方向が加速度の方向であり、コンデンサ容量の変化量から加速度の大きさが分かる。ただし、これだけでは加速度の方向は、分割した基板側壁751(751−3、4、5、6、7、8、9、10)のどれかの方向であり、一定の幅がある。そこでもっと正確な方向を知るには、隣接する基板側壁電極におけるコンデンサ容量を比較して求めることができる。もっと正確に知るには、円環状の電極751−2に対向する外側の電極をもっと細かく分割すれば良い。図20では8分割している。また、前述したように、中央の貫通孔に重い液体を入れておけば、基板側壁751−2の変形量が大きくなるので、加速度に対する検出感度を高めることができる。
r1=100μm、r2=20μm、r3=150μmとして、全体のパッケージサイズ(枠基板のサイズ)を0.5mm×0.5mm×0.4mm(厚み)とすれば、約6万個の加速度センサのチップパッケージを得ることができる。
尚図20に示す構造もマイクロホンデバイスに使用できる。すなわち、円柱形状の貫通孔752−1を音波導入孔とすれば良い。外側の対向電極は分割しなくても良い。さらには枠基板と接続することもできるし、加速度による変形を考慮する必要はないので、外側の対向電極をもっと小さくできるので、枠基板の大きさ、すなわちチップPKGももっと小さくすることができる。
次に導電体基板を用いた本発明の力量センサを作製するプロセスを説明する。図21は導電体基板を用いた本発明の力量センサを作製するプロセスの製造方法である。図21(a)に示すように導電体基板811は上面(第1面)811−Sおよび下面(第2面)811−Bを有する。導電体基板811の下面811−Bに絶縁体基板813を付着する。導電体基板811に直接付着できない場合(たとえば、接着剤と基板との密着性が不十分な場合)には、たとえば絶縁膜812を積層した後に絶縁体基板813を付着する。この付着方法は接着剤を用いる方法、常温接合方法、高温(融着)接合方法、あるいは静電接合(陽極接合)などがある。導電体基板811の厚みは、力量センサの特性(基板側壁の変形量)などによって決定されるが、たとえば0.1mm〜2.0mmの厚みである。絶縁膜812はシリコン酸化膜やシリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などである。
この絶縁体基板813は貫通孔を形成したときに基板側壁を保持する役割を果たす。また貫通孔をエッチングして形成した時のエッチングストッパーとなる。次に導電体基板811の上面811−S上に貫通孔形成用の感光性膜815をパターニングする。導電体基板811上に感光性膜815を形成し、フォトリソ法によって貫通孔を形成する領域を開口する。基板側壁を形成する領域は感光性膜を残す。感光性膜815を直接導電体基板811に形成できない場合(たとえば、感光性膜815と導電体基板811との密着性が悪い場合や感光性膜815が貫通孔を形成時にエッチングされなくなるかパターン形状が悪くなる場合)、導電体基板811上に絶縁膜814を形成しても良い。感光性膜815の厚みは、貫通孔形成時の導電体基板811と感光性膜815のエッチング選択比によっても決定されるが、エッチング選択比がmの場合導電体基板811の厚みの1/m以上の厚みが必要となる。たとえば、導電体基板811の厚みが500μm、m=50の場合、感光性膜の厚み(感光性膜815をパターニング後の熱処理した後、すなわちエッチング直前の厚み)は10μm以上必要である。
感光性膜815をパターニング後熱処理して感光性膜815を硬化した後、感光性膜815のない開口部にある導電体基板811をエッチングする。このエッチングは異方性エッチングで最初の感光性膜815のパターン通りに形成することが望ましい。感光性膜815のパターンも垂直か垂直に近い形状が望ましく、導電体基板811を垂直か垂直に近い形状にエッチングする。絶縁体膜814が存在する場合は絶縁体膜814も垂直パターン形状にエッチングすることが望ましい。導電体基板811がシリコン基板(低抵抗)であるときは、ボッシュ法や誘導結合プラズマRIE法(ICP−RIE)、電子サイクロトロン共鳴RIE(ECR−RIE)法などを使用することができる。エッチング後の断面形状模式図が図21(b)である。
導電体基板811が深さ方向(基板面に垂直方向)に全部エッチングされると、絶縁体基板813が露出する。(絶縁膜812が介在する場合は、絶縁膜812が露出し、オーバーエッチングによって絶縁膜812が深さ方向に全部エッチングされると絶縁体基板813が露出する。)導電体基板811と絶縁体基板813(または絶縁膜812)は異なる材質であるから、エッチングガス等の条件を的確に選定すれば、導電体基板811と絶縁体基板813とのエッチング選択比(これをnとする)を充分大きく取れる。通常貫通孔を完全に形成(基板内の貫通孔を全部)するには、オーバーエッチングとして基板厚みの5%〜20%は必要であるから、たとえば基板厚みを500μmとすれば、25μm〜100μmの基板811がエッチングされる計算となる。n=50とすれば、オーバーエッチングによって、絶縁体基板は0.5μm〜2μmエッチングされる計算となる。絶縁体基板813の厚みは10μm〜500μm、好適には50μm〜200μmであるから、絶縁体基板に孔が開くことはない。また絶縁膜812がある場合、絶縁体膜812の厚みは0.1μm〜2μm程度であるから、絶縁体膜812は全部エッチングされる場合もある。
この導電体基板811のエッチングによって、貫通孔816(816−1、2、3、4)は形成される。これらの貫通孔816(816−1、2、3、4)は、たとえば図19における貫通孔732(732−1、2、3)、732などに対応する。また、基板側壁811(831−1、2、3、4)は、たとえば図19における基板側壁731−2、731−3、731−5、731−1などに対応する。貫通孔816が形成された後感光性膜815をリムーブし、必要なら絶縁膜814をエッチングする。その後、図21(c)に示すように、必要な場合は導電体基板811の表面(貫通孔内の露出した基板面を含む)を保護するために絶縁膜818を積層し、絶縁体基板821を基板811の上面に付着させる。この付着方法も絶縁体基板813の付着方法と同じ方法で行なうことができる。絶縁膜818の厚みは0.1μm〜2.0μm程度である。絶縁膜814をエッチング除去し、絶縁膜818を積層せず、直接導電体基板811に絶縁体基板818を付着させても良い。たとえば、導電体基板811がシリコン基板で絶縁体基板がガラス基板であるときは、陽極接合法によって、強固に付着することができる。
次に、図21(d)に示すように、絶縁体基板821や絶縁膜818、814にコンタクト孔823(823−1、2)を空けて、導電体基板811の上面を露出させた後、これらのコンタクト孔823に導電体膜を積層し、導電体膜・電極・配線パターン824(824−1、2)を形成する。これらの2つの導電体膜・電極・配線パターン824(824−1、2)の間で、容量空間を貫通孔816(816−2)とするコンデンサが形成される。また、貫通孔816への通気孔822(822−1、2)を絶縁体基板に開けることもできる。絶縁体基板821にコンタクト孔や通気孔を形成する方法として、フォトリソ法を用いてドライエッチングやウエットエッチングで形成する方法がある。絶縁体基板821がガラス基板である場合、ドライエッチングではCF4やC2F6等のガスを用いたプラズマエッチングがある。ウエットエッチングではHF系のエッチング液を用いてエッチングすることができる。あるいは、レーザーや高圧水流を用いて絶縁体基板に窓開けを行なう方法もある。尚、事前にコンタクト孔や通気孔を形成した絶縁体基板を付着しても良い。この方法によれば、絶縁体基板にコンタクト孔や通気孔を形成するプロセスは別工程となるので、プロセス時間を短縮できるというメリットもある。さらに通気孔825を絶縁体基板813に形成することもできる。
以上のようなプロセスで本発明の導電体基板を用いたセンサ(たとえば、加速度センサやマイクロホンデバイス)を作製できる。このプロセスは非常に短いのでプロセスコストも非常に小さくなる。
図22は絶縁体基板または半導体基板を用いた本発明のセンサを形成する方法を示す図である。図21と異なるのはコンデンサ電極・配線となる導電体膜を形成するプロセスを使用することであるが、プロセスは非常に簡単である。図21と類似するプロセスが多いので詳細なプロセスの説明は省略するが、図21で説明した内容から簡単に類推できる。図22(a)に示すように、基板911の下面911−Bにサポート基板913を付着させる。必要な場合には絶縁膜912を介在させる。基板911の下面911−Sに感光性膜915を形成し、貫通孔形成用のパターニングをフォトリソ法により行なう。必要な場合には絶縁膜914を介在させる。感光性膜914は感光性シート膜(ドライフィルム)を付着したり、あるいは感光性膜を塗布した後、熱処理(プリベーク)して形成する。基板911は絶縁体基板または半導体基板である。(導電体基板でも良いが、導電体基板の場合は図21で例示した方法でプロセスできる。)絶縁体基板として、たとえば、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、高分子樹脂基板、プラスチック基板、ゴム基板などである。半導体基板として、たとえば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、炭素(ダイヤモンド、グラフェン、カーボンナノチューブ等を含む)基板等の単元素基板、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、窒化ガリウム(GaN)等の二元元素基板、その他三元系以上の多元素基板等である。
次に図22(b)に示すように、基板911をエッチングして貫通孔916(916−1、2、3、4)を形成する。これによって基板側壁911(911−1、2、3、4)を形成できる。次に感光性膜915をリムーブした後、図22(c)に示すように、基板911上に絶縁膜918を積層する。絶縁膜914は除去しても良いし、残しておいても良い。絶縁膜918はシリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜等であり、CVD法やPVD法、あるいは熱酸化法や熱窒化法で形成する。基板911が絶縁体基板であり、この後で形成する導電体膜との密着性が良い場合には、この絶縁膜918を形成しなくても良い。絶縁膜918の厚みは、100nm〜2000nmである。貫通孔916内にも絶縁膜が形成される。次に導電体膜919を積層する。導電体膜919は、たとえば低抵抗多結晶シリコン(PolySi)、各種シリサイド膜、各種金属膜、各種合金膜、導電性ポリマー、導電性ゴム、導電性炭素(導電性カーボンナノチューブやグラフェンを含む)であり、CVD法、PVD法、イオンプレーティング、メッキ等で形成する。導電体膜919の厚みは、100nm〜2000nmである。導電体膜919は貫通孔916の内部にも積層するが、貫通孔916の側面全体に積層されることが望ましい。
導電体膜919は貫通孔916の底部932にも積層するが、この部分の導電体膜919をエッチング除去する必要がある。その方法として、図22(c)に示すように感光性膜930を形成し、貫通孔916の部分に感光性膜930が存在しないように感光性膜をパターニングする。この方法として、たとえば感光性ドライフィルム930を基板911上の導電体膜918上に付着させて、フォトリソ法によって貫通孔916の部分に感光性膜930が存在しないようにする。感光性ドライフィルム930がネガタイプの場合、感光性膜930を残す部分、すなわち基板側壁上面(基板上面)に光を照射すれば良い。感光性ドライフィルム930がポジタイプの場合は、感光性膜930を除去する部分、すなわち貫通孔上部を覆っている感光性膜930に光を照射すれば良い。ドライフィルムの場合は、貫通孔上部でも膜厚が余り厚くならず、プリベーク(感光性膜を露光する前に行なう熱処理)しても貫通孔内部に余り入っていかない。
感光性膜930が塗布膜やディップ膜の場合は、貫通孔916内部にも感光性膜が入り貫通孔916で厚くなっている。従って、ネガタイプの感光性膜(レジスト)が良く、厚みの安定している基板上面において露光するだけで良く、厚みの厚い感光性膜を有する貫通孔916内には露光する必要がないので、簡単に所望のパターンを形成できる。基板上面では導電体膜919を電極、配線としてのパターニングも必要であるから、そのためのパターンも形成する。尚、ポジタイプの感光性膜(レジスト)の場合は、貫通孔916内の厚いレジスト内にも露光する必要があるので焦点深度の大きい光を照射することによって、貫通孔内の感光性膜を除去することができる。
次に図22(d)に示すように、感光性膜930のエッジを垂れさせる熱処理を行なう。この熱処理によって基板側壁911(911−1、2、3、4)等の上面をカバーする感光性膜930が軟化して、感光性膜930のエッジが垂れて貫通孔916(916―1、2、3、4)の内側面側の上部に積層している導電体膜919を覆う(垂れた感光性膜931で示す)。レジストの軟化温度は、たとえば150℃〜200℃であり、この温度以上で熱処理することによって感光性膜930のエッジを垂れさせることができる。この後基板911の上面側から基板面に対して垂直に導電体膜を異方性エッチングする。たとえば、導電体膜がアルミニウムの場合、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いて塩tatoeba素系ガス(たとえば、Cl2やBCl3)によって垂直エッチング(異方性エッチング)できる。たとえば、導電体膜がタングステンシリサイドや低抵抗PolySiの場合、反応性イオンエッチング(RIE)装置を用いてたとえばハロゲン系ガス(たとえば、Cl2、SF6、HBr)によって垂直エッチング(異方性エッチング)できる。
この導電体膜の垂直エッチングによって、貫通孔916内の底部932に積層している導電体膜919がエッチング除去される。感光性膜930でカバーしている導電体膜の部分は当然にエッチングされない。貫通孔916の内側面に積層している導電体膜は、感光性膜で被覆されていないが、基板面に対して垂直になっているので、横方向からはエッチングされないから、エッチング後もエッチングされずに残っている。貫通孔内側面の上部に存在する導電体膜919は感光性膜がなければ当然エッチングされるが、感光性膜930のエッジ付近は垂れていて、この部分にある導電体膜919は、この垂れた感光性膜919に被覆されているので、この部分もエッチングされない。垂直方向にエッチングイオン種が貫通孔916内に突入してきても、この垂れた部分931がマスクとなり、貫通孔916の側面に被覆した導電体膜919はエッチングされない。尚、基板側壁911の上面に形成する感光性膜パターンを少し大き目に形成すれば、貫通孔916の内側面の廂領域が増えるので、貫通孔916の内側面上に積層した導電体膜919はやはりエッチングされにくくなる。この場合も感光性膜を垂れさせる熱処理を行なえば、確実に貫通孔916の内側面上部の導電体膜919を感光性膜で確実に覆うことができる。
導電体基板ではない場合でも平面的パターンは図18(a)、図19(a)、図20に示す形状と同じであるから、導電体膜919を積層後は、コンデンサ電極となる基板側壁(たとえば、911−1と911−3)上の導電体膜919は貫通孔916の底部のみで接続しているだけである。従って、上述した導電体膜の異方性エッチングによって貫通孔916の底部の導電体膜919は除去されるので、コンデンサ電極となる基板側壁(たとえば、911−1と911−3)上の導電体膜919は分離する。
この後、感光性膜930を除去して、絶縁体膜920を積層する。(絶縁膜920を形成する前に選択CVD法やメッキ法によって導電体膜を積層すれば、エッチング中に受けた導電体膜の小さな隙間を導電体膜で埋めることができ、エッチング中に導電体膜が受けたダメッジを回復することができる。(大きな隙間には選択CVDやメッキによる導電体膜は積層しないので、導通していないパターンが導通することはない。)この絶縁膜920は、SiOx、SiOxNy,SiNyであり、CVD法やPVD法で積層し、膜厚が0.1μm〜2μmであり、導電体膜919を化学的および物理的および環境的に保護する。その後、薄板921を付着させて、(図22(e))必要なコンタクト孔924(924−1、2)や導電体膜・電極・配線923(923−1、2)や通気孔922を形成する。このような構造のセンサが基板911内に多数作製されるので、ダイサー等を用いてチップ化(個片化)すれば、多数のセンサチップPKGを作製することができる。(図22(f))
このように本プロセスを用いることによって、絶縁体基板や半導体基板を用いても簡単なプロセスで本発明のセンサを作製できる。このプロセスではシリコン等の半導体基板を用いているので、ICやトランジスタと一緒のプロセスでセンサを作製することができる。
図23は、シリコン等の半導体基板を用いた本発明のセンサを作製する方法を示す図である。以下は半導体基板がシリコン基板であるとして説明する。図23(a)に示すように、シリコン基板951の両面に拡散層952を形成する。シリコン基板がP型ウエハの場合は拡散層はN型でもP型どちらでも良く、シリコン基板がN型ウエハの場合は拡散層はP型でもN型でもどちらでも良い。拡散層952の不純物濃度は1019/cm3以上であることが望ましい。拡散層952の形成方法は、たとえばイオン注入をした後に熱処理を行なう方法、あるいはプリデポして拡散熱処理を行なう方法がある。尚、裏面の拡散層952は特に必要がないので形成しなくても良い。
次に図23(b)に示すように、シリコン基板951の裏面にサポート基板954を付着する。必要な場合には、絶縁膜953を介在しても良い。シリコン基板951の上面に感光性膜956を形成し、貫通孔形成用の窓開けを行なう。必要な場合には、絶縁膜955を介在しても良い。感光性膜956のパターンにより貫通孔965(965−1、2、3)を形成する。貫通孔965を形成後感光性膜956をリムーブした後の断面図を図23(c)に示す。貫通孔965の上部に拡散層952が露出している。次に絶縁膜955をエッチング除去する。これによって、シリコン基板951の上面および貫通孔956の上部で拡散層952が全部露出する。この露出した状態で導電体膜957を積層する。導電体膜957は、シリコン基板の上面および貫通孔内部に積層され、シリコン基板951の上面および貫通孔956の上部に露出した拡散層952と接触する。
次に導電体膜957を所望のパターンに形成するために感光性膜958をパターニングし、このパターン958に従って導電体膜957をエッチングする。{図23(e)}図22では、感光性膜は基板側壁の上面をカバーし、貫通孔の側面上部を覆うようにパターニングされたが、本実施形態でも同様のパターニングも採用できるが、必ずしもそのようなパターニングをしなくても良い。すなわち、シリコン基板951の上面の拡散層952の領域内でパターニングすれば良く、シビアなマスク合わせが必要である(図22では、貫通孔のエッジと感光性膜のエッジ合わせが必要である。)が、本実施形態ではシビアなマスク合わせは必要がない。感光性膜958パターンに従い導電体膜952をエッチングすると、図23(e)に示すように、シリコン基板上面で感光性膜958の存在しない領域Aでは導電体膜957がエッチングされ、拡散層952が露出する。導電体膜957のエッチングは異方性(垂直)エッチングであるから、貫通孔965の側面に積層した導電体膜957は垂直方向(シリコン基板951面に対して)には厚いので、貫通孔側面の上部C領域では導電体膜957がエッチングされずに残る。すなわち、貫通孔965の側面に露出している拡散層952に導電体膜が接触した状態になっている。また、垂直エッチングであるから、貫通孔965の底部B領域に存在する導電体膜957はエッチング除去される。
この後、感光性膜958をリムーブして、熱処理を行なうことによって、導電体膜957と拡散層952とオーミックコンタクトを得ることができる。たとえば、導電体膜957がアルミニウムであるときは、約350℃〜450℃で熱処理(アロイ)を行なう。この後で、絶縁膜959を積層する。この絶縁膜959は導電体膜957や貫通孔965を保護し、さらに絶縁性を確保する。次に薄板960を付着させる。この薄板960はガラス基板等の透明基板を用いれば、光が通るのでマスク合わせしやすく、パターン異常などの品質検査が容易となる。薄板960にコンタクト孔961(961−1、2)を形成し導電体膜を積層して電極・配線962(962−1、2)を形成する。これによって、962−1および962−2が対向する2つの電極となり、貫通孔965−2を容量空間とするコンデンサを構成する。薄板960に通気孔963を形成して貫通孔965内の気圧を一定に保持できるようにしても良い。
このようにシリコン基板中に拡散層を形成することによって、簡単なプロセスで本発明のセンサを安価に作製することができる。
図24は貫通孔の内側面および基板上面に拡散層を形成する別の実施形態を示す図である。これまでの説明したプロセスと重複するプロセスの説明は省略する。図24(a)はシリコン基板971の下面にサポート基板973を付着し基板971内に貫通孔974(974−1、2)を形成した状態を示している。必要な場合は絶縁膜972を介在する。貫通孔974内側面および基板上面、基板側壁971(971−1、2、3)の上面を露出させる。次に図24(b)に示すように、基板側壁の側面(貫通孔内側面)および基板上面のシリコン基板が露出した部分に拡散層975を形成する。この拡散層975は、たとえば、イオン注入法の後で拡散熱処理を行なって作製することができる。あるいは、たとえば、プリデポの後で拡散熱処理を行なって作製することができる。この拡散層はP型でもN型の高濃度領域のどちらでも良い。貫通孔974(974−1、2)の底部は絶縁膜972または絶縁体であるサポート基板973であるから、拡散層は形成されない。すなわち、隣接する基板側壁に形成された拡散層975の間では接続していないから、この後にこれらの拡散層975にコンタクト孔および電極・配線を形成しても、これらの電極・配線の間では電気的に導通しない。
次に基板上面および貫通孔内側面および貫通孔底部に絶縁膜976を積層する。次に薄板977を基板上面に付着させる。その後コンタクト孔977を形成した後導電体膜を積層し、コンタクト孔内およびその上に電極・配線978をパターニングする。この後適度な熱処理を行なうことによって、電極・配線978と拡散層975との接続(オーミックコンタクト)を行なう。この結果、電極・配線978と貫通孔内側面の拡散層975と接続する。この結果、貫通孔974を容量空間として、貫通孔内の対向する2つの拡散層975を電極とするコンデンサが形成される。
図26は、本発明のセンサの別の製造方法を示す図である。基板にヤング率の大きい材料を使用するときには、基板側壁の厚み(基板面に対して平行な方向、すなわち幅と言った方が分かりやすい)を薄く(小さく)するほど加速度や音波に対して変形量が大きくなるので、コンデンサ容量の変化量も大きくなり、感度が増大する。たとえば、シリコン基板の場合には基板側壁の厚み(幅)は、50μm以下、場合によっては20μm以下や10μm以下となる場合もある。基板の厚みを500μm〜1000μmとすれば、貫通孔形成後の基板側壁のアウペクト比(基板側壁と基板との厚み比)は50以上となる場合もある。基板側壁を一回で形成するとこのような細長いビルディングが形成されるので、プロセス中にわずかの力で変形する可能性がある。そこで、本製造方法では、このような高アスペクト比の基板側壁を形成するときは、サポート基板(薄板、あるいは絶縁体基板)で基板側壁の上下面を押さえた状態で形成するものである。
図26(a)に示すように、基板1011の第1面に第1のサポート基板1013を付着させる。絶縁膜1012を介在しても良い。次に基板1011の第2面に感光性膜1015を形成して貫通孔形成用の窓開けを行なう。この時絶縁膜1014を介在しても良い。この貫通孔形成用の窓開けでは、細い基板側壁を形成するような感光性膜のパターンは形成しない。すなわち、結果として形成される貫通孔のうち、隣接するような貫通孔形成用のパターンは形成しない。たとえば、パターンの開口部間のスペース(ここの部分が基板側壁となる)はアスペクト比が10以上にならないようにする。たとえば、基板1011の厚みが500μmの場合は、50μm以下のスペースにならないようにする。たとえば、図19で説明したセンサでは中央の貫通孔732−1を開けて、その周りの貫通孔732−2、3,4、5はここでは開けないようにする。図18で示したセンサでは712−1を開け、712−2はここでは開けないようにする。図20で示したセンサでは752−1を開けて、その周りの752−2はここでは開けないようにする。次に感光性膜1015の開口部1016で露出した基板側壁1011を垂直エッチングし、基板1011の第2面に貫通する貫通溝(貫通孔)1017を形成する。絶縁膜1014が基板1011の第1面上に存在する場合には、この絶縁膜も異方性エッチングし、その後で基板1011を異方性エッチングする。
次に感光性膜1015をリムーブした後、(主)基板1011の第1面上に第2のサポート基板1021を付着する。この付着方法はこれまでに述べた方法と同じである。第2のサポート基板1021も第1のサポート基板1013同様に絶縁体基板であることが望ましい。第2のサポート基板1021や第1のサポート基板1013が絶縁体基板以外の基板の場合には、表面に絶縁膜を積層しておく方法がある。あるいは、主基板1011が絶縁体基板である場合には、直接付着させることもできる。第2のサポート基板1021は主基板1011に直接付着させることもできる。その場合は絶縁膜1014が介在している場合にはこれを除去しておく。たとえば、主基板1011がシリコン基板である場合、第2のサポート基板1021をガラス基板(絶縁体基板)とすれば、静電接着法(陽極接合法)を用いて強固に接着することができる。この第2のサポート基板1021はセンサーパッケージの外側下面となるので、厚みは50μm以上、好適には100μm以上が望ましく、300μm以上とさらに厚くし頑丈なパッケージにすることもでき、センサパッケージを使用する環境によって選択すれば良い。場合によっては厚みを50μm以下にしても良い場合もある。
次に主基板1011の第2面側に付着した第1サポート基板1013を薄くして50μm以下、好適には30μm以下、もっと好適には20μm以下、さらに好適には10μm以下の厚みとする。薄くする方法として、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いる方法、ドライエッチング法、ウエットエッチング法等がある。あるいは、薄い絶縁基板との貼り合せ基板を第1サポート基板として、貼り合わせた基板を取り外して薄い絶縁基板だけを残す方法もある。この後、図26(c)に示すように、第1サポート基板1013上に感光性膜1022を形成し、所望のパターニングを行なう。このパターニングは、隣接する貫通孔の間に挟まれる薄い厚み(幅)を有する基板側壁の第2面側から第1サポート基板1013で押さえて、(第1面側は第2サポート基板1021で押さえられている)基板側壁の変形を最小限とし、所望の厚みの基板を得ることを目的とする。
薄い厚み(幅)を有する基板側壁となる領域の第2面側にパターンエッジが来るようにし、エッチング後に薄い厚み(幅)を有する基板側壁の第2面側の領域が第1サポート基板1013に付着しているようにパターニングする。たとえば、第1サポート基板1013のエッチング後のエッジ位置が点線の位置、すなわち薄い厚み(幅)を有する基板側壁となる領域の第2面側上に第1サポート基板1013のエッチング後のエッジが来るようにする。感光性膜1022の露光時のマスク合わせは、第1貫通孔1017を形成したときのパターンに合わせることによって非常に精密なマスク合わせを行なうことができる。第1サポート基板1013がガラス基板であれば、合わせ時の光線が透過するので、より正確なマスク合わせを行なうことができる。感光性膜のない窓開けされた開口部1023から第1サポート基板1013のエッチングを行なう。第1サポート基板1013がガラス基板であるときは、CF4ガスやC2F6ガスを用いたドライエッチング、HF系水溶液を用いたウエットエッチング等でエッチングする。下地がシリコン酸化膜等の絶縁膜1012がある場合は一緒にエッチングしても良い。エッチング形状は点線で示すようにエッジがテーパー状であった方がこの後に形成する絶縁膜や導電体膜のステップカバレッジが良くなるので望ましいが、これらの膜のカバレッジが良ければ(感光性膜パターンとの寸法差が少ない)垂直エッチングでも良い。(図27(c))
第1サポート基板1013をエッチングした後に、感光性膜1022をリムーブした後、第2貫通孔を形成するために感光性膜1025を形成しフォトリソ法を用いて所望のパターニングを行なう。このときのマスク合わせも第1貫通孔1017のパターンと合わせれば、基板側壁の薄い厚み(幅)を正確にコントロールできる。第1貫通孔1017のパターンは第1サポート基板1013の下にあるので、第1サポート基板1013を透過する波長の光を用いることによってより精度の高いマスク合わせができる。また、既にパターニングした第1サポート基板1013は絶縁膜1025にカバーされる。パターニングされた感光性膜1025の開口部1026から主基板1011を垂直エッチングし貫通孔(第2貫通孔)1027を形成する。第2貫通孔1027は主基板1011の第1面側までエッチングされる。絶縁膜1012が存在する場合にはまず絶縁膜をエッチング(好適には垂直エッチング)した後に主基板1011がエッチングされる。
第2貫通孔1027が形成されると、第1貫通孔と第2貫通孔の間の基板側壁1011(1011−1、2)の厚み(幅)は非常に薄く(3μm〜50μm)、アスペクト比が大きいが、図26(d)に示されるように、第1面側が第2サポート基板1021で、第2面側が第1サポート基板1013で規制されて(押さえられて)いるので、基板側壁1011(1011−1、2)の変形は非常に小さくなる。尚、感光性膜1022を第2貫通孔用形成用パターンと同じくして、第1サポート基板1013をエッチングし、さらに第2貫通孔1027を形成しても良い。この場合には感光性膜1025を形成しなくても良い。
次に感光性膜1025をリムーブした後、絶縁膜1031を形成する。この絶縁膜はCVD法またはPVD法で形成し、貫通孔1027の内部にも積層する。この絶縁膜1027は貫通孔内部の露出した基板1011を被覆し保護し、この後で形成する導電体膜の密着性を確保し、さらに基板と導電体膜との絶縁性を確実にする。従って、主基板1011が導電体膜や半導体基板の場合は必要であるが、主基板1011が絶縁体基板であるときは必要がない場合もある。絶縁膜1031を形成後導電体膜1032をCVD法、PVD法、イオンプレーティング法、メッキ法、あるいはこれらの組合せで形成する。
貫通孔1027内に形成された互いに対向する導電体膜1032はコンデンサの電極となる。従って、貫通孔底部Bに形成された導電体膜1032を除去する必要がある。そのために、感光性膜1033を形成し、貫通孔1027に合わせたパターニングを行なう。すなわち貫通孔1027に形成された導電体膜1032の上部をカバーすると同時に貫通孔1027の開口部1034が形成されるようにする。感光性膜1033として感光性ドライフィルムが良い。あるいは、塗布用またはディップ用感光性膜であれば、前述したように、露光された部分が硬化し、露光されない部分が現像されるネガ型のフォトレジストが良い。また、主基板1011の第2面側で導電体膜1032を配線パターンとして使用する場合は、必要なパターニングを行ない、開口部1035を形成する。(図26(e))
次に、パターニングされた感光性膜1033により導電体膜1032を異方性エッチングする。感光性膜1033が開口された1034や1035部分の導電体膜1032がエッチングされる。貫通孔1027の開口部1034から垂直に入射したエッチング種は貫通孔底部Bに積層する導電体膜1032をエッチング除去する。この結果貫通孔1027の外側側面の基板側壁の側面に積層された対向する導電体膜1032(1032−1と2、および1032−3と4)は分離される。第1サポート基板1013のエッジがテーパー化されている場合には、このエッジでの段差において絶縁膜1013や導電体膜1032のステップカバレッジが良くなる。
次に感光性膜1033をリムーブした後、絶縁膜である保護膜1036を導電体膜1032上に積層する。次に第3のサポート基板1037をその保護膜1036上に付着させる。このとき接着剤塗布はサポート基板上の必要な部分にのみコートした後にマスク合わせしながら主基板1011上の導電体膜1032や貫通孔1032、1017に合わせながら精度良く付着させることもできる。第3サポート基板は絶縁体基板が望ましい。第3サポート基板は、センサパッケージの上面または下面の外側部材となるので、基板厚みを100μm以上とすることが望ましい。使用環境によってはもっと薄くても良い。あるいは500μm以上と厚くする必要がある場合もある。次に第3サポート基板にコンタクト孔1038を開けて、導電体膜をコンタクト孔内に積層するとともに第3サポート基板上に導電体膜電極・配線1039(1039−1、2、3,4)をパターニングする。さらに、第1貫通孔1017に対して、第3サポート基板1037および第1サポート基板1013に通気孔1043、あるいは第2サポート基板1021に通気孔1041などを形成する。また、第2貫通孔1027に対して、第3サポート基板1037に通気孔1044を形成したり、あるいは第2サポート基板1021に通気孔1042などを形成する。
図26に基づいて説明した本発明の製造プロセスを用いることによって、プロセス中に厚み(幅)の薄い(小さい)基板側壁が変形することを確実に抑えることができ、基板側壁が変形する可能性について特別な注意をする必要がなくなる。しかもプロセスも極めて単純であるからプロセス負荷やコスト増は小さい。図26に示すプロセスは種々の基板(導電体基板、絶縁体基板、または半導体基板)に使用できるが、導電体基板であればさらにプロセスが簡単になる。
図27は、導電体基板を種基板として用いた本発明の製造方法を示す別の実施形態を示す図である。図27において、主基板1011は導電体基板であり、図27(b)に示すプロセスまでは図26(b)し示したプロセスまでと同じである。説明が同様であり、または類似している部分は説明を省略するか簡単に述べているが、図26で説明した内容を適用できる。図26(c)に示すように、第1サポート基板1013を薄くした後、感光性膜1025を形成し、フォトリソ法により第2貫通孔形成用のパターニングを行なう。この後、感光性膜1025の開口部1026に露出した第1サポート基板1013をエッチングする。このエッチングは感光性膜1025のパターンに忠実にエッチングする垂直エッチング(異方性エッチング)が望ましい。第1サポート基板1013をサイドエッチさせてテーパーエッチングすることもできるが、この場合は第1貫通孔とつながらないように注意する。またサイドエッチングした後は感光性膜1025のエッジの下側は廂になり、主基板のエッチング種が入り込む可能性がある場合には、再ベークを行ないこの廂を感光性膜で覆っても良い。
第1サポート基板1013の下に絶縁膜1012が介在する場合には、この絶縁膜も垂直エッチングすることが望ましい。導電体膜1011が露出した後は、導電体膜1011の垂直エッチング(異方性エッチング)を行ない、第2貫通孔1027を形成する。(図27(d))次に感光性膜1025をリムーブ(除去)した後、絶縁膜1050をCVD法やPVD法で積層する。この絶縁膜1050によって、第2貫通孔1027の内部、すなわち基板側壁の側面が保護される。また第1サポート基板上にも積層する。この絶縁体膜はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜等であり、その膜厚は100nm〜2000nmである。尚、第2貫通孔1027はこの後第3サポート基板1051でカバーされるので、この絶縁膜1050を省略することもできる。次に第3サポート基板1051を基板1011の上面(図27(e)における)側、絶縁膜1050上(または第1サポート基板1013上)に付着させる。その後、コンタクト孔1052を形成し、導電体膜を積層して電極・配線1053(1053−1、2、3、4)を形成する。コンタクト孔の形成は、第3サポート基板1051のエッチングの他に、絶縁膜1050や1012をエッチングしたり、さらには第1サポート基板1013のエッチングも必要である。
さらに、第3サポート基板に通気孔1056や1057を形成することもできる。これらの通気孔の形成は、コンタクト孔形成と同時に作製することもできる。また第2サポート基板1021に通気孔1054を形成することもできる。尚、第3サポート基板1051のコンタクト孔や通気孔は第3サポート基板1051を基板1011の上面に付着する前に形成することもできる。前もって形成しておけばプロセス時間を短縮することができる。本プロセスでは、図26で説明したような導電体膜1032を積層する必要はなく、従ってそのパターニングも必要がないので、プロセスが非常に単純となる。すなわち、貫通孔(貫通溝)1027を形成すれば導電体基板1011(たとえば、基板側壁1011−1と1011−2、あるいは基板側壁1011−3と1011−4)は電気的に接続しないように分離される。この結果、基板側壁1011−1および1011−2は貫通孔1027(1027−1)を容量空間とするコンデンサの対向電極となり、導電体電極1053−1および1053−2に電圧を印加すればコンデンサの容量を測定できる。同様に、基板側壁1011−3および1011−4は貫通孔1027(1027−2)を容量空間とするコンデンサの対向電極となり、導電体電極1053−3および1053−4に電圧を印加すればコンデンサの容量を測定できる。
図16で説明した本発明を除いて、これまでに貫通孔または貫通溝、すなわち基板面、、第1面(表面と呼んでも良い)および第2面(裏面と呼んでも良い)の両方に開口してこれらの基板面に対して垂直方向に形成された孔、または溝であり、貫通孔(貫通溝)を囲む(規定する)基板(側壁)側面が基板面に対して垂直である場合を取り扱ってきたが、これまでに記載したことは一方だけに開口した垂直凹部(以下単に凹部という)に対しても適用できる。凹部を用いた場合には、凹部の底が極端に薄くならない限り、凹部の底側に近い基板面にサポート基板(あるいは、薄板、あるいは絶縁体基板と言っても良い)を付着させる必要がないので、プロセスが簡単となる。しかも半導体基板であれば、ICやトランジスタや他の素子と一緒に同じ基板に本発明のセンサを搭載できるというメリットがある。
図28は図1において凹部を形成した場合を示す図である。同じ膜については同じ符号を用いている。凹部116(116−1、2、3)は貫通孔(貫通溝)ではなく、凹部である。すなわち、基板111の第1面(表面)111−S1から基板111の第2面(裏面面)111−S2に向かって垂直にエッチングして形成するが、基板111の第2面(裏面面)111−S2に達しないで貫通する前に基板111の途中でエッチングをやめて、所謂凹部とする。凹部116(116−1、2、3)の下部には基板111の下部111−Bが存在する。凹部の116の深さをh、基板111の厚みをh0としたとき、h0>hである。(貫通孔の場合は、h0≦hである。)基板111が導電体膜や半導体基板の場合は、絶縁膜113を積層し凹部内部にも積層し、この上に積層する導電体膜115と基板111が導通しないようにする。基板111が絶縁体であるときは、絶縁膜113は必要がない場合がある。導電体膜115との密着性を向上させる目的などで有る場合は、絶縁膜113を積層しても良い。
絶縁膜113を積層後導電体膜115を積層する。凹部底部領域Bにも導電体膜115が積層されるので、この部分の導電体膜115をエッチング除去する。このエッチングは凹部上部の開口部を感光性膜で窓開けした状態で導電体膜の異方性エッチングをすれば良い。尚、他の領域、すなわち基板111の第1面(表面、または上面)111−S1側の導電体膜115のパターニングも行なうことができる。この結果、凹部116−1において、凹部116−1を容量空間とし、貫通孔116−1を挟む基板側壁の側面上に形成された導電体膜・電極115−1および115−2が対向電極となるコンデンサを形成している。また、凹部116−3において、凹部116−3を容量空間とし、貫通孔116−3を挟む基板側壁の側面上に形成された導電体膜・電極115−3および115−4が対向電極となるコンデンサを形成している。
音波は第2凹部116−2へ導入され、凹部116−2と凹部116−1に挟まれた基板側壁111−1が振動する。また、凹部116−2と凹部116−3に挟まれた基板側壁111−2が振動する。このように凹部を形成することによって、マイクロホンを形成することができる。基板111を半導体基板とすることによって、マイクロホンをICやトランジスタなどの能動素子と一緒に作製することができ、コンデンサの容量変化を変換回路を有するICに接続することによって音波に変換することができる。
図28に示す構造は、図8の所で説明した様に、加速度センサとしても使用できる。図29は図28と類似構造を加速度センサに適用した場合を示す図である。すなわち、凹部および凹部同士に挟まれた基板側壁の変形を加速線センサとして用いた実施形態である。説明は図と同様である。すなわち、基板側壁111−1および/または111−2が加速度によって変形すると、凹部116−1および/または116−3を空間容量とするコンデンサ容量が変化するこの変化量を大きくするために中央の閉空間となっている凹部へ水銀等の重い液体118を入れる。加速度によって液体が基板側壁を押すので、基板側壁の変形量が大きくなり、コンデンサ容量の変化量も大きくなる。液体は通気口122から入れて通気口127から出すようにすれば凹部116−2内を充填させることもできるし、凹部116−2内空間のX%の容積だけ入れることもできる。Xは0〜100%の間で調整して、加速度の検出感度に合わせて決定すれば良い。
図30は、エピウエハを用いたセンサの製造方法を示す図である。このエピウエハ(エピタキシャルウエハ)1100は高濃度シリコン基板1101上に低濃度不純物層のエピ層1102を形成したウエハである。高濃度シリコン基板1101の不純物濃度は、N型またはP型の不純物元素濃度が約1019/cm3以上である。また、低濃度不純物層のエピ層1102の不純物濃度は、このエピ層内に形成するデバイスの特性によるが、N型またはP型の不純物元素濃度が約1013/cm3〜1017/cm3である。エピウエハのサイズは、処理する装置の大きさやセンサチップやセンサを含むICチップのサイズ・取れ個数にもよるが、4インチ(直径100mmφ)以上が良い。一般には6インチ(150mmφ)、8インチ(200mmφ)、250mm(250mmφ)、300mm(300mmφ)等が使用される。高濃度シリコン基板1101の厚みは約100μm以上であり、エピ層1102の厚みは、搭載デバイスやデバイス特性やデバイス作製時のプロセスにもよるが、約5μm以上である。
このエピウエハ1100には本発明のセンサを搭載する領域1108およびICやトランジスタ等のデバイスを形成する領域(デバイス搭載領域)1107がある。感光性膜1103をパターニングしセンサ搭載領域1108となるべき部分を開口し、その開口された領域の低濃度不純物層1102を除去し、高濃度不純物層1101を露出させる。低濃度不純物層1102のエッチングは、ウエットエッチングとしてKOHやEDP(EthyleneDiamine+Pyrocatechol+水)などの異方性エッチング、フッ硝酸系(HF+NHNO3+CH3COOH(or水))などの等方性エッチングがあり、ドライエッチングとしてCF4、CHF3、C2F6等のプラズマエッチングがある。エッチング面1105は傾斜(またはテーパ化)させても良いし、垂直エッチングでも良い。テーパー化すれば配線形成時のカバレッジを改善できる。傾斜エッチングはドライまたはウエットエッチングで等方性エッチングを行なえば良い。KOH等の異方性エッチングでも基板面が(100)であるときは、エッチング面が(111)となり、傾斜角は約54.7°となる。感光性膜1103とエピウエハ1102の間にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜を積層して、これらをマスクとしてエピ層1102をエッチングすることもできる。
以上のようにしてセンサ搭載領域1108が凹部1104になり、高濃度基板1101が露出する。この後のプロセスはこれまで説明したセンサ形成プロセスと同様であるから、重複する部分の詳細説明は省略する。基本は、高濃度基板内に貫通孔および基板側壁を形成し、貫通孔および基板側壁の上面および下面に絶縁基板を付着させて貫通孔を容量空間とし、その貫通孔を挟んで対向する基板側壁を電極としたコンデンサを形成する。図30(b)に示すように、エピウエハ1100の第2面(エピ層1102のない面、高濃度基板面が露出した裏面)に絶縁基板を付着させる。必要ならシリコン酸化膜等の絶縁膜を介在しても良い。次に表面に感光性膜1111を形成し、貫通孔形成用の開口部1112をパターニングする。必要ならシリコン酸化膜等を介在しても良い。この開口部1112に露出した高濃度シリコン基板1101を垂直エッチングし、貫通孔1114(1114−1、2、3)を形成する。貫通孔1114は高濃度シリコン基板1101の第1面(表面)側から第2面(裏面)側へ完全に貫通し、貫通孔1114の底は絶縁基板1110となる。
絶縁基板1110は、ガラス、石製、セラミック、プラスチック、高分子樹脂などである。絶縁基板1110の厚みは50μm程度あれば良いが、センサの使用条件やエッチング条件などのよってもっと薄くしても良い。センサの強度を大きくするためにこれより厚くしても良い。貫通孔1114の形成により、基板側壁1101(1101−1、2、3、4)が形成される。容量空間となる1114−2を挟んで対向する基板側壁1101−1および1101−2は電気的に接続しないように分離されている。同様に、容量空間となる1114−3を挟んで対向する基板側壁1101−13よび1101−4は電気的に接続しないように分離されている。(図30(c))
次に、感光性膜1111をリムーブし絶縁膜1116を積層し(場合によっては形成しなくても良い。)、絶縁基板1117を基板側壁1101(1101−1、2、3、4)の上面に付着させる。センサ搭載領域は凹部1104となっているので、エピウエハ1100の中で低くなっている。この領域にのみ絶縁基板1117を付着させるので、たとえばこの凹部1104内の基板側壁1101(1101−1、2、3、4)に付着させることができる大きさの絶縁基板1117を別基板にあらかじめ付着させておき、マスク合わせしてこの領域に絶縁基板1117を付着させる。この結果、ダイヤフラムとなる基板側壁1101−2、1101−3は上面が絶縁基板1117に、下面が絶縁基板1110に規制される。(図30(d))絶縁基板1110は、ガラス、石製、セラミック、プラスチック、高分子樹脂などである。絶縁基板1117の厚みは、基板に付着させた絶縁基板1117をアライメントして転写してエピウエハの凹部1104に入れるので、凹部1104の深さより少し厚くする。
次に、絶縁基板1117にコンタクト孔1118を開け導電体膜1119を形成し、導電体膜・電極・配線1119を形成する。この結果、電極・配線1119は導電体基板である基板側壁1101(1101−1、2、3、4)と接続する。必要なら、絶縁基板1117に開口部(通気口)1121、絶縁基板1110に開口部(通気口)1122をあけても良い。また、これらのコンタクト孔1118、開口部1121、1122は絶縁基板にあらかじめ形成しておき、その後で絶縁基板をエピウエハに付着させても良い。
以上のようにして、非常に簡単なプロセスでエピウエハ内の一部の領域にセンサを形成できる。センサ搭載領域以外のデバイス搭載領域には、ICやトランジスタ等のデバイスを形成できるので、たとえば、センサの信号を処理する回路や演算回路を1つのチップ内に入れることができる。しかも絶縁膜や導電体膜はデバイス作製時のプロセスと兼用することができるので、プロセスコストも低くすることができる。
高エネルギー・高電流イオン注入装置を用いて、エピウエハの低濃度エピ層に高濃度領域を作製して、その部分にセンサを作製することによって、ICやトランジスタ等の能動デバイスと一緒のチップにセンサを作製できる。図31はエピウエハを用いたセンサの製造方法の別の実施形態を示す図である。高濃度基板1131と低濃度エピ(エピタキシャル)層1132を有するエピウエハ1130において、感光性膜1136を形成し、センサ搭載領域1134となるべき領域を窓開けし、デバイス搭載領域となるべき領域を感光性膜1136で覆い、ウエハ全面にイオン注入を行なう。このイオン注入1137のイオンは高濃度基板1131の導電体型と同じであることが望ましい。エピ層の全体の濃度がイオン注入後の熱処理において、1019/cm3以上となるように、イオン注入の加速エネルギーおよびドーズ量を選択する。また、このイオン注入時にデバイス搭載領域1133におけるエピ層1132にはイオン注入されないように、十分な厚みを有する感光性膜を形成する。
イオン注入後イオン注入層の活性化および拡散の熱処理を行ない、エピ層1132に高濃度イオン注入層1141を形成する。この高濃度イオン注入層1141は高濃度基板1131と接続し、電気的に完全に導通したものとなる。尚、高濃度イオン注入層1141はプリデポ等で作製しても良い。その後、感光性膜1143をパターニングし、貫通孔形成用の窓開けを行なう。この貫通孔形成用窓開けはセンサ搭載領域に開けられる。感光性膜1143とエピウエハ1130との間にシリコン酸化膜等の絶縁膜を介在しても良い。(図31(b))
次に貫通孔1145を形成し、基板側壁1146を形成する。次に感光性膜1143をリムーブし、必要な場合に絶縁膜1147を積層し、貫通孔1145等で露出したエピウエハ1130を保護する。その後、絶縁基板1148をエピウエハ1130の上面に付着させ、コンタクト孔1149、導電体膜・電極・配線1150を形成する。この結果、導電体膜・電極・配線1150はコンタクト孔1149内の導電体膜を通してエピ層1132の高濃度層1141に接続し、さらに高濃度の基板側壁1146へ接続する。この結果、貫通孔1145を空間容量とし、それを挟んだ対向電極1146のコンデンサが作製される。本実施形態では、デバイス搭載領域1133のエピ層1132には影響を与えないので、通常のICやトランジスタ等を形成できる。(図31(c))
通常のシリコン半導体基板に高濃度拡散層を形成し、そこに本発明のセンサを形成することができる。図32は本発明のセンサの製造方法の一実施形態を示す図である。1017/cm3以下の不純物濃度を有する低濃度シリコンウエハ1161に感光性膜1162を形成し、センサ搭載領域となる領域1164を窓開けして、デバイス搭載領域1163を感光性膜で覆う。シリコンウエハ1161と感光性膜の間に絶縁膜を形成しても良い。高エネルギーイオン注入装置を用いて高ドーズ量のイオン注入1165を行ない、熱処理後のイオン注入層の濃度が1019/cm3以上になるようにする。注入するイオンはシリコンウエハ1161の導電型と逆導電体とする。イオン注入時にデバイス搭載領域1163にはイオン注入されないように、感光性膜1162の厚みを調整する。(図32(a))
感光性膜1162をリムーブ後熱処理を行ないイオン注入したイオン注入層を活性化し不純物層を拡散し、イオン注入拡散層1167を形成する。このイオン注入拡散層1167の不純物濃度は1019/cm3以上が好ましい。このイオン注入拡散層1167がセンサ搭載領域に相当する。次に感光性膜1168を形成し、イオン注入拡散層1167の領域内に凹部を形成するための開口部を形成する。(図32(b))感光性膜1168とシリコンウエハ1161の間に絶縁膜を形成しても良い。
次に、この感光性膜1168の開口部からシリコンウエハ1161を垂直エッチングし、凹部1169(1169−1、2,3)を形成する。この凹部1169の深さh12はイオン注入拡散層1167の深さh11より深くする。すなわち、h12>h11である。(図32(c))
次に感光性膜1168をリムーブし、必要な場合には凹部1169に露出したシリコン基板を保護するために、絶縁膜1170を形成し、絶縁基板1171をシリコンウエハ1161のイオン注入拡散層1167の上面に付着させる。次に、絶縁基板1171にコンタクト孔1172を形成し、導電体膜1173をコンタクト孔1172内および絶縁基板1171上に積層し、導電体膜・電極・配線1173を形成する。凹部1169(1169−1、2、3)はイオン注入拡散層1167より深いので、基板側壁1167−1および1167−2は電気的に接続していない。(シリコンウエハ1161とイオン注入拡散層1167は導電型が逆である。)従って、凹部1169―2を空間容量として、対向電極となる1167−1および1167−2はコンデンサの対向電極となっている。基板側壁1167−2は下部がシリコンウエハ1161につながり、基板側壁1167−2は上面が絶縁体基板1171と付着していて、たとえば加速度がかかったり、音波が凹部1169−1に入ったりすると基板側壁1167−2が変形し、貫通孔1169−2の容量が変化する。同様に、基板側壁1167−3および1167−4は電気的に接続していない。(シリコンウエハ1161とイオン注入拡散層1167は導電型が逆である。)従って、凹部1169―3を空間容量として、対向電極となる1167−3および1167−4はコンデンサの対向電極となっている。基板側壁1167−3は下部がシリコンウエハ1161につながり、基板側壁1167−3は上面が絶縁体基板1171と付着していて、たとえば加速度がかかったり、音波が凹部1169−1に入ったりすると基板側壁1167−3が変形し、貫通孔1169−3の容量が変化する。(図32(d))
図33は、エピウエハを用いたセンサの別の作製方法を示す図である。本実施形態では、エピウエハ1200の高濃度基板側に凹部を形成する。しかも高濃度基板1201の導電タイプと低濃度層のエピ層1202の導電タイプは逆とする。(あるいは、このような逆導電体タイプのウエハを貼り合わせても良い。)エピウエハ1200の裏面の高濃度基板1201側に感光性膜1205を形成し、凹部形成用の開口部を形成する。エピウエハ1200の表面側(低濃度領域側)には絶縁膜1203を形成して、表面側を保護しても良い。また、感光性膜1205とエピウエハ1200の裏面との間にシリコン酸化膜等の絶縁膜を形成しても良い。次に感光性膜1205のパターンを元に垂直エッチングして凹部1206(1206−1、2、3、4、5)を形成する。エピウエハ1200の高濃度基板1201の厚みをh13とし、凹部の深さをh14としたとき、凹部1206の深さは高濃度基板1201の厚みより深くし、凹部の底部はエピウエハ1200の低濃度領域1202に来るようにエッチングする。すなわち、h14>h13である。ただし、凹部1206は貫通孔にならないようにエッチング量を制御する。(図33(a))
次に感光性膜1205をリムーブして、絶縁膜1208をエピウエハ1200の裏面側および凹部側に必要な場合には保護用の絶縁膜1208を積層する。次に絶縁基板1209をエピウエハ1200の裏面側に付着する。この後絶縁膜1211を形成し、導電体膜1212をコンタクト孔1212内および絶縁基板1209上に積層し、パターニングして導電体膜・電極・配線1212を形成する。この導電体膜・電極・配線1212は、高濃度基板1201の基板側壁1207(1207−1、2、3、4、5、6)は接続する。この結果、たとえば、凹部1206−2を空間容量として、凹部の対向電極1207−2および1207−3がコンデンサ電極となったコンデンサを形成する。従って、基板側壁1207−3が変形すると凹部1206−2を空間容量(コンデンサ容量)が変化する。
本実施形態では、エピウエハまたは貼り合わせウエハ1200の表側の低濃度領域1202にICやトランジスタ等のデバイスを自由に作製できる。従って、センサを搭載したICチップを作製できるだけでなく、センサ搭載ICチップの大きさを大幅に小さくできる。貫通配線を使えば一方の面(表面または裏面)に電極・パッドを集めることができる。あるいは、エピウエハ1200の表面側からコンタクト孔1214を形成し、その側壁に絶縁膜1213を形成した後、導電体膜1215をコンタクト孔1214および表面側に積層し、パターニングして導電体膜・電極・配線1215を作製する。この結果、高濃度基板1201の基板側壁電極1207と接続でき、エピウエハ1200の表面側のデバイスからセンサを動かすこともできる。尚、本実施形態ではコンデンサの深さ方向の電極長さは凹部1206の深さh14ではなく、高濃度基板1201の基板厚さで決まるので、エッチングバラツキの影響を受けない。
図34はエピウエハを貼り合わせた基板を用いたセンサおよびその製造方法の一実施形態を示す図である。厚みh21の低濃度エピ層1232および厚みh22の高濃度基板1231からなるエピウエハ1230と、厚みh23の低濃度エピ層1242および厚みh24の高濃度基板1241からなるエピウエハ1240を高濃度基板1231および1241同士を貼り合わせる。(貼り合わせ面1245)高濃度基板1231および1241の導電タイプは同じタイプとし、エピ層1232および1242の導電タイプと異なるタイプとする。
この貼り合わせは、常温接合や高温接合や接着剤を用いて付着させる。接着剤を用いる場合には高濃度基板1231および1241が電気的に接続するように導電接着剤を用いる。この貼り合わせた貼り合わせ基板1249の一方のエピ層1232側の面に感光性膜1235を形成し、センサ搭載領域1233を窓開けし、デバイス搭載領域1234を感光性膜1235で被覆する。この感光性膜1235の開口部へ高エネルギーイオン注入装置を用いて高エネルギーで高ドーズ量でイオン注入1236を行ない、熱処理後にイオン注入拡散層1237の濃度が1019/cm3以上となり、かつ高濃度基板1231と電気的に接続できるようにする。従って、イオン注入のイオンの導電タイプは高濃度基板1231および1241と同じ導電タイプである。貼り合わせ前またはイオン注入前にエピ層1242を保護するために絶縁膜1243を形成しても良い。同様にエピ層1232と感光性膜1235の間に絶縁膜を形成しても良い。(図34(a))
感光性膜1235をリムーブした後、イオン注入層の活性化および拡散用の熱処理を行ない、イオン注入拡散層1237を形成する。このイオン注入拡散層1237は高濃度基板1231と電気的に接続する。次に感光性膜1238を形成して、センサ搭載領域1233に凹部形成用の窓開けを行なう。必要ならエピ層1232と感光性膜1238との間に絶縁膜を形成しても良い。この窓開けした部分よりエピ層1232(1237)、高濃度基板1231、高濃度基板1241を完全に垂直エッチングし、エピ層1242に達するように凹部1239(1239−1、2、3)を形成する。凹部1239はエピ層1242を貫通しないようにする。凹部の厚みをh25とすれば、h21+h22+h24+h23>h25>h21+h22+h24となる。(ただし、接着剤の厚みは無視している。)
この結果、貼り合わせ基板側壁1240−1および1240−2、あるいは貼り合わせ基板側壁1240−3および1240−4は電気的に接続しないようになる。そして、凹部1239−2は空間容量となり、貼り合わせ基板側壁1240−1および1240−2は対向するコンデンサ電極となる。同様に、凹部1239−3は空間容量となり、貼り合わせ基板側壁1240−3および1240−4は対向するコンデンサ電極となる。また、コンデンサの深さ方向電極の長さは、h21+h22+h24となり、凹部1239の深さh25に依存しない。この後のプロセスは、図33と同様で、絶縁体基板やコンタクト孔や電極などを形成する。このようにエピウエハの貼り合わせ基板を用いて本発明のセンサを形成でき、この場合エピウエハの低濃度エピ層1232や1242にICやトランジスタ等のデバイスを形成できるので、非常に高密度で小さなサイズのセンサ搭載IC(トランジスタ)を作製できる。尚、イオン注入を行なわずに、図30と同様にエピ層1232をエッチングして高濃度基板1231を露出させる方法でも本実施形態を使用してセンサを作製できる。
また、貼り合わせる基板を高濃度基板ではなく、低濃度基板を用いても凹部を作製できる。この場合、図34において、エピ層1242と高濃度基板1241からなるエピウエハ1240が低濃度基板(低濃度シリコンウエハ)と考えれば良い。h24とh23はひとまとめでか投げれば良く、低濃度シリコンウエハに到達するまで凹部を形成し、h25>h21+h22となるように凹部のエッチングを行なう。この場合もエピ層1232側にも低濃度シリコンウエハ側にもデバイスを形成できる。さらにエピウエハ1230を全部高濃度基板として、高濃度基板と低濃度基板を貼り合わせて高濃度基板側から凹部を形成し、凹部の底を低濃度基板側にすれば、本発明のセンサを高濃度基板側の面に、IC等のデバイスを低濃度基板側の面に形成することができる。低濃度シリコンウエハと高濃度基板の間に絶縁膜や絶縁体を挟んでも良い。この場合は、凹部の底を絶縁膜や絶縁体で止まるようにすれば良く、この場合低濃度シリコンウエハと高濃度基板の導電タイプは同じでも良い。(直接貼り合わせる場合は、これらの間で電気的に接続しないように異なる導電タイプとする)あるいは、凹部は低濃度領域側まで入り込んでも良い。いずれにしても凹部のコンデンサの深さ側長さは高濃度基板の厚さで決まるので、エッチングバラツキは関係しないというメリットもある。
図35は、導電体基板および半導体基板を接着させた複合基板を用いたセンサおよびその製造方法を示す図である。導電体基板は、たとえば高濃度のシリコン半導体基板等の導電体基板、金属や合金等の導電体基板、導電性高分子、導電性プラスチック、導電性ゴム等の導電体基板である。以下では導電体基板は高濃度シリコン半導体基板として説明する。半導体基板はシリコン、ゲルマニウム、炭素(ダイヤモンド)等の単元素半導体基板、ガリウムヒ素、炭化ケイ素、窒化ガリウム等の二元系半導体基板、それ以上の多元系半導体基板である。以下では半導体基板はシリコン半導体基板として説明する。導電体基板1251および半導体基板1252を接着した複合基板1250の導電体基板1250側に感光性膜1255を形成し、凹部形成用のパターニングを行なう。導電体基板1251および半導体基板1252の間に絶縁膜1254を介在しても良い。絶縁膜1254はシリコン酸化膜(SiOx)等で、CVDやPVD法、あるいは塗布+熱処理、あるいは酸化や窒化等で形成する。接着方法は、接着剤を用いる方法、常温接合法、静電接着法、陽極接合、拡散接合、陽極接合などがある。導電体基板1251および感光性膜1255の間に絶縁膜を介在しても良い。また、半導体基板側の表面を保護するために、絶縁膜1253を形成しても良い。(図35(a))
感光性膜1255の開口部パターンを元にして導電体基板1251を垂直エッチングし(破線で示す)、凹部1256(1256−1、2、3、4)を形成する。凹部の深さは基板の厚みより深くするようにエッチングする。絶縁膜1254が存在するときは、絶縁膜1254をエッチングストッパーとして用いることによって、凹部1256を所定の垂直孔とすることができる。絶縁膜1254が存在するときは、導電体基板1251の導電タイプと半導体基板1252の導電タイプは同じでも異なっていても良く、互いに導通することはない。凹部1256が絶縁膜1254を全部エッチングして半導体基板1252へ達しても絶縁膜1254が存在するので、導通することはない。(導通する危険性がある場合には、この後で凹部内側面に絶縁膜を積層すれば良い。)絶縁膜1254がなく、導電体基板1251と半導体基板1252が直接付着する場合には、導電体基板1251と半導体基板1252の導電タイプを逆にする。
凹部1256は深さ方向について導電体基板1251を完全にエッチングした垂直パターンにすることが望ましく、絶縁膜1254または半導体基板1252の途中まで達するようにする。ただし、半導体基板1252内にデバイスを形成する場合は、そのデバイスへ影響を与えないような深さで凹部1256を形成する。凹部1256(1256−1、2、3、4)の形成によって、基板側壁1257(1257−1、2、3、、4,5)が形成される。このようにすることによって、隣接する導電体基板の基板側壁(たとえば、容量空間1256−2を挟む対向電極1257−2および1257−3が電気的に導通しないようにすることができる。
次に感光性膜1255をリムーブし、必要な場合には、凹部1256の内側面および導電体基板の表面を保護するために絶縁膜を形成する。その後、絶縁基板1258を導電体基板1251の表面側に付着し、基板側壁1257(1257−1、2、3、4、5)の上面を絶縁体基板1258に付着固定する。絶縁基板1258にコンタクト孔1261を形成し、コンタクト孔1261内および絶縁体基板1258上に導電体膜を積層し、導電体膜電極・配線1259(1259−1、2、3、4、5)を形成する。および/または半導体基板1252側の表面にコンタクト孔1262を導電体基板1251側まで形成し、コンタクト孔1262内および半導体基板1252の表面側に積層し、導電体膜電極・配線1264(1264−1、2、3)を形成する。
コンタクト孔1262を形成したときにコンタクト孔1262内側面は半導体基板1252が露出するので、コンタクト孔1262内側面に絶縁膜1263を形成して、半導体基板1252とコンタクト孔1262内に形成した導電体膜との電気的導通を防止する。絶縁膜1263をコンタクト孔1262内側面に形成する方法として、コンタクト孔1262を形成後に絶縁膜1263を積層し、全面(コンタクト孔を含む近傍領域だけでも良い)異方性エッチングすれば、導電体基板1251上に積層した絶縁膜1263はエッチング除去されてコンタクト孔1262の内側面に絶縁膜1263が残る。その後で導電体膜を積層すれば導電体基板1251と電気的に接続する。
絶縁体基板1258は凹部1256をカバーするが、必要な場合には凹部1256部分に開口部1265(通気孔と呼んでも良い)を設けても良い。この開口部1265はコンタクト孔1261と一緒に形成しても良い。および/または半導体基板1252側に開口部(通気孔と呼んでも良い)1266を設けても良い。この開口部1266はコンタクト孔1262と一緒に形成しても良い。
以上のようにして形成された凹部1256によって、導電体基板1251の基板側壁1257(1257−1、2、3、4、5)は電気的に接続しないように形成できる。たとえば、凹部1256−2を空間容量とし、これを挟んで対向電極1257−2と1257−3はコンデンサの対向電極となる。導電膜・電極・配線1259−2は導電体基板1251の基板側壁1257−2に接続し、導電膜・電極・配線1259−3は導電体基板1251の基板側壁1257−3に接続する。および/または半導体基板1252側の導電体膜・電極・配線1264−2は導電体基板1251の基板側壁1257−2に接続し、半導体基板1252側の導電体膜・電極・配線1264−3は導電体基板1251の基板側壁1257−3に接続する。
図35に示す実施形態では、半導体基板1252側にトランジスタやIC等のデバイスを形成し、その下側の導電体基板1251側に凹部を形成したセンサを作製できるので、センサを含むICを作製できるだけでなく、ICチップを小さくすることができる。複合基板1250の両側に電極を形成できるので、どちらかからでも制御できる。あるいは片方の基板面だけに電極を形成することもできる。(たとえば、電極1259−1は導電体基板1251の基板側壁1257−1を通して電極1264−1へ導通する。)
図36は、インプリント法を用いて作成したセンサおよびセンサの製造方法を示す図である。半導体基板等の基板1611内に形成した深さH0の凹部1614を含む基板1611上に絶縁膜1613を形成する。トランジスタやIC等と一緒にセンサを搭載するチップを作製する場合は、基板はシリコン等の半導体基板である。凹部1614の深さH0はセンサを構成する材料やセンサの特性に依存するが、概ね10μm以上である。絶縁膜1613はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜であり、膜厚は約100nm〜2000nmである。この絶縁膜1613は基板1611と凹部内に形成する導電性ポリマーと電気的および物理的に分離することなどを目的とする。また、導電性ポリマー内部に形成する凹部をエッチングするときのエッチングストッパーの役割も果たす。次に凹部1614内に導電性ポリマー1615を充填する。液体状やゲル状の導電性ポリマー1615を塗布法、ディップ法、スクリーン印刷法等でコーティングしたり、シート状の導電性ポリマーを基板1611に貼り付け、導電性ポリマーシートを溶融軟化して凹部内に導電性ポリマー1615を入れ込む。{図36(a)}導電性ポリマーは、たとえばポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリアニレン、ポリピロール等など種々の導電性高分子、あるいはポリマーに金属等の導電性微粒子を混在して導電性を持たせたポリマーでも良い。あるいは導電性ゴムやゴムに金属等の導電性微粒子を混在して導電性を持たせたゴムでも良い。{図36(a)}
次に、ポリマー内にセンサ用の凹部形成用のパターン1619を形成したモールド1617を凹部1614における液状やゲル状の導電体ポリマー1615内に挿入し、熱処理やUV照射等により硬化させた後、モールド1617およびモールドパターン1619をポリマー1615から引き抜いて、ポリマー1615内に凹部1621(1621−1、2、3)を形成する。凹部1621(1621−1、2、3)の底部にはポリマー1615Bが存在するので、この状態ではポリマー基板側壁1615(1、2,3,4)はポリマー底部1615Bでつながっている。そこで、ポリマー1615を異方性エッチングしてこのポリマー1615Bを除去する。ポリマー1615と絶縁膜1613とのエッチング選択比を大きく取れば、ポリマー1615をかなりオーバーエッチングしても、また絶縁膜1613を厚くしなくても、絶縁膜1613がエッチングストッパーとなり、凹部1621の底部に絶縁膜1613(1613−B)を残すことができる。このようにして凹部1621(1621−1、2,3)が形成され、これによって、ポリマー基板側壁1615(1615−1,2,3、4)が形成され、ポリマー基板側壁1615−1および1615−2は電気的に接続していない。またポリマー基板側壁1615−2および1615−3は電気的に接続していない。(図36(b)、(c)、(d)、(e))
次に、必要な場合には、導電性ポリマー1615の表面(1615S)や凹部1621内側面を保護するために絶縁膜1622を積層する。次に絶縁基板1623を付着し、コンタクト孔1624を形成し、さらに導電体膜をコンタクト孔内および絶縁滝基板1623の表面に積層し、導電体膜・電極・配線1625(1625−1、2、3、4)を作製する。こうして、凹部1621−2を容量空間として、その両側の対向するポリマー電極基板側壁1615−1および1615−3をコンデンサ電極とするコンデンサが形成される。ポリマー電極基板側壁1615−1は凹部1621−1へ導入された音波や加速度や角速度によって変形し、凹部1621−2のコンデンサ容量が変化する。導電体膜・電極・配線1625は基板側壁(1615−1,3)に電気的に接続しているので、コンデンサ容量の変化を検出することができる。同様に、凹部1621−3を容量空間として、その両側の対向するポリマー電極基板側壁1615−2および1615−4をコンデンサ電極とするコンデンサが形成される。ポリマー電極基板側壁1615−2は凹部1621−1へ導入された音波や加速度や角速度によって変形し、凹部1621−3のコンデンサ容量が変化する。導電体膜・電極・配線1625は基板側壁(1615−2,4)に電気的に接続しているので、コンデンサ容量の変化を検出することができる。(図36(f))
必要な場合(たとえば、凹部1621へ通気する場合や音波を導入する場合や、凹部内に重い液体を入れる場合)は、絶縁基板1623に開口孔1626を形成する。コンタクト孔1624や開口孔1626を同じプロセスで形成することもできるし、予めこれらを形成した絶縁基板1623をポリマー1615の表面1615Sやポリマー基板1615上面に付着しても良い。本実施形態では、基板1611の凹部1614を形成した面1611Sと反対側の面1611B側にもポリマー基板側壁へのコンタクト孔1627を形成できる。基板1611の表面1611B(この上に絶縁膜1630等が形成されている場合には、その上)に感光性膜を形成し、必要なパターンを形成し、(絶縁膜1630等をエッチングし、さらに)基板1611をエッチングし、さらに絶縁膜1613をエッチングして、ポリマー基板側壁1615へ接続するコンタクト孔1627を形成する。基板1611が半導体基板や導電体基板であるときは、コンタクト孔1627で露出した基板1611側面上に絶縁膜1628を積層する。その後、導電体膜をコンタクト孔1627内および基板1611B上(上の絶縁膜1613上)に積層し導電体膜・電極・配線1629を形成する。この結果、基板1611B側でもポリマー電極1515と接続する導電体膜・電極・配線1629を得ることができる。このことは、基板1611の両面(1611S、1611B)または片面から制御できることを意味する。必要な場合には、開口1631を基板面1611B側に備えることもできる。
以上のようにして、基板1611の基板面に凹部(第1凹部)形成し、それに導電性ポリマーを形成し、インプリント法を用いて、その基板内凹部(第1凹部)に凹部(第2凹部)を形成し、第2凹部を容量空間とし、導電体ポリマーの基板側壁をコンデンサ電極とするコンデンサを作成でき、それを用いて、マイクロホンセンサ、加速度センサ、各速度センサ、その他のセンサ(圧力センサ)を作製できる。基板1611がシリコン等の半導体基板であれば、トランジスタやIC等のデバイスと一緒にセンサを作製できる。センサの第1凹部と同じ基板面(1611S側)にIC等のデバイスを作製する場合は、第1凹部のない領域にIC等のデバイスを作製することができる。センサの第1凹部と反対の基板面(1611B側)にIC等のデバイスを作製する場合は、第1凹部の下側の領域にもIC等のデバイスを作製することができるので、高い密度のセンサ付きICを作製できる。
モールドパターン1619のパターン深さをH10としたとき、ポリマー基板側壁の深さH11は、第2凹部1621の底部をエッチングする前はほぼH10と同じである(図36(d))が、(H11=H10)第2凹部1621の底部をエッチング後の第2凹部1621の深さH12は、第2凹部1621の底部の絶縁膜1613のエッチングレートがポリマー1615のエッチングレートより遅いので、H11より少し小さくなる。(H12<H11)また、コンデンサの電極の深さはポリマーの基板側壁(1615−1、2、3、4)の深さH13と同じであるが、このH13はH12より少し小さくなる。従って、第2凹部1621の底部をエッチングのバラツキやエッチング量を制御することが重要である。
図36に示す実施形態において、基板1611内に凹部1614を形成せずに平坦な基板面に(必要なら絶縁膜を形成した上に)導電性ポリマーを形成してインプリント法で図36と同様なセンサ構造(ただし、第1凹部1614はない)を作製できる。
図37は、インプリントモールドを用いてセンサを作製する別の実施形態を示す図である。基板1301上に絶縁性ポリマー1302を形成し、その上に導電性ポリマー1303を形成する。この製造方法として、たとえば液状の絶縁性ポリマー1302を塗布法やディップ法で作製する方法、ゲル状やペースト状の絶縁性ポリマー1302を塗布する方法、あるいはポリマーシート付着法がある。次に、液状の絶縁性ポリマー、ゲル状やペースト状の絶縁性ポリマー、あるいはポリマーシート1302の上に液状の導電性ポリマー1303を塗布法やディップ法で形成したり、あるいはゲル状やペースト状の導電性ポリマー1303を塗布したり、あるいは導電性ポリマーシート1303を付着させる。(図37(a))
次に凹部形成用パターン1306を有するモールド1305をポリマー1303および1302に挿入する。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303が液状や、ゲル状やペースト状であるときは、そのまま押し込むことができる。絶縁性ポリマー1302または導電性ポリマー1303のどちらかが固体状である場合は、たとえば以下のようにインプリントする。絶縁性ポリマー1302が固体状である場合、導電性ポリマー1303が液状やゲル状やペースト状の場合は、まずモールド1305および1306を導電性ポリマー1303に押し入れる。絶縁性ポリマー1302にモールドパターン1306の先端部が近づいたときに絶縁性ポリマー1302が軟化する温度以上の温度にして、軟化した絶縁性ポリマー1302へモールド1305および1306を押し入れる。その後、絶縁性ポリマー1302の軟化温度(TM1302)以下へ下げて絶縁性ポリマー1302を硬化させる。導電性ポリマー1303の軟化温度(TM1303)が絶縁性ポリマー1302の軟化温度より低い材料(TM1303<TM1302)を用いることによって、さらに温度を下げて導電性ポリマー1303を硬化させる。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303が硬化した後、モールド1305および1306を引き抜いて、凹部1307を形成する。
絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303が固体状である場合、たとえば、絶縁性ポリマー1302の軟化温度(TM1302)が導電性ポリマー1303の軟化温度(TM1303)より高い材料(TM1302>TM1303)を用いる。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303を形成した基板1301をTM1302とTM1303との間に保持し、モールド1305および1306を導電性ポリマー1303内に挿入する。次にモールド1305および1306の先端部が絶縁性ポリマー1302に近づいたときに基板1301の温度をTM1302以上して軟化した絶縁性ポリマー1302中にモールド1305および1306を挿入する。所定位置にモールド1305および1306を押し入れたときに、基板1301の温度をTM1302とTM1303との間にして絶縁性ポリマー1302を硬化させ、次にTM1303以下にして導電性ポリマー1303を硬化させる。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303の両方が硬化した後にモールド1305および1306を引き抜くと、ポリマー内に凹部1307が形成される。凹部1307の底部は絶縁性ポリマーとなるので、導電性ポリマーの基板側壁1303同士(たとえば、1303−1と1303−2、あるいは1303−3と1303−4)は電気的に接続しない。この後は、図36に示す方法と同様のプロセスでセンサを作製できる。(図37(a)、(b)、(c)、(d))
以上のように、凹部の底部を形成するモールドパターン1306の先端部が、絶縁性ポリマーの中に入るように、絶縁性ポリマーおよび導電性ポリマーの厚みを調整する。図37に示す実施形態では、インプリントモールドして作製した凹部の底部は絶縁性ポリマー(絶縁膜)であるから、図36に示した凹部底部の導電成ポリマーのエッチング除去プロセスは不要であり、プロセスが簡単になる。しかもエッチングプロセスがないので、導電性ポリマーの厚みがコンデンサの電極の深さと同じであるから、非常に精度の良いコンデンサを形成することができる。
図38は、インプリント法を用いて本発明のセンサを製造する方法を示す別の実施形態を示す図である。図38では、インプリント法で用いるモールド(またはその一部)をそのままセンサの一部として使用する。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマーを形成した基板1301に、凹部形成用のモールドパターン1306を有するモールド1305を押し込み、凹部形成用モールドパターン1306の先端部は絶縁性ポリマー内に入り込むようにする。モールド1305は凹部形成用のモールドパターン1306を付着させ支持している基板であり、将来センサの基板側壁を支える基板である。モールド1305は絶縁基板であることがプロセス上扱いやすいが、電極間を電気的に分離するようにすれば半導体基板や導電体基板でも良い。以下はモールド1305が絶縁基板であるとして説明する。
モールドパターンを支持するモールド基板1305はセンサの一部として残すので、余り厚くできない場合には、モールド基板1305をさらに支えるモールド支持基板をモールド基板1305上に付着させても良い。こ接着剤を用いたり、静電的に付着したりして付着させるが、他の方法で付着させても良い。たとえば、モールド基板1305をフェライト等の磁性を有する絶縁基板とし、モールド支持基板側に電磁石を備えてモールド基板1305を付着させる。モールド基板1305はセンサ側に残すので、そのときは電磁石の機能をなくせば、モールド基板1305はモールド支持基板から分離できる。モールド基板1305の厚みは約10μm〜1000μmである。特性上問題なければこれよりも厚くても良いし薄くても良い。
モールド基板1305に凹部形成用のモールドパターン1306を形成する。このモールドパターン1306の形成方法は、たとえば以下のようにして作製することができる。軟化温度T1306を持つポリマー(樹脂)をモールド基板1305上に塗布、ディップ法、スプレー法、スクリーン印刷法で形成する。このポリマー1306は好適には熱可塑性樹脂である。次にモールドパターンを形成できるパターンを有するモールドを押しつけてインプリント法等でモールドパターン1306を形成する。適当な温度で熱処理して硬化させる。あるいはUV照射で硬化させても良い。
次に、硬化温度T1302持つ絶縁性ポリマー(樹脂)および硬化温度T1303を持つ導電性ポリマー(樹脂)をモールド基板1301上に塗布、ディップ法、スプレー法、スクリーン印刷法で形成する。これらのポリマーは好適には熱硬化性ポリマーである。モールドパターン1306を有するモールド1305をポリマー中に挿入し押しつけ、モールドパターン1306の先端部は絶縁性ポリマーになるようにする。次に温度を上げて、絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303を硬化させる。従って、好適にはT1302<T1303<T1306である。すなわち、まず、T1302とT1303との間の温度で絶縁性ポリマー1302を硬化させ、その後T1303とT1306の間の温度で導電性ポリマー1303を硬化させる。
モールド基板1305のモールドパターン1306の上面の一部または全部には開口部1310が開いている。この開口部1310はプロセス上問題なければ開口した状態でも良いが、モールドパターン1306をポリマー1303および1302へ挿入するときの圧力伝達に問題等がある場合は、ポリマー(樹脂)、ゴム、金属等で充填しても良い。たとえば、モールドパターン1306と同じ材料でも良い。好適には、この材料は有る温度(T1310)以上で溶融する材料とする。T1302<T1303<T1310の関係があり、しかもT1310はT1306と近い方が良い。絶縁性ポリマー1302および導電性ポリマー1303が硬化した後、T1310かT1306のどちらか高い温度以上の温度にして、ポリマー1310および材料1306を溶融させる。(モールド基板の軟化温度はこの温度以上とする。)この溶融した材料を開口した開口1310から外側へ流出させ、凹部1307を形成する。開口からの流出が困難な場合は、外側を低圧にして吸い出すのが良い。或いは、モールドパターン1306の材料を昇華性を有する材料または沸点の低い材料(融点または軟化点より少し高い温度の沸点を有する材料)あるいは揮発性材料とし、気化させて取り出しても良い。あるいはポリマーを分解してその気体を外部へ排出しても良い。昇華性を有するポリマーとして、たとえば、メラミンや油溶性染料がある。
次に、導電体ポリマーの基板側壁1303(1303−1、2、3)とコンタクトするコンタクト孔1311を絶縁体基板1305に設け(たとえば、絶縁体基板1305がガラス基板である場合は、感光性膜を形成しパターニングして、ドライエッチング(CF4ガス等)やウエットエッチング(フッ酸系エッチャント)で窓開けする。あるいは、モールド基板1305に1310と同じく予め備えておくこともできる。)、導電体膜をコンタクト孔1311および絶縁体基板1305上に積層し、パターニングして導電体膜・電極・配線1312(1312−1、2、3、4)を形成する。この結果、空間容量を凹部1307−2とし、これを挟む導電体ポリマーの基板側壁1303−1および1303−2を対向電極とするコンデンサが形成され、たとえば基板側壁1303−2が加速度や、凹部1307−1に導入された音波によって変形したとき、凹部1307−2の空間容量が変化しコンデンサ容量の変化を検出できる。同様に、空間容量を凹部1307−3とし、これを挟む導電体ポリマーの基板側壁1303−3および1303−4を対向電極とするコンデンサが形成され、たとえば基板側壁1303−3が加速度や、凹部1307−1に導入された音波によって変形したとき、凹部1307−3の空間容量が変化しコンデンサ容量の変化を検出できる。
以上のようにすれば、モールド基板1305およびモールドパターン1306を引き抜かずに凹部1307(モールドパターン1306の跡)を形成することができ、しかもモールド基板1305がそのまま絶縁体基板になるので、プロセスが簡単であり、しかも厚み(幅)の薄いポリマーの基板側壁(たとえば、1303−2や1303−3)と付着しない(既に付着している)ので、技術的にも容易である。また本実施形態は、半導体基板等に凹部を形成して、その凹部内にセンサを形成できる。従って、センサ付きICを1チップで作製できる。
図39は、絶縁性ポリマー内にインプリントモールド法により凹部を形成して、そのままモールド基板を凹部上の絶縁体基板として使用するセンサおよびその作製方法を示す図である。まず、モールドの構造について説明する。本実施形態のモールドは、センサの基板側壁の上面に付着する絶縁基板となるモールド基板1405、センサの凹部を形成するモールドパターン1406(1406−1、2、3)を含む。モールド基板1405は絶縁体基板が望ましいが、半導体基板や導電体基板でも使用できる。厚みは、センサの厚みにもよるが、10μm〜1000μmであるが、もっと薄くても良いし、厚くても良い。ただし、半導体基板や導電体基板の場合は、対向するコンデンサ電極が電気的に分離するようにそれぞれの電極と接触する領域間に絶縁性を持つ領域を作製する。以下では、モールド基板1405は絶縁体基板として説明する。絶縁基板は、たとえばガラス基板、石英基板、セラミック基板、絶縁性プラスチック基板、各種高分子絶縁性基板、絶縁性ゴムなどである。
このモールド基板1405にセンサ凹部形成用のモールドパターン1406を付着させる。このモールドパターン材料は、たとえば、高分子(ポリマー)、ゴムであり、液状またはゲル状のポリマー1402へインプリント可能なモールド材料であり、液状またはゲル状のポリマー1402とプロセス中及び使用中に反応しない材料であり、凹部の容積の変化(バラツキ)が小さい材料であることが望ましい。モールドパターン1406(1406−1、2、3)には、図39(a)に示すように、導電体膜1407(1407−1、2、3、4)のパターンが形成されている。凹部形成用のモールドパターン1406(1406−1、2、3)が形成されているモールド基板1405の領域の一部または全部には開口部1410が形成されており、この開口部1410には充填材料で満たされ、モールド基板1405の基板面と同じレベルで平坦になっている。この充填材料は、たとえば軟化点(または融点)T1410を有する熱可塑性ポリマーである。あるいは、融点T1410を有する金属や無機材料でも良い。
また、モールド基板1405には導電体膜1407とコンタクトするためのコンタクト孔1408(1408−1、2、3)が形成されている。このコンタクト孔1408も充填材料で満たされ、モールド基板1405の基板面と同じレベルで平坦になっている。この充填材料は、たとえば軟化点(または融点)T1408を有する熱可塑性ポリマーである。あるいは、融点T1408を有する金属や無機材料でも良い。
モールドパターン1406を構成する材料はたとえば軟化点(または融点)T1406を有する熱可塑性ポリマーである。あるいは、たとえば融点T1406を有する金属や無機材料でも良い。モールドパターン1406はモールド基板1405上に熱可塑性ポリマー1406を塗布法、ディップ法、スクリーン印刷法などで形成する。モールドパターン1406は、インプリントモールド法で形成しても良いし、スクリーン印刷法でパターニングしても良い。モールドパターン1406の深さH31は、凹部の深さによって決定される。
モールドパターン1406を形成した後、モールドパターン1406上に導電体膜1407を積層する。さらに、導電体膜1407上に感光性膜を積層し、感光性膜の必要なパターニングをして導電体膜1407の必要な配線を行なう。ポリマーの基板側壁となる領域Aは幅が狭いが、加速度センサやマイクロホンでは、Aの部分(導電体膜1407−2や1407−3)では導電体膜407のパターニングは必要がないので、感光性膜がポジ型であれば露光しない部分が現像後に感光性膜が残るのでパターニングは問題ない。一方、モールド基板1405の基板面側が広いBの部分(導電体膜1407−1や1407−4)は広い領域であるから、ポジレジストの厚みが余り厚くならないので、(塗布法やディップ法の場合は少し厚くなるが、特に感光性ドライフィルムを使用するときは、厚くなることを抑えることができる。)露光を十分に行なうことができるし、焦点深度の深い露光を行なうことにより、感光性膜の十分なパターニングができ、そのパターンをもとにして導電性膜のエッチングを行なうことができる。また、図39(a)に示すように、モールドパターン1406の先端は導電体膜1407をエッチング除去する。モールドパターン1406の先端は感光性膜が薄い領域であるから、ポジ型感光性膜へ十分な露光ができ容易に感光性膜を除去できるから、モールドパターン1406の先端の導電体膜1407のエッチング除去は容易である。
モールド基板1405はセンサ側に残るので、モールド基板1405を支持してプレスで押し込むためのモールド支持基板1414にモールド基板1405をたとえば接着層1412を用いて付着させる。この接着層1412は軟化温度(融点)T1412を有する熱可塑性樹脂とする。あるいは、モールド基板1405を、磁性を有するフェライト等の絶縁基板とすれば、モールド支持基板1414に電磁石を備えて、電磁石でモールド基板1405をモールド支持基板1414に付着させることもでき、この場合は接着剤1412は必要がないので、プロセスが簡略化される。
一方、センサを形成する基板側は、基板1401上に絶縁性ポリマー1402を塗布法、ディップ法、スクリーン印刷法、ドライフィルム付着法、溶融法を用いて形成する。絶縁性ポリマー1402は熱硬化性ポリマーとし、その硬化温度をT1402とする。液状状態または軟化状態または溶融状態の絶縁性ポリマー1402にモールドパターン1406を有するモールド基板1405を押し込んでゆき、モールド基板1405とポリマー1402を接触させ、さらにモールド基板1405でポリマー1402を押圧する。ポリマー1402の温度をT1402以上に保持し(保持温度T39-1)、ポリマー1402を硬化させる。このとき、モールドパターン1406、充填材料1408、充填材料1410、接着剤1412は軟化しないようにする。すなわち、T1402<T39-1<T1406、T1408、T1410、T1412である。(図39(b))
ポリマー1402が硬化した後、さらに温度を上げて(この温度をT39-2とする)モールドパターン1406、充填材料1408、充填材料1410、接着剤1412を軟化(または溶融)させる。すなわち、T39-2>T1406、T1408、T1410、T1412である。まず、接着剤1412を溶融させてモールド支持基板1414を取り外す。次に、溶融した充填材料1410を除去し、開口部1410から溶融したモールドパターン1406を除去する。(図39(c)の矢印で示す。)また、導電体膜1407(1407−1、2、3、4)と接続しているコンタクト孔1408(1408−1、2、3、4)を充填している材料を溶融除去する。尚、コンタクト孔1408の充填材料が導電体材料であれば、特に除去する必要がないので、溶融しなくても良い。すなわち、この場合はT1408>T39-2でも良い。この結果、凹部1416(1416−1、2、3)が形成され、導電体膜1407(1407−1、2、3、4)は凹部1416(1416−1、2、3)の内側面、すなわち絶縁性ポリマー1402の基板側壁1402(1402−1、2、3、4)の垂直な側壁側面および基板側壁1402(1402−1、2、3、4)の上面に自動的に残り、配線パターン1407(1407−1、2、3)が形成される。
次に導電体膜を積層し、パターニングして絶縁体基板1405上に導電体膜・電極・配線1412(1412−1、2、3、4)を形成する。コンタクト孔1408内に充填した充填材料が導電体材料でないときは、この部分が開口されるので、コンタクト孔1408にも導電体膜を積層して、導電体膜配線1407と接続させることもできる。尚、導電体膜の積層は、CVD法やPVD法を用いる。導電体膜1407、1408、1412は、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、白金、クローム、タングステン、モリブデン、あるいはこれらの合金である。凹部1416(1416−1、2、3)内にも積層されるが、非常に薄いので、導電体膜・電極・配線1412(1412−1、2、3、4)の形成時のエッチング時に、開口部1410の感光性膜を除去して開口して開けておけば、簡単にエッチング除去できる。特に、エッチングのプロセス時に等方性エッチングプロセスを入れておけことによって凹部内に形成された導電体膜(1412)は簡単にエッチングされる。この後、凹部への開口をさらに増やしたり、あるいは開口を塞ぐプロセスを追加することもできる。(図39(d))
このように図39に示すセンサの構造およびプロセスによって、非常に簡単なプロセスでセンサを作製できる。しかも幅が狭い基板側壁1402(1402−2、3)はモールド基板1405で上面を固定された後に形成されているので、極めて安全なプロセスで形成される。この結果、基板側壁1402(1402−1、2、3,4)は、上面がモールド(絶縁体)基板1405で固定され、下面は絶縁性ポリマー1402で固定されている。
尚、モールド基板1405にあらかじめ開口部1410やコンタクト孔1408を形成したが、ポリマー1402を硬化させ、モールド支持基板1414を取り外してから、感光性膜を形成して感光性膜をパターニングして開口部1410やコンタクト孔1408を形成することもできる。この開口部1410を形成した後にモールドパターン1406を溶融させて除去することができる。この場合は、予め開口部1410やコンタクト孔1408を充填材料で充填する必要がなく、これらを溶融し除去する必要もない。
尚、モールドパターン1406の材料、充填材料1408、1410、接着剤材料1412を昇華性材料や沸点が融点に近い材料にすれば、これらの材料を気化させて除去することができるので、除去プロセスが容易となる。尚、導電体膜1407の融点はプロセス温度より高くし、プロセス中に溶融したり、変形したりしないようにすることは言うまでもない。さらに図39に示すセンサは、半導体基板に凹部を形成することによって、トランジスタやICと同じチップ内に搭載することもできる。しかもIC等を形成する面と反対の面にセンサを形成すれば、センサ搭載ICチップのサイズを小さくすることもできる。
本発明のセンサはジャイロセンサ(角速度センサ)にも適用できる。角速度ωによって質量mの物体はmrω2の力を受ける。たとえば、図10に示す構造のセンサに回転力(角速度ω)が加わると、各コンデンサの容量変化が異なるので、最も容量変化の大きいコンデンサから回転中心方向が分かる。回転中心が図10に示す円形の中心になければ容量変化の大きいコンデンサの位置は変化するので、時間t秒後の回転中心方向から回転中心を求めることができる。このセンサを複数配置しておけば、直ちに回転中心が分かるし、精度も高まる。また、力の大きさから角速度ωも分かる。さらに、移動速度vも分かる。電極の分割個数を増やせば、角速度ω、移動速度v、回転中心の精度も高めることができる。3次元的に複数配置(種々の方向にして配置)すれば、3次元的な角速度センサとして使用できる。
本発明のセンサ構造は加速度センサやマイクロホンや角速度センサだけでなく、他の種々のセンサに使用できる。たとえば、本発明者は、特願2012−016017において圧力センサをはじめとした種々のセンサの発明を示してきたが、本発明も特願2012−016017に示した種々のセンサに適用できることは言うまでもない。一例として、図39に示すセンサ構造およびその製造方法を圧力センサの構造およびその製造方法に適用した例を図40に示す。
図40は、インプリント法を用いた本発明の圧力センサの構造およびその製造方法を示す図である。図39と類似または同じものは同じ符号を使用する。モールド基板1405はポリマー中へインプリント法を用いて凹部を形成するためのモールドパターン1406(1406−1、2、3、4)を有する。モールドパターン1406(1406−1、2、3、4)およびモールド基板1405上には導電体膜1407がパターニングされている。モールドパターン1406はインプリント法やフォトリソ法で形成する。モールドパターン1406はたとえば、軟化温度または融点T1406を有する高分子材料(ポリマー)であり、熱可塑性樹脂が望ましい。導電体膜はCVD法やPVD法やイオンプレーティング法などによって積層した多結晶シリコン膜、アモルファスシリコン膜、WSixやMoSixやTiSix等のシリサイド膜、各種金属膜、各種合金膜、導電性ナノチューブ、導電性グラフェン、導電性ポリマー等である。CVD法やPVD法やイオンプレーティング法などによる積層膜なので、モールドパターン1406の上面はもちろん、その側面や底部にも積層される。
図40(a)に示すように、容量空間となる凹部1416−2および1416−3を形成するモールドパターンの凸状パターン1406−2および1406−3上(側面および上面)に形成された導電体膜1407のうち、凸状パターン1406−2および1406−3の天井部(矢印Cで示す)の導電体膜を除去する。導電体膜の除去方法として、たとえば、ポジ型の感光性膜を塗布法やスプレー法でコーティングした後、凸状パターン1406−2および1406−3の天井部(矢印Cで示す)の感光性膜は薄いので、容易に露光でき、この部分の感光性膜を除去できる。モールドパターン1406の底部、すなわちモールド基板1405上のB部分で導電体膜をパターニングする必要があるが、この領域は他の領域(A領域)に比べて広く取れるので、感光性膜も比較的薄くなること、また精度の高いパターニングは不要なことなどから、このB部分でのパターニングも問題ない。(露光時間を十分長く取れるので、感光性膜が厚くても露光可能である。)また、感光性膜が厚くなるモールドパターンの凹部(A領域、この部分は幅の狭い基板側壁(ダイヤフラム)となる部分)は、感光性膜が厚くなるので、露光が不十分となるが、このA領域は感光性膜を除去する必要はないので、ポジ型感光性膜であれば全く問題ない。感光性膜がドライフィルムの場合には、モールドパターン1406の底部でも余り厚くならないので、感光性膜は問題なくパターニングできる。さらに電着レジスト法を用いれば、パターニングはさらに問題ない。
モールド基板1405において、モールドパターン1406が形成される領域の一部または全部を開口して開口部1410を形成して、その部分に充填材料で充填しても良い。また、導電体膜1407とコンタクトするためのコンタクト孔1408(1408−1、2、3、4、5)を形成し、その部分を充填しても良い。このコンタクト孔1408の充填材料に導電体膜を使用すればそのままコンタクト孔1408での導電体膜1407との接続材料として使用できる。コンタクト孔1408をポリマー等で充填して後で除去しても良い。開口部1410やコンタクト孔1408は、モールド基板1405にレーザー照射して形成することもできるし、感光性膜を形成パターニングしてドライエッチングやウエットエッチングで開けることができる。1408や1410の充填材料をモールドパターン1406と同じ材料(たとえば、熱可塑性ポリマー)にすれば、モールドパターン1406を形成時に同時に作製でき、プロセスを簡略にできる。
モールドパターン1406付きモールド基板1405だけでプレスできないときは、モールド支持基板1414に接着剤1412等でモールドパターン1406付きモールド基板1405を付着させて、モールド支持基板1414をプレス装置にセットして、基板上に形成したポリマー1402へ押し込んでも良い。前述したように磁性体であるフェライト基板をモールド基板1405として使用すれば、電磁石を用いることによって接着剤1412を使用せずにモールド基板1405を直接モールド支持基板1414に付着できる。
次にモールド基板1405等を絶縁性ポリマー1402中にインプリントし、絶縁性ポリマー1402を硬化させる。(図40(b))絶縁性ポリマー1402は液状ポリマーを滴下、スプレー、スピンコート、ディップなどにより基板1401上に付着させ、この後必要な場合にはプリベークして軟化状態またはゲル状態にした後、モールドパターン1406付きモールド基板1405を絶縁性ポリマー1402中に押し込む(インプリントする)。あるいは、絶縁性ポリマーフィルムを基板1401上に付着させ、ベークして軟化または溶融させてモールドパターン1406付きモールド基板1405を絶縁性ポリマー中に押し込む(インプリントする)。絶縁性ポリマー1402は熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が望ましい。この絶縁性ポリマー1402の硬化温度をT1402としたとき、T1402はモールドパターン1406を構成するポリマー等の軟化温度T1406より低くなる材料を選定する。モールドパターン1406付きモールド基板1405を絶縁性ポリマー1402中に押し込んで、(モールド基板1405は絶縁性ポリマー1402と接触し、さらに押し込む(圧接する)。T1402とT1406の間の温度で絶縁性ポリマー1402を硬化させる。
絶縁性ポリマーは、たとえば、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル、液晶ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリジメチルシロクサン(PDMS)、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸、各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン(VDF/TrFE)共重合体、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン(VDF−TeFE)等の強誘電性高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン−11等の極性高分子等の圧電性高分子など種々の高分子材料である。
絶縁性ポリマーは、あるいは、有機または無機のシリケートガラスでも良く、この場合液状またはゲル状のシリケートガラス中へインプリントし、その後シリケートガラスを硬化(固化)させる。尚、ポリマーの場合硬化させる方法として紫外線等の電磁波を用いる方法でも良い。
絶縁性ポリマー1402が硬化した後、モールド支持基板1414を取り外す。磁性体1405の場合は、接着層1412がなく、電磁石機能をなくせば容易に分離できる。接着層1412を用いている場合は、接着層1412を熱可塑性樹脂としその軟化(溶融)温度T1412より高い温度にすれば容易にモールド支持基板1414をモールド基板1405から取り外すことができる。次にプロセス温度をT1406以上の温度に保持し、モールドパターン1406を溶融(軟化)させる。このとき開口部1410の充填材料も軟化溶融させる。溶融・軟化したポリマー1406は開口部1410から外部へ取りだす。外側を減圧状態にして吸い出せば容易にポリマー1406を取りだすことができる。導電体膜1407の融点T1407としてプロセス温度よりも高い材料を使用すれば、導電体膜1407は融けることはない。
この結果、図40(c)に示すように、絶縁性ポリマー基板1402内に凹部1416(1416−1、2、3、4)を形成でき、これらの凹部1416によって基板側壁1402(1402−1、2、3、、4,5)が形成され、これらの基板側壁1402(1402−1、2、3、、4,5)の上面や側面(凹部1416の内側面でもある)、凹部1416の底部に導電体膜・配線1407(1407−1、2、3)が形成される。モールドパターン1406の外側面および上(底)面、モールド基板上に付着していた導電体膜・配線1407(1407−1、2、3)は、絶縁性ポリマー1402が硬化するときに、絶縁性ポリマー1402の表面(基板側壁1402−1、2、3、4、5の内側面や絶縁性ポリマー1402の上面や底面に付着し、モールドパターン1406が軟化・溶融されて外側へ取りだされた後にも残る。
この後、導電体膜1412をモールド基板上に積層し、所望の導電膜・電極・配線1412(1412−1、2、3、4、5)としてパターニングする。既に絶縁体基板1405にコンタクト孔1408が形成され、そのコンタクト孔1408を導電体膜で充填している場合には、この上に導電体膜1412を積層すれば良い。コンタクト孔1408内をポリマー等で充填していた場合にはポリマー等を軟化溶融して取り出せば良い。その後で導電体膜をコンタクト孔1408内に積層して、導電体膜・電極・配線1407と接続する。モールド基板1405にあらかじめ開口部1410やコンタクト孔1408を形成していない場合は、感光性膜を絶縁基板1405上に形成しパターニングして。その後、絶縁体基板1405をエッチング(ウエットまたはドライ)して開口部1410やコンタクト孔1408を形成する。
以上のようにして静電容量型の圧力センサを作製することができる。絶縁性ポリマーの基板側壁1402(1402−2、3、4)はその両側を凹部1416(1416−1、2、3、4)によって挟まれたダイヤフラムとなり、これらの隣接する凹部1416の圧力差によってダイヤフラムである絶縁性ポリマーの基板側壁1402が変形する。すなわち、基板側壁1402の上面を絶縁体(モールド)基板1405で、基板側壁1402の下面を絶縁性ポリマー1402の底部(1402B)によって規制されているが、その他の部分は規制されていないので、ダイヤフラムである絶縁性ポリマーの基板側壁1402が変形する。たとえば、基板側壁1402−2は、凹部1416−1の圧力P2(開口部1410を通じて圧力P2をかけることができる)と、凹部1416−2の圧力P1(開口部1410を通じて圧力P1をかけることができる)との圧力差によって変形する。基板側壁1402−3はその両側の凹部1416(1416−2と1416−3)の圧力はP1と同じなので変形しないが、凹部1416−2の電極間距離(凹部1416−2の幅W1)が変化するので、対向する電極1407−1および1407−2で測定されるコンデンサ容量が変化するので、圧力差P2−P1を演算できる。
同様に、基板側壁1402−4は、凹部1416−4の圧力P2(開口部1410を通じて圧力P2をかけることができる)と、凹部1416−3の圧力P1(開口部1410を通じて圧力P1をかけることができる)との圧力差によって変形する。基板側壁1402−4はその両側の凹部1416(1416−2と1416−3)の圧力はP1と同じなので変形しないが、凹部1416−3の電極間距離(凹部1416−3の幅W2)が変化するので、対向する電極1407−3および1407−4で測定されるコンデンサ容量が変化するので、圧力差P2−P1を演算できる。
あるいは、凹部1416−1および1416−3を圧力P2とすれば、基板側壁1402−2と1402−3は互いに逆方向に変更する。たとえば、P1>P2のときは、基板側壁1402−2と1402−3は凹部1416−2を膨らます方向へ変形し、P1<P2のときは、基板側壁1402−2と1402−3は凹部1416−2を窪ませる方向へ変形する。従って、対向する電極1407−1および1407−2で測定されるコンデンサ容量が上記よりも大きく変化するので、圧力差P2−P1を演算でき、しかも感度が高まる。
このように本発明の構造を用いれば、圧力センサにも適用できる。基板側壁に抵抗を形成すればピエゾ抵抗を用いた圧力センサも作製できる。また、図40(d)で示すP1またはP2が印加されるどちらかの開口部1410を閉じれば(開口部にたとえばガラス基板を付着させる。)P1かP2の圧力を凹部内に閉じ込めることができるので、絶対圧センサも作製できる。尚、図40に示した圧力センサは、半導体基板に凹部を形成し、その凹部に図40で説明した絶縁性ポリマーを形成すれば、その凹部内に作製することができる。これまでに明細書の中で説明した内容(構造、プロセス等)は、圧力センサにも適用できることは言うまでもない。
インプリントモールド法によって、ポリマー中に凹部または貫通孔(貫通溝)を形成する場合において、ポリマーに圧電性ポリマーを用いることによって、コンデンサの容量変化を検出できるだけでなく、ダイヤフラムとしての基板側壁の変形による電荷の分極による電圧変化を測定することができる。従って、これらの両方から音波や力量(加速度、角加速度、圧力)の大きさおよび向きを検出することができる。たとえば、図16において、ポリマー615は圧電性ポリマーであると考えれば良い。このとき、基板側壁615−1において、電極は片側625−2だけを形成しているが、凹部621−1側の基板側壁615−1の側面にも形成する(この電極を625−6とする)。625−2および625−6は圧電体膜である基板側壁625−2の側面に形成された電極であり、互いにつながってはいない。基板側壁625−2の変形によって圧電体膜625−2の側面に生じた電荷によって、導電体膜電極625−2および625−6の間で電位差が生じるので、その電位を検出することにより、音波や力量(加速度、角加速度、圧力)の大きさおよび向きを検出することができる。尚、基板側壁615−2においても、凹部621−1側の基板側壁615−2の側面にも形成する。このように、凹部621−2や621−3を容量空間としたコンデンサの容量変化だけでなく、圧電体膜基板側壁615−1や615−2の両側面に生じた電位差変化からも、音波や力量(加速度、角加速度、圧力)の大きさおよび向きを検出することができるので、感度や精度を高めることができる。
圧電性ポリマーは、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアミノ酸、キラル高分子系圧電性ポリマー、強誘電性液晶など種々の圧電性ポリマーである。図36〜図40に示した図や説明、その他の明細書で示したポリマーを圧電性ポリマーとすることによって、上記のような圧電性による効果を利用して、音波や力量(加速度、角加速度、圧力)の大きさおよび向きを検出することができるので、感度や精度を高めることができる。圧電性ポリマーを用いれば、本発明のデバイスをスピーカーとして使用することもできる。
以上説明したように、本発明の貫通孔または凹部を基板内に形成し、これらの間に挟まれた基板側壁の変形を用いた力量センサ(加速度センサ、角速度センサ、圧力センサ等)またはマイクロホンまたはスピーカは、従来の基板面に平行に作製されたものに比較すればサイズを非常に小さくできる。だとえば、300μm×300μmのダイヤフラムが必要であれば、従来は、少なくとも0.5mm×0.5mmのチップサイズが必要であったが、ダイヤフラムを基板の厚み方向に作製する本発明の場合は、基板を平面的にみれば300μm×10μmのダイヤフラムを2つ並べ、中央の貫通孔の大きさ30μm、容量空間の貫通孔幅は20μm×2個となり、約0.4mm×0.1mmの大きさとなる。従って、基板平面の占有面積は、約1/6になる。同じ基板で作製すれば、6倍の取れ個数になるから、製造コストが約1/6になる。しかもチップサイズが小さくなるので、実装コストも下がる。面積も小さくなっているため、IC内に組み込んでもICのチップサイズは余り大きくならないから、損失コストも小さくなる。しかも、基板611としてシリコン基板等の半導体基板を用いると、同じ基板内またはチップ内に圧力センサーとそれをコントロールあるいは演算処理する機能やその他の種々の機能を持つICとを一緒に搭載することができる。さらに、従来法に比較すれば、実装面積を小さくできるので実装サイズを小型にでき、接続配線を少なくできるので、プロセスも極めて簡単になり、製造コストも大幅に低減でき、信頼性向上および歩留まり向上を実現できる。
本発明は、電気二重層キャパシタにも使用できる。図41は、電気二重層キャパシタの構造を示す図である。基板2011に貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)を形成し、これらの間に基板側壁2011(2011−1、2、3、4、5、6)が形成される。基板2011が導電体基板の場合には、基板2011の第1面(表面)から第2面(裏面)に貫通する貫通孔として、隣接する基板側壁は導通しないようにする。基板2011が絶縁体基板の場合には、基板側壁2011(2011−1、2、3、4、5、6)の側面に導電体膜を形成し、貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)内で対向する側面の導電体膜は導通しないようにパターニングする。貫通孔の場合は、基板2011の両面(第1面および第2面)に薄板(絶縁基板)2012および2013を付着する。凹部の場合には、凹部が開口する面側に薄板(絶縁基板)(たとえば、2013)を付着する。貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)に電解液や電解質ゲルを入れるか、または固体電解質で封入する。電解液や電解質ゲルを入れる場合は、たとえば、電解液や電解質ゲルに浸漬しながら基板2011の両面(第1面および第2面)は薄板(絶縁基板)を付着する。あるいは、基板2011の両面(第1面および第2面)に薄板(絶縁基板)を付着した後、各貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)を覆う薄板(絶縁基板)に開口孔をあけて、その開口孔から電解液や電解質ゲルを入れ、各貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)が電解液で満たされた後に開口孔を塞げば、電解液や電解質ゲルが漏洩することはない。
固体電解質は、たとえば高分子(ポリマー)固体電解質である。貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)を形成した後、軟化したポリマーまたは溶融したポリマーを塗布やディップやディスペンスやスクリーン印刷などして貫通孔または凹部2014(2014−1、2、3、4、5)内にポリマーを充填し、熱処理してポリマーを固化する。その後基板2011の両面または片面に薄板(絶縁基板)を付着する。この結果、隣接する基板側壁は互いにコンデンサ(キャパシタ)を構成しており、電気二重層キャパシタとなる。1つおきの基板側壁を電気接続することによって、キャパシタ容量を増大することができる。たとえば、図41において、基板側壁2011−2と2011−4を接続し電極Aにまとめ、対向電極側は2011−3と2011−5を接続し電極Bにまとめる。図41に示すような電気二重層キャパシタは超小型のキャパシタを実現できる。
図42は、別の電気二重層キャパシタの構造を示す図である。図42において、シリコン基板等の半導体基板2021内に凹部2022を形成し、その凹部2022にポリマー2021を充填する。このポリマー2021内に凹部2024(2024−1、2、3)を形成し、さらに凹部2024(2024−1、2、3)の内側面に導電体膜電極2025を作成する。たとえば、凹部2024−1において、対向する内側面に導電体膜・電極2025−1−1および2025−1−2が形成される。この凹部内に電解液や電解質ゲルあるいは固体電解質2027を形成し、半導体基板2021の第1面(表面)に薄板(絶縁基板)2028を付着させて凹部2022を塞ぐ。この結果、凹部2022−1において、対向する内側面電極2025−1−1および2025−1−2と電解質2027で電気二重層キャパシタが構成される。多数の凹部2024が形成されるので、対向する電極同士を接続して電極AとBとにまとめることによって、キャパシタ容量を増大することができる。尚、ポリマー内に凹部を形成する場合は、インプリント法を用いて凹部を形成することもできる。図42に示す電気二重層キャパシタは半導体基板内に形成することができるので、電気二重層キャパシタからの放電電圧を用いて、半導体基板内に作成したICやトランジスタを動かすことができ、超小型の自立デバイス(1チップだけで動作するデバイス)を作製できる。
図43は、さらに別の電気二重層キャパシタの構造を示す図である。図43において、シリコン基板等の半導体基板2031内に凹部2032を形成し、凹部2032内に電解質2033を充填する。その凹部2032内に、別基板(絶縁体基板)2035に電極パターン2036(2036−1、2、3、4、5、6)を形成しておき、その別基板(絶縁体基板)2035を挿入する。半導体基板2031内には多数の凹部2032が形成されているので、それぞれの凹部に合わせてアライメントしながら、多数の電極パターン2036を形成した別基板(絶縁体基板)2035を挿入する。別基板(絶縁体基板)2035はそのまま半導体基板2031に付着させる。従って、電極パターン2036(2036−1、2、3、4、5、6)の長さは、凹部深さより短くする必要がある。電極パターン2036(2036−1、2、3、4、5、6)の先端側が自由端となり、凹部2032へ挿入時に変形する可能性がある場合は、電極パターン2036(2036−1、2、3、4、5、6)の先端側にも絶縁体基板2037を付着させても良い。その場合、電解質2033が電極パターン2036(2036−1、2、3、4、5、6)の間に入り込みにくい場合は、絶縁体基板2037に適度に開口部を設ければ良い。電解質2033が電解液や電解質ゲルでそのまま使用するときはこのまままで良いが、電解質として固体電解質を用いる場合は、電解質として高分子(ポリマー)材料を使用し、電解質2033を充填する場合には、液状にしたり溶融状態にして、別基板(絶縁体基板)2035を挿入し、その後熱処理して電解質2033を固化する。この結果、隣接する電極2036はそれらの間に電解質が入り込んだ電気二重層キャパシタを形成する。図43に示す電気二重層キャパシタは半導体基板内に形成することができるので、電気二重層キャパシタからの放電電圧を用いて、半導体基板内に作成したICやトランジスタを動かすことができ、超小型の自立デバイス(1チップだけで動作するデバイス)を作製できる。図43に示す二重層キャパシタは、基板2031として絶縁基板を使用すれば、単体の電気二重層キャパシタとして使用することもできる。
電解液または電解質ゲルは、たとえば6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩等の無機塩水系電解、硫酸、水酸化カリウム溶液、あるいは、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、テトラフルオロアンモニウムホウ酸塩、テトラエチルアンモニウムテトラフロロボレート(Et4NBF4)、テトラメチルアンモニウムテトラフロロボレート、テトラプロピルアンモニウムテトラフロロボレート、テトラブチルアンモニウムテトラフロロボレート、トリメチルエチルアンモニウムテトラフロロボレート(Et3MeNBF4)のような4級アンモニウム塩、トリエチルメチルアンモニウムテトラフロロボレート、ジエチルジメチルアンモニウムテトラフロロボレート、N−エチル−N−メチルピロリジニウムテトラフロロボレート、N,N−テトラメチレンピロリジニウムテトラフロロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロロボレートのようなアンモニウムテトラフロロボレート類、テトラエチルアンモニウムパークロレート、テトラメチルアンモニウムパークロレート、テトラプロピルアンモニウムパークロレート、テトラブチルアンモニウムパークロレート、トリメチルエチルパークロレート、トリエチルメチルアンモニウムパークロレート、ジエチルジメチルアンモニウムパークロレート、N−エチル−N−メチルピロリジニウムパークロレート、N,N−テトラメチレンピロリジニウムパークロレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムパークロレートのようなアンモニウム過塩素酸塩類、テトラエチルアンモニウムヘキサフロロフォスフェートのようなホスホニウム塩、テトラメチルアンモニウムヘキサフロロホスフェート、テトラプロピルアンモニウムヘキサフロロホスフェート、テトラブチルアンモニウムヘキサフロロホスフェート、トリメチルエチルヘキサフロロホスフェート、トリエチルメチルアンモニウムヘキサフロロホスフェート、ジエチルジメチルアンモニウムヘキサフロロホスフェートのようなアンモニウムヘキサフロロホスフェート類、リチウムヘキサフロロホスフェート、リチウムテトラフロロボレート等の有機電解質である。
これらの有機電解質の溶媒は、たとえば非プロトン性有機溶媒、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートのような鎖状カーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのような環状カーボネート類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトンなどのラクトン類、ジメチルスルフォキシド、ジエチルスルフォキシドなどのスルフォキシド類、ジメチルフォルムアミド、ジエチルフォルムアミドなどのアミド類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンやジオキソランのような環状エーテル類、ジメチルスルホラン、スルホランであり、一種または二種以上の混合溶媒として用いることもできる。
固体電解質は、たとえばポリエチレンオキサイド系重合体とアルカリ金属塩を複合した高分子固体電解質、ポリ酸化エチレンの架橋ネットワーク中に金属塩及び非プロトン性溶剤からなる電解液が含浸された高分子固体電解質、オキシアルキレン基を含有する(メタ)アクリレートプレポリマーから得られる重合体及び電解質からなる複合体を用いたイオン伝導性の高分子固体電解質、あるいはリン酸リチウム(LixPOy)、リン酸鉄リチウム(LixFey(PO4)z)、リン酸マンガンリチウム(LixMny(PO4)z)、リン酸ニッケルリチウム(LixNiy(PO4)z)、リン酸クロムリチウム(LixCry(PO4)z)などのリチウム酸化物又はリン酸塩、および硫化リンリチウム(LixPSy)などの硫化リン化合物等の無機固体電解質などを用いることができる。
電極は、公知の材料を使用でき、たとえばアルミニウム、金、白金、銅、鉄、クロム、亜鉛、タングステン、モリブデン、チタン、タンタル、ニッケル等の金属、あるいはこれらの合金、金属とシリコンの化合物である各種シリサイド、炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、低抵抗シリコン、導電性高分子(導電性高分子は、たとえば、ポリアニリン、ポリアセチレン及びその誘導体、ポリパラフェニレン及びその誘導体、ポリピロール及びその誘導体、ポリチエニレン及びその誘導体、ポリピリジンジイル及びその誘導体、ポリイソチアナフテニレン及びその誘導体、ポリフリレン及びその誘導体、ポリセレノフェン及びその誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフリレンビニレン、ポリナフテニレンビニレン、ポリセレノフェンビニレン、ポリピリジンジイルビニレン等のポリアリーレンビニレン及びそれらの誘導体等)を用いることができる。
図44は、電気二重層キャパシタの構造を平面的示した一実施例である。多数の平行平板型のキャパシタをそれぞれコンタクト孔を絶縁体基板(薄板)に形成してコンタクトして接続しても良いが。図44に示すように、キャパシタを構成する対向電極2042および2043を平行にしてスパイラル状に形成しておけば。コンタクトの取りだしは、AおよびBの2箇所だけとなる。スパイラル形状の対向電極2042および2043の間には電解液、ゲル状電解質、固体電解質等の電解質があり、これらで電気二重層キャパシタを構成する。スパイラル形状であるから非常に高密度のキャパシタを作製できる。そのスパイラル形状もチップ2041に合わせて、たとえば、図44に示すような矩形形状、あるいは円形形状、楕円形状、あるいは各種の曲線形状、あるいは適当な三角形以上の多角形状にすることもできる。従来の電気二重層キャパシタのように電極層や電解質を重ねて作製する必要がなく、電極(正極と負極)間の距離はほぼ一定に形成されるので短絡する危険性もなく信頼度の高い電気二重層キャパシタが作製される。従ってセパレータを配置する必要もないのでイオンのスムーズな移動が行なわれる。電解液やゲル状電解質だけでなく固体電解質の場合にも電極の周りを隙間なく電解質が覆うので、電極の周りに効率良く電気二重層が形成される。以上説明した様に、本発明を用いれば、非常に簡単なプロセスで超小型の電気二重層キャパシタを作製できる。さらに、本発明はこのような電気二重層キャパシタと同様の構造で二次電池にも使用できる。
図45は、圧電体基板に形成した貫通孔または凹部の間に形成された基板側壁の振動によって発生する電荷を用いた発電機を示す図である。圧電体基板2111内に貫通孔または凹部2115(2115−1、2、3)を形成する。貫通孔または凹部2115(2115−1、2、3)同士の間に基板側壁2111(2111−2、3)が形成され、さらに基板側壁2111(2111−2、3)の側面に導電体膜・電極2116(2116−1、2、3、4)が形成されている。基板2111の第1面(表面、上面)および第2面(裏面、下面)には薄板(絶縁体基板)2112、2113が付着され、基板側壁2111(2111−2、3)の上下面はこれらの薄板(絶縁体基板)2112、2113によって規制されている。貫通孔または凹部2115(2115−1、2、3)をカバーしている薄板(絶縁体基板)2112、2113には、必要に応じて振動波等を導入・導出する開口部2114(2114−1、2、3)や開口部2118が形成されている。凹部の場合には開口側に薄板2113を付着させるが、反対側は基板があるので、必ずしも薄板2112は付着させなくても良い。振動波Waが貫通孔または凹部2115(2115−1、2、3)に入ると圧電体基板側壁2111(2111−2、3)は振動し、この振動による変形で圧電体基板側壁2111(2111−2、3)の両面(両側面)に電荷が分極する。この電荷を圧電体基板側壁2111(2111−2、3)の両面(両側面)に形成した導電体膜・電極2116(2116−1、2、3、4)で取りだし(端子A、B)、コンデンサ等に蓄えることによって、発電することができる。尚、基板2111が圧電体基板ではない基板、たとえばシリコン等の半導体基板の場合でも、基板側壁上に絶縁膜、第1導電体膜・電極、圧電体膜、第2導電体膜・電極、をこの順で積層しパターニング(必要な場合)することによって、圧電体膜が振動によってその両面(両側面)に電荷を分極するので、その電荷を第1導電体膜・電極および第2導電体膜・電極で取りだす。この結果、コンデンサ等に蓄えることによって、発電することができる。尚、振動だけでなく、加速度や角速度や風や圧力変化によっても圧電体基板や基板は振動するので、発電することができる。また、加速度や角速度の場合には、前述したように、たとえば、凹部2115−2へ重い液体を入れることによって、発電効率を高めることができる。半導体基板を用いる場合には、発電機付きICを作製できるので外部から電気供給が不要になるというメリットがあり、さらに、発電状況をICでモニタリングすることもでき、より効率的な発電を行なうことが可能となる。
圧電体基板は、たとえば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、リチウムテトラボレート、チタン酸カルシウム、燐酸アルミニウム、石英、酒石酸カリウムナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電性ポリマー、窒化アルミニウム、燐酸ガリウム、ガリウムヒ素などである。圧電体膜は、上記の材料をPVD法やCVD法で形成した膜である。圧電体基板やその他の基板の凹部や貫通孔は、フォトリソ法+エッチング法、あるいはインプリント法を用いて形成できる。たとえば、液状またはゲル状の圧電性ポリマーや、上記の圧電性材料の微粒子を含む液状またはゲル状の物質に凹部や貫通孔形成用のモールドパターンを押しつけて固化させた後モールドを離したり消滅させたりして、圧電体基板内に凹部または貫通孔パターンを形成する。その後、導電体膜を積層し必要なパターニングをした後、必要な場合には保護膜としての絶縁膜を積層し、薄板(絶縁体基板)を付着させる。
図46は、基板内に形成した凹部に充填した圧電体ポリマー等内に凹部を形成し、その凹部間の圧電体ポリマー基板側壁を用いて作製した微小発電器を示す図である。基板2131内に凹部2132を形成する。基板はシリコン等の半導体基板、ガラス基板等の絶縁体基板、低抵抗シリコン基板やアルミ基板等金属基板等の導電体基板である。凹部2132内に圧電体ポリマー等2133を充填する。この充填は、圧電体ポリマーの塗布、スクリーン印刷、ディップ、スプレー等で形成できる。次にフォトリソ法+エッチング法あるいはインプリント法などで基板面に垂直(略垂直)な凹部2134(2134−1、2、3)を形成する。この凹部2134(2134−1、2、3)によって、ポリマー基板側壁2135(2135−1、2、3、4)が形成される。次に導電体膜を積層し、必要なパターニングを行ない、ポリマー基板側壁2135(2135−2、3)の側面に導電体膜・電極2136(2136−1、2、3、4)を形成する。これらの導電体膜・電極2136(2136−1、2、3、4)から同じ配線パターンで導電体膜・配線を引き出す。(端子をA,Bで示す)次に、薄板2137をポリマー基板2133の上面に付着させる。尚、この間に保護膜(絶縁膜)を積層し、導電体膜・電極2136を保護することもできる。ポリマー基板側壁2135(2135−2、3)の上面にも薄板(絶縁体基板)2137が付着しているので、ポリマー基板側壁2135(2135−2、3)は上面が薄板(絶縁体基板)2137によって、ポリマー基板側壁2135(2135−2、3)の下側はポリマー基板2133(凹部2134の底部のポリマー2133を全部除去したときには、基板2131)によって規制されている。凹部2134(2134−1、2、3)上をカバーしている薄板2137において、振動波を導入し、導出することなどの目的で、開口部2138を設けても良い。振動や加速度、各速度、圧力変動などによって、圧電体ポリマー基板側壁2136(2136−2、3)が振動し、その圧電体ポリマー基板側壁2136(2136−2、3)の変形によって、その圧電体ポリマー基板側壁2136(2136−2、3)の両側面に電荷が分極するので、その電荷を導電体膜・電極2136(2136−1、2、3、4)によって取り出し(端子A,Bへ導く)、コンデンサ等へ電荷を蓄えて発電できる。凹部内に充填する材料は圧電体ポリマーとして説明したが、圧電体材料を微粒子にして結合剤と溶剤を混ぜた液状またはゲル状にして凹部を充填しても良い。インプリント法の場合はこれにモールドを挿入して凹部を形成できる。
尚、ポリマー2133が圧電体ポリマーでなくとも、上述した様に凹部2134および基板側壁2136を形成した後に、基板側壁2136上に(必要なら絶縁膜)、第1導電体膜・電極、圧電体膜、第2導電体膜・電極、をこの順で積層しパターニング(必要な場合)することによって、圧電体膜が振動によってその両面(両側面)に電荷を分極するので、その電荷を第1導電体膜・電極および第2導電体膜・電極で取りだす。この結果、コンデンサ等に蓄えることによって、発電することができる。また、図45や図46で説明した内容において、基板やポリマーが圧電体材料である場合でも、さらに上述したように圧電体膜等を積層して、両方から電荷を取り出して効率を向上することもできる。
次に、ポリマーにインプリント法を用いて簡単に本発明の凹部パターンを形成する方法について説明する。液状またはゲル状のポリマーに凹部形成用のモールドを挿入し、熱処理を施しポリマーを固化させる。モールド材料をエッチングし、ポリマーをエッチングしない溶液またはエッチングガスを用いて、モールドをエッチングして消失させる。残った部分が凹部となる。この後、必要な薄膜形成と薄板付着を行なう。たとえば、ポリマーをポリテトラフルオロエチレン、モールド材料をガラスとして、フッ酸系溶液を用いればモールド材料だけをエッチングすることができる。また、モールドパターンに導電体膜を付着させたり、導電体膜の配線パターンを付着させておき、この導電体膜もエッチングしないがモールドをエッチングする溶液またはエッチングガスを用いれば、自動的に凹部内へ導電体膜や配線パターンを付着できる。たとえば、導電体膜を金膜とすれば良い。ここで、ポリマーの代わりに粒子状圧電体材料を結合剤および/または溶剤と混合した液状体やゲル状体を用いても良い。
たとえば、基板2131の厚みは約0.1mm〜2mm、凹部2132の深さは約0.01mm〜1.5mm、ポリマー内凹部2134の深さは約0.005mm〜1.4mm、薄板の厚みは約0,05mm〜2mmであるから、非常に微小な発電機(器)が作製できる。また、基板2131をシリコン等の半導体基板とすればICやトランジスタと一緒のチップに搭載でき、電気供給がなくてもICやトランジスタを動かすことができるので、非常に小さな実装部品を作製できる。たとえば、心臓ペースメーカーに適用すれば、心臓や血液や他の臓器の振動によって発電しながらペースメーカーを動かすことができるので、患者に負担のないものを実現できる。尚、本発明では、振動波を作り出すこともできる(マイクロホンと逆の動作で)ので、ペースメーカーとしての機能を1チップに集約することが可能となり、極微小(たとえば、1mm以下)のペースメーカーを実現可能となる。以上説明した様に本発明は、簡単な構造とプロセスと材料を用いて、微小発電機を作製できる。
尚、本発明の実施形態の説明において、説明をしなかったことで、他の部分で説明していることは、互いに矛盾しない限り適用できることは言うまでもない。