JP2018078147A - 磁気熱電素子および発電方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料選択の幅が広く、軟磁性材料を用いて作製することが可能である、異常ネルンスト効果を利用する熱電素子を提供する。【解決手段】異常ネルンスト効果を用いる磁気熱電素子が、一定の方向に磁化された軟磁性体からなる発電部2aと、発電部2aの磁化を固定する磁化固定部材2bと、を含む。【選択図】図1B
Description
本発明は磁気熱電素子および発電方法に関する。
エネルギー問題は人類の抱える大きな問題であり、環境中に存在するエネルギーを電力に変換する技術が強く求められている。特に、IoT(Internet of Things)社会を実現するためにはあらゆるデバイスに対する電力供給源の確保が大きな課題となっており、その観点から、環境中のエネルギーを電力供給源として活用する技術への期待は大きい。
環境中のエネルギーを電力に変換するデバイスとして、ゼーベック効果(Seebeck Effect:SE)を利用する熱電素子が世の中に広く知られている(非特許文献1,2)。ゼーベック効果とは、物体の温度差が電圧に変換される現象であり、一例としては、互いに接合された2つの異なる導体のうちの一方を加熱すると、熱流方向と同じ方向に起電力が生じる。ゼーベック効果を利用する熱電素子の起電力は、ゼーベック係数と温度勾配によって決まり、キャリアの種類(電子またはホール)によってゼーベック係数の符号、ひいては起電力の符号が異なる。このようなゼーベック効果を利用する熱電素子は既に実用化されているが、広く普及するまでには至っていない。ゼーベック効果を利用する熱電素子が普及しない原因は、一般的にPb,Bi,Teなど毒性の高い材料が用いられるため環境負荷が大きいこと、Teなどの希少金属が用いられるため高価であると共に供給が不安定であること、温度差の大きさのわりに発電量が小さいこと、構造が複雑であることなどが挙げられる。
ゼーベック効果に代わる熱電効果として、ネルンスト効果(Nernst Effect:NE)が知られている。これは、導体に温度勾配を生じさせた状態で、温度勾配方向(熱流方向)に交差(好ましくは直交)する方向に磁場を加えると、温度勾配方向と磁場方向の双方に直交する方向に起電力が生じる現象である。ネルンスト効果は、原理的にゼーベック効果よりも高効率であると言われている(非特許文献3)。実際に、ネルンスト効果の逆過程であるエッチングスハウゼン効果は、ゼーベック効果の逆過程であるペルチェ効果を凌ぐ効率が得られていることから、ネルンスト効果の効率の高さが証明されている(非特許文献4)。しかし、ネルンスト効果を発現させるためには強磁場が必要であることが大きな障害となり、ネルンスト効果を利用する熱電素子は未だ実用化されておらず、研究開発も活発ではない。
そこで、外部磁場ではなく材料の異方性磁化を利用する異常ネルンスト効果(Anomalous Nernst Effect:ANE)が注目されている。異常ネルンスト効果の定義は必ずしも統一されていないが、ここでは「磁性体の磁化方向に対して垂直な方向に温度勾配が存在するときに、磁化方向と温度勾配方向の双方に対して垂直な方向に起電力が生じる現象」と定義する。その起電力EANEは以下の式で表される。
EANE=QANE(μ0M×∇T)
QANE:異常ネルンスト係数
EANE:異常ネルンスト起電力
∇T:温度勾配
M:磁化
μ0:真空の透磁率
EANE=QANE(μ0M×∇T)
QANE:異常ネルンスト係数
EANE:異常ネルンスト起電力
∇T:温度勾配
M:磁化
μ0:真空の透磁率
異常ネルンスト効果はネルンスト効果と同じく、ゼーベック効果よりも高い効率が期待できる。近年、異常ネルンスト効果を利用する熱電素子として、FePtやMnGaからなる発電部を有する熱電素子が提案されている(特許文献1)。
熱電発電モジュール(熱電発電素子) ヤマハ株式会社 http://www.yamaha.co.jp/product/thermoelectric_cooler/generator/
THERMO GENERATION MODULE 株式会社KELK http://www.kelk.co.jp/generation/index.html
「熱電変換研究と核融合」 山口作太郎 Journal of Plasma and Fusion Research 19〜35頁 Vol.78,No.l January 2002
「4.4磁気効果応用素子」 環境調和型新材料シリーズ 熱電変換材料 公益社団法人日本セラミック協会・一般社団法人日本熱電学会編、2005年10月31日発行
特許文献1に開示されている異常ネルンスト効果を利用する熱電素子は、残留磁化を有する硬磁性体を用いて作製されており、材料選択の幅が小さい。
そこで、本発明の目的は、材料選択の幅が広く、軟磁性材料を用いて作製することが可能である、異常ネルンスト効果を利用する熱電素子と、それを用いる発電方法を提供することにある。
本発明の異常ネルンスト効果を用いる磁気熱電素子は、一定の方向に磁化された軟磁性体からなる発電部と、発電部の磁化を固定する磁化固定部材と、を含む。
本発明によると、軟磁性材料を用いて異常ネルンスト効果の大きい熱電素子を作製することができるため、材料選択の幅が広がる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本発明の第1の実施形態の磁気熱電素子を図1A,1Bに示している。図1Aは磁気熱電素子の平面図であり、図1Bは、磁気熱電素子の1対の積層体2とそれらの間の配線層3を含む領域を示す縦断面図である。この磁気熱電素子では、MgOなどからなる基板1の上に、複数の短冊状の積層体2が並列に(好ましくは互いに平行に並べて)配置されている。積層体2は、基板1上に形成された軟磁性体からなる発電部2aと、各発電部2aの上に積層された磁化固定部材である反強磁性体層2bとによって構成されている。発電部2aと反強磁性体層2bは、長手方向を有する同一の平面形状を有している。各発電部2aは、金などからなる配線層3によって直列に接続されている。配線層3の主要部は、各積層体2の長手方向(矢印Aの方向)と並列に(好ましくは平行に)延びている。配線層3の両端部はそれぞれ電極3aを構成している。
本発明の第1の実施形態の磁気熱電素子を図1A,1Bに示している。図1Aは磁気熱電素子の平面図であり、図1Bは、磁気熱電素子の1対の積層体2とそれらの間の配線層3を含む領域を示す縦断面図である。この磁気熱電素子では、MgOなどからなる基板1の上に、複数の短冊状の積層体2が並列に(好ましくは互いに平行に並べて)配置されている。積層体2は、基板1上に形成された軟磁性体からなる発電部2aと、各発電部2aの上に積層された磁化固定部材である反強磁性体層2bとによって構成されている。発電部2aと反強磁性体層2bは、長手方向を有する同一の平面形状を有している。各発電部2aは、金などからなる配線層3によって直列に接続されている。配線層3の主要部は、各積層体2の長手方向(矢印Aの方向)と並列に(好ましくは平行に)延びている。配線層3の両端部はそれぞれ電極3aを構成している。
発電部2aを構成する軟磁性体は強磁性体である。発電部2aは、それぞれの長手方向Aに交差(好ましくは直交)する一定の方向(矢印Bの方向)に磁化されており、この磁化は、発電部2aの上に形成されている反強磁性体層2bによって固定されている。発電部2aを構成する軟磁性体の一例としてはNiFeが挙げられ、反強磁性体層2bの一例としてはNiOが挙げられる。
このようにして作製された本発明の磁気熱電素子の異常ネルンスト効果を確認するために、図2に示すように、両電極3a間に外部配線4を介して電圧計5を取り付け、基板1の表面と裏面とに温度差を設けた。すなわち、何らかの発熱手段(図示せず)を用いて基板1の表面または裏面を加熱し、基板1の板面に垂直な方向(板厚方向)Cに温度勾配(熱流)を生じさせた。それによって、長手方向Aに交差する方向Bに磁化された軟磁性体からなる発電部2の長手方向Aと磁化方向Bとにそれぞれ交差(好ましくは直交)する方向Cに温度勾配が生じることにより、異常ネルンスト効果が発現し、磁化方向Bと温度勾配方向(熱流方向)Cとにそれぞれ交差する方向、すなわち発電部2aの長手方向Aに起電力が生じる。この起電力による電圧を電圧計5によって測定した結果を表1に示している。
異常ネルンスト効果が発現している複数の発電部2において同様に起電力が生じ、これらの発電部2が配線層3によって直列に接続されているため、磁気熱電素子全体として表1に示す電圧が発生している。
この磁気熱電素子の製造方法の一例について説明する。まず、図3に示すように、MgOなどからなる基板1の上に、厚さ5nmのNiFe薄膜(発電部2a)を積層し、さらにその上に、厚さ50nmのNiO薄膜(反強磁性体層2b)を積層する。次に、基板1上の発電部2aおよび反強磁性体層2bを一括して切削し、図4に示すように、幅が2mmで長さが15mmの長方形状の平面形状を有する短冊状の積層体2を、2mm間隔で並ぶように複数形成する。このように短冊状の複数の積層体2が形成された基板1を真空環境下におき、図5に示すように、発電部2aに対して、幅方向B(長手方向を横切る方向)に10kOeの磁場を印加しながら、210℃に加熱して3時間保持する。これにより、発電部2aを構成している軟磁性体であるNiFeを磁化する。それから、複数の発電部2aを電気的に直列に接続するように、Auからなる配線層3を形成する(図1A,1B参照)。配線層3の主要部は、短冊状の積層体2と積層体2の間に位置して積層体2の長手方向Aと並列に延びている。配線層3の両端部は、基板1の端部に位置し、幅広になって幅方向に延びる電極3aをそれぞれ構成している。
軟磁性体は、一般に、体積あたりの磁化が大きく、効率良く磁化して大きな異常ネルンスト効果を発現する磁気熱電素子を形成することができる。しかし、その一方で、軟磁性体は保持力が小さいため、異常ネルンスト効果を発現するための磁化を長期間に亘って維持できない可能性がある。そこで、本実施形態では、発電部2aを構成する軟磁性体に接触して軟磁性体と交換結合する反強磁性体層2bを磁化固定部材として設け、互いに重なり合う軟磁性体2aと反強磁性体層2bとによって2層構造の積層体2を形成して、磁気熱電素子を作製している。このように、MgOからなる基板1の上に形成された、発電部(軟磁性体)2aと磁化固定部材(反強磁性体層2b)とからなる2層構造の積層体2の磁化曲線(VSM:Vibrating Sample Magnetometer曲線)を図6に示している。図6に示すように、発電部2aを構成する軟磁性体(NiFe)と磁化固定部材である反強磁性体層2b(NiO)との交換結合磁界Hexは約65Oeである。すなわち、外部磁界が65Oe以下であれば、発電部2a(NiFe)の磁化が、予め固定された方向を向いたままに保たれる。従って、本実施形態の磁気熱電素子では、軟磁性体の本来の特性を活かして発電部2aを効率良く磁化して大きな異常ネルンスト効果の発現を可能にするとともに、大きな外部磁界が加わらない限り、反強磁性体層2bとの交換結合によって発電部2aの軟磁性体の磁化方向が維持されるため、長期間に亘って大きな異常ネルンスト効果を発現でき、起電力の向きや大きさが変化することはない。
発電部2aを構成する軟磁性体は前述したNiFeに限られず、Fe,Co,Ni,CoFe,CoNi,FeCoNi,FeSi,FeCoSi,FeSiAl,CoZrNb,CoTaC,FeCoSiB,CoSm,FeB,CoB,FeCoB,FeBC,FeSiB,FeSiBC,FeCoSiB,CoFeCrSiB,CoFeNiNbSiB,CoFeNiSiB,CoCrZr,FeNiPB,FeNiMoB,FeNiSiB,FeSiCrB,CoFeNiMoSiB,CoFeNiSiB,NiFeMoB,FeCuMB(MはSi,Nb,Ta,Mo,Zr,Hfなどから選択される),FeCuMSiB(MはNb,Ta,Mo,Zr,Hfなどから選択される),FeAuNbSiB,FeMB(MはHf,Zr,Nbなどから選択される),FeCuPCM(MはGe,Si,Moなどから選択される),FeAlSiNbB,FeGaSiNbB,FeCoCuMB(MはZrまたはHf),FeNbB,FeZrBなどであってもよい。これらの化合物の組成比は任意に決定すればよい。
磁化固定部材である反強磁性体層2bを構成する材料は、前述したNiOに限られず、適切なブロッキング温度(磁性体との交換結合が失われる温度、本実施形態では例えば200〜250℃程度)を有する反強磁性体であれば同様の効果が期待できる。具体的には、Cr2O3,Fe2O3,CoO,FeF2,CuFeS2,PtMn,IrMn,FeMn,PdMn,PdPtMn,NiMn,RhMn,CrAl,CrMnPt,CrMnIr,TbCo,MnN,MnVAl,NiMnAl,PtMnGa,RuMnGe,RuMnSiなどであってもよい。これらの化合物の組成比は任意に決定すればよい。ただし反強磁性体層2bの導電性が大きいと、起電力が発生しても発電部2aから外部に電力を取り出すことが困難になるため、反強磁性体層2bは絶縁体または半導体から構成されることがより好ましい。
本実施形態の磁気熱電素子の変形例を図7に示している。この磁気熱電素子は、2層構造の積層体6を有しており、積層体6は、基板1の上に形成された磁化固定部材である反強磁性体層6b(例えばNiO層)と、反強磁性体層6bの上にさらに積層された軟磁性体からなる発電部6a(例えばNiFe層)とからなる。すなわち、前述した構成(図1B参照)から、磁化固定部材(反強磁性体層)と発電部(軟磁性体)の積層方向(上下方向)の位置(積層順)を入れ替えた構成である。このように、2層構造の積層体2,6を構成する発電部(軟磁性体)2a,6aと反強磁性体層2b,6bは、どちらが基板1に接する側に設けられていても構わない。また、図8に示すように、積層体7が、基板1側から見て反強磁性体層(磁化固定部材)7b,軟磁性体層(発電部7a)、もう1つの反強磁性体層(磁化固定部材)7bの順番に積層され、1対の反強磁性体層7bによって軟磁性体層7aが挟まれた3層構造であってもよい。さらに、図示しないが、本実施形態の積層体は4層以上の多層構造であってもよい。
本発明の第2の実施形態の磁気熱電素子の要部を図9に示している。この磁気熱電素子では、MgOなどからなる基板1の上に、配線層3によって直列に接続されている軟磁性体からなる発電部8が形成され、基板1上で発電部8に隣接する位置に、硬磁性体からなる磁化固定部材である磁場バイアス層9が形成されている。複数の磁場バイアス層9は互いに並列に(好ましくは平行に)、かつ発電部8と並列に(好ましくは平行に)並べて配置されており、個々の発電部8は、隣り合う磁場バイアス層9同士の間にそれぞれ位置している。図9は、1対の磁場バイアス層9とそれらの間の発電部8を含む領域を示す縦断面図である。磁場バイアス層9を構成する硬磁性体は、発電部8と同じ方向Bに予め磁化されている。この構成によると、発電部8を構成する軟磁性体の磁化方向は、隣接する硬磁性体からなる磁場バイアス層9によって維持されるため、第1の実施形態と同様の効果が得られる。電力を効率よく外部に供給するために、磁場バイアス層9を構成する硬磁性体は絶縁体であるか、あるいは発電部8に対して電気的に絶縁されている。本実施形態によると、外部磁場変動に対する耐性に優れるという利点がある。磁化固定部材である磁場バイアス層9を構成する硬磁性体としては、FePt,CoPt,CoCrPt,FeCoCr,FeAlNiCo,SmCo,NdFeBMnAs,MnSb,MnBi,MnAl,MnGa,MnGe,PtMnBi,CrO2,CrTe,CdCrSeなどが挙げられる。これらの化合物の組成比は任意に決定すればよい。
本発明の第3の実施形態の磁気熱電素子を図10に示している。この磁気熱電素子では、MgOなどからなる基板1の上に、導電層3によって直列に接続されている軟磁性体からなる発電部8が形成され、基板1上で発電部8に隣接する位置に、軟磁性体層10aと反強磁性体層10bとからなる、磁化固定部材である2層構造の磁場バイアス層10が形成されている。磁場バイアス層10の軟磁性体層10aは、発電部8を構成する軟磁性体と同じ方向Bに予め磁化されており、反強磁性体層10bによって磁化が強く保持されている。発電部8を構成する軟磁性体の磁化方向は、隣接する磁場バイアス層10によって維持されるため、第1の実施形態と同様の効果が得られる。この構成では、磁場バイアス層10の反強磁性体層10bは絶縁性である必要はなく、導電性の材料であってもよい。
図11に示す本実施形態の変形例では、磁場バイアス層の軟磁性体層と反強磁性体層の積層方向(上下方向)の位置(積層順)が入れ替えられている。すなわち、この変形例の2層構造の磁場バイアス層11は、基板1の上に形成された反強磁性体層11b(例えばNiO層)と、反強磁性体層11bの上にさらに積層された軟磁性体層11a(例えばNiFe層)とからなる。このように、磁化固定部材である2層構造の磁場バイアス層9,11は、軟磁性体層9a,11aと反強磁性体層9b,11bのどちらが基板1に接する側に設けられていても構わない。
また、図12に示すように、磁化固定部材である磁場バイアス層12が、例えば、基板1側から見て反強磁性体層12b、軟磁性体層12a、もう1つの反強磁性体層12bの順番に積層され、1対の反強磁性体層12bによって軟磁性体層12aが挟まれた3層構造であってもよい。さらに、磁場バイアス層は4層以上の多層構造であってもよい。
このように、本発明では、発電部の磁化を固定するための磁化固定部材が設けられているため、発電部の磁化および磁化方向が長期間にわたって維持されやすく、発電部を軟磁性体によって構成することが可能である。言い換えると、磁化が失われやすいという軟磁性体の問題点を、磁化固定部材を設けることによって解消することにより、軟磁性体からなる発電部を実現している。そして、軟磁性体の、体積あたりの磁化が大きいという利点を活かして、効率良く発電部を磁化することができるとともに、硬磁性体に比べて結晶構造の自由度が大きいという利点を活かして、異常ネルンスト効果の発現に最適な結晶構造を選択できるという効果が得られる。その結果、本発明によると、異常ネルンスト効果の発現に有利な磁気熱電素子が実現する。
本発明によると、従来は採用が困難であった軟磁性体によって発電部を構成することにより、材料選択の幅が広がるため、異常ネルンスト効果の大きさ(効率)や、環境負荷の低さや、安価さ等の様々な要件を考慮して、最適な材料の発電部を有する磁気熱電素子を作製することが可能になる。
これらの磁気熱電素子を用いる発電方法について説明すると、軟磁性体からなる発電部2a,6a,7,8を、それらの長手方向Aに交差(好ましくは直交)する方向Bに予め磁化しておき、この発電部の磁化を、磁化固定部材によって固定する。そして、発電部に、発電部の長手方向Aと磁化方向Bとにそれぞれ交差(好ましくは直交)する方向Cの温度勾配を付与する。一例としては、磁気熱電素子の外部の何らかの設備や機器の廃熱を利用して、基板1の一方の面を加熱する。それによって異常ネルンスト効果を発現させ、発電部の長手方向Aに沿う起電力を発生させる。この電力は、配線層3および電極3aを介して取り出される。磁化固定部材は、図1B,3,4,7,8に示すように、発電部2a,6a,7aと積層されている反強磁性体層2b,6b,7bであってよい。また、磁化固定部材は、図9に示すように発電部8に隣接して配置されており発電部8と同じ方向に磁化されている硬磁性体からなる磁場バイアス層9であってもよい。さらに、磁化固定部材は、図10〜12に示すように、発電部8に隣接して配置されており発電部8と同じ方向Bに磁化されている軟磁性体層10a,11a,12aとその軟磁性体層10a,11a,12aと積層されている反強磁性体層10b,11b,12bとを含む多層構造の磁場バイアス層10,11,12であってもよい。
1 基板
2,6,7 積層体
2a,6a,7a,8 軟磁性体からなる発電部
2b,6b,7b 反強磁性体層(磁化固定部材)
3 配線層
3a 電極
4 外部配線
5 電圧計
6 積層体
9,10,11,12 磁場バイアス層(磁化固定部材)
10a,11a,12a 軟磁性体層
10b,11b,12b 反強磁性体層
A 長手方向
B 磁化方向
C 温度勾配方向(熱流方向)
2,6,7 積層体
2a,6a,7a,8 軟磁性体からなる発電部
2b,6b,7b 反強磁性体層(磁化固定部材)
3 配線層
3a 電極
4 外部配線
5 電圧計
6 積層体
9,10,11,12 磁場バイアス層(磁化固定部材)
10a,11a,12a 軟磁性体層
10b,11b,12b 反強磁性体層
A 長手方向
B 磁化方向
C 温度勾配方向(熱流方向)
Claims (18)
- 一定の方向に磁化された軟磁性体からなる発電部と、前記発電部の磁化を固定する磁化固定部材と、を含む、異常ネルンスト効果を用いる磁気熱電素子。
- 前記発電部は長手方向を有し、前記長手方向に交差する方向に磁化されている、請求項1に記載の磁気熱電素子。
- 複数の前記発電部が並列に配置されており、配線層によって電気的に直列に接続されている、請求項1または2に記載の磁気熱電素子。
- 前記磁化固定部材は、前記発電部と積層されている反強磁性体層である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気熱電素子。
- 前記反強磁性体層は絶縁体または半導体からなる、請求項4に記載の磁気熱電素子。
- 基板上に前記発電部が形成され、前記発電部の上に前記反強磁性体層が積層されている、請求項4または5に記載の磁気熱電素子。
- 基板上に前記反強磁性体層が形成され、前記反強磁性体層の上に前記発電部が積層されている、請求項4または5に記載の磁気熱電素子。
- 前記磁化固定部材は、前記発電部に隣接して配置されており前記発電部と同じ方向に磁化されている硬磁性体からなる磁場バイアス層である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気熱電素子。
- 前記磁化固定部材は、前記発電部に隣接して配置されており前記発電部と同じ方向に磁化されている軟磁性体層と前記軟磁性体層と積層されている反強磁性体層とを含む多層構造の磁場バイアス層である、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気熱電素子。
- 基板上に前記反強磁性体層が形成され、前記反強磁性体層の上に前記軟磁性体層が積層されて、前記磁場バイアス層が形成されている、請求項9に記載の磁気熱電素子。
- 基板上に前記軟磁性体層が形成され、前記軟磁性体層の上に前記反強磁性体層が積層されて、前記磁場バイアス層が形成されている、請求項9に記載の磁気熱電素子。
- 基板上に前記反強磁性体層が形成され、前記反強磁性体層の上に前記軟磁性体層が積層され、前記軟磁性体層の上にもう1つの反強磁性体層が積層されて、前記磁場バイアス層が形成されている、請求項9に記載の磁気熱電素子。
- 複数の前記磁場バイアス層が互いに並列に、かつ複数の前記発電部と並列に配置されており、個々の前記発電部は、隣り合う前記磁場バイアス層同士の間にそれぞれ位置している、請求項8から12のいずれか1項に記載の磁気熱電素子。
- 一定の方向に磁化された軟磁性体からなる発電部の磁化を、磁化固定部材によって固定することと、
前記発電部に、前記発電部の長手方向と磁化方向とにそれぞれ交差する方向の温度勾配を付与して、異常ネルンスト効果を発現させることと、を含む発電方法。 - 前記発電部を前記長手方向に交差する方向に予め磁化しておく、請求項14に記載の発電方法。
- 前記磁化固定部材として、前記発電部と積層されている反強磁性体層を用いる、請求項14または15に記載の発電方法。
- 前記磁化固定部材として、前記発電部に隣接して配置されており前記発電部と同じ方向に磁化されている硬磁性体からなる磁場バイアス層を用いる、請求項14または15に記載の発電方法。
- 前記磁化固定部材として、前記発電部に隣接して配置されており前記発電部と同じ方向に磁化されている軟磁性体層と前記軟磁性体層と積層されている反強磁性体層とを含む多層構造の磁場バイアス層を用いる、請求項14または15に記載の発電方法。
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JP2016217328A JP2018078147A (ja) | 2016-11-07 | 2016-11-07 | 磁気熱電素子および発電方法 |
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- 2016-11-07 JP JP2016217328A patent/JP2018078147A/ja active Pending
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