以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
まず、本発明の一実施形態による旋回駆動装置が組み込まれたショベルの全体構成及び駆動系の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る建設機械の側面図である。なお、図1においては、建設機械の一例としてショベルを示す。本発明の一実施形態による旋回駆動装置は、旋回体を旋回する機構を有する建設機械に組み込むことができる。
図1に示すショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、バケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
本実施形態に係るショベルには、電動機を用いた電動旋回用の旋回駆動装置及び油圧モータを用いた油圧旋回用の旋回駆動装置を用いることができる。以下、ショベルに電動旋回の旋回駆動装置が搭載される場合について説明する。
なお、図1に示すショベルは、旋回駆動装置に供給する電力を蓄積する蓄電装置を有するショベルである。しかしながら、本発明は、電動旋回を採用した任意のショベルに適用でき、例えば外部電源から電力が供給される電気駆動式ショベルにも適用できる。
図2は図1に示すショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太い実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細い実線でそれぞれ示されている。
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続されている。変速機13の出力軸には、油圧ポンプとしてメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系(蓄電装置)120が接続される。蓄電系120には、インバータ20を介して電動作業要素としての旋回用電動機21が接続されている。旋回用電動機21の出力軸21b(モータ軸)には、レゾルバ22、及び旋回減速機24が接続される。旋回減速機24の出力軸24Aにはメカニカルブレーキ23が接続される。旋回用電動機21と、レゾルバ22と、メカニカルブレーキ23と、旋回減速機24とにより、負荷駆動系として旋回駆動装置40が構成される。ここで、旋回用電動機21が上部旋回体3を旋回駆動するための旋回用電動モータに相当し、メカニカルブレーキ23が上部旋回体3に機械的にブレーキをかけておくブレーキ装置に相当する。
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続されている。
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、旋回機構2を旋回させるために操作装置26を操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うと共に、蓄電系120の昇降圧コンバータを駆動制御することによりキャパシタの充放電制御を行う。コントローラ30は、キャパシタの充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、蓄電系120の昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタの充放電制御を行う。また、コントローラ30は、後述のようにキャパシタに充電する量(充電電流又は充電電力)の制御も行なう。
上述のような構成のショベルによる作業では、上部旋回体3を旋回駆動するために、インバータ20を介して供給される電力により旋回用電動機21が駆動される。旋回用電動機21の出力軸21bの回転力は、旋回減速機24とメカニカルブレーキ23を介して旋回駆動装置40の出力軸40Aに伝達される。
図3は、図1に示すショベルに組み込まれる旋回駆動装置40の構成を示すブロック図である。上述のように、旋回駆動装置40は、駆動源としての電動モータである旋回用電動機21を含む。旋回用電動機21の出力軸側には旋回減速機24が接続される。
具体的には、旋回減速機24は、第1旋回減速機24−1及び第2旋回減速機24−2の2段構成を有する。第1旋回減速機24−1及び第2旋回減速機24−2は、それぞれ遊星減速機で構成される。より具体的には、第1段の第1旋回減速機24−1は、旋回用電動機21に組み付けられる。また、第1旋回減速機24−1の出力軸となる遊星キャリア46には、メカニカルブレーキ23としてのブレーキディスクが設けられる。また、第2段の第2旋回減速機24−2は、メカニカルブレーキ23を間に挟んで第1旋回減速機24−1に組み付けられる。そして、第2旋回減速機24−2の出力軸が旋回駆動装置40の出力軸40Aとなる。なお、図示はしないが、旋回駆動装置40の出力軸40Aは旋回機構2に接続され、出力軸40Aの回転力により旋回機構2が駆動される。
次に、図4を参照しながら、旋回駆動装置40の具体的な構成について説明する。なお、図4は、図3に示す旋回駆動装置の内部構造図である。
また、図4は旋回駆動装置40のうち、第1旋回減速機24−1及びメカニカルブレーキ23を構成する部分の断面図である。本実施形態では、第1旋回減速機24―1を構成する遊星減速機の太陽歯車42が、旋回用電動機21の出力軸21bに固定されている。太陽歯車42は3つの遊星歯車44のそれぞれに係合している。遊星歯車44のそれぞれは、ピン44aを介して第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する遊星キャリア46に回転可能に支持されている。そして、各遊星歯車44は、第1ギヤケース50の内面に形成された内歯歯車48に係合している。
内歯歯車48が形成された第1ギヤケース50は、旋回用電動機21のエンドプレート21aに固定されており、自ら回転することはできない。一方、出力軸を構成する遊星キャリア46は、第1ギヤケース50に対して、ベアリング56を介して回転可能に支えられている。第2ギヤケース52は、後述する変換アダプタ110を介して第1ギヤケース50に固定されている。
なお、上述の第1旋回減速機24−1は、各歯車を潤滑するための潤滑油が、密閉される構造を有する。この密閉は、エンドプレート21a、本体部50a、歯車連結部材50b(第2部材)、スプリング押さえ部材90(第1部材)によって行われる。本体部50a、歯車連結部材50b(第2部材)及びスプリング押さえ部材90(第1部材)は第1ギヤケース50を構成する。
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、旋回用電動機21の出力軸21bが回転して太陽歯車42が回転すると、遊星歯車44が回転(自転)する。遊星歯車44は、第1ギヤケース50を構成する歯車連結部材50bの内面に形成された内歯歯車48に係合されている。そして、遊星歯車44の回転力で内歯歯車48が形成された歯車連結部材50bが回転しようとする。ところが、歯車連結部材50bはスプリング押え部材90に固定されているので、回転することはできない。その結果、遊星歯車44を支持しながら自ら回転可能に支持されている遊星キャリア46の方が回転する。以上のような歯車作用により、旋回用電動機21の出力軸21bの回転が減速されて遊星キャリア46から出力される。
次に、メカニカルブレーキ23を構成するブレーキディスクの構造について説明する。ブレーキディスク60は、固定部である第1ギヤケース50を構成する本体部50aと出力軸である遊星キャリア46との間に形成される。遊星キャリア46の外周から遊星キャリア46の回転半径方向外側に向けてブレーキディスク60が延在する。ブレーキディスク60は、遊星キャリア46に対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能である。具体的には、ブレーキディスク60は、例えばスプライン接続のような接続構造を介して遊星キャリア46に接続されている。
ブレーキディスク60の上下両側には、ブレーキプレート62が配置されている。ブレーキプレート62は、固定部である本体部50aに対して回転はできないが、遊星キャリア46の軸方向には移動可能である。具体的には、ブレーキプレート62は、例えばスプライン接続のような接続構造を介して第2ギヤケース52の内面側に接続されている。上側のブレーキプレート62の上には、ピストン64が、遊星キャリア46の軸方向に移動可能な状態で配置されている。ピストン64はスプリング66により押圧されて常に上側のブレーキプレート62に押し付けられている。本実施形態は、スプリング66としてコイルスプリングを用いているが、小さな変位で高出力を得ることのできる多段重ねの皿バネを用いることもできる。
ブレーキプレート62とブレーキディスク60とは、遊星キャリア46の軸方向に移動可能である。そのため、上側のブレーキプレート62がピストン64により押圧されると、ブレーキディスク60は上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧される。ブレーキプレート62とブレーキディスク60の表面は摩擦係数の大きな被膜に覆われている。そして、ブレーキディスク60が上下のブレーキプレート62により挟まれて押圧されることで、ブレーキディスク60の回転を阻止しようとするブレーキ力がブレーキディスク60に作用する。また、ブレーキディスク60は遊星キャリア46に対して回転できないように接続されている。そのため、ブレーキディスク60に作用するブレーキ力が遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
ピストン64と本体部50aとの間には、作動油を供給可能な油圧空間68が形成され、油圧空間68にブレーキ解除ポート69が接続されている。また、ピストン64と本体部50aとの間にはOリング等のシール部材91が配置され、油圧空間68内の作動油が漏れ出ないようにシールしている。パイロットポンプ15から操作装置26、油圧ライン27a(図2参照)及びブレーキ解除ポート69を介して油圧空間68に油圧を供給すると、ピストン64が油圧により押し上げられて、ブレーキプレート62を押圧する力が無くなり、ブレーキは解除される。
以上のような構成の第1旋回減速機24−1において、本実施形態では、歯車連結部材50bの上面に凹部が形成され、該凹部の底面に複数の貫通孔が形成されている。この貫通孔のそれぞれに上述のスプリング66が挿入されている。各スプリング66の下端は、歯車連結部材50bの貫通孔から突出し、ピストン64に形成された穴の底面に当接している。そして、歯車連結部材50bの凹部には、スプリング押え部材90が嵌合している。スプリング押え部材90は、複数のボルト92により歯車連結部材50bに締め付けられて固定されている。
スプリング押え部材90が歯車連結部材50bの凹部内に固定される前は、各スプリング66の上端は凹部の底面から上方に突出している。したがって、スプリング押え部材90を歯車連結部材50bの凹部内に固定する際に、各スプリング66はスプリング押え部材90により押圧されて圧縮される。スプリング押え部材90を歯車連結部材50bの上面に固定すると、各スプリング66は、スプリング押え部材90とピストン64との間に挟まれて圧縮された状態となっている。このときの各スプリング66の復元力(スプリング力)が、ピストン64(すなわち、ブレーキプレート62)をブレーキディスク60に押し付ける力となり、遊星キャリア46に加わるブレーキ力となる。
スプリング押え部材90が歯車連結部材50bの凹部内に固定された状態では、スプリング押え部材90全体が凹部内に収容される。そのため、スプリング押え部材90は、旋回用電動機21のエンドプレート21a(フランジとも称する)に当接する歯車連結部材50bの合わせ面から突出することはない。したがって、歯車連結部材50bの合わせ面のみが旋回用電動機21のエンドプレート21aに当接する。ただし、スプリング押え部材90の上面にはOリング等のシール部材93が配置され、歯車連結部材50b内の遊星歯車44を潤滑・冷却する潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。また、スプリング押え部材90の下面にもOリング等のシール部材94が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。同様に、本体部50aと歯車連結部材50bとの間にもOリング等のシール部材95が配置され、スプリング66が収容された部分に充填された潤滑油が漏れ出ないようにシールしている。
次に、図5乃至図7を参照しながら、旋回駆動装置40における回転駆動力の伝達について説明する。なお、図5は、旋回用電動機が回転しているときの旋回駆動装置の状態を示す、要部を拡大した断面図である。また、図6は、旋回用電動機の回転が停止した直後の旋回駆動装置の状態を示す、要部を拡大した断面図である。また、図7は、旋回用電動機の回転が停止しているときの旋回駆動装置の状態を示す、要部を拡大した断面図である。
図5に示すように、第1旋回減速機24−1は、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、及び内歯歯車48を含む遊星歯車機構で構成される(第1歯車機構)。また、第2旋回減速機24−2は、太陽歯車82、遊星歯車84、遊星キャリア86、及び内歯歯車88を含む遊星歯車機構で構成される(第2歯車機構)。
第1旋回減速機24−1において、太陽歯車42は、旋回用電動機21の出力軸21bに固定され、遊星歯車44と係合する。遊星歯車44は、第1ギヤケース50を構成する歯車連結部材50bの内壁に形成された内歯歯車48と太陽歯車42との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第1旋回減速機24−1は、3つの遊星歯車44を有する。3つの遊星歯車44のそれぞれは、自転しながら公転することによって遊星キャリア46を回転させる。なお、遊星キャリア46は、第1旋回減速機24−1の出力軸を構成する。
また、本実施形態では、太陽歯車42及び3つの遊星歯車44のそれぞれは、はすば歯車で構成され、内歯歯車48は、はすば内歯車(不図示)で構成される。なお、はすば歯車は、やまば歯車を含む。やまば歯車は、ねじれ方向が逆向きのはすば歯車を組み合わせた構成を有するためである。はすば内歯車についても同様である。また、太陽歯車42及び3つの遊星歯車44のそれぞれは、平歯車に比べてかみ合い率の高い歯車であれば、はすば歯車以外の他の歯車が用いられてもよい。内歯歯車48についても同様である。この構成により、旋回駆動装置40は、旋回減速機24が発生させる騒音及び振動を低減させることができる。複数の歯が常時かみ合い滑らかな動きが実現されるためである。
第2旋回減速機24−2を構成する第2歯車機構のうち、太陽歯車82は、第1旋回減速機24−1の出力軸としての遊星キャリア46に固定され、遊星歯車84と係合する。遊星歯車84は、第2ギヤケース52の内壁に形成された内歯歯車88と太陽歯車82との間で自転しながら公転する。本実施形態では、第2旋回減速機24−2は、3つの遊星歯車84を有する。3つの遊星歯車84のそれぞれは、ピン84aを介して遊星キャリア86に回転可能に支持され、自転しながら公転することによって遊星キャリア86を回転させる。なお、遊星キャリア86は、第2旋回減速機24−2の出力軸を構成する。
また、本実施形態では、太陽歯車82及び3つの遊星歯車84のそれぞれは、平歯車で構成され、内歯歯車88は、内歯平歯車で構成される。第2旋回減速機24−2を構成する歯車は、第1旋回減速機24−1を構成する歯車に比べ回転速度が低く、騒音レベル及び振動レベルも低いためである。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、太陽歯車82及び3つの遊星歯車84のそれぞれは、平歯車に比べてかみ合い率の高いはすば歯車で構成されてもよい。内歯歯車88についても同様である。この構成により、旋回駆動装置40は、旋回減速機24が発生させる騒音及び振動をさらに低減させることができる。
このように、本実施形態では、旋回駆動装置40は、高速段である第1旋回減速機24−1がはすば歯車で構成され、低速段である第2旋回減速機24−2が平歯車で構成される。そのため、旋回駆動装置40は、騒音及び振動の低減を実現しながらも比較的低い製造コストで製造され得る。具体的には、旋回駆動装置40は、比較的高い回転速度のため比較的大きな騒音及び振動を発生させる第1旋回減速機24−1をはすば歯車で構成することによって騒音及び振動の低減を実現できる。そして、騒音及び振動の低減は、オペレータの疲労や不快感を低減させることができる。また、旋回駆動装置40は、比較的低い回転速度のため比較的小さな騒音及び振動しか発生させない第2旋回減速機24−2を平歯車で構成することによって、はすば歯車を採用する場合に比べ、製造コストの増大を抑制できる。なお、同様の効果を得るために、高速段である第1旋回減速機24−1がはすば歯車で構成され、低速段である第2旋回減速機24−2が平歯車で構成されてもよい。
上述の構成により、旋回駆動装置40は、旋回用電動機21の出力軸21bの回転速度を減じて出力軸40Aのトルクを増大させる。
具体的には、旋回駆動装置40は、図5に示すように、出力軸21bの時計回りの高速・低トルクの回転に応じて、遊星歯車44を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア46を時計回りに回転させる。そして、旋回駆動装置40は、遊星キャリア46の時計回りの回転に応じて、遊星歯車84を反時計回りに自転させながら時計回りに公転させ、遊星キャリア86、すなわち、出力軸40Aを時計回りに低速・高トルクで回転させる。出力軸21bが反時計回りに回転する場合も、各歯車の回転方向が逆になることを除き、同様である。
旋回駆動装置40は、旋回用電動機21のエンドプレート21a、本体部50a、歯車連結部材50b、スプリング押さえ部材90で密閉される空間SP1を有する。そして、出力軸21bには、図示しないオイルシールが装着され、遊星キャリア46にはオイルシール57が装着される。空間SP1は、太陽歯車42、遊星歯車44、遊星キャリア46、ブレーキディスク60、ブレーキプレート62、及びピストン64を収容し、細かいドットパターンで表される潤滑油LB1(第1潤滑油)が供給されている。また、空間SP1は、第1連通部72a及び第2連通部72bを介して第1検油管70aに接続される。さらに、空間SP1は、第3連通部72cを介してバッファタンク78に接続される。
具体的には、第1検油管70aは、第1連通部72a、本体部50aに形成される連通路を介して、空間SP1の下部領域と連通されている。また、第1検油管70aの上部領域は、第2連通部72b、スプリング押え部材90の内部に形成される連通路を介して、空間SP1の上部領域(以下「第1上部空間」という)と連通されている。また、バッファタンク78は、第3連通部72c、スプリング押え部材90の内部に形成される連通路を介して、第1上部空間と連通されている。
バッファタンク78が上記位置に配置されていることにより、旋回駆動装置40の静止時に、バッファタンク78に移動した第1潤滑油LB1を第1上部空間内に直ちに戻すことができる。これによって、上記太陽歯車42等は、潤滑油の供給を受けることができ、潤滑油不足を生じることはなく、歯車の焼き付きをより効果的に防止できる。
また、旋回駆動装置40は、第2ギヤケース52で密閉される空間SP2を有する。遊星キャリア86には、図示しないオイルシールが装着される。空間SP2は、太陽歯車82、遊星歯車84、及び、遊星キャリア86を収容し、粗いドットパターンで表される潤滑油LB2(第2潤滑油)が供給されている。なお、第2潤滑油LB2は、オイルシール57によって第1潤滑油LB1から隔離されている。また、第2潤滑油LB2は、第1潤滑油LB1と同じ種類の潤滑油であってもよく、異なる種類の潤滑油であってもよい。例えば、旋回駆動装置40は、高回転用の第1潤滑油LB1を、低回転用の第2潤滑油LB2とは異なる種類の潤滑油としてもよい。
従来構造の旋回駆動装置40を運転することにより、旋回減速機の内部の潤滑油は温度が上昇するため体積膨張を起こし、減速機内の上部領域である空気室の圧力が上昇する。この潤滑油の温度上昇は、旋回駆動装置40を静止させても、直ちに下がるわけではない。そのため、この上昇した圧力に伴い、旋回減速機内の潤滑油の油面が押し下がり、その分、検油管側に潤滑油が移動するという現象が生じる。
ところが、検油管側に移動した潤滑油によって減速機室は完全に密閉されるため、体積膨張により上昇した圧力が、空気室内において保持されることになる。その結果、旋回駆動装置40を静止させても、検油管内の潤滑油を減速機室内に直ちに戻すことができず、運転終了後、適当な時間を経過させないとオイル点検ができない。また、潤滑油のオイル点検時に検油管を開放するときに、潤滑油が吹き零れる恐れがある。
減速機内の空気室(第1上部空間)の空気抜きを行うため、空気抜き用のプラグを設けることも考えられるが、旋回駆動装置40を静止させる都度、プラグを取り外して該空気室の空気抜きを行うのは、オペレータにとって非常に煩わしい。
そこで、本実施形態に係る旋回駆動装置40は、第1検油管70a側に、空間SP1内の過渡な圧力上昇及び潤滑油の吹き零れを阻止する機構を設けている。具体的には、第1検油管70aの上部領域を大気圧に開放し、該上部領域と、空間SP1の上部領域(第1上部空間)を、第2連通部72bを介して連通している。そのため、第1上部空間内部の空気が、検油管70aの上部領域を介して外部に排出される。これによって、第1上部空間内部の圧力が低下し易くなり、第1検油管70a及びバッファタンク78内部の第1潤滑油LB1は、空間SP1内部に戻り易くなる。
第1検油管70a及びバッファタンク78内部の第1潤滑油LB1は、第1上部空間の圧力が低下することにより、何れからも同時に戻ろうとする。つまり、複数の経路から同時に戻る。つまり、一旦外部に排出された潤滑油が内部に戻ってくる経路が多ければ多いほど、素早く第1潤滑油LB1が戻り、直ちにオイル点検できる。今回の実施例では、第1検油管70a及びバッファタンク78から戻ってくるが、更に増やして3つ以上にして、戻り経路を増加させてもよい。
第2旋回減速機24−2については、第1旋回減速機24−1と基本的に構成が同じであるため、説明は省略する。
なお、第1連通部72a乃至第3連通部72cは何れも、絞り等によって潤滑油の流れが規制されない非規制状態でもよい。
また、遊星キャリア46には、ブレーキディスク60の半径方向内側から第1潤滑油LB1を供給できるように油路74が設けられる。油路74により、旋回駆動装置40は、ブレーキディスク60の表面に沿った第1潤滑油LB1の流れを形成でき、ブレーキディスク60を効率的に冷却できる。
なお、本実施形態では、2つのブレーキプレート62の間に1つのブレーキディスク60が配置されるが、複数のブレーキディスク60を用いる構成が採用されてもよい。具体的には、4つのブレーキプレート62のそれぞれの間に3つのブレーキディスク60のそれぞれが配置される構成が採用されてもよい。この場合、油路74は、遊星キャリア46の回転軸近くまで延び、1又は複数の開口を通じて太陽歯車42の下にある空間SP1の一部に接続されてもよい。
そして、旋回用電動機21が回転すると、図5に示すように、第1旋回減速機24−1用の歯車の遠心力により空間SP1内の第1潤滑油LB1がすり鉢状の油面を形成する。空間SP1内の第1潤滑油LB1は、回転する遊星キャリア46及びブレーキディスク60による上記遠心ポンプ作用により、空間SP1の上部領域(第1上部空間)に接続される第2連通部72b及び第3連通部72cに送り込まれる。具体的には、すり鉢状に形成された第1潤滑油LB1の油面の上面が、第2連通部72b及び第3連通部72cに到達することにより、第1潤滑油LB1が、第1検油管70a及びバッファタンク78にそれぞれ移動する。
旋回用電動機21の回転が停止すると、図6に示すように、すり鉢状の油面を形成していた空間SP1内の第1潤滑油LB1は、空間SP1内で水平な油面を形成する。そして、遊星キャリア46及びブレーキディスク60の回転による遠心ポンプ作用が消失する。そのため、第2連通部72b内の第1潤滑油LB1が第1上部空間に排出される。
そして、バッファタンク78内の第1潤滑油LB1は、第3連通部72cを通じて第1上部空間に排出されると共に、第1検油管70a内の第1潤滑油LB1は、油面が安定するまで、第1連通部72aを通じて空間SP1に排出される。
その結果、オペレータは、旋回駆動装置40の運転終了後、直ちに正確に、第1旋回減速機24−1内の第1潤滑油LB1のオイル点検を行うことができる。
なお、本実施形態においては、バッファタンク78の上部に、ブリーザー(不図示)を設けることにより、該バッファタンク78上部領域の圧力が過渡に上昇しないようにしている。
第2旋回減速機24−2においても、第1旋回減速機24−1と同様に、第2検油管70bが設けられている。具体的には、第2旋回減速機24−2には、第2検油管70bと空間SP2の下部領域を連通する第4連通部72dが配設されている。また、第2検油管70bの上部領域と空間SP2の上部領域(以下「第2上部空間」という)を連通する第5連通部72eが配設されている。そして、第2検油管70bの構造は、第1検油管70aの構造と基本的に同じであるため、第1旋回減速機24−1の場合と同様に、第2検油管70bに排出された第2潤滑油LB2を、空間SP2に円滑に戻すことが可能となる。これによって、第2潤滑油LB2のオイル点検を直ちに正確に行うことができる。
第2旋回減速機24−2の構造は、第1旋回減速機24−1と基本的に同じであるため、詳細な説明は省略する。
ところで、第1旋回減速機24−1と異なり、第2旋回減速機24−2には、バッファタンク78が接続されていない。これは、第2旋回減速機24−2には、空間SP2の上部領域(第2上部空間)を大きく確保することができるスペースがあるからである。そのため、第2潤滑油LB2の体積膨張分を、この第2上部空間で吸収することが可能であり、バッファタンクを設ける必要は無いからである(図4乃至図7参照)。なお、第2上部空間を小さくして、第2旋回減速機24−2の外部にバッファタンクを配設してもよい。
次に、旋回駆動装置40の静止時における初期油面の位置について説明する。以下では、第1旋回減速機24−1の内部に供給されている第1潤滑油LB1の初期油面の位置について説明する。第2旋回減速機24−2の内部に供給される第2潤滑油LB2の初期油面の位置については、第1旋回減速機24−1と基本的に同じであるため、説明は省略する。
第1歯車機構を構成する太陽歯車42、遊星歯車44、内歯歯車48のうち何れかの歯車の底面に浸かっている油面の位置をLminとし、上面に浸かっている油面の位置をLmaxとする。第1潤滑油LB1の初期油面L1は、LmaxとLminとの間に位置するように設定するのが好ましい。
これによって、旋回用電動機21の回転が停止している場合であっても、太陽歯車42及び遊星歯車44、内歯歯車48等の一部は、第1潤滑油LB1に浸かることになり、さらに効果的に歯車の焼き付きを防止できる。
なお、図5乃至図7においては、第2連通部72bは、第1歯車機構を構成する太陽歯車42等のうち何れかの歯車の上面よりも上の位置で第1旋回減速機24−1に接続している場合を図示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。第1連通部72aが接続されている位置より高い第1ギヤケース50の位置と、第1検油管70aの高い位置が接続されていればよい。
図5乃至図7においては、第2連通部72bは、初期油面L1よりも上方の位置で第1旋回減速機24−1に接続している場合を図示している。第2検油管70bと空間SP2の上部領域(第2上部空間)を連通する第5連通部72eについても、上述と同様の位置に接続している。
これは、該初期油面よりも下部の位置に第5連通部72eを設けると、無駄な潤滑油(第2潤滑油)がバッファタンク78内に流入してしまうからである。バッファタンク78は、潤滑油の体積膨張時に、該膨張分の潤滑油を吸収する機能を有する。そのため、潤滑油の体積膨張が生じていない旋回用電動機21が静止時(通常時)の潤滑油は流入させない方が好ましい。
さらに、本実施形態においては、第1検油管70aの上部領域は大気圧に開放ように構成されている。具体的には、上部が開口している筒状体70cを天板70dで塞ぎ、この天板70dに連通管70eを挿入している。そのため、第1検油管70a及びバッファタンク78内部の第1潤滑油LB1は、空間SP1内部に戻り易くなる。その結果、上記太陽歯車42等は、直ちに潤滑油の供給を受けることができ、潤滑油不足を生じることはなく、歯車の焼き付きをより効果的に防止できる。
なお、本実施形態においては、第1検油管70aを第1旋回減速機24−1の外部に配設しているため、第1潤滑油LB1を効率的に冷却でき、第1検油管70aの上部領域内の圧力を効率的に降下させることができる。
さらに、本実施形態では、第1検油管70aとバッファタンク78は互いに位置をずらすことができるように構成されている。
具体的には、バッファタンク78は、第1ギヤケース50を構成するスプリング押え部材90に配設され、第1検油管70aは、第1ギヤケース50を構成する本体部50aに配設されている。スプリング押え部材90及び本体部50aは着脱可能に、2箇所以上の接合位置(不図示)で接合されている。スプリング押え部材90の接合位置は、旋回電動機21の出力軸21b(モータ軸)を中心とした同一円周上に配置されている。本体部50aの接合位置は、スプリング押え部材90の接合位置と対応する位置に形成されており、スプリング押え部材90と本体部50aの各々の接合位置を合わせることによって、ボルト等の締結部122にて締結する。
上記接合位置は、隣接する前記接合位置間の円弧の長さが等しくなるように配置されている。
そのため、本体部50aとスプリング押え部材90の接合位置が合うように、旋回用電動機21の出力軸21bを中心として回転すれば、バッファタンク78と第1検油管70aの位置をずらすことができる。なお、第2連通部72bは、スプリング押え部材90から着脱することができ、バッファタンク78と第1検油管70aの位置をずらすときは、予め、第2連通部72bをスプリング押え部材90から取り外しておく。そして、ずらした後に、例えば、長い第2連通部72bを用意し、スプリング押え部材90に形成されている連通路と該第2連通部72bを接続する。
第1検油管70aと第2検油管70bも互いに位置をずらすことができるように構成されている。本体部50a及び第2ギヤケース52は着脱可能に、2以上の接合位置で接合されている。第2ギヤケース52は変換アダプタ110(図5乃至図8参照)を介して、本体部50aと接合されている。第2ギヤケース52及び変換アダプタ110の接合位置は、本体部50aの接合位置と対応する位置に形成されている。本体部50aと第2ギヤケース52の各々の接合位置を合わせることによって、ボルト等の締結部122にて締結する。
上記接合位置は、隣接する前記接合位置間の円弧の長さが等しくなるように配置されている。上述同様、本体部50aと第2ギヤケース52の接合位置が合うように、旋回用電動機21の出力軸21bを中心として回転すれば第1検油管70aと第2検油管70bの位置をずらすことができる。
旋回駆動装置40は以上のように構成されているため、各検油管70a、70b、バッファタンク78を、それぞれ独立して干渉しないような位置にずらすことができる。これによって、機種の異なるショベルに旋回駆動装置40を搭載するときに、他の部品の配置関係や配管状況等に応じて、適宜、検油管とバッファタンクの位置をずらすことができ、機種の異なるショベルに共通の旋回駆動装置40を採用することが可能になる。再設計から始めなくてもよいため、設計工数の削減につながる。
また、上述したように、旋回用電動機21の回転時に、すり鉢状に形成された第1潤滑油LB1の油面の上面が、第2連通部72bに到達することにより、第1潤滑油LB1が、第1検油管70aに移動する。そうすると、第1検油管70aは、第2連通部72bの接続位置に油面の位置が維持されるように油面の調整を行う。すなわち、第1検油管70aは、遠心ポンプ作用により、第1潤滑油LB1が第1検油管70aに移動するが、油面の調整を行うために、第2連通部72bから流入した第1潤滑油LB1は、第1連通部72aから流出し、空間SP1内に戻される。この現象は、空間SP1の上部領域(第1上部空間)の圧力の方が、空間SP1の下部領域の圧力よりも高くなるために生じる。
以上のように、第1潤滑油LB1は循環作用も有するため、潤滑油不足による歯車の焼き付きが生じるという現象をより効果的に防止することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説したが、本発明は、上述した実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
上述の実施形態では、旋回駆動装置40は、連通部を第1ギヤケース50及び第2ギヤケース52のそれぞれの内部に形成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、これら第1及び第2ギヤケース50、52のそれぞれの内表面に形成される連通溝を含んでいてもよい。
また、上述の実施形態では、上部が開口している筒状体70cを天板70dで塞ぎ、この天板70dに連通管70eを挿入することによって、第1検油管70aの上部領域を大気圧に開放する場合を、例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、第1検油管70aを、上部が開口している筒状体70cで構成し、第1検油管70aの上部領域を大気圧に開放してもよい。
また、旋回駆動装置40は、第1旋回減速機24−1及び第2旋回減速機24−2の2段構成を有する場合を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、高速段、中速段及び低速段の3段により構成されていてもよいし、3段以上の構成であってもよい。
また、本実施形態に係る旋回減速機は、遊星減速機を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、旋回減速機は、サイクロ減速機により構成されていてもよい。
また、本実施形態に係る旋回駆動装置40は、旋回モータの一例として旋回用電動機21により駆動される、電動駆動の電動旋回形旋回駆動装置を例示して説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、油圧モータにより駆動する油圧駆動形旋回駆動装置であってもよい。