JP2018074938A - 悪性骨軟部腫瘍の検出用キット又はデバイス及び検出方法 - Google Patents

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尚文 浅野
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Abstract

【課題】悪性骨軟部腫瘍を効果的に検出できる方法及び悪性骨軟部腫瘍マーカーの提供。【解決手段】悪性骨軟部腫瘍の検出用キット又はデバイス、並びに、検出方法を提供する。本発明は、被験体の検体中の所定のmiRNAと特異的に結合可能な核酸を含む、悪性骨軟部腫瘍検出用キット又はデバイス、並びに、該miRNAをin vitroで測定することを含む、悪性骨軟部腫瘍を検出する方法に関する。【選択図】図3

Description

本発明は、被験体において悪性骨軟部腫瘍への罹患の有無の検査のために使用される、特定のmiRNAと特異的に結合可能な核酸を含む悪性骨軟部腫瘍の検出用キット又はデバイス、及び当該核酸を用いて当該miRNAの発現量を測定することを含む悪性骨軟部腫瘍の検出方法に関する。
悪性骨軟部腫瘍は、全身の骨や軟部組織(脂肪、筋肉、神経など)から発生する原発性の悪性腫瘍の総称である。悪性骨軟部腫瘍の特徴は、その希少性と多様性にある。国立がん研究センターによるがん情報サービスによると、原発性悪性骨腫瘍の中では骨肉腫にかかる人が最も多く、日本では人口100万人に対して約2人が罹患するとされ、原発性悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は、人口10万人に3.6人が罹患するとされているが、他の悪性腫瘍に比べ、その発生頻度は比較的低い。悪性骨軟部腫瘍は、病理組織学的には50種類以上の亜型に分類される。一部の悪性骨軟部腫瘍は小児や若年成人に好発することが知られ、肉腫は小児がん全体の実に10%以上を占める。治療成績は、最近20年は大きな改善を認めておらず、強力な補助化学療法の施行などにもかかわらず、現在でも悪性骨腫瘍の約30%、悪性軟部腫瘍の約半数の症例は、その経過中に遠隔転移を生じ不幸な転帰を辿る。悪性骨軟部腫瘍は悪性腫瘍全体に占める割合は低いものの、小児や若年成人に多く発症することもあり、その治療成績を改善させることは社会的にも大きな意義がある。
悪性骨軟部腫瘍の診療における重大な問題点として、簡便で有用な診断マーカーが存在しないことが挙げられる。一般的な肉腫診断は、四肢体幹部における疼痛、腫脹や腫瘤形成などの自覚症状を契機に医療機関を受診する事から始まる。画像診断で腫瘍の存在を確認することは可能であるが、良悪性を含めた確定診断を得るには、生検および手術によって採取した腫瘍組織を使用する(侵襲的な)組織診断が必須であり、一部の亜型で診断利用されている特異的な融合遺伝子などの遺伝子検査もその採取組織から行う必要がある。そのため、自覚症状に乏しい場合や侵襲的な組織検査を躊躇することなどによって、早期診断の機会を逸し、進行した状態で診断される場合も多い。
近年、血液中のmiRNAの発現量は、様々な疾患において、診断バイオマーカーとして期待されている。悪性骨軟部腫瘍については、下記のように少数例での報告が散見されるが、いずれも研究段階であり、実用化に至ってはいない。
特許文献1では、A673細胞株でユーイング肉腫に特異的な遺伝子変異であるEWS/Fil1を抑制することでmiR−665の発現が抑制されることが示されている。
非特許文献1では、横紋筋肉腫患者を筋肉由来のmiRNAとされるmiR−206を用いて判別する可能性が示されている。
非特許文献2では、骨肉腫患者をmiR−196aとmiR−196bを用いて判別する可能性が示されている。
非特許文献3では、同じく骨肉腫患者をmiR−199−5pを用いて判別する可能性が示されている。
国際公開第2012/142199号
Biochem Biophys Res Commun. 2010 400(1):89-93. Int J Mol Sci. 2014;15(4):6544-55 Tumour Biol. 2015;36(11):8845-52.
本発明の課題は、新規の悪性骨軟部腫瘍マーカー、及び悪性骨軟部腫瘍を効果的に検出できる方法を提供することである。
上記のように、悪性骨軟部腫瘍の検出において、既存の血中腫瘍マーカーは存在せず、また研究段階のマーカーについては性能や検出の方法が具体的に示されていないため、これらを利用した場合には、健常体を悪性骨軟部腫瘍患者と誤検出することによる無駄な追加検査の実施や、悪性骨軟部腫瘍患者を見落とすことによる治療機会の逸失がおこる可能性がある。また、低侵襲に採取できる血液を用いた簡便かつ精度の高い非侵襲的診断マーカーの開発は臨床的に重要である。特に、予後の悪い悪性骨軟部腫瘍の早期発見・早期治療は治療成績向上のブレイクスルーとなることが期待される。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、低侵襲に採取できる血液から悪性骨軟部腫瘍の検出マーカーに使用可能な複数の遺伝子(miRNA)を見出し、これに特異的に結合可能な核酸を用いることにより、悪性骨軟部腫瘍を有意に検出できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)悪性骨軟部腫瘍マーカーである、miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、悪性骨軟部腫瘍の検出用キット。
(2)miR−1292−3pがhsa−miR−1292−3pであり、miR−8071がhsa−miR−8071であり、miR−619−5pがhsa−miR−619−5pであり、miR−665がhsa−miR−665であり、miR−718がhsa−miR−718であり、miR−1273g−3pがhsa−miR−1273g−3pであり、miR−1908−3pがhsa−miR−1908−3pであり、miR−3195がhsa−miR−3195であり、miR−4258がhsa−miR−4258であり、miR−4634がhsa−miR−4634であり、及び、miR−6836−3pがhsa−miR−6836−3pである、(1)に記載のキット。
(3)前記核酸が、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、(1)又は(2)に記載のキット。
(4)前記キットが、(1)又は(2)に記載のすべての悪性骨軟部腫瘍マーカーの群から選択される少なくとも2つ以上のポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な少なくとも2つ以上の核酸を含む、(1)〜(3)のいずれかに記載のキット。
(5)悪性骨軟部腫瘍マーカーである、miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、悪性骨軟部腫瘍の検出用デバイス。
(6)miR−1292−3pがhsa−miR−1292−3pであり、miR−8071がhsa−miR−8071であり、miR−619−5pがhsa−miR−619−5pであり、miR−665がhsa−miR−665であり、miR−718がhsa−miR−718であり、miR−1273g−3pがhsa−miR−1273g−3pであり、miR−1908−3pがhsa−miR−1908−3pであり、miR−3195がhsa−miR−3195であり、miR−4258がhsa−miR−4258であり、miR−4634がhsa−miR−4634であり、及び、miR−6836−3pがhsa−miR−6836−3pである、(5)に記載のデバイス。
(7)前記核酸が、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、(5)又は(6)に記載のデバイス。
(8)前記デバイスが、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスである、(5)〜(7)のいずれかに記載のデバイス。
(9)前記ハイブリダイゼーション技術が、核酸アレイ技術である、(8)に記載のデバイス。
(10)前記デバイスが、(5)又は(6)に記載のすべての悪性骨軟部腫瘍マーカーの群から選択される少なくとも2つ以上のポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な少なくとも2つ以上の核酸を含む、(5)〜(9)のいずれかに記載のデバイス。
(11)(1)〜(4)のいずれかに記載のキット又は(5)〜(10)のいずれかに記載のデバイスを用いて、被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体又は良性骨軟部腫瘍患者の対照発現量とを用いて、被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かを評価し、被験体における悪性骨軟部腫瘍の有無を検出することを含む、悪性骨軟部腫瘍の検出方法。
(12)前記被験体が、ヒトである、(11)に記載の方法。
(13)前記検体が、血液、血清又は血漿である、(11)又は(12)に記載の方法。
<用語の定義>
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
本明細書において「骨軟部腫瘍」とは、全身の骨や軟部組織において形成される任意の腫瘍をいう。
本明細書において「悪性骨軟部腫瘍」とは、全身の骨や軟部組織において形成される任意の悪性腫瘍をいい、悪性骨軟部腫瘍は肉腫ともいう。悪性骨軟部腫瘍は病理組織学的には50種類以上の亜型に分類され、具体的には、骨発生では、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫が、軟部発生では、脂肪肉腫、粘液線維肉腫、未分化多形肉腫、滑膜肉腫、横紋筋肉腫などが代表的である。
本明細書において「良性骨軟部腫瘍」とは、全身の骨や軟部組織において形成される任意の良性の腫瘍をいう。全身の骨や軟部組織の良性腫瘍としては、特に限定されないが、脂肪腫、神経鞘腫などが挙げられる。
ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAなどの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用法に従うものとする。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA、DNA、及びRNA/DNA(キメラ)のいずれも包含する核酸に対して用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、非コーディング(non−coding)RNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。本明細書において「合成DNA」及び「合成RNA」は、所定の塩基配列(天然型配列又は非天然型配列のいずれでもよい。)に基づいて、例えば自動核酸合成機を用いて、人工的に作製されたDNA及びRNAをいう。本明細書において「非天然型配列」は、広義の意味に用いることを意図しており、天然型配列と異なる、例えば1以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入及び/又は付加を含む配列(すなわち、変異配列)、1以上の修飾ヌクレオチドを含む配列(すなわち、修飾配列)、などを包含する。また、本明細書では、用語「ポリヌクレオチド」は「核酸」と互換的に使用される。
本明細書において「断片」とは、ポリヌクレオチドの連続した一部分の塩基配列を有するポリヌクレオチドであり、15塩基以上、好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の長さを有することが望ましい。
本明細書において「遺伝子」とは、RNA、及び2本鎖DNAのみならず、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各1本鎖DNAを包含することを意図して用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
従って、本明細書において「遺伝子」は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、マイクロRNA(miRNA)、及びこれらの断片、並びに転写産物のいずれも含む。また当該「遺伝子」は特定の塩基配列(又は配列番号)で表される「遺伝子」だけではなく、これらによってコードされるRNAと生物学的機能が同等であるRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログ若しくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「核酸」を包含する。かかる同族体、変異体又は誘導体をコードする「核酸」としては、具体的には、後に記載したストリンジェントな条件下で、配列番号1〜31のいずれかで表される塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「核酸」を挙げることができる。なお、「遺伝子」は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンを含むことができる。また、「遺伝子」は細胞に含まれていてもよく、細胞外に放出されて単独で存在していてもよく、またエキソソームと呼ばれる小胞に内包された状態にあってもよい。
本明細書において「エキソソーム」(別称「エクソソーム」)とは、細胞から分泌される脂質二重膜に包まれた小胞である。エキソソームは多胞エンドソームに由来し、細胞外環境に放出される際にRNA、DNA等の「遺伝子」やタンパク質などの生体物質を内部に含むことがある。エキソソームは血液、血清、血漿、リンパ液等の体液に含まれることが知られている。
本明細書において「転写産物」とは、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNAのことをいう。RNAポリメラーゼが遺伝子の上流にあるプロモーターと呼ばれる部位に結合し、DNAの塩基配列に相補的になるように3’末端にリボヌクレオチドを結合させていく形でRNAが合成される。このRNAには遺伝子そのもののみならず、発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンをはじめとする転写開始点からポリA配列の末端に至るまでの全配列が含まれる。本明細書における「転写産物」はまた、文脈上異なる場合を除き、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNA(例えばmiRNA前駆体)から生成されたRNA(例えばmiRNA)も含む。
また、本明細書において「マイクロRNA(miRNA)」は、特に言及しない限り、ヘアピン様構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、RISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与する、15〜25塩基の非コーディングRNA(成熟miRNA)を主として意図して用いられる。また本明細書で使用する「miRNA」は、文脈上、成熟miRNAのみを指している場合を除き、特定の塩基配列(又は配列番号)で表される「miRNA」だけではなく、当該「miRNA」の前駆体(pre−miRNA、pri−miRNA)、及びこれらと生物学的機能が同等であるmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログ若しくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体も包含する。かかる前駆体、同族体、変異体又は誘導体としては、具体的には、miRBase release 21(http://www.mirbase.org/)により同定することができ、後に記載したストリンジェントな条件下で、配列番号1〜31のいずれかで表される特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「miRNA」を挙げることができる。さらにまた、本明細書で使用する「miRNA」は、miR遺伝子(miRNA前駆体をコードする遺伝子)の遺伝子産物であってもよく、そのような遺伝子産物は、成熟miRNA(例えば、上記のようなmRNAの翻訳抑制に関与する15〜25塩基、又は19〜25塩基、の非コーディングRNA)又はmiRNA前駆体(例えば、前記のようなpre−miRNA又はpri−miRNA)を包含する。
本明細書において「プローブ」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
本明細書において「プライマー」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し、増幅するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
ここで、相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号1〜31のいずれかによって定義される塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチドの全長配列又はその部分配列に対して、A:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。また配列番号1〜31のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に「相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド」という記載も基本的に同様に理解される。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、核酸プローブやプライマー等のポリヌクレオチドが他の配列に対するよりも大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、ハイブリダイゼーションが行われる環境によって異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、核酸プローブ等のポリヌクレオチドに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。「ストリンジェントな条件」の具体例は、後述する。
本明細書において「Tm値」とは、ポリヌクレオチドの二本鎖部分が一本鎖へと変性し、二本鎖と一本鎖が1:1の比で存在する温度を意味する。
本明細書において「変異体」とは、核酸の場合、多型性、突然変異などに起因した天然の変異体、あるいは配列番号1〜31のいずれかの塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1又は2以上の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは当該塩基配列の全長配列又はその部分配列と約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す塩基配列からなるポリヌクレオチド変異体、あるいは当該塩基配列の全長配列又はその部分配列を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと上記定義のストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を意味する。
本明細書において「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を意味する。
本明細書において、ポリヌクレオチドの変異体は、部位特異的突然変異誘発法、PCR法を利用した突然変異導入法などの周知の技術を用いて作製可能である。
本明細書において「%同一性」は、上記のBLASTやFASTAによるタンパク質又は遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(Zheng Zhangら、2000年、J.Comput.Biol.、7巻、p203−214;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p403−410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、第85巻、p2444−2448)。
本明細書において「誘導体」とは、修飾核酸、非限定的に例えば、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体、PNA(peptide nucleic acid;Nielsen,P.E.ら、1991年、Science、254巻、p1497−500)、LNA(locked nucleic acid;Obika,S.ら,1998年、Tetrahedron Lett.、39巻、p5401−5404)などを含む核酸を意味する。
本明細書において、上記の悪性骨軟部腫瘍マーカーであるmiRNAの群から選択されるポリヌクレオチドと特異的に結合可能な「核酸」は、合成又は調製された核酸であり、具体的には「核酸プローブ」又は「プライマー」を含み、被験体中の悪性骨軟部腫瘍の存在の有無を検出するために、又は悪性骨軟部腫瘍の罹患の有無、罹患の程度、悪性骨軟部腫瘍の改善の有無や改善の程度、悪性骨軟部腫瘍の治療に対する感受性を診断するために、あるいは悪性骨軟部腫瘍の予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用される。これらには悪性骨軟部腫瘍の罹患に関連して生体内、特に血液、尿等の体液等の検体において配列番号1〜31のいずれかで表される転写産物(ポリヌクレオチド)又はそのcDNA合成核酸を特異的に認識し結合することのできるヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを包含する。これらのヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、上記性質に基づいて生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子を検出するためのプローブとして、また生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
本明細書で使用する「検出」という用語は、検査、測定、検出、判別、又は、判定支援という用語で置換しうる。また、本明細書において「評価」という用語は、検査結果又は測定結果に基づいて診断又は評価を支援することを含む意味で使用される。
本明細書で使用される「被験体」は、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類などの哺乳動物を意味する。悪性骨軟部腫瘍又は良性骨軟部腫瘍等の疾患に罹患した「被験体」を「患者」と称することがある。また、「健常体」もまた、このような哺乳動物であって、検出しようとするがんに罹患していない動物を意味する。
本明細書で使用される「P」又は「P値」とは、統計学的検定において、帰無仮説の下で実際にデータから計算された統計量よりも極端な統計量が観測される確率を示す。したがって「P」又は「P値」が小さいほど、比較対象間に有意差があるとみなせる。
本明細書において、「感度」は、(真陽性の数)/(真陽性の数+偽陰性の数)の割合を意味する。感度が高ければ悪性骨軟部腫瘍を早期に発見することが可能となり、完全ながん部の切除や再発率の低下につながる。
本明細書において、「特異度」は、(真陰性の数)/(真陰性の数+偽陽性の数)の割合を意味する。特異度が高ければ健常体を悪性骨軟部腫瘍患者と誤判別することによる無駄な追加検査の実施を防ぎ、患者の負担の軽減や医療費の削減につながる。
本明細書において、「精度」は、(真陽性の数+真陰性の数)/(全症例数)の割合を意味する。精度は全検体に対しての判別結果が正しかった割合を示しており、判別性能(検出性能)を評価する第一の指標となる。
本明細書において判定、検出又は診断等の対象となる「検体」とは、悪性骨軟部腫瘍の発生、悪性骨軟部腫瘍の進行、及び悪性骨軟部腫瘍に対する治療効果の発揮にともない本発明の遺伝子の発現が変化する組織及び生体材料を指す。具体的には脳組織及びその周辺の血管、髄膜、転移が疑われる臓器、皮膚、並びに血液、尿、髄液、唾液、汗、組織浸出液などの体液、血液から調製された血清、血漿、及びその他、便、毛髪などを指す。更にこれらの検体から抽出された生体試料、具体的にはRNAやmiRNAなどの遺伝子を用いる場合も上記検体を用いた判定、検出又は診断等に含まれる。
本明細書で使用される「hsa−miR−1292−3p遺伝子」又は「hsa−miR−1292−3p」という用語は、配列番号1に記載のhsa−miR−1292−3p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0022948)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−1292−3p遺伝子は、Morin RDら、2008年、Genome Res、18巻、p610−621に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−1292−3p」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−1292−3p」(miRBase Accession No.MI0006433、配列番号12)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−8071遺伝子」又は「hsa−miR−8071」という用語は、配列番号2に記載のhsa−miR−8071遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0030998)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−8071遺伝子は、Wang HJら、2013年、Shock、39巻、p480−487に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−8071」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−8071−1」(miRBase Accession No.MI0025907、配列番号13)及び「hsa−mir−8071−2」(miRBase Accession No.MI0026417、配列番号14)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−619−5p遺伝子」又は「hsa−miR−619−5p」という用語は、配列番号3に記載のhsa−miR−619−5p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0026622)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。miR−619−5p遺伝子は、Cummins JMら、2006年、Proc Natl Accad Sci USA、103巻、p3687−3692に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−619−5p」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−619−5p」(miRBase Accession No.MI0003633、配列番号15)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−665遺伝子」又は「hsa−miR−665」という用語は、配列番号4に記載のhsa−miR−665遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0004952)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−665遺伝子は、Berezniki Eら、2006年、Genome Res、16巻、p1289−1298に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−665」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−665」(miRBase Accession No.MI0005563、配列番号16)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−718遺伝子」又は「hsa−miR−718」という用語は、配列番号5に記載のhsa−miR−718遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0012735)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−718遺伝子は、Artzi Sら、2008年、BMC Bioinformatics、9巻、p39に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−718」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−718」(miRBase Accession No.MI0012489、配列番号17)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−1273g−3p遺伝子」又は「hsa−miR−1273g−3p」という用語は、配列番号6に記載のhsa−miR−1273g−3p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0022742)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−1273g−3p遺伝子は、Rexhmi Gら、2011年、Genomics、97巻、p333−340に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−1273g−3p」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−1273g−3p」(miRBase Accession No.MI0018003、配列番号18)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−1908−3p遺伝子」又は「hsa−miR−1908−3p」という用語は、配列番号7に記載のhsa−miR−1908−3p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0026916)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−1908−3p遺伝子は、Bar Mら、2008年、Stem Cells、26巻、p2496−2505に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−1908−3p」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−1908−3p」(miRBase Accession No.MI0008329、配列番号19)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−3195遺伝子」又は「hsa−miR−3195」という用語は、配列番号8に記載のhsa−miR−3195遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0015079)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−3195遺伝子は、Stark MSら、2010年、Plos One、5巻、e9685に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−3195」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−3195」(miRBase Accession No.MI0014240、配列番号20)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−4258遺伝子」又は「hsa−miR−4258」という用語は、配列番号9に記載のhsa−miR−4258遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0016879)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−4258遺伝子は、Goff LAら、2009年、Plos One、4巻、e7192に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−4258」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−4258」(miRBase Accession No.MI0015857、配列番号21)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−4634遺伝子」又は「hsa−miR−4634」という用語は、配列番号10に記載のhsa−miR−4634遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0019691)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−4634遺伝子は、Persson Hら、2011年、Cancer Res、71巻、p78−86に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−4634」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−4634」(miRBase Accession No.MI0017261、配列番号22)が知られている。
本明細書で使用される「hsa−miR−6836−3p遺伝子」又は「hsa−miR−6836−3p」という用語は、配列番号11に記載のhsa−miR−6836−3p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0027575)やその他生物種ホモログ若しくはオーソログなどを包含する。hsa−miR−6836−3p遺伝子は、Ladewig Eら、2012年、Genome Res、22巻、p1634−1645に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−6836−3p」の前駆体として、ヘアピン様構造をとる「hsa−mir−6836」(miRBase Accession No.MI0022682、配列番号23)が知られている。
成熟型のmiRNAは、ヘアピン様構造をとるRNA前駆体から成熟型miRNAとして切出されるときに、配列の前後1〜数塩基が短く、又は長く切出されることや、塩基の置換が生じて変異体となることがあり、isomiRと称される(Morin RD.ら、2008年、Genome Research、第18巻、p.610−621)。miRBase Release21では、配列番号1〜11で表される塩基配列の他に、数々のisomiRと呼ばれる配列番号24〜31で表されるポリヌクレオチド変異体及び断片も示されている。これらもまた、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を有するmiRNAの変異体又は断片として得ることができる。
すなわち、本発明の配列番号3、4、6で表される塩基配列若しくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、の変異体のうち、例えばmiRBase Release 21に登録されている最も長い変異体として、それぞれ配列番号24〜26で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、本発明の配列番号3、4、6、7、8で表される塩基配列若しくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、の変異体のうち、例えばmiRBase Release 21に登録されている最も短い変異体として、それぞれ配列番号27〜31で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。また、これらの変異体及び断片以外にも、miRBaseに登録された、配列番号3、4、6、7、8のmiRNAに対する数々のisomiRであるポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの例としては、それぞれ前駆体である配列番号12〜23のいずれかで表されるポリヌクレオチドが挙げられる。
配列番号1〜31で表される遺伝子(miRNA)の名称とmiRBase Accession No.(登録番号)を表1に記載した。
本明細書において「特異的に結合可能な」とは、本発明で使用する核酸、例えば核酸プローブ又はプライマーが、特定の標的核酸と結合し、他の核酸と実質的に結合できないことを意味する。
Figure 2018074938
本発明により、悪性骨軟部腫瘍を容易にかつ高い精度で検出することが可能になった。
例えば、患者の低侵襲性で採取できる検体(血液、血清など)中の上記miRNAの測定値を指標とし、容易に患者が悪性骨軟部腫瘍を有するか否かを検出(判別)することができる。
図1は、前駆体である配列番号12で表されるhsa−mir−1292−3pから生成されるhsa−miR−1292−3p(配列番号1)、及びhsa−miR−1292−5p(配列番号32)の塩基配列の関係を示す。 左図:学習検体群として選択した悪性骨軟部腫瘍患者(TEST_T、115人)、良性骨軟部腫瘍患者(TEST_B、125人)、及び健常体(TEST_HC、125人)のhsa−miR−1292−3p(配列番号1)の測定値を縦軸として、それぞれ表したものである。右図:テスト検体群として選択した悪性骨軟部腫瘍患者(VAL_T、120人)、良性骨軟部腫瘍患者(VAL_B、118人)、及び健常体(VAL_HC、150人)のhsa−miR−1292−3p(配列番号1)の測定値を縦軸として、それぞれ表したものである。 学習検体群として選択した悪性骨軟部腫瘍患者(TEST_T、115人)、良性骨軟部腫瘍患者(TEST_B、125人)、及び健常体(TEST_HC、125人)、テスト検体群として選択した悪性骨軟部腫瘍患者(VAL_T、120人)、良性骨軟部腫瘍患者(VAL_B、118人)、及び健常体(VAL2_HC、150人)のhsa−miR−1292−3p(配列番号1)、hsa−miR−8071(配列番号2)の測定値からフィッシャーの判別分析を用いて判別式を作成し(z=1.27×(hsa−miR−1292−3pの発現量)−0.74×(hsa−miR−8071の発現量)−3.05)、該判別式から得られた判別スコアを縦軸とし、検体群を横軸として表したものである。図中の点線は判別スコアが0となる両群を判別する判別境界を示す。
以下に本発明をさらに具体的に説明する。
1.悪性骨軟部腫瘍の標的核酸
本発明の上記定義の悪性骨軟部腫瘍検出用の核酸/ポリヌクレオチド(例えば核酸プローブ又はプライマー)を使用して、悪性骨軟部腫瘍又は悪性骨軟部腫瘍細胞の存在及び/又は不存在を検出するための、悪性骨軟部腫瘍マーカーとしての主要な標的核酸には、hsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及びhsa−miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上のmiRNAを用いることができる。標的核酸とする上記のmiRNAには、例えば、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むヒト遺伝子(例えば、それぞれ、hsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及び、hsa−miR−6836−3p)、その同族体、その転写産物、並びにその変異体及び誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。
ヒト検体における好ましい標的核酸は、配列番号1〜31のいずれかで表される塩基配列を含むヒト遺伝子、又はその転写産物であり、より好ましくは当該転写産物、例えばhsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及び、hsa−miR−6836−3pのmiRNA、又はその前駆体RNAであるpri−miRNA若しくはpre−miRNAである。
第1の標的遺伝子は、hsa−miR−1292−3p遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第2の標的遺伝子は、hsa−miR−8071遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第3の標的遺伝子は、hsa−miR−619−5p遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第4の標的遺伝子は、hsa−miR−665遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第5の標的遺伝子は、hsa−miR−718遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第6の標的遺伝子は、hsa−miR−1273g−3p遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第7の標的遺伝子は、miR−1908−3p遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第8の標的遺伝子は、hsa−miR−3195遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第9の標的遺伝子は、hsa−miR−4258遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第10の標的遺伝子は、hsa−miR−4634遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
第11の標的遺伝子は、hsa−miR−6836−3p遺伝子、その同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに本遺伝子又はその転写産物等の発現の変化が悪性骨軟部腫瘍のマーカーになりうるという報告は知られていない。
2.悪性骨軟部腫瘍の検出用の核酸
本発明においては、上記の悪性骨軟部腫瘍マーカーとしての標的核酸に特異的に結合可能な核酸を、悪性骨軟部腫瘍を検出(判別)又は診断するための核酸、例えば核酸プローブ又はプライマーとして用いることができる。
本発明において、悪性骨軟部腫瘍を検出するため、あるいは悪性骨軟部腫瘍を診断するために使用可能な核酸、例えば核酸プローブ又はプライマーは、上記の悪性骨軟部腫瘍マーカーとしての標的核酸、すなわちmiR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及びmiR−6836−3p遺伝子、例えばヒト由来のhsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及び、hsa−miR−6836−3p遺伝子、又はそれらの同族体、それらの転写産物、それらの変異体若しくは誘導体、それらの前駆体、あるいはそれらの任意の組み合わせの、存在、発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
上記の標的核酸は、健常体又は良性骨軟部腫瘍患者と比べて、悪性骨軟部腫瘍に罹患した被験体において、該標的核酸の種類に応じてそれらの発現量が増加するものもあれば、又は低下するものもある(以下、「増加/低下」と称する。)。それゆえ、上記の標的核酸に特異的に結合可能な本発明の核酸は、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体(例えばヒト)由来の検体(例えば血液等の体液)と健常体由来の検体について上記標的核酸の発現量を測定し、それらを比較することにより、悪性骨軟部腫瘍を検出するために有効に使用することができる。また、本発明の核酸は、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体(例えばヒト)由来の検体(例えば血液等の体液)と、良性骨軟部腫瘍患者由来の検体について上記標的核酸の発現量を測定し、それらを比較することにより、良性骨軟部腫瘍患者から判別して悪性骨軟部腫瘍を特異的に検出するために有効に使用することができる。
具体的には、悪性骨軟部腫瘍検出に用いる上記の核酸プローブ又はプライマー等の核酸は、配列番号1〜31のいずれかで表される塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド(例えば、DNA)とストリンジェントな条件(後述)でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、並びにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列に含まれる15以上、好ましくは17以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1又は複数のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。これらのポリヌクレオチドは、標的核酸である上記悪性骨軟部腫瘍マーカーを検出するための核酸プローブ及びプライマーとして使用できる。
さらに具体的には、本発明で使用可能な悪性骨軟部腫瘍検出用の核酸/ポリヌクレオチド、例えば核酸プローブ又はプライマーの例は、以下のポリヌクレオチド(a)〜(e)からなる群から選択される1又は複数のポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに、
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドの「15以上の連続した塩基を含むその断片」は、各ポリヌクレオチドの塩基配列に含まれる、例えば、連続する15からその配列の全塩基数未満、17からその配列の全塩基数未満、19からその配列の全塩基数未満、などの範囲の塩基数の配列を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。なお所定の塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチドはDNAである。
本発明で使用可能な上記のポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
DNA組換え技術及びPCR法は、例えばAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,John Willey&Sons,US(1993);Sambrookら,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,US(1989)などに記載される技術を使用することができる。
配列番号1〜11で表されるヒト由来の、hsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及び、hsa−miR−6836−3pは公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、この遺伝子をクローニングすることによって、本発明で使用可能な核酸プローブ又はプライマーとしてのポリヌクレオチドを作製することができる。
そのような悪性骨軟部腫瘍検出用の核酸プローブ又はプライマー等の核酸は、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。cDNAクローニング技術は、例えばmicroRNA Cloning Kit Wakoなどを利用できる。
ここで、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドは、miRNA又はその前駆体としては、生体内に存在していない。例えば、配列番号1で表されるhsa−miR−1292−3pの塩基配列は、配列番号12で表される前駆体hsa−mir−1292−3pから生成されるが、この前駆体は図1に示すようなヘアピン様構造を有しており、hsa−miR−1292−3p(配列番号1)及びhsa−miR−1292−5p(配列番号32)の塩基配列は互いにミスマッチ配列を有している。このため、配列番号1で表されるhsa−miR−1292−3pの塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドが生体内で自然に生成されることはない。同様に、配列番号2〜11のいずれかで表される塩基配列に完全に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドは、生体内に存在しない人工的な塩基配列を有する。ここで目的の塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとは、目的の塩基配列の全長配列に相補的な塩基配列のみからなるポリヌクレオチドを意味する。
3.悪性骨軟部腫瘍検出用キット又はデバイス
本発明はまた、悪性骨軟部腫瘍マーカーである標的核酸を測定するための、本発明において核酸プローブ又はプライマーとして使用可能なポリヌクレオチド(これには、変異体、断片、又は誘導体も含みうる。以下、検出用ポリヌクレオチドと称することがある)の1つ又は複数を含む悪性骨軟部腫瘍検出用キット又はデバイスを提供する。
本発明における悪性骨軟部腫瘍マーカーである標的核酸は、好ましくは、以下の群1から選択される1つ以上である:miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及びmiR−6836−3p。これらの悪性骨軟部腫瘍マーカーと組み合わせて、別の悪性骨軟部腫瘍マーカーを標的核酸としてさらに用いてもよい。
本発明のキット又はデバイスは、上記の悪性骨軟部腫瘍マーカーである標的核酸と特異的に結合可能な核酸、好ましくは、上記「2.悪性骨軟部腫瘍の検出用の核酸」に記載の悪性骨軟部腫瘍検出用の核酸プローブ又はプライマー等の核酸、具体的には上記2に記載したポリヌクレオチド類から選択される1又は複数のポリヌクレオチドを含む。
具体的には、本発明のキット又はデバイスは、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含む(若しくは、からなる)ポリヌクレオチド、それに相補的な塩基配列を含む(若しくは、からなる)ポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドの変異体若しくは誘導体、それらのポリヌクレオチドの15以上の連続した塩基を含む断片、及びそれらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことができる。
本発明のキット又はデバイスに含むことができる上記ポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)の群より選択される1つ以上、好ましくは2つ以上のポリヌクレオチドである。
(1)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はそれに相補的な塩基配列に含まれる15以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列、若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチド配列の15以上、好ましくは17以上、より好ましくは19以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド断片である。
本発明において、ポリヌクレオチドの断片のサイズは、各ポリヌクレオチドの塩基配列に対し、例えば、連続する15からその配列の全塩基数未満、17からその配列の全塩基数未満、19からその配列の全塩基数未満などの範囲の塩基数である。
本発明のキット又はデバイスを構成する上記のポリヌクレオチドの組み合わせは、例えば、後述の表1に示される配列番号(表1中の、miRNAマーカーに対応する、配列番号1〜11)によって表される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列(相補配列)からなる上記のポリヌクレオチドの任意の組み合わせであってよい。例えば、表6に記載された組み合わせのmiRNAマーカーで表されるポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な核酸の組み合わせが挙げられるが、それらはあくまでも例示であり、他の種々の可能な組み合わせのすべてが本発明に包含されるものとする。
例えば、本発明において悪性骨軟部腫瘍と健常体を判別するためのキット又はデバイスを構成する上記のポリヌクレオチドの組み合わせとしては、表1に示される配列番号(標的核酸)の2個以上について、それぞれの配列番号で表される塩基配列若しくはそれに相補的な塩基配列又はそれらの断片等からなる上記のポリヌクレオチドを組み合わせたものが望ましい。通常では表1に示される配列番号の2個の組み合わせで充分な判別性能を得ることができるが、3個以上を組み合わせてもよい。
具体的には悪性骨軟部腫瘍患者を、良性骨軟部腫瘍患者及び健常体と判別するための標的核酸として用いる2個のポリヌクレオチドの組み合わせとして、配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドから選択される2個の組み合わせのうち、悪性骨軟部腫瘍マーカーとして新規に見出された配列番号1〜11から選択される1つ以上を含む組み合わせが好ましい。そのような組み合わせの標的核酸のそれぞれと特異的に結合可能な核酸の組み合わせを、悪性骨軟部腫瘍と健常体を判別するためのキット又はデバイスにおいて用いることができる。
上記のがん種特異性のあるポリヌクレオチド(標的核酸)の組み合わせの個数としては、1個、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上の個数の組み合わせが可能であるが、より好ましくは4個以上の組み合わせであり、通常では2個の組み合わせで充分な判別性能を得ることができる。
以下に、本発明で用いる標的核酸(悪性骨軟部腫瘍マーカー)の組み合わせとして、非限定的に、配列番号1で表される塩基配列若しくはそれに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと、上記のがん種特異性ポリヌクレオチド群1に含まれる他の配列番号(配列番号2〜11)から選択される2つ以上の配列番号で表される塩基配列若しくはそれに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとの組み合わせを以下に例示する。
(1)配列番号1、2(マーカー:miR−1292−3p、miR−8071)の組み合わせ
(2)配列番号1、2、3(マーカー:miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p)の組み合わせ
(3)配列番号1、2、4(マーカー:miR−1292−3p、miR−8071、miR−665)の組み合わせ
(4)配列番号1、2、7(マーカー:miR−1292−3p、miR−8071、miR−1908−3p)の組み合わせ
(5)配列番号1、2、3、6(マーカー:miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−1273g−3p)の組み合わせ
上記で例示した組み合わせの標的核酸のそれぞれと特異的に結合可能な核酸を、本発明のキット若しくはデバイス、又は悪性骨軟部腫瘍の検出(判別)方法において、悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチドのセットとして好適に用いることができる。
本発明のキット又はデバイスには、上で説明した本発明における悪性骨軟部腫瘍の検出用のポリヌクレオチド(これには、配列番号1〜11の少なくとも1つで表される塩基配列若しくはそれに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、断片又は誘導体を包含しうる。)に加えて、悪性骨軟部腫瘍検出を可能とする既知のポリヌクレオチド又は将来見出されるであろうポリヌクレオチドも含めることができる。
本発明のキットに含まれる上記ポリヌクレオチドは、個別に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されうる。
本発明のキットには、体液、細胞又は組織から核酸(例えばtotal RNA)を抽出するためのキット、標識用蛍光物質、核酸増幅用酵素及び培地、使用説明書、などをさらに含めることができる。
本発明のデバイスは、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチドなどの核酸が、例えば、固相に結合又は付着された、がんマーカー測定のためのデバイスである。固相の材質の例は、プラスチック、紙、ガラス、シリコン、などであり、加工のしやすさの点では、好ましい固相の材質はプラスチックである。固相の形状は、任意であり、例えば方形、丸形、短冊形、フィルム形などである。本発明のデバイスには、例えば、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスが含まれ、具体的にはブロッティングデバイス、核酸アレイ(例えばマイクロアレイ、DNAチップ、RNAチップなど)などが例示される。
核酸アレイ技術は、必要に応じてLリジンコートやアミノ基、カルボキシル基などの官能基導入などの表面処理が施された固相の表面に、スポッター又はアレイヤーと呼ばれる高密度分注機を用いて核酸をスポットする方法、ノズルより微少な液滴を圧電素子などにより噴射するインクジェットを用いて核酸を固相に吹き付ける方法、固相上で順次ヌクレオチド合成を行う方法などの方法を用いて、上記の核酸を1つずつ結合又は付着させることによりチップなどのアレイを作製し、このアレイを用いてハイブリダイゼーションを利用して標的核酸を測定する技術である。
本発明のキット又はデバイスは、上記の群1の悪性骨軟部腫瘍マーカーであるmiRNAの少なくとも1つ以上、好ましくは少なくとも2つ以上、さらに好ましくは少なくとも3つ以上、最も好ましくは少なくとも5つ以上から全部のポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な核酸を含む。
本発明のキット又はデバイスは、下記「4.悪性骨軟部腫瘍の検出方法」の悪性骨軟部腫瘍の検出のために使用することができる。
4.悪性骨軟部腫瘍の検出方法
本発明はさらに、上記「3.悪性骨軟部腫瘍検出用キット又はデバイス」で説明した本発明のキット若しくはデバイス(本発明で使用可能な上記の核酸を含む。)又は悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチドを用いて、検体中の標的核酸の発現量、具体的には以下の群:miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pから選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量(典型的には、miRNA又はmiRNA前駆体の量)を測定する(好ましくはin vitroで測定する)ことを含む、悪性骨軟部腫瘍の検出方法を提供する。本方法では、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体から採取した検体(例えば、血液、血清、血漿等)について、検体中の標的核酸の発現量を測定した後、さらに、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体の検体の上記標的核酸の発現量測定値と、非悪性対照群(健常体又は良性骨軟部腫瘍患者を含む)とから採取した同様の検体(例えば、血液、血清、血漿等)で得られた同じ標的核酸の発現量(対照発現量)とを用いた分析を行い、例えば両発現量を比較する。本方法は、両者の当該検体中の標的核酸の発現量に統計学的に有意に差がある場合、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体が、悪性骨軟部腫瘍に罹患していると評価することを含んでもよい。本方法は、被験体由来の検体について測定した上記標的核酸の発現量と、非悪性対照群の発現量とを用いて(それらを比較して)、被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患していること又は悪性骨軟部腫瘍に罹患していないこと(悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否か)を評価し、悪性骨軟部腫瘍の有無を検出することを含み得る。被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かの評価は、悪性骨軟部腫瘍への罹患の有無を示す指標を得ることであってよい。悪性骨軟部腫瘍への罹患を示す指標値が得られた場合には、被験体における悪性骨軟部腫瘍の存在が検出されたと判断し、悪性骨軟部腫瘍に罹患していないことを示す指標値が得られた場合には、被験体における悪性骨軟部腫瘍が検出されなかったと判断することができる。
本発明の上記方法は、低侵襲的に、感度及び特異度の高い、がんの早期診断を可能とし、これにより、早期の治療及び予後の改善をもたらし、さらに、疾病憎悪のモニターや外科的、放射線療法的、及び化学療法的な治療の有効性のモニターを可能にする。
本発明の上記方法では、血液、血清、血漿等の検体から、悪性骨軟部腫瘍由来の標的核酸を含み得る核酸(典型的にはRNA)を抽出し、その核酸抽出物を、本発明のキット若しくはデバイス又は悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチドを用いた標的核酸検出アッセイに供してもよい。標的核酸検出アッセイに供する核酸を検体から抽出する方法として、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit (東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を加えて調製するのが特に好ましいが、一般的な酸性フェノール法(Acid Guanidinium−Phenol−Chloroform(AGPC)法)を用いてもよいし、Trizol(登録商標)(Life Technologies社)用いてもよいし、Trizol(life technologies社)やIsogen(ニッポンジーン社)などの酸性フェノールを含むRNA抽出用試薬を加えて調製してもよい。さらに、miRNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen社)などのキットを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明はまた、本発明のキット若しくはデバイス、又はそれらに使用可能な悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチド(1個の上記標的核酸miRNAと特異的に結合可能なポリヌクレオチド、又は2個以上の上記標的核酸miRNAのそれぞれと特異的に結合可能なポリヌクレオチドの組み合わせ)の、被験体由来の検体中の悪性骨軟部腫瘍由来のmiR遺伝子の発現産物のin vitroでの検出のための使用を提供する。本発明はまた、本発明のキット又は若しくはデバイス、又は悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチド(1個の上記標的核酸miRNAと特異的に結合可能なポリヌクレオチド、又は2個以上の上記標的核酸miRNAのそれぞれと特異的に結合可能なポリヌクレオチドの組み合わせ)の、被験体における悪性骨軟部腫瘍の検出における使用を提供する。本発明はまた、被験体における悪性骨軟部腫瘍の検出又は診断用の、本発明のキット又は若しくはデバイス、又は上記ポリヌクレオチド(1個の上記標的核酸miRNAと特異的に結合可能なポリヌクレオド、又は2個以上の上記標的核酸miRNAのそれぞれと特異的に結合可能なポリヌクレオチドの組み合わせ)を提供する。本発明は、上記ポリヌクレオチド(1個の上記標的核酸miRNAと特異的に結合可能なポリヌクレオチド、又は2個以上の上記標的核酸miRNAのそれぞれと特異的に結合可能なポリヌクレオチドの組み合わせ)を含む、悪性骨軟部腫瘍に対する診断薬も提供する。本発明の悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチド、キット及びデバイス等は、悪性骨軟部腫瘍の診断に有用である。
本発明の上記方法において、上記キット又はデバイスは、上で説明したような、本発明で使用可能な悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチドを単一であるいはあらゆる可能な組み合わせで含むものが使用される。
本発明の悪性骨軟部腫瘍の検出又は(遺伝子)診断において、本発明のキット又はデバイスに含まれるポリヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして用いることができる。プライマーとして用いる場合には、Life Technologies社のTaqMan(登録商標) MicroRNA Assays、Qiagen社のmiScript PCR Systemなどを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明のキット又はデバイスに含まれるポリヌクレオチドは、ノーザンブロット法、サザンブロット法、in situ ハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などのハイブリダイゼーション技術、定量RT−PCR法などの定量増幅技術などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、定法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象検体としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を採取する。あるいは、そのような体液から上記の方法によって調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに当該RNAをもとにして調製される、cDNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
本発明のキット又はデバイスは、悪性骨軟部腫瘍の診断又は罹患の有無の検出のために有用である。具体的には、当該キット又はデバイスを使用した悪性骨軟部腫瘍の検出は、悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体から、血液、血清、血漿、尿等の検体を用いて、当該キット又はデバイスに含まれる核酸プローブ又はプライマーで検出される遺伝子の発現量をin vitroで検出することによって行うことができる。悪性骨軟部腫瘍の罹患が疑われる被験体の血液、血清、血漿、尿等の検体中の標的核酸(miRNA等の悪性骨軟部腫瘍マーカー)の量を、本発明のキット又はデバイスに含まれる、配列番号1〜11の少なくとも1つ以上で表される塩基配列若しくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド又はそれらの塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、それらの変異体若しくは誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むそれらの断片を用いて測定し、その発現量が、非悪性対照群(健常体又は良性骨軟部腫瘍患者)の血液、血清、又は血漿、尿等の検体中のそれらの発現量と比べて統計学的に有意に差がある場合、例えば判別式を用いて、当該被験体は悪性骨軟部腫瘍に罹患していると評価することができる。
本発明の方法は、CTスキャンやMRI(核磁気共鳴装置)、脳血管造影法などの画像診断法と組み合わせることができる。
本発明のキット又はデバイスを利用した、検体中に悪性骨軟部腫瘍由来の上記miR遺伝子の発現産物が含まれないこと、又は悪性骨軟部腫瘍由来の上記miR遺伝子の発現産物が含まれること、の検出方法は、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を検体として採取して、そこに含まれる標的遺伝子(miR遺伝子)の発現量を、本発明の悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチド群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド(変異体、断片又は誘導体を包含する。)を用いて測定することにより、悪性骨軟部腫瘍の有無を評価する又は悪性骨軟部腫瘍を検出することを含む。また本発明の悪性骨軟部腫瘍の検出方法を用いて、例えば悪性骨軟部腫瘍患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における当該疾患の改善の有無又は改善の程度を評価又は診断することもできる。
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)のステップ:
(a)被験体由来の検体を、in vitroで、本発明のキット又はデバイス中のポリヌクレオチド、又は本発明の悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチドと接触させるステップ、
(b)検体中の標的核酸の発現量を、上記ポリヌクレオチドを核酸プローブ又はプライマーとして用いて測定するステップ、
(c)(b)の結果をもとに、当該被験体中の悪性骨軟部腫瘍(細胞)の存在又は不存在を評価するステップ、
を含むことができる。
上記のステップ(a)では、好ましい検体として、血液、血清、又は血漿を使用することができる。
上記のステップ(b)では、発現量の測定を、核酸アレイ法などのハイブリダイゼーション技術、シーケンサーなどによりポリヌクレオチドの塩基配列を決定する技術、定量RT−PCR法などの定量増幅技術、などの技術によって行うことができる。
上記のステップ(c)は、(b)の結果をもとに、被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かを評価し、それによって当該被験体における悪性骨軟部腫瘍(細胞)の存在又は不存在を検出するステップであってもよい。上記のステップ(c)では、被験体由来の検体中の標的核酸の発現量が、健常体又は良性骨軟部腫瘍患者(非悪性対照群)由来の検体中の標的核酸の発現量(「参照」(Reference)又は「対照」(Control)ともいう。)と比べて統計学的に有意な差がある場合、被験体由来の検体中の標的核酸の発現量と判別式から得られた判別スコアに基づいて、当該被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かを評価(判別)することができる。
具体的には、本発明は、miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上(1つ又は複数)、好ましくは少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又はそれ以上の標的核酸ポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を用いて、被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体又は良性骨軟部腫瘍患者(非悪性対照群)の発現量(対照発現量)とを用いて、被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患していること又は悪性骨軟部腫瘍に罹患していないこと(悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否か)をin vitroで評価し、被験体における悪性骨軟部腫瘍の有無(存在又は不存在)を検出することを含む、悪性骨軟部腫瘍の検出方法を提供する。
本明細書において「評価」するとは、医師による判定ではなく、in vitroでの検査による結果に基づいた評価支援であってもよい。
上記のとおり、本発明の方法の好ましい実施形態において、具体的には、miR−1292−3pがhsa−miR−1292−3pであり、miR−8071がhsa−miR−8071であり、miR−619−5pがhsa−miR−619−5pであり、miR−665がhsa−miR−665であり、miR−718がhsa−miR−718であり、miR−1273g−3pがhsa−miR−1273g−3pであり、miR−1908−3pがhsa−miR−1908−3pであり、miR−3195がhsa−miR−3195であり、miR−4258がhsa−miR−4258であり、miR−4634がhsa−miR−4634であり、及び、miR−6836−3pがhsa−miR−6836−3pである。
また、本発明の方法の好ましい実施形態において、具体的には、上記の標的核酸と特異的に結合可能な核酸(具体的には、通常はプローブ又はプライマー)が、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択される。
本発明の方法で用いられる検体としては、被験体の生体組織、血液、血清、血漿、尿、髄液等の体液など、好ましくは血液、血清、又は血漿を挙げることができる。当該生体組織又は体液等の検体を直接発現量の測定に用いてもよいし、それらの検体から調製されるRNA含有核酸試料、それからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料を、測定のために用いてもよい。
本明細書で被験体とは、哺乳動物、例えば非限定的にヒト、サル、マウス、ラットなどを指し、好ましくはヒトである。
本発明の方法は、測定対象として用いる検体の種類に応じてステップを変更することができる。
測定対象物としてRNAを利用する場合、被験体における悪性骨軟部腫瘍(細胞)の検出は、例えば下記のステップ(a)、(b)及び(c):
(a)被験体の検体から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明のキット又はデバイス中のポリヌクレオチドと結合させるステップ、
(b)当該ポリヌクレオチドに結合した検体由来のRNA又は当該RNAから合成されたcDNAを、上記ポリヌクレオチドを核酸プローブとして用いるハイブリダイゼーション技術によって、あるいは、上記ポリヌクレオチドをプライマーとして用いる定量RT−PCRによって、あるいは、シーケンサーでポリヌクレオチド(前記RNA又はcDNA)の塩基配列を決定することによって、定量的に又は定性的に測定するステップ、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、悪性骨軟部腫瘍(又は悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子発現量の変化)の存在又は不存在を検出するステップ、
を含むことができる。ステップ(c)では、上記(b)の測定結果に基づいて、健常体又は良性骨軟部腫瘍患者(非悪性対照群)と比較して被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かを評価し、それによって被験体における悪性骨軟部腫瘍(又は悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子発現量の変化)の存在又は不存在を検出してもよい。ステップ(a)は、検体由来のRNA又はcDNAを結合させた後の本発明のキット又はデバイスを、緩衝液等の洗浄液により洗浄し、それによって本発明のキット又はデバイス中のポリヌクレオチドに未結合のポリヌクレオチドを除去することをさらに含むことも好ましい。
本発明によって悪性骨軟部腫瘍(又は悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子発現量の変化)をin vitroで検出、検査、評価又は診断するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。このようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法、シーケンサー等によりポリヌクレオチドの塩基配列を決定する技術などを使用することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明で使用可能な上記核酸プローブを用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその発現量を検出、測定することができる。具体的には、核酸プローブ(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被験体の生体組織又は体液(血液、血清、血漿等)などの検体由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成されたDNA/RNA二重鎖の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II(富士写真フィルム株式会社)、などを例示できる)又は蛍光検出器(STORM 865(GEヘルスケア社)、などを例示できる)で検出、測定する方法を例示することができる。
定量RT―PCR法を利用する場合には、本発明で使用可能な上記プライマーを用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその発現量を検出、測定することができる。具体的には、被検体の生体組織又は体液(血液、血清、血漿等)などの検体由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素や蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせ、標識した核酸プローブとハイブリダイズさせて検出する方法を含むことができる。
シーケンサーを利用する場合には、本発明で使用可能な上記プライマーを用いることによって、リード数からRNA中の遺伝子発現の有無やその発現量を検出又は測定することができる、具体的には、例えば、被験体の生体組織又は体液(血液、血清、血漿等)などの検体由来のRNAから常法に従ってcDNAを調製し、これを鋳型として標的核酸であるmiR遺伝子発現産物の少なくとも一部の領域を増幅できるように設計されたプライマー対(各プライマーは上記cDNAに結合する正鎖配列と逆鎖配列のそれぞれを含む)を、上記cDNAとハイブリダイズさせ、常法によりPCR等の核酸増幅を行い、増幅したDNAをシーケンサーで検出又は測定する方法を例示することができる。シーケンサーとしては、例えば、HiSeq 2500(Illumina)又はIon Proton(登録商標) System(Thermo Fisher Scientific)を用いることができる。あるいは、被験体の生体組織又は体液(血液、血清、血漿等)などの検体を、検体中のRNAを核酸増幅することなく、直接、PacBio RS II(Pacific Biosciences)等のシークエンサーにかけて、標的核酸を検出又は測定する方法も例示される。
核酸アレイ技術(核酸アレイ解析)を利用する場合は、本発明の核酸プローブ(一本鎖又は二本鎖)を基板(固相)に貼り付けたRNAチップ又はDNAチップを用いる。核酸プローブを貼り付けた領域をプローブスポット、核酸プローブを貼り付けていない領域をブランクスポットと称する。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般に核酸チップ、核酸アレイ、マイクロアレイなどという名称があり、DNA又はRNAアレイには、DNA又はRNAマクロアレイとDNA又はRNAマイクロアレイが包含されるが、本明細書ではチップといった場合、それら全てを包含するものとする。DNAチップとしては3D−Gene(登録商標)Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用いることができるが、これに限られない。
DNAチップの測定は、限定されないが、例えば核酸プローブの標識物に由来するシグナルを画像検出器(Typhoon 9410(GEヘルスケア社)、3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)などを例示できる)で検出、測定する方法を例示することができる。
本明細書中で使用する「ストリンジェントな条件」とは、上述のように核酸プローブが他の配列に対するよりも大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件である。
ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションとその後の洗浄の条件によって、規定される。そのハイブリダイゼーションの条件は、限定されないが、例えば30℃〜60℃で、SSC、界面活性剤、ホルムアミド、デキストラン硫酸塩、ブロッキング剤などを含む溶液中で1〜24時間の条件とする。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.0)であり、界面活性剤はSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Triton、又はTweenなどを含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3〜10×SSC、0.1〜1% SDSを含む。ストリンジェントな条件を規定するもうひとつの条件である、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、例えば、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄などの条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに当該鎖と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%又は少なくとも95%、例えば少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook,J.&Russel,D.著、Molecular Cloning,A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17などに記載されており、本発明において利用できる。
本発明のキット中の悪性骨軟部腫瘍検出用のポリヌクレオチド断片をプライマーとしてPCRを実施する際の条件の例としては、例えば10mM Tris−HCL(pH8.3)、50mM KCL、1〜2mM MgClなどの組成のPCRバッファーを用い、当該プライマーの配列から計算されたTm値+5〜10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTm値の計算方法としてTm値=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。
また、定量RT−PCR法を用いる場合には、TaqMan(登録商標)MicroRNA Assays(Life Technologies社):LNA(登録商標)−based MicroRNA PCR(Exiqon社):Ncode(登録商標)miRNA qRT−PCTキット(invitrogen社)などの、miRNAを定量的に測定するために特別に工夫された市販の測定用キットを用いてもよい。
遺伝子発現量(例えば、miRNA又はその前駆体の量)の算出には、限定されないが、例えばStatistical analysis of gene expression microarray data(Speed T.著、Chapman and Hall/CRC)、及びA beginner’s guide Microarray gene expression data analysis(Causton H.C.ら著、Blackwell publishing)などに記載された統計学的処理を、本発明において利用できる。例えばDNAチップ上のブランクスポットの測定値の平均値に、ブランクスポットの測定値の標準偏差の2倍、好ましくは3倍、より好ましくは6倍を加算し、その値以上のシグナル値を有するプローブスポットを検出スポットとみなすことができる。さらに、ブランクスポットの測定値の平均値をバックグラウンドとみなし、プローブスポットの測定値から減算し、遺伝子発現量とすることができる。遺伝子発現量の欠損値については、解析対象から除外するか、好ましくは各DNAチップにおける遺伝子発現量の最小値で置換するか、より好ましくは遺伝子発現量の最小値の対数値から0.1を減算した値、で置換することができる。さらに、低シグナルの遺伝子を除去するために、測定サンプル数の20%以上、好ましくは50%、より好ましくは80%以上において2の6乗、好ましくは2の8乗、より好ましくは2の10乗以上の遺伝子発現量を有する遺伝子のみを解析対象として選択することができる。遺伝子発現量の正規化(ノーマライゼーション)としては、限定されないが、例えばglobal normalizationやquantile normalization(Bolstad,B.M.ら、2003年、Bioinformatics、19巻、p185−193)のほか、あらゆる検体間で安定して発現している内因性コントロールmiRNAの発現量測定値によって補正する方法(A.Shimomuraら、2016年、Cancer Sci、DOI:10.1111)などが挙げられる。
本発明はまた、本発明の悪性骨軟部腫瘍検出用ポリヌクレオチド、キット、デバイス(例えばチップ)、又はそれらの組み合わせを用いて、被験体由来の検体中の標的遺伝子の発現量(例えば、miRNA又はその前駆体の量)を測定し、悪性骨軟部腫瘍患者由来の検体と健常体由来の検体の遺伝子発現量を教師サンプルとして判別式(判別関数)を作成し、検体が悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する方法を提供する。
すなわち、本発明はさらに、本発明の検出用ポリヌクレオチド、キット、デバイス(例えばチップ)、又はそれらの組み合わせを用いて、検体が悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含むこと又は悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含まないことを決定又は評価することが既知の複数の検体中の標的遺伝子(標的核酸)の発現量をin vitroで測定する第1のステップ、前記第1のステップで得られた当該標的遺伝子の発現量の測定値を教師サンプルとした判別式を作成する第2のステップ、被験体由来の検体中の当該標的遺伝子の発現量を第1のステップと同様にin vitroで測定する第3のステップ、前記第2のステップで得られた判別式に第3のステップで得られた当該標的遺伝子の発現量の測定値を代入し、当該判別式から得られた結果に基づいて、検体が悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含むこと/又は悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含まないことを決定又は評価する第4のステップを含み、ここで、当該標的遺伝子が当該ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばチップ)に含まれる検出用ポリヌクレオチドによって検出可能なものである方法を提供する。ここで、フィッシャーの判別分析、マハラノビス距離による非線形判別分析、ニューラルネットワーク、Support Vector Machine(SVM)などを用いて判別式を作成できるが、これらに限定されない。
線形判別分析は群分けの境界が直線あるいは超平面である場合、式1を判別式として用いて群の所属を判別する方法である。ここで、xは説明変数、wは説明変数の係数、wは定数項とする。
Figure 2018074938
判別式で得られた値を判別スコアと呼び、新たに与えられたデータセットの測定値を説明変数として当該判別式に代入し、判別スコアの符号で群分けを判別することができる。
線形判別分析の一種であるフィッシャーの判別分析はクラス判別を行うのに適した次元を選択するための次元削減法であり、合成変数の分散に着目して、同じラベルを持つデータの分散を最小化することで識別力の高い合成変数を構成する(Venables,W.N.ら著 Modern Applied Statistics with S.Fourth edition.Springer.、2002年)。フィッシャーの判別分析では式2を最大にするような射影方向wを求める。ここで、μは入力の平均、nはクラスgに属するデータ数、μはクラスgに属するデータの入力の平均とする。分子・分母はそれぞれデータをベクトルwの方向に射影したときのクラス間分散、クラス内分散となっており、この比を最大化することで判別式係数wを求める(金森敬文ら著、「パターン認識」、共立出版(2009年)、Richard O.ら著、Pattern Classification Second Edition.、Wiley−Interscience、2000年)。
Figure 2018074938
マハラノビス距離はデータの相関を考慮した式3で算出され、各群からのマハラノビス距離の近い群を所属群として判別する非線形判別分析として用いることができる。ここで、μは各群の中心ベクトル、S−1はその群の分散共分散行列の逆行列である。中心ベクトルは説明変数xから算出され、平均ベクトルや中央値ベクトルなどを用いることができる。
Figure 2018074938
SVMとはV.Vapnikが考案した判別分析法である(The Nature of Statistical Leaning Theory、Springer、1995年)。分類すべき群分けが既知のデータセットの特定のデータ項目を説明変数、分類すべき群分けを目的変数として、当該データセットを既知の群分けに正しく分類するための超平面と呼ばれる境界面を決定し、当該境界面を用いてデータを分類する判別式を決定する。そして当該判別式は、新たに与えられるデータセットの測定値を説明変数として当該判別式に代入することにより、群分けを判別することができる。また、このときの判別結果は分類すべき群でも良く、分類すべき群に分類されうる確率でも良く、超平面からの距離でも良い。SVMでは非線形な問題に対応するための方法として、特徴ベクトルを高次元へ非線形変換し、その空間で線形の識別を行う方法が知られている。非線形に写像した空間での二つの要素の内積がそれぞれのもとの空間での入力のみで表現されるような式のことをカーネルと呼び、カーネルの一例としてリニアカーネル、RBF(Radial Basis Function)カーネル、ガウシアンカーネルを挙げることができる。カーネルによって高次元に写像しながら、実際には写像された空間での特徴の計算を避けてカーネルの計算のみで最適な判別式、すなわち判別式を構成することができる(例えば、麻生英樹ら著、統計科学のフロンテイア6「パターン認識と学習の統計学 新しい概念と手法」、岩波書店(2004年)、Nello Cristianiniら著、SVM入門、共立出版(2008年))。
SVM法の一種であるC−support vector classification(C−SVC)は、2群の説明変数で学習を行って超平面を作成し、未知のデータセットがどちらの群に分類されるかを判別する(C.Cortesら、1995年、Machine Learning、20巻、p273−297)。
本発明の方法で使用可能なC−SVCの判別式の算出例を以下に示す。まず全被験体を悪性骨軟部腫瘍患者と健常体の2群に群分けする。被験体が悪性骨軟部腫瘍患者である、又は健常体であると判断するには、例えば脳の画像検査を用いることができる。
次に、分けられた2群の血清由来の検体の網羅的遺伝子発現量からなるデータセット(以下、学習検体群)を用意し、当該2群の間で遺伝子発現量に明確な差が見られる遺伝子を説明変数、当該群分けを目的変数(例えば−1と+1)としたC−SVCによる判別式を決定する。式4は最適化する目的関数であり、ここで、eは全ての入力ベクトル、yは目的変数、aはLagrange未定乗数ベクトル、Qは正定値行列、Cは制約条件を調整するパラメータを表す。
Figure 2018074938
式5は最終的に得られた判別式であり、判別式によって得られた値の符号で所属する群を決定できる。ここで、xはサポートベクトル、yは群の所属を示すラベル、aは対応する係数、bは定数項、Kはカーネル関数である。
Figure 2018074938
カーネル関数としては例えば式6で定義されるRBFカーネルを用いることができる。ここで、xはサポートベクトル、γは超平面の複雑さを調整するカーネルパラメータを表す。
Figure 2018074938
これらのほかにも被験体由来の検体が悪性骨軟部腫瘍由来の標的遺伝子の発現を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する、あるいはその発現量を健常体由来の対照と比較し評価する、方法として、ニューラルネットワーク、k−近傍法、決定木、ロジスティック回帰分析などの手法を選択することができる。
本発明の方法は、例えば下記のステップ(a)、(b)及び(c):
(a)悪性骨軟部腫瘍患者由来の悪性骨軟部腫瘍由来遺伝子(標的核酸)を含むこと、及び/又は健常体又は良性骨軟部腫瘍患者由来の悪性骨軟部腫瘍由来遺伝子(標的核酸)を含まないことが既に知られている検体中の標的遺伝子(標的核酸)の発現量を、本発明による検出用ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばDNAチップ)を用いて測定するステップ、
(b)(a)で測定された発現量の測定値から、上記の式1〜3、5及び6の判別式を作成するステップ、
(c)被験体由来の検体中の当該標的遺伝子の発現量を、本発明による検出用ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばDNAチップ)を用いて測定し、(b)で作成した判別式に測定値を代入して、得られた結果に基づいて検体が悪性骨軟部腫瘍由来の標的遺伝子を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する、あるいはその発現量を健常体又は良性骨軟部腫瘍患者由来の対照発現量と比較し評価する、ステップ、
を含むことができる。ここで、式1〜3、5及び6の式中のxは説明変数であり、上記2節に記載したポリヌクレオチド類から選択されるポリヌクレオチド又はその断片等を測定することによって得られる値を含み、具体的には本発明の悪性骨軟部腫瘍患者と健常体又は良性骨軟部腫瘍患者を判別するための説明変数は、例えば下記(1)より選択される遺伝子発現量である。
(1)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列又はそれに相補的な塩基配列に含まれる15以上の連続した塩基を含むDNA等のポリヌクレオチドのいずれかによって測定される悪性骨軟部腫瘍患者、健常体又は良性骨軟部腫瘍患者の血清における遺伝子発現量。
以上に示すように、被験体由来の検体が悪性骨軟部腫瘍由来の遺伝子を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する方法として、判別式の作成には、学習検体群から作成した判別式が必要であり、当該判別式の判別精度を上げるためには、学習検体群中の2群間に明確な差がある遺伝子を判別式に用いることが必要である。
また、判別式の説明変数に用いる遺伝子の決定は、次のように行うことが好ましい。まず、学習検体群である、悪性骨軟部腫瘍患者群の網羅的遺伝子発現量と健常体群の網羅的遺伝子発現量をデータセットとし、パラメトリック解析であるt検定のP値、ノンパラメトリック解析であるMann−WhitneyのU検定のP値、又はWilcoxon検定のP値などを利用して、当該2群間における各遺伝子の発現量の差の大きさを求める。
検定によって得られたP値の危険率(有意水準)が例えば5%、1%又は0.01%より小さい場合に統計学的に有意とみなすことができる。
検定を繰り返し行うことに起因する第一種の過誤の確率の増大を補正するために公知の方法、例えばボンフェローニ、ホルムなどの方法によって補正することができる(例えば、永田靖ら著、「統計的多重比較法の基礎」、サイエンティスト社(2007年))。ボンフェローニ補正を例示すると、例えば検定によって得られたP値を検定の繰り返し回数、即ち、解析に用いる遺伝子数で乗じ、所望の有意水準と比較することにより検定全体での第一種の過誤を生じる確率を抑制できる。
また、検定ではなく悪性骨軟部腫瘍患者群の遺伝子発現量と健常体群の遺伝子発現量の間で、各々の遺伝子発現量の中央値の発現比の絶対値(Fold change)を算出し、判別式の説明変数に用いる遺伝子を選択してもよい。また、悪性骨軟部腫瘍患者群と健常体群の遺伝子発現量を用いてROC曲線を作成し、AUROC値を基準にして判別式の説明変数に用いる遺伝子を選択してもよい。
次に、ここで求めた遺伝子発現量の差が大きい任意の数の遺伝子を用いて、上記の種々の方法で算出することができる判別式を作成する。最大の判別精度を得る判別式を構築する方法として、例えばP値の有意水準を満たした遺伝子のあらゆる組み合わせで判別式を構築する方法や、判別式を作成するために使用する遺伝子を、遺伝子発現量の差の大きい順に一つずつ増やしながら繰り返して評価する方法などがある(Furey TS.ら、2000年、Bioinformatics、16巻、p906−14)。この判別式に対し、別の独立の悪性骨軟部腫瘍患者若しくは健常体の遺伝子発現量を説明変数に代入して、この独立の悪性骨軟部腫瘍患者若しくは健常体について所属する群の判別結果を算出する。すなわち、見出した診断用遺伝子セット及び診断用遺伝子セットを用いて構築した判別式を、独立の検体群で評価することにより、より普遍的な悪性骨軟部腫瘍を検出することができる診断用遺伝子セット及び悪性骨軟部腫瘍を判別する方法を見出すことができる。
また、当該判別式の判別性能(汎化性)の評価には、Split−sample法を用いることが好ましい。すなわち、データセットを学習検体群とテスト検体群に分割し、学習検体群で統計学的検定による遺伝子の選択と判別式作成を行い、該判別式でテスト検体群を判別した結果とテスト検体群が所属する真の群を用いて精度・感度・特異度を算出し、判別性能を評価する。一方、データセットを分割せずに、全検体を用いて統計学的検定による遺伝子の選択と判別式作成を行い、新規に用意した検体を該判別式で判別して精度・感度・特異度を算出し、判別性能を評価することもできる。
例えば、上に記載したような配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくはその相補的配列に基づく1又は2以上の上記ポリヌクレオチド、及び場合により配列番号11で表される塩基配列若しくはその相補的配列に基づく1又は2以上の上記ポリヌクレオチド、をさらに含む任意の組み合わせを診断用遺伝子セットとする。さらに、画像検査や組織診断の診断結果が悪性骨軟部腫瘍である患者由来の検体と、良性骨軟部腫瘍患者由来の検体若しくは健常体における該診断用遺伝子セットの発現量を用いて判別式を構築する。その結果、未知の検体の該診断用遺伝子セットの発現量を測定することにより、未知の検体が悪性骨軟部腫瘍由来遺伝子を含むこと又は悪性骨軟部腫瘍由来遺伝子を含まないことを高い精度及び感度で見分けることができる。
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されない。
[参考例1]
<悪性骨軟部腫瘍患者と健常体の検体の採取>
インフォームドコンセントを得た健常体125人と悪性骨軟部腫瘍以外に原発がんが認められていない悪性骨軟部腫瘍患者115(骨腫瘍29、軟部腫瘍86)人および良性骨軟部腫瘍患者125(骨腫瘍27、軟部腫瘍98)人からベノジェクトII真空採血管VP−AS109K60(テルモ株式会社)を用いてそれぞれ採取した血清検体を、学習検体群とした。同様に、インフォームドコンセントを得た健常体150人と悪性骨軟部腫瘍以外に原発がんが認められていない悪性骨軟部腫瘍患者120(骨腫瘍30、軟部腫瘍90)人および良性骨軟部腫瘍患者118(骨腫瘍27、軟部腫瘍91)人からベノジェクトII真空採血管VP−AS109K60(テルモ株式会社)を用いてそれぞれ採取した血清検体を、テスト検体群とした。
<totalRNAの抽出>
検体として上記学習検体群、テスト検体群合わせて健常体275人と悪性骨軟部腫瘍患者235人、良性骨軟部腫瘍患者243人の合計753人からそれぞれ得られた血清300μLから、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit(東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を用いて、同社の定めるプロトコールに従ってtotal RNAを得た。
<遺伝子発現量の測定>
検体として上記学習検体群、テスト検体群合わせて健常体275人と悪性骨軟部腫瘍患者235人、良性骨軟部腫瘍患者243人の合計753人の血清から得たtotal RNAに対して、3D−Gene(登録商標)miRNA Labeling kit(東レ株式会社)を用いて同社が定めるプロトコール(ver2.20)に基づいてmiRNAを蛍光標識した。オリゴDNAチップとして、miRBase release 21に登録されているmiRNAの中で、2,565種のmiRNAと相補的な配列を有するプローブを搭載した3D−Gene(登録商標)Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用い、同社が定めるプロトコールに基づいてストリンジェントな条件で、total RNA中のmiRNAとDNAチップ上のプローブとのハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション後の洗浄を行った。DNAチップを3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D−Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、ブランク値の減算を行い、欠損値は各DNAチップにおける遺伝子発現量の最小値の対数値から0.1を減算した値で置換した。その結果、健常体275人と悪性骨軟部腫瘍患者235人、良性骨軟部腫瘍患者243人の合計753人の血清に対する、網羅的なmiRNAの遺伝子発現量を得た。数値化されたmiRNAの遺伝子発現量を用いた計算及び統計解析は、R言語3.0.2(R Development Core Team (2013).R:A language and environment for statistical computing.R Foundation for Statistical Computing,URL http://www.R−project.org/.)及びMASSパッケージ7.3−30(Venables,W.N.&Ripley,B.D.(2002)Modern Applied Statistics with S.Fourth Edition.Springer,New York.ISBN 0−387−95457−0)を用いて実施した。
[実施例1]
<学習検体群の検体を用いた遺伝子マーカーの選定とテスト検体群の検体を用いた単独の遺伝子マーカーの悪性骨軟部腫瘍判別性能の評価方法>
本実施例では、学習検体群から悪性骨軟部腫瘍患者を良性骨軟部腫瘍患者及び健常体と判別するための遺伝子マーカーを選定し、学習検体群とは独立したテスト検体群の検体において、選定したそれぞれの遺伝子マーカー単独の悪性骨軟部腫瘍判別性能を評価する方法を検討した。
具体的には、まず参考例1で得た学習検体群とテスト検体群のmiRNA発現量を正規化した。正規化は、各検体についてDNAチップ上の3つの内因性miRNAコントロール(hsa−miR−2861、hsa−miR−149−3p、及びhsa−miR−4463)の発現量測定値の平均と基準値(Pre−set value)との比を得、当該検体ごとの全てのmiRNAの検出数値にその比を反映させる方法によって実施した。この手法は、A.Shimomuraら、2016年、Cancer Sci、DOI:10.1111に記載されている。
次に、学習検体群を用いて診断用遺伝子の選定を行った。ここで、より信頼性の高い診断マーカーを獲得するため、学習検体群の悪性骨軟部腫瘍患者群と、良性骨軟部腫瘍患者及び健常体を合わせた群のいずれかにおいて、50%以上の検体で2の6乗以上の遺伝子発現量を有する遺伝子のみを選択した。更に悪性骨軟部腫瘍患者群と、良性骨軟部腫瘍患者群及び健常体群を判別するための統計的有意性がある遺伝子として、各々の遺伝子発現量について等分散を仮定した両側t検定で得られたP値をボンフェローニ補正し、p<0.01を満たす遺伝子を、判別式の説明変数に用いる遺伝子マーカーとして獲得し、表2に記載した。
このようにして、配列番号1〜11で表される、hsa−miR−1292−3p、hsa−miR−8071、hsa−miR−619−5p、hsa−miR−665、hsa−miR−718、hsa−miR−1273g−3p、hsa−miR−1908−3p、hsa−miR−3195、hsa−miR−4258、hsa−miR−4634、及び、hsa−miR−6836−3p遺伝子を、良性骨軟部腫瘍患者及び健常体と比較した悪性骨軟部腫瘍マーカーとして見出した。
更に、これらの遺伝子の発現量を指標として、フィッシャーの判別分析により悪性骨軟部腫瘍の有無を判別する判別式を作成した。すなわち、学習検体群において選択された11種の遺伝子に相当する配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを式2に入力して判別式「z=a×(遺伝子の発現量)−b」を作成し、算出した精度・感度・特異度を表3に示した。またそのときの判別式係数aと定数項bを表45に示した。例えば、hsa−miR−1292−3p遺伝子(配列番号1)の判別式は、表4に記載の判別式係数a(1.46)と定数項b(9.07)から、「z=1.46×(hsa−miR−1292−3pの発現量)−9.07」となる。
上記で作成した判別式を用いてテスト検体群における精度・感度・特異度を算出し、選定されたポリヌクレオチドの判別性能を独立した検体で検証した(表3)。例えば、配列番号1で示される塩基配列の発現量測定値を学習検体群の悪性骨軟部腫瘍患者(115人)と、良性骨軟部腫瘍患者(125人)及び健常体(125人)との間で比較した場合、良性骨軟部腫瘍患者及び健常体群に対し悪性骨軟部腫瘍患者群の遺伝子発現量測定値が有意に低いことが示され(図2、training set 参照)、更にこの結果はテスト検体群の悪性骨軟部腫瘍患者(120人)と、良性骨軟部腫瘍患者(118人)及び健常体(150人)との間でも再現できた(図2、test set 参照)。同様に配列番号2〜11に示される他のポリヌクレオチドにおいても、良性骨軟部腫瘍患者及び健常体群に対し悪性骨軟部腫瘍患者群の遺伝子発現量測定値が有意に低い(−)又は高い(+)結果(表2)が得られ、これらの結果はテスト検体群で検証ができた。また、例えばこの配列番号1で示される塩基配列に関し、学習検体群で悪性骨軟部腫瘍の有無を判別するため表4に記載の判別式係数(1.46)と定数項(9.07)を用いて判別スコアを計算し、次いでスコアが0より大きい検体を悪性骨軟部腫瘍、0より小さい検体を良性骨軟部腫瘍患者又は健常体と判定する判別式を用いて、テスト検体群での悪性骨軟部腫瘍検出の的中率を算出したところ、真陽性114例、真陰性216例、偽陽性52例、偽陰性6例であり、これらの値から判別性能として、精度85.1%、感度95.0%、特異度80.6%が得られた。このようにして配列番号1〜11に示される全てのポリヌクレオチドの判別性能を算出し、表3に記載した。
配列番号2〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、テスト検体群においてそれぞれ精度78.1%、80.9%、71.6%、76.8%、78.1%、70.4%、75.0%、71.9%、64.9%、64.7%を示した(表3)。配列番号1〜9で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドは、単独でも70%を上回る高い精度で悪性骨軟部腫瘍を判別することが証明できた。
Figure 2018074938
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[実施例2]
<テスト検体群検体を用いた複数の遺伝子マーカーの組み合わせによる悪性骨軟部腫瘍判別性能の評価方法>
本実施例では、実施例1で選定された遺伝子マーカーを組み合わせて悪性骨軟部腫瘍判別性能を評価する方法を検討した。
具体的には、実施例1に記載のようにして、参考例1で得た学習検体群とテスト検体群のmiRNA発現量を正規化した。次に、実施例1において選択された11種の遺伝子に相当する配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドのうち2個〜4個のポリヌクレオチドの発現量測定値の組合せ550通りについて学習検体群でフィッシャーの判別分析を行い、悪性骨軟部腫瘍の存在の有無を判別する判別式「z=a1×(遺伝子1の発現量)+a2×(遺伝子2の発現量)+a3×(遺伝子3の発現量)+a4×(遺伝子4の発現量)−b」を構築した(表5)。算出した精度・感度・特異度を表6に示した。
次に、作成した判別式を用いてテスト検体群における精度・感度・特異度を算出することにより、判別性能を独立した検体で検証した。
配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドのうち2個〜4個のポリヌクレオチドの発現量測定値の組み合わせを用いて参考例1のテスト検体群の悪性骨軟部腫瘍の有無の判別を実施した。例えば、配列番号1と配列番号2で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの発現量測定値について、学習検体群で悪性骨軟部腫瘍の有無を判別するために作成した判別式に基づいて表5に記載の判別式係数(配列番号1:1.27、配列番号2:−0.73)と定数項(3.05)を用いて判別スコアを計算し、スコアが0より大きい検体を悪性骨軟部腫瘍、0より小さい検体を良性骨軟部腫瘍患者又は健常体と判定することにより得られる判別結果を比較した結果、学習検体群では健常体群及び良性骨軟部腫瘍患者群と悪性骨軟部腫瘍患者群との間で発現量測定値が有意に分離する散布図が得られ、更にこの結果はテスト検体群でも再現ができた(図3)。この配列番号1と配列番号2で示される塩基配列に関し、学習検体群で構築した判別式を用いて悪性骨軟部腫瘍検出の的中率を算出したところ、真陽性111例、真陰性244例、偽陽性24例、偽陰性9例であり、これらの値から判別性能として精度91.5%、感度92.5%、特異度91.0%が得られた。
このようにして、配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドのうち2個〜4個のポリヌクレオチドの発現量測定値の全ての組み合わせについて判別性能を算出した。全ての組合せ550通り(表6)のうち、単独の遺伝子マーカーでの判別性能(精度85.1%)を上回る精度を示す組み合わせが36通りあることが示された。
例えば、配列番号1と配列番号2、配列番号6と配列番号2、配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号6と配列番号2、配列番号1と配列番号7と配列番号2、配列番号1と配列番号10と配列番号2、配列番号1と配列番号11と配列番号2、配列番号5と配列番号1と配列番号2、配列番号6と配列番号2と配列番号3、配列番号6と配列番号2と配列番号4、配列番号5と配列番号1と配列番号9と配列番号2、配列番号5と配列番号1と配列番号11と配列番号2、配列番号5と配列番号1と配列番号6と配列番号2、配列番号5と配列番号1と配列番号7と配列番号2、配列番号5と配列番号1と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号9と配列番号6と配列番号2、配列番号1と配列番号9と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号9と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号11と配列番号10と配列番号2、配列番号1と配列番号11と配列番号6と配列番号2、配列番号1と配列番号11と配列番号7と配列番号2、配列番号1と配列番号11と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号11と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号10と配列番号6と配列番号2、配列番号1と配列番号10と配列番号7と配列番号2、配列番号1と配列番号10と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号10と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号6と配列番号7と配列番号2、配列番号1と配列番号6と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号6と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号7と配列番号2と配列番号3、配列番号1と配列番号7と配列番号2と配列番号4、配列番号1と配列番号2と配列番号3と配列番号4、配列番号6と配列番号2と配列番号3と配列番号4、で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの発現量測定値の組み合わせを用いた場合、テスト検体群において、単独の遺伝子マーカーで最高精度85.1%を上回る精度を示した。
また、テスト検体群において、配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの1つ以上を含む2個〜4個のポリヌクレオチドの発現量測定値の組み合わせは、感度80%を上回る高い感度で悪性骨軟部腫瘍を判別することが証明できた。
このように、配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドの発現量測定値の2個、3個、4個、5個又はそれ以上の個数を組み合わせても、優れた感度で悪性骨軟部腫瘍を検出するマーカーが得られる。例えば、実施例1で選択された配列番号1〜11で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドについて、統計的有意性を示すP値の降順に順位付けし、上位のmiRNAから1個ずつ加えた1個又は複数個のmiRNAの組み合わせを用いて判別性能を算出した。その結果、テスト検体群における精度は、1個のmiRNAで85.1%、2個のmiRNAで91.5%、3個のmiRNAで91.5%、4個のmiRNAで90.7%であった。複数のmiRNAの組み合わせは1個のmiRNAの感度よりも高いことから、複数のmiRNAを組み合わせても悪性骨軟部腫瘍を検出する優れたマーカーとなり得ることが示された。ここで、複数のmiRNAの組み合わせは、上記のように統計的有意差の順に加算する場合に限らず、どのような複数個のmiRNAの組み合わせでも悪性骨軟部腫瘍の検出に用いることができる。
これらの結果から配列番号1〜11で表される塩基配列からなる全てのポリヌクレオチドは、悪性骨軟部腫瘍の優れた診断マーカーであるといえる。
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以上の実施例に示すように、本発明のポリヌクレオチド、キット等及び方法を用いれば、悪性骨軟部腫瘍患者を、健常体だけでなく良性骨軟部腫瘍患者とも感度よく判別できる。これにより、外科手術によるがん部の切除実施などに関する早期の臨床的判断が可能となり、その結果、5年生存率の向上や、再発率を低くすることが可能となる。
本発明により、簡易かつ安価な方法で、悪性骨軟部腫瘍を効果的に検出することができるため、悪性骨軟部腫瘍の早期発見、診断及び治療が可能になる。また、本発明の方法により、患者血液を用いて悪性骨軟部腫瘍を低侵襲的に検出できるため、悪性骨軟部腫瘍を簡便かつ迅速に検出することが可能になる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (13)

  1. 悪性骨軟部腫瘍マーカーである、miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、悪性骨軟部腫瘍の検出用キット。
  2. miR−1292−3pがhsa−miR−1292−3pであり、miR−8071がhsa−miR−8071であり、miR−619−5pがhsa−miR−619−5pであり、miR−665がhsa−miR−665であり、miR−718がhsa−miR−718であり、miR−1273g−3pがhsa−miR−1273g−3pであり、miR−1908−3pがhsa−miR−1908−3pであり、miR−3195がhsa−miR−3195であり、miR−4258がhsa−miR−4258であり、miR−4634がhsa−miR−4634であり、及び、miR−6836−3pがhsa−miR−6836−3pである、請求項1に記載のキット。
  3. 前記核酸が、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
    からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、請求項1又は2に記載のキット。
  4. 前記キットが、請求項1又は2に記載のすべての悪性骨軟部腫瘍マーカーの群から選択される少なくとも2つ以上のポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な少なくとも2つ以上の核酸を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
  5. 悪性骨軟部腫瘍マーカーである、miR−1292−3p、miR−8071、miR−619−5p、miR−665、miR−718、miR−1273g−3p、miR−1908−3p、miR−3195、miR−4258、miR−4634、及び、miR−6836−3pからなる群から選択される少なくとも1つ以上のポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、悪性骨軟部腫瘍の検出用デバイス。
  6. miR−1292−3pがhsa−miR−1292−3pであり、miR−8071がhsa−miR−8071であり、miR−619−5pがhsa−miR−619−5pであり、miR−665がhsa−miR−665であり、miR−718がhsa−miR−718であり、miR−1273g−3pがhsa−miR−1273g−3pであり、miR−1908−3pがhsa−miR−1908−3pであり、miR−3195がhsa−miR−3195であり、miR−4258がhsa−miR−4258であり、miR−4634がhsa−miR−4634であり、及び、miR−6836−3pがhsa−miR−6836−3pである、請求項5に記載のデバイス。
  7. 前記核酸が、下記の(a)〜(e)に示すポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (b)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (c)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (d)配列番号1〜11のいずれかで表される塩基配列若しくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
    からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、請求項5又は6に記載のデバイス。
  8. 前記デバイスが、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のデバイス。
  9. 前記ハイブリダイゼーション技術が、核酸アレイ技術である、請求項8に記載のデバイス。
  10. 前記デバイスが、請求項5又は6に記載のすべての悪性骨軟部腫瘍マーカーの群から選択される少なくとも2つ以上のポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な少なくとも2つ以上の核酸を含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載のデバイス。
  11. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のキット又は請求項5〜10のいずれか1項に記載のデバイスを用いて、被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体又は良性骨軟部腫瘍患者の対照発現量とを用いて、被験体が悪性骨軟部腫瘍に罹患しているか否かを評価し、被験体における悪性骨軟部腫瘍の有無を検出することを含む、悪性骨軟部腫瘍の検出方法。
  12. 前記被験体が、ヒトである、請求項11に記載の方法。
  13. 前記検体が、血液、血清又は血漿である、請求項11又は12に記載の方法。
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