JP2015039365A - 前立腺がんの検出用キットおよび検出方法 - Google Patents

前立腺がんの検出用キットおよび検出方法 Download PDF

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聡子 小園
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Abstract

【課題】前立腺がんの検出方法を提供する。【解決手段】被験体の生体試料中のmiR−1275をインビトロで測定することを含む、前立腺がんを検出する方法、ならびに、該miR−1275と特異的に結合可能な核酸プローブ、あるいは該miR−1275を増幅するためのプライマー、を含む、前立腺がん検査用キット。【選択図】図1

Description

本発明は、前立腺がんの検出に有用なmiR―1275の発現を測定することによる前立腺がんの検出方法に関する。また、本発明は、前立腺がんの検出のために使用される、miR―1275と結合可能な物質を含む前立腺がんの検出用キットに関する。
前立腺がんとは、男性のみが持つ精液の一部をつくる臓器である前立腺の中にある腺細胞が、がん化したものと考えられている。前立腺がんは尿路性器がんではもっとも罹患者が多く、2011年の日本国厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」では、前立腺がんによる死亡数は10,823人にのぼる。なお日本人の罹患率は、欧米諸国およびアメリカの日系移民より低く、欧米諸国では日本以上に前立腺がんの罹患は大きな問題である。前立腺がんは年を取ることによって罹患率が上がるが、高齢者に発生する前立腺がんの25%から半数程度はおそらく寿命に影響を及ぼさないがんと考えられている。一方で悪性度の高い前立腺がんは時間の経過とともに進行し、臨床的に診断されるようになる。悪性前立腺がんの発生頻度には人種差があり、米国黒人ではもっとも頻度が高く、次に白人が高いとされる。
早期の前立腺がんに特有の症状はなく、あるとしてもその多くは前立腺肥大症に伴う症状である。具体的には排尿困難、頻尿、残尿感、夜間多尿、尿意切迫、下腹部不快感などである。このような症状があり、たまたま病院を受診した際に前立腺がんの検診が併せて施行され、検査の結果、前立腺がんが発見されることがほとんどである。また前立腺がんが進行しても転移がない場合の症状は前立腺肥大症と大差はない。前立腺肥大症は良性の前立腺疾患であり、加齢とともに前立腺内の組織が肥大することにより、排尿困難、頻尿、残尿感、夜間多尿、尿意切迫、下腹部不快感といった症状を示すが、がんとは直接の関係はない。
前立腺がんの診断に関して、まず用いられるのは、前立腺特異抗原(PSA)とよばれる腫瘍マーカーの検査である。PSA値に異常が認められる場合、専門医は肛門から指を挿入して前立腺の状態を確認する直腸診、あるいは肛門から専用の超音波器具を挿入する経直腸的前立腺超音波を行い前立腺がんの疑いがあるか検討する。さらにPSA値あるいは直腸診、経直腸的前立腺超音波検査により前立腺がんの疑いがある場合、年齢も考慮しながら最終的な診断を行うために前立腺生検が実施される。近年では超音波をガイドにして前立腺を描出しておき、細い針で前立腺を刺し、6ヵ所かそれ以上から組織を採取する「系統的生検」が一般的である。摘出された組織の顕微鏡検査によって病理学的診断を行う。さらに転移・浸潤の有無をCTなどの画像診断によって確認する。
このように、PSA値が異常であった場合には、患者に負担を強いる確定検査が実施される。一方で、PSA検査は判定のカットオフ値の設定によって、偽陽性率、偽陰性率が高くなる検査であることが知られており、偽陽性判定を受けた患者に対する過剰診断、偽陰性判定を受けた患者に対する見逃し、といった課題が存在する。したがって、2009年3月に公表されたEuropean Randomized Study of Screening for Prostate Cancer (ERSPC) and the US−based Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Trialの中間報告の結果から、日本では2011年、厚生労働省主催の「がん検診の評価とあり方に関する研究会」がPSA検診の証拠のレベルを「1−」とし、対策型検診としての実施は勧められないこと、任意型検診としての実施による死亡数減少効果がいまだ確定していないこと、任意型検診の実施の有無は利益の可能性と過剰診断を含む不利益について適切な説明に基づいた個人の判断に委ねるものである、としている。
したがって、前立腺がんを判定するために使用される、PSAよりも特異的で感度が高い腫瘍マーカーによる簡便な検査方法の実用化が期待されている。しかし、PSAの測定以外の腫瘍マーカーによる前立腺がん判定法は現在、普及していない。一方で、PSA測定の欠点を補う検査として、例えば遊離型のPSA値を測定し、血清中の総PSA値との比を計算することにより、前立腺がんと前立腺肥大を判別する方法(特許文献1)が実施されているが、その有用性は広く認められてはいない。
また、前立腺がん患者の尿由来細胞や前立腺がん組織などに含まれ、前立腺がん特異的であるといわれる、PCA3遺伝子およびその変異体を検出することで、前立腺がんを検出する方法が示されているが(特許文献2、3)、特異度はPSAに比べて高いものの、感度がPSAに劣るため、実用上はPSA値が高い患者に対するPCA3検査を実施することで前立腺生検の機会を減らすという目的で使用されることが多い。また、検査の前に直腸診を行い、前立腺から尿中へ細胞の遊離を促す必要がある。
これまでに、血液をはじめとする生体サンプル中のマイクロRNA(miRNA)の発現量(特許文献4)、またはPCA3遺伝子の発現量とmiRNAの発現量を組み合わせること(特許文献5)によって、前立腺がんを判別するという報告がある。特に特許文献5では、具体的にmiR−141とPCA3の発現量を組み合わせることで、前立腺がんを100%の感度、特異度で判別できるとしているが、単一のマーカーで簡便に、かつ高精度に判別できるという記載はない。実際に、特許文献5には、非特許文献1が引用されているが、非特許文献1では血清中のmiR−141による前立腺がん判別が報告されており、判別の精度は特異度100%のとき、感度60%とされている。また、現在一般に用いられているPCA3検査の対象検体は尿であり、特に直腸指診後の尿を用いるとされている。一方、miR−141による前立腺がん判別の対象検体は上述のように血液(血清)であり、両者を組み合わせて高い感度・特異度の結果を得るには、2種の検体の採取が必要である。
国際公開WO1992/001936 国際公開WO1998/045420 国際公開WO2005/003387 国際公開WO2010/056337 国際公開WO2010/062706
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United Status of America vol.105(30),10513−10518 (2008)
本発明の課題は、新規な前立腺がん腫瘍マーカーを見出し、前立腺がんを効果的に検出できる方法を提供することである。
従来用いられている血中マーカーによる前立腺がん検出法であるPSA測定法は、血液中の1種の腫瘍マーカー(PSA)のみを測定するという点では本発明と同等に簡便な方法である。しかし、PSA値が異常であっても実際には前立腺がんではないという偽陽性、またはPSA値が正常人レベルであっても実際には前立腺がんに罹患しているという偽陰性の症例が多くなることが知られている。
また、従来技術では偽陽性、偽陰性がない血中マーカーによる前立腺がん検出法として、miR−141とPCA3の発現量を組み合わせる(国際公開WO2010/062706)ことで、感度100%(前立腺がん患者全員を前立腺がんに罹患していると判別する)、特異度100%(前立腺がんに罹患していない人全員を前立腺がんに罹患していないと判別する)としている。
しかし、miR−141は血液中の発現を検出する(国際公開WO2010/062706、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United Status of America vol.105(30),10513−10518 (2008))ことが示されているが、PCA3は一般的に、直腸指診後の尿中の発現を検出する(Journal of Urology、189(2)、422−429、(2013))方法が用いられているため、この検出法では血液と尿の2種の検体が必要とされる。なお、PCA3、miR−141はそれぞれ単独では、これらを組合せたときのような感度100%、特異度100%の判別を実現できない。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、miR−1275を腫瘍マーカーとして、これに特異的に結合可能な核酸を用いることにより、前立腺がんを有意に検出できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
<発明の概要>
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)miR−1275と特異的に結合可能な核酸プローブを含む、前立腺がんの検出用キット。
(2)miR−1275を増幅するためのプライマーを含む、前立腺がんの検出用キット。
(3)miR−1275が、hsa−miR−1275である、(1)又は(2)に記載のキット。
(4)前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)〜(g)に示すポリヌクレオチド :
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
(f)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー、及び
(g)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー、
からなる群から選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載のキット。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のキットを用いて、(i)被験体の生体試料中のmiR−1275の発現量をインビトロで測定するステップ、並びに、(ii)該miR−1275の発現量が健常体に比較して増加している場合に、被験体が前立腺がんに罹患していると評価するステップを含む、前立腺がんの検出方法。
(6)前記miR−1275が、hsa−miR−1275である、(5)に記載の方法。
(7)前記被験体が、ヒトである、(5)又は(6)に記載の方法。
(8)前記生体試料が、血液、血清または血漿である、(5)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)前記前立腺がんが、早期がんまたは進行性がんのいずれかである(5)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記miR−1275の発現量が、ハイブリダイゼーションまたは定量RT−PCRによって測定される、(5)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)前記ステップ(i)がさらに、前記miR−1275の発現量を測定するために、miR−1275からcDNAを合成し、次いで、定量RT−PCRにより該cDNAを増幅することを含む、(5)〜(10)のいずれかに記載の方法。
<用語の定義>
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、DNA、RNAなどの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用に従うものとする。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA及びDNAのいずれも包含する核酸に対して用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、non−coding RNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。また、本明細書では、ポリヌクレオチドは核酸と互換的に使用される。
本明細書において「遺伝子」とは、RNA、及び2本鎖DNAのみならず、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各1本鎖DNAを包含することを意図して用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
従って、本明細書において「遺伝子」は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、及びこれらの断片、ヒトゲノム、及びそれらの転写産物のいずれも含む。また該「遺伝子」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「遺伝子」だけではなく、これらによってコードされるRNAと生物学的機能が同等であるRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「核酸」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体をコードする「核酸」としては、具体的には、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1〜4で示される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「核酸」を挙げることができる。なお、「遺伝子」は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンを含むことができる。
本明細書において「転写産物」とは、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNAのことをいう。RNAポリメラーゼが遺伝子の上流にあるプロモーターと呼ばれる部位に結合し、DNAの塩基配列に相補的になるように3'末端にリボヌクレオチドを結合させていく形でRNAが合成される。このRNAには遺伝子そのもののみならず、発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンをはじめとする転写開始点からポリA配列の末端にいたるまでの全配列が含まれる。
また、本明細書において「マイクロRNA(miRNA)」は、特に言及しない限り、ヘアピン様構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、RISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与する約12〜25塩基の非コーディングRNAを意図して用いられる。また本明細書で使用する「miRNA」は特定の塩基配列(又は配列番号)で示される「miRNA」だけではなく、該「miRNA」の前駆体(pre−miRNA、pri−miRNA)を含有し、これらによってコードされるmiRNAと生物学的機能が同等であるmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「miRNA」も包含する。かかる前駆体、同族体、変異体又は誘導体をコードする「miRNA」としては、具体的には、miRBase release20(http://www.mirbase.org/)により同定することができ、後に記載したストリンジェントな条件下で、上記の配列番号1〜4で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「miRNA」を挙げることができる。
本明細書において「プローブ」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
本明細書において「プライマー」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し、増幅する、連続するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号1〜4によって定義される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチドの全長配列、又はその部分配列、(ここでは便宜上、これを正鎖と呼ぶ)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、プローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、ハイブリダイゼーションが行われる環境によって異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、プローブに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。
本明細書において、「断片」とは、配列番号1〜4で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、またはそれらに相補的な塩基配列において、その6個以上、好ましくは12個以上、より好ましくは17個以上の連続した塩基配列からなる核酸を意味する。
本明細書において「変異体」とは、核酸の場合、多型性、突然変異などに起因した天然の変異体、あるいは配列番号1〜4で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1、2もしくは3又はそれ以上、好ましくは1もしくは2個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは配列番号1〜4の配列の前駆体RNAの塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1又は2以上、好ましくは1又は数個の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは該塩基配列の各々又はその部分配列と約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体、あるいは該塩基配列又はその部分配列を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと上記定義のストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を意味する。
本明細書において「数個」とは、約4、3又は2個の整数を意味する。
本明細書において、変異体は、部位特異的突然変異誘発法、PCR法を利用した突然変異導入法などの周知の技術を用いて作製可能である。
本明細書において「%同一性」は、上記のBLASTによる遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(Karlin,S.ら、1993年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第90巻、p.5873−5877;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p.403−410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第85巻、p.2444−2448)。
本明細書において「誘導体」とは、修飾核酸、非限定的に例えば、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体、PNA(peptide nucleic acid; Nielsen, P.E. et al., 1991, Science 254:1497)、LNA(locked nucleic acid; Obika, S. et al., 1998, Tetrahedron Lett. 39:5401)などを含むことを意味する。
本明細書において「核酸プローブ」又は「プライマー」とは、被験体中の前立腺がんの有無を検出するために、または前立腺がんの罹患の有無、罹患の程度、前立腺がんの改善の有無や改善の程度、前立腺がんの治療に対する感受性を診断するために、あるいは前立腺がんの予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用されるものをいう。これらには前立腺がんの罹患に関連して生体内、特に血液、尿等の体液等の生体試料においてmiR−1275遺伝子の転写産物又はそのcDNA合成核酸を特異的に認識し結合することのできるヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを包含する。これらのヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、上記性質に基づいて生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子を検出するためのプローブとして、また生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
本明細書で使用する「検出」という用語は、検査、測定、評価、判別又は、判定支援という用語で置換しうる。
本明細書において「進行度」とは、がんの臨床的ステージ、を指す。前立腺がんは前立腺組織内(局所)に留まっている(限局している)状態では「早期」と考えられ、手術による摘出や放射線照射などの治療により治癒、すなわち10年生存率が90%を超えるとされている。がんが局所に留まらず、前立腺外に浸潤している場合は治療成績が悪化する傾向がある。特に前立腺から離れた位置にあるリンパ節や、臓器への遠隔転移のある「進行」前立腺がんは、転移のない前立腺がんと比較すると予後不良で5年生存率は20〜30%程度とされる。
本明細書において判定、検出又は診断の対象となる「試料」とは、前立腺がんの発生、前立腺がんの進行、及び前立腺がんに対する治療効果の発揮にともない本発明の遺伝子が発現変化する組織及び生体材料を指す。具体的には前立腺組織及びその周辺の脈管、リンパ節及び臓器、また転移が疑われる臓器、皮膚、及び血液、尿、唾液、汗、組織浸出液などの体液、血液から調製された血清、血漿、その他、便、毛髪などを指す。
本明細書で使用される「miR−1275遺伝子」又は「miR−1275」という用語は、配列番号1に記載のhsa−miR−1275遺伝子(miRBase Release19 Accession No.MIMAT0005929)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。hsa−miR−1275遺伝子は、Morin,R.D.ら、2008年、Genomic Research、第18巻、p.610−621に記載される方法によって得ることができる。
2012年8月に公開された、miRNAの総合配列データベースである、miRBase Release19では、miR−1275の配列として、MIMAT0005929に登録された17塩基の配列(配列番号1)のほかに、ディープシークエンスによって解析された3’末端が2塩基短く、5’末端が4塩基長い、19塩基の配列(配列番号2)が変異体として登録された。また2013年6月に公開された、miRBase Release20では、配列番号1または2で表される配列のほかに、数々のisomirと呼ばれるhsa−miR−1275の変異体および断片も示されている。
成熟型のmiR−1275およびその変異体、断片は、ヘアピン様構造をとり、配列番号1で表される配列を含む核酸配列であるmiRNA前駆体(mir−1275、miRBase Accession MI0006415、NCBI Accession NR_031681、配列番号3)から切出される。miR−1275の変異体は、このmiRNA前駆体から切出されるときに、成熟型miRNAとして登録されている配列番号1の配列の前後1〜数塩基が短く、又は長く切出されることによって生成されるポリヌクレオチドである。また断片の例として、miRBase Release20に登録されている数々のisomirの最小共通配列である、配列番号4で表されるポリヌクレオチドが示されるが、上述のように変異体および断片はこれらの配列で表されるポリヌクレオチドに限らない。
すなわち、本発明に関係する、配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、の変異体の例としては、配列番号2で表されるポリヌクレオチド、およびmiRBaseに登録された、hsa−miR−1275の数々のisomirであるポリヌクレオチドが挙げられる。また、本発明に関係する、配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、の断片の例としては、配列番号4で表される配列のポリヌクレオチドが挙げられる。さらに、配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチドの例としては、配列番号3で表されるポリヌクレオチドが挙げられる。
本明細書で使用される「感度」とは、(真陽性の数)/(真陽性の数+偽陰性の数)の値を指す。
本明細書で使用される「特異度」とは、(真陰性の数)/(真陰性の数+偽陽性の数)の値を指す。
本明細書で使用される「被験体」は、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類などの哺乳動物を指す。また、「健常体」もまた、このような哺乳動物であって健康な動物を指す。
本発明により、血液中のわずか1種の腫瘍マーカーを測定するという、簡便な検査のみで、前立腺がんを容易にかつ高い信頼度で検出することが可能になった。
例えば、患者の血液、血清および/または血漿中のmiR−1275発現量を測定するだけで、容易に患者が前立腺がんであるか否かを検出することができる。
すなわち、1種のマーカーを血液、またはその成分である、血清または血漿中から検出するのみで、感度100%、特異度100%の前立腺がんの罹患の判別を実現することができる。
さらに、単純に、前立腺がんと非前立腺がん(健常、前立腺肥大)を判別するのみでなく、患者の血液、血清および/または血漿中のmiR−1275発現量を測定することにより、前立腺がんに罹患している患者のがんが、早期がん、または進行がんのいずれであるかの検出にも有効である。
定量RT―PCR法による早期(局所)前立腺がん患者(N=11)、進行(転移)前立腺がん患者(N=10)、それぞれから由来した血清中のmiR―1275の発現量の測定結果を示す。各黒丸は血清中のmiR―1275を定量RT―PCR法で測定し、対照RNAで補正したデルタCtの値を示す。
以下に本発明をさらに具体的に説明する
1.前立腺がんの標的核酸
本発明の前立腺がん検出用のプローブ又はプライマーを使用して、前立腺がん又は前立腺がん細胞の存在及び/又は不存在、又は前立腺がんの進行度を検出するための、前立腺がんマーカーとしての標的核酸には、例えば、配列番号1で表される塩基配列を含むヒトmiR−1275遺伝子(すなわち、has−miR−1275)、その同族体、その転写産物、あるいはその変異体、断片、又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、変異体、断片及び誘導体は、上記定義のとおりである。好ましい標的核酸は、配列番号1〜4で表される塩基配列を含むヒト遺伝子、その転写産物、より好ましくは該転写産物、すなわちmiRNA、その前駆体RNAであるpriRNAおよびpreRNAである。
本発明において前立腺がんの標的となる上記遺伝子はいずれも、健常な被験体と比べて前立腺がんに罹患した被験者において発現レベルが増加しているものである(後述の実施例1を参照)。
これまでにmiR−1275遺伝子又はその転写産物の発現の増加が前立腺がんのマーカーになりうるという報告は知られていない。
miR−1275の生理的意義はまだよく知られていないが、グリオーマ幹細胞様細胞において、分化時に発現抑制されていること、これにともない、そのターゲット遺伝子であるCLDN11の発現が向上していること、この作用がエピジェノミクスによって制御されていることが報告されている(Jounral of Biological Chemistry,287(33)27396−27406,2012)。
またmiR−1275の疾患のマーカーとしての報告としては、たとえば下記のようなものがある。すなわち、副腎皮質がんの患者において、miR−1275の高発現が患者の全生存の短縮に有意に関連づけられることが報告されている(Endocrine−Related Cancer,18(6),643−655,2011)。また、胎児が神経管欠損症である妊婦の血清中のmiR−1275は、通常の妊婦の場合よりも低いことが報告されている(Jounal of Neurochemistry,122(3),641−649,2012)。
2.前立腺がん検出用プローブ又はプライマー
本発明において、前立腺がんを検出するための、あるいは、前立腺がんを診断するために使用可能な核酸プローブ又はプライマーは、前立腺がんの標的核酸としての、ヒト由来のmiR−1275、その同族体、その転写産物あるいはその変異体又は誘導体の存在、発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
上記の標的核酸は、正常な被験体(健常体ともいう)と比べて前立腺がんに罹患した被験体においてその発現量(発現レベルともいう)が増加する。それゆえ、本発明の組成物は、前立腺がんの罹患が疑われる被験体(例えばヒト)由来の体液と健常体由来の体液について上記標的核酸の発現レベルを測定し、それらを比較して、前立腺がんを検出するために有効に使用することができる。
また、上記の標的核酸は、前立腺がん患者において、その前立腺がんの進行度に応じてその発現レベルが増加する傾向を示す。それゆえ、本発明で使用されるプローブ又はプライマーは、前立腺がんの罹患が疑われる患者由来の体液試料について標的核酸の発現レベルを測定し、前立腺がんの進行度を評価するために有効に使用することができる。
本発明で使用可能な核酸プローブ又はプライマーは、miR−1275と特異的に結合可能な核酸プローブ、あるいは、miR−1275を増幅するためのプライマーである。好ましいmiR−1275は、ヒト由来のhsa−miR−1275である。
具体的には、上記のプローブ又はプライマーは、配列番号1〜4で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、ならびにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において12以上、好ましくは17以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1又は複数のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。これらのポリヌクレオチドは、標的核酸である上記前立腺がんマーカーを検出するためのプローブ又はプライマーとして使用できる。
さらに具体的には、本発明で使用可能なプローブ又はプライマーの例は、以下の(a)〜(g)に示されるポリヌクレオチドからなる群から選択される1又は複数のポリヌクレオチドである:
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
(f)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー、及び
(g)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー。
上記のポリヌクレオチドにおいて「12以上の連続した塩基を含むそのポリヌクレオチド」は、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する12〜配列の全塩基数、12〜17塩基などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。
本発明で使用可能な上記のポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
DNA組換え技術及びPCR法は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。
ヒト由来のmiR−1275は公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、この遺伝子をクローニングすることによって、本発明で使用可能なプローブやプライマーとしてのポリヌクレオチドを作製することができる。
そのようなポリヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。cDNAクローニング技術は、例えばmicroRNA Cloning Kit Wako(和光純薬工業)などを利用できる。
3.前立腺がん検出用キット
本発明はまた、本発明においてプローブ又はプライマーとして使用可能なポリヌクレオチド(これには、変異体、断片、又は誘導体を含みうる。)の1つ又は複数を含む前立腺がん検出用キットを提供する。
本発明のキットは、好ましくは、上記2に記載したポリヌクレオチド類から選択される1又は複数のポリヌクレオチドを含む。
あるいは、本発明のキットは、配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド、その相補的配列を含むポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチド配列の12以上の連続した塩基を含む変異体または断片を1以上含むことができる。
本発明のキットに含むことができるポリヌクレオチド断片は、例えば下記の(1)および(2)からなる群より選択される1以上のDNAである:
(1)配列番号1で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、12以上の連続した塩基を含むDNA、
(2)配列番号1で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、それぞれ12以上の連続した塩基を含むDNA、その変異体、またはその誘導体。
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの12以上、より好ましくは17以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチドである。
好ましい実施形態では、前記断片は、12以上、より好ましくは17以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチドであることができる。
本発明において、ポリヌクレオチドの断片のサイズは、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する12〜配列の全塩基数、17〜配列の全塩基数、17〜19塩基などの範囲の塩基数である。
本発明のキットを構成する上記の組み合わせは、あくまでも例示であり、他の種々の可能な組み合わせのすべてが本発明に包含されるものとする。
本発明のキットには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド(これには、変異体、断片又は誘導体を包含しうる。)に加えて、前立腺がんの検出を可能とする既知の又は将来見出されるポリヌクレオチドも包含させることができる。
本発明のキットには、上記2で説明した本発明におけるポリヌクレオチドに加えて、前立腺特異抗原(PSA)を測定するための抗体も包含させることができる。
本発明のキットに含まれるポリヌクレオチドは、個別に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されうる。
4.前立腺がんの検出のための検査法
本発明はさらに、本発明のキット(本発明で使用可能な上記のプローブ及び/又はプライマーを含む。)を用いて、生体試料(検体試料)中に前立腺がん由来のmiR−1275遺伝子の発現量をインビトロ(in vitro)で測定し、さらに、前立腺がんの罹患が疑われる被験体と、健常体(非前立腺がん患者を含む)とから採取した血液、血清、血漿等の生体試料を用いて、試料中のmiR−1275遺伝子の発現量を比較して、該生体試料中の標的核酸の発現量が増加している場合、被験体が、前立腺がんに罹患していると評価することを含む、前立腺がんの検出方法を提供する。
本発明の上記方法は、非侵襲的に、感度および特異度の高い、がんの早期診断を可能とし、これにより、早期の治療および予後の改善をもたらし、さらに、疾病憎悪のモニターや外科的、放射線療法的、および化学療法的な治療の有効性のモニターを可能にする。
さらに本発明の上記方法は、がんの進行度を、前立腺組織内に限局したがん、リンパ節および/または遠隔臓器転移した進行がんを検出することを可能にし、また、標的核酸(miR−1275遺伝子)の発現量が早期前立腺がんより進行前立腺がんの方がより高くなる傾向(図1参照)を利用することにより、前立腺がんの進行度を評価又は決定することを可能にする。
本発明の血液、血清、血漿等の検体試料から前立腺がん由来の遺伝子を抽出する方法としては、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit(東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を加えて調製するのが特に好ましいが、一般的な酸性フェノール法(APGC[Acid Guanidinium−Phenol−Chloroform]法)を用いてもよいし、Trizol(登録商標)(Life Technologies社)を用いてもよいし、Trizol(life technologies社)やIsogen(ニッポンジーン社)などの酸性フェノールを含むRNA抽出用試薬を加えて調製してもよい。さらに、miRNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen社)などのキットを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明はまた、本発明のキットの、被験者由来の検体試料中の前立腺がん由来のmiR−1275遺伝子の発現産物のインビトロでの検出のための使用を提供する。
本発明の上記方法において、上記キットは、上で説明したような、本発明で使用可能なポリヌクレオチドを単一であるいはあらゆる可能な組み合わせで含むものが使用される。
本発明の前立腺がんの検出又は(遺伝子)診断において、本発明のキットに含まれるポリヌクレオチドは、プライマーとして又はプローブとして用いることができる。プライマーとして用いる場合には、Life Technologies社のTaqMan(登録商標) MicroRNA Assays、Qiagen社のmiScript PCR Systemなどを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明のキットに含まれるポリヌクレオチドは、ノーザンブロット法、サザンブロット法、in situ ハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などのハイブリダイゼーション技術、定量RT−PCR法などの定量増幅技術などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、定法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象試料としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を採取する。あるいは、そのような体液から上記の方法によって調製したtotal RNAを用いてもよいし、さらに該RNAをもとにして調製される、cDNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
本発明のキットは、前立腺がんの診断又は検出(罹患の有無や罹患の程度の診断)のために有用である。具体的には、該キットを使用した前立腺がんの検出は、前立腺がんの罹患が疑われる被験体の、血液、血清、血漿、尿等の体液を用いて、該キットに含まれる核酸プローブ又はプライマーを用いて検出されるmiR−1275遺伝子の発現レベルをインビトロで測定することによって行うことができる。前立腺がんの罹患が疑われる被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液のmiR−1275遺伝子の発現量が、非前立腺がん患者の血液、血清、又は血漿、尿等の体液中の発現量と比べて統計有意に高い場合、該被験体は前立腺がんに罹患していると評価(もしくは、評価支援)することができる。
本発明のキットはまた、前立腺がんの進行度の診断又は検出のために有用である。すなわち、miR−1275遺伝子の発現レベルを、ΔCt(すなわち、ΔCt=標的遺伝子のRNA量−参照遺伝子のRNA量)を基にして決定することによって、図1に示すように、前立腺がんの進行度(早期がんと進行がん)を評価(もしくは、評価支援)することも可能である。具体的には、該キットを使用した前立腺がんの検出は、前立腺がんの罹患が疑われる被験体から、血液、血清、血漿、尿等の体液を用いて、該検出用組成物で検出される遺伝子の発現レベルを測定することによって行うことができる。血液、血清、血漿、尿等の体液中のmiR−1275遺伝子は前立腺がんの進行度に応じて発現誘導を示すので、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液中には該遺伝子の発現産物が存在しており、該発現量と進行度の異なる前立腺がん被験体由来の血液、血清、血漿、尿等の体液の発現量と比べて差があれば、前立腺がんの進行度を評価(もしくは、評価支援)することができる。
本発明のキットを利用した検体試料中に前立腺がん由来の遺伝子の発現産物が含まれないこと/又は前立腺がん由来の遺伝子の発現産物が含まれること、及び/又は前立腺がんの進行度の検出方法は、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を採取して、そこに含まれる標的遺伝子の発現量を、本発明のポリヌクレオチド群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド(変異体、断片又は誘導体を包含する。)を用いて測定することにより、前立腺がんの有無又はその進行度を検出することを含む。また本発明の前立腺がんの検出方法は、例えば前立腺がん患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における該疾患の改善の有無又はその程度を検出又は診断することもできる。
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)のステップ:
(a)被験体の生体試料を、インビトロで、本発明のキットのポリヌクレオチドと接触させるステップ、
(b)生体試料中の標的核酸の発現レベルを、上記ポリヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて測定するステップ、
(c)(b)の結果をもとに、該被験体中の前立腺がん(細胞)の存在又は不存在を検出するステップ、
を含むことができる。
また、本発明の方法は、例えば以下の(d)、(e)及び(f)のステップ:
(d)被験体の生体試料を、インビトロで、本発明のキットのポリヌクレオチドと接触させるステップ、
(e)生体試料中の標的核酸の発現レベルを、上記ポリヌクレオチドをプローブ又はプライマーとして用いて測定するステップ、
(f)(e)の結果をもとに、該被験体の前立腺がんの進行度を評価(もしくは、評価支援)するステップ、
を含むことができる。
本発明方法で用いられる生体試料は、被験者の生体組織(好ましくは、前立腺組織)、血液、血清、血漿、尿等の体液など、から調製される試料を挙げることができる。具体的には、該組織から調製されるRNA含有試料、それからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む試料、血液、血清、血漿、尿等の体液、被験者の生体組織の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、手術によって摘出した生体組織、などであり、これらから、測定のための試料を調製することができる。
本明細書で被験体とは、哺乳動物、例えば非限定的にヒト、サル、マウス、ラットなどを指し、好ましくはヒトである。
本発明の方法は、測定対象として用いる生体試料の種類に応じてステップを変更することができる。
測定対象物としてRNAを利用する場合、前立腺がん(細胞)の検出は、例えば下記のステップ(a)、(b)及び(c):
(a)被験者の生体試料から調製されたRNA又はそれから転写され合成された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明のキットのポリヌクレオチドと結合させるステップ、
(b)該ポリヌクレオチドに結合した生体試料由来のRNA又は該RNAから合成されたcDNAを、上記ポリヌクレオチドをプローブとして用いるハイブリダイゼーションによって、あるいは、上記ポリヌクレオチドをプライマーとして用いる定量RT−PCRによって測定するステップ、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、前立腺がん(又は、前立腺がん由来の遺伝子)の存在又は不存在、或いは前立腺がんの進行度を検出するステップ、
を含むことができる。
本発明によって前立腺がん(又は、前立腺がん由来の遺伝子)を検出又は診断するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。このようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などを使用することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明で使用可能な上記プローブを用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、核酸プローブ(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被検体の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成されたDNA/RNA二重鎖の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II、富士写真フィルム株式会社、などを例示できる)又は蛍光検出器(STORM860、GEヘルスケア社、などを例示できる)を用いて検出、測定する方法を例示することができる。
定量RT―PCR法を利用する場合には、本発明で使用可能な上記プライマーを用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその発現レベルを検出、測定することができる。具体的には、被検者の生体組織由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の検出用組成物から調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素や蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせ、標識したプローブとハイブリダイズさせて検出する方法を含むことができる。
DNAアレイ解析を利用する場合は、本発明のDNAプローブ(一本鎖又は二本鎖)を基板に貼り付けたDNAチップを用いる。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般にDNAチップ及びDNAアレイという名称があり、DNAアレイにはDNAマクロアレイが包含されるが、本明細書ではDNAチップといった場合、該DNAアレイを含むものとする。DNAチップとしては3D−Gene(登録商標)Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用いることができるが、これに限られない。
ストリンジェントな条件とは、上述のようにプローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件である。
ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションとその後の洗浄によって、規定される。そのハイブリダイゼーションの条件は、限定されないが、例えば30℃〜60℃で、SSCと界面活性剤を含む溶液中で1〜24時間の条件とする。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.2)であり、界面活性剤はSDS、Triton、もしくはTweenなどを含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3〜10×SSC、0.1〜1%SDSを含む。ストリンジェントな条件を規定するもうひとつの条件である、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに該鎖と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook, J. & Russel, D. 著、Molecular Cloning, A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の 第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17などに記載されており、本発明において利用できる。
本発明のキットのポリヌクレオチドをプライマーとしてPCRを実施する際の条件の例としては、例えば10mMTris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1〜2mM MgClなどの組成のPCRバッファーを用い、該プライマーの配列から計算されたTm+5〜10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTmの計算方法としてTm=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。
また、定量RT−PCR法を用いる場合には、TaqMan(登録商標) MicroRNA Assays、Life Technologies社:LNA(登録商標)−based MicroRNA PCR、Exiqon社:Ncode(登録商標) miRNA qRT−PCT キット、Invitrogen社などの、miRNAを定量的に測定するために特別に工夫された市販の測定用キットを用いてもよい。
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの具体例によって制限されないものとする。
[実施例1]
<DNAマイクロアレイによるmiR−1275発現量測定と前立腺がんの検出>
1−1.試料の採取
インフォームドコンセントを得た健常人(N=2)、前立腺肥大患者(N=2)、早期前立腺がん患者(N=2)からそれぞれ血清を採取した。
1−2.totalRNAの抽出
試料として上の「1−1」で得た、計6症例から得られた血清、それぞれ300μLから、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit(東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を用いて、同社の定める手順に従ってtotal RNAを得た。
1−3.遺伝子発現量の測定
試料として上の「1−2」で得た計6症例に対応するtotal RNAを用い、オリゴDNAマイクロアレイとして、3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)によって、遺伝子発現量を測定した。オリゴDNAマイクロアレイの測定は、東レ株式会社が定める手順に基づいて操作し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション後の洗浄を行ったDNAマイクロアレイを3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D−Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、健常人(N=2)、前立腺肥大患者(N=2)、早期前立腺がん患者(N=2)に対する、Human miRNA Oligo chipの各プローブがハイブリダイゼーションによって検出した核酸配列、すなわち網羅的なmiRNAの遺伝子発現量を得た。それぞれの群でのmiRNAの遺伝子発現量を平均化し、平均健常人値と平均前立腺がん患者値を比較し、前立腺がん患者で発現量が増加しているmiR―1275を得た。miR―1275の、健常人(N=2)、前立腺肥大患者(N=2)、早期前立腺がん患者(N=2)それぞれについての発現量を比較したところ、表1に示すように、早期前立腺がん患者のmiR―1275検出量は、最低でも、健常人および前立腺肥大患者のmiR―1275検出量の1.5倍(729.2対1100.6)であり、早期前立腺がん患者と健常および良性疾患である前立腺肥大をDNAマイクロアレイによる検出で区別することが可能であった。
Figure 2015039365
[実施例2]
<定量RT―PCR法で測定した、前立腺肥大(良性疾患)患者および早期前立腺がん患者の血清中のmiR−1275発現量>
2−1.試料の採取
インフォームドコンセントを得た前立腺肥大患者(N=5)、早期前立腺がん患者(N=5)からそれぞれ血清を採取した。
2−2.totalRNAの抽出
試料として上の「2−1」で得た、計10症例の血清、それぞれ300μLに、対照として線虫由来のRNAである、cel−mir−39を一定量各血清に添加した後、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit(東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を用いて、同社の定める手順に従ってtotal RNAを得た。
2−3.遺伝子発現量の測定
試料として上の「2−2」で得た計10症例に対応するtotal RNAを用い、miR―1275について、TaqMan(登録商標) miRNA PCR Arrays(Life Technologies社)を用い、同社のプロトコールに従って発現量の測定を行った。定量用の補正のために、定法に基づいて、miR―1275の測定量とcel−mir−39の測定量の差であるΔ(デルタ)Ctを得た。その結果得られたmiR―1275の、前立腺肥大患者(N=5)、早期前立腺がん患者(N=5)それぞれについての発現量を比較したところ、表2に示すように、前立腺肥大患者(平均0.17±標準誤差0.08)にくらべ、有意に早期前立腺がん患者(平均0.83±標準誤差0.47、Student's t検定 p=0.02)において発現量の増加が認められた。また、前立腺肥大患者の血清中miR―1275の最大値が0.254(ΔCt)に対して、早期前立腺がん患者の血清中miR―1275の最低値は0.464(ΔCt)と約1.8倍高く、早期前立腺がん患者と良性疾患である前立腺肥大の患者を感度100%、特異度100%で区別することが可能であった。
一方、同一検体血清中のPSA濃度を測定したところ(表2)、前立腺肥大患者のPSA濃度(平均6.0±標準誤差1.6)に対して、早期前立腺がん患者のPSA濃度(平均13.4±標準誤差13.2)は有意な差を持たず、両者を判別することはできなかった。
Figure 2015039365
[実施例3]
<定量RT―PCR法で測定した、早期前立腺がん患者と進行前立腺がん患者の血清中のmiR−1275発現量>
3−1.試料の採取
インフォームドコンセントを得た早期(前立腺がん局所に限局した)前立腺がん患者(N=9)、および局所リンパ節転移(N=3)または遠隔転移した(N=5)進行(転移)前立腺がん患者からそれぞれ血清を採取した。
3−2.totalRNAの抽出
試料として上の「3−1」で得た、計17症例の血清、それぞれ200μLに、対照として、線虫由来のRNAである、cel−mir−39を一定量各血清に添加した後、miRNeasy Mini kit(Qiagen社)を用いて、同社の定める手順に従ってRNA抽出を行い、total RNAを得た。
3−3.遺伝子発現量の測定
試料として上の「3−2」で得た計17症例に対応するtotal RNAを用い、miR―1275およびcel−mir−39について、miScript miRNA PCR Array(Qiagen社)を用い、同社のプロトコールに従って発現量の測定を行った。定量用の補正のために、定法に基づいて、miR―1275の測定量とcel−mir−39の測定量の差であるΔCtを得た。この結果得られたmiR―1275の、早期前立腺がん患者(N=9)、進行前立腺がん患者(N=8)についての補正発現量(ΔCt)を比較したところ、図1および表3に示すように、前立腺がんの進行に伴い、患者由来の血清中のmiR―1275が増加し(早期:平均6.7±標準誤差2.8、進行:平均10.1±標準誤差3.7)、血清中のmiR―1275発現量を指標として前立腺がん進行度を検出できた。
Figure 2015039365
本発明により、簡易かつ安価な方法で、前立腺がんを効果的に検出することができるため、前立腺がんの早期発見、診断及び治療が可能になる。また、本発明の方法により、患者血液を用いて前立腺がんを非侵襲的に検出できるため、前立腺がんを簡便かつ迅速に検出することが可能になる。

Claims (11)

  1. miR−1275と特異的に結合可能な核酸プローブを含む、前立腺がんの検出用キット。
  2. miR−1275を増幅するためのプライマーを含む、前立腺がんの検出用キット。
  3. miR−1275が、hsa−miR−1275である、請求項1又は2に記載のキット。
  4. 前記プローブ又はプライマーが、下記の(a)〜(g)に示すポリヌクレオチド :
    (a)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
    (b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (c)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、
    (d)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
    (f)配列番号1で表される塩基配列もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー、及び
    (g)配列番号1で表される塩基配列、もしくは該塩基配列においてuがtである塩基配列、に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、または12以上の連続した塩基を含むその断片、の一部にアニーリングして該ポリヌクレオチドを鋳型にして増幅するためのプライマー、
    からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のキットを用いて、(i)被験体の生体試料中のmiR−1275の発現量をインビトロで測定するステップ、並びに、(ii)該miR−1275の発現量が健常体に比較して増加している場合に、被験体が前立腺がんに罹患していると評価するステップを含む、前立腺がんの検出方法。
  6. 前記miR−1275が、hsa−miR−1275である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記被験体が、ヒトである、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記生体試料が、血液、血清又は血漿である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記前立腺がんが、早期がんまたは進行性がんのいずれかである、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記miR−1275の発現量が、ハイブリダイゼーションまたは定量RT−PCRによって測定される、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記ステップ(i)がさらに、前記miR−1275の発現量を測定するために、miR−1275からcDNAを合成し、次いで、定量RT−PCRにより該cDNAを増幅することを含む、請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
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