JP2018033352A - 心理的ストレスの検出用キット又はデバイス及び心理的ストレスの検出方法 - Google Patents

心理的ストレスの検出用キット又はデバイス及び心理的ストレスの検出方法 Download PDF

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Juntaro Matsuzaki
潤太郎 松▲崎▼
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Takahiro Ochitani
孝広 落谷
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淳平 河内
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聡子 小園
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泰 岩男
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Abstract

【課題】心理的ストレスを検出するキット又はデバイス、並びに、検出方法を提供する。【解決手段】被験体の検体中のmiRNAと特異的に結合可能な核酸を含む、心理的ストレス検出用キット又はデバイス、並びに、該miRNAの発現量をin vitroで測定することを含む心理的ストレスを検出するための方法。【選択図】図2

Description

本発明は、被験体において心理的ストレスの定量のために使用される、特定のマイクロRNA(miRNA)と特異的に結合可能な核酸を含む心理的ストレスの検出用キット又はデバイス、及び当該核酸を用いて当該miRNAの発現量を測定することを含む心理的ストレスの検出方法に関する。
日常的な社会心理的ストレスは、不安症状やうつ症状の主要因であり、労働生産性や日常生活の質を低下させ、またうつ病など精神疾患の発症や自殺の原因ともなりうる。さらに喘息や関節リウマチなどアレルギー性疾患の症状の増悪や、肥満や心血管疾患の合併、免疫力の低下など身体への影響があることも知られている。心理的ストレスを、より客観的に正確に評価することは、心理的ストレス関連疾患の予防の観点において有益であり、その手法は簡便なものであることが望ましい。
従来の心理的ストレス評価は、自己記入式の質問紙法を用いるものが主流である。例えば平成26年6月25日に公布された改正労働安全衛生法において設けられた「ストレスチェック制度」では57項目からなる「職業性ストレス簡易調査票」を用いた評価が推奨されている。またHospital anxiety and depression scale (HADS)は心理的ストレスに伴う不安症状およびうつ症状をスコア化することができる質問紙として、その有用性が世界的に評価されている(非特許文献1)。しかしこのような質問紙法の回答は被験者の主観に基づくため、被験者が結果を故意に、または無意識に歪曲することができてしまうことから、より客観的な指標の開発が求められている。
実際、血液などの採取が容易な検体を用いて心理的ストレスを評価する技術として、唾液中コルチゾール濃度による判定方法(特許文献1)、末梢血白血球中のメッセンジャーRNAを測定する方法(特許文献2)、血中サイトカイン濃度を測定する方法(特許文献3)が報告されている。
また、非特許文献2に記載されているように血中miRNAは様々な精神疾患や神経疾患の新たなバイオマーカーとなりうることが知られている。非特許文献3では、大学生の試験前後での血中miRNAの変動の結果から、hsa−miR−144/144とmiR−16がストレスマーカーの候補となりうることが示されている。非特許文献4では、健常者と比較して、うつ病患者の血液中ではhsa−miR−135aが低下していることが示されている。
特開2000−275248号公報 特開2007−306883号公報 国際公開第WO2010/119769号
Zigmond AS, Snaith RP、1983年、Acta Psychiatrica Scandinavica、第67巻、p361−370 Jin XF, Wu N, Wang Lら、2013年、Cellular and Molecular Neurobiology、第33巻、p601−613 Katsuura S, Kuwano Y, Yamagishi Nら、2012年、Neuroscience Letters、第516巻、p79−84 Issler O, Haramati S, Paul EDら、2014年、Neuron、第83巻、p344−360
本発明の課題は、心理的ストレスを反映する血中バイオマーカーとして有用なmiRNAを見出し、当該miRNAに特異的に結合可能な核酸を用いて心理的ストレスを効果的に検出できる方法を提供することである。このバイオマーカーは心理的ストレスの程度と量的相関を示す、すなわち心理的ストレスが増すにつれて徐々に増加もしくは減少する特徴を有するマーカーが望ましい。量的相関を示すマーカーであれば、不安障害やうつ病の発症予備群の早期囲い込みに使用できると同時に、重度の心理的ストレス障害の治療効果判定にも使用できるといった汎用性が見込まれるためである。
これまでに報告されている技術は、この課題を解決できていない。特許文献1では唾液中コルチゾール濃度の日内変動幅によって心理的ストレスの判定を行うため、測定を早朝から夕刻まで計5回行うという煩雑な方法であり、またコルチゾール濃度変化を範囲基準内/外の2値で評価するため、心理的ストレスとの量的相関を評価できず、不安障害やうつ病の重症度の評価に応用する方法が示されていない。特許文献2と特許文献3では、慢性ストレス状態者として医師国家試験前の学生でのみ評価されており、末梢血白血球中のメッセンジャーRNA量もしくは血中サイトカイン濃度によって試験前か否かの判定が可能であることのみが示されているため、心理的ストレスとの量的相関の評価が可能かどうかは記載されておらず、不安障害やうつ病の発症予備群の早期発見に使用可能であるかが不明である。非特許文献3も、慢性ストレスとして学生の試験前の状態のみしか評価されておらず、同一被験者の試験前後での血中hsa−miR−144/144とmiR−16の追跡結果が示されているのみであるため、心理的ストレスが強い被験者と弱い被験者を比較して、血中hsa−miR−144/144とmiR−16の量に差が見いだせるのかが不明である。非特許文献4はうつ病患者か否かで血中hsa−miR−135aの量に差が見られたことが記載されているのみであり、心理的ストレスとの量的関連性は不明であり、不安障害やうつ病の発症予備群の早期発見に使用可能であるかが不明である。
自己記入式質問紙であるHADSによって算出される不安症状スコアとうつ症状スコアは、心理的ストレスの程度を反映する標準的な指標である。よって本発明者らは、HADS不安症状スコア・うつ症状スコアと量的相関を示す血中miRNAを複数見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。
(1)心理的ストレスマーカーである、miR−7845−5pのポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、心理的ストレスの検出用キット。
(2)miR−7845−5pがhsa−miR−7845−5pである、上記(1)に記載のキット。
(3)上記核酸が、下記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、上記(1)又は(2)に記載のキット。
(4)心理的ストレスマーカーである、miR−7845−5pのポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、心理的ストレスの検出用デバイス。
(5)miR−7845−5pがhsa−miR−7845−5pである、上記(4)に記載のデバイス。
(6)上記核酸が、下記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)上記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、上記(4)又は(5)に記載のデバイス。
(7)上記デバイスが、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスである、上記(4)〜(6)のいずれかに記載のデバイス。
(8)上記ハイブリダイゼーション技術が、核酸アレイ技術である、上記(7)に記載のデバイス。
(9)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のキット又は上記(4)〜(8)のいずれかに記載のデバイスを用いて被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体の対照発現量とを用いて、被験体が心理的ストレスを有していること、又は心理的ストレスを有していないことをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレスの存在又は不存在を検出することを含む、被験体における心理的ストレスの検出方法。
(10)上記被験体が、ヒトである、上記(9)に記載の方法。
(11)上記検体が、血液、血清又は血漿である、上記(9)又は(10)に記載の方法。
<用語の定義>
本明細書中で使用する用語は、以下の定義を有する。
また、本明細書中で使用する「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、「DNA」、「RNA」などの略号による表示は、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)及び当技術分野における慣用に従うものとする。
本明細書において「ポリヌクレオチド」とは、RNA、DNA、及びRNA/DNA(キメラ)のいずれも包含する核酸に対して用いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、miRNA、siRNA、snoRNA、snRNA、non−coding RNA及び合成RNAのいずれもが含まれる。本明細書において「合成DNA」及び「合成RNA」は、所定の塩基配列(天然型配列又は非天然型配列のいずれでもよい。)に基づいて、例えば自動核酸合成機を用いて、人工的に作製されたDNA及びRNAをいう。本明細書において「非天然型配列」は、広義の意味に用いることを意図しており、天然型配列と異なる、たとえば1以上のヌクレオチドの置換、欠失、挿入及び/又は付加を含む配列(すなわち、変異配列)、1以上の修飾ヌクレオチドを含む配列(すなわち、修飾配列)、などを包含する。また、本明細書では、ポリヌクレオチドは核酸と互換的に使用される。
本明細書において「断片」とは、ポリヌクレオチドの連続した一部分の塩基配列を有するポリヌクレオチドであり、15塩基以上、好ましくは17塩基以上、より好ましくは19塩基以上の長さを有することが望ましい。
本明細書において「遺伝子」とは、RNA、及び2本鎖DNAのみならず、それを構成する正鎖(又はセンス鎖)又は相補鎖(又はアンチセンス鎖)などの各1本鎖DNAを包含することを意図して用いられる。またその長さによって特に制限されるものではない。
従って、本明細書において「遺伝子」は、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含む2本鎖DNA、cDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)、当該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、マイクロRNA(miRNA)、及びこれらの断片、及びそれらの転写産物のいずれも含む。また当該「遺伝子」は特定の塩基配列(又は配列番号)で表される「遺伝子」だけではなく、これらによってコードされるRNAと生物学的機能が同等であるRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体をコードする「核酸」が包含される。かかる同族体、変異体又は誘導体をコードする「核酸」としては、具体的には、後に記載したストリンジェントな条件下で、配列番号1又は2で表される塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「核酸」を挙げることができる。なお、「遺伝子」は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンを含むことができる。また、「遺伝子」は細胞に含まれていてもよく、細胞外に放出されて単独で存在していてもよく、またエキソソームと呼ばれる小胞に内包された状態にあってもよい。
本明細書において「エキソソーム」(別称「エクソソーム」)とは、細胞から分泌される脂質二重膜に包まれた小胞である。エキソソームは多胞エンドソームに由来し、細胞外環境に放出される際にRNA、DNA等の「遺伝子」やタンパク質などの生体物質を内部に含むことがある。エキソソームは血液、血清、血漿、血清、リンパ液等の体液に含まれることが知られている。
本明細書において「転写産物」とは、遺伝子のDNA配列を鋳型にして合成されたRNAのことをいう。RNAポリメラーゼが遺伝子の上流にあるプロモーターと呼ばれる部位に結合し、DNAの塩基配列に相補的になるように3’末端にリボヌクレオチドを結合させていく形でRNAが合成される。このRNAには遺伝子そのもののみならず、発現制御領域、コード領域、エキソン又はイントロンをはじめとする転写開始点からポリA配列の末端にいたるまでの全配列が含まれる。
また、本明細書において「マイクロRNA(miRNA)」は、特に言及しない限り、ヘアピン様構造のRNA前駆体として転写され、RNase III切断活性を有するdsRNA切断酵素により切断され、RISCと称するタンパク質複合体に取り込まれ、mRNAの翻訳抑制に関与する15〜25塩基の非コーディングRNAを意図して用いられる。また本明細書で使用する「miRNA」は特定の塩基配列(又は配列番号)で表される「miRNA」だけではなく、当該「miRNA」の前駆体(pre−miRNA、pri−miRNA)、これらと生物学的機能が同等であるmiRNA、例えば同族体(すなわち、ホモログもしくはオーソログ)、遺伝子多型などの変異体、及び誘導体も包含する。かかる前駆体、同族体、変異体又は誘導体としては、具体的には、miRBase release 20(http://www.mirbase.org/)により同定することができ、後に記載したストリンジェントな条件下で、配列番号1又は2で表されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列を有する「miRNA」を挙げることができる。さらにまた、本明細書で使用する「miRNA」は、miR遺伝子の遺伝子産物であってもよく、そのような遺伝子産物は、成熟miRNA(例えば、上記のようなmRNAの翻訳抑制に関与する15〜25塩基、又は19〜25塩基、の非コーディングRNA)又はmiRNA前駆体(例えば、上記のようなpre−miRNA又はpri−miRNA)を包含する。
本明細書において「プローブ」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に検出するために使用されるポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
本明細書において「プライマー」とは、遺伝子の発現によって生じたRNA又はそれに由来するポリヌクレオチドを特異的に認識し、増幅するポリヌクレオチド及び/又はそれに相補的なポリヌクレオチドを包含する。
ここで相補的なポリヌクレオチド(相補鎖、逆鎖)とは、配列番号1又は2によって定義される塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチドの全長配列、又はその部分配列、(ここでは便宜上、これを正鎖と呼ぶ)に対してA:T(U)、G:Cといった塩基対関係に基づいて、塩基的に相補的な関係にあるポリヌクレオチドを意味する。ただし、かかる相補鎖は、対象とする正鎖の塩基配列と完全に相補配列を形成する場合に限らず、対象とする正鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズできる程度の相補関係を有するものであってもよい。
本明細書において「ストリンジェントな条件」とは、核酸プローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、ハイブリダイゼーションが行われる環境によって異なる。ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することにより、核酸プローブに対して100%相補的である標的配列が同定され得る。「ストリンジェントな条件」の具体例は、後述する。
本明細書において「Tm値」とは、ポリヌクレオチドの二本鎖部分が一本鎖へと変性し、二本鎖と一本鎖が1:1の比で存在する温度を意味する。
本明細書において「変異体」とは、核酸の場合、多型性、突然変異などに起因した天然の変異体、あるいは配列番号1又は2の塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、又はその部分配列において1又は2以上の塩基の欠失、置換、付加又は挿入を含む変異体、あるいは当該塩基配列の各々又はその部分配列と約90%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上の%同一性を示す変異体、あるいは当該塩基配列又はその部分配列を含むポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドと上記定義のストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸を意味する。
本明細書において「数個」とは、約10、9、8、7、6、5、4、3又は2個の整数を意味する。
本明細書において、変異体は、部位特異的突然変異誘発法、PCR法を利用した突然変異導入法などの周知の技術を用いて作製可能である。
本明細書において「%同一性」は、上記のBLASTやFASTAによるタンパク質又は遺伝子の検索システムを用いて、ギャップを導入して、又はギャップを導入しないで、決定することができる(Zheng Zhangら、2000年、J. Comput. Biol.、第7巻、p203−214;Altschul,S.F.ら、1990年、Journal of Molecular Biology、第215巻、p403−410;Pearson,W.R.ら、1988年、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、第85巻、p2444−2448)。
本明細書において「誘導体」とは、修飾核酸、非限定的に例えば、蛍光団などによるラベル化誘導体、修飾ヌクレオチド(例えばハロゲン、メチルなどのアルキル、メトキシなどのアルコキシ、チオ、カルボキシメチルなどの基を含むヌクレオチド及び塩基の再構成、二重結合の飽和、脱アミノ化、酸素分子の硫黄分子への置換などを受けたヌクレオチドなど)を含む誘導体、PNA(peptide nucleic acid; Nielsen,P.E.ら、1991年、Science、第254巻、p1497−1500)、LNA(locked nucleic acid; Obika,S.ら,1998年、Tetrahedron Lett.、第39巻、p5401−5404)などを含むことを意味する。
本明細書において、上記の心理的ストレスマーカーであるmiRNAから選択されるポリヌクレオチドと特異的に結合可能な「核酸」は、合成又は調製された核酸であり、具体的には「核酸プローブ」又は「プライマー」を含み、被験体中の心理的ストレスの存在の有無を検出するために、又は心理的ストレスの有無、心理的ストレスの程度、心理的ストレスの改善の有無や改善の程度、心理的ストレスの治療に対する感受性を診断するために、あるいは心理的ストレスの予防、改善又は治療に有用な候補物質をスクリーニングするために、直接又は間接的に利用される。これらには心理的ストレスに関連して生体内、特に血液、尿等の体液等の検体において配列番号1又は2で表される転写産物又はそのcDNA合成核酸を特異的に認識し結合することのできるヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドを包含する。これらのヌクレオチド、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドは、上記性質に基づいて生体内、組織や細胞内などで発現した上記遺伝子を検出するためのプローブとして、また生体内で発現した上記遺伝子を増幅するためのプライマーとして有効に利用することができる。
本明細書で使用する「検出」という用語は、検査、測定、検出又は判定の支援もしくは補助という用語で置換しうる。また、本明細書において「評価」という用語は、検査結果又は測定結果に基づいて診断又は評価を支援もしくは補助することを含む意味で使用される。
本明細書で使用される「被験体」は、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類などの哺乳動物を意味する。また、「健常体」もまた、このような哺乳動物であって、心理的ストレスを有していない動物を意味する。
本明細書で使用される「P」又は「P値」とは、統計学的検定において、帰無仮説の下で実際にデータから計算された統計量よりも極端な統計量が観測される確率を示す。したがって「P」又は「P値」が小さいほど、比較対象間に有意差があるとみなせる。
本明細書で使用される「Pearsonの積率相関係数」又は「相関係数」は、2つの変数間の線形性の強弱の指標である。相関係数は−1から1の値をとり、相関係数が正の値なら正の相関が、負の値なら負の相関があるという。したがって「Pearsonの積率相関係数」又は「相関係数」の絶対値が大きいほど、比較対象間に強い相関があるとみなせる。
本明細書で使用される「心理的ストレス」は、健常体及び精神障害予備群において、不安症状又はうつ症状などの精神的障害を引き起こした、該精神的障害を引き起こす、又は該精神的障害を引き起こす可能性のある、精神的ストレスをいう。
本明細書で使用される「Hospital Anxiety and Depression Scale (HADS)」又は「HADSスコア」は、不安症状とうつ症状を評価するための14項目から成る自己記入式質問紙を用いて算出される指標である。具体的には、
1.緊張したり気持ちが張りつめたりする。
2.以前,楽しんだことを今でも楽しいと思う。
3.なにか恐ろしいことが起ころうとしているという恐怖感を持つ。
4.物事の面白い面を笑ったり,理解する。
5.心配事が心に浮かぶ。
6.きげんが良い。
7.楽に座って,くつろぐ。
8.仕事を怠けているように感じる。
9.胃が気持ち悪くなるほどの恐ろしい感じがある。
10.自分の身なりに関しての気配り。
11.じっとしていられないほど落ち着かない。
12.物事を楽しみにして持つ。
13.突然,理由のない恐怖感(パニック)におそわれる。
14.面白い本や,ラジオまたはテレビ番組を楽しむ。
の14項目の各状態の頻度を4段階で回答し、それぞれ0から3の値に対応させる。奇数項目の値の合計が不安症状スコア、偶数項目の値の合計がうつ症状スコアに対応する。不安症状スコアとうつ症状スコアはそれぞれ0から21の値をとり、症状が重症であるほど高値となる。不安症状スコアが8未満であれば不安症状なし、うつ症状スコアが8未満であればうつ症状なしと見なすことが一般的である。
本明細書において、「感度」は、(真陽性の数)/(真陽性の数+偽陰性の数)の値を意味する。感度が高ければ心理的ストレス関連疾患を早期に発見することが可能となり、完全な治癒や再発率の低下につながる。
本明細書において、「特異度」は、(真陰性の数)/(真陰性の数+偽陽性の数)を意味する。特異度が高ければ健常体を心理的ストレス関連疾患患者と誤判別することによる無駄な追加検査の実施を防ぎ、患者の負担の軽減や医療費の削減につながる。
本明細書において、「精度」は(真陽性の数+真陰性の数)/(全症例数)の値を意味する。精度は全検体に対しての判別結果が正しかった割合を示しており、検出性能を評価する第一の指標となる。
本明細書において判定、検出又は診断の対象となる「検体」とは、心理的ストレスの発生、心理的ストレスの進行、及び心理的ストレスに対する治療効果の発揮にともない本発明の遺伝子が発現変化する組織及び生体材料を指す。具体的には臓器の組織及びその周辺の脈管、リンパ節、皮膚、及び血液、尿、唾液、汗、組織浸出液などの体液、血液から調製もしくは分離された血清や血漿、その他、便、毛髪などを指す。更にこれらから抽出された生体試料、具体的にはRNAやmiRNAなどの遺伝子を指す。
本明細書で使用される「hsa−miR−7845−5p遺伝子」又は「hsa−miR−7845−5p」という用語は、配列番号1に記載のhsa−miR−7845−5p遺伝子(miRBase Accession No.MIMAT0030420)やその他生物種ホモログもしくはオーソログなどが包含される。遺伝子は、Ple Hら、2012年、PLoS One、7巻、e50746に記載される方法によって得ることができる。また、「hsa−miR−7845−5p」は、その前駆体としてヘアピン様構造をとる「hsa−mir−7845」(miRBase Accession No.MI0025515、配列番号2)が知られている。
配列番号1又は2で表される遺伝子の名称とmiRBase Accession No.(登録番号)を表1に記載した。
本明細書において「特異的に結合可能な」とは、本発明で使用する核酸プローブ又はプライマーが、特定の標的核酸と結合し、他の核酸と実質的に結合できないことを意味する。
Figure 2018033352
本発明により、心理的ストレスを容易にかつ高い精度で検出することが可能になった。例えば、低侵襲的に採取できる患者の血液、血清及び又は血漿中の数個のmiRNA発現量の測定値を指標とし、容易に患者が心理的ストレスであるか否かを検出することができる。
この図は、配列番号1で表されるhsa−miR−7845−5pと、その前駆体である配列番号2で表されるhsa−mir−7845の塩基配列の関係を示す。 この図は、配列番号1で表されるhsa−miR−7845−5pの血液中存在量と、HADS不安スコア(A)およびHADSうつスコア(B)との関係を示す。
以下に本発明をさらに具体的に説明する。
1.心理的ストレスの標的核酸
本発明の上記定義の心理的ストレス検出用の核酸プローブ又はプライマーを使用して、心理的ストレス又は心理的ストレス細胞の存在及び/又は不存在を検出するための、心理的ストレスマーカーとしての主要な標的核酸には、hsa−miR−7845−5pのmiRNAが含まれる。
上記のmiRNAには、例えば、配列番号1で表される塩基配列を含むヒト遺伝子(すなわち、hsa−miR−7845−5p)、その同族体、その転写産物、あるいは及びその変異体又は誘導体が含まれる。ここで、遺伝子、同族体、転写産物、変異体及び誘導体は、上記定義のとおりである。
好ましい標的核酸は、配列番号1又は2のいずれかで表される塩基配列を含むヒト遺伝子、その転写産物、より好ましくは当該転写産物、すなわちmiRNA、その前駆体RNAであるpri−miRNA又はpre−miRNAである。
第1の標的遺伝子は、hsa−miR−7845−5p遺伝子、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体である。これまでに遺伝子又はその転写産物の発現の変化が心理的ストレスマーカーになりうるという報告は知られていない。
2.心理的ストレスの検出用の核酸プローブ又はプライマー
本発明においては、上記の心理的ストレスマーカーとしての標的核酸に特異的に結合可能な核酸を、心理的ストレスを検出又は診断するための核酸、例えば核酸プローブ又はプライマーとして用いることができる。
本発明において、心理的ストレスを検出するための、あるいは心理的ストレスを診断するために使用可能な核酸プローブ又はプライマーは、心理的ストレスの標的核酸としての、ヒト由来の、hsa−miR−7845−5p、あるいはそれらの組み合わせ、それらの同族体、それらの転写産物、あるいはそれらの変異体又は誘導体の存在、発現量又は存在量を定性的及び/又は定量的に測定することを可能にする。
上記の標的核酸は、健常体と比べて強い心理的ストレスを有する被験体において、該標的核酸の種類に応じてそれらの発現量が増加するものもあれば、又は減少するものもある(以下、「増加/減少」と称する)。本発明では、今回選択され明細書に記載されたいずれの標的miRNAであっても、被験体において心理的ストレスの定量のために使用することができる。
したがって、本発明によれば、心理的ストレスを有する被験体(例えばヒト)由来の体液と健常体由来の体液について上記標的核酸の発現量を測定し、それらを比較して、心理的ストレスを高精度で検出するために有効に使用することができる。
本発明で使用可能な核酸プローブ又はプライマーは、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸プローブ、あるいは、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを増幅するためのプライマーである。
具体的には、上記の核酸プローブ又はプライマーは、配列番号1のいずれかで表される塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含むポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、当該塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件(後述)でそれぞれハイブリダイズするポリヌクレオチド群及びその相補的ポリヌクレオチド群、並びにそれらのポリヌクレオチド群の塩基配列において15以上、好ましくは17以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド群から選ばれた1又は複数のポリヌクレオチドの組み合わせを含む。これに関連して、本発明で使用される標的miRNAは、例えば表1中の配列番号2に示されるような前駆体miRNA、並びにイソ型miRNA(isomiRNA)も包含する。イソ型miRNAは、塩基数が15程度と短いもの、29程度と長いもの、置換などの変異を有するものなどを含む。それゆえ、本発明では、上記核酸プローブ又はプライマーとして、前駆体miRNA及び標的イソ型miRNAの発現を測定可能にするための核酸プローブ又はプライマーも含まれる。これらのポリヌクレオチドは、標的核酸である上記心理的ストレスマーカーを検出するための核酸プローブ及びプライマーとして使用できる。
さらに具体的には、本発明で使用可能な核酸プローブ又はプライマーの例は、以下のポリヌクレオチド(a)〜(e)のいずれかからなる群から選択される少なくとも1つ以上(すなわち、1又は複数)のポリヌクレオチドである。
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、並びに、
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
上記のポリヌクレオチドにおいて「15以上の連続した塩基を含むその断片」は、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15から配列の全塩基数未満、17から配列の全塩基数未満、19から配列の全塩基数未満、などの範囲の塩基数を含むことができるが、これらに限定されないものとする。
本発明で使用される上記ポリヌクレオチド類又はその断片類はいずれもDNAでもよいしRNAでもよい。
本発明で使用可能な上記のポリヌクレオチドは、DNA組換え技術、PCR法、DNA/RNA自動合成機による方法などの一般的な技術を用いて作製することができる。
DNA組換え技術及びPCR法は、例えばAusubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Willey & Sons, US (1993); Sambrookら, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, US (1989)などに記載される技術を使用することができる。
配列番号1で表されるヒト由来のhsa−miR−7845−5pは公知であり、前述のようにその取得方法も知られている。このため、この遺伝子をクローニングすることによって、本発明で使用可能な核酸プローブ又はプライマーとしてのポリヌクレオチドを作製することができる。
そのような核酸プローブ又はプライマーは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。
あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、cDNAクローニング法によって作製することもできる。cDNAクローニング技術は、例えばmicroRNA Cloning Kit Wakoなどを利用できる。
ここで、配列番号1で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを検出するための核酸プローブ及びプライマーの配列は、miRNA又はその前駆体としては生体内に存在していない。例えば、配列番号1で表される塩基配列は、配列番号2で表される前駆体から生成されるが、この前駆体は図1に示すようなヘアピン様構造を有しており、配列番号1で表される塩基配列は互いにミスマッチ配列を有している。このため、配列番号1で表される塩基配列に対する、完全に相補的な塩基配列が生体内で自然に生成されることはない。このため、配列番号1で表される塩基配列を検出するための核酸プローブ及びプライマーは生体内に存在しない人工的な塩基配列を有することになる。
3.心理的ストレス検出用キット又はデバイス
本発明はまた、心理的ストレスマーカーである標的核酸を測定するための、本発明において核酸プローブ又はプライマーとして使用可能なポリヌクレオチド(これには、変異体、断片、又は誘導体を含みうる。)の1つ又は複数を含む心理的ストレス検出用のキット又はデバイスを提供する。
本発明における心理的ストレスマーカーである標的核酸は、hsa−miR−7845−5pである。
本発明のキット又はデバイスは、上記の心理的ストレスマーカーである標的核酸と特異的に結合可能な核酸、好ましくは、上記2に記載したポリヌクレオチド類から選択される少なくとも1つ以上(若しくは、1又は複数)のポリヌクレオチド又はその変異体を含む。
具体的には、本発明のキット又はデバイスは、配列番号1で表される塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、を含む(もしくは、からなる)ポリヌクレオチド、その相補的配列を含む(もしくは、からなる)ポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらのポリヌクレオチド配列の15以上の連続した塩基を含む変異体又は断片、を少なくとも1つ以上(若しくは、1又は複数)含むことができる。
本発明のキット又はデバイスに含むことができる断片は、例えば下記の(1)からなる群より選択される1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、又は5つ以上のポリヌクレオチドである。
(1)配列番号1で表される塩基配列においてuがtである塩基配列又はその相補的配列において、15以上、17以上又は19以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチド。
好ましい実施形態では、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表される塩基配列、もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列、からなるポリヌクレオチド、その相補的配列からなるポリヌクレオチド、それらのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、又はそれらの15以上、17以上又は19以上の連続した塩基を含む変異体である。
好ましい実施形態では、前記断片は、15以上、17以上又は19以上の連続した塩基を含むポリヌクレオチドであることができる。
本発明において、ポリヌクレオチドの断片のサイズは、各ポリヌクレオチドの塩基配列において、例えば、連続する15から配列の全塩基数未満、17から配列の全塩基数未満、19から配列の全塩基数未満などの範囲の塩基数である。
本発明のキット又はデバイスを構成する上記の組み合わせは、具体的には上記の表1に示される配列番号(表1中のmiRNAマーカーに対応する、配列番号1)の組み合わせに関する上記のポリヌクレオチドを挙げることができるが、それらはあくまでも例示であり、表1中の他のmiRNAマーカー(配列番号2に対応する。)と特異的に結合可能にするポリヌクレオチドとの種々の可能な組み合わせのすべてが本発明に包含されるものとする。
本発明において心理的ストレスを定量するためのキット又はデバイスを構成する上記の組合せとしては、例えば、表1に示される配列番号によって表される塩基配列からなる上記のポリヌクレオチドを2個組み合わせることでよく、通常では2個の組み合わせであっても充分な性能を得ることができる。
心理的ストレスを定量するための塩基配列若しくはその相補的配列からなる具体的なポリヌクレオチドとして、配列番号1に表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが好ましい。更に、心理的ストレス患者と健常体を判別するための塩基配列若しくはその相補的配列からなる具体的なポリヌクレオチドとして、配列番号1に表される塩基配列からなるポリヌクレオチドが好ましい。
本発明のキット又はデバイスには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド(これには、変異体、断片又は誘導体を包含しうる。)に加えて、心理的ストレス検出を可能とする既知のポリヌクレオチド又は将来見出されるであろうポリヌクレオチドも包含させることができる。
本発明のキットには、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド、及びその変異体又はその断片に加えて、自己記入式質問紙であるHADSによって算出される不安症状スコアとうつ症状スコアなどの公知の心理的ストレス検査用指標も包含させることができる。
本発明のキットに含まれるポリヌクレオチド、及びその変異体又はその断片は、個別に又は任意に組み合わせて異なる容器に包装されうる。
本発明のキットには、体液、細胞又は組織から核酸(例えばtotal RNA)を抽出するためのキット、標識用蛍光物質、核酸増幅用酵素及び培地、使用説明書、などを含めることができる。
本発明のデバイスは、上で説明した本発明におけるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又はその断片などの核酸が、例えば、固相に結合もしくは付着された心理的ストレスマーカー測定のためのデバイスである。固相の材質の例は、プラスチック、紙、ガラス、シリコン、などであり、加工のしやすさから、好ましい固相の材質はプラスチックである。固相の形状は、任意であり、たとえば方形、丸形、短冊形、フィルム形などである。本発明のデバイスは、たとえば、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスが含まれ、具体的にはブロッティングデバイス、核酸アレイ(例えばマイクロアレイ、DNAチップ、RNAチップなど)などが例示される。
核酸アレイ技術は、必要に応じてLリジンコートやアミノ基、カルボキシル基などの官能基導入などの表面処理が施された固相の表面に、スポッター又はアレイヤーと呼ばれる高密度分注機を用いて核酸をスポットする方法、ノズルより微少な液滴を圧電素子などにより噴射するインクジェットを用いて核酸を固相に吹き付ける方法、固相上で順次ヌクレオチド合成を行う方法などの方法を用いて、上記の核酸を1つずつ結合もしくは付着させることによりチップなどのアレイを作製し、このアレイを用いてハイブリダイゼーションを利用して標的核酸を測定する技術である。
本発明のキット又はデバイスは、心理的ストレスマーカーであるhsa−miR−7845−5pのポリヌクレオチドのそれぞれと特異的に結合可能な核酸を含む。
本発明のキット又はデバイスは、下記4.の心理的ストレスの検出のために使用することができる。
4.心理的ストレスの検出方法
本発明はさらに、上記3.で説明した本発明のキット又はデバイス(本発明で使用可能な上記の核酸を含む。)を用いて、血液、血清、血漿等の検体中の、miR−7845−5p、で表される心理的ストレス由来の遺伝子の発現量をin vitroで測定する。そのようにして測定された発現量と、同様に測定された健常体の対照発現量とを用いて、たとえば統計学的に有意に差がある両発現量を比較して、或いは、HADSによって算出される心理的ストレスの程度との量的相関を比較して、或いは、検体中の上記遺伝子の発現量と判別式(下記参照)から決定された判別得点によって、被験体が心理的ストレスを有するかどうかをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレスの存在又は不存在を検出することを含む、被験体における心理的ストレスの検出方法を提供する。
本発明の上記方法は、低侵襲的に、心理的ストレスの定量を可能とし、同時に心理的ストレス関連疾患の早期診断を高い感度及び特異度をもって可能とし、これにより、早期の治療及び予後の改善をもたらし、さらに、心理的ストレス状態の悪化のモニターや内科的、精神科的な治療の有効性のモニターを可能にする。
本発明の血液、血清、血漿等の検体から心理的ストレス由来の遺伝子を抽出する方法としては、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit (東レ株式会社)中のRNA抽出用試薬を加えて調整するのが特に好ましいが、一般的な酸性フェノール法(Acid Guanidinium−Phenol−Chloroform(AGPC)法)を用いてもよいし、Trizol(登録商標)(Life Technologies社)を用いてもよいし、Trizol(life technologies社)やIsogen(ニッポンジーン社、日本国)などの酸性フェノールを含むRNA抽出用試薬を加えて調製してもよい。さらに、miRNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen社)などのキットを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明はまた、本発明のキット又はデバイスの、被験体由来の検体中の心理的ストレス由来のmiRNA遺伝子の発現産物のin vitroでの検出のための使用を提供する。
本発明の上記方法において、上記キット又はデバイスは、上で説明したような、本発明で使用可能なポリヌクレオチドを単一であるいはあらゆる可能な組み合わせで含むものが使用される。
本発明の心理的ストレスの検出又は(遺伝子)診断において、本発明のキット又はデバイスに含まれるポリヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとして用いることができる。プライマーとして用いる場合には、Life Technologies社のTaqMan(登録商標) MicroRNA Assays、Qiagen社のmiScript PCR Systemなどを利用できるが、これらの方法に限定されない。
本発明のキット又はデバイスに含まれるポリヌクレオチドは、ノーザンブロット法、サザンブロット法、in situ ハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法などのハイブリダイゼーション技術、シーケンサーなどによるポリヌクレオチドの塩基配列を特定する技術、定量RT−PCR法などの定量増幅技術などの、特定遺伝子を特異的に検出する公知の方法において、定法に従ってプライマー又はプローブとして利用することができる。測定対象検体としては、使用する検出方法の種類に応じて、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を採取する。あるいは、そのような体液から上記の方法によって調製されたtotal RNAを用いてもよいし、さらに当該RNAをもとにして調製される、cDNAを含む各種のポリヌクレオチドを用いてもよい。
本発明のキット又はデバイスは、心理的ストレスの診断又は心理的ストレスのの有無の検出のために有用である。具体的には、当該キット又はデバイスを使用した心理的ストレスの検出は、心理的ストレスの存在が疑われる被験体から、血液、血清、血漿、尿等の検体を用いて、当該キット又はデバイスに含まれる核酸プローブ又はプライマーで検出される遺伝子の発現量をin vitroで検出することによって行うことができる。心理的ストレスの存在が疑われる被験体の血液、血清、血漿、尿等の検体中の、配列番号1で表される塩基配列もしくはその相補的配列からなるポリヌクレオチド(その変異体、断片又は誘導体を包含する。)によって測定される標的miRNAマーカーの発現量が、健常体の血液、血清、又は血漿、尿等の検体中のそれらの発現量と比べて統計学的に有意に差がある場合、当該被験体は心理的ストレスを有していると評価することができる。
本発明のキット又はデバイスを利用した検体中に心理的ストレス由来の遺伝子の発現産物が含まれないこと、又は心理的ストレス由来の遺伝子の発現産物が含まれること、の検出方法は、被験体の血液、血清、血漿、尿等の体液を採取して、そこに含まれる標的遺伝子の発現量を、本発明のポリヌクレオチド群から選ばれた単数又は複数のポリヌクレオチド(変異体、断片又は誘導体を包含する。)を用いて測定することにより、心理的ストレスの有無を評価する又は心理的ストレスを検出することを含む。また本発明の心理的ストレスの検出方法は、例えば心理的ストレス患者において、該疾患の改善のために治療薬を投与した場合における当該疾患の改善の有無又は改善の程度を評価又は診断することもできる。
本発明の方法は、例えば以下の(a)、(b)及び(c)のステップ:
(a)被験体由来の検体を、in vitroで、本発明のキット又はデバイス中のポリヌクレオチドと接触させるステップ、
(b)検体中の標的核酸の発現量を、上記ポリヌクレオチドを核酸プローブ又はプライマーとして用いて測定するステップ、
(c)(b)の結果をもとに、被験体が心理的ストレス(細胞)を有しているかどうかを評価し、それによって被験体における心理的ストレス(細胞)の存在又は不存在を検出するステップ、
を含むことができる。
上記のステップ(a)では、好ましい検体として、血液、血清又は血漿を使用することができる。
上記のステップ(b)では、発現量の測定を、核酸アレイ法などのハイブリダイゼーション技術、シーケンサーなどによるポリヌクレオチドの塩基配列を特定する技術、定量RT−PCR法などの定量増幅技術、などの技術によって行うことができる。
上記のステップ(c)では、被験体の検体中の標的核酸の発現量が健常体の検体中の標的核酸の発現量(「参照」(Reference)又は「対照」(Control)ともいう。)と比べて統計学的に有意な差がある場合、HADSによって算出される心理的ストレスの程度との量的相関を比較して、或いは、被験体の検体中の標的核酸の発現量と判別式から作成された判別得点によって当該被験体は心理的ストレスを有していると評価することができる。
具体的には、本発明は、miR−7845−5p、のポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を用いて被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体の対照発現量とを用いて、被験体が心理的ストレスを有していること、又は心理的ストレスを有してしていないことをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレスの存在又は不存在を検出することを含む、被験体における心理的ストレスの検出方法を提供する。
本明細書において「評価」するとは、医師による判定ではなく、in vitroでの検査による結果に基づいた評価支援もしくは評価補助である。
上記のとおり、本発明の方法において、具体的には、miR−7845−5pがhsa−miR−7845−5pである。
また、本発明の方法において、具体的には、核酸(具体的には、プローブ又はプライマー)が、下記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド:
(a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
(d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
(e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
からなる群から選択される。
本発明方法で用いられる検体は、被験体の生体組織、血液、血清、血漿、尿等の体液など、から調製される検体を挙げることができる。具体的には、当該組織から調製されるRNA含有検体、それからさらに調製されるポリヌクレオチドを含む検体、血液、血清、血漿、尿等の体液、被験体の生体組織の一部又は全部をバイオプシーなどで採取するか、手術によって摘出した生体組織、などであり、これらから、測定のための検体を調製することができる。
本明細書での「被験体」とは、哺乳動物、非限定的に例えばヒト、サルなどの霊長類、マウス、ラットなどのげっ歯類、イヌ、ネコなどの愛玩動物、ウマなどの競技用動物、動物園で飼育される動物などを指し、好ましくはヒトである。
本発明の方法は、測定対象として用いる検体の種類に応じてステップを変更することができる。
測定対象物としてRNAを利用する場合、被験体における心理的ストレス(場合により、心理的ストレス細胞であってもよい。)の検出は、例えば下記のステップ(a)、(b)及び(c):
(a)被験体の検体から調製されたRNA又はそれから転写された相補的ポリヌクレオチド(cDNA)を、本発明のキット又はデバイス中のポリヌクレオチドと結合させるステップ、
(b)当該ポリヌクレオチドに結合した検体由来のRNA又は当該RNAから合成されたcDNAを、上記ポリヌクレオチドを核酸プローブとして用いるハイブリダイゼーションによって、あるいは、ポリヌクレオチドの塩基配列を特定するシーケンサーによって、あるいは、上記ポリヌクレオチドをプライマーとして用いる定量RT−PCRによって、定量的に又は定性的に測定するステップ、
(c)上記(b)の測定結果に基づいて、対照と比較して被験体が心理的ストレスを有してしていること、又は心理的ストレスを有していないことをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレス(由来の遺伝子の発現)の存在又は不存在を検出するステップ、
を含むことができる。
本発明によって心理的ストレス(由来の遺伝子の発現)をin vitroで検出、検査、評価又は診断するために、例えば種々のハイブリダイゼーション法を使用することができる。このようなハイブリダイゼーション法には、例えばノーザンブロット法、サザンブロット法、RT−PCR法、DNAチップ解析法、in situハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法、サザンハイブリダイゼーション法、シーケンサーなどによるポリヌクレオチドの塩基配列を特定する技術などを使用することができる。
ノーザンブロット法を利用する場合は、本発明で使用可能な上記核酸プローブを用いることによって、RNA中の各遺伝子発現の有無やその発現量を検出、測定することができる。具体的には、核酸プローブ(相補鎖)を放射性同位元素(32P、33P、35Sなど)や蛍光物質などで標識し、それを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーした被検者の生体組織由来のRNAとハイブリダイズさせたのち、形成されたDNA/RNA二重鎖の標識物(放射性同位元素又は蛍光物質)に由来するシグナルを放射線検出器(BAS−1800II(富士写真フィルム株式会社、日本国)、などを例示できる)又は蛍光検出器(STORM 865(GEヘルスケア社)、などを例示できる)で検出又は測定する方法を例示することができる。
定量RT―PCR法を利用する場合には、本発明で使用可能な上記プライマーを用いることによって、RNA中の遺伝子発現の有無やその発現量を検出もしくは測定することができる。具体的には、被検体の生体組織由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の検出用組成物から調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、得られた二本鎖DNAを検出する方法を例示することができる。なお、二本鎖DNAの検出法としては、上記PCRをあらかじめ放射性同位元素や蛍光物質で標識しておいたプライマーを用いて行う方法、PCR産物をアガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドなどで二本鎖DNAを染色して検出する方法、産生された二本鎖DNAを常法にしたがってナイロンメンブレンなどにトランスファーさせ、標識した核酸プローブとハイブリダイズさせて検出する方法を含むことができる。
シーケンサーを利用する場合には、本発明で使用可能な上記プライマーを用いることによって、リード数からRNA中の遺伝子発現の有無やその発現量を検出もしくは測定することができる。具体的には、被検体の生体組織由来のRNAから常法にしたがってcDNAを調製して、これを鋳型として標的の各遺伝子の領域が増幅できるように、本発明の検出用組成物から調製した1対のプライマー(上記cDNAに結合する正鎖と逆鎖からなる)をcDNAとハイブリダイズさせて常法によりPCR法を行い、増幅したDNAをHiSeq 2500(Illumina社)、Ion Proton(登録商標)System(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)などのシーケンサーで検出又は測定する方法を例示することができる。また、具体的には、被検体の生体組織由来のRNAをPCR法によって増幅せずにPacBio RS II(Pacific Biosciences社)で検出又は測定する方法を例示することができる。
核酸アレイ技術(若しくは解析)を利用する場合は、本発明の上記検出用組成物を核酸プローブ(一本鎖又は二本鎖)として基板(固相)に貼り付けたRNAチップ又はDNAチップを用いる。核酸プローブを貼り付けた領域をプローブスポット、核酸プローブを貼り付けていない領域をブランクスポットと称する。遺伝子群を基板に固相化したものには、一般に核酸チップ、核酸アレイ、マイクロアレイなどという名称があり、DNAもしくはRNAアレイにはDNAもしくはRNAマクロアレイとDNAもしくはRNAマイクロアレイが包含されるが、本明細書ではチップといった場合、当該アレイを含むものとする。DNAチップとしては3D−Gene(登録商標)Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用いることができるが、これに限られない。
DNAチップの測定は、限定されないが、例えば検出用組成物の標識物に由来するシグナルを画像検出器(Typhoon 9410(GEヘルスケア社)、3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)などを例示できる)で検出又は測定する方法を例示することができる。
本明細書中で使用する「ストリンジェントな条件」とは、上述のように核酸プローブが他の配列に対するよりも、検出可能により大きな程度(例えばバックグラウンド測定値の平均+バックグラウンド測定値の標準誤差×2以上の測定値)で、その標的配列に対してハイブリダイズする条件である。
ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションとその後の洗浄によって、規定される。そのハイブリダイゼーションの条件は、限定されないが、例えば30℃〜60℃で、SSC、界面活性剤、ホルムアミド、デキストラン硫酸塩、ブロッキング剤などを含む溶液中で1〜24時間の条件とする。ここで、1×SSCは、150mM塩化ナトリウム及び15mMクエン酸ナトリウムを含む水溶液(pH7.0)であり、界面活性剤はSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、Triton、もしくはTweenなどを含む。ハイブリダイゼーション条件としては、より好ましくは3〜10×SSC、0.1〜1%SDSを含む。また、ストリンジェントな条件を規定するもうひとつの条件である、ハイブリダイゼーション後の洗浄条件としては、例えば、30℃の0.5×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.2×SSCと0.1%SDSを含む溶液、及び30℃の0.05×SSC溶液による連続した洗浄などの条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが望ましい。具体的にはこのような相補鎖として、対象の正鎖の塩基配列と完全に相補的な関係にある塩基配列からなる鎖、並びに当該鎖と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%又は少なくとも95%、例えば少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する塩基配列からなる鎖を例示することができる。
これらのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」の他の例については、例えばSambrook, J. & Russel, D. 著、Molecular Cloning A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2001年1月15日発行、の第1巻7.42〜7.45、第2巻8.9〜8.17などに記載されており、本発明において利用できる。
本発明のキットのポリヌクレオチド断片をプライマーとしてPCRを実施する際の条件の例としては、例えば10mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、1〜2mM MgClなどの組成のPCRバッファーを用い、当該プライマーの配列から計算されたTm値+5〜10℃において15秒から1分程度処理することなどが挙げられる。かかるTm値の計算方法としてTm値=2×(アデニン残基数+チミン残基数)+4×(グアニン残基数+シトシン残基数)などが挙げられる。
また、定量RT−PCR法を用いる場合には、TaqMan(登録商標) MicroRNA Assays(Life Technologies社)、LNA(登録商標)−based MicroRNA PCR(Exiqon社)、Ncode(登録商標) miRNA qRT−PCT キット(invitrogen社)などの、miRNAを定量的に測定するために特別に工夫された市販の測定用キットを用いてもよい。
遺伝子発現量の算出としては、限定されないが、例えばStatistical analysis of gene expression microarray data(Speed T.著、Chapman and Hall/CRC)、及びA beginner’s guide Microarray gene expression data analysis(Causton H.C.ら著、Blackwell publishing)などに記載された統計学的処理を、本発明において利用できる。例えばDNAチップ上のブランクスポットの測定値の平均値に、ブランクスポットの測定値の標準偏差の2倍、好ましくは3倍、より好ましくは6倍を加算し、その値以上のシグナル値を有するプローブスポットを検出スポットとみなすことができる。さらに、ブランクスポットの測定値の平均値をバックグラウンドとみなし、プローブスポットの測定値から減算し、遺伝子発現量とすることができる。遺伝子発現量の欠損値については、解析対象から除外するか、好ましくは各DNAチップにおける遺伝子発現量の最小値で置換するか、より好ましくは遺伝子発現量の最小値の対数値から0.1を減算した値、で置換することができる。さらに、低シグナルの遺伝子を除去するために、測定サンプル数の20%以上、好ましくは50%、より好ましくは80%以上において2の6乗、好ましくは2の8乗、より好ましくは2の10乗以上の遺伝子発現量を有する遺伝子のみを解析対象として選択することができる。遺伝子発現量の正規化(ノーマライゼーション)としては、限定されないが、例えばglobal normalizationやquantile normalization(Bolstad, B. M.ら、2003年、Bioinformatics、19巻、p185−193)、などが挙げられる。
本発明は、本発明の診断用ポリヌクレオチド、キット、デバイス(例えばチップ)、又はそれらの組み合わせを用いて被験体由来の検体中の標的遺伝子又は遺伝子の発現量を測定し、HADS不安症状スコアとの相関、又は、HADSうつ症状スコアとの相関を、Pearsonの積率相関係数によって評価する方法を提供する。Pearsonの積率相関係数の絶対値が例えば0.2、0.5、又は、0.8より大きい場合に相関があるとみなすことができる。
例えば、Pearsonの積率相関係数によって選択した、上に記載したような配列番号1で表される塩基配列、もしくは当該塩基配列のuがtである塩基配列、又はその相補的配列、に基づく1又は2以上の上記ポリヌクレオチド、からの任意の組み合わせを診断用遺伝子セットとする。さらに、HADSによる診断結果が心理的ストレス患者由来の検体と、健常体における該診断用遺伝子セットの発現量を用いて、至適健常閾値を算出する。その結果、未知の検体の該診断用遺伝子セットの発現量を測定することにより、未知の検体の心理的ストレス状態を評価することができる。
本発明はまた、本発明の診断用ポリヌクレオチド、キット、デバイス(例えばチップ)、又はそれらの組み合わせを用いて、被験体由来の検体中の標的遺伝子又は遺伝子の発現量を測定し、心理的ストレス患者由来の検体と健常体由来の検体の遺伝子発現量を教師サンプルとして判別式(判別関数)を作成し、検体が心理的ストレス由来の遺伝子の発現を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する方法を提供する。
すなわち、本発明はさらに、本発明の診断用ポリヌクレオチド、キット、デバイス(例えばチップ)、又はそれらの組み合わせを用いて、検体が心理的ストレス由来の遺伝子の発現を含むこと/又は心理的ストレス由来の遺伝子の発現を含まないことを決定又は評価することが既知の複数の検体中の標的遺伝子の発現量をin vitroで測定する第1のステップ、前記第1のステップで得られた当該標的遺伝子の発現量の測定値を教師サンプルとした判別式を作成する第2のステップ、被験体由来の検体中の当該標的遺伝子の発現量を第1のステップと同様にin vitroで測定する第3のステップ、前記第2のステップで得られた判別式に第3のステップで得られた当該標的遺伝子の発現量の測定値を代入し、当該判別式から得られた結果に基づいて、検体が心理的ストレス由来の遺伝子の発現を含むこと、及び/又は、心理的ストレス由来の遺伝子の発現を含まないことを決定又は評価する第4のステップを含む、ここで、当該標的遺伝子が当該ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばチップ)に含まれるポリヌクレオチド、及びその変異体又はその断片によって検出可能なものである、前記方法を提供する。ここで、フィッシャーの判別分析、マハラノビス距離による非線形判別分析、ニューラルネットワーク、Support Vector Machine(SVM)などを用いて判別式を作成できるが、これらに限定されない。
線形判別分析は群分けの境界が直線あるいは超平面である場合、式1を判別式として用いて群の所属を判別する方法である。ここで、xは説明変数、wは説明変数の係数、wは定数項とする。
Figure 2018033352
判別式で得られた値を判別得点と呼び、新たに与えられたデータセットの測定値を説明変数として当該判別式に代入し、判別得点の符号(+もしくは−)で群分けを判別することができる。
線形判別分析の一種であるフィッシャーの判別分析はクラス判別を行うのに適した次元を選択するための次元削減法であり、合成変数の分散に着目して、同じラベルを持つデータの分散を最小化することで識別力の高い合成変数を構成する(Venables,W. N.ら著、Modern Applied Statistics with S. Fourth edition. Springer.、2002年)。フィッシャーの判別分析では式2を最大にするような射影方向wを求める。ここで、μは入力の平均、nはクラスgに属するデータ数、μはクラスgに属するデータの入力の平均とする。分子・分母はそれぞれデータをベクトルwの方向に射影したときのクラス間分散、クラス内分散となっており、この比を最大化することで判別式係数wを求める(金森敬文ら著、「パターン認識」、共立出版(2009年)、Richard O.ら著、Pattern Classification Second Edition.、Wiley−Interscience、2000年)。
Figure 2018033352
マハラノビス距離はデータの相関を考慮した式3で算出され、各群からのマハラノビス距離の近い群を所属群として判別する非線形判別分析として用いることができる。ここで、μは各群の中心ベクトル、S−1はその群の分散共分散行列の逆行列である。中心ベクトルは説明変数xから算出され、平均ベクトルや中央値ベクトルなどを用いることができる。
Figure 2018033352
SVMとはV.Vapnikが考案した判別分析法である(The Nature of Statistical Leaning Theory、Springer、1995年)。分類すべき群分けが既知のデータセットの特定のデータ項目を説明変数、分類すべき群分けを目的変数として、当該データセットを既知の群分けに正しく分類するための超平面と呼ばれる境界面を決定し、当該境界面を用いてデータを分類する判別式を決定する。そして当該判別式は、新たに与えられるデータセットの測定値を説明変数として当該判別式に代入することにより、群分けを判別することができる。また、このときの判別結果は分類すべき群でも良く、分類すべき群に分類されうる確率でも良く、超平面からの距離でも良い。SVMでは非線形な問題に対応するための方法として、特徴ベクトルを高次元へ非線形変換し、その空間で線形の識別を行う方法が知られている。非線形に写像した空間での二つの要素の内積がそれぞれのもとの空間での入力のみで表現されるような式のことをカーネルと呼び、カーネルの一例としてリニアカーネル、RBF(Radial Basis Function)カーネル、ガウシアンカーネルを挙げることができる。カーネルによって高次元に写像しながら、実際には写像された空間での特徴の計算を避けてカーネルの計算のみで最適な判別式、すなわち判別式を構成することができる(例えば、麻生英樹ら著、統計科学のフロンテイア6「パターン認識と学習の統計学 新しい概念と手法」、岩波書店(2004年)、Nello Cristianiniら著、SVM入門、共立出版(2008年))。
SVM法の一種であるC−support vector classification(C−SVC)は、2群の説明変数で学習を行って超平面を作成し、未知のデータセットがどちらの群に分類されるかを判別する(C. Cortesら、1995年、Machine Learning、20巻、p273−297)。
本発明の方法で使用可能なC−SVCの判別式の算出例を以下に示す。まず全被験体を心理的ストレス患者と健常体の2群に群分けする。被験体が心理的ストレス患者である、もしくは健常体であると判断する基準としては、例えばHADSによって算出される不安症状スコアやうつ症状スコアを用いることができる。
次に、分けられた2群の血清由来の検体の網羅的遺伝子発現量からなるデータセット(以下、学習検体群)を用意し、当該2群の間で遺伝子発現量に明確な差が見られる遺伝子を説明変数、当該群分けを目的変数(例えば−1と+1)としたC−SVCによる判別式を決定する。式4は最適化する目的関数であり、ここで、eは全ての入力ベクトル、yは目的変数、aはLagrange未定乗数ベクトル、Qは正定値行列、Cは制約条件を調整するパラメータを表す。
Figure 2018033352
式5は最終的に得られた判別式であり、判別式によって得られた値の符号で所属する群を決定できる。ここで、xはサポートベクトル、yは群の所属を示すラベル、aは対応する係数、bは定数項、Kはカーネル関数である。
Figure 2018033352
カーネル関数としては例えば式6で定義されるRBFカーネルを用いることができる。ここで、xはサポートベクトル、rは超平面の複雑さを調整するカーネルパラメータを表す。
Figure 2018033352
これらのほかにも被験体由来の検体が心理的ストレス由来の標的遺伝子の発現を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する、あるいはその発現量を健常体由来の対照と比較し評価する、方法として、ニューラルネットワーク、k−近傍法、決定木、ロジスティック回帰分析などの手法を選択することができる。
本発明の方法は、例えば下記のステップ(a)、(b)及び(c):
(a)心理的ストレス患者由来の心理的ストレス由来遺伝子を含む組織及び/又は健常体由来の心理的ストレス由来遺伝子を含まない組織であることが既に知られている検体中の標的遺伝子の発現量を、本発明による検出用ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばDNAチップ)を用いて測定するステップ、
(b)(a)で測定された発現量の測定値から、上記の式1〜3、5及び6の判別式を作成するステップ、
(c)被験体由来の検体中の当該標的遺伝子の発現量を、本発明による診断(検出)用ポリヌクレオチド、キット又はデバイス(例えばDNAチップ)を用いて測定し、(b)で作成した判別式にそれらを代入して、得られた結果に基づいて検体が心理的ストレス由来の標的遺伝子の発現を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する、あるいはその発現量を健常体由来の対照と比較し評価する、ステップ、
を含むことができる。
ここで、式1〜3、5及び6の式中のxは説明変数であり、上記2.に記載したポリヌクレオチド類から選択されるポリヌクレオチド又はその断片を測定することによって得られる値を含み、具体的には本発明の心理的ストレス患者と健常体を判別するための説明変数は、例えば下記の(1)より選択される遺伝子発現量である。
(1)配列番号1で表される塩基配列又はその相補的配列において、15以上の連続した塩基、もしくは当該塩基のuがtである塩基、を含むRNAもしくはDNAのいずれかによって測定される心理的ストレス患者もしくは健常体の血清における遺伝子発現量。
以上に示すように、被験体由来の検体が心理的ストレス由来の遺伝子を含むこと及び/又は含まないことを決定又は評価する方法として、判別式の作成には、学習検体群から作成した判別式が必要であり、当該判別式の判別精度を上げるためには、学習検体群中の2群間に明確な差がある遺伝子を判別式に用いることが必要である。
また、判別式の説明変数に用いる遺伝子の決定は、次のように行うことが好ましい。まず、学習検体群である、心理的ストレス患者群の網羅的遺伝子発現量と健常体群の網羅的遺伝子発現量をデータセットとし、パラメトリック解析であるt検定のP値、ノンパラメトリック解析であるMann−WhitneyのU検定のP値、又はWilcoxon検定のP値などを利用して、当該2群間における各遺伝子の発現量の差の大きさを求める。
検定によって得られたP値の危険率(有意水準)が例えば5%、1%又は0.01%より小さい場合に統計学的に有意とみなすことができる。
また、検定ではなく心理的ストレス患者群の遺伝子発現量と健常体群の遺伝子発現量の間で、各々の遺伝子発現量の中央値の発現比の絶対値(Fold change)を算出し、判別式の説明変数に用いる遺伝子を選択してもよい。また、心理的ストレス患者群と健常体群の遺伝子発現量を用いてROC曲線を作成し、AUROC値を基準にして判別式の説明変数に用いる遺伝子を選択してもよい。
次に、ここで求めた遺伝子発現量の差が大きい任意の数の遺伝子を用いて、上記の種々の方法で算出することができる判別式を作成する。最大の判別精度を得る判別式を構築する方法として、例えばP値の有意水準を満たした遺伝子のあらゆる組み合わせで判別式を構築する方法や、判別式を作成するために使用する遺伝子を、遺伝子発現量の差の大きい順に一つずつ増やしながら繰り返して評価する方法などがある(Furey TS.ら、2000年、Bioinformatics.、16巻、p906−14)。この判別式に対し、別の独立の心理的ストレス患者もしくは健常体の遺伝子発現量を説明変数に代入して、この独立の心理的ストレス患者もしくは健常体について所属する群の判別結果を算出する。すなわち、見出した診断用遺伝子セット及び診断用遺伝子セットを用いて構築した判別式を、独立の検体群で評価することにより、より普遍的な心理的ストレスを検出することができる診断用遺伝子セット及び心理的ストレスを判別する方法を見出すことができる。
また、当該判別式の判別性能(汎化性)の評価には、Split−sample法を用いることが好ましい。すなわち、データセットを学習検体群と検証検体群に分割し、学習検体群で統計学的検定による遺伝子の選択と判別式作成を行い、該判別式で検証検体群を判別した結果と検証検体群が所属する真の群を用いて精度・感度・特異度を算出し、判別性能を評価する。一方、データセットを分割せずに、全検体を用いて統計学的検定による遺伝子の選択と判別式作成を行い、新規に用意した検体を該判別式で判別して精度・感度・特異度を算出し、判別性能を評価することもできる。
本発明は、心理的ストレスの診断及び治療に有用な疾患診断用ポリヌクレオチド、当該ポリヌクレオチドを用いた心理的ストレスの検出方法、及び当該ポリヌクレオチドを含む心理的ストレスの検出キット及びデバイスを提供する。特に、既存の自己記入式の心理的ストレス診断法を超える精度を示す診断用遺伝子の選定と判別式の作成を実施するため、本発明の方法において、例えば、HADSによって心理的ストレスを有していないと判断されたにもかかわらず、他の精密検査によって心理的ストレスに起因する疾患が存在することが最終的に明らかとなった被験者由来の血清中の発現遺伝子と、心理的ストレスが存在しない被験者由来の血清中の発現遺伝子を比較することによって、HADSでは検出できない心理的ストレスを検出する、診断用遺伝子セット及び判別式を構築できる。
例えば、上に記載したような配列番号1で表される塩基配列、もしくは当該塩基配列のuがtである塩基配列、又はその相補的配列、に基づく1又は2以上の上記ポリヌクレオチド、からの任意の組み合わせを診断用遺伝子セットとする。さらに、HADSによる診断結果が心理的ストレス患者由来の検体と、健常体における該診断用遺伝子セットの発現量を用いて判別式を構築する。その結果、未知の検体の該診断用遺伝子セットの発現量を測定することにより、未知の検体が心理的ストレス由来遺伝子の発現を含むこと又は心理的ストレス由来遺伝子の発現を含まないことを見分けることができる。
本発明の上記方法によって心理的ストレスを有すると決定された被験体に対し、精神障害(不安症状又はうつ症状)の発症前又は発症後に早期に治療を施すことができる。治療については、薬剤投与によることが一般的である。
抗うつ薬の例は、アモキサピン(アモキサン) 、ノルトリプチリン(ノリトレン) 、アミトリプチリン(トリプタノール) 、トリミプラミン(スルモンチール)、イミプラミン(イミドール、トフラニール) 、クロミプラミン(アナフラニール) 、ドスレピン(プロチアデン) 、ロフェプラミン(アンプリット) 、マプロチリン(ルジオミール) 、セチプチリン(テシプール)、ミアンセリン(テトラミド) 、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)、パロキセチン(パキシル) 、セルトラリン(ジェイゾロフト) 、エスシタロプラム(レクサプロ) 、ミルナシプラン(トレドミン) 、デュロキセチン(サインバルタ) 、ミルタザピン(リフレックス、レメロン)などである。括弧内は商品名を表す。
抗不安薬の例は、クロチアゼパム(リーゼ) 、エチゾラム(デパス)、フルタゾラム(コレミナール) 、ロラゼパム(ワイパックス) 、アルプラゾラム(コンスタン、ソラナックス) 、プロマゼパム(レキソタン、セニラン)、ジアゼパム(セルシン、ホリゾン) 、クロキサゾラム(セパゾン) 、フルジアゼパム(エリスパン) 、クロルジアゼポキシド(コントール、バランス) 、オキサゾラム(セレナール)、メダゼパム(レスミット) 、メキサゾラム(メレックス)、クロラゼプ酸二カリウム(メンドン) 、ロフラゼブ酸エチル(メイラックス)、フルトプラゼパム(レスタス)、プラゼパム(セダプラン) などである。括弧内は商品名を表す。
投与法や用量は、医師の判断や処方に基づいて決定され、一般に、性別、体重、年齢、症状等に応じて変化しうるものである。
したがって、本発明はさらに、被験体において心理的ストレスを検出し及び治療する方法であって、本発明の上記キット又はデバイスを用いて被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体の対照発現量とを用いて、被験体が心理的ストレスを有していること、又は心理的ストレスを有していないことをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレスの存在又は不存在を検出するステップ、並びに、心理的ストレスを有すると評価された被験体を治療するステップを含む方法を提供する。
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されないものとする。
[実施例1]
<検体の採取>
インフォームドコンセントを得た、人間ドック受診者81人からベノジェクトII真空採血管VP−P075K(テルモ株式会社、日本国)を用いて血清を採取した。この81例の構成は、男性が59人、女性が22人であり、平均年齢は57.7歳、最高齢が84歳、最年少が26歳であった。血清採取と同時にHADS質問票への回答を依頼し、14項目の各状態の頻度HADS不安スコアとうつスコアを算出し、度数分布を表2に示した。なお、被験者が回答を歪曲できるというHADSの問題点は通常、その回答を歪曲することにより被験者の診療内容や就労条件などに何らかの影響が発生する場合に生じる事象である一方、本実施例では特に精神疾患等を有しない人間ドック受診者に対して研究目的でHADSへの回答を依頼しており、その回答内容によって被験者に利益・不利益は一切生じない状況であるため、HADSへの回答内容は十分に信頼できるものと判断した。
Figure 2018033352
<totalRNAの抽出>
得られた血清300μLから、3D−Gene(登録商標)RNA extraction reagent from liquid sample kit(東レ株式会社、日本国)中のRNA抽出用試薬を用いて、同社の定めるプロトコールに従ってtotal RNAを得た。
<miRNA発現量の測定>
得られたtotal RNAに対して、3D−Gene(登録商標) miRNA Labeling kit(東レ株式会社)を用いて同社が定めるプロトコールに基づいてmiRNAを蛍光標識した。オリゴDNAチップとして、miRBase release 21に登録されているmiRNAの中で、2,588種のmiRNAと相補的な配列を有するプローブを搭載した3D−Gene(登録商標) Human miRNA Oligo chip(東レ株式会社)を用い、同社が定めるプロトコールに基づいてストリンジェントな条件でハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション後の洗浄を行った。DNAチップを3D−Gene(登録商標)スキャナー(東レ株式会社)を用いてスキャンし、画像を取得して3D−Gene(登録商標)Extraction(東レ株式会社)にて蛍光強度を数値化した。数値化された蛍光強度を、底が2の対数値に変換して遺伝子発現量とし、ブランク値の減算を行い、欠損値は各DNAチップにおける遺伝子発現量の最小値の対数値から0.1を減算した値で置換した。その結果、81人全例の血清に対する、網羅的なmiRNA発現量を得た。データの正規化は、内因性コントロールとしてhsa−miR−149−3p、hsa−miR−2861、hsa−miR−4463を用いて補正を実施した(Shimomura A, Shiino S, Kawauchi Jら、2016年、Cancer Science、第107巻、p326−334)。数値化されたmiRNA発現量を用いた計算及び統計解析は、SAS Enterprise Guide 7.1(SAS Institute, Cary, NC, USA)及びIBS SPSS Statistics 22(IBM Corp., Armonk, NY, USA)を用いて実施した。
<マーカーの同定方法>
81例の検体より77例を学習検体群とし、4例を検証検体群とした。より信頼性の高い診断マーカーを獲得するため、全体の50%以上の検体で2の6乗以上の発現量を有するmiRNAのみを選択した。学習検体群における各miRNAとHADS不安症状スコアとの相関および、各miRNAとHADSうつ症状スコアとの相関をPearsonの相関解析により評価し、共に両側P値が0.05未満となるmiRNAとして配列番号1で表されるhsa−miR−7845−5pを同定した。HADS不安症状スコア8点未満かつHADSうつ症状スコア8点未満の症例を健常とみなし、健常と異常の2群間におけるhsa−miR−7845−5pの至適境界値「7.246」を、ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を利用して算出し、この値以上であれば健常、この値未満であれば心理的ストレスの存在が疑われる症例と判定することとした。
[実施例2]
<マーカーの検証>
81例の検体より抽出した4例のうち、表3に示すようにHADS不安症状スコアおよびHADSうつ症状スコアがともに8点以上であった2例をストレス陽性群、HADS不安症状スコアおよびHADSうつ症状スコアがともに8点未満であった2例をストレス陰性群とみなした。実施例2で設定したhsa−miR−7845−5pの至適健常閾値を用いて、この4例のストレスの程度が健常域か異常かを評価したところ、ストレス陽性群は2例とも異常、ストレス陰性群は2例とも健常と評価された。以上より、hsa−miR−7845−5pは心理的ストレスの優れたマーカーであることが示された。
Figure 2018033352
以上の実施例に示すように、血液中hsa−miR−7845−5pを定量することにより、心理的ストレスの程度を量的に評価し、不安障害やうつ病の発症予備群の早期発見が可能となった。
本発明により、従来法と比較して、被験体において心理的ストレスを効果的に検出することができるため、心理的ストレスの早期発見、診断及び治療が可能になる。また、本発明により、被験体の血液を用いて心理的ストレスを低侵襲的に検出できるため、心理的ストレスを簡便、迅速かつ安価に判定することが可能になる。

Claims (11)

  1. 心理的ストレスマーカーである、miR−7845−5pのポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、心理的ストレスの検出用キット。
  2. miR−7845−5pがhsa−miR−7845−5pである、請求項1に記載のキット。
  3. 前記核酸が、下記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
    からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、請求項1又は2に記載のキット。
  4. 心理的ストレスマーカーである、miR−7845−5pのポリヌクレオチドと特異的に結合可能な核酸を含む、心理的ストレスの検出用デバイス。
  5. miR−7845−5pがhsa−miR−7845−5pである、請求項4に記載のデバイス。
  6. 前記核酸が、下記の(a)〜(e)のいずれかに示すポリヌクレオチド:
    (a)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (b)配列番号1で表される塩基配列を含むポリヌクレオチド、
    (c)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、その変異体、その誘導体、又は15以上の連続した塩基を含むその断片、
    (d)配列番号1で表される塩基配列もしくは当該塩基配列においてuがtである塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチド、及び
    (e)前記(a)〜(d)のいずれかのポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド、
    からなる群から選択されるポリヌクレオチドである、請求項4又は5に記載のデバイス。
  7. 前記デバイスが、ハイブリダイゼーション技術による測定のためのデバイスである、請求項4〜6のいずれか1項に記載のデバイス。
  8. 前記ハイブリダイゼーション技術が、核酸アレイ技術である、請求項7に記載のデバイス。
  9. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット又は請求項4〜8のいずれか1項に記載のデバイスを用いて被験体の検体における標的核酸の発現量を測定し、該測定された発現量と、同様に測定された健常体の対照発現量とを用いて、被験体が心理的ストレスを有していること、又は心理的ストレスを有していないことをin vitroで評価し、それによって被験体における心理的ストレスの存在又は不存在を検出することを含む、被験体における心理的ストレスの検出方法。
  10. 前記被験体が、ヒトである、請求項9に記載の方法。
  11. 前記検体が、血液、血清又は血漿である、請求項9又は10に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102007922B1 (ko) * 2018-04-05 2019-08-06 사회복지법인 삼성생명공익재단 스트레스 측정 모형 개발 방법 및 시스템

Cited By (1)

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KR102007922B1 (ko) * 2018-04-05 2019-08-06 사회복지법인 삼성생명공익재단 스트레스 측정 모형 개발 방법 및 시스템

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