本発明は、機械設備による自動化工程や作業員による手作業工程等を含む複雑な生産プロセスで製造された製品や提供されるサービスの品質のばらつきを生じさせる要因を特定し、製品又はサービスの品質を安定化させるという目的を達成するために、製品又はサービスの生産プロセスに関するデータに基づいて生産プロセスのロットを複数のグループに区分し、グループの特徴を表すデータである要因を特定する生産プロセスの解析方法であって、データを生産プロセスのロット毎に収集する工程と、生産プロセスを構成する複数の状態毎にロットを複数のグループに区分し、状態毎に各グループの優劣を判定する工程と、状態毎に最優と判定されたグループに含まれる良ロットを特定する工程と、複数の状態間で良ロットが少なくとも1つ以上共通するか否かを判定する工程と、良ロットが複数の状態間で少なくとも1つ以上共通しない場合、複数の状態を任意に選択された選択状態とその他の非選択状態とに区分し、非選択状態において最優と判定されたグループを除き選択状態内の良ロットを含むグループを最優のグループと判定し直して要因を特定する工程と、を含むことにより実現する。
また、本発明は、機械設備による自動化工程や作業員による手作業工程等を含む複雑な生産プロセスで製造された製品や提供されるサービスの品質のばらつきを生じさせる要因を特定し、製品又はサービスの品質を安定化させるという目的を達成するために、製品又はサービスの生産プロセスに関するデータに基づいて生産プロセスのロットを複数のグループに区分し、グループの特徴を表すデータである要因を特定する生産プロセスの解析方法であって、製品又はサービスの品質を示す品質データを含むデータを生産プロセスのロット毎に収集する工程と、生産プロセスを構成する複数の状態毎にロットを複数のグループに区分し、状態毎に各グループの優劣を判定する工程と、状態毎に最優と判定されたグループに含まれる良ロットを特定する工程と、複数の状態間で良ロットが少なくとも1つ以上共通するか否かを判定する工程と、良ロットが複数の状態間で少なくとも1つ以上共通しない場合、複数の状態間で品質データが最も優れたグループを含む状態を選択状態として選択し、選択状態を除く他の非選択状態において最優と判定されたグループを除き選択状態内の良ロットを含むグループを最優のグループと判定し直して要因を特定する工程と、を含むことにより実現する。
本発明に係る解析方法は、製品(物)を製造するプロセス又はサービスを提供するプロセス(以下、総称して「生産プロセス」と称す)に適用される。生産プロセスには、機械設備のみで構成されて全ての工程が自動化されたプロセス、作業者の手作業による作業工程を含むプロセス並びに機械設備によって自動化された製造工程及び作業者の手作業による作業工程を含むプロセスを含む。
以下、本発明の第1実施例に係る生産プロセスの解析方法について説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
図1は、本発明を適用する生産プロセスの一例であるファインケミカルの製造ラインの工程を示すフローチャートである。なお、本発明を適用する生産プロセスは、ファインケミカルの製造ラインに限定して解釈されるものではなく、ファインケミカル以外の製品の製造ライン及びサービスを提供するプロセスも含まれることは言うまでもない。
ファインケミカルの製造ラインは、前工程と後工程とに大別される。前工程は、作業員が原料を反応炉に投入し、原料を反応させて粒状の半製品を製造するものであり、所謂バッチプロセスである。後工程は、主に作業員による手作業である。
前工程では、原料を反応炉に投入する受入工程S1、反応炉内で原料を反応させる反応工程S2、不純物を除去するろ過工程S3及び原料を所定サイズの粒状に成形する造粒工程S4を経て、半製品を製造する。前工程では、良好に反応が進むと、ろ過フィルタの目詰まりが少なくなるため、前工程での製品の品質(フィルタの交換回数)は減少する。これにより、前工程での単位時間当たりの造粒量は増大する。
後工程では、半製品に所定の色を塗布する着色工程S5、着色後の半製品を乾燥機で乾燥させる乾燥工程S6、着色不良をチェックする検査工程S7、製品を個装する包装工程S8及び出荷工程S9を経て製品が出荷される。後工程における製品の品質(着色良率)は、前工程の品質(フィルタ交換回数)と負の相関関係がある。即ち、フィルタの交換回数が少なく単位時間当たりの造粒量が多いと、作業員が手作業で行う着色工程S5でミスが発生し易くなり、着色不良が増加する傾向がある。
製造ラインを構成する各機器には、種々の値を測定する図示しないセンサが設けられている。センサの測定対象は、原料の投入量、反応炉内の温度、反応温度、単位時間当たりの造粒量等である。センサは、製造ラインを構成する製造設備を整除する制御装置に測定値を送る。
制御装置は、センサが測定した製品の生産条件を示すプロセスデータ、製品の品質(フィルタの交換回数、着色良率等)を示すプロダクトデータ(品質データ)に基づいて、後述する処理を行う。プロセスデータは、製品の品質に影響し得る因子であり、生産プロセスの生産条件(製造設備の運転条件等)、原料の条件(原料の物性、組成等)、作業員が手作業で行う作業の内容(作業時間、移動回数等)及び製品等のハンドリングの内容(半製品、仕掛品の滞留時間等)を含む。
なお、本実施例では、プロセスデータの種類に応じて、生産プロセスを製造状態、作業状態及び物流状態の3つの状態に区分している。具体的には、「製造状態」とは、設備の観点で製品の品質に影響し得るものを指す。「作業状態」とは、作業員の観点で製品の品質に影響し得るものを指す。「物流状態」とは、原料、半製品及び製品のハンドリングの観点で製品の品質に影響し得るものを指す。なお、生産プロセスは、上述した3つの状態に区分可能なものに限定されず、上述した3つの状態のうち少なくとも2つ以上の状態が含まれるものであればよい。
なお、生産プロセスを成す複数の状態は、互いに相関関係を有し、全状態のプロダクトデータを一様に改善することが難しい場合がある。そこで、生産プロセスを複数の状態に区分し、後述する解析方法によって各状態において製品の品質に影響し得る要因(プロセスデータ)を個別に把握して、ある要因の変更が他の状態に及ぼす影響を検討しながらプロセス全体の実行可能な改善を図ることができる。
次に、本実施例に係る生産プロセスの解析方法について、図面に基づいて説明する。図2は、本発明の第1実施例に係る生産プロセスの解析方法を示すフローチャートである。
まず、動作済みの生産プロセスについて、制御装置は、センサが測定したプロセスデータとプロダクトデータとを収集する(S10)。この工程S10では、ロット毎のプロセスデータ及びプロダクトデータを制御装置に記憶する。
次に、工程S1で収集したプロセスデータ及びプロダクトデータを標準化して中間関数に変換する(S11)。
図3は、製造状態におけるロット毎のプロセスデータ及びプロダクトデータを標準化した数値を示す表である。図3では、17のロットについて、各ロットで収集した製造状態におけるプロセスデータpPara1〜16を示している。プロセスデータpPara1〜16は、原料の受入検査値、投入量、反応炉内の温度等である。また、プロダクトデータは、反応炉内のフィルターの交換回数である。
図4は、作業状態におけるロット毎のプロセスデータ及びプロダクトデータを標準化した数値を示す表である。図4では、各ロットで収集した作業状態におけるプロセスデータwPara1〜6を示している。プロセスデータwPara1〜6は、作業時間や作業場間の移動回数等である。また、プロダクトデータは、製品の着色良率である。
図5は、物流状態におけるロット毎のプロセスデータ及びプロダクトデータを標準化した数値を示す表である。図5では、各ロットで収集した物流状態におけるプロセスデータLPara1〜8を示している。プロセスデータLPara1〜8は、半製品、製品の滞留時間やリードタイム等である。また、プロダクトデータは、製品の着色良率である。
工程S11で行うプロセスデータの標準化処理は、公知のものであり、具体的には、数式1に基づいて制御装置が演算する。
次に、工程S2で求めた中間変数に主成分分析法を適用して、図6〜8に示すような主成分負荷量及び主成分得点を求める(S12)。図6は、製造状態におけるプロセスデータ毎の主成分負荷量及びロット毎の主成分得点を示す図である。図7は、作業状態におけるプロセスデータ毎の主成分負荷量及びロット毎の主成分得点を示す図である。図8は、物流状態におけるプロセスデータ毎の主成分負荷量及びロット毎の主成分得点を示す図である。
工程2では、まず、中間変数における相関係数行列を作成し、相関係数行列の固有値と固有ベクトルを導出する。相関係数行列は、中間変数がx1、x2、x3・・のときに、第1主成分PC1は、数式2で示すように表される。また、第N主成分PCnは、数式3で示すように表される。そして、係数a11、a12、a13・・を1行目の要素、係数an1、an2、an3・・をn行目の要素に用いることにより、相関係数行列が形成される。
図6(a)に製造状態におけるプロセスデータpPara1〜16の第1主成分PC1、第2主成分PC2、第3主成分3の情報量(主成分負荷量)を示す。図7(a)に作業状態におけるプロセスデータwPara1〜6の第1主成分PC1、第2主成分PC2、第3主成分3の情報量(主成分負荷量)を示す。図8(a)に物流状態におけるプロセスデータLPara1〜8の第1主成分PC1、第2主成分PC2、第3主成分3の情報量(主成分負荷量)を示す。なお、本実施例では、3つの主成分のみを示しているが、各主成分の寄与率に応じて主成分の数を増減しても構わない。
次に、相関係数行列の固有ベクトルから主成分得点を求める。また、相関係数行列の固有値から各主成分の寄与率を求める。主成分の寄与率は、固有値を固有値の総和で割ることで得られる。ここで、固有値の大きい方から、第1主成分、第2主成分・・第N主成分を決定する。
具体的には、制御装置が、各ロットの中間変数x1、x2、x3と相関係数行列の各係数とに基づいて、第1主成分PC1、第2主成分PC2・・の値、即ち、主成分得点を算出とする。図6(b)に製造状態における各ロットの主成分得点を示す。図7(b)に作業状態における各ロットの主成分得点を示す。図8(b)に物流状態における各ロットの主成分得点を示す。
図9は、製造状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図6(b)に示す情報量をプロットした主成分得点を示すグラフである。図10は、作業状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図7(b)に示す情報量をプロットした主成分得点を示すグラフである。図11は、物流状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図8(b)に示す情報量をプロットした主成分得点を示すグラフである。
次に、制御装置が図6(b)、図7(b)及び図8(b)に示す主成分得点にクラスター分析を適用して、各ロットを複数のグループに区分する(S13)。「クラスター分析」とは、解析対象データ(クラスター)を類似性に着目して複数のグループに分類する方法であり、階層的クラスタリングや分類最適化クラスタリング等が知られている。本実施例におけるクラスター分析が着目する「類似性」とは、各ロットの主成分得点同士の距離をいう。本実施例では、階層的クラスタリングの一つである凝集型階層的クラスタリングを用いた。また、クラスター間の距離算出方法として、安定して解を得られるウォード法を用いた。「ウォード法」とは、2つのクラスターを併合した際の偏差平方和の増加量が最小になるクラスターを選択するものである。例えば、クラスターA、Bを併合してクラスターCを生成する場合、クラスターA、B、C内の偏差平方和Sa、Sb、Scは、それぞれ数式4〜6のように表される。
数式4〜6により、クラスターC内の偏差平方和Scは、以下のようになる。
数式7のΔSabは、クラスターA、Bを併合してクラスターCを生成した際の偏差平方和の増分であることを意味する。したがって、各併合段階でΔSabが最小になるようにクラスターを選択して併合することにより、クラスタリングを進めていく。
本実施例では、図12に示すよう、クラスター分析の結果、製造状態においては各ロットを3つのグループG1〜4に区分することができた。この結果を図9に反映させたものを図13に示す。なお、グループの数は、3つに限定されるものではなく、ハンドリングし易い数であれば2つ以下でも4つ以上であっても構わない。
また、作業状態についてクラスター分析した結果を図10に反映したものを図14に示し、区分されたグループをグループG5〜7と称す。さらに、物流状態についてクラスター分析した結果を図11に反映したものを図15に示し、区分されたグループをグループG8〜10と称す。
次に、グループ毎に優劣を判定する(S14)。この工程S14では、制御装置は、記憶された製造状態に関するプロダクトデータ(フィルタの交換回数)から得られる中間変数をグループG1〜4に属するロット毎に呼び出し、これらプロダクトデータの良否を判定する。また、作業状態及び物流状態についても同様に、グループG5〜10に属するロット毎にプロダクトデータ(着色良率)から得られる中間変数をグループG5〜10に属するロット毎に呼び出し、これらのプロダクトデータの良否を判定する。
なお、プロダクトデータの良否は、グループ内の平均値に基づいて行うのが好ましい。これにより、グループ内のプロダクトデータのばらつきが平準化され、グループ間のプロダクトデータの良否の傾向を大局的に把握することができる。図13中の数値は、各グループにおけるプロダクトデータ(フィルタの交換回数の平均値)である。また、図14、15中の数値は、各グループにおけるプロダクトデータ(着色良率の平均値)である。
また、プロダクトデータの良否は、グループ内におけるプロダクトデータの偏差の大小や最大値及び最小値の差(範囲)の大小に基づいて判定しても構わないし、平均値、偏差又はR値等を2つ以上組み合わせて判定しても構わない。平均値と偏差とを組み合わせてプロダクトデータの良否を判定するものとして、例えば、グループ内の平均値が同一の場合には、グループ内の偏差が小さいものを良と判断することが考えられる。これにより、グループ内でのプロダクトデータのばらつきを考慮したグループ間のプロダクトデータの良否の傾向を大局的に把握することができる。
そして、制御装置は、各状態におけるグループ毎にプロダクトデータを比較し、その優劣を決定する。すなわち、製造状態においては、グループG1〜4毎にプロダクトデータを比較し、グループG1〜4間の優劣を決定する。同様に、作業状態においては、グループG5〜7毎にプロダクトデータを比較して、グループG5〜7間の優劣を決定し、物流状態においては、グループG8〜10毎にプロダクトデータを比較して、グループG8〜10間の優劣を決定する。
具体的には、製造状態では、グループG2が最も良好なプロダクトデータを示し、以下、G1、G3、G4の順にプロダクトデータが悪化していることから、グループ間の優劣は、グループG2、G1、G3、G4の順に決定した。また、作業状態では、グループG6が最も良好なプロダクトデータを示し、以下、G5、G7の順にプロダクトデータが悪化していることから、グループ間の優劣は、グループG6、G5、G7の順に決定した。さらに、物流状態では、グループG8が最も良好なプロダクトデータを示し、以下、G9、G10の順にプロダクトデータが悪化していることから、グループ間の優劣は、グループG8、G9、G10の順に決定した。
次に、各状態において優と判定されたグループに含まれるロット(良ロット)を特定する(S15)。具体的には、製造状態のグループG2、作業状態におけるグループG6及び物流状態におけるグループG8に含まれる良ロットを特定する。ロットNo.がZ132、Z135、Z146、Z147、Z148及びZ150が製造状態における良ロットである。また、ロットNo.が128X、Z141X、Z153X、Z155X及びZ156Xが作業状態における良ロットである。さらに、ロットNo.が127X、Z130X、Z142X、Z146X及びZ148Xが物流状態における良ロットである。
次に、3つの状態間で良ロットが少なくとも1つ以上共通するか否かを判定する(S16)。本実施例では、グループG2、G6、G8全てに共通する良ロットは存在しない。
製造状態、作業状態及び物流状態の各良ロットが少なくとも1つ以上共通しない場合には(工程S16でNo)、作業状態の良ロットを特定する(S17)。作業状態(選択状態)に含まれる良ロットは、ロットNo.が128X、Z141X、Z153X、Z155X及びZ156Xである。
次に、製造状態及び物流状態(非選択状態)において、作業状態の良ロットを含むグループを最優と判定し直す(S18)。本実施例では、製造状態では、グループG1が、作業状態の良ロットZ128Xを含み、且つ製造状態において作業状態の良ロットを含む他のグループG3、4よりも高順位のグループである。また、物流状態においては、Z128X、Z153X、Z155X及びZ156Xを含むグループG9が、作業状態の良ロットを含むグループである。したがって、製造状態において最も優れたグループをG1とし、物流状態において最も優れたグループをG9とする。
次に、各状態において最優と判定されたグループの特徴を表す要因を特定する(S19)。工程S19では、図13〜18に基づいて最優と判定されたグループG1の特徴を表す要因を特定する。図16は、製造状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図6(a)に示す情報量をプロットした主成分負荷量を示すグラフである。また、図17は、作業状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図7(a)に示す情報量をプロットした主成分負荷量を示すグラフである。また、図18は、物流状態の第1主成分を横軸、第3主成分を縦軸とする座標系に図8(a)に示す情報量をプロットした主成分負荷量を示すグラフである。
製造状態における最優と判定されたグループG1の特徴を表す要因を特定する際には、第1主成分PC1、第3主成分PC3の座標系(以下、「PC1、3座標系」という)上のグループG1の特徴的な配置関係に着目し、図16に示す主成分負荷量のグラフ上でこの位置に対応するプロセスデータpara1〜16がグループG1を特徴付けるプロセスデータである要因として特定する。
具体的には、工程S18において、製造状態における最優のグループがグループG1に変更されたことから、グループG1のPC1、3座標系上での特徴的な配置、即ち、PC1、3座標系上において第1主成分PC1座標がプラスであり、且つ第3主成分PC3座標がプラスであることを読み取る。次に、グループG1のPC1、3座標系上での特徴的な配置に対応するプロセスデータを図16に示す主成分負荷量のグラフ上から読み取る。このようにして、主成分負荷量のPC1、3座標系上における第1象限に存在するプロセスデータ(pPara4、8等)を製造状態のプロダクトデータに影響し得る第1の要因P1として判定する。
また、図16に示す主成分負荷量のグラフ上において、原点に対して第1の要因P1と点対称な位置付近のプロセスデータ(pPara9、10等)を製造状態のプロダクトデータに影響し得る第2の要因P2として判定する。これは、主成分負荷量のPC1、3座標系上の各プロセスデータはベクトルであるから、第2の要因P2に負の値を代入すると主成分負荷量のPC1、3座標系上における第1象限にもなり得るためである。
作業状態においても同様に、図14、17に基づいて、第1主成分PC1、第2主成分PC2の座標系(以下、「PC1、2座標系」という)上の最優のグループG6の特徴的な配置関係に着目することにより、図17に示すPC1、2座標系上における第2象限に存在するプロセスデータ(wPara3、5等)を第3の要因P3として判定する。
また、物流状態においては、物流状態における最優のグループがグループG9であるから、図15のPC1、2座標系におけるグループG9の特徴的な配置に対応する図18に示すPC1、2座標系上における第4象限に存在するプロセスデータ(LPara2、7等)を第4の要因P4として判定する。
なお、工程S16において、製造状態、作業状態及び物流状態の各良ロットが少なくとも1つ以上共通する場合には(工程S16でYes)、工程S14で判定した製造状態におけるグループG2、作業状態におけるグループG5及び物流状態におけるグループG8に基づいて、工程S19と同様に品質に影響し得る要因を特定する。
上述したように、本実施例に係る発明は、各状態で最優と判定されたグループG2、6、8に含まれる良ロットが3つの状態間で少なくとも1つ以上共通しない場合、これらの状態から任意に選択された選択状態(作業状態)とその他の選択状態(製造状態、物流状態)とを区分し、非選択状態において選択状態内の良ロットを含む最も高順位のグループG1、9を最優のグループと判定し直して要因P1〜4を特定することにより、複雑な生産プロセスの実行可能な改善が図れるため、良好な製品性能及び製造性能を安定して示す生産プロセスを得ることができる。
また、作業状態において品質に影響し得る要因を製造状態又は物流状態において品質に影響し得る要因に優先して特定することにより、作業者が効率的に作業できるように生産プロセス全体を改善することができる。
次に、本発明の第2実施例に係る生産プロセスの解析方法について、図面に基づいて説明する。図19は、本発明の第2実施例に係る生産プロセスの解析方法を示すフローチャートである。なお、本実施例に係る生産プロセスの解析方法は、上述した第1実施例の工程S17に対応する工程が異なるのみであり、その他の工程は共通する。したがって、本実施例の工程のうち第1実施例と重複する工程は20番台の符号を付して、第1実施例の説明と重複する説明を省略する。
まず、上述した第1実施例に係る工程S10〜16と同様の手順で、生産プロセスのロットを複数のグループに区分し、各状態で最優のグループに含まれるロット(良ロット)を特定して、状態間で良ロットが少なくとも1つ以上共通するかを判定する(S20〜26)。
製造状態、作業状態及び物流状態の各良ロットが少なくとも1つ以上共通しない場合には(工程S26でNo)、プロダクトデータが最も優れたグループに含まれる良ロットを特定する(S27)。本実施例では、作業状態のプロダクトデータG6及び物流状態のプロダクトデータG8は、何れも着色良率で共通して比較可能である。そして、作業状態のグループG6のプロダクトデータは87%であり、物流状態のグループG8のプロダクトデータは86%であるから、比較可能なプロダクトデータ(着色良率)が最も優れたグループは、グループG6となる。そして、グループG6に含まれる良ロットは、図14に示すように、ロットNo.が128X、Z141X、Z153X、Z155X及びZ156Xとなる。
そして、工程S28〜29と同様の手順で、製造状態及び物流状態においては、上述した作業状態における良ロットを含む最も高順位のグループを最優と判定し直し(S28)、グループの特徴を表す要因P1〜4を特定する(S29)。
上述したように、本実施例に係る発明は、各状態で最優と判定されたグループG2、6、8に含まれる良ロットが3つの状態間で少なくとも1つ以上共通しない場合、これらの状態間でプロダクトデータが最も優れたグループG6を含む状態(作業状態)を選択状態として選択し、選択状態を除く他の非選択状態(製造状態、物流状態)において選択状態内の良ロットを含む最も高順位のグループG2、9を最優のグループと判定し直して各グループの特徴を表す要因P1〜4を特定することにより、製造設備の全自動作業と作業員の手作業とを含む生産プロセスが効率良く改善されるため、良好な製品性能及び製造性能を安定して示す生産プロセスを得ることができる。
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
本発明における「生産プロセス」とは、製品(物)を製造するプロセス又はサービスを提供するプロセスを含むものである。すなわち、生産プロセスとは、物を製造するプロセスに限定されない。生産プロセスで提供されるサービスとは、例えば、パーツ洗浄や医薬品開発における治験結果の解析等のサービスが含まれる。また、上述した実施例では、製造状態、作業状態及び物流状態を含む生産プロセスを例に説明したが、必ずしもこれら3つの状態を含むものに限定されるものではなく、これら3つの状態のうち少なくとも2つ以上の状態が含まれるものであればよい。