以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における吸入装置1の設置場所の一例を示す図である。
吸入装置1は、不純物の混入を抑えつつ流体を吸入するための装置である。吸入装置1は、車両や、船、飛行機などの移動体に搭載され、例えばリザーバやストレーナなどに用いられる。
本実施形態の吸入装置1は、車両に搭載された電動モータ100を構成する筐体101の底部に配置される。電動モータ100を冷却するためのポンプ90を駆動して、吸入装置1を通じて水やフロンなどの冷媒である流体が電動モータ100の内部に注入される。本実施形態では冷媒として油が用いられる。
電動モータ100の内部に注入された油は筐体101の底部に滞留する。滞留した油は、ポンプ90により吸入装置1の吸入口10から吸引される。吸入装置1を介して吸引された油は、ポンプ90から再び電動モータ100の内部に注入される。
このように、吸入装置1は、筐体101の底部に滞留する油を吸入口10から吸引して、その吸引した油を吐出部30からポンプ90へ排出する。
図2は、筐体101の底部に配置した吸入装置1を示す電動モータ100の断面図である。
図2には、電動モータ100に固定されたステータ130と、ステータ130と離間して回転軸110を中心に回転駆動するロータ120とが示されている。吸入装置1は、ステータ130の下に形成された空間102に配置されている。
本実施形態では、吸入装置1の吸入口10が回転軸110の下に配置され、空間102のうち吸入口10よりも高い領域に吐出部30が配置される。図2に示すように、吸入口10から幅方向に離れるほど、空間102の高さは大きくなることから、空間102の端に配置される。なお、空間102の幅方向は、回転軸110が延びる方向に対して直交する方向である。
吸入装置1の吐出部30から吐出された油は、図1に示したポンプ90により、例えば回転軸110の中心部分に供給され、回転軸110の中心部分からロータ120の内部に放射状に拡散する。
図3Aは、本実施形態における吸入装置1の外観を示す外観図である。図3Bは、吸入装置1の内部構造を示す分解図である。図3Cは、図3Aに示した吸入装置1に関するA−A断面図である。
図3Aに示すように、吸入装置1は下部材2及び上部材3によって構成される。
下部材2には、筐体101の底部に滞留した油が流入する吸入口10が形成されている。そして吸入口10には、滞留した油に含まれる不純物を除去するためのフィルタ4が設けられている。
上部材3は、円筒状の吐出部30が設けられた平坦部3aと、電動モータ100の下部の形状に沿って形成された円弧部3bとを有する。吐出部30は、吸入口10から流入した油をポンプ90に流出する。吐出部30は、吸入口10に流入した油を排出する排出孔31と、平坦部3aに対して鉛直方向に形成された排出通路32とを有する。
図3Bに示すように、上部材3には、吸入装置1の正面だけでなく側面からも油が流入するように吸入装置1の両端に2つの支持部3cが設けられている。両端の支持部3cを下から覆うようにフィルタ4が設けられている。そしてフィルタ4を固定する固定部2aが下部材2に設けられている。
下部材2は、吸入口10に流入してきた油を通す2つの通路11及び12を形成する。下部材2は、第1通路11を形成する溝11b、及び第1通路11の開口を形成する吸入口11aと、第2通路12を形成する溝12b、及び第2通路12の開口を形成する吸入口12aとを有する。
本実施形態における第1通路11と第2通路12の底面は、同一の平面状に形成されている。第1通路11は、吐出部30に対して外側から折り返す折返し部111を含み、吸入装置1の外側を通過するように形成される。第2通路12は、吐出部30に対して内側から折り返す折返し部121を含み、吸入装置1の内側を通過するように形成される。
また、下部材2は、第1通路11及び第2通路12の双方を開閉する弁部20を備える。弁部20は、第1通路11を開放又は遮断する開閉弁21と、第2通路12を開放又は遮断する開閉弁22と、吐出部30の下に設けられ開閉弁21及び22の動作を規制するストッパ23と、を備える。
開閉弁21は、吐出部30を基準とし、開閉弁21の摺動方向と直交する方向に対して吸入口11aの領域とは反対の領域に配置される。すなわち、開閉弁21と吸入口11aは、吐出部30に対して互いに反対側に配置される。言い換えると、吐出部30は、開閉弁21と吸入口11aとの間に配置される。このため、第1通路11には折返し部111が形成される。
本実施形態の開閉弁21は第1通路11に形成されている。開閉弁21は、第1通路11に形成された突起部21aと、突起部21aとストッパ23との間を移動する移動体21bと、移動体21bを突起部21aに向かって付勢するバネ21cとを有する。ストッパ23にはバネ21cをストッパ23に固定するための第1嵌込み部が形成されている。
移動体21bは、第1通路11を通過する油を遮蔽する遮蔽物である。移動体21bが突起部21aに接したとき、すなわち突起部21aに着座したときに、第1通路11を通過する油が遮断される。
例えば、ポンプ90を駆動して吐出部30から油を吸入している間は、バネ21cが縮んで移動体21bがストッパ23に向かって移動するので、第1通路11における移動体21bとの隙間を油が通過する。一方、ポンプ90の駆動を停止して油の吸入を停止している間は、バネ21cの付勢力により移動体21bが突起部21aに着座するので、第1通路を通過する油が遮断される。
開閉弁22は、吐出部30を基準とし、開閉弁22の摺動方向と直交する方向に対して吸入口12aの領域とは反対の領域に配置される。すなわち、開閉弁22と吸入口12aは、吐出部30に対して互いに反対側に配置される。言い換えると、吐出部30は、開閉弁22と吸入口12aとの間に配置される。このため、第2通路12は、折返し部121を有している。
本実施形態の開閉弁22は第2通路12に形成されている。開閉弁22は、第2通路12に形成された突起部22aと、突起部22aとストッパ23との間を移動する移動体22bと、移動体22bを突起部22aに向かって付勢するバネ22cとを有する。ストッパ23にはバネ22cを固定するための第2嵌込み部が形成されている。
移動体22bは、第2通路11を通過する油を遮蔽する遮蔽物である。移動体22bが突起部22aに着座したときに第2通路12を通過する油が遮断される。移動体22bの動作は、移動体21bの動作と同様である。
図3Cに示すように、吸入口10に設けられたフィルタ4により、吸入装置1に流入する油中の不純物が取り除かれる。フィルタ4を通過した油は、第1通路11の吸入口11aと第2通路12の吸入口12aとに分配される。
第1通路11は、下部材2の溝11b及び上部材3の溝11cによって形成され、第2通路12は、下部材2の溝12b及び上部材3の溝12cによって形成される。第1通路11と第2通路12の一部は、弁部20を間に挟んで平行に配列されている。
そして、開閉弁21の移動体21bは、下部材2の溝21d及び上部材3の溝21eによって形成される弁通路を移動する。本実施形態では弁通路が第1通路11に含まれている。溝21d及び21eで形成される弁通路には、移動体21bが開閉弁21の開閉する方向に進退動自在になるよう2つ突条部21fが上面及び下面にそれぞれ形成されている。
移動体21bが突起部21aに着座していない状態においては、弁通路を構成する溝21d及び21eと移動体21bの隙間を油が通過する。通過した油は吐出部30の排出孔31を通ってポンプ90に吸引される。
次に、電動モータ100に作用する加速度の向きに応じて変動する油面について簡単に説明する。
図4A及び図4Bは、図2に示した電動モータ100に関するI−I断面図である。図4Aには、回転軸110の軸方向における一方の向きから電動モータ100に加速度が加わった場合における筐体101の油面が示されている。図4Bには、回転軸110の軸方向における他方の向きから電動モータ100に加速度が加わった場合における筐体101の油面が示されている。
図4Aに示すように、例えば車両の左旋回に伴って、軸方向における一方の向きに加速度が加わった状態では、第2通路12の吸入口12aは油に埋もれず、第1通路11の吸入口11aが油に埋もれることになる。一方、車両の右旋回に伴って、他方の向きに加速度が加わった状態では、図4Bに示すように、第1通路11の吸入口11bは油に埋もれず、第2通路12の吸入口12aが油に埋もれることになる。
このように、吸入装置1の吸入口11aと吸入口12aは、回転軸110の軸方向に加速度が加わったときに少なくとも一方が油面に埋もれるよう、鉛直軸に対して互いに等間隔に配置される。鉛直軸とは、回転軸110の軸方向における電動モータ100の中心を通る鉛直上の軸のことをいう。
図5は、回転軸110の軸方向に対して直交する電動モータ100の断面を示す断面図である。
図5には、回転軸110の軸方向に直交する水平面上の方向において、一方の向きに加速度が加わった場合における筐体101の油面1と、他方の向きに加速度が加わった場合における筐体101の油面2とが示されている。例えば、車両の減速時に油面1となり、加速時に油面2となる。
図5に示すように、回転軸110の軸方向に直交する水平方向における筐体101の底部中心に吸入装置1における側面の吸入口10が配置されている。これにより、水平方向においていずれの向きに加速度が加わったとしても、吸入装置1における側面の吸入口10が油面1及び油面2に埋もれることになる。
このように、筐体101の底部中心付近に第1通路11の吸入口11aと第2通路12の吸入口12aをそれぞれ配置することにより、水平方向に加速度が加わった場合であっても、常に、吸入口11a及び12aから油を吸引することができる。
次に、吸入装置1における弁部20の動作について簡単に説明する。
図6Aは、ポンプ90の駆動を停止した状態における弁部20の作動状態を示す概念図である。
図6Aに示すように、移動体21bはバネ21cの付勢力により突起部21aに着座するので、開閉弁21は閉弁する。また、移動体22bについても、バネ22cの付勢力により突起部22aに着座するので、開閉弁22は閉弁する。
図6Bは、ポンプ90を駆動した状態における弁部20の作動状態を示す概念図である。
図6Bに示すように、ポンプ90の吸引力により移動体21bがストッパ23に向かって移動するのでバネ21cが縮む。これにより、移動体21bが突起部21aから離れるので、開閉弁21は開弁する。このため、第1通路11の吸入口11aに流入する油が開閉弁21を通過して吐出部30からポンプ90へ排出される。
移動体22bについても、ポンプ90の吸引力により移動体22bがストッパ23に向かって移動してバネ21cが縮み、移動体21bが突起部21aから離れるので、開閉弁22は開弁する。このため、第2通路12の吸入口12aに流入する油が開閉弁22を通過して吐出部30から排出される。
図6Cは、ポンプ90を駆動した状態で吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わった場合における弁部20の作動状態を示す概念図である。例えば、車両の右旋回時に電動モータ100に加速度Gが加わる。
図6Cに示すように、吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わるので、吸入口11aから吸入口12aに向かって油が移動して吸入口12a側の油面が上昇する。一方、吸入口11a側の油面は低下して吸入口11aよりも下がる。
このとき、加速度Gは移動体21b及び22bに作用することにより、移動体21bは突起部21aに着座するので開閉弁21は閉弁し、移動体22bについてはストッパ23に向かって移動するので開閉弁22は開弁状態を維持する。
このため、油に埋もれている吸入口12aを持つ第2通路12は、開閉弁22によって開放され、油に埋もれていない吸入口11aを持つ第1通路11は、開閉弁21によって遮断される。これにより、吸入口11bに流入する空気は遮断されるので、吸入口12aに流入する油のみを吐出部30に排出することができる。
このように、第1通路11における吸入口11a及び開閉弁21を吐出部30に対して互いに反対に配置することにより、吸入口11aが油に埋もれているときに開閉弁21が開き、吸入口11aが油に埋もれていないときには開閉弁21が閉じる。これにより、ポンプ90に空気が混入することが原因でポンプ90が潤滑不全となって焼き付きを起こす事態を回避することができる。
さらに、第1通路11とは異なる第2通路12についても、吸入口12a及び開閉弁22が吐出部30に対して互いに反対に配置されている。これにより、ポンプ90に空気が混入するのを抑制しつつ、開閉弁21及び22の双方が閉弁する時間が短くなるので、吸入装置1からポンプ90に吐出される油の遮蔽時間を低減することができる。
特に、第1通路11における開閉弁21と第2通路12における開閉弁22とを同一の直線上に配置することにより、例えば開閉弁21が閉弁したときに開閉弁22は開弁していることから、吸入装置1からポンプ90へ継続して油を供給することが可能になる。
本発明の第1実施形態によれば、吸入装置1は、流体である油が流入する流入口として吸入口11aを有する第1通路11と、第1通路11を開閉する弁部20の開閉弁21と、開閉弁21を通過した油が流出する流出部を構成する吐出部30と、を含む。そして吸入口11aと開閉弁21は、吐出部30に対して互いに反対側に配置される。
これにより、第1通路11における流体の流れ方向に開閉弁21を配置することができ、さらに図6Cに示したように加速度Gによって油面が吸入口11aよりも低下した場合に開閉弁21が閉じるので不純物である空気の混入を抑制することができる。
したがって、吸入装置1の高さを抑えつつ不純物の混入を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、第1通路11の高さは、開閉弁21の高さに対して同等となるように形成される。これにより、吸入装置1の高さを抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、開閉弁21を構成する溝21dの底面と第1通路11を構成する溝11bの底面とが同一面に形成される。これにより、吸入装置1の高さを抑制することができる。なお、開閉弁21及び第1通路11の底面の他に、開閉弁21及び第1通路11の中心又は天井面などが同一の面になるように吸入装置1を形成してもよい。この場合であっても吸入装置1の高さを抑制するこができる。
このように、開閉弁21と第1通路11が同一面に形成されることにより、吸入装置1の高さを抑えることができる。
また、本実施形態によれば、開閉弁21は第1通路11の内部に形成される。これにより、吸入装置1の高さを第1通路11の高さに制限しつつ、空気が混入しないように第1通路11を開閉弁21により遮断することができる。
また、本実施形態によれば、吸入装置1は、第1通路11に対して他の通路である第2通路12と、第2通路12を開閉する他の弁部を構成する開閉弁22とを含む。そして第2通路12の吸入口12aと開閉弁22とは、吐出部30に対して互いに反対側に配置される。
これにより、吸入装置1の第2通路12からポンプ90に空気を排出するのを回避することができる。さらにポンプ90を駆動して吸入装置1から油を吸引している場合において一方の開閉弁21が閉弁したときには、他方の開閉弁22を開弁させることが可能になるので、吸入装置1からポンプ90への油の供給量を確保することができる。
また、本実施形態によれば、吐出部30は開閉弁21と開閉弁22との間に設けられ、開閉弁21及び開閉弁22は同一直線上に形成される。これにより、図6Aに示したように、一方の開閉弁21が閉弁したときに他方の開閉弁22が確実に開弁することから、吸入装置1からポンプ90に油を継続して供給することができる。
また、本実施形態によれば、開閉弁21は、図3Bに示したように、第1通路11に形成された突起部21aと、作用する加速度に応じて突起部21aと吐出部30との間を移動(摺動)する移動体21bとを含む。移動体21bは、突起部21aに接したときに第1通路11を塞ぐ遮蔽物を構成する。
これにより、第1通路11の油流れ方向に開閉弁21を形成することができるので、簡易な構成により吸入装置1の高さの増加を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、開閉弁21は、移動体21bを突起部21aに向かって付勢するバネ部をさらに含む。バネ部は、例えば、バネ21c及びストッパ23により構成される。
これにより、吐出部30から突起部21aに向かって加速度が移動体21bに作用したときに、油面が吸入口11aよりも低下する前に確実に開閉弁21を閉じることが可能になる。したがって、吸入装置1は、油面の傾きに応じて第1通路11を的確に遮断することができる。
また、本実施形態によれば、吸入装置1は、図2に示したように、電動モータ100を収容する筐体101における底部の空間102に配置される。そして吸入口11aは、電動モータ100の回転軸110の下に位置する。
これにより、回転軸110の軸方向に直交する水平方向のいずれの向きに対して加速度が加わったとしても、図5に示したように、吸入装置1における側面の吸入口10に対して油面が低下しないことから、空気の混入を抑制することができる。これに加えて、吸入装置1に関し、軸方向に直交する水平方向の両端に吸入口を設けて新たに弁部を2つ備える必要がないので、簡素な構成で空気の混入を抑制しつつポンプ90による油の吸入量を確保することができる。
なお、本実施形態の弁部20においては2つの開閉弁21及び22が設けられているが、ひとつの開閉弁で弁部を構成するようにしてもよい。以下、ひとつの弁体で2つの通路を開閉する弁部について次図を参照して説明する。
(第2実施形態)
図7A乃至図7Cは、本発明の第2実施形態における弁部20Aの動作を示す観念図である。
弁部20Aは、移動体21bと、移動体22bと、移動体21bと移動体22bとを互いに付勢するバネ23aと、バネ23aの内側に挿入されて移動体21bと移動体22bとの間隔を規制する規制部23bと、を備える。移動体21b及び22bとバネ23aと規制部23bとは、ひとつの弁体を構成する。他の構成については、図3Bに示した構成と同じである。
図7Aには、図6Aと同様、ポンプ90の駆動を停止した状態での弁部20Aの作動状態が示されている。
図7Aに示すように、バネ23aの付勢力により、移動体21bが突起部21aに着座するとともに移動体22bが突起部22aに着座する。これにより、弁部20Aは、第1通路11と第2通路12を共に遮断する。
図7Bには、図6Bと同様、ポンプ90を駆動した状態での弁部20Aの作動状態が示されている。
図7Bに示すように、ポンプ90の吸引力により、移動体21bと移動体22bが共にバネ23aの付勢力に反して吐出部30に向かって移動する。これにより、移動体21bが突起部21aから離れるとともに移動体21bが突起部21aから離れるので、弁部20Aは第1通路11と第2通路12を共に開放する。
このため、第1通路11の吸入口11aに流入する油と、第2通路12の吸入口12aに流入する油は共に弁部20Aを通過して吐出部30から排出される。
図7Cには、図6Cと同様、ポンプ90を駆動した状態で吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わった場合における弁部20Aの作動状態が示されている。
図7Cに示すように、吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わっているので、吸入口11aから吸入口12aに向かって油が移動して吸入口12a側の油面が上昇し、吸入口11a側の油面は低下して吸入口11aよりも下がる。
このとき、加速度Gが2つの移動体21b及び22bに作用するので、移動体21bが突起部21aに着座して弁部20Aが第1通路11を遮断する。移動体22bについては吐出部30に向かって移動するので弁部20Aは第1通路11を開放した状態で維持する。
このため、油に埋もれている吸入口12aを持つ第2通路12は、開閉弁22によって開放され、油に埋もれていない吸入口11aを持つ第1通路11は、開閉弁21によって遮断される。これにより、吸入口11bに流入する空気は遮断されるので、吸入口12aに流入する油のみを吐出部30に排出することができる。
このように、ひとつの弁体で構成される弁部20Aであっても、吸入口11aが油に埋もれていない場合に第1通路11を遮断するとともに第2通路12を開放し、吸入口12aが油に埋もれていない場合には第2通路12を遮断するとともに第1通路11を開放することができる。
本発明の第2実施形態によれば、弁部20Aは、図7Cに示したように、吸入装置1の周辺に滞留する油に関する油面の傾きに応じて第1通路11及び第2通路12の各々を開閉する。これにより、第1実施形態と同様、空気の混入を回避しつつ、滞留した油を継続して吸引することができる。
(第3実施形態)
図8Aは、本発明の第3実施形態における吸入装置1Aの外観を示す外観図である。
本実施形態の吸入装置1Aにおいては、図3に示した吸入装置1に取り付けられたフィルタ4が省かれている。
図8Bは、図8Aに示した吸入装置1AのB−B断面図である。
図8Bに示すように、本実施形態の弁部20Bは、図3Bに示した弁部20におけるバネ21c、バネ22c及びストッパ23に代えて、傾斜部21g、傾斜部22g及びストッパ24を備えている。他の構成については、図3に示した構成と同じであり、同一符号を付してここでの説明を省略する。
開閉弁21は、突起部21a、移動体21b及び傾斜部21gを含み、開閉弁22は、突起部22a、移動体22b及び傾斜部22gを含み、開閉弁21と開閉弁22の間にストッパ24が配置されている。
傾斜部21gは、溝21dの底面から突起部21aに向かって傾斜する。溝21dは、突起部21aと突起部22aとの間に形成される弁通路を構成する溝である。傾斜部21gの斜面は、油面が吸入口11aの上面よりも低下したときに移動体21bが突起部21aに着座するように設計される。
傾斜部22gは、弁通路を構成する溝21dの底面から突起部22aに向かって傾斜する。傾斜部22gの斜面は、油面が吸入口12aの上面よりも低下したときに移動体22bが突起部22aに着座するように設計される。
ストッパ24は、溝21dの底面に設けられる。ストッパ24は、移動体21b及び移動体22bが互いに吐出部30の排出孔31を塞ぐことがないよう排出孔31の下に配置される。
移動体21bは、突起部22aから突起部21aに向かって加速度が加わった場合には傾斜部21gを上って突起部21aに回転移動する転動体である。一方、移動体22bは、突起部21aから突起部22aに向かって加速度が加わった場合には傾斜部22gを上って突起部22aに回転移動する転動体である。
このように、溝21d及び21eで形成される弁通路に傾斜部21g及び22gを設けることにより、移動体21b及び22bがそれぞれ突起部21a及び22aに着座して第1通路11及び第2通路12を無用に遮蔽するという事態を回避することができる。
なお、本実施形態ではフィルタが設けられていないが、吸入装置1Bの吸入口11a及び12aにそれぞれ筒状のフィルタを設けてもよい。これにより、吸入装置1Bに流入する油中の不純物が取り除かれる。
図9Aは、ポンプ90を駆動した状態における弁部20Bの作動状態を示す概念図である。
図9Aに示すように、ポンプ90による油の吸引力により、移動体21bと移動体22bが共にストッパ24に向かって移動するので、弁部20Bは第1通路11と第2通路12を共に開放する。
図9Bは、ポンプ90を駆動した状態で吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わった場合における弁部20Bの作動状態を示す概念図である。
図9Bに示すように、吸入口11aから吸入口12aの向きに加速度Gが加わっているので、吸入口11aから吸入口12aに向かって油が移動して吸入口12a側の油面が上昇するとともに、吸入口11a側の油面は低下して吸入口11aよりも下がる。
このとき、加速度Gが移動体21bに作用するため、移動体21bが傾斜部21gを上って突起部21aに着座するので開閉弁21が第1通路11を遮断する。一方、加速度Gは移動体22bにも作用しているが、移動体22bの動きはストッパ24によって停められる。このため、開閉弁22は、移動体22bにより吐出部30を塞ぐことなく、第2通路12を開放した状態を維持する。
このように、油に埋もれている吸入口12aを持つ第2通路12は、開閉弁22によって開放され、油に埋もれていない吸入口11aを持つ第1通路11は、開閉弁21によって遮断される。このため、吸入装置1Bにおいて、吸入口11bに流入する空気は遮断されるので、吸入口12aに流入する油のみを吐出部30に排出することができる。
本発明の第3実施形態によれば、弁部20Bの開閉弁21は、突起部21aから吐出部30に向かって傾斜した傾斜部21gを含む。そして遮蔽物である移動体21bは、図9Bに示したように、油面と傾斜部21gの斜面とが一致するときに傾斜部21gを上って突起部21aに着座(当接)する。
開閉弁21の傾斜部21gは、図3Bに示した弁部20のバネ21cのように吸入装置1Aの使用状態によって弾性力が低下して移動体21bが突起部21aに着座しにくくなることはない。したがって、開閉弁21を簡素な構成にしつつ、開閉弁21の開閉精度が低下するのを回避することができる。
(第4実施形態)
図10A及び図10Bは、本発明の第4実施形態における吸入装置1Bの構成を示す図である。
図10Aに示すように、吸入装置1Bは、第1実施形態における吸入装置1の構成に対して、第1通路11及び第2通路12の経路と、吸入口11a及び吸入口12aの向きとが異なる。
図10Bに示すように、吸入装置1Bは、第1実施形態と同様、吐出部30を基準として、弁部20の開閉弁21と吸入口11aが互いに反対側に配置されるとともに開閉弁22と吸入口12aが互いに反対側に配置される。
これにより、第1通路11には折返し部111が形成され、第2通路12には折返し部121が形成される。したがって、本実施形態の吸入装置1Bによれば、他の実施形態と同様、吸入装置自体の高さを抑えつつ、空気の混入を抑制することができる。
なお、本実施形態では図8Bに示した傾斜部21g及び22gが形成されていないが、吸入装置1Bの開閉弁21及び22に対して、傾斜部21g及び22gをそれぞれ形成するようにしてもよい。これにより、移動体21b及び22bにより無用に第1通路11及び12が遮断されるのを抑制することができる。
(第5実施形態)
図11は、本発明の第5実施形態における吸入装置1Cの構成例を示す概念図である。
図11(a)には、吸入装置1Cの内部構成が示されている。図11(a)に示すように、吸入装置1Cは、油中の不純物を取り除くための4つのフィルタ4a乃至4dと、4つの通路11乃至14と、4つの開閉弁210乃至240と、ストッパ250とを備えている。
吸入装置1Cにおいては、吐出部30を基準として、第1通路11の吸入口11aと開閉弁210とが互いに反対側に配置され、第2通路12の吸入口12aと開閉弁220とが互いに反対側に配置される。さらに吐出部30を基準として、第3通路13の吸入口13aと開閉弁230とが互いに反対側に配置され、第4通路14の吸入口14aと開閉弁240とが互いに反対側に配置される。
図11(a)では、吸入装置1Cに対して吸入口12aから吸入口11aに加速度Gが加わっている。これに伴い、吐出部30よりも吸入口11a側に油が偏り、吸入口11aが油に埋もれているものの、他の吸入口12a乃至14aは油に埋もれていない。
このとき、加速度Gにより、孔21Aを塞いでいた移動体21bがストッパ250に向かって移動するので開閉弁210が開き、移動体22b乃至24bはそれぞれ孔22A乃至24Aを塞いでいるので、開閉弁220乃至240は閉じる。
これにより、油に埋もれている吸入口11aに対応する開閉弁210のみが開き、吸入口11aから流入する油が開閉弁210を通過して吐出部30からポンプ90に向かって排出される。したがって、吸入口12a乃至14aからの空気の混入を回避しつつ、吸入口11aから流入する油のみを排出することができる。
図11(b)は、吸入装置1Cの内部を矢印αの方向から見たときの断面を示す。図11(b)には、吸入装置1Cに対して、吸入口12aから吸入口11aに加速度Gが加わった場合における油面11が実線で示され、吸入口11aから吸入口12aに加速度Gが加わった場合における油面12が破線で示されている。
上述のとおり、吸入装置1Cに滞留した油の油面が水平面から傾いて油面11となる場合には開閉弁210のみが開かれ、吸入装置1Cの油面が油面12となる場合には開閉弁220のみが開かれる。
図11(c)は、吸入装置1Cの内部を矢印βの方向から見たときの断面を示す。図11(c)には、吸入装置1Cに対して、吸入口14aから吸入口13aに加速度Gが加わった場合における油面13と、吸入口13aから吸入口14aに加速度Gが加わった場合における油面14とが共に破線で示されている。
吸入装置1Cに滞留した油面が水平面から傾いて油面13となる場合には開閉弁230のみが開かれ、吸入装置1Cの油面が油面14となる場合には開閉弁240のみが開かれる。
このように、吸入装置1Cは、4つの通路11乃至14及び4つの開閉弁210乃至240を備え、各通路の吸入口と開閉弁が吐出部30に対して互いに対向するように配置される。これにより、吸入装置1Cに対して前後左右に加速度が加わった場合において、吸入装置1Cの高さを抑えつつ空気の混入をより一層低減することができる。
なお、本実施形態では4つの通路11乃至14が形成される例について説明したが、吸入装置1Cに3つの通路あるいは5つ以上の通路が形成されてもよい。このような場合であっても各通路の吸入口と開閉弁とを互いに吐出部30に対して反対側に配置することにより、吸入装置1Cの高さを抑えつつ空気の混入を低減することができる。
本発明の第5実施形態によれば、吸入装置1Cは、複数の通路11乃至14と、複数の通路11乃至14の各々を開閉する開閉弁210乃至240とを備える。そして、通路11乃至14の各々の吸入口11a乃至14aは、吐出部30に対して当該吸入口に対応する開閉弁の反対側に配置される。
これにより、吸入装置1Cに対してあらゆる方向から加速度Gが加わる場合であっても、空気の混入を防ぐことができるとともに、より確実に油の吸入を行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では電動モータ100の筐体の底部に吸入装置1、1A乃至1Cを配置する例について説明したが、内燃機関や変速機などの筐体の底部に配置するようにしてもよい。このような場所に吸入装置1などが配置されたとしても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。