JP2018070665A - セルロースの製造方法 - Google Patents

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裕哉 佐藤
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Takayoshi Hamaguchi
高嘉 浜口
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Osamu Shimada
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Abstract

【課題】市販されているクラフトパルプを含む化学パルプから、強熱残分の低い微結晶及び結晶セルロースである食品および医薬用のセルロースを製造する方法を提供すること。【解決手段】下記の(a)〜(c)工程を含む、化学パルプからセルロースを製造する方法により、本課題を解決した。(a)化学パルプを離解する工程(b)(a)工程で得られた離解パルプを水洗する工程(c)鉱酸を含む水溶液からなる処理液で(b)工程で水洗した離解パルプを加水分解により低重合度化してセルロースを得る工程すなわち、離解パルプを水洗することにより、安価で流通量の豊富な化学パルプから、良質のセルロースを得ることができた。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースの製造方法に関するものである。
セルロースは、食品、医薬品、工業用途などの種々の用途に使用されている。
食品用途においては、食品にセルロースを添加することにより、増粘および分散効果が得られるため、食感改善に有効である。セルロースは吸水性や吸油性も高く、例えば揚げ物等の食感改善に特に有効である。
医薬品用途においては、錠剤、散剤(粉薬)、顆粒剤などの固形製剤に、成型、増量、希釈等を目的とする賦形剤として添加される。
上記の用途で使用されるセルロースは、一般的には使用される国の食品添加物、又は医薬品添加物の法的な規格に適合することが求められる。
上記規格の一つである強熱残分は、製品中に含まれる無機不純物濃度の指標となる。例えば日本国では、セルロースの強熱残分は、微結晶セルロースである食品添加物で0.05%以下、結晶セルロースである医薬品添加物で0.1%以下と規定されている。
ところで、セルロースを製造するための原料である化学パルプは、広葉樹チップや針葉樹チップなどの木材チップを化学的に処理して生産されている。通常、これらの木材チップには、鉄、アルミニウム、マンガン、ケイ素、マグネシウム、カルシウムなどの金属無機物が含有される(非特許文献1)。
また、木材のパルプ化の過程において、ピッチ沈着コントロール剤として多量のタルクが添加される場合がある(特許文献3)。タルクとは、鉱石を微粉砕した無機粉末で、主成分は含水珪酸マグネシウム等の無機物である。
一般的に、化学パルプは、サルファイト蒸解法、又はクラフト蒸解法、あるいはこれら方法を組み合わせることにより、木材中のリグニンや樹脂分(ピッチ)を分解し除去して製造される。白色度に優れたセルロースを製造するためには、へミセルロースやリグニンの含有量が低いものが好まれる。特に、微結晶又は結晶セルロースを製造する原料パルプは、無機不純物が少なく、セルロース純度の高いコットンリンターから製造されたパルプや、精製してセルロース純度を高くした溶解パルプと言われる特殊グレードの化学パルプが用いられる(非特許文献2)。
セルロースは通常、木材パルプなどのパルプを、鉱酸、塩化第二鉄などにより加水分解等の低重合度化処理を行った後、洗浄、精製、および乾燥して製造する。特許文献1には、微結晶、又は結晶セルロースを製造する方法として、高純度の溶解パルプやコットンリンターパルプ等の特殊グレードのパルプを、希塩酸や希硫酸などの希薄濃度の鉱酸を用いて加水分解反応により低重合度化する方法が開示されている。しかし、これら特殊グレードのパルプは、一般に流通している製紙用化学パルプに比べて高額である上に、流通量が少ないために原料として選択の自由度が限られるという点で問題があった。
上記以外の化学パルプで、一般に広く流通しているパルプとして、主に紙用途で利用される製紙用化学パルプがある。しかし、製紙用化学パルプは、特殊グレードのパルプに比べ、セルロース濃度が低く、精製度が低いため、食品又は医薬品用途のセルロース原料としては、不向きであった。
本発明者らが、市販されている製紙用パルプの一種であるクラフトパルプに含まれる無機物質を分析したところ、鉄、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、カルシウム、ナトリウムが検出された。鉄、アルミニウム、カルシウム、ナトリウムは、セルロースを製造する過程で鉱酸に溶解し、水洗により比較的容易に除去されるが、ケイ素とマグネシウムはほぼそのまま残存することが分かった。
微結晶、又は結晶セルロースを製造するには、無機不純物である上記の金属等、特にケイ素やマグネシウムに由来する強熱残分を低減化する必要があると考えられた。
しかし、溶解パルプの製造過程で無機物を除去する方法は、古くから開発されているものの、製品として一般に流通している製紙用化学パルプ等に含有する無機物を除去し、強熱残分を低減する技術は知られていない。
特許文献2には、一般に流通している化学パルプであるクラフトパルプから粉末状セルロースを製造する方法が開示されているが、強熱残分の低減に関しては何ら記述されていない。実際に、本発明者らが、特許文献2を参考に、クラフトパルプを鉱酸で加水分解することによりセルロースの製造を試みたところ、得られるセルロースは食品添加物規格および医薬品添加物規格に定められている強熱残分試験に適合しないことが分かった。
一方、製造されたセルロースを洗浄することにより、強熱残分の低減を図ることも考えられる。しかし、パルプを低重合度化処理して得られる微結晶および結晶セルロースは水との馴染が良く保水性があり、その一次粒子の粒子径は数μm〜数100μmの微粒子である。そのため、セルロース自体を洗浄、ろ過することは、極めて作業性が悪く、工業的には不向きである。
そこで、市販されている化学パルプ中に含まれる、無機不純物、特にタルクに代表される鉱酸に溶解しない粒子を効率的に除去することにより、強熱残分の少ない、微結晶又は結晶セルロースの製造方法について、さらなる改善が求められていた。
米国特許第2978446号公報 特開2013−60544号公報 特表2010-521595号公報
紙パ技術協会紙 第58巻第7号 2004年7月 38〜41頁 Cellulose Commun.Vol17.No.2(2010)
本発明が解決しようとする課題は、化学パルプから、強熱残分の低い微結晶及び結晶セルロースである食品および医薬用のセルロースを製造する方法を提供することである。すなわち、市販されているクラフトパルプを含む化学パルプから、強熱残分0.1%以下のセルロースを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、セルロースの製造法について検討を行った結果、化学パルプから強熱残分が0.1%以下のセルロースを製造できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本願は以下の発明を包含する。
<1>
下記の(a)〜(c)の工程を含む、化学パルプからセルロースを製造する方法。
(a)化学パルプを離解する工程
(b)(a)工程で得られた離解パルプを水洗する工程
(c)鉱酸を含む水溶液からなる処理液で(b)工程で水洗した離解パルプを加水分解により低重合度化してセルロースを得る工程
<2>
前記(a)工程、又は(b)工程において、攪拌しながら超音波を照射する、<1>に記載のセルロースを製造するする方法。
<3>
得られたセルロースの強熱残分が0.1%以下である、<1>又は<2>のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
<4>
前記の鉱酸が、硫酸、又は塩酸である、<1>〜<3>のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
<5>
前記硫酸、又は塩酸が、処理液中に0.05〜30重量%含まれる、<4>に記載のセルロースを製造する方法。
<6>
前記処理液が、過酸化物を含む、<1>〜<5>のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
<7>
前記の過酸化物が、過酸化水素である、<6>に記載のセルロースを製造する方法。
<8>
前記過酸化水素が、処理液中に0.05〜15重量%含まれる、<7>に記載のセルロースを製造する方法。
<9>
前記(c)工程前に、前記(a)工程および(b)工程を行う、<1>〜<8>のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
本発明の製造方法により、安価な化学パルプを原料に、強熱残分が0.1%以下のセルロースを製造することが出来る。
1つの実施形態によると、本発明のセルロースを製造する方法は、化学パルプを離解する工程と、離解したパルプを水で洗浄すること、洗浄した水を除去することを含み、得られたパルプを公知の方法で加水分解することを含む。
<原材料>
・ 化学パルプ
化学パルプはパルプチップから製造される。パルプチップの原料としては、ラジアータパイン、スプルース、ヘムロックに代表される針葉樹、ならびにユーカリ、アカシアに代表される広葉樹が挙げられる。これら針葉樹および広葉樹のパルプをそれぞれ単独で使用することもできるし、複数種を組み合わせて使用することもできる。複数種を組み合わせて使用する場合、その組み合わせはなんら限定されるものではない。
化学パルプは、上記パルプチップを原料として、サルファイト蒸解法、又はクラフト蒸解法、あるいはこれら方法を組み合わせることにより製造される。
上記方法で製造された化学パルプは、非漂白パルプ、又は漂白パルプのいずれでも良く、これらの組み合わせであっても良い。
また、化学パルプには、製紙用パルプと製精度の高い溶解パルプがあるが、いずれも使用することができ、これらを組み合わせて使用することもできる。
化学パルプは、蒸解、又は漂白後の含水状態で使用しても良く、乾燥された板状のパルプを使用しても良い。
本発明に使用される化学パルプは、上記のいずれの種類のパルプでも良いが、好ましくは漂白パルプが使用される。
<製造工程>
以下、製造工程(a)〜(c)について、順に説明する。
(a)化学パルプを離解する工程(離解工程)
(b)(a)工程で得られた離解パルプを水洗する工程(水洗工程)
(c)鉱酸を含む水溶液からなる処理液で(b)工程で得られた離解パルプを加水分解により低重合度処理化してセルロースを得る工程(低重合度化処理工程)
(a)化学パルプを離解する工程(離解工程)
本工程では、原材料である化学パルプを、水、又は水溶液の中でパルプを攪拌してパルプの繊維を解し、その後、ろ過などの方法により該化学パルプと水、又は水溶液とを分離し、離解パルプを得る工程である。
パルプの離解は、パルプの結束繊維がなくなる程度で良い。離解の度合いは、カナディアンスタンダードフリーネスで表すことができ、好ましくは100〜800mLであり、より好ましくは300〜800mL、更に好ましくは500〜800mLである。これより高いと離解が不十分であり、これより低いとパルプのろ過性が悪化して無機不純物が除去されにくくなる。
水、又は水溶液と化学パルプとを含むスラリー中のパルプの割合は、0.1〜25重量%の範囲が良く、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%である。これより低い濃度では1回当り、又は単位時間当たりの処理量が少ないため経済的でなく好ましくない。これより高い濃度では水、又は水溶液がパルプに十分に浸透せず、化学パルプを離解する効率が落ち、好ましくない。
処理温度は、特に制約はない。また、水に不溶な固形分が含まれない入手しやすい水をそのまま利用することができる。
(b)(a)工程で得られた離解パルプを水洗する工程(水洗工程)
本工程では、離解後のパルプを水洗する工程、および脱水する工程が含まれる。
本工程では離解パルプに水、又は水溶液を加える。水、又は水溶液と離解パルプとを含むスラリー中のパルプの割合は、0.1〜25重量%の範囲が良く、より好ましくは1〜20重量%である。これより低い濃度では1回当り、又は単位時間当たりの処理量が少ないため経済的でなく好ましくない。これより高い濃度では水、又は水溶液がパルプに十分に浸透せず、無機不純物を除去する効率が落ち、好ましくない。
次いで、前記スラリーを攪拌する。離解パルプには、まだマグネシウムおよびケイ素を主成分とする無機不純物が残留している。該無機不純物を除去するために、本工程を行う。離解パルプの水洗は、(a)工程(離解工程)と同じ設備を用いることができる。ドラム缶等の汎用の槽類に水、又は水溶液と(a)工程で得られた離解パルプを投入し、パドル翼、タービン翼、アンカー翼、プロペラ翼など一般的な攪拌翼で撹拌するだけで良い。市販のパルパー、リファイナーを用いることができる。また、攪拌しながら、超音波を照射しても良い。
次いで、離解パルプを含むスラリーを遠心分離機、フィルタープレス、ベルトプレス、オリバー型フィルター、ヤングフィルター、ドラムフィルター、ベルトフィルター等により、脱水する。
本工程は、1回のみでも、複数回行っても良い。
(c)鉱酸を含む水溶液からなる処理液で(b)工程で得られた離解パルプを加水分解により低重合度化処理してセルロースを得る工程(低重合度化処理工程)
本工程では、(b)工程で得られた離解パルプを、鉱酸で加水分解により低重合度化処理して、目的の平均重合度のセルロースを製造する。なお、本工程で使われる水は、イオン交換水など不純物の少ない水が使用される。
化学パルプの鉱酸による低重合度化処理としては、公知の方法を用いることができる。典型的には、化学パルプ1〜20固形分重量%、鉱酸濃度0.05〜30重量%、反応温度80〜100℃、反応時間30分〜3時間の反応条件で化学パルプの低重合度化処理が行われる。
本発明の方法で製造されるセルロースの強熱残分は、0.1%以下の範囲であり、より好ましくは0.05%以下である。
以下に実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)試験条件
<使用した水>
以下の実施例および比較例において用いた水は、ヤマト科学製超純水製造装置オートピュアWR−7000により得られたイオン交換水を使用した。イオン交換水の電気伝導度は18.2MΩ(25.0℃)、TOC含有量は5ppbであった。
<カナディアンスタンダードフリーネス測定方法>
本発明の方法で製造されるパルプのカナディアンスタンダードフリーネスは、日本工業規格、JIS P−8121、パルプ−ろ水度試験方法−第2部:カナダ標準ろ水度法に従いカナダ標準ろ水度試験器を用いた方法により測定した。測定値が700mLを超える場合は、標準温度20℃への補正表および標準濃度0.30%への補正表の700mLの値を採用した。
<強熱残分>
強熱残分は、第8版食品添加物公定書解説書、微結晶セルロース強熱残分試験方法により測定した。
<平均重合度>
平均重合度は、第16改正日本薬局方解説書、結晶セルロース確認試験(3)記載の銅エチレンジアミンを用いた粘度測定法により測定した。
(2)実施例および比較例
<実施例1>
裁断機で縦横とも4mmに裁断した漂白針葉樹パルプ(強熱残分0.240%、平均重合度1,254)944g(絶乾重量)と水37Lとを攪拌翼付き100L撹拌槽にて850rpmで10分間攪拌した。撹拌後に目開き2mmの網で吸引ろ過を行い、離解パルプを得た(離解工程)。得られた離解パルプに37Lの水を加えて3分間攪拌した後、ろ過を行った(水洗工程)。この水洗工程を5回繰り返し、水洗した離解パルプを得た。この水洗した離解パルプのカナディアンスタンダードフリーネスは762mL、強熱残分は0.10%であった。水洗した離解パルプ100g(絶乾重量)と16重量%硫酸水溶液1800gを2Lセパラブルフラスコに入れ、90℃の恒温水槽に180分間浸漬して低重合度化処理を行った。反応後に吸引ろ過を行い、水洗を5回行った後、吸引ろ過を行いセルロースを得た(低重合度化処理工程)。得られたセルロースの平均重合度は233、強熱残分は0.03%であった。
<実施例2>
シュレッダーで長さ40mm、幅5mmに裁断した漂白針葉樹パルプ(強熱残分0.397%、平均重合度1,497)12.5g(絶乾重量)と水487.5gとを、家庭用ミキサー(株式会社エフエムアイ、RM−5200V)にて5分間攪拌した。撹拌後に目開き30μmのナイロンフィルターにて吸引ろ過を行い、離解パルプを得た(離解工程)。この離解パルプに離解パルプ絶乾重量の20倍量の水を加えて1000mLポリプロピレン容器内でスリーワンモーター(新東科学製、BL600)にて500rpm、10分間攪拌した後、ろ過を行った(水洗工程)。この水洗工程を5回繰り返し、水洗した離解パルプを得た。この水洗した離解パルプのカナディアンスタンダードフリーネスは720mLであった。水洗した離解パルプ6g(絶乾重量)を300mLセパラブルフラスコに入れ、さらに16重量%硫酸および2重量%過酸化水素である水溶液54gを加えた。この300mLセパラブルフラスコを90℃の恒温水槽に120分間浸漬して低重合度化処理を行った。反応後に吸引ろ過を行い、水洗を5回行った後、吸引ろ過を行いセルロースを得た(低重合度化処理工程)。得られたセルロースの平均重合度は216、強熱残分は0.04%であった。
<実施例3>
裁断機にて5mm、幅5mmにした漂白針葉樹パルプ(強熱残分0.234%、平均重合度1,254)944g(絶乾重量)と水37Lとを、ハンドミキサー(リョウビ(株) PM−851)を使用し、100L撹拌槽にて850rpmで10分間攪拌した。撹拌後に目開き2.0mmの網で濾過し、離解パルプを得た(離解工程)。この離解パルプ944g(絶乾重量)と水37Lを100L撹拌槽にいれ、ハンドミキサーにて850rpm、3分間攪拌し、その後ろ過を行った(水洗工程)。この水洗工程を5回繰り返した後、遠心分離機にて脱水し、水洗した離解パルプを得た。この水洗した離解パルプのカナディアンスタンダードフリーネスは758mLであった。1.4重量%塩酸水溶液2kgを2200mLセパラブルフラスコに入れ、水洗した離解パルプ100g(絶乾重量)を加えた。この2200mLセパラブルフラスコを130℃のオイルバスに浸漬して、2時間還流を行い、低重合度化処理を行った。反応後に吸引ろ過を行い、水洗を2回、中和を1回、水洗を1回行った後、吸引ろ過を行いセルロースを得た(低重合度化処理工程)。得られたセルロースの平均重合度は254、強熱残分は0.03%であった。
<実施例4>
シュレッダーで長さ40mm、幅5mmに裁断した漂白針葉樹パルプ(強熱残分0.240%、平均重合度1,254)12.5g(絶乾重量)と水487.5gとを、1000mLポリプロピレン容器内で翼径40mmのプロペラ翼を用いて500rpmで2時間攪拌した。撹拌後に定量ろ紙(No.5C)にて吸引ろ過を行い、離解パルプを得た(離解工程)。得られた離解パルプに離解パルプ絶乾重量の20倍の重量の水を加えて1000mLポリプロピレン容器内でスリーワンモーター(新東科学製、BL600)にて500rpm、10分間攪拌した後、ろ過を行った(水洗工程)。この水洗工程を25回繰り返し、水洗した離解パルプを得た。この水洗した離解パルプのカナディアンスタンダードフリーネスは735mLであった。この水洗した離解パルプ10g(絶乾重量)と16重量%硫酸水溶液100gを300mLセパラブルフラスコに入れ、90℃の恒温水槽に180分間浸漬して低重合度化処理を行った。反応後に吸引ろ過を行い、水洗を5回行った後、吸引ろ過を行いセルロースを得た(低重合度化処理工程)。得られたセルロースの強熱残分は0.02%であった。
<実施例5>
シュレッダーで長さ40mm、幅5mmに裁断した漂白広葉樹パルプ(強熱残分0.358、平均重合度1,556)11.5g(絶乾重量)と水988.5gとを、2000mLのビーカー内で翼径40mmのプロペラ翼を用いて50rpmで1時間攪拌しながら、超音波を照射した。撹拌後に定量ろ紙(No.5C)にて吸引ろ過を行った後、同様の操作を2回繰り返し、離解パルプを得た(離解工程および水洗工程)。この離解パルプを実施例2と同様に低重合度化処理を行い、セルロースを得た。得られたセルロースの強熱残分は0.02%であった。
<比較例1>
シュレッダーで長さ40mm、幅5mmに裁断した漂白針葉樹パルプ(強熱残分0.397%、平均重合度1,497)を用いて、離解パルプを水洗せずに、実施例2と同じ離解工程および低重合度化処理を実施した。得られたセルロースの強熱残分は0.12%であった。
<比較例2>
シュレッダーで長さ40mm、幅5mmに裁断した漂白広葉樹パルプ(強熱残分0.368%、平均重合度1,566)を用い、離解パルプを水洗せずに、実施例2と同じ離解工程および低重合度化処理を実施した。得られたセルロースの強熱残分は0.14%であった。
比較例1および比較例2の結果から、離解工程のみ行い、水洗工程を経ない離解パルプは無機不純物の除去が不十分で、得られるセルロースの強熱残分は、0.10%より大きかった。
<比較例3>
比較例2で得られたセルロース2g(絶乾重量)に、水400gを加えて500mLポリプロピレン容器内でスリーワンモーター(新東科学製、BL600)にて500rpm、10分間攪拌、ろ過を行った。この操作を5回繰り返した。本操作で得られたセルロースの強熱残分は0.12%であった。
水洗工程を経ずに、離解工程および低重合度化工程を行い、得られたセルロースを、水洗工程と同様の操作を行っても無機不純物は除去できなかった。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (9)

  1. 下記の(a)〜(c)の工程を含む、化学パルプからセルロースを製造する方法。
    (a)化学パルプを離解する工程
    (b)(a)工程で得られた離解パルプを水洗する工程
    (c)鉱酸を含む水溶液からなる処理液で(b)工程で水洗した離解パルプを加水分解により低重合度化してセルロースを得る工程
  2. 前記(a)又は(b)工程において、超音波を照射する、請求項1に記載のセルロースを製造するする方法。
  3. 得られたセルロースの強熱残分が0.1%以下である、請求項1又は2のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
  4. 前記の鉱酸が、硫酸、又は塩酸である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
  5. 前記の硫酸、又は塩酸が、処理液中に0.05〜30重量%含まれる、請求項4に記載のセルロースを製造する方法。
  6. 前記の処理液が、過酸化物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
  7. 前記の過酸化物が、過酸化水素である、請求項6に記載のセルロースを製造する方法。
  8. 前記の過酸化水素が、処理液中に0.05〜15重量%含まれる、請求項7に記載のセルロースを製造する方法。
  9. 前記(c)工程前に、上記(a)工程および(b)工程を行う、請求項1〜8のいずれかに記載のセルロースを製造する方法。
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