JP2018070523A - 1炭素減炭反応用触媒、及びこれを用いた1炭素減炭化合物の製造方法 - Google Patents

1炭素減炭反応用触媒、及びこれを用いた1炭素減炭化合物の製造方法 Download PDF

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【課題】1級水酸基、カルボキシル基、若しくはアルコキシカルボニル基を有する化合物、又はラクトン化合物を基質として、1炭素減炭化合物を選択的に製造する方法の提供。【解決手段】Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtから選択される金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl2O3から選択される担体に担持された、触媒の存在下、基質としての式(1-1)又は(1-2)或いは(1-3)で表される化合物を水素と反応させて1炭素減炭化合物を得る方法。(R1〜R3は各々独立にH、置換/非置換の1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基;R1〜R3は隣接する炭素と共に環を形成しても良い;Lは置換/非置換の2価の炭化水素基等;nは0以上の整数)【選択図】なし

Description

本発明は、1炭素減炭反応促進効果を有する触媒、及びこれを用いた1炭素減炭化合物の製造方法に関する。
地球環境問題やエネルギー問題の解決に向けて、植物性バイオマスを原料とした化成品合成プロセスの開発が進められている。
植物性バイオマスを有用化成品へ変換するために、選択的にC−O結合を切断する方法が開発されている。一方、選択的にC−C結合を切断し減炭する方法は、基質と異なる炭素数の化成品を製造できるという利点があるにもかかわらず、ほとんど知られていない。これまで、Ru/TiO2やRu/ZrO2を触媒として使用して、レブリン酸から2−ブタノールを製造できることが知られている程度である(特許文献1)。しかし、前記触媒を使用した場合、15MPaの高水素圧下、160℃で反応させて得られる2−ブタノールの収率は61%程度であり、より温和な条件下で、効率よく製造する方法が求められていた。
仏国特許出願公開第3008970号明細書
従って、本発明の目的は、1級水酸基、カルボキシル基、若しくはアルコキシカルボニル基を有する化合物、又はラクトン化合物を基質として、1炭素減炭化合物を選択的に製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、1級水酸基、カルボキシル基、若しくはアルコキシカルボニル基を有する化合物、又はラクトン化合物から1炭素減炭化合物を得る反応を促進する効果を有する触媒を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された触媒は、基質が1級水酸基を有する化合物である場合は、その1級水酸基が結合する炭素原子を減炭し、基質がカルボキシル基若しくはアルコキシカルボニル基を有する化合物、又はラクトン化合物である場合は、カルボニル炭素を減炭して、1炭素減炭化合物を収率良く製造することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された触媒(但し、基質がレブリン酸の場合は、触媒はRuがZrO2又はTiO2に担持された触媒以外である)の存在下、基質としての下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
Figure 2018070523
[式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
で表される化合物を水素と反応させて、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
Figure 2018070523
(式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
で表される1炭素減炭化合物を得る、1炭素減炭化合物の製造方法を提供する。
本発明は、また、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された構成を有し、下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
Figure 2018070523
[式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
で表される化合物におけるCα炭素原子を減炭して、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
Figure 2018070523
(式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
で表される1炭素減炭化合物を製造する用途に使用する触媒(但し、触媒が、RuがZrO2又はTiO2に担持された構成を有する場合、前記基質はレブリン酸以外の化合物である)を提供する。
本発明の触媒によれば、基質としての上記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物を水素と反応させて、Cα−Cβ単結合を切断し、Cα炭素原子を減炭して、対応する1炭素減炭化合物(=基質から炭素数を1つ減らした化合物)を選択的且つ収率良く製造することができる。例えば、植物の細胞壁の主成分であるリグノセルロース由来のレブリン酸を基質として使用すれば、有用な化成品である2−ブタノールを選択的に効率よく製造することができる。リグノセルロース等の植物性バイオマスは光合成により大気中の二酸化炭素を固定化することから、植物性バイオマスを用いて得られた1炭素減炭化合物は、大気中の二酸化炭素濃度を増加させないクリーンな化学原料である。
[触媒]
本発明の触媒は、下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
Figure 2018070523
[式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
で表される化合物におけるCα炭素原子を減炭して、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
Figure 2018070523
(式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
で表される1炭素減炭化合物を製造する用途に使用する触媒、詳細には、前記1炭素減炭化合物を製造する反応を促進する効果を有する触媒であり、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された構成を有する(但し、触媒が、RuがZrO2又はTiO2に担持された構成を有する場合、前記基質はレブリン酸以外の化合物である)。
本発明では、触媒活性を有する上記金属種を担体に担持した状態で使用する。それにより、金属種同士の界面面積を稼ぐことができ、触媒活性点を多く露出させることができ、優れた触媒活性を発揮することができる。
また、本発明における触媒は、金属種が担体に担持されたものであるので、反応終了後は、濾過、遠心分離等の物理的な分離手段により触媒を反応生成物から容易に分離、回収することができ、反応生成物から触媒を除去する精製処理に要するコストを最小限とすることができる。また、分離し、回収された触媒は、そのままで、又は洗浄、乾燥等を施した後、再使用することができる。そのため、高価な触媒を繰り返し利用することができ経済的である。
金属種は、Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種である。本発明においては、特に選択的にCα−Cβ単結合を切断してCα炭素原子を減炭することにより、1炭素減炭化合物を収率良く製造できる点でRuが好ましい。
担体は、CeO2、ハイドロキシアパタイト(HAP)、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト(HT)、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される少なくとも1種である。本発明においては、なかでも、選択的にCα−Cβ単結合を切断してCα炭素原子を減炭することにより、1炭素減炭化合物を収率良く製造することができる点で、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、、TiO2、又はハイドロタルサイトが好ましく、より好ましくはCeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、又はTiO2、特に好ましくはCeO2、ハイドロキシアパタイト、又はZrO2、とりわけ好ましくはCeO2である。
担体の比表面積(BET法による)は、例えば10〜1000m2/g、好ましくは50〜800m2/g、特に好ましくは100〜700m2/g、最も好ましくは100〜500m2/g、とりわけ好ましくは100〜300m2/gである。
担体の平均粒子径(レーザー回折・散乱法による)は、例えば0.1〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、特に好ましくは0.1〜0.5μmである。
CeO2としては、例えば、商品名「酸化セリウム」(触媒学会参照触媒)等の市販品を好適に使用することができる。
担体に担持される金属種の態様は特に限定されることがなく、例えば、金属単体、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物、又は金属錯体等を挙げることができる。
金属種の担持量(金属換算)は、上記担体の、例えば0.1〜20重量%程度、好ましくは0.5〜15重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。担持量が上記範囲を下回ると、十分な触媒活性が得られ難くなる傾向がある。
触媒の調製方法としては、例えば、析出沈殿法や含浸法を挙げることができる。本発明においては、なかでも、金属種を超微粒子(例えば、nmオーダー)の状態で担体に担持することができ、活性面の露出量を増加させ、触媒活性を向上することができる点で、析出沈殿法により調製することが好ましい。
析出沈殿法では、例えば下記工程を経て触媒を調製することができる。
[1]上記金属種を含む化合物(=金属化合物)の水溶液を塩基性(pH:7〜10)に調整し、そこへ担体を分散させ、撹拌して、担体表面に金属種を析出させる
[2]沈殿物を洗浄、濾過し、乾燥させる
[3]焼成する
金属種としてRuを含有する触媒を製造する場合は、金属化合物としてRu化合物(例えば、RuCl3等)を使用する。同様に、金属種としてRhを含有する触媒を製造する場合は、金属化合物としてRh化合物(例えば、RhCl3・xH2O等)、金属種としてPdを含有する触媒を製造する場合は、金属化合物としてPd化合物(例えば、Pd(NO32等)、金属種としてIrを含有する触媒を製造する場合は、金属化合物としてIr化合物(例えば、IrCl3・xH2O等)、金属種としてPtを含有する触媒を製造する場合は、金属化合物としてPt化合物(例えば、H2PtCl6等)を使用する。
pHの調整はアルカリ(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム等)を添加することにより行うことができる。
前記水溶液中に担体を分散し、撹拌する時間は、例えば1〜30時間程度、好ましくは1〜5時間である。
乾燥は、例えば乾燥機等を使用して、80〜150℃で1〜10時間程度加熱乾燥することが好ましい。
焼成は、例えばマッフル炉等を使用して、250〜500℃で1〜5時間加熱することが好ましい。
上記調製方法により得られた触媒は、その後、洗浄処理(水や有機溶媒等により洗浄)、乾燥処理(真空乾燥等により乾燥)等を施してもよい。
[1炭素減炭化合物の製造方法]
本発明の1炭素減炭化合物の製造方法は、上記触媒(但し、基質がレブリン酸の場合は、触媒はRuがZrO2又はTiO2に担持された触媒以外である)の存在下、基質としての下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
Figure 2018070523
[式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
で表される化合物を水素と反応させて、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
Figure 2018070523
(式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
で表される1炭素減炭化合物を得ることを特徴とする。
1、R2、R3における炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1〜20(好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5)の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜5)の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2〜20(好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜5)の直鎖状又は分岐鎖状アルキニル基等を挙げることができる。
脂環式炭化水素基としては、3〜20員の脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3〜20員(好ましくは3〜10員、特に好ましくは4〜7員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の3〜20員(好ましくは3〜15員、特に好ましくは5〜8員)のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基等の橋かけ環式炭化水素基等を挙げることができる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14(特に、炭素数6〜10)の芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボニル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基等)等を挙げることができる。前記炭化水素基はこれらから選択される1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含有していてもよい。尚、前記水酸基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
1、R2、R3における連結基としては、例えば、カルボニル基(−CO−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONH−)、カーボネート結合(−OCOO−)等を挙げることができる。
4における炭化水素基としては、上記R1、R2、R3における炭化水素基と同様の例を挙げることができる。本発明におけるR4としては、なかでも、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基(特に、直鎖状又は分岐鎖状アルキル基)が好ましい。
Lにおける2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等の炭素数1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基等を挙げることができる。
Lにおける連結基としては、上記R1、R2、R3における連結基と同様の例を挙げることができる。
Lにおける2価の炭化水素基が有していてもよい置換基としては、上記R1、R2、R3における炭化水素基が有していてもよい置換基と同様の例を挙げることができる。
nは0以上の整数を示し、例えば0〜20の整数、好ましくは0〜10の整数、より好ましくは0〜5の整数である。
1、R2、R3から選択される2つの基が互いに結合して、隣接する炭素原子と共に形成していてもよい環としては、3〜15員(好ましくは3〜10員、特に好ましくは4〜7員)の脂環や、炭素数6〜14の芳香環を挙げることができる。前記脂環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等の飽和脂肪族炭化水素環;パーヒドロナフタレン環、ノルボルナン環、アダマンタン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環等の橋かけ環等を挙げることができる。また、前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。
上記式(1-1)で表される化合物としては、例えば、プロピオン酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、ブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸等の炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサン酸等の炭素数3〜20の脂環式モノカルボン酸;安息香酸等の炭素数6〜14の芳香族モノカルボン酸;及び置換基(特に、水酸基又はカルボニル基)を有する前記モノカルボン酸(例えば、下記式(1-1-1)〜(1-1-13)で表される化合物等);及びこれらの化合物のC1-5アルキルエステル体(例えば、下記式(1-1-14)で表される化合物等)などを挙げることができる。
Figure 2018070523
上記式(1-2)で表される化合物としては、例えば、n−プロパノール、2,2−ジメチルプロパノール、n−ブタノール、2,2−ジメチルブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール等の炭素数2〜20の1価の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族アルコール;シクロヘキサノール等の炭素数3〜20の1価の脂環式アルコール;フェノール、ベンジルアルコール等の炭素数6〜14の1価の芳香族アルコール;及び置換基(特に、水酸基又はカルボニル基)を有する前記アルコール(例えば、下記式(1-2-1)〜(1-2-13)で表される化合物等)などを挙げることができる。
Figure 2018070523
上記式(1-3)で表される化合物としては、例えば、3〜8員のラクトン化合物、及び置換基(特に、炭素数1〜5のアルキル基)を有する前記ラクトン(例えば、下記式(1-3-1)〜(1-3-3)で表される化合物等)などを挙げることができる。
Figure 2018070523
本発明の1炭素減炭化合物の製造方法では、上記触媒の存在下で反応を行うため、上記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物から、前記化合物中のCα−Cβ単結合を切断してCα炭素原子を減炭し、前記化合物から炭素数を1つ減らした化合物(基質が式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)で表される1炭素減炭化合物、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)で表される1炭素減炭化合物)を選択的に、且つ効率よく製造することができる。
触媒の使用量(触媒に含まれる金属種換算)は、上記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物の、例えば0.01〜30モル%程度、好ましくは0.1〜10モル%、特に好ましくは0.5〜5モル%である。触媒の使用量が上記範囲を下回ると1炭素減炭化合物の収率が低下する傾向がある。
反応に使用する水素の供給は、例えば水素雰囲気下で反応を行う方法や、水素ガスをバブリングする方法等により行われる。
本発明では上記触媒を使用するため温和な条件下で速やかに反応を進行させることができ、反応時の水素圧は、例えば、0.01〜10MPa、好ましくは0.1〜5MPa、特に好ましくは1〜5MPa、最も好ましくは1〜3MPaである。
また、反応温度は、例えば30〜200℃であり、反応温度の下限は、好ましくは80、より好ましくは100℃、特に好ましくは130℃、最も好ましくは150℃である。反応温度の上限は、好ましくは180℃である。
反応時間は、例えば1〜48時間程度、好ましくは5〜36時間、特に好ましくは8〜24時間、最も好ましくは10〜20時間であり、反応温度によって適宜調整することができる。例えば、反応温度が低めの場合は、反応時間を長めに設定し、反応温度が高めの場合は、反応時間を短めに設定することで1炭素減炭化合物を収率良く製造することができる。
本発明では、反応を酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、安息香酸、酢酸等の有機酸;硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸;酸性イオン液体等のルイス酸;及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種)の存在下で行う必要が無く、バッチ式で反応を行う場合の反応系に存在する前記酸の濃度は、例えば反応液全重量の0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。尚、前記酸の濃度の下限はゼロ重量%である。そのため、耐酸性を有する高価な反応器を使用する必要が無く、反応終了後に酸を中和する処理も必要無い。
反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
反応は液相で行うことが好ましい。すなわち、本発明の反応は液相反応が好ましい。
液相で反応を行う場合、溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1,4−ジオキサン、THF、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、トルエン、ヘキサン、ドデカン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン等を挙げることができる。
溶媒としては、なかでも水が好ましい。すなわち、本発明の反応は水の存在下で行うことが好ましい。
溶媒(特に、水)の使用量は、バッチ式で反応させる場合は基質の初期濃度が例えば10〜0.1mol/Lとなる範囲が好ましい。
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
本発明の1炭素減炭化合物の製造方法によれば、上記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物を効率よく転化して、前記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物から炭素数を1つ減らした化合物を選択的且つ高収率で製造することができる。上記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)で表される化合物の転化率は、80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。前記1炭素減炭化合物の選択率は、45%以上が好ましく、より好ましくは50%以上、より好ましくは58%以上、更に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
(触媒の調製:析出沈殿法)
4mMのRuCl3水溶液50mLに、CeO2(比表面積(BET法による):123.1m2/g、結晶子径:8.7nm、商品名「酸化セリウム(JRC−CEO−2)」、触媒学会参照触媒)1gを加え、アンモニア水溶液(14%水溶液)3mLを滴下して混合液のpHを塩基性に調整した。
12時間撹拌し、得られた沈殿物を水で洗浄、濾過、乾燥し、マッフル炉にて300℃で3時間焼成して、触媒(1)(Ru/CeO2、Ru担持量:2重量%)を得た。
(1炭素減炭化合物の製造)
テフロン(登録商標)製内筒を備えた50mLステンレス製オートクレーブに、基質としてのレブリン酸(LA)1ミリモルと触媒(1)100mg[基質の2モル%(金属換算)]、及び水3mLを仕込み、水素加圧下(3MPa)、150℃で12時間反応させて反応生成物を得た。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を使用して原料の転化率(conv.[%])及び各反応生成物の収率(yield[%])を測定した。
実施例2
触媒を下記表1に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様に行った。
Figure 2018070523
Figure 2018070523
実施例3(触媒の再使用性の検討)
実施例1で使用後の触媒(1)を濾過、洗浄して触媒(1st reuse)を得た。得られた触媒(1st reuse)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
実施例4(触媒の再使用性の検討)
実施例3で使用後の触媒(1st reuse)を濾過、洗浄後して触媒(2nd reuse)を得た。得られた触媒(2nd reuse)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
実施例5(触媒の再使用性の検討)
実施例2で使用後の触媒(2nd reuse)を濾過、洗浄後して触媒(3rd reuse)を得た。得られた触媒(3rd reuse)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
実施例1、3〜5の結果を下記表に示す。下記表より、本発明の触媒は再使用性に優れることがわかる。
Figure 2018070523
実施例6
テフロン(登録商標)製内筒を備えた50mLステンレス製オートクレーブに、基質としての1,4−ペンタンジオール1ミリモルと触媒(1)100mg[基質の2モル%(金属換算)]、及び水3mLを仕込み、水素加圧下(3MPa)、150℃で12時間反応させて反応生成物を得た。実施例1と同様の方法で原料の転化率及び各反応生成物の収率を測定した。
実施例7〜11
触媒を下記表2に記載の通りに変更した以外は実施例6と同様に行った。
Figure 2018070523
Figure 2018070523
実施例12〜27(基質適用性の検討)
基質、反応時間、及び反応温度を下記表4,5に記載の通りに変更した以外は実施例1と同様に行った。
結果を下記表に示す。下記表より、本発明の触媒は種々の基質に適用できることがわかる。
Figure 2018070523
Figure 2018070523
比較例1
反応条件を水素加圧下(3MPa)から空気加圧下(1MPa)に変更した以外は実施例15と同様に行った。その結果、基質の転化率は6%、2−ブタノールの収率は2%であった。
比較例2
反応条件を水素加圧下(3MPa)から空気加圧下(1MPa)に変更した以外は実施例27と同様に行った。その結果、基質の転化率は1%未満、2−ブタノールの収率はゼロ%であった。
実施例28(ラージスケールでの反応)
基質の使用量を1mmolから50mmolへ、水の使用量を3mLから80mLへ、反応時間を12時間から24時間へ変更した以外は実施例1と同様に行った。
その結果、基質転化率は99%超であり、2−ブタノールを77%の高収率で得た。

Claims (2)

  1. Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された触媒(但し、基質がレブリン酸の場合は、触媒はRuがZrO2又はTiO2に担持された触媒以外である)の存在下、基質としての下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
    Figure 2018070523
    [式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
    で表される化合物を水素と反応させて、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
    Figure 2018070523
    (式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
    で表される1炭素減炭化合物を得る、1炭素減炭化合物の製造方法。
  2. Ru、Rh、Pd、Ir、及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属種が、CeO2、ハイドロキシアパタイト、ZrO2、TiO2、ハイドロタルサイト、SiO2、MgO、及びAl23からなる群より選択される担体に担持された構成を有し、下記式(1-1)又は(1-2)又は(1-3)
    Figure 2018070523
    [式中、R1、R2、R3は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい1価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した1価の基を示す。R1、R2、R3から選択される2つの基は互いに結合して、隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。R4は水素原子又は炭化水素基を示す。Lは置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、又は2個以上の炭化水素基が連結基を介して結合した2価の基を示す。nは0以上の整数を示す。尚、炭素原子右肩のα及びβは炭素原子を特定するために記載したものである]
    で表される化合物におけるCα炭素原子を減炭して、基質が前記式(1-1)又は(1-2)で表される化合物の場合は下記式(2-1)、基質が前記式(1-3)で表される化合物の場合は下記式(2-2)
    Figure 2018070523
    (式中、R1、R2、R3、L、nは前記に同じ)
    で表される1炭素減炭化合物を製造する用途に使用する触媒(但し、触媒が、RuがZrO2又はTiO2に担持された構成を有する場合、前記基質はレブリン酸以外の化合物である)。
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