以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置X1(以下「記録装置X1」と略称する。)について説明する。なお、図1は、記録装置X1の搬送ユニット5が記録部3による印刷が可能な記録位置に配置された状態を示し、図2は、搬送ユニット5が前記記録位置から下方へ所定距離を隔てたメンテナンス位置に配置された状態を示す。
図1に示すように、記録装置X1は、給紙カセット1、給紙部2、記録部3、インクタンク部4、搬送ユニット5、昇降機構6、排紙部7、パージ装置8、キャップ装置9、制御部10、及びこれらを収容又は支持する本体フレーム11などを備えている。
記録装置X1は、入力される画像データに基づいて印刷処理を実行するプリンタである。なお、本発明に係るインクジェット記録装置は、プリンタに限らず、複写機、ファクシミリ装置、複合機などにも適用可能である。
給紙カセット1には、記録装置X1において印刷対象となる用紙P(記録媒体の一例)が収容される。もちろん、印刷対象は、紙に限らずOHPシート又は布などの記録媒体であってもよい。
給紙部2は、ピックアップローラ21、搬送ローラ22、搬送路23、レジストローラ24、手差しフィーダ25、及び給紙ローラ26を備えている。ピックアップローラ21は、給紙カセット1から用紙Pを1枚ずつ取り出す。搬送ローラ22及び搬送路23は、ピックアップローラ21により取り出された用紙Pをレジストローラ24まで搬送する。レジストローラ24は、所定の搬送タイミング(画像の書き出しタイミング)で用紙Pを記録部3に搬送する。手差しフィーダ25及び給紙ローラ26は、外部から用紙Pを供給するために用いられる。
記録部3は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するラインヘッド31、32、33、34と、これらを支持するヘッドフレーム35とを有している。ヘッドフレーム35は本体フレーム11に支持されている。本実施形態では、記録部3は、上述した4色に対応して、4つのラインヘッド31〜34を有する。しかしながら、ラインヘッドの数は、上述した4つに限られず、少なくとも1つ有していればよい。
ラインヘッド31〜34は、所謂ラインヘッド型の記録ヘッドである。即ち、記録装置X1は、所謂ラインヘッド型のインクジェット記録装置である。ラインヘッド31〜34は、用紙Pの搬送方向D1に垂直な幅方向D2(図3参照、用紙Pの幅方向)に長いものであり、具体的には、ラインヘッド31〜34の幅は、搬送される最大幅の用紙Pの幅に対応する長さを有する。ラインヘッド31〜34それぞれは、用紙Pの搬送方向D1に沿って所定間隔を隔てられて、ヘッドフレーム35に固定されている。
図3に示すように、ラインヘッド31〜34それぞれは、複数の記録ヘッド17を有する。記録ヘッド17の下面は、インク吐出面17A(ノズル面の一例)である。インク吐出面17Aには、開口を有するインク吐出用の多数のノズル18が設けられている。本実施形態では、ラインヘッド31は、幅方向D2に沿って3つの記録ヘッド17が千鳥状に配列されている。また、他のラインヘッド32〜34それぞれも、ラインヘッド31と同じように、幅方向D2に沿って3つの記録ヘッド17が千鳥状に配列されている。なお、図3は、記録部3を図1の上側から見た状態を示している。
記録部3は,搬送ユニット5によって搬送される用紙Pに対して各記録ヘッド17の各ノズル18からインクが吐出されることにより用紙Pに画像を記録する。ラインヘッド31〜34のインクの吐出方式としては、例えばピエゾ素子を利用してインクを吐出させるピエゾ方式、又は加熱により気泡を発生させてインクを吐出させるサーマル方式などが採用される。
インクタンク部4は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色に対応するインクが収容されたインクタンク41、42、43、44を備えている。インクタンク41〜44は、不図示のインクチューブによって同色のラインヘッド31〜34それぞれに接続されている。ラインヘッド31〜34には、インクタンク41〜44それぞれからインクが補給される。インクタンク41〜44内ではインクの上部に空気が存在しており、インクタンク41〜44内のインクの液面は、ラインヘッド31〜34のインク吐出面17Aよりも低くなるように調整されている。
搬送ユニット5は、ラインヘッド31〜34の下方に配置されている。搬送ユニット5は、用紙Pをインク吐出面17Aに対向させつつ搬送する。具体的に、搬送ユニット5は、用紙Pが載置される用紙搬送ベルト51、用紙搬送ベルト51を張架する張架ローラ52〜54、及びこれらを支持する搬送フレーム55などを備えている。なお、用紙搬送ベルト51とインク吐出面17Aとの間隙は、画像記録時の用紙Pの表面とインク吐出面17Aとの間隙が例えば1mmとなるように調整される。
張架ローラ52は、不図示のモータの回転軸に連結されている。張架ローラ52が、前記モータの駆動により反時計回りに回転されると、用紙搬送ベルト51が用紙Pを搬送方向D1へ搬送可能な方向に回動する。これにより、給紙部2から供給された用紙Pは、用紙搬送ベルト51の回動によって記録部3を経て排紙部7へ向けて搬送される。なお、搬送ユニット5には、用紙Pを用紙搬送ベルト51に吸着させるべく、用紙搬送ベルト51に形成された多数の貫通孔から吸気を行う吸引ユニット(不図示)なども設けられている。また、張架ローラ53の対向位置には、用紙Pを用紙搬送ベルト51に押しつけて搬送させるための圧ローラ56が設けられている。
昇降機構6は、搬送ユニット5を下方から支持しており、搬送ユニット5をラインヘッド31〜34に対して上下に昇降させる。即ち、昇降機構6は、搬送ユニット5及びラインヘッド31〜34を相対的に移動させることにより、搬送ユニット5及びラインヘッド31〜34を離間及び接近させる。具体的には、昇降機構6は、記録部3による印刷が可能な記録位置(図1に示される位置)と、前記記録位置から下方へ所定距離を隔てたメンテナンス位置(図2に示される位置)との間で搬送ユニット5を移動させる。
昇降機構6は、搬送ユニット5の底面の四隅に対応する四組の偏心カム61、回転軸62、及びベアリング群63を備えている。偏心カム61は回転軸62により回転可能に軸支されており、回転軸62は不図示のモータの回転軸に連結されている。ベアリング群63は、その一部が偏心カム61の外周縁部よりも外側に突出した状態で偏心カム61に支持された複数のベアリングを含む。搬送ユニット5は、ベアリング群63に設けられた複数のベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングによって下方から支持される。
昇降機構6では、不図示のモータによって回転軸62が回転駆動されることにより偏心カム61が回転する。このとき、偏心カム61の回転に伴って、ベアリング群63に設けられたベアリングのうち鉛直方向の位置が最も高いベアリングが順に入れ替わる。これにより、搬送ユニット5を下方から支持するベアリングが入れ替わり、搬送ユニット5が鉛直方向に昇降することとなる。
例えば、図1において左側の偏心カム61が時計回りに、右側の前記偏心カム61が反時計回りに回転されることにより、搬送ユニット5は徐々に下降する。また、図1において左側の偏心カム61が反時計回りに、右側の偏心カム61が時計回りに回転されることにより、搬送ユニット5は徐々に上昇する。
図1には、搬送ユニット5がベアリング群63のうち回転軸62から最も離れたベアリングで支持された状態が示されている。この状態は、搬送ユニット5の鉛直方向の位置が最も高く、搬送ユニット5がラインヘッド31〜34に最も接近した前記記録位置にある状態である。搬送ユニット5がこの記録位置にあるとき、記録装置X1では印刷動作が可能である。
図2には、搬送ユニット5がベアリング群63のうち回転軸62に最も近いベアリングで支持された状態が示されている。この状態は、搬送ユニット5の鉛直方向の位置が最も低く、搬送ユニット5がラインヘッド31〜34から最も離間した前記メンテナンス位置にある状態である。搬送ユニット5がこのメンテナンス位置にあるとき、ユーザは、搬送ユニット5に残った用紙Pを取り除くことができる。また、搬送ユニット5が前記メンテナンス位置にあるときに、パージ装置8によるパージ動作や、キャップ装置9によってインク吐出面17Aのノズル18をカバーすることが可能である。
排紙部7は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側に設けられている。排紙部7は、乾燥装置71、搬送路72、排紙ローラ73、及び排紙トレイ74などを有している。乾燥装置71は、例えば用紙Pに送風することにより、用紙Pに付着したインクを乾燥させる。そして、乾燥装置71によって乾燥された用紙Pは、搬送路72に送り出されて、排紙ローラ73によって排紙トレイ74に排出される。
パージ装置8は、ラインヘッド31〜34各々の記録ヘッド17の機能を回復させる装置である。パージ装置8は、インクを受けるためのインクトレイ81を有している。インクトレイ81は、不図示の第1移動機構により水平方向(図1における左右方向)に移動可能に支持されている。前記第1移動機構は、例えば、モータの回転軸に連結されたギアの回転運動を直線運動に変換するラック−ピニオン機構を利用してインクトレイ81を水平方向に移動させる従来周知の駆動機構である。
パージ装置8は、それぞれの記録ヘッド17のノズル18から排出されるインクを受けるインクトレイ81と、それぞれのインク吐出面17Aを清掃する複数のワイパー部材(不図示)と、インクトレイ81及び前記ワイパー部材を支持するキャリッジ82とを有している。ワイパー部材は、複数の記録ヘッド17に対応した数、具体的に、12個設けられている。また、パージ装置8は、それぞれの記録ヘッド17のノズル18からインクを吐出させるための電動式のパージポンプ83(図6参照)を有する。パージポンプ83は、例えば、インクタンク41〜44からラインヘッド31〜34に至るインクチューブ(不図示)に設けられており、駆動されることによって前記インクチューブのインク圧を上げる。
パージポンプ83は、制御部10に電気的に接続されており、制御部10から出力される駆動信号を受けて駆動し、駆動信号が途絶えると停止する。
パージ装置8のキャリッジ82は、通常時(印刷時)は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側に退避した第1退避位置に配置されている。そして、パージ動作を行うための指示が入力されるか、或いは、パージ動作を行うための動作条件が満たされると、搬送ユニット5が昇降機構6により前記メンテナンス位置に移動された状態で、前記第1移動機構によってラインヘッド31〜34の対向箇所に生じたスペースにキャリッジ82が移動される(図2の破線で示される位置を参照)。パージ装置8のキャリッジ82がラインヘッド31〜34の対向箇所に移動すると、昇降機構6は、搬送ユニット5を前記メンテナンス位置から所定距離だけ上昇させる。これにより、パージ装置8のインクトレイ81がインク吐出面17Aの直下のパージ位置に配置される。インクトレイ81が前記パージ位置に配置されたときに、パージ動作が行われる。具体的には、制御部10によってパージポンプ83(図6参照)が駆動制御されることによって、それぞれの記録ヘッド17のノズル18からインクトレイ81へ向けてインクが排出される。なお、パージポンプ83は、インクタンク41〜44とラインヘッド31〜34とをつなぐインクチューブ内のインク圧を上げるものに限られない。例えば、インクトレイ81がインク吐出面17Aを気密に塞ぐものであれば、パージポンプ83は、インク吐出面17Aのノズル18からインクを吸引するものであってもよい。
上述したパージ動作が行われることにより、それぞれのインク吐出面17Aのノズル18内に残留する高粘度のインクが排出され、ノズル18の目詰まりが解消される。なお、インクトレイ81に排出されたインクは、インクトレイ81の底部に設けられた排出口からインクチューブ(不図示)を通じて所定の廃棄インク貯留部に排出される。
本実施形態では、前記パージ動作時に排出されるインクの量は、パージポンプ83(図6参照)の駆動時間によって決定される。また、本実施形態では、後述するように、制御部10は、キャップ装置9における所定の条件に応じて、パージ動作時に排出されるインクの量を決定している。なお、パージ動作時のインクの排出量を決定する処理については後述する。
前記パージ動作の後に、パージ装置8は、前記ワイパー部材(不図示)各々をモータなどの駆動機構によって駆動してインク吐出面17Aに弾性的に接触させる。具体的には、前記ワイパー部材各々は、インク吐出面17Aに弾性的に接触された状態で、一方向へ移動される。これにより、インク吐出面17Aが前記ワイパー部材によって拭い取られるようにして清掃される。前記ワイパー部材によって拭い取られたインクは、前記ワイパー部材を伝って下方へ落ちて、インクトレイ81に収容される。その後、パージ装置8は、前記パージ位置から前記第1退避位置に戻される。
キャップ装置9は、非印刷時に、それぞれのインク吐出面17Aのノズル18をカバーして、ノズル18内のインクの乾燥を防止するための装置である。キャップ装置9は、それぞれのインク吐出面17Aのノズル18をカバーするキャップ部材91を有している。キャップ部材91は、不図示の第2移動機構により水平方向(図1における左右方向)に移動可能に支持されている。前記第2移動機構は、前記第1移動機構と同じように、例えば、モータの回転軸に連結されたギアの回転運動を直線運動に変換するラック−ピニオン機構を利用してキャップ部材91を水平方向に移動させる従来周知の駆動機構である。なお、前記第2移動機構を設けずに、前記第1移動機構がインクトレイ81及びキャップ部材91を選択的に移動させる構成を適用することも可能である。
図1に示すように、キャップ装置9は、それぞれのインク吐出面17Aのノズル18をカバーする12個のキャップ部材91と、12個のキャップ部材91を支持するキャリッジ92と、液体を貯留するタンク93(容器の一例)と、を有する。キャリッジ92が前記第2移動機構によって移動されることにより、キャップ部材91が水平方向へ移動される。また、図4に示すように、キャップ装置9は、水位センサー94と、電動バルブ95(開閉部材の一例)と、を有する。
図1に示すように、12個のキャップ部材91は、それぞれのインク吐出面17Aに対応して設けられている。つまり、インク吐出面17Aそれぞれは、対応するキャップ部材91によって覆われる。
図4に示すように、キャップ部材91は、それぞれのインク吐出面17Aのノズル18を覆うことができるように、幅方向D2に長い形状に形成されている。このキャップ部材91は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、IIR(ブチルゴム)、シリコンゴムなどの弾性部材で形成されており、キャリッジ92に固定される底部911と、底部911の外周縁から上方へ立設する周壁部912とを有する。周壁部912は、後述するキャップ動作が行われた場合にインク吐出面17Aに圧接されて、キャップ部材91とインク吐出面17Aとによって形成される閉塞空間91A(図4参照)を気密にするシール部材の役割を担っている。
タンク93は、樹脂部材で形成された樹脂製容器であって、内部に液体が貯留されている。タンク93に貯留される液体は、例えば水である。なお、液体は、水に限られず、後述するようにキャップ部材91によってインク吐出面17Aが覆われたときに、閉塞空間91Aに水蒸気を供給できるものであればよく、水を主成分とする液体を適用することも可能である。タンク93は、記録装置X1の内部において、キャップ部材91と同じ高さ位置、又は、キャップ部材91よりも下側の位置に設けられている。本実施形態では、タンク93は、後述の供給孔976がキャップ部材91の底部911よりも下方へ所定距離離れた位置となるように設けられている。前記所定距離は、例えば、0mm〜150mmの範囲内で定められる。
図5に示すように、タンク93は、直方体形状のタンク本体97と、仕切り板98とを有する。タンク本体97の内部は、仕切り板98によって、第1貯留槽931(第1貯留室の一例)と、第2貯留槽932(第2貯留室の一例)とに仕切り分けられている。仕切り板98は、タンク本体97の底部971から鉛直上方へ延びている。仕切り板98の上端981はタンク本体97の上壁972に連結されておらず、上端981と上壁972との間には通気のための隙間が形成されている。
タンク本体97の一方の側壁973(図5の紙面右側の側壁)の上端部には、第2貯留槽932の上部の空気とタンク本体97の外部とを連通するための連通孔975が形成されている。この連通孔975の内径は後述する供給孔976に比べて十分に小さく、例えば1mmである。この連通孔975には、同じ内径の細いチューブ121が接続されている。チューブ121の長さは概ね2000mmであり、その先端が開放された状態で記録装置X1内に配置されている。
タンク本体97の他方の側壁974(図5の紙面左側の側壁)の下端部には、第1貯留槽931の内部に貫通する供給孔976が形成されている。供給孔976の内径は、上述の連通孔975に比べて十分に大きく、例えば5mmである。この供給孔976には、同じ内径のチューブ122(供給部、管部材の一例)が接続されている。チューブ122の他方端は、キャップ部材91の底部911に接続されている。具体的には、底部911には、キャリッジ92を貫通する貫通孔913が形成されており、その貫通孔913にチューブ122が接続されている。チューブ122は、キャリッジ92が移動した場合でも各接続部が外れないように十分な長さを有する。なお、図4では、一つのキャップ部材91にチューブ122が接続された図が示されているが、本実施形態では、チューブ122から分岐した複数のチューブ(不図示)が設けられており、これらの複数のチューブが全てのキャップ部材91に接続されている。
チューブ122は、タンク93から閉塞空間91Aにタンク93内の液体を蒸気にして供給するものである。チューブ122の内部には、不織布123が詰められている。不織布123は、例えば、綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレンなどの繊維材料である。チューブ122に不織布123が詰められているため、タンク93内の水は、毛細管現象によってチューブ122を通って上方へ移動し、貫通孔913を経て、キャップ部材91の内部に運ばれる。つまり、チューブ122は、タンク93からキャップ部材91の閉塞空間91A内に、毛細管現象によってタンク93の液体を運ぶ管部材である。
水位センサー94は、タンク本体97の上壁972に取り付けられている。具体的には、水位センサー94は、上壁972において第1貯留槽931の上方の位置に取り付けられている。水位センサー94は、第1貯留槽931に貯留されている水の水位を検出する所謂液面センサーである。水位センサー94としては、例えば、フロート方式、電極式、静電容量式、差敦器、透過光を利用した光学式、液面からの反射を利用したレーザー式、音波式、電波式など、種々の方式に基づき測定するセンサーが適用可能である。水位センサー94は、制御部10に電気的に接続されており、水位センサー94から出力される測定信号は、制御部10の算出処理部105に送られる。算出処理部105では、送られてきた測定信号に基づいて、第1貯留槽931における水位、及び水位の変化量を算出する。
電動バルブ95は、タンク本体97の仕切り板98の下端部に取り付けられている。仕切り板98の下端部には、第1貯留槽931と第2貯留槽932とを貫通する貫通口99(流路の一例)が形成されている。貫通口99は、第1貯留槽931と第2貯留槽932との間を液体が流通する流路である。貫通口99を開閉可能なように、電動バルブ95が仕切り板98に設けられている。電動バルブ95は、制御部10に電気的に接続されており、制御部10の開閉制御部107(図6参照)から出力される駆動信号を受けて駆動して貫通口99を開閉する。本実施形態では、キャップ部材91がインク吐出面17Aを覆っているときに電動バルブ95を動作させて貫通口99を閉塞し、キャップ部材91がインク吐出面17Aから離脱しているときに電動バルブ95を動作させて貫通口99を開放する。
貫通口99が電動バルブ95によって開けられると、第1貯留槽931の水位と第2貯留槽932の水位が同じになるように、貫通口99を通って液体が移動する。貫通口99が電動バルブ95によって閉じられると、貫通口99を通って液体が移動することができなくなり、これにより、第1貯留槽931の水位と第2貯留槽932の水位は独立して変位する。
本実施形態では、第1貯留槽931の容積は、第2貯留槽932の容積よりも十分に小さい。これは、チューブ122を通って水がキャップ部材91の内部に運ばれて、そこで蒸気となることによって第1貯留槽931の貯留量が減少した場合に、その減少量を水位センサー94によって正確に検出できるようにするためである。なお、第1貯留槽931の容積及び第2貯留槽932の容積は、タンク93の全容量や、第1貯留槽931における減少度合い、貯留される液体の種類、水位センサー94の精度などの要素によって定められる。
キャップ装置9のキャリッジ92は、通常時(印刷時)は、記録部3よりも搬送方向D1の下流側であって、パージ装置8のキャリッジ82の前記第1退避位置の下方に位置する第2退避位置に配置されている。そして、キャップ動作を行うための指示が入力されるか、或いは、キャップ動作を行うための動作条件が満たされると、搬送ユニット5が昇降機構6により前記メンテナンス位置に移動された状態で、前記第2移動機構によってラインヘッド31〜34の対向箇所に生じたスペースにキャリッジ92が移動される(図2の破線で示される位置)。なお、このときは、パージ装置8は、前記第1退避位置に配置される。キャップ装置9のキャリッジ92がラインヘッド31〜34の対向箇所に移動すると、昇降機構6は、搬送ユニット5を前記メンテナンス位置から上昇させる。このとき、昇降機構6は、キャップ部材91の周壁部912の上端がインク吐出面17Aに密着するキャップ位置までキャリッジ92を上昇させる。キャップ部材91が前記キャップ位置に配置されたときに、それぞれのインク吐出面17Aの全てのノズル18は、キャップ部材91によって気密状に覆われる。以下、インク吐出面17Aがキャップ部材91によって気密状に覆われる状態をキャップ状態と称する。
図6に示されるように、制御部10は、CPU101、ROM102、RAM103、フラッシュメモリ104、算出処理部105、パージ条件決定部106、開閉制御部107等を有している。ROM102は不揮発性の記憶装置、RAM103は揮発性の記憶装置、フラッシュメモリ104は不揮発性の記憶装置である。RAM103、フラッシュメモリ104は、演算装置であるCPU101が実行する各種の処理の一時記憶メモリーとして使用される。ROM102には、所定の制御プログラムが記憶されている。制御部10は、外部から入力される画像データに基づいて記録装置X1の各構成要素を統括的に制御することにより、前記画像データに対応する画像を用紙Pに記録させる。
制御部10は、ROM102に記憶された所定の制御プログラムをCPU101で実行することによって、記録装置X1を統括的に制御する。具体的に、ROM102には、印刷を実現するためのプログラムや、後述する排出量決定処理を実行するためのプログラムが記憶されている。制御部10は、CPU101を用いてROM102に記憶されている制御プログラムを実行することにより、算出処理部105、パージ条件決定部106、開閉制御部107として動作する。
算出処理部105は、タンク93の第1貯留槽931内の液体の減少量を算出する。具体的には、算出処理部105は、水位センサー94からの測定信号に基づいて、第1貯留槽931内の液体の水位を算出する。算出した水位情報は、算出したときの時刻とともにフラッシュメモリ104に記憶される。また、算出処理部105は、現時点で算出した現在の水位(第1水位)と、その水位よりも前に算出した過去の水位(第2水位)とを比較して、単位時間あたりの第1貯留槽931における液体の減少量(変化量)を算出する。具体的には、算出処理部105は、過去に算出した時点からの第1貯留槽931の水位の変化量を算出し、その変化量と第1貯留槽931の面積とを乗算することによって、液体の減少量を算出する。なお、第1貯留槽931内の液体の減少量は、閉塞空間91Aに供給された液体の量、つまり、閉塞空間91Aから漏出した蒸気の漏出量と概ね同じである。
パージ条件決定部106は、算出処理部105による算出結果に基づいて、前記パージ動作の動作条件を決定する。本実施形態では、パージ条件決定部106は、算出処理部105による算出結果に基づいて前記パージ動作の動作時間を決定する。具体的には、パージ条件決定部106は、算出処理部105で算出された前記減少量に比例して、前記パージ動作の動作時間を決定する。つまり、パージ条件決定部106は、算出処理部105によって算出された水位の減少量に応じてパージポンプ83の駆動時間を決定するのであって、前記減少量に比例して、パージポンプ83の駆動時間を決定する。例えば、パージ条件決定部106は、直近の単位時間あたりの前記減少量(減少速度)が大きければ前記駆動時間を長くし、直近の単位時間あたりの前記減少量(減少速度)が小さければ前記駆動時間を短くする。
開閉制御部107は、例えば、電動バルブ95を駆動させるためのドライバー回路である。開閉制御部107は、電動バルブ95を駆動制御することにより、キャップ部材91がインク吐出面17Aを覆っているときに貫通口99を閉塞させ、キャップ部材91がインク吐出面17Aから離脱しているときに貫通口99を開放させる。
ところで、インク吐出面17Aがキャップ部材91で覆われた前記キャップ状態にある場合に、チューブ122によって液体の蒸気が閉塞空間91Aに供給されたとしても、キャップ部材91によるシール性(気密性)が悪化すると、記録ヘッド17のノズル18内のインクは乾燥する。この場合、前記パージ動作が行われることによってノズル18の不良状態が解消される。しかしながら、ノズル18内のインクの乾燥状態に関わらず一律に同じ動作時間又は排出量で前記パージ動作が行われると、インクが無駄に消費されるという問題が生じ得る。これに対して、本実施形態では、上述したパージ条件決定部106が設けられているため、閉塞空間91Aに供給される液体の量に応じた前記パージ動作を実現することにより、パージ動作時におけるインクの無駄な消費を防止することが可能である。
以下、図7のフローチャートを参照して、制御部10によって実行されるパージ条件決定処理の手順の一例について説明する。図7におけるS11、S12、…は処理手順(ステップ)の番号を表している。なお、以下の説明においては、パージ条件決定処理は、インク吐出面17Aがキャップ部材91で覆われた前記キャップ状態のときに行われるものとする。
まず、制御部10は、インク吐出面17Aがキャップ部材91によって覆われたと判定すると(S11のYes)、次に、電動バルブ95を駆動制御して、貫通口99を閉塞する(S12)。
次に、水位センサー94からの測定信号に基づいて、第1貯留槽931内の液体の水位を検出する(S13)。検出された水位情報はフラッシュメモリ104に記憶される。
そして、制御部10は、以前に検出した水位情報がフラッシュメモリ104に格納されているかどうかを判定する(S14)。例えば、予め定められた単位時間(例えば1時間)前に検出された水位情報がフラッシュメモリ104に存在するかどうかを判定する。ここで、以前に検出した水位情報が存在しない場合は、前記単位時間と同じ設定時間が経過したかどうかを判定する(S15)。ステップS15において前記設定時間が経過したと判定されると、ステップS13に戻り、再び水位センサー94からの測定信号に基づいて、第1貯留槽931内の液体の水位を検出する(S13)。ここで検出された水位情報も、フラッシュメモリ104に記憶される。
続いて、再びステップS14において、以前に検出した水位情報がフラッシュメモリ104に格納されているかどうかを判定する。この場合は、前記設定時間前に検出された水位情報(過去の水位情報という。)と、今回検出された水位情報(現在の水位情報という。)とが存在するため、ステップS14では、以前に検出した水位情報がフラッシュメモリ104に格納されていると判定されて、次のステップS16に進む。
次のステップS16では、過去の水位情報と現在の水位情報とから水位差を算出し、更にその水位差から第1貯留槽931における液体の減少量を算出する。ここで算出される減少量は、単位時間(例えば1時間)あたりの液体の減少量である。算出された減少量が多い場合は、キャップ状態にもかかわらずキャップ部材91からの蒸気の漏出量が多いと判断でき、つまり、キャップ部材91によるシール性(密着性)が悪いと判断できる。この場合は、記録ヘッド17に設けられたノズル18内のインクも乾燥し易い状態といえる。一方、算出された減少量が少ない場合は、キャップ状態においてキャップ部材91からの蒸気の漏出量が少ないと判断でき、つまり、キャップ部材91によるシール性(密着性)が良好であると判断できる。この場合は、ノズル18内のインクのメニスカスが蒸気によって湿潤な状態に保持されているといえる。
次に、ステップS17では、制御部10は、算出された減少量に応じて前記パージ動作の動作時間(パージ動作時間)を決定する。前記パージ動作時間の決定方法としては、例えば、減少量とパージ動作時間との相関関係を示す関数に基づいて演算により求める方法や、或いは、減少量とパージ動作時間とが対応づけられたルックアップテーブルから求める方法などが適用可能である。本実施形態では、前記減少量が多い場合は、ノズル18内のインクが乾燥し易い状態であるため、パージ動作時間も減少量に比例して長い時間に決定される。一方、前記減少量が少ない場合は、ノズル18内のインクがあまり乾燥していない状態であるため、パージ動作時間も減少量に比例して短い時間に設定される。その後、決定されたパージ動作時間がフラッシュメモリ104に記憶されて、前記パージ動作が行われるときのパージポンプ83の駆動時間として用いられる。
このように、本実施形態によれば、キャップ部材91とインク吐出面17Aとによって形成される閉塞空間91Aに供給される液体の量(第1貯留槽931の減少量)に比例したパージ動作時間が決定されるため、パージ動作が行われるときは、ノズル18内のインクの乾燥状態に応じた時間だけパージポンプ83が駆動される。これにより、パージ動作時において、ノズル18が乾燥していないのに無駄に長いパージ動作が行われることが防止され、その結果、インクの無駄な消費を防止することができる。一方、ノズル18内のインクが乾燥している場合は、適切な時間のパージ動作が行われるため、ノズル18のつまりを確実に除去することができる。
なお、上述の実施形態では、第1貯留槽931内の液体の減少量に比例してパージ動作時間を決定する例について説明したが、本発明はこのような例に限られない。例えば、上述のパージ条件決定部106は、算出処理部105による算出結果に基づいて前記パージ動作の動作タイミングを決定するものであってもよい。具体的には、パージ条件決定部106は、算出処理部105で算出された減少量に反比例して、前記パージ動作の動作タイミングを決定する。つまり、パージ条件決定部106は、算出処理部105によって算出された液体の減少量に応じてパージポンプ83による駆動タイミングを決定するのであって、前記減少量に反比例して、パージポンプ83の駆動タイミングを決定してもよい。例えば、図8のフローチャートに示されるように、制御部10は、図7のステップS17に代えてステップS171の処理を行い、図7のステップS18に代えてステップS181の処理を行う。
具体的には、制御部10は、ステップS171において、ステップS16で算出された減少量に応じて前記パージ動作の動作タイミングを決定する。この場合のパージ動作は、予め定められた一定の動作時間だけパージポンプ83を駆動させる動作とする。一方、前記動作タイミングは、前回パージ動作が行われてから次のパージ動作が行われるまでの時間間隔である。例えば、前記減少量が多い場合は、ノズル18内のインクが乾燥し易い状態であるため、一定時間のパージ動作の動作タイミングは前回の動作タイミングよりも早いタイミングに決定される。つまり、次のパージ動作の実行までの時間間隔が短くされる。一方、前記減少量が少ない場合は、ノズル18内のインクがあまり乾燥していない状態であるため、一定時間のパージ動作の動作タイミングは前回の動作タイミングよりも遅いタイミングに決定される。つまり、次の動作タイミングまでの時間間隔が長くされる。
このように、キャップ部材91とインク吐出面17Aとによって形成される閉塞空間91Aに供給される液体の量(第1貯留槽931の減少量)に反比例した動作タイミングが決定される場合でも、ノズル18内のインクの乾燥状態に応じたタイミングでパージポンプ83が駆動される。これにより、パージ動作時において、ノズル18内のインクが乾燥していないのに無駄に多い回数のパージ動作が行われることが防止され、その結果、インクの無駄な消費を防止することができる。一方、ノズル18内のインクが乾燥している場合は、早いタイミングでパージ動作が行われるため、ノズル18のつまりを確実に除去することができる。