JP2018068166A - 脂肪酸類の製造方法 - Google Patents

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【課題】酵素分解法により油脂から脂肪酸類を製造するにあたり、加水分解反応の効率を向上させ、且つ、反応液中のモノグリセリドを低減できる方法の提供。【解決手段】次の工程(A)及び(B):(A)油脂を酵素分解法で遊離脂肪酸濃度が50〜84質量%となるまで加水分解した後、水相と油相を分離して、油相を得る工程、(B)工程(A)で得た油相に新たな水を加えて、再び油脂を酵素分解法で加水分解する工程を含む、脂肪酸類の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、酵素分解法による脂肪酸類の製造方法に関する。
脂肪酸類は、食品の中間原料やその他各種の工業製品の添加剤、中間原料として広く利用されている。かかる脂肪酸類は、一般に、菜種油、大豆油等の植物油や牛脂等の動物油を加水分解することにより製造される。
油脂を加水分解する方法としては、高温高圧分解法と酵素分解法がある。前者は、高温及び高圧条件下で反応を行うもので、生産性が高いという利点を有するが、原料油脂として不飽和脂肪酸の多いものを使用すると条件によってはトランス不飽和脂肪酸を多く生成する場合がある。一方、後者はリパーゼ等の酵素を触媒とし、反応は比較的低温で行われるためトランス不飽和脂肪酸を生成することはないが、高温高圧分解法に比べて生産性が低い点が問題とされる。
酵素分解法による脂肪酸類の生産性を高めるためには、例えば、反応系内へ添加する水の量を増やす、水を入れ替える等の操作により、油脂の加水分解反応の方へ平衡反応を進行させることが有効である(例えば、特許文献1)。
特開2009−268414号公報
しかしながら、従来の酵素分解法には、工業的観点から依然として改善の余地がある。
また、加水分解後は、反応液の油水分離を容易にして脂肪酸類を簡便に取得できることが求められるが、短時間で油水分離せずに脂肪酸類の回収が難しい場合があった。一般に、油脂を酵素加水分解した後の反応液には脂肪酸、グリセリンの他に未反応の油脂や部分的に加水分解された油脂等が含まれるところ、本発明者の研究によればこのうちのモノグリセリドが反応液の油水分離を困難にする原因になっていた。
従って、本発明の課題は、酵素分解法により油脂から脂肪酸類を製造するにあたり、加水分解反応の効率を向上させ、且つ、反応液中のモノグリセリドを低減できる方法を提供することにある。
本発明者は、油脂の酵素分解法について鋭意研究を行ったところ、先ず所定の遊離脂肪酸濃度に到達するまで油脂を加水分解し、かかる特定の時点で反応系の水を入れ替えた後、再び油脂を加水分解することで、短時間に効率良く加水分解反応が進行すること、且つ、反応液におけるモノグリセリド濃度が低下することを見出した。
すなわち、本発明は、次の工程(A)及び(B):
(A)油脂を酵素分解法で遊離脂肪酸濃度が50〜84質量%となるまで加水分解した後、水相と油相を分離して、油相を得る工程、
(B)工程(A)で得た油相に新たな水を加えて、再び油脂を酵素分解法で加水分解する工程
を含む、脂肪酸類の製造方法。
本発明によれば、油脂の加水分解反応の効率を向上させ、且つ、反応液中のモノグリセリドを低減できるため、脂肪酸類を生産性良く得ることができる。
本発明の脂肪酸類の製造方法は、(A)油脂を酵素分解法で遊離脂肪酸濃度が50〜84質量%となるまで加水分解した後、水相と油相を分離して、油相を得る工程と、(B)工程(A)で得た油相に新たな水を加えて、再び油脂を酵素分解法で加水分解する工程、とを有する。
〔工程(A)〕
本工程は、油脂を酵素分解法で遊離脂肪酸濃度が50〜84質量%となるまで加水分解した後、水相と油相を分離して、油相を得る工程である。
本明細書において「酵素分解法」とは、油脂に水を加えて、油脂加水分解酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸類とグリセリンを得る方法である。脂肪酸類は、脂肪酸の他、油脂を含んでいてもよい。
本明細書において「油脂」は「油」と同義であり、油脂(油)を構成する物質にはトリグリセリド(TAG)のみならずモノグリセリド(MAG)やジグリセリド(DAG)も含まれる。すなわち、油脂(油)は、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドのいずれか1種以上を含むものである。
本発明において、加水分解の対象となる油脂は、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油又は分別油等の油脂類を挙げることができる。これらの油脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
加水分解の対象となる油脂を構成する脂肪酸は特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、油脂を構成する脂肪酸のうち60〜100質量%が不飽和脂肪酸であることが好ましく、より好ましくは70〜99質量%、更に75〜97質量%、更に80〜95質量%が不飽和脂肪酸であるのが外観、油脂の工業的生産性の点で好ましい。不飽和脂肪酸の炭素数は14〜24、更に16〜22であるのが生理効果の点から好ましい。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
また、加水分解の対象となる油脂を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は、低温での結晶析出抑制の点で、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下、更に15質量%以下、更に10質量%以下であるのがより好ましい。また、油脂の工業的生産性の点で、0.5質量%以上であることが好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、更に16〜22のものが好ましい。
油脂は、それぞれの原料となる植物、又は動物から搾油後、油分以外の固形分をろ過や遠心分離等により除去するのが好ましい。次いで、水、場合によっては更に酸を添加混合した後、遠心分離等によってガム分を分離することにより脱ガムすることが好ましい。また、油脂は、アルカリを添加混合した後、水洗し脱水することにより脱酸を行うことが好ましい。更に、油脂は、活性白土等の吸着剤と接触させた後、吸着剤をろ過等により分離することにより脱色を行うことが好ましい。更に、脱臭は、不快な臭いや呈味物質を除去し、風味・色相・保存安定性の良好な精製油を得る工程であり、高温・減圧条件下で水蒸気を吹き込みながら有臭成分を除去する水蒸気脱臭を行うことが好ましい。これらの処理は、以上の順序で行うことが好ましいが、順序を変更しても良い。また、この他に、油脂は、ろう分の除去のために、低温で固形分を分離するウインタリングを行っても良い。
油脂加水分解酵素としては、リパーゼが好ましい。リパーゼは、特に制限されず、動物由来、植物由来、又は微生物由来のリパーゼを用いることができる。例えば、リゾプス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、リゾムコール(Rhizomucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のリパーゼが挙げられる。
なかでも、加水分解効率の点から、位置・鎖長選択性のない、所謂非選択性リパーゼを用いるのが好ましく、更にキャンディダ・シリンドラセア(Candida cylindracea)によって生産される非選択性リパーゼを用いるのが好ましい。
油脂加水分解酵素は、当該酵素を担体に固定化した固定化油脂加水分解酵素を用いることが酵素活性を有効利用できる点から好ましい。
固定化担体としては、セライト、ケイソウ土、カオリナイト、シリカゲル、モレキュラーシーブス、多孔質ガラス、活性炭、炭酸カルシウム、セラミックス等の無機担体、セラミックスパウダー、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、キトサン、イオン交換樹脂、疎水吸着樹脂、キレート樹脂、合成吸着樹脂等の有機高分子等が挙げられる。なかでも、保水力が高い点からイオン交換樹脂が好ましい。また、イオン交換樹脂の中でも、大きな表面積を有することにより酵素の吸着量を高くできるという点から、多孔質であることが好ましい。
固定化担体として用いる樹脂の粒子径は50〜2000μmが好ましく、更に100〜1000μmが好ましい。細孔径は10〜150nmが好ましく、更に10〜100nmが好ましい。材質としては、フェノールホルムアルデヒド系、ポリスチレン系、アクリルアミド系、ジビニルベンゼン系等が挙げられ、更にフェノールホルムアルデヒド系樹脂(例えば、Rohm and Haas社製Duolite A−568)が酵素吸着性向上の点から好ましい。
このとき、用いる油脂加水分解酵素量は、担体質量に対して0.1〜300質量%、更に0.5〜200質量%、更に1〜150質量%が工業的生産性の点から好ましい。固定化の際、酵素を溶液状態にするが、緩衝剤を用いてpH3〜7に調整して用いることが好ましい。固定化時の温度は0〜60℃、更に3〜40℃が好ましい。
固定化油脂加水分解酵素の活性を高めるために、油脂加水分解酵素の固定化前に予め脂溶性脂肪酸又はその誘導体を担体に吸着させる処理を施しても良い。処理を施す方法としては、例えば、クロロホルム、ヘキサン、エタノール等の有機溶剤に脂溶性脂肪酸又はその誘導体を一旦分散、溶解させた後、水に分散させた担体に加える方法が挙げられる。
使用する脂溶性脂肪酸としては、炭素数8〜18の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐鎖の、水酸基が置換していても良い脂肪酸が挙げられる。具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、リシノール酸等が挙げられる。またその誘導体としては、これらの脂肪酸と一価又は多価アルコールとのエステル、リン脂質、及びこれらのエステルにエチレンオキサイドを付加した誘導体が挙げられる。具体的には、上記脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、モノグリセリド、ジグリセリド、それらのエチレンオキサイド付加体、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、ショ糖エステル等が挙げられる。これらの脂溶性脂肪酸又はその誘導体は2種以上を併用しても良い。
油脂加水分解酵素の加水分解活性は、後述する方法により測定した力価が20U/g(乾燥質量)以上、更に100〜10000U/g(乾燥質量)、更に500〜5000U/g(乾燥質量)の範囲であることが好ましい。
酵素分解法に用いる油脂加水分解酵素の使用量(乾燥質量)は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、油脂に対して、0.1〜20質量%、更に0.2〜15質量%使用するのが工業的生産性の点から好ましい。固定化油脂加水分解酵素の場合は、油脂に対して、1〜20質量%、更に2〜15質量%使用するのが工業的生産性の点から好ましい。
油脂に油脂加水分解酵素を作用させるには、当該油脂と油脂加水分解酵素とを接触させればよく、接触手段としては、浸漬、攪拌、該固定化酵素を充填したカラムにポンプ等で通液すること等が挙げられる。攪拌する場合には、反応槽径によって異なるが、固定化油脂加水分解酵素が沈降せず、破砕を抑制し、効率的に加水分解反応を進行させる点から、10〜1000r/minが好ましく、更には20〜700r/min、更には30〜500r/minが好ましい。
本発明において、油脂の加水分解は、回分式、連続式、又は半連続式で行うことができる。油脂と水の装置内への供給は、並流式、向流式どちらでもよい。加水分解反応装置に供給される油脂及び水は、必要により予め脱気又は脱酸素した油脂及び水を用いてもよい。
加水分解反応において、反応系内の水分量は、工業的な生産性の観点から、油脂に対して、5〜500質量%、更に10〜300質量%、更に20〜200質量%とすることが好ましい。
反応系内の水の量をコントロールする方法としては、(i)あらかじめ、各成分の水分量をカールフィッシャー法等により測定しておき、合計の水分量をコントロールする方法、(ii)反応成分を完全に脱水して、後で所定量の水を加える方法等がある。
なお、本発明において、反応系内の水は、油脂及び油脂加水分解酵素に含まれるものも前記水分量に含めるものとする。
本発明において、反応系内に加える水は、蒸留水、イオン交換水、脱気水、水道水、井戸水等いずれのものでもよい。グリセリン等その他の水溶性成分が混合されていても良い。必要に応じて、酵素の安定性が維持できるようにpH3〜9の緩衝液を用いてもよい。
加水分解の反応温度は、酵素の特性によって決定することができるが、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から、0〜80℃、更に10〜70℃、更に20〜60℃が好ましい。
本工程における油脂の加水分解反応は、遊離脂肪酸濃度50〜84質量%の範囲で行う。加水分解反応を遊離脂肪酸濃度によって管理し、かかる所定の遊離脂肪酸濃度に到達した時点で一旦反応をとめて反応系の水を入れ替えることで、短時間に効率良く油脂の加水分解反応が進行し、且つ、反応液におけるモノグリセリド濃度が低下する。
遊離脂肪酸濃度は、油相の酸価及び脂肪酸組成から以下の式(1)で示される。
遊離脂肪酸濃度(質量%)=x×y/56.11/10 (1)
(x=油相の酸価[mgKOH/g]、y=脂肪酸組成から求めた平均分子量)
なお、油相の酸価は、日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」により測定できる。
本工程における油脂の加水分解反応は、反応液中のモノグリセリドを低減できる点、反応時間を短縮できる点から、遊離脂肪酸濃度が55質量%以上、更に60質量%以上、また、83質量%以下、更に82質量%以下、更に81質量%以下、更に80質量%以下で行うことが好ましい。
加水分解の反応時間は油脂加水分解酵素の使用量や酵素活性を考慮して適宜決定することができるが、工業的な生産性の点から、好ましくは1〜24時間であり、より好ましくは2〜12時間、更に好ましくは2.5〜6時間、更に好ましくは3〜4.5時間である。
加水分解反応は、空気との接触が出来るだけ回避されるように、窒素等の不活性ガス存在下で行うことが好ましい。
加水分解後、水相と油相を分離して、油相を得る。一方、水相は反応系外に除く。水相と油相の分離は、例えば、静置分離、遠心分離等の方法により行うことができる。
静置分離、遠心分離の条件は、分離の状態により適宜設定できる。水相を分離除去した後の油相は、必要に応じて、減圧脱水してもよい。
尚、加水分解に使用した油脂加水分解酵素は、分離、回収後、再び油脂の加水分解に再利用することができる。
〔工程(B)〕
本工程は、工程(A)で得た油相に新たな水を加えて、再び油脂を酵素分解法で加水分解する工程である。
新たに加える水の量は、反応系内の水分量が、油脂に対して、10〜120質量%、更に20〜100質量%となるように加えることが好ましい。
本工程における油脂の酵素分解は、前記と同様の方法で行うことができる。
油脂加水分解酵素は、新たな酵素を使用してもよく、また、工程(A)で使用したものを再利用してもよいが、工業的な生産性の観点から、工程(A)で使用したものを再利用することが好ましい。
本工程における油脂加水分解酵素の加水分解活性は、前記と同様、後述する方法により測定した力価が20U/g(乾燥質量)以上、更に100〜10000U/g(乾燥質量)、更に500〜5000U/g(乾燥質量)の範囲であることが好ましい。また、油脂加水分解酵素の使用量(乾燥質量)は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、油脂に対して、0.1〜20質量%、更に0.2〜15質量%使用するのが工業的生産性の点から好ましい。固定化油脂加水分解酵素の場合は、油脂に対して、1〜20質量%、更に2〜15質量%使用するのが工業的生産性の点から好ましい。
反応系の水を入れ替えることで、本工程における油脂の酵素分解は短時間で進行する。 本工程における油脂の加水分解反応は、遊離脂肪酸濃度・収率を高くできる点から、遊離脂肪酸濃度が85質量%以上、更に86〜98質量%、更に91〜97質量%となるまで行うことが好ましい。このような遊離脂肪酸濃度に至る加水分解の反応時間は油脂加水分解酵素の使用量や酵素活性を考慮して適宜決定することができるが、好ましくは3〜6時間であり、更に好ましくは4〜5時間である。
加水分解後、反応液から油相として脂肪酸類を得るには、前記と同様、水相と油相を分離して、油相から水相、さらに油脂加水分解酵素を除去すればよい。
反応液には、脂肪酸、グリセリンの他に未反応の油脂や部分的に加水分解された油脂等が含まれるが、本発明においては、モノグリセリドが少ない。そのため、油水分離を容易とすることができる。
反応液におけるモノグリセリド濃度は、反応液の油水分離を容易にして脂肪酸類を簡便に回収する点から、好ましくは8.5質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは2〜8質量%である。ここで、本明細書において、反応液におけるモノグリセリドの濃度は、反応液の油相のグリセリド組成を求め、次式(2)で算出される。
モノグリセリド濃度[質量%]
=モノグリセリド濃度[質量%]/(モノグリセリド濃度[質量%]+ジグリセリド濃度[質量%]+トリグリセリド濃度[質量%])×100 (2)
〔分析方法〕
(i)グリセリド組成の測定
「グリセリド組成」は、ガラス製サンプル瓶に、サンプル10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLとを加え、密栓した後、70℃で15分間加熱した。これに蒸留水1.0mL、ヘキサン2.0mLを加えて、混合後、ヘキサン層をガスクロマトグラフィー(GLC)にて測定した。
装置;Hewlett Packard製 6890型
カラム;DB−1HT(J&W Scientific製) 7m
カラム温度;initial=80℃、final=340℃
昇温速度=10℃/分、340℃にて20分間保持
検出器;FID、温度=350℃
注入部;スプリット比=50:1、温度=320℃
サンプル注入量;1μL
キャリアガス;ヘリウム、流量=1.0mL/分
(ii)遊離脂肪酸濃度の算出
遊離脂肪酸濃度は、反応液を遠心分離(3000r/min、1分)後、油相の酸価及び脂肪酸組成を測定し、次式(1)で求めた。
遊離脂肪酸濃度(質量%)=x×y/56.11/10 (1)
(x=油相の酸価[mgKOH/g]、y=脂肪酸組成から求めた平均分子量)
(iii)酸価の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「酸価(2.3.1−1996)」に従って測定した。
(iv)脂肪酸組成の測定
日本油化学会編「基準油脂分析試験法2003年版」中の「メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)(2.4.1.2−1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られたサンプルを、ガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、構成脂肪酸の分析を行った。
(v)乾燥質量比の測定
固定化酵素を1g程度、20mLのサンプル瓶に計り取り、アセトン及びヘキサンで2回ずつ交互に洗浄した。さらにアセトンで洗浄し、窒素ブローによって溶剤を揮発させた後、60℃の恒温槽にて12時間以上乾燥を行った。乾燥後の重量を測定し、以下の式(2)から乾燥質量比を求めた。
乾燥質量比[-]=(洗浄後樹脂重量[g])/(洗浄前固定化酵素重量[g]) (2)
(vi)発現活性の測定
100mLの三つ口フラスコに固定化酵素5g及び菜種油50gを加え、三日月羽根(幅50mm×高さ20mm)で430r/minで撹拌しながら、ウォーターバスにて40℃に加温した。これに蒸留水30gを加え反応を開始した。継時でサンプリングを行い、遠心分離(3000r/min、1分)により油水分離した後、油相の酸価の測定を行った。酸価が175mgKOH/gに到達する時間を求め、以下の式(3)から発現活性を求めた。
発現活性[U/g(乾燥質量)]
=(酸価175到達時間[hr]/523.12)^(−1/1.0919)
×菜種油[g]/(固定化酵素[g]×乾燥質量比[-]) (3)
〔固定化酵素の調製〕
アニオン交換樹脂Duolite A−568(Rohm and Haas社製、粒径分布150〜850μmの粒子が96質量%)を粉砕して分級し、粒度150〜425μmの粒子が97質量%である樹脂1質量部をN/10のNaOH溶液10質量部中で1時間攪拌した。ろ過した後10質量部のイオン交換水で洗浄し、500mMのリン酸緩衝液(pH7)10質量部でpHの平衡化を行った。ろ過後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)10質量部で2時間ずつ2回pHの平衡化を行った。この後ろ過を行い、担体を回収した後エタノール4質量部でエタノール置換を30分行った。ろ過した後、大豆脂肪酸を1質量部含むエタノール4.22質量部を加え30分間、大豆脂肪酸を担体に吸着させた。ろ過によって担体を回収した後、50mMのリン酸緩衝液(pH7)5質量部で30分ずつ4回洗浄し、ろ過して担体を回収した。
次いで、市販のCandida cylindracea属由来のリパーゼAY「アマノ」30SD−K(天野エンザイム製)0.388質量部を50mMのリン酸緩衝液(pH7)18質量部に溶解した酵素液と2時間接触させ、固定化を行った。ろ過し、固定化酵素を回収して50mMのリン酸緩衝液(pH7)5質量部で洗浄を行うことにより、固定化していない酵素やタンパクを除去した。以上の操作はいずれも20℃で行った。その後菜種油を4質量部加え40℃で2時間攪拌した。その後ろ過して油脂と分離し、固定化酵素とした。
固定化酵素の加水分解活性(発現すべき活性)は2680U/g(乾燥質量)であった。
〔実施例1〕
固定化酵素を乾燥重量で25g計量し、1000mL容の四つ口フラスコに仕込んだ。そこへアマニ油を500gと蒸留水を300g添加し、窒素気流下で攪拌しながら40℃ で加水分解反応を行った。反応系内の水分量は油脂に対して62質量%であった。反応中は、反応液を経時的にサンプリングしながら遊離脂肪酸濃度を算出した。
遊離脂肪酸濃度が61質量%となった時に、水の入れ替えを行った。詳細には、ろ過により固定化酵素を分離し、遠心分離(6000r/min、10分)により、油相と水相を分離した。次いで、水相を除いた油相に、先に分離、回収した固定化酵素と、新たな蒸留水300gを加え、窒素気流下で撹拌しながら40℃で遊離脂肪酸濃度が90質量%になるまで再び加水分解反応を行った。このとき、反応系内の水分量は油脂に対して66質量%であった。
反応液は、遠心分離により油水分離し、油相として脂肪酸類を得た。モノグリセリド濃度は、遊離脂肪酸濃度が90質量%に到達した時点で油相のグリセリド組成を求めて算出した。
〔実施例2〕
遊離肪酸濃度が80質量%の時点で水の入れ替えを行った以外は、実施例1に記載した方法に準じ脂肪酸類を得た。
〔比較例1〕
実施例1に記載した方法に準じ、水の入れ替えを行うことなく、遊離脂肪酸濃度が90質量%になるまで加水分解反応を行い、脂肪酸類を得た。
〔比較例2〕
遊離脂肪酸濃度が32質量%の時点で水の入れ替えを行った以外は、実施例1に記載した方法に準じ脂肪酸類を得た。
〔比較例3〕
遊離脂肪酸濃度が88質量%の時点で水の入れ替えを行った以外は、実施例1に記載した方法に準じ脂肪酸類を得た。
表1に、水入れ替え時の遊離脂肪酸濃度、遊離脂肪酸濃度が90質量%に到達するまでの反応時間、及びモノグリセリド濃度を示す。
Figure 2018068166
表1より明らかなように、特定の時点で反応系の水を入れ替えることで、短時間で効率良く加水分解反応が進行し、且つ、反応液中のモノグリセリドが大幅に低減した。
これに対して、水の入れ替えを行わなかった比較例1、水の入れ替えを行っても遊離脂肪酸濃度が低い時点で実施した比較例2は、反応時間が長くなり、モノグリセリドの濃度も高かった。また、遊離脂肪酸濃度が高い時点で水の入れ替えを実施した比較例3は、かえって反応時間が長くなる傾向が見られた。

Claims (3)

  1. 次の工程(A)及び(B):
    (A)油脂を酵素分解法で遊離脂肪酸濃度が50〜84質量%となるまで加水分解した後、水相と油相を分離して、油相を得る工程、
    (B)工程(A)で得た油相に新たな水を加えて、再び油脂を酵素分解法で加水分解する工程
    を含む、脂肪酸類の製造方法。
  2. 工程(B)において、酵素分解法による加水分解反応を遊離脂肪酸濃度が85質量%以上となるまで行う請求項1記載の脂肪酸類の製造方法。
  3. 酵素分解法による加水分解反応によりモノグリセリドの濃度が8.5質量%以下の反応液を得る請求項1又は2記載の脂肪酸類の製造方法。
JP2016209866A 2016-10-26 2016-10-26 脂肪酸類の製造方法 Active JP6990019B2 (ja)

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