JP2018065960A - 保護フィルムおよび保護フィルム付き微細凹凸構造体 - Google Patents

保護フィルムおよび保護フィルム付き微細凹凸構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に隣り合う凸部の間隔が可視光の波長以下である微細凹凸構造を有する微細凹凸構造体が被着体であっても、意図せずに保護フィルムが被着体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ被着体表面を汚染しにくい保護フィルム、および前記保護フィルムを備えた保護フィルム付き微細凹凸構造体の提供。【解決手段】基材フィルム11の片面に粘着剤層12が形成された保護フィルム10であって、前記粘着剤層12の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつ前記粘着剤層12のゲル分率が98.8%以上である保護フィルム10、該保護フィルム10が可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造体20の表面に貼着した保護フィルム付き微細凹凸構造体1。【選択図】図2

Description

本発明は、保護フィルムおよび保護フィルム付き微細凹凸構造体に関する。
表示部材や画像認識部材の表面には、この表面の傷や汚れなどを防止するために、保護フィルムが貼り合わせられることがある。このような保護フィルムとしては、基材フィルム上に粘着剤層が形成されたものが知られている。
また、液晶ディスプレイなどの部材として用いられる光学部材は、保護フィルムを貼付した状態で各種製造工程に投入され、異物の有無や透過率、色相などの検査が行われる。
よって、保護フィルムには、各種工程を経ても光学部材等の被着体から意図せずに剥離しないことが求められている。また、剥離後に被着体の表面に粘着剤等が残ってしまうと光学部材の性能が損なわれる場合があるため、保護フィルムには、被着体の表面を汚染しにくい低汚染性が求められている。
例えば、特許文献1には、a)炭素数8〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする(メタ)アクリル酸アルキルエステル100重量部に、b)カルボキシル基含有共重合性化合物1〜15重量部と、c)炭素数1〜5の脂肪族カルボン酸のビニルエステル3〜100重量部とを加えてなる単量体混合物の共重合体に、上記のb)成分のカルボキシル基に対して当量以上の架橋剤を配合した、保護フィルム用の粘着剤が開示されている。この粘着剤を用いた保護フィルムは、加工時や保存時などに浮きなどの剥離現象を生じることがなく、長期保存、特に高温雰囲気下で長期保存しても小さな力で剥離でき、その際に被着体上に糊残りを生じるおそれがないとされている。
特開平11−256111号公報
近年では、光学部材の両面に保護フィルムが貼付される場合が多い。そのため、被着体から保護フィルムを剥がす際に、意図しない側の面の保護フィルムが剥離されないように、被着体表面からの剥離力を高度に制御することが求められている。特に、液晶ディスプレイ等の表面を製造工程の最終段階に至るまで保護する保護フィルムには、他の面や部材を保護する保護フィルムと比較して、強い力で剥離できることが求められる。しかし、工程中に意図せずに剥離してしまうことを抑制しつつ、且つ剥離する際には容易に剥離でき、被着体の表面を汚染しないように保護フィルムを構成することは困難であった。
また、表面に隣り合う凸部の間隔が可視光の波長以下(すなわち400nm以下)である微細凹凸構造を有する微細凹凸構造体は、連続的な屈折率の変化によって反射防止性能を発現することが知られており、この微細凹凸構造体を種々の光学部材に適用する検討が行われている。
しかし、微細凹凸構造体は、通常の凹凸構造に比べて凸部同士の間隔が非常に狭いため、微細凹凸構造体と保護フィルムとの接触面積が小さい。そのため、保護フィルムが微細凹凸構造体に十分に密着せず、保管時や運搬時に保護フィルムが剥がれてしまう、という課題があった。
特に、液晶ディスプレイ等の最表面に微細凹凸構造体を設ける場合、微細凹凸構造体を保護する保護フィルムは、例えば微細凹凸構造体の裏面(すなわち微細凹凸構造を有さない面)に設けられる保護フィルム等と比較して、剥離力が強いことが好ましい。しかし、微細凹凸構造体と十分に密着するように粘着力を強くすると、保護フィルムを剥離した際に微細凹凸構造体の表面が汚染されてしまう、という課題があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、意図せずに保護フィルムが被着体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ被着体表面を汚染しにくい保護フィルムを提供することを目的とする。
また、本発明は、意図せずに保護フィルムが微細凹凸構造体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ微細凹凸構造体表面が汚染されにくい保護フィルム付き微細凹凸構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、保護フィルムが被着体表面を汚染する物質を特定して、それら汚染物質の生成を抑制し、かつ被着体への糊残りの発生が抑えられ、また被着体から意図せずに剥離することを抑制できる保護フィルムを提供することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された保護フィルムであって、前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつ前記粘着剤層のゲル分率が98.8%以上である、保護フィルム。
[2] 前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が210,000Pa未満である、[1]に記載の保護フィルム。
[3] 前記粘着剤層は、質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が1.2〜4.0であり、かつガラス転移温度が−70〜−20℃であるアクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して7.5〜26質量部のイソシアネート系架橋剤とを含有する粘着剤の架橋物であり、前記架橋物の総質量に対して、炭素数が7〜9である化合物の含有量が40×10−2質量%以下であり、炭素数が18である化合物の含有量が64×10−2質量%以下である、[1]または[2]に記載の保護フィルム。
[4] 可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造体に、該微細凹凸構造体の表面を保護する保護フィルムが貼着した保護フィルム付き微細凹凸構造体であって、前記保護フィルムは、前記微細凹凸構造体の表面と接する粘着剤層を有し、前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつ前記粘着剤層のゲル分率が98.8%以上である、保護フィルム付き微細凹凸構造体。
[5] 前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が210,000Pa未満である、[4]に記載の保護フィルム付き微細凹凸構造体。
[6] 前記粘着剤層は、質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が1.2〜4.0であり、かつガラス転移温度が−70〜−20℃であるアクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して7.5〜26質量部のイソシアネート系架橋剤とを含有する粘着剤の架橋物であり、前記架橋物の総質量に対して、炭素数が7〜9である化合物の含有量が40×10−2質量%以下であり、炭素数が18である化合物の含有量が64×10−2質量%以下である、[4]または[5]に記載の保護フィルム付き微細凹凸構造体。
本発明によれば、意図せずに保護フィルムが被着体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ被着体表面を汚染しにくい保護フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、意図せずに保護フィルムが微細凹凸構造体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ微細凹凸構造体表面が汚染されにくい保護フィルム付き微細凹凸構造体を提供できる。
本発明の保護フィルムの一例を示す断面図である。 本発明の保護フィルム付き微細凹凸構造体の一例を示す断面図である。 微細凹凸構造体の一例を示す断面図である。 微細凹凸構造体の他の例を示す断面図である。 陽極酸化アルミナを表面に有するスタンパの製造工程を示す断面図である。 微細凹凸構造体の製造装置の一例を示す構成図である。
「保護フィルム」
図1を参照しながら、本発明の保護フィルムの一実施形態について説明する。
本実施形態の保護フィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の片面に形成された粘着剤層12とを備える。
なお、図1において、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
〔基材フィルム〕
基材フィルム11は、用途に応じて、任意の適切な厚さとすることができる。基材フィルム11の厚さは、5〜300μmが好ましく、10〜250μmがより好ましく、15〜200μmがさらに好ましい。
基材フィルム11は、単層でもよいし、2層以上の積層体であってもよい。
基材フィルム11は、延伸されたものであってもよい。
基材フィルム11の材料としては、用途に応じて適切な材料を用いることができる。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などを用いることができ、プラスチックを用いることが好ましい。また、基材フィルム11は、1種の材料から構成されていてもよいし、2種以上の材料から構成されていてもよい。
プラスチックとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンモノマーの単独重合体、オレフィンモノマーの共重合体などが挙げられ、具体的には、ホモポリプロピレン;エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系共重合体;リアクターTPO;低密度、高密度、リニア低密度、超低密度等のエチレン系重合体;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合体などが挙げられる。
基材フィルム11には、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。
基材フィルム11に含有される添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、充填剤、顔料などが挙げられる。基材フィルム11の材料がプラスチックの場合は、劣化防止や耐候性向上等の観点から、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤を好適に用いることができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤、フェノール・リン系酸化防止剤などが挙げられる。
酸化防止剤の含有割合は、基材フィルム11を構成する樹脂材料100質量部に対して、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.01〜0.2質量部がさらに好ましい。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤の含有割合は、基材フィルム11を構成する樹脂材料100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.01〜0.5質量部がさらに好ましい。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤などが挙げられる。
光安定剤の含有割合は、基材フィルム11を構成する樹脂材料100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.01〜0.5質量部がさらに好ましい。
充填剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
充填剤の含有割合は、基材フィルム11を構成する樹脂材料100質量部に対して、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、0.01〜10質量部がさらに好ましい。
さらに、帯電防止性付与を目的として、界面活性剤、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボン等の無機系帯電防止剤、低分子量系および高分子量系帯電防止剤などを基材フィルム11に含有させてもよい。
〔粘着剤層〕
粘着剤層12の厚さは、任意の適切な厚さとすればよいが、1〜50μmが好ましく、2〜40μmがより好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。
粘着剤層12は粘着剤により構成される。粘着剤層12は、1種の粘着剤から構成されていてもよいし、2種以上の粘着剤から構成されていてもよい。
粘着剤層12の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率(G’)は、20,000Pa以上である。粘着剤層12の貯蔵弾性率が20,000Pa以上であれば、保護フィルムを被着体から剥離するときの剥離力を好適に調整でき、しかも被着体表面の汚染を低減することができる。
粘着剤層12の貯蔵弾性率は、20,000Pa以上210,000Pa未満が好ましく、50,000〜200,000下がより好ましい。粘着剤層12の貯蔵弾性率が上記範囲であれば、保護フィルムを被着体から剥離するときの剥離力をより好適に調整することができ、しかも被着体表面の汚染をより低減することができる。また、意図せずに保護フィルムが被着体から剥離しにくい。
粘着剤層12の貯蔵弾性率は、後述する粘着剤の組成により調整できる。
粘着剤層12の貯蔵弾性率は、以下のようにして測定できる。
基材等の上に粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、基材から粘着剤層を剥離して約2cm角に切り出して試験片を作製する。得られた試験片を直径25mmのプレートにエポキシ樹脂で固定し、そこに直径25mm以下のプレートを密着させ動的粘弾性測定を行い、粘着剤層の貯蔵弾性率を測定する。
貯蔵弾性率の測定は、温度30℃、角周波数10rad/sの測定条件で行う。これは実用上の温度と保護フィルムを剥離する際の粘着剤にかかるひずみ速度を考慮している。なお、保護フィルムに用いる粘着剤は一般的に架橋されたゲル状物質であることが多く、この場合、貯蔵弾性率の角周波数依性は小さくなる傾向がある。
粘着剤層12のゲル分率は98.8%以上である。粘着剤層12のゲル分率が98.8%以上であれば、保護フィルムを被着体から剥離するときの剥離力を好適に調整でき、しかも被着体表面の汚染を低減することができる。
粘着剤層12のゲル分率は、99.0%以上が好ましく、99.3%以上がより好ましい。粘着剤層12のゲル分率が上記範囲内であれば、保護フィルムを被着体から剥離するときの剥離力をより好適に調整でき、しかも被着体の汚染をより低減することができる。
粘着剤層12のゲル分率は、後述する粘着剤の組成により調整できる。
粘着剤層12のゲル分率は、以下のようにして測定できる。
まず、粘着剤層から乾燥質量X1の試料を採取し、これをテトラヒドロフラン(THF)に浸漬する。その後、試料の不溶分をTHF中から取り出し、乾燥後の重量X2を測定する。下記式(1)よりゲル分率を求める。本発明においては、粘着剤層から5点の試料を採取し、5点の試料のゲル分率の平均値を求め、これを「粘着剤層のゲル分率」とする。
ゲル分率(質量%)=(X2/X1)×100 ・・・(1)
温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000以上であり、かつゲル分率が98.8%以上である粘着剤層12を得るには、例えば、質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が1.2〜4.0であり、かつガラス転移温度が−70〜−20℃であるアクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して7.5〜26質量部のイソシアネート系架橋剤とを含有する粘着剤を基材フィルム11上に塗布し、塗布した粘着剤を架橋すればよい。こうして得られる粘着剤層12は、この粘着剤の架橋物からなる。
架橋後の粘着剤(粘着剤の架橋物)は、架橋物の総質量に対して、炭素数が7〜9である化合物の含有量が40×10−2質量%以下であり、炭素数が18である化合物の含有量が64×10−2質量%以下であることが好ましい。
<粘着剤>
粘着剤層12を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー(以下、「成分(A)」ともいう。)と、イソシアネート系架橋剤(以下、「成分(B)」ともいう。)とを含有する粘着剤を用いることが好ましい。
(成分(A)))
成分(A)は、アクリル系ポリマーである。
成分(A)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体が挙げられ、具体的には、アルキル基の炭素数が14以下のアクリル酸アルキルエステルの共重合体、またはアルキル基の炭素数が14以下のメタクリル酸アルキルエステルの共重合体が挙げられる。アルキル基の炭素数は、2〜14が好ましく、3〜12がより好ましい。
成分(A)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルなどが挙げられる。これらの中でも、成分(A)のガラス転移温度(Tg)を好ましい範囲に調整しやすい点で、アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称である。
また、成分(A)を構成するモノマーとして、上述したモノマーに加えて、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマーを併用してもよい。
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が4でヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には4−ヒドロキシブチルアクリレートまたは4−ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、フマル酸等のカルボキシル基を有するモノマーが挙げられる。
成分(A)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、成分(A)を構成する全てのモノマー単位の総質量に対して、85〜99.9質量%が好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率を20,000以上に容易に調整することができる。その結果、被着体からの保護フィルムの剥離力を好適に維持しつつ、保護フィルムが不用意に剥がれてしまうことを抑制できる。
成分(A)中のヒドロキシ基含有モノマー単位の含有量は、成分(A)を構成する全てのモノマー単位の総質量に対して、0.1〜10質量%が好ましい。ヒドロキシ基含有モノマー単位の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤層のゲル分率を高く維持することができ、被着体からの保護フィルムの剥離力を好適に低く維持することができる。また、粘着剤のポットライフが短くなることを抑制できる。
成分(A)中のカルボキシ基含有モノマー単位の含有量は、成分(A)を構成する全てのモノマー単位の総質量に対して、10質量%以下が好ましい。カルボキシ基含有モノマーを用いることで、被着体に貼着した保護フィルムを高速で剥離する際の剥離力を低くすることができる場合がある。一方、カルボキシ基等のヒドロキシ基以外の官能基を含有するポリマーは、保護フィルムの初期剥離性を悪化させる場合があるため、必要に応じて適宜用いればよい。カルボキシ基含有モノマー単位の含有量は、5質量%以下とすることが好ましい。
成分(A)の製造方法は、従来技術として知られている溶液重合、塊状重合、乳化重合、ラジカル重合などの製造方法から選定される。
共重合体の種類はブロック、ランダム、グラフトなど限定はない。
成分(A)の質量平均分子量(Mw)は、60万〜140万が好ましく、80万〜120万がより好ましい。成分(A)の質量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着剤層12の微粘着性、耐久性、耐汚染性が向上する。特に、成分(A)の質量平均分子量が60万以上であれば、粘着剤層の耐熱性が向上する。加えて、剥離の際に被着体に糊残りが生じにくくなる。一方、成分(A)の質量平均分子量が140万以下であれば、微粘着性能に適したタック性が得られやすくなる。
成分(A)の質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度(Mw/Mn)は、1.2〜4.0が好ましく、1.5〜3.5がより好ましい。成分(A)の分散度が4.0を超えると、分子量分布がブロードになり、保護フィルムを被着体から剥離した際に、被着体の表面を汚染する物資の一因となりうる低分子化合物(低分子成分ともいう。)が増加する。もしくは、低分子化合物が後述する成分(B)と反応してしまい、十分な3次元網目構造が形成されず、架橋効率を損なうことがある。分散度の下限値は、一般的に1.1が製造上、限界と言われている。例え分散度が1.1未満の共重合体を製造できたとしても製品の生産コストが高くなるため、実践的ではない。よって、成分(A)の分散度は1.2以上が好ましい。(A)の分散度が上記範囲内であれば、被着体に対する汚染物質(低分子化合物)の発生を効率よく抑制できる。
なお、成分(A)の質量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定したポリスチレン換算分子量である。
成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、−70〜−20℃が好ましく、−60〜−30℃がより好ましい。成分(A)のガラス転移温度が−70℃以上であれば、粘着剤層の耐熱性が向上する。一方、成分(A)のガラス転移温度が−20℃以下であれば、凝集力が増加しにくく、タック性を良好に維持できる。
なお、成分(A)のガラス転移温度は、JIS K 7121:1987に準じ、示差走査熱量測定(DSC)で求めた中間点ガラス転移温度である。
(成分(B)))
成分(B)は、イソシアネート系架橋剤である。
成分(B)としては、イソシアネート基を1分子中に2個以上有する2官能以上のイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。2官能以上のイソシアネート系架橋剤の構造は特に限定はされないが、具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、またはこれらジイソシアネート化合物をトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加反応させた化合物、イソシアネート化合物やイソシアヌレート化合物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述した中でも、成分(B)としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体が挙げられ、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)など脂肪族系イソシアネートがより好ましい。
一般的に粘着剤による被着体への汚染物質は粘着剤層内に存在する低分子量の化合物(低分子化合物)が原因と考えられている。低分子化合物の由来となるもの(発生起因)は大きく分けて3つある。第1に、成分(A)(例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体)に含まれる低分子量の化合物である。第2に、成分(B)の未反応物や自己重合による2量体、3量体の低分子量の生成物である。第3に、成分(A)に含まれる低分子量の化合物と、成分(B)の未反応物や自己重合による低分子量の生成物とが架橋反応した低分子量の反応物である。
これら低分子化合物の中でも、特に炭素数が7〜9である化合物や炭素数が18である化合物は、被着体への汚染物質の原因となる。
これら低分子化合物は、テトラヒドロフラン(THF)等の溶剤に抽出されやすい。
成分(B)は芳香族系イソシアネートがその立体構造から反応性が高く、高性能な架橋剤とされている。しかし、芳香族系イソシアネートは、その分子径は非常に小さいため、低分子量の領域にある生成物は汚染物質として粘着剤層の表面に物質移行しやすく、THF等の溶剤に溶剤可溶成分として抽出されやすい。一方、脂肪族系イソシアネートはその分子径が非常に大きいため、自己重合など2量体、3量体の低分子化合物となっても粘着剤内を物質移行しにくい、もしくは成分(A)との間で物理架橋によるシナジー効果も伴うため物質移行しにくくなり、汚染物質の発生を抑制することができる。
よって、成分(A)の分散度と、成分(B)のスクリーニングおよび配合量との最適化は、粘着剤中の耐汚染性能に影響を及ぼす架橋反応系において化学架橋と物理架橋の当量の最大値を知る重要な手法であり、保護フィルムの最適な製造方法となる。
粘着剤中の成分(B)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、7.5〜26質量部が好ましく、7.5〜23質量部がより好ましい。成分(B)の含有量が上記範囲内であれば、架橋効率が向上して粘着剤層のゲル分率を好適に高く維持でき、保護フィルムの被着体からの剥離力を低く維持することができる。成分(B)の含有量が7.5質量部未満であると、粘着剤の凝集力が低下して保護フィルム性能に必要な再剥離性などが低下する恐れがある。一方、成分(B)の含有量が26質量部を超えると、上述したように、化学架橋と物理架橋の当量点が最大値となって飽和状態となりやすく、低分子化合物が増加する傾向にある。
なお、成分(B)の含有量が増えると粘着剤のポットライフが悪くなる傾向にあるが、その場合は有機溶剤で希釈するか、もしくは粘着剤塗料の容器内で塗料表面のみ窒素パージしてエアーを遮断することによりポットライフを調節することができる。
(他の成分)
粘着剤は、前記成分(A)および成分(B)以外の成分(以下、「成分(C)」ともいう。)を含有していてもよい。
成分(C)としては、例えば、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。リン酸エステル系界面活性剤は粘着剤の粘着力を下げる役割を果たす。
リン酸エステル系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸エステルなどが挙げられる。
また、成分(C)として、リン酸エステル系界面活性剤以外の添加剤を粘着剤に添加してもよい。
粘着剤中の成分(C)の含有量は、成分(A)100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。
(低分子化合物)
上述したように、低分子化合物の中でも、特に炭素数が7〜9である化合物と炭素数が18である化合物が被着体の汚染の原因となる。
粘着剤が架橋した架橋物(すなわち、粘着剤層)中の炭素数が7〜9である化合物の含有量(X)は、架橋物の総質量に対して、40×10−2質量%以下が好ましく、33×10−2質量%以下がより好ましく、23×10−2質量%以下がさらに好ましい。また、架橋物中の炭素数が18である化合物の含有量(Y)は、架橋物の総質量に対して、64×10−2質量%以下が好ましく、50×10−2質量%以下がより好ましく、48×10−2質量%以下がさらに好ましい。また、低分子化合物の総量(X+Y)は、架橋物の総質量に対して、80×10−2質量%以下が好ましく、70×10−2質量%以下がより好ましい。炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物の含有量が上記範囲内であれば、被着体の汚染をより抑制できる。
炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物は、THFなどの溶剤に抽出されやすい。よって、粘着剤が架橋した架橋物をTHFなどの溶剤に浸漬させ、炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物を抽出させ、その抽出液(THF溶液等)のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS測定)を行うことにより、架橋物中の炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物の含有量を求めることができる。
また、これら化合物の量比は、GCMS測定における全ピーク面積に対する炭素数7〜9である化合物の面積、GCMS測定における全ピーク面積に対する炭素数18である化合物の面積により求めることができる。
〔保護フィルムの製造方法〕
粘着剤層を構成する粘着剤を基材フィルムの片面に塗布することにより、基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された保護フィルムを得ることができる。
粘着剤は、例えば上述した成分(A)と、成分(B)と、必要により成分(C)とを、常法に従って混合することにより得られる。なお、基材フィルムの片面に粘着剤を塗布するにあたり、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン等の溶媒中に粘着剤を溶解させ、塗工しやすい粘度に調整してもよい。溶媒中に粘着剤を溶解させた粘着剤組成物を基材フィルムの片面に塗布した場合は、これを乾燥させて溶媒を除去し、架橋反応を起こさせることにより、基材フィルム上に粘着剤層を形成することができる。
〔作用効果〕
以上説明した本実施形態の保護フィルムは、粘着剤層の貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつゲル分率が98.8%以上であるため、意図せずに保護フィルムが被着体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で容易に剥離することができ、かつ被着体表面を汚染しにくい。
〔他の実施形態〕
本発明の保護フィルムは、図1に示すものに限定されない。例えば、保護フィルムは、必要に応じて任意の他の層をさらに有していてもよく、具体的には、基材フィルムと粘着剤層との間に、帯電防止層が形成されていてもよい。
また、保護フィルムをロール状に巻き取った際のブロッキングを防止することを目的として、基材フィルムの粘着剤層が形成された面とは反対側の面に、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの任意の適切な剥離剤からなるコート層が形成されていてもよい。
〔用途〕
本発明の保護フィルムは、液晶ディスプレイなどの製造に用いられる各種光学部材や、表面に微細な凹凸構造を有する微細凹凸構造体の表面を保護する表面保護フィルムとして好適に用いることができ、表面に微細な凹凸構造を有する微細凹凸構造体の表面を保護する表面保護フィルムとして特に好適である。その中でも特に、微細凹凸構造を構成する複数の凸部のうち、隣接する凸部の平均間隔が可視光の波長以下(すなわち400nm以下)である微細凹凸構造体の表面保護フィルムとして好適に使用することができる。なお、隣接する凸部の平均間隔(「周期」ともいう。)が可視光の波長以下(すなわち400nm以下)である複数の凸部を有する微細凹凸構造を、以下の明細書において「Moth−eye構造」と記載する場合がある。また、Moth−eye構造を表面に有する構造体を「Moth−eye構造体」、または「微細凹凸構造体」と記載する場合がある。
以下、図2〜6を参照しながら、本発明の保護フィルムが表面に貼着した保護フィルム付き微細凹凸構造体の一実施形態について説明する。
「保護フィルム付き微細凹凸構造体」
図2は、本発明の保護フィルム10が微細凹凸構造体20の表面に貼着した保護フィルム付き微細凹凸構造体1の一例を示す縦断面図である。
なお、図2において、図1と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。また、図3、4において、図2と同じ構成要素には同一の符号を付して、その説明を省略する場合がある。また、図2〜6において、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせてある。
〔保護フィルム〕
保護フィルム10は、上述した本発明の保護フィルムであるため、その説明を省略する。
〔微細凹凸構造体〕
この例の微細凹凸構造体20は、基材21と、基材21の表面に形成された、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層22とを有する。
<基材>
基材21としては、微細凹凸構造を有する硬化樹脂層22を支持可能なものであれば特に制限されないが、微細凹凸構造体20をディスプレイ部材に適用する場合は、透明な、すなわち光を透過するものが好ましい。
透明な基材を構成する材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体等の合成高分子、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等の半合成高分子、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、それら高分子の複合物(ポリメチルメタクリレートとポリ乳酸の複合物、ポリメチルメタクリレートとポリ塩化ビニルの複合物等)、ガラスなどが挙げられる。
基材21の形状はシート状、フィルム状等いずれであってもよい。
また、基材21の製造方法についても特に制限されず、例えば、射出成形、押し出し成形、キャスト成形などが挙げられる。
基材21の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性の改良を目的として、コーティングやコロナ処理が施されていてもよい。
<硬化樹脂層>
硬化樹脂層22は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
微細凹凸構造としては、例えば図3に示すように、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部23)または凹部24が規則的に配列した構造が好ましい。凸部23の形状は、垂直面における断面積が、頂点側から基材側に、連続的に増大する形状であることが、屈折率を連続的に増大させることができる。その結果、波長による反射率の変動(波長依存性)が抑制され、可視光の散乱を抑制して低反射率にすることができ、有効な反射防止手段となる。
凸部23(凹部24)の平均間隔wは、可視光の波長(具体的には、400〜780nm)以下の距離とする。凸部23の平均間隔wが400nm以下であれば、可視光の散乱を抑制でき、微細凹凸構造体20を反射防止膜として光学用途に好適に使用できる。wは200nm以下がより好ましく、150nm以下が特に好ましい。また、wは、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔wは、電子顕微鏡画像において、隣接する凸部間の間隔(凸部23の中心から隣接する凸部23の中心までの距離)を50点測定し、これらの測定値を算術平均して求めた値である。
凸部23の高さ(凹部24の深さ)、すなわち、凹部24の底部24aと凸部23の頂部23aとの垂直距離d(以下、特に断らない限り「凸部の高さ」又は「d」という。)は、波長により反射率が変動するのを抑制できる深さとすることが好ましい。具体的には、60nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましく、150nm以上がさらに好ましく、180nm以上が特に好ましい。dが150nm近傍では、人が一番認識しやすい550nmの波長域光の反射率を最も低くすることができ、dが150nm以上になると、dが高くなるほど、可視光域における最高反射率と最低反射率の差が小さくなる。このため、dが150nm以上であれば、反射光の波長依存性が小さくなり、目視での色味の相違は認識されなくなる。
は、凸部23の耐擦傷性が良好となる点から、400nm以下が好ましい。
また、凸部間の平均間隔wが100nmである場合、dは80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmがさらに好ましい。dが80nm以上であれば、反射率の充分な低減を図り、かつ、波長による反射率の変動、すなわち、反射率の波長依存性が少ない。一方、dが500nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
は、電子顕微鏡の30000倍画像において、凸部23の最頂部と、凸部間に存在する凹部24の最底部との間の垂直面上における距離を50点測定し、これらの測定値を算術平均して求めた値である。
また、凸部23のアスペクト比(d/凸部間の平均間隔w)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0がさらに好ましい。凸部23のアスペクト比が、0.8以上であれば反射率が十分に低くなり、5.0以下であれば凸部23の耐擦傷性が良好となる。
凸部23の形状は、高さ方向に垂直方向の断面積が基材表面から頂部に向かって連続的に減少する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、例えば図2、3に示すような三角形や、図4に示すような凸部23の頂部23bが曲面である釣鐘状が好ましい。また、上述した以外にも、例えば、垂直面における断面積が、頂点側から基材側に、連続的に増大する形状、例えば円錐台状(断面形状が台形)を採用することもできる。
硬化樹脂層22と基材21はその屈折率の差が0.2以内であることが好ましく、0.1以内がより好ましく、0.05以内がさらに好ましい。屈折率差が0.2以内であれば、硬化樹脂層22と基材21との界面における反射を抑制することができる。
微細凹凸構造は図1〜3に示す実施形態に限定されるものではない。また、微細凹凸構造は微細凹凸構造体20の表面に形成されていればよく、例えば、基材21の片面のみに形成されていてもよいし、基材21の両面に形成されていてもよい。また、微細凹凸構造は基材21の片面または両面の全面または一部(透明性、超撥水性の必要な個所)に形成されてもよい。
また、例えば図4に示すように、基材21と硬化樹脂層22との間に、種々の基材21と硬化樹脂層22との密着性を改善させる等の目的で、中間層25を設けてもよい。
<微細凹凸構造体の製造方法>
微細凹凸構造体の製造方法としては、例えば、(1)微細凹凸構造の反転構造が形成されたスタンパと基材との間に樹脂組成物を配し、活性エネルギー線の照射により樹脂組成物を硬化して、スタンパの凹凸形状を転写し、その後スタンパを剥離する方法、(2)樹脂組成物にスタンパの凹凸形状を転写してからスタンパを剥離し、その後、活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化する方法などが挙げられる。これらの中でも、微細凹凸構造の転写性、表面組成の自由度の点から、(1)の方法が特に好ましい。この方法は、連続生産が可能なベルト状ロール状のスタンパを用いる場合に特に好適であり、生産性に優れた方法である。
スタンパと基材との間に樹脂組成物を配置する方法としては、スタンパと基材との間に樹脂組成物を配置した状態でスタンパと基材とを押圧することで、成型キャビティーへ樹脂組成物を注入する方法などが挙げられる。
基材とスタンパとの間の樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して重合硬化する方法としては、紫外線照射による重合硬化が好ましい。
紫外線を照射するランプとしては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、フュージョンランプを用いることができる。
紫外線の照射量は、重合開始剤の吸収波長や含有量に応じて決定すればよい。通常、その積算光量は、400〜4000mJ/cmが好ましく、400〜2000mJ/cmがより好ましい。積算光量が400mJ/cm以上であれば、樹脂組成物を十分硬化させて硬化不足に因る耐擦傷性低下を抑制することができる。また。積算光量が4000mJ/cm以下であれば、硬化物の着色や基材の劣化を防止する点で意義が有る。照射強度も特に制限されないが、基材の劣化等を招かない程度の出力に抑えることが好ましい。
重合・硬化後、スタンパを剥離して、微細凹凸構造を有する硬化物からなる硬化樹脂層を基材上に形成して、微細凹凸構造体を得る。
また、基材が立体形状の成形体等の場合は、形成した微細凹凸構造体を、別途成形した立体形状の成形体に貼り付けることもできる。
このようにして得られる微細凹凸構造体は、その表面にスタンパの微細凹凸構造が鍵と鍵穴の関係で転写され、高い耐擦傷性を備え、かつ、表面に付着する汚染物と表面間への水の導入を促進させる親水性を有し汚染物の除去効果を兼ね備えると共に、連続的な屈折率の変化によって優れた反射防止性能を発現でき、フィルムや、立体形状の成形品の反射防止膜として好適である。
(樹脂組成物)
樹脂組成物としては、インプリント用原料を用いることができる。また、樹脂組成物には、得られる微細凹凸構造体の用途に応じて、各種添加剤が含有されていてもよい。
インプリント用原料としては、スタンパへ樹脂組成物を流し込み、紫外線硬化させるUVインプリント、スタンパへ流し込んだ後に熱によって硬化させる熱インプリントなどで用いるインプリント用原料を使用できる。また、加熱などによって半硬化させた状態でスタンパを押し当て、形状転写した後にスタンパから剥がし、熱やUVによって完全に硬化させる方法で用いるインプリント用原料を使用することもできる。
また、種々の基材上に硬化被膜を形成する原料として使用される樹脂や、コーティング材として塗膜を形成し、活性エネルギー線を照射して硬化物を形成する樹脂なども、樹脂組成物として使用することもできる。
(スタンパ)
スタンパは、微細凹凸構造体の表面に形成する微細凹凸構造の反転構造を表面に有するものである。
スタンパの材料としては、金属(表面に酸化皮膜が形成されたものを含む。)、石英、ガラス、樹脂、セラミックス等が挙げられる。スタンパの形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状などが挙げられる。
スタンパに微細凹凸構造の反転構造を形成する方法は特に限定されず、その具体例としては、電子ビームリソグラフィー法、レーザー光干渉法などが挙げられる。例えば、適当な支持基板上に適当なフォトレジスト膜を塗布し、紫外線レーザー、電子線、X線等の光で露光し、現像することによって微細凹凸構造を形成した型を得て、この型をそのままスタンパとして使用することもできる。また、フォトレジスト層を介して支持基板をドライエッチングにより選択的にエッチングして、レジスト層を除去することで支持基板そのものに直接微細凹凸構造を形成することも可能である。
また、陽極酸化ポーラスアルミナを、スタンパとして利用することも可能である。例えば、アルミニウムをシュウ酸、硫酸、リン酸等を電解液として所定の電圧にて陽極酸化することにより形成される20〜200nmの細孔構造をスタンパとして利用してもよい。この方法によれば、高純度アルミニウムを定電圧で長時間陽極酸化した後、一旦酸化皮膜を除去し、再び陽極酸化することで非常に高規則性の細孔が自己組織化的に形成できる。さらに、二回目に陽極酸化する工程で、陽極酸化処理と孔径拡大処理を組み合わせることで、断面が矩形でなく三角形や釣鐘型である微細凹凸構造も形成可能となる。また、陽極酸化処理と孔径拡大処理の時間や条件を適宜調節することで、細孔最奥部の角度を鋭くすることも可能である。
さらに、微細凹凸構造を有する原型から電鋳法等で複製型を作製し、これをスタンパとして使用してもよい。
スタンパそのものの形状は特に限定されず、例えば、平板状、ベルト状、ロール状のいずれでもよい。特に、ベルト状やロール状にすれば、連続的に微細凹凸構造を転写でき、生産性をより高めることができる。
(スタンパの製造方法)
スタンパは、陽極酸化ポーラスアルミナで作製されたものが微細凹凸形成に有用である。そこで、アルミニウム基板の表面に所定形状の複数の微細細孔を陽極酸化にて形成し、本発明に有用なスタンパを製造する方法の一実施形態を、図5の工程図を参照しながら説明する。
本実施形態のスタンパの製造方法は、以下に示す工程(a)〜工程(f)を有する。
工程(a):
工程(a)は、アルミニウム基材を、定電圧下、電解液中で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程である。
アルミニウム基材30は、純度99質量%以上のアルミニウムを用いることが好ましく、より好ましくは純度99.5質量%以上であり、さらに好ましくは純度99.8質量%以上である。アルミニウムの純度が高いと、陽極酸化したとき、不純物の偏析による可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されにくく、また、陽極酸化で形成される細孔が規則的に形成される。
アルミニウム基材30の形状は、ロール状、円管状、平板状、シート状等の所望の形状でよいが、微細凹凸構造体を連続的なフィルムやシートとして得る場合はロール状とすることが好ましい。
アルミニウム基材30は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、予め脱脂処理をし、電解研磨処理(エッチング処理)により、表面を平滑にしておくことが好ましい。
このような表面処理されたアルミニウム基材30を陽極酸化すると、細孔31を有する酸化皮膜32が形成される。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等を用いる。
電解液としてシュウ酸を用いる場合、シュウ酸の濃度が0.7M以下であると、電流値を低く抑え、緻密な組織の酸化皮膜を形成できる。また、化成電圧が30〜60Vであると、周期100nm程度の規則性で細孔が形成された陽極酸化ポーラスアルミナ層が形成される。化成電圧がこの範囲より高くても低くても形成される細孔の規則性が低下する傾向がある。
電解液(シュウ酸)の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃以下であれば、いわゆる「ヤケ」の発生を抑制し、細孔が壊れたり、表面が溶けて不規則な細孔が形成されたりするのが抑制される。
また、電解液として硫酸を用いる場合、硫酸の濃度は0.7M以下であると、電流値を低く抑え緻密な組織の酸化皮膜を形成できる。化成電圧が25〜30Vであると、周期が63nm程度の規則性で細孔が形成された陽極酸化ポーラスアルミナ層が形成される。化成電圧がこの範囲より高くても低くても形成される細孔の規則性が低下する傾向がある。
電解液(硫酸)の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃以下であれば、いわゆる「ヤケ」の発生を抑制し、細孔が壊れたり、表面が溶けて不規則な細孔が形成されたりするのが抑制される。
工程(b):
工程(b)は、酸化皮膜を除去して、工程(a)において酸化皮膜に形成された細孔部分のアルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程である。
工程(a)で形成された酸化皮膜32を除去すると、細孔31部分のアルミニウム基材30に凹部33が形成される。この凹部33を陽極酸化の細孔発生点にすることにより規則的に配列した細孔を発生させることができる。
酸化皮膜32の除去には、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液を用いる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等がある。
工程(c):
工程(c)は、アルミニウム基材を再度陽極酸化し、細孔発生点に酸化皮膜を形成することにより、細孔を形成する工程である。
工程(b)において酸化皮膜を除去したアルミニウム基材30を再度陽極酸化して、円柱状の細孔35を有する酸化皮膜34を形成する。陽極酸化は、工程(a)と同様の条件で行うことができる。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
工程(d):
工程(d)は、細孔の径を拡大させる工程である。
細孔35の径を拡大させる処理(以下、「細孔径拡大処理」という)は、酸化皮膜34を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で形成された細孔の径を拡大させる。このような溶液として、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等を用いることができる。細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔35の径を拡大することができるので、目的とする形状に応じて、処理時間を設定する。
工程(e):
工程(e)は、細孔径拡大処理後のアルミニウム基材を再び陽極酸化する工程である。
アルミニウム基材30を再び陽極酸化すると、酸化皮膜34が厚くなるのに伴い、細孔35の深さが伸張される。なお、陽極酸化は工程(a)(工程(c))と同様の条件で行うことができる。陽極酸化の時間を長くするほど細孔が深くなる。
工程(f):
工程(f)は、工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、細孔35の径拡大と伸張を反復する工程である。
工程(f)により、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔35を有する酸化皮膜34が形成され、陽極酸化アルミナの凸部がアルミニウム基材30の表面に形成されたスタンパ40を得ることができる。
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が3回以上であれば、連続的に直径が変化する細孔を形成することができ、このようなスタンパにより、反射率を低減させ得るモスアイ構造の表面を有する硬化物を形成することができる。
工程(f)は、工程(d)で終わることが好ましい。
このようにして得られたスタンパの微細凹凸構造が形成された面を離型剤で処理してもよい。
離型剤としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フッ素化合物などが挙げられ、加水分解性シリル基を有するフッ素化合物が特に好ましい。加水分解性シリル基を有するフッ素化合物の市販品としては、フルオロアルキルシラン、KBM−7803(信越化学工業株式会社製)、MRAF(旭硝子株式会社製)、オプツールHD1100、HD2100シリーズ(株式会社ハーベス製)、オプツールAES4、AES6(ダイキン工業株式会社製)、ノベックEGC−1720(住友3M株式会社製)、FS‐2050シリーズ(株式会社フロロテクノロジー製)(いずれも商品名)などが挙げられる。
細孔35の形状としては、物品の表面に形成する微細凹凸形状の反転構造であって、具体的には、略円錐形状、角錐形状、円柱形状、釣鐘状などが挙げられる。これらの中でも、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
細孔間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下であることが好ましく、また、20nm以上が好ましい。
細孔間の平均間隔は、電子顕微鏡画像において、隣接する細孔間の間隔(細孔35の中心から隣接する細孔35の中心までの距離)を50点測定し、これらの測定値を算術平均して求めた値である。
細孔35の深さは、波長により反射率が変動するのを抑制できる深さとすることが好ましい。具体的には、60nm以上が好ましく、90nm以上がより好ましく、150nm以上がさらに好ましく、180nm以上が特に好ましい。
また、細孔間の平均間隔が100nmの場合、細孔35の深さは、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmがさらに好ましい。
細孔35の深さは、電子顕微鏡30000倍画像において、細孔35の最底部と、細孔間に存在する凸部の最頂部との間の垂直面上における距離を50点測定し、これらの測定値を算術平均して求めた値である。
また、細孔35のアスペクト比(深さ/平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0がさらに好ましい。
上述した方法で作製したスタンパを用いて製造した微細凹凸構造体は、例えば図3の模式断面図に示すように、基材21の表面に形成された硬化樹脂層22を有する。硬化樹脂層22は、上述のスタンパと接触させ硬化させた樹脂組成物から形成された複数の凸部23を有する微細凹凸構造を有している。
(微細凹凸構造体の連続的製造方法)
微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造体は、例えば、図6に示す製造装置を用いて、連続的に製造することができる。
図6に示す製造装置には、表面に微細凹凸構造の反転構造(図示略)を有するロール状のスタンパ40と、樹脂組成物を収納するタンク42とが設けられている。スタンパ40の回転と共に、その表面に沿って移動する透光性の帯状フィルムである基材21と、スタンパ40との間に、タンク42から樹脂組成物が供給される。スタンパ40と、空気圧シリンダ44によってニップ圧が調整されたニップロール46との間で、基材21および樹脂組成物がニップされ、樹脂組成物は基材21とスタンパ40との間で均一に行きわたると同時に、スタンパ40の微細凹凸構造の凹部内に充填する。スタンパ40の下方には活性エネルギー線照射装置48が設置され、基材21を通して樹脂組成物に活性エネルギー線が照射され、樹脂組成物は硬化するようになっている。これにより、スタンパ40の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層22が形成される。その後、剥離ロール50により、表面に微細凹凸構造が形成された硬化樹脂層22と基材21が一体化された連続した微細凹凸構造体20が剥離される。
活性エネルギー線照射装置48としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
〔保護フィルム付き微細凹凸構造体の製造方法〕
保護フィルム付き微細凹凸構造体は、上述した微細凹凸構造体に、保護フィルムの粘着剤層と微細凹凸構造体微細凹凸構造側の表面とが接するように保護フィルムを貼着することで得られる。その際、運搬、加工時に保護フィルムが浮いたり剥がれたりしないよう、保護フィルムと微細凹凸構造体とが後で剥離できる程度の力で密着するように、微細凹凸構造体の上に保護フィルムを積層させ、圧力をかけることが好ましい。特に、微細凹凸構造体を製造した後、引き続き、製造ライン上で保護フィルムを圧着させることが好ましい。例えば、微細凹凸構造体と保護フィルムとが積層した状態でゴムロール等の間に通すことで、適当な力がかかり、適度に密着した保護フィルム付き微細凹凸構造体が得られる。
微細凹凸構造体に保護フィルムを貼着する際の圧力は、通常、0.1〜10MPaの範囲内である。
また、保護フィルムの粘着剤層が硬い場合には、微細凹凸構造体に貼り付ける前に粘着剤層を加熱して、微細凹凸構造体の表面に貼着させることが好ましい。粘着剤層を加熱する際は、保護フィルムの貼り付けエリア全体を加熱する必要はなく、貼り付けに用いるロールを所望の温度に加熱することで、十分に対応できる。保護フィルムの貼り付けは1対のゴムロールの間を通すものであってもよく、また、1つのゴムロールによって平板状の壁や台に押し付ける方法であってもよい。例えば、貼り付けに用いるゴムロールは、ゴムロール内側に設けられた加熱装置によって加熱され、ゴムロール表面が40〜60℃になるように設定する。微細凹凸構造体および保護フィルムは、いずれも室温で保護フィルム貼り付けエリアに搬送・供給されるが、ゴムロールによって保護フィルムの粘着剤層が加熱され、粘着剤層が貼り付けに適した物性になることで、微細凹凸構造体と保護フィルムとが良好に貼り合わされる。
〔作用効果〕
以上説明した本実施形態の保護フィルム付き微細凹凸構造体は、微細凹凸構造側の表面に上述した本発明の保護フィルムが貼着しているので、意図せずに保護フィルムが微細凹凸構造体から剥離することを抑制しつつ、剥離する際には軽い力で剥離することができ、かつ微細凹凸構造体表面が汚染されにくい。
ところで、Moth−eye構造体は、通常の凹凸構造に比べて凸部同士の間隔が非常に狭いため、微細凹凸構造体と保護フィルムとの接触面積が小さい。そのため、保護フィルムがMoth−eye構造体に十分に密着せず、保管時や運搬時に保護フィルムが剥がれてしまう、という課題があった。一方、密着力の強い粘着剤層を有する保護フィルムをMoth−eye構造体の表面に貼着すると、密着強度が経時的に増加し、次第に保護フィルムが剥離しにくくなるという問題が発生する。これは、保護フィルムを貼着すると、その粘着剤がMoth−eye構造内部に時間が経過するにつれて侵入していくことで発生すると考えられる。そのため、保護フィルムを剥離した後もMoth−Eye構造の微細凹凸構造内部に脱落した粘着剤が残留し、Moth−Eye構造の微細凹凸構造が持つ光学性能を低下させてしまう問題が発生する場合がある。
このように、Moth−eye構造体やMoth−eye構造体を用いた製品の製造過程において、保護フィルムが意図せずに剥離してしまうことを防止しつつ、且つ剥離する際に軽い力で容易に剥離でき、Moth−eye構造体の表面を汚染することがない保護フィルムを構成することは非常に困難であった。
しかし、本発明であれば、温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつゲル分率が98.8%以上である粘着剤層を備えた保護フィルムを用いる。よって、被着体がMoth−eye構造体であっても、意図せずに保護フィルムが微細凹凸構造体から剥離することを抑制しつつ、保護フィルムを被着体から剥離するときの剥離力を好適に調整できる。加えて、保護フィルムとMoth−eye構造体の表面との密着力が継時的に増加することを抑制でき、保護フィルムを剥離後にMoth−eye構造体の表面に糊残りが発生することを抑制することができる。
特に、粘着剤層のゲル分率が99.0%以上、より好ましくは99.3%以上である保護フィルムを用いれば、保護フィルムをMoth−eye構造体から剥離するときの剥離力をより好適に調整しつつ、Moth−eye構造体の表面の汚染をより低減することができる。
また、粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上210,000Pa未満、より好ましくは50,000〜200,000Paである保護フィルムを用いれば、保護フィルムをMoth−eye構造体から剥離するときの剥離力をより好適に調整することができる。
また、Moth−eye構造体としては、微細凹凸構造側の表面の水接触角が25°以下であることが好ましい。Moth−eye構造体の表面の水接触角が25°以下であれば、保護フィルムの粘着剤層を構成する粘着剤との親和性を低くすることができ、Moth−eye構造の内部に粘着剤が侵入していくことをより効果的に抑制することができ、保護フィルムを剥離後にMoth−eye構造体の表面に糊残りが発生することを抑制することができる。
〔用途〕
保護フィルムを貼着する前の微細凹凸構造体、および保護フィルム付き微細凹凸構造体から保護フィルムを剥離した後の微細凹凸構造体は、微細凹凸構造の耐擦傷性が高く、指紋拭き取り性等の汚れ除去性が良好であり、反射防止物品(反射防止フィルム、反射防止膜等)、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子等の光学物品;細胞培養シートとしての用途展開が期待でき、特に反射防止物品としての用途に適している。
反射防止物品としては、例えば、コンピュータ、テレビ、携帯電話等の画像表示装置(液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、陰極管表示装置等)、レンズ、ショーウィンドー、眼鏡等の表面に設けられる反射防止膜、反射防止フィルム、反射防止シート等が挙げられる。画像表示装置に用いる場合は、画像表示面に反射防止フィルムを直接貼り付けてもよく、画像表示面を構成する部材の表面に反射防止膜を直接形成してもよく、前面板に反射防止膜を形成してもよい。
上述した以外にも、微細凹凸構造体は、光導波路、レリーフホログラム、レンズ、偏光分離素子などの光学用途や、細胞培養シートの用途にも適用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の記載において、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
「各種測定および評価方法」
(1)スタンパの細孔の測定
陽極酸化ポーラスアルミナからなるスタンパの一部の縦断面に白金を1分間蒸着し、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM−7400F)を用い、30000倍画像において、加速電圧3.00kVで観察し、隣り合う細孔の間隔(周期)および細孔の深さを測定した。具体的にはそれぞれ50点ずつ測定し、その平均値を細孔の深さとした。
(2)微細凹凸構造体の凸部の測定
微細凹凸構造体の縦断面に白金を10分間蒸着し、(1)の場合と同じ装置および条件にて、隣り合う凸部の間隔(周期)および凸部の高さを測定した。具体的にはそれぞれ50点ずつ測定し、その平均値を測定値とした。
(3)反射率の測定
微細凹凸構造体の、微細凹凸構造側とは反対側の表面(微細凹凸構造体の裏面)をサンドペーパー(GRITNo.500)で粗面化した後、黒く塗ったサンプルを、分光光度計(株式会社日立製作所製、U−4100)を用いて、入射角5°の条件で波長380〜780nmの間の相対反射率を測定した。
(4)ガラス転移温度の測定
成分(A)について、JIS K 7121:1987に準じ、DSCによりガラス転移温度を求めた。
(5)質量平均分子量および数平均分子量の測定
成分(A)について、下記条件でGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)を行い、質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分散度(Mw/Mn)を求めた。
・分析装置:東ソー株式会社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー株式会社製、G7000HXL、GMHXL、GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmΦ×30cm(計90cm)
・カラム温度:40℃
・流速:0.8ml/min
・注入量:20μl
・溶難液:テトラヒドロフラン(THF)
・検出器:示差屈折計
・標準試料:ポリスチレン
(6)貯蔵弾性率(G’)の測定
ポリエステルからなるフィルムに各実施例および比較例で用いた粘着剤組成物を塗布し、溶剤を揮発させて粘着剤層を形成し、約2cm角に切り出し、試験片とした。得られた試験片を直径25mmのパラレルプレートにエポキシ樹脂で固定し、そこに直径25mm以下のプレートを密着させ動的粘弾性測定を行い、粘着剤層の貯蔵弾性率を測定した。測定にはレオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、「ARES」)を用い、以下の条件で測定を行った。
・測定プレート:8mmパラレルプレート
・測定ギャップ(プレート間の距離):粘着剤層の厚み
・歪:1%
・温度:30℃
・測定周波数(角周波数):1rad/s〜100rad/s
(7)ゲル分率の測定
(6)と同様にして粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層から乾燥質量X1の試料を採取し、これをテトラヒドロフラン(THF)に浸漬した。その後、試料の不溶分をTHF中から取り出し、乾燥後の重量X2を測定し、下記式(1)よりゲル分率を求めた。粘着剤層から5点の試料を採取し、5点の試料のゲル分率の平均値を求め、これを「粘着剤層のゲル分率」とした。
ゲル分率(質量%)=(X2/X1)×100 ・・・(1)
(8)低分子化合物(炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物)の炭素数と含有量の測定
架橋後の粘着剤をTHFに24時間浸漬し、低分子化合物をTHFに抽出した。その後、THF不溶分を取り出し、抽出液(THF溶液)について下記条件でGCMS(ガスクロマトグラフ質量分析計)を行い、溶剤可溶成分の炭素数を求め、そのうち、炭素数が7〜9である化合物および炭素数が18である化合物の含有量を求めた。
・分析装置:株式会社島津製作所製、GCMS−QP2010 ULTRA
・カラム:MDN−1
・カラムサイズ:30m長さ×0.25mm内径、膜厚0.25μm
・カラムオーブン温度:50℃
・イオン源温度:250℃
・インターフェイス温度:250℃
・注入量:1μl
・スプリット比:10
・昇温速度:10℃/minで50℃(3min)〜280℃(34min)
・全流速:23.5ml/min
・カラム流速:ヘリウム1.86ml/min
・線流速:49.5cm/s
・パージ流量:3.0ml/min
なお、溶剤可溶成分として抽出された低分子化合物はGCMS−QP2010 ULTRAに標準装備された解析ソフトGCMSsolutionを用いてライブラリ(データベースNIST14)のSimilarity(SI値)が90以上の化合物を対象にクロマトグラムのピーク面積%を算出した後、ゲル分率を掛け合わせて定性、定量した。
(9)糊残り(耐汚染性)の評価
保護フィルムの粘着剤層が微細凹凸構造体の微細凹凸構造に接するように、保護フィルムを微細凹凸構造体に貼着し、試験片とした。得られた試験片を40℃、相対湿度80%の環境下にて7日間保管した。保管後の試験片について、微細凹凸構造体の保護フィルムが貼着していない側の面を黒アクリル樹脂板に貼り付けた後、保護フィルムを剥離し、微細凹凸構造体の露出した表面に糊残り、もしくは汚染物質がないか目視で確認し、以下の評価基準にて評価した。
〇:保護フィルムを貼着する前と変化がない。
×:保護フィルムを貼着する前と比べて斑が確認される。
(10)密着性の評価
保護フィルムの粘着剤層が微細凹凸構造体の微細凹凸構造に接するように、保護フィルムを微細凹凸構造体の表面に載せ、保護フィルムの上から重さ2kgのロールを1往復させて保護フィルムを微細凹凸構造体に貼着し、試験片とした。得られた試験片を40℃、相対湿度80%の環境下にて7日間間保管した。その後、保護フィルムを手で剥がし、以下の評価基準にて評価した。
〇:大きな負荷なくはがれた。
×:密着力が弱すぎて自然に剥がれてしまった。
×:密着力が強すぎて剥がれない。
「スタンパの製造」
図5に示す工程にしたがい、スタンパ(細孔の深さ:180nm)を以下のように作製した。
まず、板状であり、純度99.99%のアルミニウム基材30を、羽布研磨し、ついで過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨し、鏡面化した。
工程(a):
アルミニウム基材30を、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行い、酸化皮膜32に細孔31を生じさせた。
工程(b):
酸化皮膜32が形成されたアルミニウム基材30を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜32を除去し、細孔31に対応する周期的な窪み(凹部33)を露出させた。
工程(c):
凹部33を露出させたアルミニウム基材30について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行い、細孔35を有する酸化皮膜34を形成した。
工程(d):
酸化皮膜34が形成されたアルミニウム基材を、32℃の5質量%リン酸に8分間浸漬して、細孔35の径拡大処理を行った。
工程(e):
径拡大処理を行ったアルミニウム基材30について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒陽極酸化を行い、細孔35から下方に延びる小径の細孔35を形成した。
工程(f):
工程(d)および工程(e)を合計で4回繰り返し、最後に工程(e)を行い、平均間隔(周期):100nm、深さ:180nmの略円錐形状の細孔35を有する陽極酸化ポーラスアルミナを得た。
得られた陽極酸化ポーラスアルミナを脱イオン水で洗浄し、表面の水分をエアーブローで除去し、表面防汚コーティング剤(ダイキン工業株式会社製、オプツールDSX)を固形分0.1%になるように希釈剤(株式会社ハーベス製、HD−ZV)で希釈した溶液に10分間浸漬し、20時間風乾してスタンパ40を得た。
「微細凹凸構造体の製造」
<活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製>
新中村化学工業株式会社製のA−DPHの20部、第一工業製薬株式会社製のニューフロンティアPET−3の20部、ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、NKエステルA−200)の35部、ヒドロキシエチルアクリレートの25部、活性エネルギー線重合開始剤として、日本チバガイギー株式会社社製のイルガキュア184の1.0部およびイルガキュア819の0.5部を混合し、均一に溶解させ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
<微細凹凸構造体の製造>
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を50℃に調温し、50℃に調温したスタンパの細孔が形成された表面に流し込み、その上に厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を押し広げながら被覆した。その後、PETフィルム側からフュージョンランプを用いてベルトスピード6.0m/分で、積算光量1000mJ/cmとなるよう紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。次いで、PETフィルムからスタンパを剥離して、硬化樹脂層がPETフィルム上に形成された微細凹凸構造体を得た。
得られた微細凹凸構造体の表面には、スタンパの微細凹凸構造が転写されており、図3に示すような、隣り合う凸部23の平均間隔(周期)wが100nm、凸部23の平均高さdが180nmである略円錐形状の微細凹凸構造が形成されていた。
また、得られた微細凹凸構造体の微細凹凸構造側の表面の反射率を測定したところ、0.1%であった。
「実施例1」
<保護フィルムの製造>
基材フィルムとして易接着層付PETフィルム(厚さ38μm)を用いた。
成分(A)として、表1と表2に示すガラス転移温度、質量平均分子量および表2に示す分散度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体100部と、成分(B)としてヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)22.5部とを混合し、溶剤(酢酸エチル)をベースにした粘着剤組成物を調製した。
得られた粘着剤組成物をPET剥離ライナーの上にナイフコーターを用いて厚さが均一になるように塗布し、粘着剤組成物から溶剤を揮発させた後、基材フィルムの片面に転写、ラミネートして粘着剤層(厚さ約5μm)を保有する保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムについて、粘着剤層の貯蔵弾性率、ゲル分率と評価結果を表1に示し、低分子化合物の含有量と評価結果を表2に示す。
<保護フィルム付き微細凹凸構造体の製造>
微細凹凸構造体と保護フィルムとを5cmの幅で短冊状に切り、保護フィルムの粘着剤層が微細凹凸構造体の微細凹凸構造側の表面に貼着するように、重さ2kgのゴムローラを用いて保護フィルムと微細凹凸構造体とを貼り合せ、保護フィルム付き微細凹凸構造体を得た。
別途、糊残りの評価および密着性の評価に用いる評価用の試験片を同様にして作製し、密着性および糊残りの評価を行った。結果を表1と表2に示す。
「実施例2と実施例3、比較例1〜6」
成分(A)として、表1と表2に示すガラス転移温度、質量平均分子量および表2に示す分散度の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体を用い、(B)成分の種類および配合量を表1と表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして保護フィルムおよび保護フィルム付き微細凹凸構造体を製造し、各種評価を行った。結果を表1と表2に示す。なお、表1と表2中の「TDI」は、トリレンジイソシアネートの略である。
Figure 2018065960
Figure 2018065960
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られた保護フィルム付き微細凹凸構造体は、ゲル分率と貯蔵弾性率のバランスを操作することにより、保護フィルムが微細凹凸構造体に良好に密着していた。しかも、40℃、湿度80%において7日間経過後も糊残りすることなく保護フィルムを容易に剥離することができ、かつ自然に剥がれることもなかった。
一方、ゲル分率が98.8%未満である粘着剤層を備える保護フィルムを用いた比較例1〜6の場合、微細凹凸構造への付着物が多く、目視で斑がわかるほどの糊残りが発生した。
特に、貯蔵弾性率が210,000Paである粘着剤層を備える保護フィルを用いた比較例5の場合、保護フィルムが自然に剥離してしまった。
また、貯蔵弾性率が14,000Paである粘着剤層を備える保護フィルムを用いた比較例6の場合、保護フィルムと微細凹凸構造との密着力が強く、保護フィルムが剥がれなかった。
また、表2から、低分子化合物の含有量が実施例1〜3の間で若干のバラツキはあるものの、粘着剤組成物中の成分(A)の分散度と架橋剤(成分(B))の添加量を調節することにより、ゲル分率を高く保持しながら炭素数が7〜9である化合物の含有量(X)を40×10−2質量%以下に抑制し、炭素数が18である化合物の含有量(Y)を64×10−2質量%以下に抑制することができる。さらに、低分子化合物の総量(X+Y)においては80×10−2質量%以下に抑制することができるため、保護フィルムの糊残り(耐汚染性)と密着性の両性能が発現することが分かる。
以上、本発明に係る保護フィルムを実施の形態や各例に基づき説明してきたが、具体的な被着体の種類については、これに限られたものではない。本発明は汚染物質の生成を抑制した保護フィルムであり、特にガラスやポリカーボネート、PET、アクリルなど透明な被着体に対しても耐汚染性への効果が得られる可能性が極めて高い。
本発明の保護フィルムは、意図せずに被着体から剥離してしまうことを抑制しつつ、かつ剥離する際に軽い力で容易に剥離でき、被着体の表面を汚染しにくい。本発明に係る保護フィルムは、液晶ディスプレイなどの製造に用いられる各種光学部材や、表面に微細な凹凸構造を有する微細凹凸構造体の表面を保護する保護フィルムとして好適に用いることができる。特に、微細凹凸構造を構成する複数の凸部のうち、隣接する凸部の平均間隔が可視光の波長以下(すなわち400nm以下)である微細凹凸構造体の保護フィルムとして好適に使用することができる。したがって、本発明の保護フィルムは、被着体の優れた光学性能を維持しながら、運搬、加工における被着体の傷付きを防ぐことができる。加えて、長期保管をしても糊残りを生じることなく、初期の性能を維持できる。また、本発明の保護フィルムを剥離した後の被着体は、例えば、建材用途(壁、屋根等)、窓材(家屋、自動車、電車、船舶等)等に利用可能であり、工業的に極めて有用である。また、反射防止性能が求められるディスプレイ等の用途にも利用可能である。
1 保護フィルム付き微細凹凸構造体
10 保護フィルム
11 基材フィルム
12 粘着剤層
20 微細凹凸構造体
21 基材
22 硬化樹脂層
23 凸部
23a 頂部
23b 頂部
24 凹部
24a 底部
25 中間層
30 アルミニウム基材
31 細孔
32 酸化皮膜
33 凹部
34 酸化皮膜
35 細孔
40 スタンパ

Claims (6)

  1. 基材フィルムの片面に粘着剤層が形成された保護フィルムであって、
    前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつ前記粘着剤層のゲル分率が98.8%以上である、保護フィルム。
  2. 前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が210,000Pa未満である、請求項1に記載の保護フィルム。
  3. 前記粘着剤層は、質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が1.2〜4.0であり、かつガラス転移温度が−70〜−20℃であるアクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して7.5〜26質量部のイソシアネート系架橋剤とを含有する粘着剤の架橋物であり、前記架橋物の総質量に対して、炭素数が7〜9である化合物の含有量が40×10−2質量%以下であり、炭素数が18である化合物の含有量が64×10−2質量%以下である、請求項1または2に記載の保護フィルム。
  4. 可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する微細凹凸構造体に、該微細凹凸構造体の表面を保護する保護フィルムが貼着した保護フィルム付き微細凹凸構造体であって、
    前記保護フィルムは、前記微細凹凸構造体の表面と接する粘着剤層を有し、
    前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が20,000Pa以上であり、かつ前記粘着剤層のゲル分率が98.8%以上である、保護フィルム付き微細凹凸構造体。
  5. 前記粘着剤層の温度30℃、角周波数10rad/sにおける貯蔵弾性率が210,000Pa未満である、請求項4に記載の保護フィルム付き微細凹凸構造体。
  6. 前記粘着剤層は、質量平均分子量/数平均分子量で表される分散度が1.2〜4.0であり、かつガラス転移温度が−70〜−20℃であるアクリル系ポリマーと、前記アクリル系ポリマー100質量部に対して7.5〜26質量部のイソシアネート系架橋剤とを含有する粘着剤の架橋物であり、前記架橋物の総質量に対して、炭素数が7〜9である化合物の含有量が40×10−2質量%以下であり、炭素数が18である化合物の含有量が64×10−2質量%以下である、請求項4または5に記載の保護フィルム付き微細凹凸構造体。
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