JP2018062547A - 生物付着防止塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、生物付着防止性に優れた塗膜を形成できる生物付着防止塗料の提供である。また、本発明の課題は、上記生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する物品の提供にもある。
【解決手段】本発明の生物付着防止塗料は、生物付着を防止するために物品の表面に塗布される生物付着防止塗料であって、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する。式中、M1はアルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表し、M2はアルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
【選択図】なし
【解決手段】本発明の生物付着防止塗料は、生物付着を防止するために物品の表面に塗布される生物付着防止塗料であって、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する。式中、M1はアルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表し、M2はアルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
【選択図】なし
Description
本発明は、生物付着防止塗料に関する。
種々の基材に撥水性を付与するために、含フッ素重合体を含有する塗料が用いられている。このような含フッ素重合体としては、例えば、フルオロオレフィンに基づく重合単位と、ビニルエーテル(例えば、シクロヘキシルビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテルなど)に基づく重合単位と、を含む含フッ素重合体が開示されている(特許文献1参照)。
近年、塗料塗膜への生物付着による塗膜汚れ、塗膜劣化および菌体の繁殖を抑制するために、生物付着を防止あるいは抑制できる塗料(以下、「生物付着防止塗料」と称する。)の開発が進められている。生物付着防止塗料としては、具体的には、海上または海中の海洋構造物や船舶の船底部に貝類等の海洋生物が付着するのを防止または抑制するための海洋生物付着防止塗料や、高温多湿地域の屋外建築物や水回りで使用される部材にカビや藻が付着するのを防止または抑制するための防カビ・防藻性塗料、食品加工工場や医療施設などの建材や内装材に菌体が付着(繁殖)することを防止または抑制するための抗菌性塗料などが挙げられる。
本発明者らが、生物付着防止塗料に含フッ素重合体を使用すべく、上記特許文献1に記載の含フッ素重合体を含有する塗料を用いて基材上に塗膜を作製した結果、生物付着を十分に抑制できないことを知見した。
本発明者らが、生物付着防止塗料に含フッ素重合体を使用すべく、上記特許文献1に記載の含フッ素重合体を含有する塗料を用いて基材上に塗膜を作製した結果、生物付着を十分に抑制できないことを知見した。
そこで、本発明は、生物付着防止性に優れた塗膜を形成できる生物付着防止塗料の提供を課題とする。また、本発明は、上記生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する物品の提供も課題とする。また、本発明は、上記生物付着防止塗料を用いて、物品の表面に生物が付着するのを防止する方法の提供も課題とする。
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、フルオロオレフィンに基づく重合単位と、後述する式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位と、を含む含フッ素重合体を使用することで、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
[1]
生物付着を防止するために物品の表面に塗布される生物付着防止塗料であって、
フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、後述する式(a1)または後述する式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する、生物付着防止塗料。
式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
[2]
重合単位(A)が、後述する式(A1)または後述する式(A2)で表される重合単位である、[1]に記載の生物付着防止塗料。
式(A1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(A2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
式(A1)および式(A2)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
式(A1)および式(A2)中、Lは、2価の有機基を表す。
[3]
式(A1)および式(A2)において、Lの炭素数が3〜16である、[2]に記載の生物付着防止塗料。
[4]
含フッ素重合体が、さらに、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を含む単量体に基づく重合単位(B)を含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[5]
さらに、水を含み、含フッ素重合体が粒子状に分散してなる、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[6]
含フッ素重合体の含有量が、全固形成分に対して、50〜90質量%である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[7]
[1]〜[6]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する、物品。
[8]
物品の表面に、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、後述する式(a1)または後述する式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する塗料の塗膜を形成して、物品に生物が付着するのを防止する方法。
式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
生物付着を防止するために物品の表面に塗布される生物付着防止塗料であって、
フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、後述する式(a1)または後述する式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する、生物付着防止塗料。
式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
[2]
重合単位(A)が、後述する式(A1)または後述する式(A2)で表される重合単位である、[1]に記載の生物付着防止塗料。
式(A1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(A2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
式(A1)および式(A2)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
式(A1)および式(A2)中、Lは、2価の有機基を表す。
[3]
式(A1)および式(A2)において、Lの炭素数が3〜16である、[2]に記載の生物付着防止塗料。
[4]
含フッ素重合体が、さらに、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を含む単量体に基づく重合単位(B)を含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[5]
さらに、水を含み、含フッ素重合体が粒子状に分散してなる、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[6]
含フッ素重合体の含有量が、全固形成分に対して、50〜90質量%である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料。
[7]
[1]〜[6]のいずれか1つに記載の生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する、物品。
[8]
物品の表面に、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、後述する式(a1)または後述する式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する塗料の塗膜を形成して、物品に生物が付着するのを防止する方法。
式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
以下に示すように、本発明によれば、生物付着防止性に優れた塗膜を形成できる生物付着防止塗料を提供できる。また、本発明によれば、上記生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する物品を提供できる。また、本発明によれば、上記生物付着防止塗料を用いて、物品の表面に生物が付着するのを防止する方法を提供できる。
以下、本発明の生物付着防止塗料(以後、単に「本発明の塗料」とも称する。)、本発明の塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する物品について詳述する。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
本発明において、単量体が重合することで直接形成される繰り返し単位と、単量体の重合によって形成される繰り返し単位の一部を化学変換することで得られる繰り返し単位と、を総称して「重合単位」という。
また、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
本発明において、単量体が重合することで直接形成される繰り返し単位と、単量体の重合によって形成される繰り返し単位の一部を化学変換することで得られる繰り返し単位と、を総称して「重合単位」という。
また、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本発明の塗料の特徴点としては、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、後述する式で表されるカルボン酸金属塩構造を有する基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する点が挙げられる。
本発明者らは、重合単位(F)および重合単位(A)を含む含フッ素重合体を含有する塗料を用いて形成された塗膜が、生物付着を抑制する効果に優れることを見出した。このような効果は、菌体に対しても顕著に発現するため、本発明の生物付着防止塗料は、菌体付着を防止するために物品の表面に塗布される抗菌性塗料としても使用できる。
また、本発明の塗料から形成される塗膜は、重合単位(F)の作用により、環境変化(大気曝露、温度変化等。)にも耐えるため、耐水性(特に耐塩水性)と耐候性を有する。
本発明者らは、重合単位(F)および重合単位(A)を含む含フッ素重合体を含有する塗料を用いて形成された塗膜が、生物付着を抑制する効果に優れることを見出した。このような効果は、菌体に対しても顕著に発現するため、本発明の生物付着防止塗料は、菌体付着を防止するために物品の表面に塗布される抗菌性塗料としても使用できる。
また、本発明の塗料から形成される塗膜は、重合単位(F)の作用により、環境変化(大気曝露、温度変化等。)にも耐えるため、耐水性(特に耐塩水性)と耐候性を有する。
本発明における含フッ素重合体の重合単位(F)は、フルオロオレフィンに基づく重合単位であり、CF2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CFCF3またはCF2=CH2に基づく重合単位が好ましく、重合単位(A)を形成する単量体との共重合性の観点から、CF2=CF2またはCF2=CFClが特に好ましい。フルオロオレフィンは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合単位(F)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、20〜70モル%が好ましく、30〜60モル%がさらに好ましく、40〜60モル%が特に好ましい。重合単位(X)の含有量が上記下限値以上であれば、塗膜の耐候性がより優れる。重合単位(X)の含有量が上記上限値以下であれば、含フッ素重合体が非結晶性になりやすく、その塗膜の透明性、密着性、表面平滑性がより優れる。
本発明における含フッ素重合体の重合単位(A)は、下式(a1)または下式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位である。含フッ素重合体には、複数の式(a1)または式(a2)で表される基が含まれていてもよい。
式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
アルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、セシウム原子、フランシウム原子が挙げられる。
1価の遷移金属原子としては、銀原子が挙げられる。
M1は、ナトリウム原子、カリウム原子または銀原子が好ましく、銀原子がより好ましい。
アルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子、ルビジウム原子、セシウム原子、フランシウム原子が挙げられる。
1価の遷移金属原子としては、銀原子が挙げられる。
M1は、ナトリウム原子、カリウム原子または銀原子が好ましく、銀原子がより好ましい。
式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
アルカリ土類金属原子としては、マグネシウム原子、カルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子が挙げられる。
2価の遷移金属原子としては、鉄原子、銅原子、亜鉛原子、マンガン原子、ニッケル原子、コバルト原子、カドミウム原子が挙げられる。
M2は、カルシウム原子または亜鉛原子が好ましい。
なお、通常、M2で表される原子は、2価の遷移金属原子であるため、M2 2+で表されるイオンとなるが、M2 2+には2つの−COO−基がイオン結合するため、−COO−基1個当たりのM2 2+は1/2個とみなし、式(a2)中では「(M2 2+)1/2」と表現される。つまり、式(a2)の「(M2 2+)1/2」における「1/2」との表記は、2価の遷移金属原子である1つの「M2」が2つの−COO−基に共有されており、2つの−COO−基が1つの「M2」と配位している構造のうち半分の構造を表す。
アルカリ土類金属原子としては、マグネシウム原子、カルシウム原子、ストロンチウム原子、バリウム原子が挙げられる。
2価の遷移金属原子としては、鉄原子、銅原子、亜鉛原子、マンガン原子、ニッケル原子、コバルト原子、カドミウム原子が挙げられる。
M2は、カルシウム原子または亜鉛原子が好ましい。
なお、通常、M2で表される原子は、2価の遷移金属原子であるため、M2 2+で表されるイオンとなるが、M2 2+には2つの−COO−基がイオン結合するため、−COO−基1個当たりのM2 2+は1/2個とみなし、式(a2)中では「(M2 2+)1/2」と表現される。つまり、式(a2)の「(M2 2+)1/2」における「1/2」との表記は、2価の遷移金属原子である1つの「M2」が2つの−COO−基に共有されており、2つの−COO−基が1つの「M2」と配位している構造のうち半分の構造を表す。
重合単位(A)は、式(a1)および式(a2)で表される基のうち、生物付着防止性(特に菌体の付着防止)に優れる観点から、式(a2)で表される基が好ましい。式(a2)におけるM2は、カルシウム原子または亜鉛原子が好ましい。
重合単位(A)は、式(A1)または式(A2)で表される重合単位が好ましい。
式中、M1およびM2のそれぞれの定義は、前述した通りである。
式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。Rが後者のアルキル基である場合、Rはメチル基が好ましい。
式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。Rが後者のアルキル基である場合、Rはメチル基が好ましい。
式中、Lは、2価の有機基を表す。
Lの炭素数(すなわち、2価の有機基に含まれる炭素原子の数)は、生物付着防止性(特に菌体の付着防止)がより向上するという観点から、3〜16が好ましく、4〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
2価の有機基としては、生物付着防止性(特に菌体の付着防止)により優れる観点から、アルキレン基、または2価の連結基を含むアルキレン基が好ましい。
Lにおけるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
2価の連結基としては、−O−、−S−、−C(O)−、−NH−、および、これらを組み合わせた基が挙げられ、−O−、−C(O)−、または−C(O)O−が好ましい。
2価の有機基は、下記式(L1)〜(L5)で表される基が好ましく、下記式(L1)で表される基、下記式(L2)で表される基、または、下記式(L3)で表される基がより好ましく、下記式(L1)で表される基がさらに好ましい。
Lの炭素数(すなわち、2価の有機基に含まれる炭素原子の数)は、生物付着防止性(特に菌体の付着防止)がより向上するという観点から、3〜16が好ましく、4〜12がより好ましく、6〜10がさらに好ましい。
2価の有機基としては、生物付着防止性(特に菌体の付着防止)により優れる観点から、アルキレン基、または2価の連結基を含むアルキレン基が好ましい。
Lにおけるアルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
2価の連結基としては、−O−、−S−、−C(O)−、−NH−、および、これらを組み合わせた基が挙げられ、−O−、−C(O)−、または−C(O)O−が好ましい。
2価の有機基は、下記式(L1)〜(L5)で表される基が好ましく、下記式(L1)で表される基、下記式(L2)で表される基、または、下記式(L3)で表される基がより好ましく、下記式(L1)で表される基がさらに好ましい。
式(L1):*−(CH2)p1−**
式(L2):*−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−**
式(L3):*−(CH2)p3−O−(CH2)q3−**
式(L4):*−O−(CH2)p4−**
式(L5):*−CH2O−(CH2)p5−**
式(L1)中、p1は、3〜16の整数を表す。
式(L2)中、p2およびq2は、それぞれ1以上の整数であり、合計で3〜16の整数を表す。
式(L3)中、p3およびq3は、それぞれ1以上の整数であり、合計で3〜16の整数を表す。
式(L4)中、p4は、3〜16の整数を表す。
式(L5)中、p5は、2〜15の整数を表す。
なお、式(L1)〜(L5)において、「*」は主鎖との結合位置を示し、「**」は−COO−M1 +または−COO−(M2 2+)1/2と結合位置を示す。
式(L2):*−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−**
式(L3):*−(CH2)p3−O−(CH2)q3−**
式(L4):*−O−(CH2)p4−**
式(L5):*−CH2O−(CH2)p5−**
式(L1)中、p1は、3〜16の整数を表す。
式(L2)中、p2およびq2は、それぞれ1以上の整数であり、合計で3〜16の整数を表す。
式(L3)中、p3およびq3は、それぞれ1以上の整数であり、合計で3〜16の整数を表す。
式(L4)中、p4は、3〜16の整数を表す。
式(L5)中、p5は、2〜15の整数を表す。
なお、式(L1)〜(L5)において、「*」は主鎖との結合位置を示し、「**」は−COO−M1 +または−COO−(M2 2+)1/2と結合位置を示す。
重合単位(A)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0.5〜20モル%が好ましく、1〜15モル%が特に好ましい。重合単位(A)の含有量が下限値以上であれば、生物付着防止性(特に、菌体の付着防止性)がより優れる。
本発明における含フッ素重合体の製造方法としては、例えば、以下の(I)〜(IV)の各方法が挙げられる。
(I)まず、式CH2=CR−L−COOH(式中のRおよびLの定義は前述の通りである。)で表される化合物(以下、「単量体(px)」とも称する。)と、式(a1)におけるM1または式(a2)におけるM2を含む金属成分(例えば、金属炭酸塩、金属の水酸化物など)と、を反応させて、式CH2=CR−L−COO−M1 +または式CH2=CR−L−COO−(M2 2+)1/2(各式中のR、L、M1およびM2の定義は前述の通りである。)で表される化合物(単量体)を得る。
続いて、得られた化合物と、フルオロオレフィンと、を重合させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
続いて、得られた化合物と、フルオロオレフィンと、を重合させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
(II)まず、上記単量体(x)と、フルオロオレフィンと、を重合させて、単量体(x)に基づく重合単位(X)と、上記重合単位(F)と、を含むプレポリマーを得る。
続いて、プレポリマー中の上記重合単位(X)の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
なお、金属成分の具体例は、上記(I)の方法で使用した金属成分と同様である。
続いて、プレポリマー中の上記重合単位(X)の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
なお、金属成分の具体例は、上記(I)の方法で使用した金属成分と同様である。
(III)まず、式CH2=CR−(CH2)p2−OH(式中のRおよびpの定義は前述の通りである。)で表される化合物(以下、「単量体(y)」とも称する。)の−OH基と、下式(a3)で表される環状カルボン酸無水物(例えば、無水コハク酸など)と、を反応させて、式CH2=CR−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−COOH(式中のR、p2、q2の定義は前述の通りである。)で表される化合物(以下、単量体(px1)とも称する)を得る。
続いて、単量体(px1)の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、CH2=CR−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−COO−M1 +または式CH2=CR−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−COO−(M2 2+)1/2(各式中のR、p2、q2、M1およびM2の定義は前述の通りである。)で表される化合物(単量体)を得る。
ついで、得られた化合物と、フルオロオレフィンと、を重合させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
続いて、単量体(px1)の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、CH2=CR−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−COO−M1 +または式CH2=CR−(CH2)p2−O−C(O)−(CH2)q2−COO−(M2 2+)1/2(各式中のR、p2、q2、M1およびM2の定義は前述の通りである。)で表される化合物(単量体)を得る。
ついで、得られた化合物と、フルオロオレフィンと、を重合させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
上記式(a3)中のq2の定義は前述の通りである。
(IV)まず、単量体(y)と、フルオロオレフィンと、を重合させて、単量体(y)に基づく重合単位(Y)と、上記重合単位(F)と、を含むプレポリマーを得る。
続いて、上記重合単位(Y)の−OH基と、上記式(a3)で表される環状カルボン酸無水物と、を反応させて、重合単位(Y)を下記式(a4)で表される重合単位に化学変換する。その後、該重合単位の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
続いて、上記重合単位(Y)の−OH基と、上記式(a3)で表される環状カルボン酸無水物と、を反応させて、重合単位(Y)を下記式(a4)で表される重合単位に化学変換する。その後、該重合単位の−COOH基と、上記金属成分と、を反応させて、重合単位(F)および重合単位(A)を含む本発明の含フッ素重合体を得る。
上記式(a4)中のR、p2およびq2の定義は前述の通りである。
上記の方法においても、重合条件(温度、時間など)は、特に限定されず適宜設定すればよい。また、いずれの方法においても、媒体(水、有機溶剤)、触媒、重合開始剤などを用いてもよい。
本発明における含フッ素重合体は、さらに、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有する重合単位(B)を含むことが好ましい。これにより、生物付着防止効果がより効果的に発現する。特に、重合単位(B)を含むことで、海洋生物、カビや藻の付着がより抑制できる。
重合単位(B)は、側鎖に式−(OCmH2m)n−で表されるポリオキシアルキレン鎖を有する重合単位が好ましい。
mは1〜3の整数である。つまり、−(OCmH2m)−で表されるオキシアルキレン単位は、オキシメチレン単位、オキシエチレン単位、またはオキシプロピレン単位である。mは、生物付着防止性がより優れる点で、2が好ましい。
重合単位(B)は、側鎖に式−(OCmH2m)n−で表されるポリオキシアルキレン鎖を有する重合単位が好ましい。
mは1〜3の整数である。つまり、−(OCmH2m)−で表されるオキシアルキレン単位は、オキシメチレン単位、オキシエチレン単位、またはオキシプロピレン単位である。mは、生物付着防止性がより優れる点で、2が好ましい。
なお、複数の重合単位が含まれる場合、各重合単位中のmの値は、同一であっても異なっていてもよい。つまり、ポリオキシアルキレン単位は、mの値が異なる複数種のオキシアルキレン単位で構成されていてもよい。複数種のオキシアルキレン単位が含まれる場合、それらの結合順は特に制限されず、ランダム型でもブロック型でもよい。また、mが3である場合のオキシアルキレン単位であるオキシプロピレン単位のプロピレン基は、直鎖状(−OCH2CH2CH2−)であっても、分岐鎖状(−OCH2CH(CH3)−、または−OCH(CH3)CH2−)であってもよい。
nは、オキシアルキレン単位の繰り返し単位数を表し、12以上の整数であり、生物付着防止性がより優れる点で、13以上が好ましく、15以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、40以下が好ましく、20以下がより好ましい。
nは、オキシアルキレン単位の繰り返し単位数を表し、12以上の整数であり、生物付着防止性がより優れる点で、13以上が好ましく、15以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、40以下が好ましく、20以下がより好ましい。
また、重合単位(A)が式(A1)または式(A2)で表される重合単位である場合の「L」の炭素数(n1)と、重合単位(B)におけるポリオキシアルキレン鎖の炭素数(n2)との差(n1−n2)は、絶対値で30以下の関係を満たすのが好ましく、絶対値で25以下の関係を満たすのが特に好ましい。前記関係において、重合単位(A)および重合単位(B)の生物付着防止効果が相乗的に機能して、生物付着防止性がより向上する。
重合単位(B)は、下式(b)で表される単量体(以下、単量体(b)とも記す。)に基づく重合単位であるのが好ましい。
式(b) X−Y−(OCmH2m)n−Z
Xは、重合性基であり、CH2=CH−、CH2=CHCH2−、CH3CH=CH−、CH2=C(CH3)−、CH2=CHC(O)O−、CH2=C(CH3)C(O)O−、CH2=CHO−、またはCH2=CHCH2O−が好ましく、フルオロオレフィンとの交互共重合性が良好であり生物付着防止性により優れる点から、CH2=CHO−またはCH2=CHCH2O−がより好ましい。
式(b) X−Y−(OCmH2m)n−Z
Xは、重合性基であり、CH2=CH−、CH2=CHCH2−、CH3CH=CH−、CH2=C(CH3)−、CH2=CHC(O)O−、CH2=C(CH3)C(O)O−、CH2=CHO−、またはCH2=CHCH2O−が好ましく、フルオロオレフィンとの交互共重合性が良好であり生物付着防止性により優れる点から、CH2=CHO−またはCH2=CHCH2O−がより好ましい。
Yは、重合性基とポリオキシアルキレン鎖を連結する2価の連結基であり、炭素数1〜20の2価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜20の2価の飽和炭化水素基がより好ましい。2価の連結基は、直鎖状の基、分岐状の基または環状構造を含む基であってもよく、塗膜においてポリオキシアルキレン鎖を表面に配向させて、生物付着防止性をより効果的に発現させる観点から、環状構造を含む基が好ましい。
Zは、ヒドロキシ基、炭素数1〜20のアルコキシ基またはフェノキシ基であり、ヒドロキシ基、メトキシ基、またはエトキシ基が好ましく、生物付着防止性により優れる観点から、ヒドロキシ基がより好ましい。
単量体(1)の具体例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
単量体(1−1):CH2=CHO−CaH2a−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−2):CH2=CHCH2O−CbH2b−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−3):CH2=CHOCH2−cycloC6H10−CH2−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−4):CH2=CHCH2OCH2−cycloC6H10−CH2−(OCmH2m)n−Z
それぞれの式中、aは1〜10の整数であり、bは1〜10の整数である。m、nおよびZの定義は、上述の通りである。なお、−cycloC6H10−は、シクロへキシレン基を示し、(−cycloC6H10−)の結合部位は、1,4−、1,3−、1,2−があり、通常は1,4−が採用される。
単量体(1−1):CH2=CHO−CaH2a−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−2):CH2=CHCH2O−CbH2b−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−3):CH2=CHOCH2−cycloC6H10−CH2−(OCmH2m)n−Z
単量体(1−4):CH2=CHCH2OCH2−cycloC6H10−CH2−(OCmH2m)n−Z
それぞれの式中、aは1〜10の整数であり、bは1〜10の整数である。m、nおよびZの定義は、上述の通りである。なお、−cycloC6H10−は、シクロへキシレン基を示し、(−cycloC6H10−)の結合部位は、1,4−、1,3−、1,2−があり、通常は1,4−が採用される。
重合単位(B)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0.4モル%以上が好ましく、生物付着防止性がより優れる点から、1.5モル%以上がより好ましく、2モル%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
本発明における含フッ素重合体は、重合単位(F)、重合単位(A)および重合単位(B)以外の重合単位を含んでいてもよい。
該重合単位としては、以下の重合単位(I)〜重合単位(III)が挙げられる。
該重合単位としては、以下の重合単位(I)〜重合単位(III)が挙げられる。
重合単位(I)は、側鎖に環式炭化水素基を有する単量体(i)に基づく重合単位である。
単量体(i)の具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルが挙げられる。
重合単位(I)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0〜45モル%が好ましく、0〜30モル%が特に好ましい。
単量体(i)の具体例としては、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルが挙げられる。
重合単位(I)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0〜45モル%が好ましく、0〜30モル%が特に好ましい。
重合単位(II)は、側鎖に架橋性基を有する単量体(ii)に基づく重合単位である。なお、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を有し、かつ、ヒドロキシ基を有する重合単位は、上述した「重合単位(B)」に該当し、重合単位(II)には該当しない。
架橋性基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基または加水分解性シリル基が好ましい。本発明における含フッ素重合体が架橋性基を有する場合、対応する架橋剤を本発明の塗料に含ませることで、塗膜の硬化が可能により、塗膜物性(海洋生物付着防止性、耐候性、耐水性、耐塩水性、密着性等。)の調整がさらに容易になる。
架橋性基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基または加水分解性シリル基が好ましい。本発明における含フッ素重合体が架橋性基を有する場合、対応する架橋剤を本発明の塗料に含ませることで、塗膜の硬化が可能により、塗膜物性(海洋生物付着防止性、耐候性、耐水性、耐塩水性、密着性等。)の調整がさらに容易になる。
単量体(ii)の具体例としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルが挙げられる。
重合単位(II)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0〜20モル%が好ましく、0〜15モル%が特に好ましい。
重合単位(II)の含有量は、含フッ素重合体が有する全重合単位(100モル%)のうち、0〜20モル%が好ましく、0〜15モル%が特に好ましい。
重合単位(III)は、重合単位(F)、重合単位(A)、重合単位(B)、重合単位(I)、および重合単位(II)のいずれにも属さない重合単位であり、アルキルビニルエーテル(ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル等。)、アルキルアリルエーテル(エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等。)、カルボン酸ビニルエステル(酢酸、酪酸、ピバリン酸、プロピオン酸等のビニルエステル。)、カルボン酸アリルエステル(酢酸、酪酸、ピバリン酸、プロピオン酸等のアリルエステル。)、エチレン、プロピレン、またはイソブチレンに基づく重合単位が挙げられる。
重合単位(III)の含有量は、含フッ素重合体が有する全構成単位(100モル%)のうち、0〜50モル%が好ましく、0〜40モル%がさらに好ましい。
本発明における含フッ素重合体は、含フッ素重合体の全重合単位(100モル%)に対して、重合単位(F)/重合単位(A)/重合単位(B)の含有量が、それぞれ、20〜70モル%/0.5〜20モル%/0〜15モル%であるのが好ましい。
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、30000〜200000が好ましく、50000〜180000がより好ましい。Mnは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される数平均分子量である。
含フッ素重合体の数平均分子量(Mn)は、30000〜200000が好ましく、50000〜180000がより好ましい。Mnは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される数平均分子量である。
本発明の塗料中の含フッ素重合体の含有量は、塗料中の全固形成分(100質量%)に対して、50〜100質量%が好ましく、75〜99質量%が特に好ましい。含フッ素重合体の含有量が上記範囲内にあることで、塗膜の密着性がより向上し、生物付着防止性、塗膜の耐水性、耐塩水性および耐候性がより優れる。なお、以下に述べる、本発明の塗料の態様において、有機溶媒と水は固形成分に該当しない。
本発明の塗料において、含フッ素重合体は、粉体(固体)の状態であってもよく、有機溶媒に溶解した溶液の状態であってもよく、水に粒子状に分散した分散液(水性分散液)の状態であってもよく、以下の塗膜物性の観点から、水性分散液の状態が好ましい。
この場合、水性分散液中の含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、200nm以下が好ましい。この場合、本発明の塗料から形成される塗膜の耐水性がより優れることを、本発明者らは知見している。その理由は必ずしも明確ではないが、塗膜において、含フッ素重合体の粒子同士が密にパッキングし、塗膜中でのピンホールの発生が抑制され、結果として塗膜の耐水性が向上するためと考えられる。
この場合、水性分散液中の含フッ素重合体の粒子の平均粒子径は、200nm以下が好ましい。この場合、本発明の塗料から形成される塗膜の耐水性がより優れることを、本発明者らは知見している。その理由は必ずしも明確ではないが、塗膜において、含フッ素重合体の粒子同士が密にパッキングし、塗膜中でのピンホールの発生が抑制され、結果として塗膜の耐水性が向上するためと考えられる。
含フッ素重合の粒子の平均粒子径は、塗膜の耐水性がより優れる点で、200nm以下が好ましく、150nm以下が特に好ましい。下限は特に制限されないが、50nm以上の場合が多い。なお、本明細書においては、ELS−8000(大塚電子株式会社製)を用いて動的光散乱法により求められるD50の値を、平均粒子径とする。D50は、動的光散乱法により測定した粒子の粒度分布において、小さな粒子側から起算した体積累計50体積%の粒子直径を表す(以下同様。)。
また、水性分散液における水の含有量は、特に制限されないが、水性分散液(塗料)の全質量に対して、30〜85質量%が好ましく、35〜75質量%がより好ましい。
また、本発明の塗料は、必要に応じて、他の添加剤(例えば、防カビ剤、防藻剤、架橋剤、造膜助剤、増粘剤、消泡剤、光安定剤、意匠剤、表面調整剤等。)を含んでいてもよい。
本発明によれば、本発明の塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する、物品が提供される。
本発明の物品としては、船舶、海上構造物もしくは海中構造物、湿潤環境下もしくは接水環境下で使用される物品、食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品などが挙げられ、本発明の塗料が菌体(例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの細菌類や、カビ、キノコなどの菌類)の付着防止により効果的であることから、食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品が好ましい。
食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品は、特に限定されず、浴槽、天井パネル、壁パネル、床パン、ドア、水栓、排水ユニット、換気扇、鏡、シンク、便器、ロータンク、および、手洗器等の屋内使用物、上水管および下水管等の地下構造物、ならびに、貯水槽および建築物等の屋外構造物等が挙げられる。なお、上記物品の材質も、特に限定されず、金属、セラミックス、樹脂、ゴム、石材、ガラス、および、コンクリートのいずれであってもよい。
形成される塗膜の厚みは、10〜100μmが好ましい。塗膜の厚みが下限値以上であれば、塗膜の耐水性がより優れ、上限値以下であれば、塗膜の耐候性がより優れる。
本発明の物品としては、船舶、海上構造物もしくは海中構造物、湿潤環境下もしくは接水環境下で使用される物品、食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品などが挙げられ、本発明の塗料が菌体(例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌などの細菌類や、カビ、キノコなどの菌類)の付着防止により効果的であることから、食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品が好ましい。
食品加工工場もしくは医療施設で使用される物品は、特に限定されず、浴槽、天井パネル、壁パネル、床パン、ドア、水栓、排水ユニット、換気扇、鏡、シンク、便器、ロータンク、および、手洗器等の屋内使用物、上水管および下水管等の地下構造物、ならびに、貯水槽および建築物等の屋外構造物等が挙げられる。なお、上記物品の材質も、特に限定されず、金属、セラミックス、樹脂、ゴム、石材、ガラス、および、コンクリートのいずれであってもよい。
形成される塗膜の厚みは、10〜100μmが好ましい。塗膜の厚みが下限値以上であれば、塗膜の耐水性がより優れ、上限値以下であれば、塗膜の耐候性がより優れる。
本発明の塗料を用いて形成された塗膜は、物品の最表面に形成されていればよい。つまり、本発明の塗料は、物品の表面に直接塗布されてもよく、下塗り層を介して最表面に塗布されていてもよい。
また、対象物への塗料の塗工方法は、特に制限されず、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター等の塗工装置を用いて行う方法が挙げられる。
なお、塗膜中には、含フッ素重合体が架橋した架橋構造が含まれていてもよい。
また、対象物への塗料の塗工方法は、特に制限されず、刷毛、ローラー、ディッピング、スプレー、ロールコーター、ダイコーター、アプリケーター、スピンコーター等の塗工装置を用いて行う方法が挙げられる。
なお、塗膜中には、含フッ素重合体が架橋した架橋構造が含まれていてもよい。
以上のように、本発明においては、物品の表面に、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する塗料の塗膜を形成して、物品に生物が付着するのを防止する方法も提供できる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、後述する表中における各成分の配合量は、質量基準を示す。
実施例においては、以下の原料を用いた。
実施例においては、以下の原料を用いた。
含フッ素重合体の製造では、以下の原料を用いた。
CTFE:クロロトリフルオロエチレン。
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル。
2−EHVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル。
UDA−Zn:ウンデシレン酸亜鉛、CH2=CH(CH2)8COO−(Zn2+)1/2。
ノニオン性界面活性剤:日本乳化剤社製のNewcol−2320(登録商標)。
アニオン性界面活性剤:日光ケミカルズ社製のラウリル硫酸ナトリウム。
CTFE:クロロトリフルオロエチレン。
CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル。
2−EHVE:2−エチルヘキシルビニルエーテル。
UDA−Zn:ウンデシレン酸亜鉛、CH2=CH(CH2)8COO−(Zn2+)1/2。
ノニオン性界面活性剤:日本乳化剤社製のNewcol−2320(登録商標)。
アニオン性界面活性剤:日光ケミカルズ社製のラウリル硫酸ナトリウム。
[調製例1] 含フッ素重合体(1)の製造方法
内容積2.5Lのステンレス鋼製撹拌機付き耐圧反応器(耐圧硝子工業社製)中に、CHVE(259g)、EVE(107g)、UDA−Zn(64.3g)、イオン交換水(1031g)、炭酸カリウム(2.1g)、アニオン性界面活性剤(2.1g)を仕込み、耐圧反応器を氷で冷却して、窒素ガスを耐圧反応器内が0.7MPaになるよう加圧し、脱気した。この加圧脱気を2回繰り返し、耐圧反応器内を0.01MPaまで脱気して溶存空気を除去した後、耐圧反応器内にCTFE(434g)を仕込み、60℃で24時間、重合反応を行った。重合反応後、耐圧反応器を60℃から20℃まで冷却し、固形分濃度49.7質量%である含フッ素重合体(1)を含む分散液を得た。
含フッ素重合体(1)の各重合単位の含有量(CTFE/UDA−Zn/CHVE/EVE)は、50/2.0/28/20(モル%)であった。なお、分散液において、含フッ素重合体(1)は粒子状に分散してなり、水中においてその平均粒子径が110nmであった。
内容積2.5Lのステンレス鋼製撹拌機付き耐圧反応器(耐圧硝子工業社製)中に、CHVE(259g)、EVE(107g)、UDA−Zn(64.3g)、イオン交換水(1031g)、炭酸カリウム(2.1g)、アニオン性界面活性剤(2.1g)を仕込み、耐圧反応器を氷で冷却して、窒素ガスを耐圧反応器内が0.7MPaになるよう加圧し、脱気した。この加圧脱気を2回繰り返し、耐圧反応器内を0.01MPaまで脱気して溶存空気を除去した後、耐圧反応器内にCTFE(434g)を仕込み、60℃で24時間、重合反応を行った。重合反応後、耐圧反応器を60℃から20℃まで冷却し、固形分濃度49.7質量%である含フッ素重合体(1)を含む分散液を得た。
含フッ素重合体(1)の各重合単位の含有量(CTFE/UDA−Zn/CHVE/EVE)は、50/2.0/28/20(モル%)であった。なお、分散液において、含フッ素重合体(1)は粒子状に分散してなり、水中においてその平均粒子径が110nmであった。
[調製例2] 含フッ素重合体(2)の製造方法
内容積2.5Lのステンレス鋼製撹拌機付き耐圧反応器(耐圧硝子工業社製)中に、CHVE(443.4g)、2−EHVE(230g)、イオン交換水(1280g)、炭酸カリウム(3.0g)、過硫酸アンモニウム(5.4g)、ノニオン性界面活性剤(33g)、アニオン性界面活性剤(1.4g)を仕込み、耐圧反応器を氷で冷却して、窒素ガスで耐圧反応器を0.4MPaGになるよう加圧し脱気した。この加圧脱気を2回繰り返した。耐圧反応器を0.095MPaGまで脱気して溶存空気を除去した後、耐圧反応器内にCTFE(580g)を仕込み、50℃で24時間、重合反応を行った。重合反応後、耐圧反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、固形分濃度50質量%である含フッ素重合体(2)を含む分散液を得た。含フッ素重合体(2)の各重合単位の含有量(CTFE/CHVE/2−EHVE)は、50/35.25/14.75(モル%)であった。なお、分散液において、含フッ素重合体(2)は粒子状に分散してなり、水中においてその平均粒子径が140nmであった。
内容積2.5Lのステンレス鋼製撹拌機付き耐圧反応器(耐圧硝子工業社製)中に、CHVE(443.4g)、2−EHVE(230g)、イオン交換水(1280g)、炭酸カリウム(3.0g)、過硫酸アンモニウム(5.4g)、ノニオン性界面活性剤(33g)、アニオン性界面活性剤(1.4g)を仕込み、耐圧反応器を氷で冷却して、窒素ガスで耐圧反応器を0.4MPaGになるよう加圧し脱気した。この加圧脱気を2回繰り返した。耐圧反応器を0.095MPaGまで脱気して溶存空気を除去した後、耐圧反応器内にCTFE(580g)を仕込み、50℃で24時間、重合反応を行った。重合反応後、耐圧反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、固形分濃度50質量%である含フッ素重合体(2)を含む分散液を得た。含フッ素重合体(2)の各重合単位の含有量(CTFE/CHVE/2−EHVE)は、50/35.25/14.75(モル%)であった。なお、分散液において、含フッ素重合体(2)は粒子状に分散してなり、水中においてその平均粒子径が140nmであった。
含フッ素重合体(1)および(2)の組成を下記表1に示す。
<生物付着防止塗料の製造>
[製造例1]
調製例1で得た、含フッ素重合体(1)を含む分散液(固形分濃度49.7質量%)(100.0g)に、造膜助剤である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノ(2−メチルプロパネート)(7.5g)、増粘剤であるレオレート288(登録商標)(エレメンティスジャパン社製)(0.1g)を加え、よく混合して、生物付着防止塗料(1)を得た。
[製造例1]
調製例1で得た、含フッ素重合体(1)を含む分散液(固形分濃度49.7質量%)(100.0g)に、造膜助剤である2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオールモノ(2−メチルプロパネート)(7.5g)、増粘剤であるレオレート288(登録商標)(エレメンティスジャパン社製)(0.1g)を加え、よく混合して、生物付着防止塗料(1)を得た。
含フッ素重合体(1)を含む分散液(固形分濃度49.7質量%)を、含フッ素重合体(2)を含む分散液(固形分濃度50.0質量%)に変更した以外は、全て同様の方法により、生物付着防止塗料(2)を得た。
<生物付着防止性の評価A>
以下の手順で、試験板を作製した。
アルミ基材の両面に、エポキシ樹脂系塗料(中国塗料社製。製品名「SEAJET 013 主剤」と製品名「SEAJET 013 硬化剤」を、質量比4:1で混合した塗料。)を、乾燥塗膜の膜厚が約60μmになるように刷毛塗りし、常温で1週間硬化させた。つぎに、アルミ基材の片面に、生物付着防止塗料(1)を、乾燥塗膜の膜厚が約30μmになるようにアプリケーターで塗装し、常温で2週間乾燥することで、表面に含フッ素重合体(1)を構成成分とする塗膜を有する試験板(1)を作製した。生物付着防止塗料(2)に関しても同様にして、試験板(2)を作製した。
得られた試験板(1)、(2)のそれぞれを、海中浸漬(水深1m)して、4か月後の貝類の付着状態を目視観察した。なお、海中浸漬場所は瀬戸内海であり、海中浸漬に際して、試験板は塗膜側が南を向くように設置した。
評価基準は以下の通りであり、生物付着防止性の評価A(海中浸漬試験)の結果を表2に示す。
○:塗膜表面への貝類の付着はなかった。
△:塗膜表面の0%超20%以下の面積に、貝類の付着が認められた。
×:塗膜表面の20%超の面積に、貝類の付着が認められた。
以下の手順で、試験板を作製した。
アルミ基材の両面に、エポキシ樹脂系塗料(中国塗料社製。製品名「SEAJET 013 主剤」と製品名「SEAJET 013 硬化剤」を、質量比4:1で混合した塗料。)を、乾燥塗膜の膜厚が約60μmになるように刷毛塗りし、常温で1週間硬化させた。つぎに、アルミ基材の片面に、生物付着防止塗料(1)を、乾燥塗膜の膜厚が約30μmになるようにアプリケーターで塗装し、常温で2週間乾燥することで、表面に含フッ素重合体(1)を構成成分とする塗膜を有する試験板(1)を作製した。生物付着防止塗料(2)に関しても同様にして、試験板(2)を作製した。
得られた試験板(1)、(2)のそれぞれを、海中浸漬(水深1m)して、4か月後の貝類の付着状態を目視観察した。なお、海中浸漬場所は瀬戸内海であり、海中浸漬に際して、試験板は塗膜側が南を向くように設置した。
評価基準は以下の通りであり、生物付着防止性の評価A(海中浸漬試験)の結果を表2に示す。
○:塗膜表面への貝類の付着はなかった。
△:塗膜表面の0%超20%以下の面積に、貝類の付着が認められた。
×:塗膜表面の20%超の面積に、貝類の付着が認められた。
<生物付着防止性の評価B>
生物付着防止性の評価Aで作製した試験板(1)および(2)について、JIS Z 2911に準拠した、寒天培地法により、塗膜表面への藻の発生を確認した。使用した藻の種類は、クロレラ属とオシラトリア属を使用した。評価基準は以下の通りであり、生物付着防止性の評価B(藻の発生試験)の結果を表2に示す。
○:塗膜表面への藻の付着はなかった。
△:塗膜表面の0%超20%以下の面積に、藻の付着が認められた。
×:塗膜表面の20%超の面積に、藻の付着が認められた。
生物付着防止性の評価Aで作製した試験板(1)および(2)について、JIS Z 2911に準拠した、寒天培地法により、塗膜表面への藻の発生を確認した。使用した藻の種類は、クロレラ属とオシラトリア属を使用した。評価基準は以下の通りであり、生物付着防止性の評価B(藻の発生試験)の結果を表2に示す。
○:塗膜表面への藻の付着はなかった。
△:塗膜表面の0%超20%以下の面積に、藻の付着が認められた。
×:塗膜表面の20%超の面積に、藻の付着が認められた。
表2の評価結果に示すように、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する、生物付着防止塗料は、生物付着防止性に優れていることが示された。
Claims (8)
- 生物付着を防止するために物品の表面に塗布される生物付着防止塗料であって、
フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する、生物付着防止塗料。
前記式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
前記式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。 - 前記重合単位(A)が、式(A1)または式(A2)で表される重合単位である、請求項1に記載の生物付着防止塗料。
前記式(A1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
前記式(A2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
前記式(A1)および前記式(A2)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
前記式(A1)および前記式(A2)中、Lは、2価の有機基を表す。 - 前記式(A1)および前記式(A2)において、Lの炭素数が3〜16である、請求項2に記載の生物付着防止塗料。
- 前記含フッ素重合体が、さらに、側鎖にポリオキシアルキレン鎖を含む単量体に基づく重合単位(B)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物付着防止塗料。
- さらに、水を含み、前記含フッ素重合体が粒子状に分散してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物付着防止塗料。
- 前記含フッ素重合体の含有量が、全固形成分に対して、50〜90質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生物付着防止塗料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の生物付着防止塗料を用いて形成された塗膜を表面に有する、物品。
- 物品の表面に、フルオロオレフィンに基づく重合単位(F)と、式(a1)または式(a2)で表される基を側鎖に有する重合単位(A)と、を含む含フッ素重合体を含有する塗料の塗膜を形成して、物品に生物が付着するのを防止する方法。
前記式(a1)中、M1は、アルカリ金属原子または1価の遷移金属原子を表す。
前記式(a2)中、M2は、アルカリ土類金属原子または2価の遷移金属原子を表す。
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