以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のバスリング取付け構造を備えるモータハウジングの斜視図である。図に示す略円筒形状に形成されたモータハウジング10は、図示しない種々の部品及び装置とともに回転電機(モータ)を構成する。モータハウジング10が組み込まれるモータは、車両等の各種装置の負荷状態に応じて電動機又は発電機として機能する。
モータハウジング10の内面には環状のステータ12が設けられる。また、モータハウジング10内において、ステータ12の内周側にはロータ14が回転自在に収容されている。さらに、モータハウジング10の上端のステータ12の外周側には、バスリングアセンブリ18が配置されている。
モータハウジング10の上端面には、切り欠き10aが円周方向に複数個所(図では8箇所)設けられている。各切り欠き10aには、ボルト取付け穴10abが形成されている。この各切り欠き10aの一部には、バスリングアセンブリ18をモータハウジング10に固定すべく、それらのボルト取付け穴10abを介して後述する主バスリング固定具24の被固着部24bfがボルト28によって締結されている。
ステータ12は磁性材料で形成されるとともに、その周方向に複数のティースを有している。そして、周方向の各ティースには、U相、W相、V相、及び中性相の各巻線がそれぞれ複数回巻回されることによって、それぞれステータコイル20を構成している。
ロータ14は中心にロータ軸22を備えている。また、ロータ14には、ステータコイル20に対向する外周部に、図示しない永久磁石が設けられている。
次に、バスリングアセンブリ18について説明する。
図2Aは、バスリングアセンブリ18の構成を説明する図であり、図2Bは、バスリングアセンブリ18の分解図である。さらに、図2Cはバスリングアセンブリ18の要部拡大図である。
図示のように、バスリングアセンブリ18は、U相、W相、V相、及び中性相の各巻線にそれぞれ対応する4つのバスリング16U,16W,16V,16Gを備えている。各バスリング16U,16W,16V,16Gは略円環状に形成されている。
中性相に対応するバスリング16G以外のバスリング16U,16W,16Vは、それらの周方向における一部箇所に電源接続端子としての給電部16Ua,16Va,16Waを備えている。
給電部16Ua,16Va,16Waは、バスリング16U,16W,16Vの環状部分16Ub,16Wb,16Vbから円環の外側に突出するように形成されている。この給電部16Ua,16Va,16Waは、図示しない外部回路との間で電流の入出力を行う端子として機能する。
さらに、全てのバスリング16U,16W,16V,16Gには、それぞれの環状部分16Ub,16Wb,16Vb,16Gbから該環状の内側に向けて突出するように屈曲形成されたステータコイル接続端子としての巻線接続部16Uc,16Wc,16Vc,16Gcが設けられている。
巻線接続部16Uc,16Wc,16Vcには、U相、W相、及びV相の各巻線の引き出し線の一方の端部(図6Bのステータコイル接続端部Ce)がそれぞれ接続される。また、巻線接続部16Gcには、U相、W相、及びV相の各巻線の引き出し線の他方の端部が接続される。
巻線接続部16Uc,16Wc,16Vc,16Gcは、いずれも円周方向に沿って複数設けられている。特に、本実施形態では、巻線接続部16Uc,16Wc,16Vcが、円周方向において等間隔に8個設けられている(特に図2B参照)。また、巻線接続部16Gcは、巻線接続部16Uc,16Wc,16Vcの個数の合計である24個のそれぞれに対応し、円周方向において等間隔に24個設けられている。
各巻線接続部16Uc,16Wc,16Vc,16Gcは相互に略同じ形状であるので、代表して各巻線接続部16Ucの形状について説明する。
巻線接続部16Ucは、環状部分16Ubから環状の中心軸線方向に沿って立ち上がる一対の立ち上がり部Pと、立ち上がり部Pと、立ち上がり部Pから環状の中心に向けて環状の直径方向に延設される巻線挿入部Qとを備えている。立ち上がり部Pは環状部分16Ubに対してほぼ90度屈曲し、巻線挿入部Qは立ち上がり部Pに対してほぼ90度に屈曲している。
一対の立ち上がり部Pは、互いに接触して接合されている。巻線挿入部Qは、接合されている立ち上がり部Pの端部から、互いに離間してリングを形成するようにして巻線挿入孔Qhを備える。巻線挿入部Qは、巻線挿入孔Qhにステータコイル接続端部Ceが挿入された状態で両側から加締められることで、当該ステータコイル接続端部Ceに接続固定される(後述の図6B参照)。
なお、図に示すように、各バスリング16U,16W,16V,16Gの巻線挿入孔Qhは、その平面視において、円環の中心位置から当該巻線挿入部Qの径方向先端までの距離が略同一となるように形成されている。すなわち、各バスリング16U,16W,16V,16Gの巻線挿入部Qの径方向先端を結ぶと、一つの円が形成される。
このため、巻線挿入孔Qhを有する巻線挿入部Qは、直径が最も大きいバスリング16Uが、円形の中心に向けて最も長く突出し、巻線挿入孔Qhの径方向長さが最も長くなる。そして、直径の大きい順のバスリング16W,16V,16Gのそれぞれの巻線挿入部Qにおける円形中心への突出長さは、この順で漸次短く形成されることとなる。
また、最も外側に配置されるバスリング16U及びその内側に配置されるバスリング16Wには、環状部分16Ub,16Wbが他のバスリングと干渉することを避けるために、逃げ屈曲部16Ud,16Wdがそれぞれ形成されている。
具体的に、図2Cに示されているように、最も外側に配置されるバスリング16Uの逃げ屈曲部16Udは、2つのバスリング16U,16Wの給電部16Ua,16Waの基部周辺で離間してこれを避けるように屈曲している。また、バスリング16Uの内側に位置するバスリング16Wは、バスリング16Vの給電部16Vaの基部周辺で離間してこれを避けるように屈曲して逃げ屈曲部16Wdを形成している。なお、バスリング16G及びバスリング16Vには逃げ屈曲部は形成されていない。
すなわち、同心円状に配置される複数の各バスリング16では、外側に位置するものが内側に位置するものの給電部を避けるような逃げ屈曲部が形成されることとなる。
また、バスリング16U,16W,16V,16Gは銅などの導電性材料によって形成されており、16U,16W,16V,16Gの順で順次円径が小さくなるように形成されている。
したがって、環状部分16Ub,16Wb,16Vb,16Gbは、バスリング16U,16W,16V,16Gがバスリングアセンブリ18を構成するように配置された状態で、バスリング16Uの内側にバスリング16Wが隣接し、バスリング16Wの内側にバスリング16Vが隣接し、バスリング16Vの内側にバスリング16Gが隣接する。これにより、バスリング16U,16W,16V,16Gが同心円方向に並んだ状態でバスリングアセンブリ18が構成されることとなる。
さらに、バスリングアセンブリ18は、主バスリング固定具24を有している。主バスリング固定具24は、樹脂や絶縁ゴム等の絶縁性材料で形成されている。主バスリング固定具24は、バスリング16U,16W,16V,16Gの周上において周方向領域の一部に亘る大きさに形成されている。
また、本実施形態において、主バスリング固定具24は、バスリング16U,16W,16V,16Gの周方向において所定間隔ごとに複数個(図では5個)取付けられている。
そして、主バスリング固定具24は、バスリング16U,16W,16V,16Gが上述のように同心円状に並ぶように、バスリング16U,16W,16V,16Gの相対位置を固定する機能を果たす。主バスリング固定具24の構成についてより詳細に説明する。
図3A〜図3Cは、主バスリング固定具24の構成を説明する図である。特に、図3Aは、主バスリング固定具24を構成する第1分割体と第2分割体が分離した状態(相互開放状態)を示している。また、図3Bは、第1分割体と第2分割体が結合した状態(相互閉塞状態)を示している。さらに、図3Cは、第1分割体と第2分割体が結合してバスリング16U,16W,16V,16G(破線で示す)が位置決め固定される状態を示している。
図示のように、主バスリング固定具24は、それぞれ絶縁性材料で形成される第1分割体24a及び第2分割体24bにより構成されている。
第1分割体24aには、断面略円弧状の複数の第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUが形成されている。第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUは、この順で第1分割体24aの長手方向(図の矢印A1方向)に沿って並んで配置されている。
第1凹部24aGは、バスリング16Gの環状部分16Gbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。また、第1凹部24aVは、バスリング16Vの環状部分16Vbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。さらに、第1凹部24aWは、バスリング16Wの環状部分16Wbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。また、第1凹部24aUは、バスリング16Uの環状部分16Ubの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。
そして、第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUは、第1分割体24aと第2分割体24bが分離した状態で、それぞれ、環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubを受け入れ可能である。
また、第1分割体24aには、その長手方向(図3Aの矢印A1に沿った方向)の両端の下端部に、一対の爪掛止凹部24at,24atが形成されている。この一対の爪掛止凹部24at,24atには、後述する第2分割体24bの一対の突出爪24bt,24btがそれぞれ掛合可能である。
一方、第2分割体24bには、断面略円弧状の複数の第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUが形成されている。第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUは、この順で第2分割体24bの長手方向(図の矢印A1方向)に沿って並んで配置されている。
第2凹部24bGは、バスリング16Gの環状部分16Gbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。また、第2凹部24bVは、バスリング16Vの環状部分16Vbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。さらに、第2凹部24bWは、バスリング16Wの環状部分16Wbの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。また、第2凹部24bUは、バスリング16Uの環状部分16Ubの断面形状に合った断面略円弧形状を有する。
そして、第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUは、第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUに環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubが受け入れられている状態で第1分割体24aと第2分割体24bを結合させることで、環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubを受け入れつつ第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUに対向する。
したがって、本実施形態では、第1分割体24aと第2分割体24bの結合状態で、第1凹部24aG,24aV,24aW,24aU及び第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUによってバスリング配列位置決め部としてのバスリング保持孔が形成されることとなる(図3B参照)。
また、第2分割体24bには、その長手方向(図3Aの矢印A1に沿った方向)の両端部に一対の突出爪24bt,24btが形成されている。一対の突出爪24bt,24btは、図中下方(矢印B1方向)に延出するように形成されている。この一対の突出爪24bt,24btには、それぞれの延出方向の先端において互い近づくように突出するフランジ部24bt1,24bt1が形成されている。
そして、第1分割体24aと第2分割体24bの結合状態では、この一対の突出爪24bt,24btのフランジ部24bt1,24bt1が、第1分割体24aの一対の爪掛止凹部24at,24atに嵌合する。すなわち、第1分割体24aの一対の爪掛止凹部24at,24at及び第2分割体24bの一対の突出爪24bt,24btにより、これらを相互に固定する結合固定部が構成される。
ここで、各バスリング16G,16V,16W,16Uが受け入れられた第2分割体24bに第1分割体24aを結合させる際には、例えば、環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubが各第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUに受け入れられた状態の第1分割体24aに、第2分割体24bを被せるように押し込む。
この押し込み動作の過程においては、突出爪24bt,24btのフランジ部24bt1,24bt1は、第1分割体24aの長手方向の両側端面24aA,24aAに接触してこれらが相互に離間する方向に押圧される。したがって、突出爪24bt,24btは、両側端面24aA,24aAにより外側に向かって押し広げられる。
そして、第1分割体24aに第2分割体24bが完全に押し込まれた状態となると、フランジ部24bt1,24bt1が爪掛止凹部24at,24atに掛止され、第1分割体24aと第2分割体24bが相互に結合した状態となる。
なお、この状態においては、第1分割体24aの各第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUが、第2分割体24bの各第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUと対向してバスリング保持孔を形成するので、各バスリング16の環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubはバスリング保持孔の縁部に拘束されて挟持固定される(図3C等参照)。
これにより、環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubが各第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUと各第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUの間で位置決め固定される。すなわち、各バスリング16G,16V,16W,16Uの相互位置を一括して固定するように主バスリング固定具24が取付けられることとなる。
特に、この状態で各バスリング16G,16V,16W,16Uは、円環の同心円方向(図3Cの矢印A1方向)において相互に所定距離D離間した状態で位置決めされ、且つ各環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubの間に存在する主バスリング固定具24の構成材料によって相互に絶縁状態が確保される。
さらに、第2分割体24bは、モータハウジング10に取付けられる被固着部24bfを有している。被固着部24bfは、第2分割体24bの長手方向A1における先端に延出するように形成されている。すなわち、被固着部24bfは、全体として外形が略円形に形成されており、中心にボルト挿通孔24bf1を有している。
本実施形態においては、少なくとも主バスリング固定具24によってバスリング16G,16V,16W,16Uが位置決めされた状態で、ボルト挿通孔24bf1にボルト28が挿入されて、モータハウジング10の切り欠き10aに形成されたボルト取付け穴10abに締結される。
さらに、図2A〜図2Cに戻り、本実施形態におけるバスリングアセンブリ18は、主バスリング固定具24とは別に、補助バスリング固定具26を有している。
図4A及び図4Bは、補助バスリング固定具26の構成を説明する図である。図示のように、補助バスリング固定具26は、主バスリング固定具24と同様に、絶縁性材料で形成された第1分割体26a及び第2分割体26bにより構成されている。なお、本実施形態において、補助バスリング固定具26は、主バスリング固定具24の第2分割体24bにおける被固着部24bfに相当する構成を備えていない点を除いて、主バスリング固定具24と略同一の構成を有している。
すなわち、第1分割体26aには、断面略円弧状の第1凹部26aG,26aV,26aW,26aUが形成されている。また、第2分割体26bには、断面略円弧状の第2凹部26bG,26bV,26bW,26bUが形成されている。したがって、これらは、第1分割体26aと第2分割体26bの結合状態で相互に対向して、主バスリング固定具24と同様のバスリング保持孔を形成する。
そして、補助バスリング固定具26は、主バスリング固定具24と同様に、環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubを各第1凹部26aG,26aV,26aW,26aUと各第2凹部26bG,26bV,26bW,26bUによって形成されるバスリング保持孔の縁部で拘束し位置決めする。すなわち、各バスリング16G,16V,16W,16Uの相互位置を一括して固定するように補助バスリング固定具26が取付けられることとなる。
本実施形態では、上述のように主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26がバスリング16に取付けられることで、バスリングアセンブリ18が構成される。以下では、主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26を、バスリング16U,16W,16V,16Gに取付ける工程をより詳細に説明する。
図5A〜図5Hはこの取付けを説明するための図である。なお、図5C〜図5Hにおいては、バスリング16U,16W,16V,16Gの環状部分16Ub,16Wb,16Vb,16Gbを一点鎖線で示している。また、本実施形態において、主バスリング固定具24のバスリング16U,16W,16V,16Gへの取付けにあたっては、作業時に主バスリング固定具24を支持させる治具40が用いられる。
先ず、図5A及び図5Bに示すように、主バスリング固定具24の第1分割体24aの基部24aBを、治具40における分割体支持凹部40aにセットする。
次に、図5Cに示すように、第1凹部24aGにバスリング16Gの環状部分16Gbをセットする。具体的に、バスリング16Gの環状部分16Gbをセットする作業は、環状のバスリング16Gの環状部分16Gbの一部を第1凹部24aGに上方から載置することでセットする。
同様に、図5D〜図5Fに示すように、第1凹部24aV、第1凹部24aW、及び第1凹部24aUに、この順で順次、バスリング16Vの環状部分16Vb、バスリング16Wの環状部分16Wb、及びバスリング16Uの環状部分16Ubをそれぞれ、上方から載置することでセットする。
特に、本実施形態では、図5C〜図5Fで示したように、内径が小さい順に環状部分16Gb、環状部分16Vb、環状部分16Wb、及び環状部分16Ubを、第1凹部24aG、第1凹部26aV、第1凹部26aW、及び第1凹部26aUに順次載置するので、当該載置作業の際において16Ga,16Va,16Wa,16Uaが相互に干渉することによる作業の煩雑化を抑制できる。
次に、図5Gに示すように、第1凹部26aG,26aV,26aW,26aUに環状部分16Gb,16Vb,16Wb,16Ubをセットした状態で、第2分割体24bを図の矢印で示す方向から第1分割体24aに対して被せるように押し込む。
既に説明したように、本実施形態では、この押し込み動作の過程において、第2分割体24bに形成された突出爪24bt,24btが、第1分割体24aの両側端面24aA,24aAにより外側に向かって押し広げられた状態なる。
そして、図5Hに示すように、第2分割体24bが第1分割体24aに完全に被せられると、両側端面24aA,24aAによる突出爪24bt,24btに対する押圧状態が解除される。したがって、第2分割体24bの突出爪24bt,24btのフランジ部24bt1,24bt1が、第1分割体24aの爪掛止凹部24at,24atに掛止される。
以上、説明した方法により、主バスリング固定具24をバスリング16U,16W,16V,16Gに取付けることができる。
なお、補助バスリング固定具26については、主バスリング固定具24に対して被固着部24bfを有していない以外は略同一の構成であるので、図5A〜図5Hで説明した同様の方法で、バスリング16U,16W,16V,16Gに取付けることができる。
そして、図5A〜図5Hで示す方法をバスリング16U,16W,16V,16Gに取付けるべき主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26の数だけ繰り返すことで、バスリング16U,16W,16V,16Gの円周方向において主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26が複数取付けられた状態のバスリングアセンブリ18を構成することができる。
次に、このように主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26がバスリング16U,16W,16V,16Gの円周上に複数取付けられたバスリングアセンブリ18を、治具40から取り外す。
そして、各主バスリング固定具24の被固着部24bfのボルト挿通孔24bf1をモータハウジング10の各切り欠き10aのボルト取付け穴10ab(図1等参照)に対向させるように、バスリングアセンブリ18をモータハウジング10の上端に位置合わせする。
その後、ボルト28を各ボルト挿通孔24bf1及びボルト取付け穴10abに挿通させて、各主バスリング固定具24の被固着部24bfと各切り欠き10aのボルト取付け穴10abを締結する。これにより、バスリングアセンブリ18をモータハウジング10に固定した状態とすることができ、本実施形態のバスリング取付け構造を得ることができる。
図6Aは、バスリングアセンブリ18が取付けられたモータハウジング10の概略平面図である。図6Bは、その要部拡大図である。
図示のように、モータハウジング10の円周上に複数設けられている切り欠き10aの内の5箇所に主バスリング固定具24が固定されている。また、既に述べたように主バスリング固定具24は被固着部24bfが切り欠き10aに固定される一方で、被固着部24bfと反対側の端部24bA(図3A参照)がモータハウジング10の構成部分10bに当接支持される。したがって、主バスリング固定具24は、モータハウジング10の径方向において拘束されることとなる。
また、補助バスリング固定具26は、隣接する主バスリング固定具24,24の間にそれぞれ、略等間隔で2箇所設けられている。そして、補助バスリング固定具26の一端がモータハウジング10の内側面10cに当接しつつ、他端がモータハウジング10の構成部分10bに当接している。したがって、補助バスリング固定具26も、モータハウジング10の径方向において拘束されることとなる。
これにより、主バスリング固定具24及び補助バスリング固定具26によって同心円状に位置決めされたバスリング16U,16W,16V,16Gも、モータハウジング10の径方向において拘束されることとなる。
したがって、バスリング16U,16W,16V,16Gをモータハウジング10に対して固定等させるための部材を別途用いることなく、当該バスリングのモータハウジング10の径方向における位置を固定することができる。これにより、簡素な構成でバスリング16U,16W,16V,16Gの位置ずれを抑制することができる。
以上、説明した本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、モータハウジング10内のステータコイル20の各相(U相、W相、V相、及び中性相)に接続される各バスリング16U,16W,16V,16Gを、モータハウジング10に取付けるバスリング取付け構造が提供される。
そして、このバスリング取付け構造は、各バスリング16U,16W,16V,16Gと、各バスリング16が相互に同心円方向に並んだ状態で各バスリング16の相対位置を固定する絶縁性のバスリング固定具(主バスリング固定具24)と、を備えたバスリングアセンブリ18を有する。
そして、主バスリング固定具24は、上記同心円方向において隣接するバスリング16を所定距離D離間させた状態で位置決めするバスリング配列位置決め部としての第1凹部24aU,24aW,24aV,24aG及び第2凹部24bU,24bW,24bV,24bGと、バスリング16の配列位置決め状態でモータハウジング10に固着される被固着部24bfと、を有する。
これによれば、主バスリング固定具24のバスリング配列位置決め部に、同心円方向において所定距離D離間した状態で各バスリング16を配列して位置決めしたバスリングアセンブリ18を得ることができる。すなわち、主バスリング固定具24によって隣接するバスリング16が相互に離間することによって絶縁性が確保されつつ、各バスリング16が同心円方向に配置された状態のバスリングアセンブリ18を得ることができる。
そして、各バスリング16の位置決め状態で、主バスリング固定具24の被固着部24bfをモータハウジング10に固着させることによって、バスリング16及び主バスリング固定具24からなるバスリングアセンブリ18をモータハウジング10に取付けることができる。
したがって、従来のように、バスリング16の周囲に絶縁性の樹脂部材を施すといった煩雑な作業を行うことなく簡易な作業でバスリング16をモータハウジング10に固定することができる。樹脂性ホルダ等の高価な部材を用いることなく、低コストにバスリング16の取付けを行うことができる。
さらに、各バスリング16をモータハウジング10が固定された状態で各バスリング16の略全周を覆う従来の樹脂性ホルダのような部材が設けられていないので、バスリング16のステータコイル接続端子である巻線接続部16Uc,16Wc,16Vc,16Gcとステータコイル接続端部Ce(図6B参照)とを結線する作業を行うためのスペースを十分に確保することができる。すなわち、巻線接続部16Uc,16Wc,16Vc,16Gcとステータコイル接続端部Ceとの結線作業も容易にすることができる。
また、本実施形態のバスリング取付け構造によれば、主バスリング固定具24は、相互に開閉する第1分割体24a及び第2分割体24bによって構成される。そして、上記バスリング配列位置決め部は、第1分割体24a及び第2分割体24bの相互開放状態において各バスリング16を受け入れ可能で、第1分割体24a及び第2分割体24bの相互閉塞状態において各バスリング16を固定する。
特に、本実施形態のバスリング取付け構造によれば、上記バスリング配列位置決め部は、第1分割体24aに設けられる第1凹部24aG,24aV,24aW,24aUと、第2分割体24bに設けられる第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUと、を有する。そして、第1凹部24aU,24aW,24aV,24aGと第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUは、相互閉塞状態において相互に対向し、バスリング保持孔を形成する。
これによれば、第2分割体24bと第1分割体24aの相互開放状態(図3A等参照)において、第1凹部24aU,24aW,24aV,24aGにバスリング16U,16W,16V,16Gを受け入れることができる。そして、この状態で、第1分割体24a及び第2分割体24bを相互閉塞状態(図3B参照)とすることで、第1凹部24aU,24aW,24aV,24aGと第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUによって形成されるバスリング保持孔にバスリング16U,16W,16V,16Gが固定される。
すなわち、第1分割体24aと第2分割体24bの開閉という容易な動作に応じて、各バスリング16の主バスリング固定具24へのセット及び各バスリング16の配列位置決めを実行することができるので、各バスリング16の主バスリング固定具24への取付け作業が容易になる。
さらに、本実施形態のバスリング取付け構造によれば、第1分割体24a及び第2分割体24bには、それぞれ、上記相互閉塞状態において第1分割体24a及び第2分割体24bを相互に固定する結合固定部としての突出爪24bt,24bt及び爪掛止凹部24at,24atが設けられている。
これによれば、各バスリング16が相互に位置決めされた第1分割体24a及び第2分割体24bの相互閉塞状態で、上記結合固定部によって第1分割体24a及び第2分割体24bが相互に固定されることとなる。したがって、例えば、本実施形態のバスリング取付け構造が適用された回転電機を搭載した車両の振動による外力や温度上昇による膨張が生じる場合であっても、第1分割体24a及び第2分割体24bの相互閉塞状態を好適に維持することができる。
特に、本実施形態では、結合固定部は、第2分割体24bに形成される突出爪24bt,24btと、第1分割体24aに形成され突出爪24bt,24btが掛止される爪掛止凹部24at,24atと、を有する。
これにより、第1分割体24a及び第2分割体24bの相互閉塞状態において、突出爪24bt,24btが爪掛止凹部24at,24atに掛止されて固定されることとなる。すなわち、結合固定部を簡易な構成で実現することができる。
特に、上述のように、本実施形態のバスリング取付け構造が適用された回転電機を搭載した車両の振動による外力や温度上昇による膨張が生じ、第1分割体24a及び第2分割体24bの相互閉塞状態を解除するような力が働いたとしても、突出爪24bt,24btの変形によってこれを吸収するので、相互閉塞状態の維持効果がより向上させることができる。
さらに、本実施形態では、第1分割体24aと第2分割体24bは、上記相互開放状態において相互に分離可能に構成される。すなわち、第1分割体24aと第2分割体24bは別体に構成されている。
したがって、例えば、モータハウジング10の円周上に配置されるべき全ての主バスリング固定具24の第1分割体24aをバスリング16に取付けた後に、バスリング16にセットされた第1分割体24aに第2分割体24bに結合する作業をまとめて行うことができる。
すなわち、図5C〜図5Fで示した第1分割体24aにバスリング16をセットする作業を、取付けが予定される全ての主バスリング固定具24の個数分まとめて実行した後に、第2分割体24bをまとめて第1分割体24aに結合することができる。したがって、バスリング16に第1分割体24aを取付ける作業と第2分割体24bを結合する作業を段階ごとに分けることができるので、作業効率が向上する。
なお、例えば、各バスリング16に第1分割体24aを取付けた後に、この第1分割体24aが取付けられた状態の各バスリング16をモータハウジング10に先にセットして、その後、モータハウジング10にセットされたバスリング16に第1分割体24aに第2分割体24bを結合することも可能である。この場合においては、第1分割体24aと第2分割体24bを別体に構成していることで、モータハウジング10内の比較的狭い空間であっても、上部から第1分割体24aに第2分割体24bを被せるように結合させることができるので、作業性が向上する。
また、本実施形態では、被固着部24bfは、モータハウジング10に形成されるボルト取付け穴10abにねじ締結されるボルト挿通孔24bf1を有する。
これにより、主バスリング固定具24のボルト挿通孔24bf1を、モータハウジング10のボルト取付け穴10abにねじ締結するという容易な方法で、各バスリング16U,16W,16V,16Gに主バスリング固定具24を取付けてなるバスリングアセンブリ18をモータハウジング10に固定することができる。
特に、各バスリング16の配列の位置決めを行う主バスリング固定具24がモータハウジング10にねじ止め固定されることとなるので、モータハウジング10の円周方向及び径方向における各バスリング16の位置ずれをより確実に規制することができる。したがって、バスリング16のモータハウジング10へのより好適な固定構造が実現される。
さらに、本実施形態ではバスリングアセンブリ18は、主バスリング固定具24による各バスリング16U,16W,16V,16Gの位置決めを補助する補助バスリング固定具としての補助バスリング固定具26をさらに有する。
これにより、モータハウジング10にバスリングアセンブリ18が取付けられた状態において、各バスリング16U,16W,16V,16Gの同心円方向における位置ずれをより確実に防止することができる。すなわち、モータハウジング10における各バスリング16U,16W,16V,16Gの位置決め状態をより確実なものとすることができる。
なお、本実施形態では、補助バスリング固定具26は、第2分割体26bに、主バスリング固定具24の第2分割体24bにおける被固着部24bfに相当する構成が無い以外は、主バスリング固定具24と略同一の構成を有している。
したがって、主バスリング固定具24と同様に容易な作業で各バスリング16U,16W,16V,16Gへの取付けを行うことができる上で、これらの同心円方向における位置決め効果についても主バスリング固定具24と同様に発揮されることとなる。
以上説明したように、本実施形態では、モータハウジング10に収容されるステータコイル20の各相に接続される各バスリング16U,16W,16V,16Gが相互に同心円方向に並ぶように、各バスリング16U,16W,16V,16Gの相対位置を固定するバスリング固定具としての主バスリング固定具24が提供される。
そして、主バスリング固定具24は、上記同心円方向において隣接するバスリング16U,16W,16V,16Gを所定距離D離間させた状態で位置決めするバスリング配列位置決め部としての第1凹部24aU,24aW,24aV,24aG及び第2凹部24bU,24bW,24bV,24bGと、バスリング16U,16W,16V,16Gの位置決め状態でモータハウジング10に固着される被固着部24bfと、を有する。
このような構成を有する主バスリング固定具24を用いることによって、簡易な作業で各バスリング16U,16W,16V,16G相互の絶縁性を確保しつつ配列されるとともに、容易にモータハウジング10に固定することのできるバスリングアセンブリ18が得られる。
なお、本実施形態では、主バスリング固定具24がバスリング16の円周上に5箇所配置されている例を説明したが、主バスリング固定具24の設置数はこれに限られない。例えば、モータハウジング10の設計態様に応じて、主バスリング固定具24の被固着部24bfをねじ締結させる切り欠き10aの数を変更する必要がある場合には、これに応じて主バスリング固定具24の設置数を変更しても良い。また、補助バスリング固定具26の設置数についても同様の変更が可能である。
また、モータハウジング10へのバスリング16の安定した取付け状態の観点から、主バスリング固定具24は、円周上に等間隔且つ複数設けられることが好ましい。しかしながら、本発明の技術的範囲においては、主バスリング固定具24を一つのみ設けても良いし、複数設ける場合において円周上における主バスリング固定具24の配置間隔が一定とならないようにすることも可能である。さらに、補助バスリング固定具26についても同様の変更が可能である。
さらに、本実施形態では、図5A〜図5Hで説明したように、治具40を用いて主バスリング固定具24のバスリング16への取付け作業(バスリングアセンブリ18を構成する作業)を行い、その後、構成されたバスリングアセンブリ18を治具40から取り外してモータハウジング10に取付ける例を説明した。しかしながら、治具40を用いることなく、主バスリング固定具24のバスリング16への取付け作業及びバスリングアセンブリ18のモータハウジング10への取付け作業を行うようにしても良い。
具体的には、治具40を用いず、モータハウジング10の上端面において直接、図5A〜図5Hで説明した主バスリング固定具24のバスリング16への取付け作業(バスリングアセンブリ18を構成する作業)と同様の作業を実行するようにしても良い。これにより、バスリングアセンブリ18を治具40から取り外してモータハウジング10に取付ける作業を省略することができる。すなわち、作業をより簡素化することができる。また、補助バスリング固定具26のバスリング16への取付け作業についても、主バスリング固定具24と同様にモータハウジング10の上端面で直接行うようにしても良い。
さらに、本実施形態では、バスリングアセンブリ18において、バスリング16U,16W,16V,16Gがこの順で同心円方向に並ぶように構成されている。しかしながら、モータハウジング10又はこれを含む回転電機の設計態様などに応じて各相の配置が変更された場合には、これに合わせて各バスリング16U,16W,16V,16Gの同心円方向における配列を変更しても良い。
また、上記実施形態では、第1分割体24aと第2分割体24bは、相互に分離可能となるように別体に構成されている。しかしながら、例えば、第1分割体24aに対して第2分割体24bを開閉させるためのヒンジ部を設け、ヒンジ部の回動により第1分割体24aに対して第2分割体24bを開閉させる構成としても良い。これにより、第1分割体24a及び第2分割体24bを一体部品として扱うことができるので、部品管理がより容易になる。
さらに、上記実施形態では、第1分割体24aの第1凹部24aU,24aW,24aV,24aGと第2分割体24bの第2凹部24bG,24bV,24bW,24bUは、相互閉塞状態において相互に対向し、バスリング保持孔を形成する構成としている。しかしながら、バスリング保持孔を構成する態様はこれに限られない。例えば、第1分割体24a及び第2分割体の何れか一方にのみ環状部分16Ub,16Wb,16Vb,16Gbの径と略同一の径の凹部を形成して、他方を凹部の無い平面状に形成して良い。
このような構成であっても、第1分割体24aと第2分割体24bの相互閉塞状態において、第1分割体24a及び第2分割体の何れか一方に形成された凹部と他方の平面部との間でバスリング保持孔を形成することができるので、バスリング配列位置決め部を実現することができる。
さらに、第1分割体24a及び第2分割体24bを相互閉塞状態に固定する結合固定部は、一対の爪掛止凹部24at,24at及び一対の突出爪24bt,24btに限定されない。例えば、第2分割体24bに一対の突出爪24bt,24btを構成しつつ、一対の爪掛止凹部24at,24atを設けることなく、一対の突出爪24bt,24btのフランジ部24bt1,24bt1を第1分割体24aの基部24aB(図5A参照)に掛止させる構成としても良い。
また、補助バスリング固定具26は、主バスリング固定具24と大きく異なる構成であっても良い。例えば、補助バスリング固定具26を、分割構造を有していない挟持用クリップなどにより構成しても良い。
さらに、本実施形態では、環状部分16Vb,16Wb,16Ub,16Gbの線径は相互に同一の大きさに形成されているが、これらの内の少なくとも一つの環状部分の線径が他の環状部分の線径と異なるように構成しても良い。例えば、バスリング16の軽量化を図ることなどを目的として、中性相に対応するバスリング16Gの環状部分16Gbの線径を、他の環状部分16Vb,16Wb,16Ubの線径と比較して小さく形成しても良い。
特に、このように環状部分16Gbの線径を相対的に小さくした場合には、これに合わせて、当該環状部分16Gbを位置決めする第1分割体24a及び第2分割体24bの第1凹部24aG及び第2凹部24bGのそれぞれの内径は、他の第1凹部24aU,24aW,24aV及び第2凹部24bU,24bW,24bVの内径と比較して小さく形成することが好ましい。
(変形例)
以下、変形例について説明する。なお、上記実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7は、変形例のバスリング固定具としての主バスリング固定具24の構成を説明する図である。図に示す主バスリング固定具24では、第2分割体24bの一対の突出爪24bt,24btの先端側(フランジ部24bt1,24bt1側)から基端側に向かって漸次肉厚となる補強部24bt2,24bt2が形成されている。
この補強部24bt2,24bt2は、最も基端側の部分で第2凹部24bG,24bUにそれぞれ連続する。補強部24bt2,24bt2と第2凹部24bG,24bUが連続する境界部分では、補強部24bt2,24bt2の内側面の曲率が、第2凹部24bG,24bUの曲率半径よりも若干大きくなるように形成されている。
このような補強部24bt2,24bt2によって、突出爪24bt,24btの基端部(付け根)を肉厚にして強度を増加させることができる。これにより、例えば車両の振動等に起因して、第1分割体24aと第2分割体24bを相対的にずらす力が働くことで当該基端部に応力集中が発生しても、より好適にこの応力集中に耐えることができる。
また、このような補強部24bt2,24bt2の形状によって、第1分割体24a及び第2分割体24bを相互に結合する作業過程において、突出爪24bt,24btのフランジ部24bt1,24bt1が第1分割体24aの両側端面24aA,24aAにより外側に向かって押し広げられる力に対する突出爪24bt,24btの基端部の耐久性も向上させることができる。
なお、図7では主バスリング固定具24において、補強部24bt2,24bt2を形成した例を示しているが、補助バスリング固定具26に対しても同様の構成の補強部を設けても良い。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記各実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。