JP2018059227A - ポリアミド潜在捲縮糸及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、捲縮糸として、弾性のあるポリマーを用いて、伸縮性を得て伸縮性の高い布帛を得る方法もあるが、例えばポリウレタン弾性糸単独では染色性・耐光性が悪いといったことや糸同士が膠着しやすい等の問題が生じるため、通常、ポリアミドなどをカバリングして用いるのが現状である。
また特許文献1には、弾性のあるポリマーとして、ナイロン12エラストマーを用いて、ポリアミドやポリエステルをサイドバイサイド型や芯鞘型に複合した繊維が開示されている。
一方、2種類の異なる汎用的なポリマーを複合した繊維を捲縮糸として、繊維に捲縮性を付与する方法も種々検討されている。例えば、ポリエステルとポリアミドなどの異なる樹脂同士を組み合わせて複合繊維として捲縮糸とすることや粘度差のある同じ樹脂同士を組み合わせた複合繊維として捲縮糸とする方法が挙げられる。
そして、特許文献2は、高粘度ポリマーにポリメタキシレンアジパミドを特定量ブレンドし、高粘度ポリマーと低粘度ポリマーの粘度をコントロールした高い捲縮性をポリアミド潜在捲縮糸が記載されている。
また汎用的なポリエステルやポリアミドなどの異なるポリマーを組み合わせて複合繊維としたものは、捲縮を得るためのコストは低くて済むが、紡糸・延撚や後加工での樹脂同士の剥離が生じやすい。
また、同種の樹脂で粘度差が異なる樹脂同士を組み合わせた場合は、十分な捲縮が得られず、繊維自体の伸縮性も十分ではなく、高い伸縮性のある布帛を得るのは難しい。
さらに、特許文献2記載の潜在捲縮糸では、ある程度良好な捲縮率を有するものが得られているものの、いまだ十分伸縮性を得られるものではない。また潜在捲縮糸としてはより風合いが良好なものが求められている。
したがって、本発明は上記の課題を解決し、カバリング加工や特殊な共重合体を用いずとも、十分な捲縮性を有し、風合いの優れたポリアミド潜在捲縮糸を得ることを目的とする。
(1) 捲縮率が50%を超える
(2) 生地の風合いを示すドレープ係数が40%以下
また、上記ポリアミド潜在捲縮糸において、成分1の樹脂組成物の相対粘度が2.6〜3.0であることを満足するポリアミド潜在捲縮糸を第2の要旨とする。
また、ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)との2種のポリアミド成分を貼り合わせて、溶融複合紡糸して延伸して得られる潜在捲縮糸を製造する方法であって、紡糸速度が1200〜4000m/
minであり、延伸工程での熱セット温度が100〜120℃である上記ポリアミド潜在捲縮糸の製造方法を第3の要旨とする。
また、上記ポリアミド潜在捲縮糸を製造する方法において、延伸工程前に、温度22℃〜26℃、湿度75%〜85%で24時間以上エージングすることを特徴とするポリアミド潜在捲縮糸の製造方法を第4の要旨とする。
また、特殊なポリアミドエラストマーなどの共重合体を用いずとも高い収縮性を得ることができるため、コスト的にも有利となる。
本発明は、ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)で構成される2種のポリアミド成分で構成された貼り合わせ型の潜在捲縮糸である。
なお、捲縮率を高く保持する点からは、成分2の樹脂の相対粘度は、2.1〜3.5であることが好ましく、2.3〜3.0であることがより好ましい。
本発明のポリアミド潜在捲縮糸は、例えば紡糸と延撚の二工程法(コンベンショナル法)などにより得ることができる。
まず、成分1のポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6を準備する。両者を混練等により混合して、樹脂組成物(成分1)を得る。次に、(成分2)の樹脂を準備する。
成分1と成分2を溶融混練して、口金パックに導き、所定の横断面(繊維軸に直行方向)となるようにノズルから吐出し、溶融紡糸する。次いで、冷却して、巻き取った後、延伸して、延伸糸を得る。コンベンショナル法の場合、ノズルから吐出された糸条が最初に捲かれるゴデットロールの速度(紡糸速度)が、1200〜4000m/minであることが好ましい。このような速度とすることにより、ポリアミド捲縮糸の伸長率を50%以上にでき、布帛としたとき、伸縮性のあるものを得たり、高密度化ができる。
なお、紡糸速度を速くすると、吐出量が多くなることによりノズル孔部のせん断速度が高くなる。これによりノズル直下での繊維内の分子鎖配向させ、繊維内の歪みを高くした状態で巻き取る。この歪みをもった繊維をさらに延伸することによって、さらに分子鎖配向を加え繊維内歪みを蓄えさせることにより、捲縮率が高く、高度な捲縮を与えることができ、伸縮性のある高収縮性ポリアミド潜在捲縮糸を得ることができると推測される。この点から、紡糸速度は、1200m/min以上が好ましく、2500m/min〜3500m/minの範囲が特に好ましい。
また延伸工程前に、温度が22℃〜26℃、かつ湿度が75〜85%の範囲で24時間以上エージングすることが好ましい。この範囲であると、延伸をスムーズに行うことができ、得られた繊維を用いて布帛としたとき、柔らかく、ソフトな風合いのものが得られ易い。
過程での熱セット温度を低めにコントロールする等により両成分を貼り合わせた複合繊維等の潜在捲縮糸とすることで、強伸度に優れ、かつ高い捲縮を発現させることのできる伸縮性に優れた高収縮のポリアミド潜在捲縮糸を得ることができる。
物性の測定および評価は、以下の通り実施した。
柴山科学機械製作所製の自動粘度測定装置(SS−600−L1型)を用いて測定する。溶媒に95.8%濃硫酸を用いて、ポリマーを1g/dlの濃度で溶解させて、恒温槽25℃にて測定する。
JISL1013に準じ、島津製作所製のAGS−1KNGオートグラフ引張試験機を用い、試料糸長20cm、定速引張試験20cm/minの条件で測定した。荷重−伸び曲線での荷重の最高値を繊度で除した値を破断強度(cN/dtex)とし、そのときの伸び率を破断伸度(%)とする。
浅野機械株式会社製の検尺器にて、5回転の綛を作製し2重に束ねる。その後1/6000g/dのおもりを掛け沸水バス投入し、バスに30min浸漬させた後取り出し、その状態で30min風乾させ、その後1/500g/dのおもりを掛け30秒後の長さ(A)を計測し、さらに1/20g/dのおもりを掛け30秒後の長さ(B)を測定し、次の式で捲縮率を算出した。
捲縮率(%)=((B−A)/B)×100
英光産業株式会社製の試験筒編み機(NCR−EW)にて筒編みサンプルを作製した(ゲージ数:32)。得られた筒編みサンプルを開反した後、半径5.0cmの円状に裁断する。測定前に裁断した筒編みサンプルを25℃、27%の環境下に24時間置く。試料台半径が2.5cmの円台の上に、半径5.0cmのサンプルを載置し、サンプルの32cm真上からカメラ撮影した写真により、サンプルの投影面積(S)を算出した。また試料台の投影面積を(S0)、試料台上に半径5.0cmの厚紙を載せた時の投影面積を(S1)とし、次式によってドレープ係数(%)を求めた。
ドレープ係数(%)=((S−S0)/(S1−S0))×100
ドレープ係数の算出に用いた筒編みサンプルについて、風合いを評価した。柔らかく、良好な風合いのものを○、若干硬い風合いのものを△、硬い風合いのものを×とした。
成分1の相対粘度2.9のポリアミド(ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6を質量比率50:50になるようブレンダーで混合)チップと、成分2(ポリアミド6)の相対粘度2.4のチップをコンベンショナル法にて紡糸ノズルを用いて、紡糸温度280℃、捲取速度(紡糸速度)2750m/minで成分1:成分2が質量比率1:1になるよう溶融紡糸して繊維横断面がサイドバイサイドに貼り合わせた落花生型である潜在捲縮糸を得た。
未延伸糸を、温度23℃、湿度80%の環境下で24時間エージングした後、延伸速度800m/min、スピンドル回転数7500rpm、プレートヒーター温度100℃、延伸倍率1.6倍で延伸し、潜在捲縮糸を得た。
紡糸速度を3100m/min、3500m/min、4000m/minに変更する以外は、実施例1と同様に潜在捲縮糸を得た。
成分2のポリアミド(ポリアミド6)の相対粘度を3.0変更する以外は実施例1と同様に潜在捲縮糸を得た。
延伸工程前の糸の保管温湿度を35℃、55%とする以外は実施例1と同様に潜在捲縮糸を得た。
また実施例1〜4および比較例1〜2から得られた潜在捲縮糸を布帛化し、ドレープ性を評価したところ、実施例1〜4から得られたものは風合いが柔らかく風合いが良好であり、比較例1から得られたものは硬く、良好な風合いが得られなかった。
また得られた潜在捲縮糸を用いて製織、染色したところ、実施例1〜4から得られた潜在捲縮糸を用いたものは伸縮性に優れ、かさ高で風合いが良い織物となったが、比較例1および2から得られた潜在捲縮糸を用いて製織、染色したところ伸縮性、かさ高性ともに劣り、硬い風合いの織物となった。
Claims (4)
- ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)で構成される貼り合わせ型の潜在捲縮糸であって、以下の(1) および(2)の要件を満足するポリアミド潜在捲縮糸。
(1)捲縮率が50%を超える
(2)ドレープ係数が40%以下 - 成分1の樹脂組成物の相対粘度が2.6〜3.0である請求項1記載のポリアミド潜在捲縮糸。
- ポリメタキシレンアジパミドとポリアミド6からなる樹脂組成物(成分1)とポリアミド樹脂(成分2)との2種のポリアミド成分を貼り合わせて、溶融複合紡糸して延伸して得られる潜在捲縮糸を製造する方法であって、紡糸速度が1200〜4000m/minであり、延伸工程での熱セット温度が100〜120℃である請求項1又は2記載のポリアミド潜在捲縮糸の製造方法。
- 延伸工程前に、温度22℃〜26℃、湿度75%〜85%で24時間以上エージングすることを特徴とする請求項3記載のポリアミド潜在捲縮糸の製造方法。
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