JP2018058418A - 緊急操舵支援システム - Google Patents

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Abstract

【課題】緊急操舵支援システムを提供する。【解決手段】運転者の操舵をアシストするアシストモータ18、及び、アシストモータのq軸電圧飽和度Vqsatに基づきアシストモータのd軸電流指令値Id*を算出するd軸電流指令演算部を含みアシストモータの駆動を制御するEPS−ECU2を有する電動パワーステアリング装置13と、自車両の周辺情報に基づく予測により、運転者が現在のハンドルの位置を緊急に変化させる必要のある緊急操舵要求が発生したことを判定する緊急操舵要求判定装置40と、を備える。負の値であるd軸電流指令値の絶対値が増加する場合の時間あたりのd軸電流指令値の変化量を、立ち上がり勾配とする。緊急操舵の必要があると緊急操舵要求判定装置に判定された場合、d軸電流指令演算部はd軸電流指令値の立ち上がり勾配を、緊急操舵の要求がない通常時のd軸電流指令値の立ち上がり勾配よりも大きくする。【選択図】図1

Description

本発明は、車両用の操舵支援システムに関する。
自車両周囲の障害物に衝突する危険性のある状況や、自車両が走行する車線を逸脱する可能性のある状況において、緊急時に操舵支援を行うシステムが知られている。たとえば、特許文献1においては緊急操舵が必要な際に、操舵支援システムが操舵方向に自らトルクを発生し、回避を支援するシステムが開示されている。
通常、操舵支援システムがトルクを発生し操舵を支援する際、d軸電流指令値の勾配が大きいとdq軸電流変動も大きくなる。dq軸の大きな電流変動により引き起こされるトルク変動は振動や騒音の原因となる。また、運転者の操作感覚もよくない。
そのため、一般に電動パワーステアリング装置で弱め界磁制御を行う場合にはd軸電流をゆっくりと負側に増加させ、急激なdq軸電流変動が起きないようにして、振動や騒音の問題を回避し、運転者にスムーズな操作感覚を与えている。
特許第5053692号公報
しかし、緊急操舵のために急速にハンドルを切ろうとしたとき、d軸電流をゆっくり増加させていると、モータ出力の追従が遅れ、ハンドルが重くなるという現象があった。そのため、障害物の衝突回避や車線の逸脱回避時に上記のモータの追従遅れがあると、運転者がハンドル操作に余分な力を必要とし、負担が増すという問題があった。
本発明はこのような点に鑑みて創作されたものであり、モータ出力の追従を高めることで、余分な力を必要とせずに、緊急操舵時に少ない負担で運転者が障害物や、車線逸脱を回避することが可能となる緊急操舵支援システムを提供する。
本発明は緊急操舵支援システム(1)であって運転者の操舵をアシストするアシストモータ(18)、及び、アシストモータのq軸電圧飽和度(Vqsat)に基づきアシストモータのd軸電流指令値(Id*)を算出するd軸電流指令演算部(38)を含みアシストモータの駆動を制御するEPS−ECU(2)を有する電動パワーステアリング装置(13)と、自車両の周辺情報に基づく予測により、運転者が現在のハンドルの位置を緊急に変化させる必要のある緊急操舵要求が発生したことを判定する緊急操舵要求判定装置(40)と、を備える。
d軸電流指令演算部はq軸電圧飽和度に基づき、d軸電流指令値を算出する。ここで、負の値であるd軸電流指令値の絶対値が増加する場合の時間あたりのd軸電流指令値の変化量を、立ち上がり勾配と定義する。自車両の周辺情報に基づく予測により、運転者が現在のハンドルの位置を緊急に変化させる必要のある操舵を緊急操舵と定義する。
自車両の周辺情報に基づいて、緊急操舵の必要があると緊急操舵要求判定装置に判定された場合、d軸電流指令演算部はd軸電流指令値の立ち上がり勾配を、緊急操舵の要求がない通常時のd軸電流指令値の立ち上がり勾配よりも大きくする。これにより、通常よりも急速に負のd軸電流を流す弱め界磁制御が可能となり、電動パワーステアリングのアシストが遅れることがなく、運転者は緊急操舵を負担なく行うことができる。
本発明の操舵支援システムの緊急操舵要求判定装置の構成図である。 本発明の操舵支援システムの電動パワーステアリング装置の構成図である。 EPS−ECUのブロック図である。 第一実施形態による弱め界磁制御のフローチャートである。 第一実施形態による経過時間とd軸電流指令値との関係図である。 第二実施形態による経過時間とd軸電流指令値との関係図である。 第三実施形態による弱め界磁制御のフローチャートである。 第三実施形態による経過時間とd軸電流指令値との関係図である。 第四実施形態による弱め界磁制御のフローチャートである。 第四実施形態による経過時間とd軸電流指令値との関係図である。 第五実施形態による弱め界磁制御のフローチャートである。 第五実施形態による経過時間とd軸電流指令値との関係図である。 操舵支援システムの他の実施形態における緊急操舵要求判定部の構成図である
以下、本発明の車両用の操舵支援システム及びそれを搭載した車両が、弱め界磁制御を行う複数の実施形態を図面に基づいて説明する。また、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第一実施形態)
図1に本発明の緊急操舵支援システム1の構成を示す。緊急操舵支援システム1は緊急操舵要求判定装置40と、電動パワーステアリング装置13を有する。緊急操舵要求判定装置40は、障害物検出装置6、周辺監視用の電子制御ユニットである周辺監視Electoronic Contorol unit7、車速検出装置8、前後加速度センサ9、操舵角度センサ10、ヨーレートセンサ11、トルクセンサ12等を含む。ここで、Electoronic Contorol unitは以後ECUと略す。これら各種センサ群の出力信号は運転支援を制御するユニットである運転支援ECU5に入力される。運転支援ECU5と各種センサ群はController Area Networkによって接続されている。以後、この接続はCANと略す。運転支援ECU5は、図示しないマイクロコンピュータ、ROM、RAM、周辺回路、入出力インターフェース及び各種ドライバ等から構成される。電動パワーステアリング装置13の制御部であるEPS−ECU2と運転支援ECU5はCANにより接続されている。緊急操舵要求の判定は各種センサ群と運転支援ECU5との協働によりなされる。その判定方法については以下に詳述する。
障害物及び車線逸脱検出装置6は自車両周辺の物体と車線を検出する。たとえば、電波や超音波等を照射して検出を行うレーダ装置、または、自車両の周辺を撮影して物体の検出を行う撮影装置などが考えられる。本実施形態では、少なくとも自車両の前後方及び側方に存在している物体と、自車両の進行とともに近づいてくる物体を検出できる。また、少なくとも前方に搭載したカメラ等により車線の認識を行い、自車両が道路内のどの位置を走行しているかを認識し、車線逸脱を検出することができる。障害物及び車線逸脱検出装置6はそれらのデータを周辺監視ECU7に送信する。
周辺監視ECU7は周辺監視部を有し、障害物及び車線逸脱検出装置6の検出結果に基づいて、その物体が監視対象であるかどうか、他車両であるかどうか、車線の混み具合はどうか、等を判定し、そのデータを運転支援ECU5に送信する。
車速検出装置8は自車両の速度を検出し、そのデータを運転支援ECU5に送信する。前後加速度センサ9は自車両の加速度を検出し、そのデータを運転支援ECU5に送信する。操舵角度センサ10は自車両のハンドル14の操舵角度を検出し、そのデータを運転支援ECU5に送信する。ヨーレートセンサ11は自車両のヨーレートを検出し、そのデータを運転支援ECU5に送信する。トルクセンサ12は運転者がハンドル14に加えるトルクを検出しそのデータを運転支援ECU5に送信する。
運転支援ECU5は各種センサからの送信データを元に、緊急操舵の要求の有無や、要求の大きさを判断する。たとえば障害物については、接近する障害物が自車両からある一定以下の距離に入り衝突が予測される場合、緊急操舵の要求があると判断する。さらに、障害物の自車両への接近速度、大きさ及び形状などの要因を加味して緊急操舵要求の大きさを判断する。
たとえば車線の逸脱については、自車両が現在の速度、加速度及び方向を維持したとき、ある一定の時間以下で現在の走行車線からの逸脱が予測される場合、運転支援ECU5は緊急操舵の要求があると判断する。さらに、自車両周辺の他車両の状況や走行路の混雑状況などの要因を加味して緊急操舵要求の大きさを判断する。
または、たとえば自車両が現在の速度、加速度及び方向を維持した場合の、障害物に接触や衝突するまでの時間や、走行車線を逸脱するまでの時間を運転支援ECU5が算出してもよい。この時間の算出方法は既知の手段による。以降、この余裕時間をTTE(Time to Event)とする。TTEがあらかじめ設定された閾値のTTE(以降TTEth)以下になった場合は、運転支援ECU5は運転手が緊急操舵を行う必要があると判断する。
なお、TTEthは障害物との接触や衝突までの場合と、車線逸脱するまでの場合とで値を変えてもよいし、同じ値を使用してもよい。障害物との接触や衝突と車線逸脱以外にも何らかの緊急操舵が必要なための要因があれば、運転支援ECU5はTTEを算出できる。
運転支援ECU5は緊急操舵の必要性、その要因及びTTE等のデータを電動パワーステアリング装置13の制御用ユニットであるEPS−ECU2に出力する。また、運転支援ECU5は判定前のデータをEPS−ECU2に送信し、EPS−ECU2に緊急操舵の必要性、その要因及びTTE等を算出させることもできる。
本実施形態においては、緊急操舵要求に関するデータが出力されるのは電動パワーステアリング装置13の制御用ユニットであるEPS−ECU2のみだが、エンジン装置3やブレーキ装置4の制御用ユニットにデータを出力し、エンジンコントロールや自動ブレーキ等によりさらに操舵支援を行ってもよい。
図2に電動パワーステアリング装置13の構成を示す。ハンドル14に連結されたステアリング軸15に対して、運転者が与える操舵トルクを補助するトルクを与えるように構成される。EPS―ECU2はアシストモータ18とは別の箇所に設けられている。
ステアリング軸15の上端はハンドル14に連結され、下端にはピニオン20が取り付けられている。ピニオン20に噛み合うラック21を設けたラック軸22が配置されている。ピニオン20とラック21によって、ラックピニオン機構が形成される。ラック軸22の両端にはタイロッド23が設けられ、タイロッド23の外側端には前輪17が取り付けられている。
アシストモータ18は動力伝達機構16を介して設けられている。アシストモータ18には電気角速度ωを計測するたとえばレゾルバ19が設けられている。EPS−ECU2がアシストモータ18を制御して回転力を出力させると、この回転力が補助トルクとしてステアリング軸15に与えられ、運転者のハンドル操作に要する力が軽減される。
次に本発明に係る弱め界磁制御技術を利用した電動パワーステアリング装置13の制御を行うEPS−ECU2について図3を用いて説明する。本実施形態においては、ベクトル制御を用いた電流フィードバック方式により行われる。
ベクトル制御とはアシストモータの二次磁束軸に一致した軸をd軸とし、前記d軸に直交する軸をq軸と定義されたdq軸回転座標系上でアシストモータの制御を行うものである。本実施形態ではモータは永久磁石表面貼付型であるとして説明する。永久磁石表面貼付型電動機は弱め界磁制御を行わないとき、d軸電流はたとえば0である。
ここで、一般的な弱め界磁制御について述べる。永久磁石表面貼付型では、たとえば通常はd軸電流を0とし、q軸電圧飽和領域で負のd軸電流を流す。また、永久磁石埋込型では、たとえば通常領域では高効率運転のため負のd軸電流を流し、q軸電圧飽和領域ではこれに負の電流を加算する。
誘導電動機では、界磁電流指令により磁束を直接制御することができる。一方、永久磁石表面貼付型や永久磁石埋込型のような永久磁石同期電動機では界磁磁束を直接制御できないが、d軸電流を流すことでd軸電気子反作用による減磁効果を利用してd軸方向の磁束を減少させることができ、弱め界磁制御が可能となる。厳密には界磁を直接制御するものではないため、弱め磁束制御と呼ぶ場合もある。
三相二相座標変換部33には、電力変換器31からアシストモータ18へ接続される電力線に設けられた電流センサ30から相電流検出値が入力される。本実施形態ではV相、W相に設けられた電流センサ30からV相電流Iv、W相電流Iwの検出値が入力され、残るU相の電流Iuをキルヒホッフの電流則に基づいて推定している。他の実施形態では三相の電流を検出してもよいし、あるいは一相の電流から他の二相の電流を推定する技術を採用してもよい。三相二相座標変換部33は、得られた三相電流検出値Iu,Iv,Iwをdq軸電流Id,Iqにdq変換する。d軸電流Idは減算器37に、q軸電流Iqは減算器36にフィードバックされる。
二相三相座標変換部32はd軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*を三相出力電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に変換する。三相出力電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に基づく電力変換器31のスイッチング状態の操作については、例えば周知のPWM制御による。
減算器36は図示しない上位部からのq軸電流指令値Iq*とq軸電流値Iqとの偏差ΔIqを算出する。減算器37はd軸電流指令値Id*とd軸電流値Idとの偏差ΔIdを算出する。
q軸電流指令制御演算部34はΔIqが0になるように、PI制御等によりq軸電圧指令値Vq*を作成する。d軸電流制御演算部35は、ΔIdが0になるように、PI制御等によりd軸電圧指令値Vd*を生成する。
ここで、トルクを発生するアシストモータ18は速度に応じて誘起電圧が増加する。電源に対して電圧指令値が飽和すると、それ以上のトルクを発生できない。この場合、d軸電流指令値Id*を負側へ増加させることでさらなるトルク発生が可能となり、速度制御範囲を拡大させることができる。
d軸電流指令演算部38は、q軸電圧飽和度Vqsat、d軸電流値Id及び運転支援ECU5から送信された緊急操舵要求に関する情報を元に、d軸電流指令値Id*を計算する。d軸電流指令演算部38がd軸電流指令値Id*を算出する方法については後に詳述する。
まず、d軸電流指令演算部38が求めるq軸電圧飽和度Vqsatについて説明する。Vqsatは式(1)によって求められる値で、0から1の範囲にある。
Figure 2018058418
Vd*、Vq*は、q軸電流制御演算部34、d軸電流制御演算部35で生成されたあとにd軸電流指令演算部38にフィードバックされる。またVmaxはモータにかかる電圧の最大値である。
q軸電圧飽和度Vqsatが1.0に近くなるほどq軸電圧は飽和に近くなる。q軸電圧飽和度Vqsatが任意に設定できるq軸電圧飽和度閾値Vqsatth以上となったとき、弱め界磁制御処理を行う必要があるとd軸電流指令演算部38は判定する。
図4で示すフローチャートに従って、d軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*を算出する。まず、ステップS101で緊急操舵要求のありなしを判断する。緊急操舵要求が運転支援ECU5から送信されているのであれば、ステップS102に移る。
ここで、一般的にCANバスを介した通信速度は早くても10msec程度である。一方、電流フィードバック制御の周期は通常1kHz〜数kHzつまり、数百μsecから1msecである。そのため、CANバスを介したデータを電流フィードバック制御に使用すると時定数が合わない。そのため、d軸電流指令演算部38がd軸電流指令値Id*の演算に使用する緊急操舵要求判定、障害物との接近度合、車線逸脱の迫り具合およびTTE等のデータは次のデータが運転支援ECU5から送信されてくるまで、最後に運転支援ECU5から送信されたデータを使い続けてもよい。または、データを蓄積しその変化率等から推測したデータを使用してもよい。
緊急操舵要求がある場合、ステップS102に移り、d軸電流指令演算部38は急速弱め界磁処理を行い、電動パワーステアリングの追従性をあげる。緊急操舵要求が運転支援ECU5から送信されていない場合はステップS103に移り、通常弱め界磁処理を行う。
通常弱め界磁処理の際のd軸電流指令値Id*は以下の式(2)で与えられ、急速弱め界磁処理の際のd軸電流指令値Id*は以下の式(3)で与えられる。また、d軸電流指令値Id*の初期値は通常0である。
Figure 2018058418
A、H及びLは任意に設定できる定数である。急速弱め界磁処理に使用する定数Hは通常処理に使う定数Lよりも大きく設定される。したがって急速弱め界磁処理は通常処理に比べると、d軸電流指令値Id*の絶対値を急速に大きくできる。
定数Hの値は、緊急操舵要求を必要とされる要因によって値を変えてもよい。たとえば、障害物との接触や衝突では定数H1とし、車線逸脱においては定数H2のようにすることも可能である。また、他の要因があれば、それに対応して定数H3、定数H4と増やしていくことも可能である。複数の緊急操舵要因があり、d軸電流指令値Id*の値がそれぞれの要因で異なった場合は、より絶対値の大きい方をd軸電流指令値Id*として採用すればよい。
図5に本実施形態における経過時間とd軸電流指令値Id*の関係の一例を示す。Vqsatは弱め界磁処理を必要とするある一定値をとっている。ここで、負の値であるd軸電流指令値Id*の絶対値が増加する場合のd軸電流指令値Id*の時間あたりの変化量を、立ち上がり勾配とし、負の値であるd軸電流指令値Id*の絶対値が減少する場合のd軸電流指令値Id*の時間あたりの変化量を、立ち下がり勾配とする。たとえば、d軸電流の初期値は0、目標値は−Idmaxとする。緊急操舵の要求があるまでの、d軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配は従来技術通りの通常処理であるが、緊急操舵の要求があったときは、d軸電流の絶対値が急速に増加し、d軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配が大きくなっていることがわかる。
たとえば、通常弱め界磁処理で0.1A/msecの傾きで負のd軸電流が立ち上がるようにd軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*を算出しているとする。HがLの三倍の大きさの場合、急速弱め界磁処理では0.3A/msecの傾きとなる。たとえば、d軸電流の初期値が0Aで狙い値を−100Aとした場合、通常弱め界磁処理では、1000msecを要するが、急速弱め界磁処理では333msecである。このように急速にd軸電流を減少させることができるので、急にハンドル操作した場合においても、モータの追従がよく安定した操舵支援が可能であるから、運転者は余分な力を必要とせず、負担が少ない。
急速弱め界磁処理処理を行っているとき、ハンドル操作に対するモータ出力の追従性はよくなるが、一方、急激な電流変動がトルク変動を引き起こすため騒音と振動はより増すと考えられる。しかし、緊急操舵中なので支援動作が優先される。
(第二実施形態)
次に第二実施形態について説明する。
本実施形態は運転支援ECU5が送信した緊急操舵要求の大きさとして、障害物との接近度合や、車線逸脱の迫り具合に応じて、d軸電流指令演算部38がd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を変化させるものである。本実施形態では、Vqsatは弱め界磁処理を必要とするある一定値をとっている。
障害物との接近度合と、車線逸脱の迫り具合との二つの緊急操舵要因がある場合について説明する。d軸電流指令演算部38は障害物との距離に任意に設定できる定数Xを掛けた値と、1.0のうちどちらか小さい値をC1として取得する。C1は補正係数を意味しており、障害物との距離が小さくなるほど、C1も小さくなる。
さらに、d軸電流指令演算部38は車線逸脱の迫り具合に、任意に設定できる定数Yを掛けた値と、1.0のうちどちらか小さい値をC2として取得する。C2は補正係数を意味しており、障害物との距離が小さくなればなるほど、C2も小さくなる。
定数Xと定数Yは本実施形態では違った値であるが、同じ値を使用してもよい。
他に緊急操舵の要因があれば、それに対応してC3、C4と補正係数Cを増やすことも可能である。
以上の計算式は式(4)、式(5)のように表される。
Figure 2018058418
式(6)にd軸電流指令値Id*の算出式を示す。障害物との接近度合や車線逸脱の迫り具合という二つの緊急操舵要因ごとに、d軸電流指令値Id*は二つある。この場合、絶対値の大きい方をd軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*として採用すればよい。
Figure 2018058418
定数H1は緊急操舵の要因が障害物との接近度合の時のd軸電流指令値Id*の計算に使われる定数であり、定数H2は緊急操舵の要因が車線逸脱の迫り具合の時のd軸電流指令値Id*の計算に使われる定数である。定数H1と定数H2は本実施形態では異なっているが、同じ値を使用してもよい。
障害物との距離が小さくなるほど、あるいは、車線逸脱の迫り具合が高まるほど、d軸電流指令値Id*の絶対値は大きく、立ち上がり勾配も大きくなり、より早くd軸電流を流すことができ、モータの追従性が上がる。
また、さらに複数の緊急操舵要因がある場合、d軸電流指令値Id*はさらに複数算出されるが、その場合、もっとも大きい絶対値のd軸電流指令値Id*を採用すればよい。
このように障害物との接近度合や車線逸脱の迫り具合に応じてd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を可変させる。緊急操舵の必要がより高い状況においては、急速弱め界磁処理を補正なしで行うよりも急激にd軸電流指令値Id*を増加させることができる。運転手のより急激な操舵にもアシストモータの出力が追従できるため、運転手の操舵に要する負担をより軽くすることができる。
本実施形態では緊急操舵要求の大きさとして障害物との接近度合や、車線逸脱の迫り具合に応じてd軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を変化させているが、d軸電流指令演算部38は、余裕時間TTEに応じてd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を変化させるようにしてもよい。緊急操舵要求の大きさとしてTTEを使用した場合の補正係数Cの算出式(7)と、d軸電流指令値Id*の算出式(8)を示す。
Figure 2018058418
d軸電流指令演算部38はTTEに任意に設定できる定数Zを掛けた値と、1.0とのうちどちらか小さい値をCとして取得する。Cは補正係数を意味している。TTEが小さくなるほど、それに定数Zを掛けた値であるCも小さくなる。
d軸電流指令値Id*は式(8)で与えられるため、式(7)におけるCが小さいほど、言い換えればTTEが小さいほど、d軸電流指令値Id*の絶対値は大きくなる。緊急操舵の要因が複数あるときは、d軸電流指令演算部38はそれぞれの要因ごとにd軸電流指令値Id*を計算して、絶対値がもっとも大きいものをd軸電流指令値Id*として採用する。
図6に本実施形態において、障害物との接近度合や、車線逸脱の迫り具合をTTEで表した場合の、経過時間とd軸電流指令値Id*の関係の一例を示す。Vqsatは弱め界磁処理を必要とするある一定値をとっているものとする。TTEがTTEthより大きい場合は、緊急操舵要求がないため、d軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*の設定に式(2)を使用して、通常の弱め界磁処理を行っている。TTEがTTEth以下になると、緊急操舵要求ありとして、d軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*の設定に式(7)と式(8)を使用して、TTEに応じてd軸電流指令値Id*を補正しながら、急速弱め界磁処理を行う。
このとき、図6よりTTEが小さくなるにしたがって、点線で表される急速弱め界磁処理を補正なしで行った場合のd軸電流指令値Id*よりも、実線で表される急速弱め界磁処理を補正ありで行ったd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配がより大きくなっていることがわかる。
一般的にd軸電流指令値Id*は時間あたりの出力で表されることが多い。そのため、障害物との接近度合や、車線逸脱の迫り具合を余裕時間TTEで求めて、それに応じて、d軸電流指令値Id*の出力の設定を行うと、上記実施形態の効果に加えて、精度の高い出力が可能となり、より安定した操舵支援が可能になる。
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。
d軸電流指令演算部38の動作を図7のフローチャートを用いて説明する。ステップS301で緊急操舵の要求を判定する。緊急操舵要求がある場合、ステップS302でタイマを0、フラグをオンにする。その後ステップS307の急速弱め界磁処理を行う。急速弱め界磁処理については、第一実施形態のステップS102と同様である。
緊急操舵要求がない場合、ステップS303にてフラグがオンかオフかを判定する。緊急操舵要求もなく、フラグもオフの場合はステップS306に移り、タイマを0、フラグはオフにして、ステップS308にて通常の弱め界磁処理を行う。
ステップS303にてフラグがオンの場合、ステップS304に移り、タイマがある閾値以上かどうかを判定する。この閾値をRT(Retention Time)とする。RTは緊急操舵要求がなくなってからも急速弱め界磁を続ける時間であり、任意に設定できる。タイマがRTよりも小さいならば、緊急操舵要求がなくても急速弱め界磁処理を続ける。タイマがRT以上であれば、ステップS304にてタイマを0、フラグはオフにして、ステップS308に移り通常弱め界磁処理を行う。
タイマが閾値RTよりも小さいのであれば、ステップS305にて、タイマの数値を増やして、ステップS307に移り、急速弱め界磁処理を行う。通常弱め界磁処理と急速弱め界磁処理とについては上記実施形態と同様である。
図8に本実施形態における経過時間とd軸電流指令値Id*の関係の一例を示す。Vqsatは時刻t310から、弱め界磁処理を必要とするある一定値をとっているとする。
時刻t310から時刻t311の間は、緊急操舵要求がないため通常の弱め界磁処理が行われている。
時刻t311経過後、TTEがTTEth以下になり、緊急操舵要求が必要とされると、フラグはオンになる。d軸電流指令演算部38は急速弱め界磁処理を行うので、d軸電流の立ち上がり勾配が大きくなる。時刻t311から時刻t312の間この勾配は維持される。
時刻t312経過後に、TTEがTTEthより大きくなり、緊急操舵要求はなくなる。この場合でもタイマがRT以上になるまでは、d軸電流指令演算部38は急速弱め界磁処理を続けようとするため、時刻t312から時刻t313の間、d軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配は大きいまま維持され続ける。フラグはオンのままである。
時刻t313経過後、TTEが再びTTEth以下になり、再度緊急操舵要求が必要とされると、タイマは0に戻る。時刻t313から時刻t314の間は緊急操舵要求があるので、d軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配は大きいまま維持され、タイマは常に0である。
時刻t314経過後、TTEがTTEthよりも大きくなり緊急操舵要求がなくなるが、タイマがRT以上になるまでは、急速弱め界磁処理が続く。
時刻t315経過後、タイマがRTよりも大きくなり、急速弱め界磁処理は終了し、タイマは0に戻り、フラグもオフになる。以後は緊急操舵要求もなく、かつ、タイマも0であるため、通常の弱め界磁処理が行われる。
障害物の移動や車体のふらつきなどがあり、たとえば時刻t311から時刻t314の間のように、短い時間で緊急操舵要求の有無が切り替わることがある。そのたびごとに、急速弱め界磁処理と、通常の弱め界磁処理が切り替わると、急激な電流変動により、振動や騒音が激しくなるだけでなく、モータ出力の追従性も悪くなり、運転者の負担が増す。
しかし、本実施形態では、上記実施形態の効果に加えて、緊急操舵要求の有無が短い時間間隔内で切り替わるときでも、常に急速弱め界磁処理を行うことができるためより安定した操舵支援が可能で、運転者の負担を少なくできる。
(第四実施形態)
次に第四実施形態について説明する。
d軸電流指令演算部38の動作を図9のフローチャートを用いて説明する。
ステップS401でq軸電圧飽和度VqsatがVqsatth以上かどうかを判定する。q軸電圧飽和度VqsatがVqsatthよりも小さいならば、ステップS402に移り、負のd軸電流指令値が流れている状態かどうかを判定する。流れていなければ、ステップS404に移り、d軸電流指令値Id*に対する操作は何も行わない。q軸電圧が飽和していなく、かつ弱め界磁処理も行われていない状況だからである。
ステップS402でId*<0の場合、ステップS403に移り、通常弱め界磁処理で負のd軸電流指令値Id*を目標値に戻す。このときは、たとえ急速弱め界磁処理を行っていた場合であっても、d軸電流指令値Id*を目標値に戻す際は急速に電流値を戻すのではなく通常弱め界磁処理と同じ立ち下がり勾配になるように、d軸電流指令演算部38はd軸電流指令値Id*を設定する。
qsatがVqsatthよりも大きい場合の動作は、ステップS301に移るが、それ以降の動作は第三実施形態と同一であり、説明を省略する。
図10に本実施形態における経過時間とd軸電流指令値Id*の関係の一例を示す。時刻t410になるまでは、VqsatがVqsatthよりも小さく、緊急操舵の要求もないため、弱め界磁処理は行わない。
時刻t410経過後、VqsatがVqsatth以上になるが、緊急操舵要求はないため、通常弱め界磁処理が行われる。
時刻t411経過後、TTEがTTEth以下になったので、緊急操舵要求が求められ、急速弱め界磁処理が開始する。フラグはオンになる。時刻t411から時刻t412の間、急速弱め界磁処理が続く。
時刻t412経過後、TTEがTTEthよりも大きくなったため、緊急操舵の必要性はなくなる。タイマがカウントを開始する。タイマがRTよりも小さく、カウント中なので、時刻t412から時刻t413の間、急速弱め界磁処理は継続する。
時刻t413経過後、再びTTEがTTEth以下になり、緊急操舵要求が求められる。時刻t413から時刻t414の間、急速弱め界磁処理は継続しつつ、タイマは0になる。
時刻t414経過後、VqsatはVqsatthよりも小さくなる。このとき緊急操舵要求が継続しているが、急速弱め界磁処理の必要はなく、通常の弱め界磁処理にて、d軸電流指令値Id*を目標値に戻すような処理が、時刻t414から時刻t415の間継続する。
時刻t415経過後、TTEはTTEthよりも大きくなり、緊急操舵要求がなくなる。その後も、時刻t414から時刻t415の間と同様に通常弱め界磁処理で、d軸電流指令値Id*を目標値に戻していく。
急速に負のd軸電流値Idを目標値に戻そうとすると、急激な電流変動によって、振動や騒音が激しくなる上、d軸電流Idの絶対値が急速に減少するため、追従性も悪くなり、運転者はハンドル操作に余分な力が必要になり負担が増すという問題がある。本実施形態は、上記実施形態の効果に加えて、急速弱め界磁処理を行った場合でも、d軸電流指令値Id*を目標値に戻す際は通常弱め界磁処理の時と同じ立ち下がり勾配で行う。そのため、より安定した操舵支援が可能であり、運転者の負担を少なくできる。
(第五実施形態)
第五実施形態について説明する。
第三、第四実施形態では緊急操舵要求がある間は、タイマを常に0とし、緊急操舵要求がなくなったときから、タイマがRTになるまでカウントを続け、その間は急速弱め界磁処理を行い続けるようにしている。
一方、緊急操舵要求があったときからタイマがある閾値HT(Holding Time)よりも大きくなるまでは急速弱め界磁処理を続けるようにすることもできる。
d軸電流指令演算部38の動作を図11のフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS501で緊急操舵要求があるかどうかを判定する。要求がある場合はステップS502に移り、ない場合はステップS505に移る。ステップS502では、フラグがオフかオンかを判定する。フラグがオフの場合は、今まで緊急操舵要求がなかったところに、緊急操舵の要求が来たことを意味している。このときは、ステップS504に移り、タイマを0にして、ステップS510でd軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を大きくして急速弱め界磁処理を行う。ステップS502でフラグがオンの場合、緊急操舵要求が継続していることを意味している。この場合ステップS503においてフラグはオンのままにして、タイマのカウントを増やし、ステップS510での急速弱め界磁処理を継続する。
ステップS501で緊急操舵要求がない場合は、ステップS505でタイマがHTより大きいかどうかを判断する。タイマがHT以上であればステップS506に移り、タイマがHTよりも小さいであれば、ステップS507に移る。タイマがHT以上であれば、ステップS506でタイマを0、フラグをオフにして、ステップS511で通常の弱め界磁処理を行う。一方タイマがHTよりも小さいのであれば、ステップS507でタイマが0どうかの判定を行う。
タイマが0であれば、ステップS508に移り、フラグをオフにし、ステップS511の通常弱め界磁処理を行う。タイマが0でない場合、つまりタイマがカウント中であれば、ステップS509に移り、タイマのカウントを増やし、フラグはオフにして、ステップS510での急速弱め界磁処理を行う。
図12に本実施形態における経過時間とd軸電流指令値Id*の関係の一例を示す。時刻t515経過後、Vqsatは弱め界磁処理を必要とするある一定値をとっている。時刻t515から時刻t516の間は緊急操舵要求がないため、通常弱め界磁処理が行われている。フラグもオフのままである。
時刻t516経過後、TTEがTTEth以下になり、緊急操舵要求があると、d軸電流指令演算部38は急速弱め界磁処理を開始して、d軸電流指令値Id*の立ち上がり勾配を大きくする。同時にタイマもカウントを開始し、フラグもオンになる。時刻t516から時刻t517の間、急速弱め界磁処理は続き、タイマはカウントし続ける。
時刻t517経過後、TTEがTTEthよりも大きくなり緊急操舵要求がなくなる。フラグはオフになり、タイマはHT以下なので時刻t517から時刻t518の間、急速弱め界磁処理は続く。
時刻t518経過後、再びTTEがTTEth以下になり緊急操舵要求が求められる。緊急操舵要求がない状態からある状態になったので、フラグはオンになり、タイマは0に戻る。時刻t518から時刻t519の間、急速弱め界磁処理は続き、タイマはカウントし続ける。
時刻t519経過後、TTEがTTEthよりも大きくなり緊急操舵要求はなくなる。フラグはオフになる。タイマはHTよりも小さいため、時刻t519から時刻t520の間、急速弱め界磁処理が続く。
時刻t520経過後、タイマがHTよりも大きくなると、フラグはオフになり、タイマも0に戻り、急速弱め界磁処理は終了し、通常の弱め界磁処理が行われる。
時刻t516から時刻t519の間のように緊急操舵要求の有無が短い時間間隔内で切り替わったとしても、常に急速弱め界磁処理を行うことができる。そのため本実施形態でも第三実施形態と同様の効果が得られる。
(他の実施形態)
(a)上記実施形態では、図1に示すように各種センサのデータは一度運転支援ECU5に送られる。運転支援ECU5で緊急操舵の必要性や、TTE等を算出してからそのデータはEPS−ECU2に送信される。運転支援ECU5とEPS−ECU2はCANによって接続されているが、通信速度が遅く、迅速な判断が必要な場合は対応できない。
そのため図13に示すように、各種センサの一部または全部とEPS−ECU2をCANに加えて専用線41でさらに接続することもできる。専用線はデータ送信速度も速いので、EPS−ECU2内で緊急操舵の判定やTTE等の算出を迅速に行うことができる。図13では障害物及び車線逸脱検出装置6と周辺監視ECU7以外のセンサは搭載されていないものとしたが、もちろん自車情報を取得する役割を持つ各種センサが搭載されていてもかまわない。他にも、各種センサと運転支援ECU5とEPS−ECU2との接続の一部若しくは全部を無線にし、配線取り回しを少なくコンパクトに収容することや、運転支援ECU5を介さず、緊急操舵の必要性判定機能をEPS−ECU2に持たせるなど、様々な態様が考えられる。
(b)上記実施形態ではEPS―ECU2とアシストモータ18とは別個の装置として説明したが、本発明はEPS−ECU2とアシストモータ18を一体化したものであっても適用可能である。また障害物及び車線逸脱検出装置6と周辺監視ECU7とは本実施形態では別個の装置として説明したが、一体化した一つの装置であっても適用化である。
(c)上記実施形態ではアシストモータ18は、永久磁石表面貼付型であるが、永久磁石埋込型であってもよい。また、本発明はモータが誘導式のものであっても適用可能である。
(d)緊急操舵要求の発生要因としては、障害物との衝突回避、車線の逸脱防止の他、例えば、自車両の進行方向の前方の道路が陥没していることや、道路表面にオイルが散布されていること及び路面の凍結などを検出した場合等が想定される。現在の速度、加速度及び方向のまま走行すると、転落やスリップ等の危険が予測される場合、緊急操舵要求が発生したと判定される。
以上、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施可能である。
1 緊急操舵支援システム
2 EPS−ECU
5 運転支援ECU
13 電動パワーステアリング装置
18 アシストモータ
38 d軸電流指令演算部
40 緊急操舵要求判定装置

Claims (7)

  1. 運転者の操舵をアシストするアシストモータ(18)、及び、前記アシストモータのq軸電圧飽和度(Vqsat)に基づき前記アシストモータのd軸電流指令値(Id*)を算出するd軸電流指令演算部(38)を含み前記アシストモータの駆動を制御するEPS−ECU(2)を有する電動パワーステアリング装置(13)と、
    自車両の周辺情報に基づく予測により、運転者が現在のハンドルの位置を緊急に変化させる必要のある緊急操舵要求が発生したことを判定する緊急操舵要求判定装置(40)と、を備え、
    負の値である前記d軸電流指令値の絶対値が増加する時間あたりの前記d軸電流指令値の変化量を立ち上がり勾配と定義すると、
    前記緊急操舵要求判定装置により、前記緊急操舵要求が発生したと判定された場合、
    前記d軸電流指令演算部は、前記d軸電流指令値の前記立ち上がり勾配を、前記緊急操舵要求が発生していないときである通常時の前記立ち上がり勾配よりも大きくする緊急操舵支援システム(1)。
  2. 前記緊急操舵要求判定装置は、自車両に接近する障害物の情報に基づいて予測される前記障害物との衝突を回避する要求を前記緊急操舵要求として判定する、
    請求項1に記載の緊急操舵支援システム。
  3. 前記緊急操舵要求判定装置は、自車両の情報と自車両進行方向の車線の情報とに基づいて予測される車線逸脱を回避する要求を前記緊急操舵要求として判定する、
    請求項1に記載の緊急操舵支援システム。
  4. 前記d軸電流指令演算部は、
    前記緊急操舵要求の大きさに応じて、前記立ち上がり勾配を可変させる、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の緊急操舵支援システム。
  5. 前記緊急操舵要求の大きさは、時間で表される、
    請求項4に記載の緊急操舵支援システム。
  6. 前記d軸電流指令演算部は、前記緊急操舵要求の発生時又は消失時から所定の期間、前記立ち上がり勾配を、前記通常時の前記立ち上がり勾配よりも大きいまま維持する、
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の緊急操舵支援システム。
  7. 負の値である前記d軸電流指令値の絶対値が減少する時間あたりの前記d軸電流指令値の変化量を立ち下がり勾配と定義すると、
    前記d軸電流指令演算部は、前記緊急操舵要求が発生しているときの前記立ち下がり勾配を前記通常時の前記立ち下がり勾配と同じにする、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載の緊急操舵支援システム。
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