JP2018058250A - 樹脂シート、プリント配線板及び部品内蔵基板 - Google Patents

樹脂シート、プリント配線板及び部品内蔵基板 Download PDF

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Abstract

【課題】プリント配線板材料における絶縁層に使用した場合に、絶縁層とその表面にめっき形成される導体層との密着性に優れ、完全硬化した際の熱膨張率が低い樹脂組成物を得る。【解決手段】高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、当該外層上に積層された樹脂組成物からなる絶縁層とを含む樹脂シートであって、該樹脂組成物が、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)及びシリコーン複合パウダー(C)を含有する樹脂シートであり、該樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物のヤング率をE(GPa)、熱膨張係数をα(ppm/K)とし、ヤング率Eと熱膨張係数αを掛け合わせた熱応力係数をXとした際に、熱応力係数Xの値が150〜204GPa・ppm/Kとなるものである樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シート、プリント配線板及び部品内蔵基板に関する。
近年、電子機器の小型化、高性能化が進んでいる。そこで、様々な機能を有するモジュールが実装されたSiP(System−in−Package)基板の開発が進められてきた。さらに実装部品の省スペース化を図るために、現在では樹脂基板の内部に、ICやコンデンサー等の部品を内蔵した部品内蔵基板が注目されている。
各種部品は、コアとなる樹脂基板や銅基板に、任意のキャビティを形成し、キャビティに部品を配置した後、キャビティに対し、熱硬化性樹脂を熱圧着することで部品は内蔵されるが、該熱硬化性樹脂にはキャビティの埋め込み性、部品との密着性が求められる。
これに対して各種取り組みがなされていた。例えば特許文献1には電子部品モジュール及びこれを内蔵した部品内蔵基板の構成について、埋め込み樹脂に要求される硬化後のパラメーターが記載されている。
特許文献2には、液状封止用樹脂組成物について、流動性を発現するために液状エポキシ樹脂を使用した樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、部品埋め込み用である樹脂シートについて、150〜250℃の熱膨張係数α2の値を向上させることで、部品と樹脂間のクラック性が改善すると記載されている。
特開2008−159973号公報 国際公開第2012/157665号パンフレット 特開2016−8279号公報
特許文献1について、樹脂シートに要求されるパラメーターの記載はあるが、実施例の記載は無く、最適な材料について不明瞭であった。
特許文献2について、液状成分として液状エポキシが用いられているが、ガラス転移温度は約230℃に留まっていた。
特許文献3について、熱膨張係数α2を向上させることで、熱時の部品とのクラックを改善しているが、熱膨張係数や応力に関する記載は無い。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、部品内蔵基板を作成するために、キャビティへの良好な埋め込み性及び部品との良好な接着性を備え、硬化物のガラス転移温度が高い樹脂シートを得ることであり、これを用いたプリント配線板及び部品内蔵基板を提供することである。
すなわち、本発明はプリント配線板材料における絶縁層及び部品内蔵基板における部品埋め込み用材料に使用した場合に、Bステージ状態における可撓性に優れ、溶融時の粘度が低く、部品埋め込み成形性に優れ、Cステージ状態において部品との密着性に優れ、完全硬化した際のガラス転移温度が高い樹脂シートを得、これを用いたプリント配線板及び部品内蔵基板を提供することである。
本発明者らは鋭意検討した結果、高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、該外層上に積層された樹脂組成物からなる絶縁層とを含む樹脂シートであって、該樹脂組成物が、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)及びシリコーン複合パウダー(C)を含有し、該樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物のヤング率をE(GPa)、熱膨張係数をα(ppm/K)とし、ヤング率Eと熱膨張係数αを掛け合わせた熱応力係数をXとした際に、熱応力係数Xの値が150〜204GPa・ppm/Kとなるものである、樹脂シートにより、上記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]
高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、該外層上に積層された樹脂組成物からなる絶縁層とを含む樹脂シートであって、該樹脂組成物が、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)及びシリコーン複合パウダー(C)を含有し、該樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物のヤング率をE(GPa)、熱膨張係数をα(ppm/K)とし、ヤング率Eと熱膨張係数αを掛け合わせた熱応力係数をXとした際に、熱応力係数Xの値が150〜204GPa・ppm/Kとなるものである、樹脂シート。
[2]
樹脂組成物がマレイミド化合物(D)をさらに含有する、[1]に記載の樹脂シート。
[3]
樹脂組成物がエポキシ化合物(E)をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂シート。
[4]
樹脂組成物が多官能シアン酸エステル化合物(F)をさらに含有する、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[5]
樹脂組成物中の二官能シアン酸エステル化合物(A)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、5質量部以上である、請求項[1]〜[4]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[6]
樹脂組成物中の無機充填材(B)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、200質量部以上である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[7]
樹脂組成物中のシリコーン複合パウダー(C)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、15質量部以上である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[8]
前記金属箔又は金属フィルムが、銅又はアルミニウムの箔又はフィルムである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[9]
前記高分子フィルムが、ポリエステル、ポリイミド及びポリアミドからなる群から選択される、いずれか一種である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[10]
前記樹脂組成物からなる絶縁層が、Bステージ状態のものである、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[11]
前記Bステージ状態の絶縁層の最低溶融粘度が1,000Pa・s以下である、[10]に記載の樹脂シート。
[12]
[1]〜[11]に記載の樹脂シートを含有する、プリント配線板。
[13]
[1]〜[11]に記載の樹脂シートを含有する、部品内蔵基板。
本発明の樹脂シートは、以下の(1)〜(4)の効果の少なくとも何れか、好ましくは全てを発揮する。
(1)Bステージ状態にある樹脂シートの可撓性に優れる。
(2)樹脂の溶融粘度が低く、成形性及び部品埋め込み性に優れる。
(3)Cステージ状態における樹脂硬化物と部品の密着性に優れる。
(4)高いガラス転移温度を有する。
本明細書において、Bステージ状態とは、樹脂組成物が半硬化状態であり、加熱及び加圧により溶融成形可能な状態を指し、Cステージ状態とは、樹脂組成物が完全に硬化した状態を指す。
本発明の一態様は、高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、該外層上に積層された樹脂組成物からなる絶縁層とを含む樹脂シートであって、該樹脂組成物が、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)及びシリコーン複合パウダー(C)を含有し、該樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物のヤング率をE(GPa)、熱膨張係数をα(ppm/K)とし、ヤング率Eと熱膨張係数αを掛け合わせた熱応力係数をXとした際に、熱応力係数Xの値が150〜204GPa・ppm/K以下となるものである、樹脂シートである。
熱応力係数Xの値をこのような範囲のものとすることで、樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物と部品間の接着性が良好で、硬化物の低熱膨張性及び耐熱性を優れたものとすることができる。
〔I−1.二官能シアン酸エステル化合物(A)〕
本発明に使用される二官能シアン酸エステル化合物(A)は、シアナト基(シアン酸エステル基)を有する化合物であって、その官能基数が2つであれば特に限定されない。
二官能性シアン酸エステル化合物(A)によって、Bステージ状態の溶融粘度を低減し、部品埋め込み成形性を向上させることが出来る。
二官能シアン酸エステル化合物(A)として具体的には、ビスフェノールA型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールAP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールAF型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールB型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールBP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールC型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールE型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールF型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールG型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールM型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールS型シアン酸エステル、ビスフェノールP型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールPH型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールTMC型シアン酸エステル化合物、ビスフェノールZ型シアン酸エステル化合物、ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル等が挙げられる。二官能シアン酸エステル化合物(A)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
これらの二官能シアン酸エステル化合物(A)は、本発明の樹脂シートにおいて、Bステージ状態における可撓性を改善し、また最低溶融粘度を低減させて成形性及び埋め込み性を優れたものとし、Cステージ状態における耐薬品性、高ガラス転移温度、低熱膨張性等に優れた特性を付与することができる。
さらに、二官能シアン酸エステル化合物(A)は、室温下で液状のものであれば、上記特性をより発揮するため、より好ましい。
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をシアナト化(シアン酸エステル化)して得られる構造を有するシアン酸エステル化合物(A)を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型シアン酸エステル化合物」との記載を付して表す場合がある。
ジアリルビスフェノールA型シアン酸エステル化合物としては、式(1)で表される化合物を指す。
Figure 2018058250
本発明における二官能シアン酸エステル化合物(A)の樹脂組成物における含有量は特に限定されないが、Bステージ状態における樹脂の可撓性の観点から、樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対し、5質量部以上が好ましく、10質量部以上が特に好適である。特に制限されないが、タック性を抑制する観点から、30質量部以下であることが好ましい。
〔I−2.無機充填材(B)〕
本発明に使用される無機充填材(B)は、当業界で用いられるものであれば特に制限されないが、例としては、シリカ(例えば天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ等)、アルミニウム化合物(例えばベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ等)、マグネシウム化合物(例えば酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(例えば炭酸カルシウム等)、モリブデン化合物(例えば酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、タルク(例えば天然タルク、焼成タルク等)、マイカ(雲母)、ガラス(例えば短繊維状ガラス、球状ガラス、微粉末ガラス(例えばEガラス、Tガラス、Dガラス等)等)、チタン(例えば酸化チタン、チタン酸バリウム等)、ジルコニア化合物(例えば酸化ジルコニウム等)、などが挙げられる。無機充填材(B)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
これらの中でも、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好適である。
特に、低熱膨張性の観点から、シリカが好ましく、その中でも溶融シリカが特に好ましい。溶融シリカの具体例としては、電気化学工業(株)製のSFP−130MC等、(株)アドマテックス製のSC2050―MB、SC2500―SQ、SC4500−SQ等が挙げられる。
無機充填材(B)の平均粒子径は、限定されるものではないが、樹脂シートの製造性向上の観点からは、0.01〜5.0μmが好ましく、0.2〜2.0μmがより好ましい。なお、本明細書において無機充填材(B)の「平均粒子径」とは、無機充填材(B)のメジアン径を意味するものとする。ここでメジアン径とは、ある粒子径を基準として粉体の粒度分布を2つに分けた場合に、より粒径が大きい側の粒子の個数又は質量と、より粒径が小さい側の個数又は質量とが、全粉体の夫々50%を占めるような粒子径を意味する。無機充填材(B)の平均粒子径(メジアン径)は、湿式レーザー回折・散乱法により測定される。
本発明における無機充填材(B)の樹脂組成物における含有量は、硬化物の熱膨張係数αを低減し、熱応力係数Xを低減することで、部品との密着性を得るという観点から、樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対し、200質量部以上とすることが好ましく、250質量部以上とすることが好ましい。また、最低限の成形性を発現させる観点から、1000質量部以下とすることが好ましい。
〔I−3.シリコーン複合パウダー(C)〕
シリコーン複合パウダーとは、ビニル基含有ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンの付加重合物による微粉末にシリコーンレジンで表面を被覆して分散性を向上させたものである。シリコーン複合パウダー(C)は、分散性の観点から、平均粒子径が1〜15μmの範囲であることが好ましい。
シリコーン複合パウダー(C)としては、前記したように製造して得る他に、市販品を利用することもできる。市販品としては、例えば信越化学工業(株)製のKMP−600、KMP−601、KMP−602、KMP−605、X−52−7030等が挙げられる。
シリコーン複合パウダー(C)は、硬化物のヤング率E及び熱膨張係数αを低減し、熱応力係数Xを低減することで、部品との密着性を得るという観点から、樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対し、15質量部以上含まれることが好ましい。良好な埋め込み性を得るという観点からは、40質量部以下であることが好ましい。
〔I−4.マレイミド化合物(D)〕
本発明においては、樹脂シートの絶縁層の吸湿耐熱性を向上させる場合に、マレイミド化合物(D)を使用することが好ましい。使用されるマレイミド化合物(D)としてはマレイミド基を有する化合物であれば、特に限定されず、具体的には、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、2,2−ビス{4−(4−マレイミドフェノキシ)−フェニル}プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、トリス(4−マレイミドフェニル)メタン、長鎖アルキルビスマレイミド、式(2)で表されるマレイミド化合物、などが挙げられる。
この中でも吸湿耐熱性、耐燃性の観点から式(2)で表されるマレイミド化合物が好ましい。該化合物は市販品を用いることができ、そのようなものとしては、ケイ・アイ化成(株)製、BMI−2300等がある。
Figure 2018058250
(式中、Rは各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。nは平均値として1〜10の範囲である。)
なお、これらマレイミド化合物(D)は、プレポリマー、又はマレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどの形で用いることができる。マレイミド化合物(D)及びそのプレポリマーは、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
〔I−5.エポキシ化合物(E)〕
本発明に使用されるエポキシ化合物(E)は、例えば樹脂シートにおいて吸湿耐熱性、基板・銅箔との密着性、絶縁性、電気特性等を求められる場合には、それぞれの特性に応じた構造を有するものを用いることができ、好適に使用することができる。
エポキシ化合物(E)としては、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ビフェニルアラルキル樹脂)、ナフタレン型エポキシ化合物(ナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン2官能型エポキシ化合物)、ビスナフタレン型エポキシ化合物(ビスナフタレン骨格を有するエポキシ基含有化合物:ナフタレン4官能型エポキシ化合物)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物(エポキシ基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、アントラキノン型エポキシ化合物(アントラキノン骨格を有するエポキシ基含有化合物)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物(エポキシ基含有ナフトールアラルキル樹脂)、ザイロック型エポキシ化合物(エポキシ基含有ザイロック樹脂)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、3官能フェノール型エポキシ化合物(3官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、4官能フェノール型エポキシ化合物(4官能フェノール骨格を有するエポキシ基含有化合物)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ビフェニル骨格を有するエポキシ基含有化合物)、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ化合物(トリアジン骨格含有エポキシ樹脂)脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエステル、ブタジエン等の二重結合含有化合物の二重結合をエポキシ化した化合物、及び水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物(E)は、樹脂シートとして求められる特性に応じ、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をエポキシ化して得られる構造を有するエポキシ化合物を、その樹脂又は化合物の名称に「〜型エポキシ化合物」との記載を付して表す場合がある。
これらの中でも、エポキシ化合物(E)としては、絶縁層とめっき導体層との密着性及び難燃性等の観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物(好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂を、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素で変性し、更に当該水酸基をエポキシ化した化合物や、フェノール、キシレノール等の水酸基含有芳香族炭化水素をホルムアルデヒドと重合して得られた芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の当該水酸基をエポキシ化した化合物等)、アントラキノン型エポキシ化合物、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、及びザイロック型エポキシ化合物、からなる群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
エポキシ化合物(E)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それらを適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、エポキシ化合物(E)を製造してもよい。斯かる製法の例としては、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してエポキシ化(エポキシ基導入)する方法等が挙げられる。
〔I−6.多官能シアン酸エステル化合物(F)〕
本発明においては、樹脂シートの絶縁層の耐薬品性、高ガラス転移温度、低熱膨張性を向上させる場合に、多官能シアン酸エステル化合物(F)を用いることが好ましい多官能シアン酸エステル化合物(F)としては、シアナト基(シアン酸エステル基)を3つ以上有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂)、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ビフェニルアラルキル樹脂)、及びノボラック型シアン酸エステル化合物(シアナト基含有ノボラック樹脂)等が挙げられ、多官能シアン酸エステル化合物(F)は、1種もしくは2種以上を適宜混合して使用することも可能である。
ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、式(3)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018058250
(式中、Rは各々独立に水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。nは1以上の整数を示す。)
ノボラック型シアン酸エステル化合物としては、式(4)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018058250
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。nは1以上の整数を示す。)
ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、式(5)で表される化合物が好ましい。
Figure 2018058250
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、中でも水素原子が好ましい。nは1以上の整数を示す。)
多官能シアン酸エステル化合物(F)としては、様々な構造の既製品が市販されており、それら適宜入手して用いることができる。また、公知の種々の製法を用いて、シアン酸エステル化合物(F)を製造してもよい。斯かる製法の例としては、所望の骨格を有する水酸基含有化合物を入手又は合成し、当該水酸基を公知の手法により修飾してシアナト化する方法等が挙げられる。水酸基をシアナト化する手法としては、例えば、Ian Hamerton,“Chemistry and Technology of Cyanate Ester Resins,”Blackie Academic & Professionalに記載の手法が挙げられる。
〔I−7.その他の成分〕
本発明の樹脂シートにおいては、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)、シリコーン複合パウダー(C)、マレイミド化合物(D)、エポキシ化合物(E)、多官能シアン酸エステル化合物(F)の他に、その他の1又は2種以上の成分を含有していてもよい。
例えば、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、吸湿耐熱性向上の目的で、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、限定されない。具体例としては、アミノシラン系シランカップリング剤(例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン系シランカップリング剤(例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、ビニルシラン系シランカップリング剤(例えばγ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオン性シラン系シランカップリング剤(例えばN−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、フェニルシラン系シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
シランカップリング剤を使用する場合、その含有量は限定されるものではないが、吸湿耐熱性向上の観点からは、無機充填材(B)に対して、シランカップリング剤の比率を0.05〜5質量%とするのが好ましく、0.1〜3質量%とするのがより好ましい。なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
また、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、樹脂シートの製造性向上等の目的で、湿潤分散剤を含有してもよい。湿潤分散剤としては、一般に塗料等に使用されている湿潤分散剤であれば、限定されない。具体例としては、ビッグケミー・ジャパン(株)製のDisperbyk−110、同−111、同−180、同−161、BYK−W996、同−W9010、同−W903等が挙げられる。これらの湿潤分散剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
湿潤分散剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は限定されるものではないが、樹脂シートの製造性向上の観点からは、無機充填材(B)に対して、湿潤分散剤の比率を0.1〜5質量%とするのが好ましく、0.5〜3質量%とするのがより好ましい。なお、2種以上の湿潤分散剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
また、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、硬化速度の調整等の目的で、硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤としては、エポキシ化合物やシアン酸エステル化合物等の硬化促進剤として公知であり、一般に使用されるものであれば、特に限定されない。具体例としては、銅、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属を含む有機金属塩類(例えばオクチル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等)、イミダゾール類及びその誘導体(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール等)、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン等)等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物におけるその含有量は限定されるものではないが、高いガラス転移温度を得る観点からは、樹脂組成物の樹脂固形分100質量部に対し、硬化促進剤の比率を0.01〜5質量部とするのが好ましく、0.05〜4質量部とするのがより好ましい。なお、2種以上の硬化促進剤を併用する場合には、これらの合計量が上記比率を満たすことが好ましい。
また、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、所期の特性が損なわれない範囲において、その他の種々の高分子化合物及び/又は難燃性化合物等を含有してもよい。高分子化合物及び難燃性化合物としては、一般に使用されているものであれば限定されない。高分子化合物の例としては、各種の熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂並びにそのオリゴマー、エラストマー類等が挙げられる。難燃性化合物の例としては、リン含有化合物(例えばリン酸エステル、リン酸メラミン、リン含有エポキシ樹脂等)、窒素含有化合物(例えばメラミン、ベンゾグアナミン等)、オキサジン環含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。これらの高分子化合物及び/又は難燃性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物には、所期の特性が損なわれない範囲において、種々の目的により、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、光増感剤、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、分散剤、レベリング剤、光沢剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔I−8.樹脂組成物〕
本発明の絶縁層に用いられる樹脂組成物は、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)、シリコーン複合パウダー(C)の他に、その他の1又は2種以上の成分を混合することにより調製される。必要に応じて、これらの成分を有機溶剤に溶解させた溶液の形態(ワニス)としてもよい。斯かる溶液は、後述する本発明の樹脂シートを作製する際のワニスとして、好適に使用することができる。有機溶剤としては、上述の成分を各々好適に溶解又は分散させることができ、且つ、本発明の樹脂組成物の所期の効果を損なわないものであれば限定されない。具体例としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール等)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、アミド類(例えばジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)、芳香族炭化水素類(例えばトルエン、キシレン等)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
〔II−1.樹脂シート〕
本発明の樹脂シートは、外層上に、上述した樹脂組成物からなる絶縁層が積層されたものである。
上記外層は、高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムから選択される。
高分子フィルムの具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリウレタン、エチレン‐酸化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリイミド及びポリアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を含有するフィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルムが挙げられ、これらの中でも、特にポリエステル、ポリイミド、ポリアミドが好ましく、その中でもポリエステルの一種である、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
また、高分子フィルムの厚さは特に限定されず、例えば、0.002〜0.1mmであってもよい。
金属箔、金属フィルムの具体例としては、銅やアルミニウム等の金属からなる箔又はフィルムが挙げられ、中でも銅箔又は銅フィルムが好ましく、特に電解銅箔、圧延銅箔、銅合金フィルム等が好適に使用できる。金属箔又は金属フィルムには、例えばニッケル処理やコバルト処理等、公知の表面処理が施されていてもよい。金属箔又は金属フィルムの厚さは、使用用途によって適宜調整することができるが、例えば5〜70μmの範囲が好適である。
上述の外層上に、上述した樹脂組成物からなる絶縁層を形成して本発明の樹脂シートを製造するが、その方法は特に限定されるものではない。例としては、樹脂組成物を有機溶剤に溶解又は分散させた溶液(ワニス)を、上述の外層の表面に塗布し、加熱及び/又は減圧下で乾燥し、溶媒を除去して樹脂組成物を固化させ、絶縁層を形成する手法等が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、絶縁層に対する有機溶剤の含有比率が絶縁層の総量に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下となるように乾燥させる。斯かる乾燥を達成する条件は、ワニス中の有機溶媒量によっても異なるが、例えば30〜60質量部の有機溶剤を含むワニスの場合、50〜160℃の加熱条件下で3〜10分程度乾燥させればよい。本発明の樹脂シートにおける樹脂組成物層の厚さは限定されないが、樹脂組成物層の乾燥時に軽揮発分をより良好に除去する観点、及び樹脂シートとしての機能をより有効かつ確実に奏する観点から、0.1〜500μmの範囲が好適である。
本発明の樹脂シートは、プリント配線板のビルドアップ材料及び部品内蔵基板の部品埋め込み用材料として使用可能である。プリント配線板及び部品内蔵基板については後述する。
〔II−2.プリント配線板及び部品内蔵基板〕
本発明のプリント配線板は、コア基材と呼ばれる樹脂絶縁層が完全硬化した金属箔張積層板に対し、本発明の樹脂シートをビルドアップ材として用いることにより得ることができる。コア基材の表面には通常当業界で用いられる金属箔張積層板の金属箔、又は金属箔を剥離した後にめっきするなどして得られる導体層により導体回路を形成する。
コア基材とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また、多層プリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいうプリント配線板に含まれる。なお、導体層(回路)表面は黒化処理等により予め粗化処理が施されていた方が絶縁層の回路基板への密着性の観点から好ましい。
具体的に、本発明の樹脂シートをビルドアップ材料又は、部品内蔵基板の部品埋め込み用材料として用いる場合は、常法により、導体回路及び/又は部品に対し、当該樹脂シートを積層した後(積層成形)、当該樹脂シートの樹脂組成物層(絶縁層)を表面処理し、絶縁層表面にめっきにより配線パターン(導体層)を形成することにより、本発明のプリント配線板又は、部品内蔵基板が得られる。
必要に応じてその他の各種の工程(例えば、ビアホール、スルーホール等を形成する穴加工処理等)を加えてもよい。
以下、本発明のプリント配線板を製造するための各工程について説明する。
積層成形は、通常のプリント配線板用積層板の積層成形に一般に使用される手法、例えば、多段プレス、多段真空プレス、ラミネーター、真空ラミネーター、オートクレーブ成形機等を使用し、温度は例えば100〜300℃、圧力は例えば0.1〜100kgf/cm(約9.8kPa〜約38MPa)、加熱時間は例えば30秒〜5時間の範囲で適宜選択して行う。また、必要に応じて、例えば150〜300℃の温度で後硬化を行い、硬化度を調整してもいい。
穴加工処理は、ビアホール、スルーホール等の形成のために実施される。穴加工処理は、NCドリル、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、YAGレーザー、プラズマ等の公知の方法のうち何れか1種を用い、或いは必要により2種以上を組み合わせて行う。
絶縁層に対する表面処理は、スミア除去の観点から実施される。表面処理としては、粗化処理、シランカップリング処理等がある。粗化処理は、孔あけ工程により生じたスミアの除去も兼ねる。この場合、樹脂組成物の硬化度の違いにより、粗化状態が異なるため、後述の積層成形の条件は、その後の粗化処理条件やめっき条件との組み合わせで最適な条件を選ぶことが好ましい。
粗化処理は、膨潤工程、表面粗化および及びスミア溶解工程、および及び中和工程からなる。膨潤工程は、膨潤剤を用いて表面絶縁層を膨潤させることにより行う。膨潤剤としては、表面絶縁層の濡れ性が向上し、次の表面粗化および及びスミア溶解工程において酸化分解が促進される程度にまで表面絶縁層を膨潤させることができるものであれば、制限されない。例としては、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられる。
表面粗化および及びスミア溶解工程は、酸化剤を用いて行う。酸化剤としては、例えばアルカリ性の過マンガン酸塩溶液等が挙げられ、好適な具体例としては、過マンガン酸カリウム水溶液、過マンガン酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。斯かる酸化剤処理はウェットデスミアと呼ばれるが、当該ウェットデスミアに加えて、プラズマ処理やUV処理によるドライデスミア、バフ等による機械研磨、サンドブラスト等の他の公知の粗化処理を、適宜組み合わせて実施してもよい。
中和工程は、前工程で使用した酸化剤を還元剤で中和するものである。還元剤としては、アミン系還元剤が挙げられ、好適な具体例としては、ヒドロキシルアミン硫酸塩水溶液、エチレンジアミン四酢酸水溶液、ニトリロ三酢酸水溶液等の酸性水溶液が挙げられる。
めっきにより配線パターン(導体層)を形成する方法としては、セミアディティブ法、フルアディティブ法、サブトラクティブ法等が挙げられる。
サブトラクティブ法でパターン形成する手法の例としては、当該樹脂シートの支持体である銅箔、もしくは絶縁層表面にめっきにより形成した導体層に対し、エッチングレジストを用いて選択的に銅箔、もしくは導体層を除去することにより、配線パターンを形成する手法が挙げられる。
セミアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面に無電解めっき等により薄い導体層を形成した後、めっきレジストを用いて選択的に電解めっきを施し(パターンめっき)、その後めっきレジストを剥離し、全体を適量エッチングして配線パターン形成する手法が挙げられる。
フルアディティブ法でパターン形成する手法の例としては、絶縁層表面にめっきレジストを用いて予めパターン形成を行い、選択的に無電解めっき等を付着させることにより配線パターンを形成する手法が挙げられる。
本発明のプリント配線板は、多層プリント配線板とすることも可能である。例えば、めっき処理を実施した本発明の積層板を形成した後、これに内層回路を形成し、得られた回路に黒化処理を実施して、内層回路板とする。こうして得られた内層回路板の片面又は両面に、本発明の樹脂シートを配置し、更に金属箔(例えば銅やアルミニウム等)又は離型フィルム(ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム等の表面に離型剤を塗布したフィルム)をその外側に配置する、という操作を繰り返し、積層成形することにより、多層プリント配線板が製造される。
本発明の部品内蔵基板は、キャビティを形成したコア基材に、任意の部品を配置し、当該樹脂シートを部品埋め込み用材料として積層成形することにより、製造される。
部品とは、主として、ICチップ、コンデンサー、センサー等の、モジュールを形成するための構成要素のことを指す。
当該樹脂シートを積層することで、部品内蔵基板を形成した後、前項に記載したプリント配線板の製造工程と同様に、穴加工処理や配線パターンを形成することが可能である。
以下に合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
シアン酸エステル化合物の製造
・合成例1 α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(6)の合成:
Figure 2018058250
(式中、nは平均値として3から4までの範囲である。)
温度計、攪拌器、滴下漏斗及び還流冷却器を取りつけた反応器を予め食塩水により0〜5℃に冷却しておき、そこへ塩化シアン7.47g(0.122mol)、35%塩酸9.75g(0.0935mol)、水76ml、及び塩化メチレン44mlを仕込んだ。
この反応器内の温度を−5〜+5℃、pHを1以下に保ちながら、撹拌下、下記式(7)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂(SN485、OH基当量:214g/eq.軟化点:86℃、新日鐵化学(株)製)20g(0.0935mol)、及びトリエチルアミン14.16g(0.14mol)を塩化メチレン92mlに溶解した溶液を滴下漏斗により1時間かけて滴下し、滴下終了後、更にトリエチルアミン4.72g(0.047mol)を15分間かけて滴下した。
Figure 2018058250
(式中、nは平均値として3から4までの範囲である。)
滴下終了後、同温度で15分間撹拌後、反応液を分液し、有機層を分取した。得られた有機層を水100mlで2回洗浄した後、エバポレーターにより減圧下で塩化メチレンを留去し、最終的に80℃で1時間濃縮乾固させて、上記化合物(6)で表されるα−ナフトールアラルキル樹脂のシアン酸エステル化物(α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物)23.5gを得た。
樹脂組成物及び樹脂シートの作製
・実施例1:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のメチルエチルケトン(以下「MEK」と略す場合がある。)溶液(不揮発分40質量%)50質量部(不揮発分換算で20質量部)、無機充填材(B)として、溶融シリカ(SFP−330MC、電気化学工業(株)製、平均粒子径0.7μm)150質量部、溶融シリカ(SC−4053SQ、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.1μm)150質量部、シリコーン複合パウダー(C)として、シリコーン複合パウダー(KMP−605M、信越化学(株)製、平均粒子径3μm)15質量部、マレイミド化合物(D)として、ノボラック型マレイミド(BMI−2300、マレイミド当量:186g/eq.、大和化成工業(株)製)40質量部、エポキシ化合物(E)として、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物(HP−9500、エポキシ当量:230g/eq.、DIC(株)製)30質量部、多官能シアン酸エステル化合物(F)として、合成例1によって得られたα−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアン酸エステル当量:261g/eq.)のMEK溶液20質量部(不揮発分換算で10質量部)、硬化促進剤としてオクチル酸マンガンのMEK溶液1.0質量部(不揮発分換算で0.1質量部)をMEKに溶解又は分散させた。その後、高速攪拌装置を用いて30分間攪拌して、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)、シリコーン複合パウダー(C)、マレイミド化合物(D)、エポキシ化合物(E)、多官能シアン酸エステル化合物(F)を含む樹脂組成物の溶液を得た。このワニスを、銅箔(MT−Ex、三井金属鉱業(株)製)のマット面に対して塗布し、平均温度110℃で5分間加熱乾燥して、銅箔を支持体とした、樹脂厚100μmの樹脂シートを得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは200であり、請求項1記載の範囲内に該当する。
密着性評価基板の作製
シリコンウエハの片面に、該樹脂シートの樹脂塗布面を配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成形を行ない、銅箔を除去することで、絶縁層30μmの評価基板を得た。
ヤング率評価基板の作製
任意のプリプレグを積層成形した後、銅箔又は高分子フィルム等の外層を除去した樹脂基板(330mm*330mm*0.8mmt)の中央に、キャビティ(200mm*200mm*0.8mmt)を形成し、キャビティに該樹脂シートの樹脂部のみを粉体として配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成形を行うことで、厚さ0.8mmtの評価基板を得た。
埋め込み性評価基板の作製
アンクラッド板(520mm*345mm*0.2mmt)に対し、直径100μm、直径200μmのビアを形成し、ビア形成したアンクラッド板の片面に、該樹脂シートの樹脂塗布面を配置し、任意の積層成形を行なうことで、評価基板を得た。
・実施例2:
シリコーン複合パウダー(C)としてのシリコーン複合パウダー(KMP−605M、平均粒子径3μm)の使用量を20質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは165であり、請求項1記載の範囲内に該当する。
・実施例3:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分40質量%)12.5質量部(不揮発分換算で5質量部)、多官能シアン酸エステル化合物(F)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアン酸エステル当量:261g/eq.)のMEK溶液の使用量を50質量部(不揮発分換算で25質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは198であり、請求項1記載の範囲内に該当する。
・実施例4:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分40質量%)62.5質量部(不揮発分換算で25質量部)、多官能シアン酸エステル化合物(F)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアン酸エステル当量:261g/eq.)のMEK溶液の使用量を10質量部(不揮発分換算で5質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは199であり、請求項1記載の範囲内に該当する。
・実施例5:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分40質量%)75質量部(不揮発分換算で30質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは200であり、請求項1記載の範囲内に該当する。
・比較例1:
シリコーン複合パウダー(C)(KMP−605M、平均粒子径3μm)の使用量を0質量部とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは206であり、請求項1記載の範囲外である。
・比較例2:
無機充填材(B)として、溶融シリカ(SFP−330MC、電気化学工業(株)製、平均粒子径0.7μm)50質量部、溶融シリカ(SC−4053SQ 、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.1μm)50質量部とした以外は、比較例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは228であり、請求項1記載の範囲外である。
・比較例3:
無機充填材(B)として、溶融シリカ(SFP−330MC、電気化学工業(株)製、平均粒子径0.7μm)100質量部、溶融シリカ(SC−4053SQ 、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.1μm)100質量部とした以外は、比較例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは206であり、請求項1記載の範囲外である。
・比較例4:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分40質量%)の使用量を0質量部とし、多官能シアン酸エステル化合物(F)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアン酸エステル当量:261g/eq.)のMEK溶液の使用量を40質量部(不揮発分換算で20質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは206であり、請求項1記載の範囲外である。
・比較例5:
二官能シアン酸エステル化合物(A)として、ビスフェノールA型シアン酸エステル(TA、シアン酸エステル当量:139g/eq.、三菱瓦斯化学(株)製)のMEK溶液(不揮発分40質量%)の使用量を0質量部とし、エポキシ化合物(E)として、ナフタレン骨格含有エポキシ化合物(HP−9500、エポキシ当量:230g/eq.、DIC(株)製)の10質量部を、液状エポキシ化合物(828、エポキシ当量:189g/eq.、DIC(株)製)10質量部に置換し、多官能シアン酸エステル化合物(F)として、α−ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(シアン酸エステル当量:261g/eq.)のMEK溶液の使用量を40質量部(不揮発分換算で20質量部)とした以外は、実施例1と同様にしてワニス(樹脂組成物の溶液)を調整し、樹脂シート及びそれを用いた各種評価基板を得た。該樹脂シートの硬化物の熱応力係数Xは203であり、請求項1記載の範囲外である。
樹脂シートの評価
(1)可撓性:
実施例1〜5及び比較例1〜7の手順により作製された樹脂シートを用い、樹脂シートの可撓性を確認するため、得られた樹脂シート30mm×100mmの短冊状サンプルを、直径10mm及び直径20mmの棒に巻きつけて、クラックの発生有無を目視で観察した。直径10mmの棒に巻きつけた際に、クラックが発生してないものを「○」とした。続いてクラックが発生したものについては、φ20mmの棒に樹脂シートを巻きつけた際にクラックが発生するかどうかを目視で観察した。クラックが発生してないものを「△」とした。上記全ての評価でクラックが発生してしまったものを「×」とした。結果を表1に示した。
(2)Bステージ状態における樹脂シートの最低溶融粘度:
樹脂シートから採取した樹脂粉1gをサンプルとして使用し、レオメータ(TAインスツルメンツ社製ARES−G2)により、最低溶融粘度を測定した。ここでは、プレート径25mmのディスポーサブルプレートを使用し、40℃から180℃の範囲において、昇温速度2℃/分、周波数10.0rad/秒、歪0.1%の条件下で、樹脂の最低溶融粘度を測定した。結果を表1に示した。
(3)ビア埋め込み性:
直径100μm、直径200μmのビアを開口した厚さ0.2mmtのアンクラッド板の片面に、該樹脂シートを積層し、真空多段プレスによって成形し、得られた基板の断面を観察することで、十分にビアを埋めることが可能かどうかを確認した。直径100μmのビアを、十分に樹脂で充填出来ている場合は「○」とした。続いて充填が不十分なものについては、直径200μmのビアに対して、同様の評価を行い、十分に樹脂で充填出来ている場合は「△」とした。上記全ての評価で、十分に樹脂を充填出来なかった場合は「×」とした。結果を表1に示した。
(4)シリコンウエハとの密着性:
シリコンウエハに、該樹脂シートを積層し、真空多段プレスによって成形した後、4cm角にダイシングしたサンプルを、121℃−0.2MPa下で96hr吸湿させ、樹脂面に対してクロスカット試験を行い、密着性を判断した。具体的には、樹脂面に対し、幅1mm間隔で、縦6本、横6本の切込みを入れ、25マスの碁盤目を形成し、セロハン粘着テープを貼り付けた後、1分間経過後に、樹脂面に対し垂直に瞬時に引き剥がした。判定基準に従い、基準値0〜1のものを「○」、基準値2〜3のものを「△」、基準値4〜5のものを「×」とした。結果を表1に示した。
(5)ヤング率E:
厚み0.8mmtの樹脂硬化物について、オートグラフ((株)島津製作所製 AG−Xplus)を用いて、引張試験により測定した。結果を表1に示した。
(6)熱膨張係数α:
厚み0.8mmtの樹脂硬化物について、30mm角の試験片を作製し、熱機械分析装置(TAインスツルメント製)で40℃から340℃まで毎分10℃で昇温し、60℃から120℃での線膨張係数αを測定した。結果を表1に示した。
(7)熱応力係数X:
得られたヤング率Eと、熱膨張係数αを掛け合わせることでXを算出した。結果を表1に示した。
(8)ガラス転移温度Tg:
厚み0.8mmtの樹脂硬化物について、12mm×25mmの試験片を作製し、DMA測定装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMA Q400)を用いて10℃/min.で昇温し、LossModulusのピーク位置をガラス転移温度とした。結果を表1に示した。
Figure 2018058250
本発明の樹脂組成物は、上述のように、プリント配線板の絶縁層の材料及び部品内蔵基板の部品埋め込み用の材料として用いた場合、樹脂シートの可撓性に優れ、埋め込み性に優れ、部品との密着性に優れ、高い耐熱性を発揮することから、プリント配線板の絶縁層の材料及び部品内蔵基板の部品埋め込み用材料として極めて有用である。

Claims (13)

  1. 高分子フィルム、金属箔及び金属フィルムからなる群から選択される、いずれか一種である外層と、該外層上に積層された樹脂組成物からなる絶縁層とを含む樹脂シートであって、該樹脂組成物が、二官能シアン酸エステル化合物(A)、無機充填材(B)及びシリコーン複合パウダー(C)を含有し、該樹脂組成物をCステージ状態まで硬化させた硬化物のヤング率をE(GPa)、熱膨張係数をα(ppm/K)とし、ヤング率Eと熱膨張係数αを掛け合わせた熱応力係数をXとした際に、熱応力係数Xの値が150〜204GPa・ppm/Kとなるものである、樹脂シート。
  2. 樹脂組成物がマレイミド化合物(D)をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂シート。
  3. 樹脂組成物がエポキシ化合物(E)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
  4. 樹脂組成物が多官能シアン酸エステル化合物(F)をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  5. 樹脂組成物中の二官能シアン酸エステル化合物(A)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、5質量部以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  6. 樹脂組成物中の無機充填材(B)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、200質量部以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  7. 樹脂組成物中のシリコーン複合パウダー(C)の含有量が、樹脂組成物における樹脂固形分100質量部に対し、15質量部以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  8. 前記金属箔又は金属フィルムが、銅又はアルミニウムの箔又はフィルムである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  9. 前記高分子フィルムが、ポリエステル、ポリイミド及びポリアミドからなる群から選択される、いずれか一種である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  10. 前記樹脂組成物からなる絶縁層が、Bステージ状態のものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂シート。
  11. 前記Bステージ状態の絶縁層の最低溶融粘度が1,000Pa・s以下である、請求項10に記載の樹脂シート。
  12. 請求項1〜11に記載の樹脂シートを含有する、プリント配線板。
  13. 請求項1〜11に記載の樹脂シートを含有する、部品内蔵基板。
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