JP2018058042A - 合成ガスの浄化処理方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を吸着処理するに際し、その吸着能力を阻害し得る不純物質を除去しておくことによって、吸着能力を長期間維持する。
【解決手段】合成ガスを、ガス状不純物質吸着部50の吸着剤52と接触させる前に、前処理部4で前処理工程を実行する。前処理工程においては、溶媒接触部10において合成ガスを水性溶媒11a及び/又は油性溶媒12aと接触させる溶媒接触工程と、相転移性物質除去部20において合成ガスを相転移性物質の固相化温度まで冷却して相転移性物質捕捉部22に通す相転移性物質除去工程とのうち少なくとも1つを実行する。
【選択図】図1

Description

本発明は、合成ガス(シンガス)中の不純物質を除去する浄化処理方法及び装置に関し、特に廃棄物由来の合成ガスに適した浄化処理方法及び装置に関する。
産業廃棄物や一般廃棄物の処理方法として、熱分解によるガス化方法が知られている(特許文献1等参照)。この方法によれば、廃棄物を熱分解することで、CO及びHを主成分とする合成ガスが得られる。合成ガスは、種々の用途に利用可能である。
例えば特許文献2では、合成ガスを培養槽に導入して、微生物発酵によってエタノール等の有価物を生成している。合成ガスには、BTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン)、粒子状物、タール等の不純物質が少量含まれており、これらは微生物に有害である可能性があるために、前処理工程で除去することが記載されている。
特開2004−195400 特開2014−050406号公報([0102])
合成ガス中のBTEXは、圧力スイング吸着(PSA)法、温度スイング吸着(TSA)や活性炭吸着法によって除去できる。
一方、発明者等の研究によれば、廃棄物由来の合成ガスには、ナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール等の、気相と固相の間で相転移可能な相転移性不純物質(ないしは昇華性物質)が含まれているとの知見を得た。この種の相転移性不純物質は、廃棄物処理施設で生成された当初は気相であっても、温度条件や圧力条件によっては固相化する。固相の相転移性不純物質は、PSA、TSA用の吸着剤や活性炭の表面に付着して活性点を覆うおそれがある。そうすると、吸着能力が減殺されてしまう。合成ガス中のススやタール等の固液不純物質についても同様のおそれがある。
更に発明者等の知見によれば、特に廃棄物由来の合成ガスには、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)が含まれていることがあり、これらは代表的な環境汚染物質であるだけでなく、合成ガス利用工程に悪影響を与えることも考えられる。
本発明は、かかる事情に基づいてなされたものであり、合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を吸着処理するに際し、その吸着能力を阻害し得る不純物質を除去しておくことによって、吸着能力を長期間維持可能とし、更に好ましくは合成ガス中のNOx、SOxをも除去することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明方法は、合成ガス中の不純物質を除去する浄化処理方法であって、
前記合成ガスを、ガス状不純物質を吸着可能な吸着剤と接触させるガス状不純物質吸着工程と、
前記ガス状不純物質吸着工程の前に実行される前処理工程と、
を備え、前記前処理工程が、
前記合成ガスを、水性溶媒及び/又は油性溶媒と接触させる溶媒接触工程と、
前記合成ガスを、相転移性物質の固相化温度まで冷却して相転移性物質捕捉部に通す相転移性物質除去工程と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする。
前処理の溶媒接触工程における水性溶媒との接触によって、合成ガス中のNOx、SOx等の水溶性不純物質を除去できるほか、ナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去できる。また、油性溶媒との接触によって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質を除去できるほか、BTEX等のガス状不純物質をも除去できる。更に、前記相転移性物質除去工程によって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質を固相化させ、かつ固相化した相転移性物質を相転移性物質捕捉部で捕捉して除去でき、更には相転移性物質捕捉部において、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去できる。
これによって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質を除去したうえで、合成ガスをPSA等のガス状不純物質吸着部へ導入することによって、吸着剤の表面に相転移性物質の固化物や、スス、タール等の固液不純物質が付着するのを抑制又は防止できる。したがって、ガス状不純物質吸着部において、吸着剤の吸着能力を長期間維持することができ、合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を十分に除去できる。この結果、合成ガスを十分に浄化処理でき、合成ガスの利用性を高めることができる。
なお、「除去」とは、合成ガスから除去対象物質の少なくとも一部を除去(濃度低減)することを意味し、合成ガスから除去対象物質を完全に除去することに限定されない。
前記前処理工程において、前記溶媒接触工程後の合成ガスを前記相転移性物質除去工程に供することが好ましい。
溶媒接触工程によって合成ガスの温度をある程度下げたうえで、相転移性物質除去工程に導入することができる。したがって、相転移性物質除去工程における冷却部への負荷を低減できる。
前記溶媒接触工程が、前記合成ガスを水性溶媒と接触させる水性溶媒接触工程と、前記水性溶媒接触工程後の合成ガスを前記油性溶媒と接触させる油性溶媒接触工程とを含むことが好ましい。
水性溶媒接触工程によって、合成ガス中のNOx、SOx等の水溶性不純物質を除去できるほか、ナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去できる。このため、油性溶媒接触工程においては、残った相転移性物質、スス、タール等を除去すればよい。したがって、油性溶媒の損耗や汚濁速度を遅らせることができ、油性溶媒の入れ替え頻度を少なくできる。通常、油性溶媒は、水等の水性溶媒より高価であるから、油性溶媒の入れ替え頻度を少なくすることで、ランニングコストを低減できる。
前記ガス状不純物質吸着工程後の合成ガスを、ガス資化性微生物を含む液状培地に供給することにしてもよい。液状培地中でガス資化性微生物の発酵反応によって、合成ガス中のCO、H等からエタノール(COH)等の有価物を生成できる。前処理工程及びガス状不純物質吸着工程において合成ガス中の不純物質を除去しておくことによって、前記ガス資化性微生物の活動に悪影響が及ぶのを抑制できる。
本発明装置は、合成ガス中の不純物質を除去する浄化処理装置であって、
ガス状不純物質を吸着可能な吸着剤を含み、前記合成ガスが前記吸着剤と接触されるガス状不純物質吸着部と、
前記ガス状不純物質吸着部の前段に配置される前処理部と、
を備え、前記前処理部が、
前記合成ガスを水性溶媒と接触させる水性溶媒接触部と、
前記合成ガスを油性溶媒と接触させる油性溶媒接触部と、
前記合成ガスを相転移性物質の固相化温度まで冷却する冷却部、及び冷却後の合成ガスが通される相転移性物質捕捉部を有する相転移性物質除去部と、
を含むことを特徴とする。
これによって、水性溶媒接触工程と、油性溶媒接触工程と、相転移性物質除去工程の何れをも実行でき、合成ガス中の不純物質を確実に除去することができる。
本発明によれば、合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を吸着処理するに際し、その吸着能力を阻害し得る不純物質を除去しておくことによって、吸着能力を長期間維持することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る合成ガス処理システムの概略を示す構成図である。
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、合成ガス処理システム1は、廃棄物由来合成ガス生成部2と、合成ガス浄化処理装置3と、合成ガス利用部6を備えている。合成ガス生成部2において合成ガスが生成される。本発明形態における合成ガス生成部2は、廃棄物処理施設である。廃棄物としては、都市ゴミ、タイヤ、バイオマス、木質チップ、プラスチックごみ等が挙げられる。廃棄物は一般ごみであってもよい。廃棄物処理施設の溶融炉において、廃棄物が高濃度の酸素ガスによって燃焼されて低分子レベルまで分解される。最終的に、合成ガスが生成される。生成時ないしは合成ガス生成部2からの供出時における合成ガスの温度は、常温より高温であり、例えば30℃〜数百℃程度である。
合成ガスは、主要成分としてCO、H、COを含む。さらに、合成ガスは、不純物質として、BTEX、HCN、NOx、SOx、アセチレン等のガス状不純物質のほか、スス、タール等の固形又は液状の不純物質や、相転移性の不純物質を含む。相転移性不純物質とは、合成ガス生成部2からの供出時は大部分が気相であるが、合成ガス利用部6までの輸送過程で相転移して一部又は全部が固相となり得る不純物質(水を除く)を言う。例えば相転移性不純物質として、ナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール等の昇華性物質が挙げられる。
また、合成ガスは、ほぼ飽和状態の水分(HO)を含む。
廃棄物由来合成ガス生成部2と合成ガス利用部6との間に合成ガス浄化処理装置3が設けられている。合成ガス浄化処理装置3は、前処理部4と、ガス状不純物質吸着部50を備えている。ガス状不純物質吸着部50の前段に前処理部4が配置されている。
前処理部4は、溶媒接触部10と、相転移性物質除去部20と、水分除去部30と、固液捕捉部40を含む。溶媒接触部10は、水スクラバ11(水性溶媒接触部)と、オイルスクラバ12(油性溶媒接触部)を有している。相転移性物質除去部20は、チラー21(冷却部)と、相転移性物質捕捉部22を有している。廃棄物由来合成ガス生成部2と合成ガス利用部6とを結ぶ合成ガスの供給ラインに沿って、廃棄物由来合成ガス生成部2の側から、水スクラバ11、オイルスクラバ12、チラー21、相転移性物質捕捉部22、水分除去部30、固液捕捉部40、ガス状不純物質吸着部50の順に連なっている。
水スクラバ11は、上部の散布ノズル11bと、底部の溶媒貯留部11dと、溶媒路11cを含む。溶媒貯留部11dには、水性溶媒11aとして水が溜められている。溶媒路11cが、溶媒貯留部11dから散布ノズル11bへ延びている。更に、水スクラバ11の下部に合成ガスの導入ポート11eが設けられている。水スクラバ11の上部に合成ガスの導出ポート11fが設けられている。
オイルスクラバ12は、上部の散布ノズル12bと、底部の溶媒貯留部12dと、溶媒路12cとを含む。溶媒路12cが、溶媒貯留部12dから散布ノズル12bへ延びている。溶媒貯留部12dに油性溶媒12aが溜められている。油性溶媒12aの成分としては、例えばパラフィン系溶剤が挙げられる。有機塩素系化合物(PCB等)に対する溶解性、揮発時の有機塩素系化合物に対する随伴性、低粘度性、コスト等の観点から、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン等のノルマルパラフィン系有機溶媒を用いてもよい。
更に、オイルスクラバ12の下部に合成ガスの導入ポート12eが設けられている。オイルスクラバ12の上部に合成ガスの導出ポート12fが設けられている。
また、ここでの捕集効率を向上させるため、もしくはオイルの使用寿命を延ばすために循環流路にフィルタや冷却機能を設けてもよい。
チラー21は、冷却管23を有している。好ましくは、チラー21は、複数の冷却管23を含む多管式の熱交換器にて構成されている。各冷却管23は、洗浄容易性等の観点からは、直管にて構成されていることが好ましい。かつ、複数の冷却管23が互いに平行に並べられている。チラー21の底部からドレイン路25が延びている。
冷却管23内が合成ガスの流路となり、チラー21内における冷却管23間の空間が冷媒21aの冷媒路24となっている。冷媒21aとしては、たとえばエチレングリコールが用いられているが、これに限られるものではない。
なお、冷却管23内が冷媒21aの流路となり、冷却管23間の空間が合成ガスの流路となっていてもよい。
チラー21における冷却目標温度は、ナフタレン等の相転移性物質の相転移(例えばナフタレンの昇華固化)が十分に起き得る程度に設定されている。好ましくは、チラー21の冷却目標温度は、常温付近である。具体的には、10℃〜30℃程度であり、より好ましくは20℃程度である。
相転移性物質捕捉部22は、相転移性物質捕捉フィルタ22fを有している。フィルタ22fの材質は、金属でもよく、樹脂でもよく、繊維でもよく、セラミックでもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。フィルタ22fが、多層メッシュにて構成されていてもよい。
水分除去部30は、例えば熱交換器(チラー)にて構成されている。以下、水分除去部30を適宜「チラー30」と称す。好ましくは、チラー30は、複数の冷却管33を含む多管式の熱交換器にて構成されている。各冷却管33は、洗浄容易性等の観点からは、直管であることが好ましい。かつ、複数の冷却管33が互いに平行に並べられている。チラー30の底部からドレイン路35が延び出ている。
冷却管33内が合成ガスの流路となり、チラー30内における冷却管33間の空間が冷媒30aの冷媒路34となっている。冷媒30aとしては、たとえばエチレングリコールが用いられているが、これに限られるものではない。
なお、冷却管33内が冷媒30aの流路となり、冷却管33間の空間が合成ガスの流路となっていてもよい。
チラー30の冷却目標温度は、合成ガス中の水分を十分に凝縮(液化)でき、かつ氷結しない範囲で設定されている。好ましくは、チラー30の冷却目標温度は、0℃以上常温以下であり、具体的には0℃〜10℃程度であり、より好ましくは2℃程度である。
2つのチラー21,30を対比すると、チラー21のほうがチラー30よりも冷却目標温度が高い。また、チラー21の冷却管23のほうがチラー30の冷却管33よりも大径でコンダクタンスが大きい。
固液捕捉部40は、固液捕捉フィルタ42を有している。固液捕捉フィルタ42の材質は、金属でもよく、樹脂でもよく、繊維でもよく、セラミックでもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。固液捕捉フィルタ42が、多層メッシュにて構成されていてもよい。
相転移性物質捕捉部22と固液捕捉部40を対比すると、相転移性物質捕捉部22のフィルタ22fのほうが、固液捕捉部40のフィルタ42よりも目が粗く粒子を透過させやすい。相転移性物質捕捉フィルタ22fと固液捕捉フィルタ42が共に多層メッシュで構成されている場合、相転移性物質捕捉フィルタ22fのメッシュの層数は、固液捕捉フィルタ42のメッシュの層数の好ましくは3分の1〜20分の1であり、より好ましくは10分の1以下である。
ガス状不純物質吸着部50は、圧力スイング吸着(PSA;pressure swing adsorption)装置にて構成されている。以下、ガス状不純物質吸着部50を適宜「PSA装置50」と称す。ガス状不純物質吸着部50は、複数(図では2つだけ図示)の吸着塔51を含む。各吸着塔51に吸着剤52が収容されている。吸着剤52としては、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。
ガス状不純物質吸着部50の吸着剤が、活性炭によって構成されていてもよい。
なお、ガス状不純物質吸着部が、温度スイング吸着(TSA:temperature swing adsorption)装置にて構成されていてもよい。
詳細な図示は省略するが、合成ガス利用部6は、反応槽を含む。反応槽内の液状の培地中で嫌気性のガス資化性微生物が培養されている。或いは、後述するように、金属触媒が充填されていてもよい。ガス資化性微生物としては、例えば上掲特許文献2や、国際公開第2011/087380号、米国特許US2013/0065282等に開示された嫌気性細菌を用いることができる。
合成ガス処理システム1は、次にように動作する。
<合成ガス生成工程>
廃棄物由来合成ガス生成部2において、廃棄物が燃焼されることによって、合成ガスが生成される。生成時の合成ガスの温度は、常温より高温である。
<前処理工程>
合成ガスは、廃棄物由来合成ガス生成部2から前処理部4へ送られ、前処理工程に供される。
<溶媒接触工程>
前処理部4において、合成ガスは、先ず溶媒接触部10へ送られ、水スクラバ11に導入される。
<水性溶媒接触工程>
水スクラバ11においては、水11a(水性溶媒)が、散布ノズル11bから水スクラバ11内に散布される。かつ、合成ガスが、導入ポート11eから水スクラバ11内に導入されて上昇する。水スクラバ11内において、散布水11aと合成ガスとが対向流を形成しながら互いに接触される。この接触によって、合成ガス中のNOx、SOx、HCN、アセチレン等の水溶性不純物質を散布水11aに溶解させて十分に除去(濃度低減)できるほか、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去(濃度低減)できる。
合成ガスは、散布水11aとの接触によって温度が低下される。
<油性溶媒接触工程>
続いて、合成ガスは、オイルスクラバ12へ送られる。
オイルスクラバ12においては、油性溶媒12aが、散布ノズル12bからオイルスクラバ12内に散布される。かつ、合成ガスが、導入ポート12eからオイルスクラバ12内に導入されて上昇する。オイルスクラバ12内において、散布された油性溶媒12aと合成ガスとが対向流を形成しながら互いに接触される。この接触によって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質や、タール、BTEX等を十分に除去(濃度低減)できるほか、スス、アセチレン等をもある程度除去(濃度低減)できる。
合成ガスは、油性溶媒12aとの接触によって温度が更に低下される。
前述したように、溶媒接触部10においてナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去できるから、油性溶媒接触工程においては、残った相転移性物質、スス、タール等を除去すればよい。したがって、油性溶媒12aの損耗や汚濁速度を遅らせることができ、油性溶媒12aの入れ替え頻度を少なくできる。通常、油性溶媒12aは、水等の水性溶媒11aより高価であるから、油性溶媒12aの入れ替え頻度を少なくすることで、ランニングコストを低減できる。
<相転移性物質除去工程>
続いて、合成ガスは、相転移性物質除去部20へ送られる。
<冷却工程(相転移性物質固相化工程)>
相転移性物質除去部20において、合成ガスは、先ずチラー21に導入される。チラー21において、合成ガスが冷却管23に通されるとともに、冷媒21aが冷媒路24に通されることで熱交換が行われる。合成ガスの流れ(管23内の下向き矢印)と冷媒21aの流れは互いに対向流を構成している。なお、合成ガスの流れと冷媒21aの流れは互いに並行流を構成していてもよい。
熱交換によって、合成ガスが、例えば常温程度まで冷却される。冷却によって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質が、ガスから固体に昇華(固相化)される。合成ガスは、溶媒接触部10において温度をある程度低下されたうえで相転移性物質除去部20に導入されるから、チラー21の負荷を低減できる
冷却管23を比較的大径とし、冷却管23のコンダクタンスを比較的大きくすることによって、冷却管23がナフタレン等の相転移性物質の固化物によって詰まるのを抑制できる。
冷却によって合成ガス中の水分の一部が凝縮する。凝縮水は、ドレイン路25から排出される。
<相転移性物質捕捉工程>
冷却後の合成ガスが、相転移性物質捕捉部22へ送られ、フィルタ22fに通される。これによって、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質の固化物をフィルタ22fにて捕捉できる。この結果、合成ガスからナフタレン等の相転移性物質を除去できる。更にはフィルタ22fによって、スス、タール等の固液不純物質をもある程度除去できる。
フィルタ22fの目を比較的粗くすることで、フィルタ22fが、捕捉した不純物質や凝縮水によって詰まるのを抑制でき、フィルタ22fの交換頻度を少なくすることができる。
<水分凝縮工程>
続いて、合成ガスはチラー30へ送られる。チラー30において、合成ガスが冷却管33に通されるとともに、冷媒30aが冷媒路34に通されることで熱交換が行われる。合成ガスの流れ(管33内の下向き矢印)と冷媒30aの流れは互いに対向流を構成している。なお、合成ガスの流れと冷媒30aの流れは互いに並行流を構成していてもよい。
熱交換によって、合成ガスがチラー21よりも低温化され、好ましくは零度近くまで冷却される。冷却管33を小径にすることで、合成ガスの冷却効率を高めることができる。これによって、合成ガス中の水分を十分に凝縮させることができる。好ましくは、合成ガスの水分含有量をほとんど零にできる。
予め、溶媒接触部10及び相転移性物質除去部20でナフタレン等の固化物やスス、タール等の固液不純物質を除去したうえで、水分凝縮工程を行うことによって、冷却管33の詰まりを抑制することができる。
チラー30で凝縮した水は、ドレイン路35から排出される。
<固液捕捉工程>
続いて、合成ガスは、固液捕捉部40へ送られ、固液捕捉フィルタ42に通される。固液捕捉フィルタ42によって合成ガス中のスス、タール等の固液不純物質を捕捉することで更に除去できる。
チラー30で予め合成ガス中の水分を除去したうえで、固液捕捉工程を行うことによって、固液捕捉フィルタ42の詰まりを抑制することができる。
さらには、前記溶媒接触部10及び相転移性物質除去部20において、ナフタレン等の相転移性物質を予め除去したうえで、固液捕捉工程を行うことによって、固液捕捉フィルタ42の詰まりを一層確実に抑制することができる。
なお、相転移性物質除去部20を通過したナフタレン等の相転移性物質の固化物は、固液捕捉部40によって捕捉することができる。
<ガス状不純物質吸着工程>
続いて、合成ガスは、PSA装置50へ送られる。PSA装置50の一部の吸着塔51に合成ガスが加圧供給されることで、合成ガス中のBTEXをはじめとするガス状不純物質が、前記一部の吸着塔51の吸着剤52に吸着される。吸着されるガス状不純物質としては、BTEXのほか、HCN、アセチレン、NOx、SOx等が挙げられる。
このとき、PSA装置50の他の吸着塔51では、脱着ガスの流通下で減圧されることで、ガス状不純物質が脱着されて排出される。これによって、吸着剤52の吸着容量が回復される。
複数の吸着塔51について交互に加圧吸着操作と減圧脱着操作が反復される。これによって、合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を十分に除去できる。
合成ガス浄化処理装置3によれば、前処理部4において、合成ガス中のナフタレン等の相転移性物質や、スス、タール等の固液不純物質を十分に除去したうえで、合成ガスをPSA装置50へ導入することによって、吸着剤52の表面に相転移性物質の固化物や、スス、タール等の固液不純物質が付着するのを抑制又は防止できる。ひいては、吸着剤52の活性点が、固化相転移性物質や固液不純物質によって覆われるのを抑制又は防止できる。これによって、吸着剤52の吸着能力を長期間維持することができ、PSA装置50において合成ガス中のBTEX等のガス状不純物質を確実に除去できる。
この結果、合成ガスを十分に浄化処理できる。
なお、ガス状不純物質吸着工程をTSA(温度スイング)法によって行ってもよい。TSA法は、吸脱着を温度変化により行う方式であり、その詳細は省略するが、前記PSA法と同様の効果が期待できる。
<合成ガス利用工程>
その後、合成ガスは、合成ガス利用部6に導入される。合成ガス利用部6においては、例えば、培地中のガス資化性微生物が、合成ガスのCO及びH等を摂取して、エタノール等の有価物を発酵生成する。
予め合成ガス中の、ナフタレン等の相転移性物質、スス、タール等の固液不純物質、BTEX、NOx、SOx、HCN、アセチレン等のガス状不純物質を除去しておくことで、ガス資化性微生物を安定的に培養できる。
上記培養液の一部は蒸留塔(図示せず)へ送られて蒸留される。これによって、エタノールを抽出することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、前処理の各工程の順序は適宜入れ替えてもよい。油性溶媒接触工程の後、水性溶媒接触工程を行ってもよい。相転移性物質除去工程の後、溶媒接触工程を行なってもよい。相転移性物質除去工程を水性溶媒接触工程と油性溶媒接触工程の間に行ってもよい。
前処理部4において、油性溶媒接触部12を水性溶媒接触部11の前段に配置してもよい。相転移性物質除去部20を溶媒接触部10の前段に配置してもよい。相転移性物質除去部20を水性溶媒接触部11と油性溶媒接触部12との間に配置してもよい。
合成ガスの組成によっては、前処理工程において、水性溶媒接触工程を省略してもよい。若しくは油性溶媒接触工程を省略してもよい。又は相転移性物質除去工程を省略してもよい。水性溶媒接触工程と油性溶媒接触工程と相転移性物質除去工程のうち少なくとも1つを実行すればよい。
前処理部4において、水スクラバ11を省略してもよい。若しくはオイルスクラバ12を省略してもよい。又は相転移性物質除去部20を省略してもよい。水スクラバ11とオイルスクラバ12と相転移性物質除去部20のうち少なくとも1つが設けられていればよい。
溶媒接触部10において、1つのスクラバ槽に水性溶媒11aの散布ノズル11bと、油性溶媒12aの散布ノズル12bとを設けることで、水性溶媒接触工程と油性溶媒接触工程とが1つのスクラバ槽内で併行して実行されるようにしてもよい。
溶媒接触部10において、1つのスクラバ槽に水性溶媒11aと油性溶媒12aの混合物を散布することで、水性溶媒接触工程と油性溶媒接触工程とが1つのスクラバ槽内で同時に実行されるようにしてもよい。
水性溶媒11aは、水に限られず、アルコール等であってもよい。
相転移性不純物質は、気相から液相を経ずに固相になるナフタレン、1−ナフトール、2−ナフトール等の昇華性物質に限られず、気相から液相を経て固相になるものであってもよい。
合成ガス利用工程において、合成ガスを金属触媒と接触させて化学反応によりエタノール等の有価物を合成してもよい。金属触媒としては、代表的な物質としてモリブデン系が挙げられる。合成ガスをこの化学反応に用いる場合、上記ガス資化性微生物による発酵反応とは除去対象物質が若干異なるものの、必要な工程としては同様である。更に追加して脱硫を強化するための工程が必要である。
生成目的の有価物は、エタノールに限られず、酢酸やメタノール等であってもよい。
合成ガス利用部6が、合成ガスを金属触媒に接触させることでエタノール等の有価物を生成するものであってもよい。
合成ガス生成部は、廃棄物処理施設に限られず、製鉄所や石炭発電所等であってもよい。合成ガスは、製鉄所の副生ガス(転炉、高炉ガス等)であってもよい。
本発明は、例えば産業廃棄物の焼却処理で生じる合成ガスからエタノールを合成するエタノール生成システムに適用できる。
1 合成ガス処理システム
2 廃棄物由来合成ガス生成部
3 合成ガス浄化処理装置
4 前処理部
10 溶媒接触部
11 水スクラバ(水性溶媒接触部)
11a 水(水性溶媒)
11b 散布ノズル
11c 溶媒路
11d 溶媒貯留部
11e 導入ポート
11f 導出ポート
12 オイルスクラバ(油性溶媒接触部)
12a 油性溶媒
12b 散布ノズル
12c 溶媒路
12d 溶媒貯留部
12e 導入ポート
12f 導出ポート
20 相転移性物質除去部
21a 冷媒
21 チラー(冷却部)
22 相転移性物質捕捉部
22f 相転移性物質捕捉フィルタ
23 冷却管
24 冷媒路
25 ドレイン路
30 チラー(水分除去部)
30a 冷媒
33 冷却管
34 冷媒路
35 ドレイン路
40 固液捕捉部
42 固液捕捉フィルタ
50 ガス状不純物質吸着部
51 吸着塔
52 吸着剤
6 合成ガス利用部

Claims (5)

  1. 合成ガス中の不純物質を除去する浄化処理方法であって、
    前記合成ガスを、ガス状不純物質を吸着可能な吸着剤と接触させるガス状不純物質吸着工程と、
    前記ガス状不純物質吸着工程の前に実行される前処理工程と、
    を備え、前記前処理工程が、
    前記合成ガスを、水性溶媒及び/又は油性溶媒と接触させる溶媒接触工程と、
    前記合成ガスを、相転移性物質の固相化温度まで冷却して相転移性物質捕捉部に通す相転移性物質除去工程と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする合成ガス浄化処理方法。
  2. 前記前処理工程において、前記溶媒接触工程後の合成ガスを前記相転移性物質除去工程に供することを特徴とする請求項1に記載の合成ガス浄化処理方法。
  3. 前記溶媒接触工程が、前記合成ガスを水性溶媒と接触させる水性溶媒接触工程と、前記水性溶媒接触工程後の合成ガスを前記油性溶媒と接触させる油性溶媒接触工程とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の合成ガス浄化処理方法。
  4. 前記ガス状不純物質吸着工程後の合成ガスを、ガス資化性微生物を含む液状培地に供給することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の合成ガス浄化処理方法。
  5. 合成ガス中の不純物質を除去する浄化処理装置であって、
    ガス状不純物質を吸着可能な吸着剤を含み、前記合成ガスが前記吸着剤と接触されるガス状不純物質吸着部と、
    前記ガス状不純物質吸着部の前段に配置される前処理部と、
    を備え、前記前処理部が、
    前記合成ガスを水性溶媒と接触させる水性溶媒接触部と、
    前記合成ガスを油性溶媒と接触させる油性溶媒接触部と、
    前記合成ガスを相転移性物質の固相化温度まで冷却する冷却部、及び冷却後の合成ガスが通される相転移性物質捕捉部を有する相転移性物質除去部と、
    を含むことを特徴とする合成ガス浄化処理装置。
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